JP2007064751A - 磁気センサを用いた測定装置及び測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 複数の固定部102a、102bに磁性粒子を固定した高分子基材101、高分子基材101を磁場中で移動させるモータ107、移動されている高分子基材101に固定された磁性粒子による磁気的な変化を検出し、この変化をアナログ信号として出力する磁気センサ106、出力されたアナログ信号を増幅すると共にフィルタ処理する微分型アナログフィルタを含むアナログ信号処理部108、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換素子109、デジタル信号に含まれるノイズを除去するデジタルフィルタ110、ノイズ除去されたデジタル信号のプラス出力またはマイナス出力のいずれか一方を出力する信号出力手段111を設ける。
【選択図】 図1
Description
特異結合を利用した測定装置あるいは測定方法として、酵素免疫測定法や蛍光免疫測定法などが広く用いられている。酵素免疫測定法は、被検出物質と特異的に反応する物質に酵素で標識を付し、酵素反応による発色を光学的に計測する方法である。また、蛍光免疫測定法では、被検出物質と特異的に反応する物質を蛍光体で標識し、前記被検出物質が存在する場合には、蛍光体が発する蛍光強度を計測する方法である。
特許文献1に記載された装置は、静磁場の変化を検出する際、交流電流を用いて磁気センサからの信号を周波数変調し、ロックインアンプで検出する。このような構成にあっては、磁場変化の検出に磁気抵抗素子を用いるものでは直流オフセットが大きく、微小信号の増幅率が制限される。このため、信号検出に比較的高い精度が要求される場合、適正な信号を検出することは難しいと思われる。
微分型アナログフィルタは、低周波数1/fノイズ除去に有効なフィルタである一方、次のような欠点も有する。すなわち、微分型アナログフィルタを用いた場合、検出された信号は、波形が実際の信号波形と比較して微分された形状の信号として得られる。このため、得られる信号は、波形、位相が共に実際の信号と大きく相違する。
さらに、信号の干渉は、磁性粒子が固定された箇所同士の距離を大きくとることによって回避することができる。しかし、磁性粒子固定箇所の間隔を大きくとった場合、磁性粒子が固定化される基材そのものが大きくなる。基材の大型化は、ひいては装置を大型化し、様々な場面で使用される装置の汎用性を損なう可能性がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、複数の箇所に固定された磁性粒子を1回の測定で検出する場合にも、各検出信号の干渉によって信号の検出精度が低下することを抑え、汎用的に使用できる磁気センサを用いた測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
また、本発明の磁気センサを用いた測定装置は、前記磁気センサが、磁場の変化によって電気特性が変化する半導体磁気抵抗素子を有するセンサ部と、前記センサ部及び前記基体に固定された磁性粒子に静磁場を印加する静磁場発生部とを有することを特徴とする。
また、本発明の磁気センサを用いた測定装置は、前記磁性粒子の平均粒子径が、0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする。
このような発明によれば、免疫反応効率や磁性体含有量の観点から好ましい粒子径を設定することができる。
このような発明によれば、測定すべき物質にだけ磁性粒子を付着することができ、磁性粒子を検出することによって測定すべき物質を定量化することができる。
また、本発明の磁気センサは、免疫反応効率や磁性体含有量の観点から好ましい粒子径を設定することができる。
また、本発明の磁気センサを用いた測定装置は、測定すべき物質にだけ磁性粒子を付着することができ、磁性粒子を検出することによって測定すべき物質を定量化することができる。
図1は、本実施形態の磁気センサを用いた測定装置(以下、本実施形態では単に測定装置と記す)の構成を説明するための図である。本実施形態の測定装置は、複数の箇所に磁性粒子を固定した高分子製の基材(高分子基材)101を備えている。高分子基材101上には2つの固定部102a、102bが設けられていて、磁性粒子は、固定部102a、102bに固定された結合物質である抗体と、抗体と特異的に結合する抗原との結合によって固定部102a、102bに固定されている。このような磁性粒子の固定については後に述べるものとする。
また、本実施形態の測定装置は、高分子基材101を磁場中で図中の矢線Aで示す方向に移動させる基材移動手段であるモータ107、移動されている基材101に固定された磁性粒子によって出力される磁気的な変化を検出し、この変化をアナログ信号として出力する磁気センサ106、磁気センサ106によって出力されたアナログ信号を増幅し、増幅されたアナログ信号をフィルタ処理するアナログ信号処理部108、アナログ信号処理部108によってフィルタ処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換素子109、A/D変換素子109から出力されたデジタル信号に含まれるノイズを除去するデジタルフィルタ110、デジタルフィルタ110によってノイズ除去されたデジタル信号のプラス出力またはマイナス出力のいずれか一方を出力する信号出力部111を備えている。
