JP2007062657A - 自動車のピラーとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 自動車の運転席からの視野を確保でき、かつ剛性がより高い自動車のピラーを提供する。
【解決手段】 室内側のインナパネル2と室外側のアウタパネル3とにより閉断面構造に形成され、内部にレインホースパネル4が設けられた自動車のピラー1であって、 インナパネル2は、アウタパネル3と接合されるフランジ部2a間に、長手方向に直交する断面形状を凹凸状でかつ長手方向に連続する凹凸状部10が形成された超塑性金属材料により構成したことを特徴とする。
【選択図】図2
【解決手段】 室内側のインナパネル2と室外側のアウタパネル3とにより閉断面構造に形成され、内部にレインホースパネル4が設けられた自動車のピラー1であって、 インナパネル2は、アウタパネル3と接合されるフランジ部2a間に、長手方向に直交する断面形状を凹凸状でかつ長手方向に連続する凹凸状部10が形成された超塑性金属材料により構成したことを特徴とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、自動車のピラーとその製造方法に関する。
自動車のピラーは、インナパネルとアウタパネルとにより構成した閉断面構造をしており、車両衝突時にキャビンの変形を防止する重要な剛性部材である。したがって、基本的には、太く、つまり、長手方向に対し直角な方向の断面積が大きく、より高剛性化することが好ましい。
ところが、フロントピラーは、運転者の視界を遮る位置にあるので、あまり太くすることはできない。ピラーの材料により高強度化する方法も開発が進められてはいるが、車体剛性の観点から単純な高強度化によるピラーの細径化は、必ずしも容易でない。
このため、閉断面構造の内部に全長にわたって閉断面を仕切るようにレインホースパネルを設け、高剛性化しているのが実情である(例えば、下記特許文献1参照)。
特開平11−235983号公報(要約、図1B等参照)
しかし、フロントピラーが設けられる自動車の前面部分は、各種機器が設けられており、これら機器のハーネスやアンテナ線あるいはドレンパイプなどの線状部材を設置するスペースの確保も困難である。この点、フロントピラーは、閉断面構造で内部に空間を有しているので、この空間を利用することができれば、線状部材の挿通スペースを確保できるが、線状部材相互が干渉を起こすことなく、簡単に設置することは困難で、組み付け作業性の面でも問題となっている。
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、長手方向に対し直角な方向の断面積を大きくすることなく高剛性化でき、しかも、閉断面構造の内部空間を利用して各種線状部材を簡単に取り付けることができる自動車のピラーとその製造方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、室内側のインナパネルと室外側のアウタパネルとにより閉断面構造に形成され、内部にレインホースパネルが設けられた自動車のピラーであって、
前記インナパネルは、前記アウタパネルと接合されるフランジ部間に、長手方向に直交する断面形状が凹凸状でかつ長手方向に連続する凹凸状部が形成された超塑性金属材料により構成したことを特徴とする自動車のピラーである。
前記インナパネルは、前記アウタパネルと接合されるフランジ部間に、長手方向に直交する断面形状が凹凸状でかつ長手方向に連続する凹凸状部が形成された超塑性金属材料により構成したことを特徴とする自動車のピラーである。
請求項7に記載の発明は、室内側のインナパネルと室外側のアウタパネルとにより閉断面構造に形成され、内部にレインホースパネルが設けられた自動車のピラーの製造方法であって、超塑性金属材料の変態温度もしくは再結晶化温度から300℃低い温度に加熱し、歪速度が10−5S−1〜10S−1の範囲で塑性加工することにより、前記アウタパネルと接合されるフランジ部間に、長手方向に直交する断面形状が凹凸状でかつ長手方向に連続する凹凸状部を有する前記インナパネルを形成することを特徴とする自動車のピラーの製造方法である。
請求項1の発明では、自動車のピラーのインナパネルを、超塑性金属材料を用いて、長手方向に沿って延在する凹凸状部を形成したので、ピラーの断面積を大きくすることなくピラーの剛性を向上させることができ、ピラーの剛性を維持しつつピラーの断面積を小さくできる。
請求項7に記載の発明は、自動車のピラーのインナパネルを成形する場合、超塑性金属材料を所定の温度に加熱し、所定の歪速度で塑性変形するので、複雑な形状をしたものでも、容易に形成でき、高剛性のピラーを成形できる。
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は自動車のフロントピラー周辺を示す斜視図、図2は本発明の実施の形態を示す分解状態断面図、図3は図1の2−2線に沿う断面相当図である。
図1,2に示すように、自動車のフロントピラー1は、室内側のインナパネル2と、室外側のアウタパネル3と、両パネル2,3の間に設けられたレインホースパネル4との端部フランジ部2a,3a,4aを相互にスポット溶接することにより全体的に三次元形状とされている。なお、図1において、「5」はドアミラー、「6」はフロントガラス、「7」はサイドガラス、「8」はルーフパネルである。
図2に示すように、インナパネル2とアウタパネル3は、閉断面構造を有しているが、外方に膨出形状のアウタパネル3の内方に、アウタパネル3に沿ってレインホースパネル4が配置されている。
特に、本実施形態のインナパネル2は、アウタパネル3と接合されるフランジ部2a間に、長手方向に対して直交する断面形状が凹凸状とされ、この凹凸状を長手方向に連続して形成することにより凹凸状部10が設けられている。
このように断面凹凸状の部分を長手方向に連続して形成すれば、多数の稜線や屈曲部を有するものとなるので、従来のインナパネルと、同強度、同板厚の材料を用いたとすれば、従来のものよりピラー自体のねじり剛性を高くすることができ、より高強度なものとなる。また、従来インナパネルと同等の剛性とすれば、より細径のフロントピラー1にすることができ、長手方向に直交の断面積をより小さくでき、視界の確保もより優れたものとなる。
インナパネル2に形成された凹凸状部10は、長手方向に連続する凸部11の近傍に凹部12を有しているので、凹部12は、各種線状部材Sを収納設置するスペースとして利用