磁気センサ106は、磁場の変化によって電気特性が変化する半導体薄膜を有するセンサ部103と、センサ部103及び高分子基体101に固定された磁性粒子に静磁場を印加する静磁場発生部104とを備えている(印加される静磁場の磁力線をBとして示す)。センサ部103及び静磁場発生部104は、基体105にそれぞれ固定されてユニット化されている。なお、センサ部103の半導体薄膜には、インジウムアンチモンなどの化合物半導体、シリコンなどの半導体を適用できるが、このような半導体に限定されるものではない。
センサ部103から出力される信号は、磁場の変化の程度に応じて変化し、アナログ信号処理部108にアナログ信号aとして出力される。磁場の変化の量は固定された磁性粒子の量に応じ、磁性粒子の量は、検出すべき抗原の量に応じる。このため、アナログ信号aは、抗体と反応した抗原の量を示し、反応した抗原の量がサンプルに含まれる抗原の量と相関性を持つ。このことから、本実施形態の測定装置は、検出信号に基づいてサンプルに含まれる抗原を定量することができる。
A/D変換素子109は、アナログ信号bを入力し、デジタル変換した後にデジタル信号cとしてデジタルフィルタ110に出力する。このようなA/D変換素子109は、A/Dコンバータ等を用いることによって実現可能である。デジタル信号cは、A/D変換素子109からデジタルフィルタ110へ出力される。
デジタル信号dのプラス信号またはマイナス信号のいずれか一方だけを出力する信号出力部111は、指定され領域の範囲で得られる信号の最大値または最小値の一方を検出し、検出された値を表示するプログラムを実行する構成である。なお、このプログラムは、周知であるのでこれ以上の説明を省く。
また、本実施形態でいう指定された領域の範囲とは、被検出物質を検出する範囲のことであり、図1に示した固定部102aあるいは102bが移動することによって磁場が変化する範囲である。
すなわち、本実施形態では、図2(a)、(b)に示したように、出力されたデジタル信号において、振幅eまたは振幅fに示すようにプラスあるいはマイナスに出力された信号だけを検出信号として採用している。(c)は、従来の信号の検出方法であって、信号のPeak to Peakを使って得たデジタル信号を検出値とする方法を、本実施形態の信号検出方法と比較して示している。図2(c)に示した振幅gは、信号のプラス方向の振幅のみを示し、振幅hは、同じ信号のPeak to Peakであって従来の検出値とされていた値である。
本実施形態は、A/D変換素子109におけるデジタルフィルタ処理により信号オフセットやドリフトが除去されて信号の0レベルが調整されることに着目し、0レベルを基準として表される信号のプラスまたはマイナスの一方だけを検出値とする。このような本実施形態は、従来の信号のPeak to Peakで値を検出するよりもノイズの影響が少ない正確なデジタル信号を検出値として得ることができる。
V1=V×(R3/(R2+R3))として表される。
また、センサ部103が磁場変化を検出していない時の中点pの電圧V2は、
V2= V×(R3/(R1+R3))となる。
以上の式から、磁場の変化を示す電圧値ΔVは、
ΔV=V2−V1として求められる。
なお、本実施形態は、磁場の変化を半導体薄膜の抵抗の変化によって検出しているが、電気抵抗の変化は電圧変化、電流変化として測定することも可能である。
図5に示すように、高分子基体101の固定部102a、102bには、測定すべき抗原と特異的に結合する抗体501が固定されている。このような高分子基体101に抗原505と特異的結合し得る抗体502を備えた磁性粒子503と抗原505を反応させると、抗体501と測定すべき抗原505及び磁性粒子503に備わった抗体502とが抗原抗体反応によってサンドイッチ結合を生じ、特異的に結合する。この結果、磁性粒子が抗原505を介して高分子基体101の固定部102a、102bに固定される。
なお、本実施形態で使用された磁性粒子は、一般的に超常磁性体といわれるもので、外部から磁力を作用させている間は磁化し、磁力の遮断によって速やかに減磁する点で本実施形態の測定装置に用いることに特に好ましい。このような磁性粒子としては、例えば、Dynal社製Dynabeads M−450、M−270、Myone(以上、製品名)、Estapor社製M1−070−40、M1−070−60、M1−030−40(以上、製品名)、Micromod社製micromer−M(製品名)、Seradyn社製Sera−mag(製品名)等が挙げられる。磁性粒子は、適用される免疫反応物質等の種類に応じて、適切な表面処理がなされたもの、あるいは適切な官能基を有するものが選択される。
また、測定すべき物質と磁性粒子との吸着は、固定部102a、102bへの固定と同様に、周知の化学または物理的な方法のいずれで行うものであってもよい。
磁場の変化の程度は、固定された磁性粒子503の磁性の強弱や量に応じる。本実施形態の測定装置では、使用された磁性粒子の単位あたりの磁荷は既知であるから、磁性粒子の量から検出すべき抗原505を定量することができる。したがって、ΔVに相当する信号は、抗体501、抗原505及び抗体502によるサンドイッチ結合を介して固定された磁性粒子量を示し、この磁性粒子量は、サンプルに含まれる抗原505の量と相関性を持つ。このような本実施形態の測定装置は、検出信号に基づいてサンプル中の抗原505を定量することが可能である。
次に、以上述べた本発明の磁気センサを用いた測定装置及び測定方法によって得られる効果を確認するために行った実験について説明する。この実験では、図1、図4に示した固定部102a、102bのうちの一方(例えば102a)には常に磁性粒子を固定し、他方(例えば102b)には磁性粒子を固定する場合としない場合とで固定部102aから検出された信号の値を比較している。
高分子基体:ポリカーボネート
磁性粒子:Dynal社製Myone(製品名)、粒子径1μm
磁性粒子は、2箇所の固定部に円状に固定、図4で述べた固定部同士の間隔Dは、約1.8mmである。
磁気センサ:センサ部 インジウムアンチモンからなる化合物半導体
磁場発生源 サマリウムコバルトからなる永久磁石(磁場発生源の図中上面において約2000エルステッド)
また、微分型アナログフィルタから出力されたアナログ信号をA/Dコンバータによりデジタル信号化し、デジタル信号の出力の際に高速フーリエ変換によりオフセット周波数を除去し、さらに逆フーリエ変換して出力した。
表1に示したように、固定部102bに磁性粒子を固定した場合を表1中に「有り」、固定しなかった場合を「無し」と記す。また、この実験では、固定部102において検出された信号を、本実施形態の測定装置で得られた結果と従来のPeak to Peakで表した結果との両方で示す。表中において、プラス出力は、例えば図2(c)に示した振幅gであり、ピークtoピーク出力とは、例えば図2(c)に示した振幅hをいう。
以上の結果から、本実施形態の測定装置は、複数の固定部間の信号の干渉によらず、従来の構成よりも高い精度で磁性粒子を検出し、ひいては検出すべき物質の量を正確に測定することができるものといえる。
104 静磁場発生部、105 基体、106 磁気センサ
107 モータ、108 アナログ信号処理部、109 A/D変換素子
110 デジタルフィルタ、111 信号出力部、301 抵抗体、
501 抗体、502 抗体、503 磁性粒子、505 抗原
Claims (5)
- 複数の箇所に磁性粒子を固定した基材と、
前記基材を磁場中で移動させる基材移動手段と、
移動されている前記基材に固定された磁性粒子による磁気的な変化を検出し、該変化をアナログ信号として出力する磁気センサと、
前記磁気センサによって出力されたアナログ信号を増幅する増幅回路及び該アナログ信号をフィルタ処理する微分型アナログフィルタと、
前記微分型アナログフィルタによってフィルタ処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換手段と、
前記アナログ・デジタル変換手段から出力されたデジタル信号に含まれるノイズを除去するデジタルフィルタと、
前記デジタルフィルタによってノイズが除去されたデジタル信号のプラス出力またはマイナス出力のいずれか一方を出力する信号出力手段と、
を備えることを特徴とする磁気センサを用いた測定装置。 - 前記磁気センサは、磁場の変化によって電気特性が変化する半導体磁気抵抗素子を有するセンサ部と、前記センサ部及び前記基材に固定された磁性粒子に静磁場を印加する静磁場発生部とを有することを特徴とする請求項1記載の磁気センサを用いた測定装置。
- 前記磁性粒子の平均粒子径は、0.1μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気センサを用いた測定装置。
- 前記磁性粒子は、前記基材上の複数の箇所に固定された物質と、該物質と特異的結合する物質との結合によって前記基材に固定されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気センサを用いた測定装置。
- 複数の箇所に磁性粒子を固定した基材を磁場中で移動させる基材移動ステップと、
前記基材移動ステップにおいて移動された前記基材に固定された磁性粒子による磁気的な変化を検出し、該変化をアナログ信号として出力する磁気信号検出ステップと、
前記磁気信号検出ステップにおいて出力されたアナログ信号を増幅する信号増幅ステップ及び該アナログ信号を、微分型アナログフィルタによってフィルタ処理するフィルタ処理ステップと、
前記フィルタ処理ステップにおいてフィルタ処理されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換ステップと、
前記アナログ・デジタル変換ステップにおいて出力されたデジタル信号に含まれるノイズを除去するデジタルフィルタステップと、
前記デジタルフィルタステップにおいてノイズが除去されたデジタル信号のプラス出力またはマイナス出力のいずれか一方を出力する信号出力ステップと、
を含むことを特徴とする磁気センサを用いた測定方法。
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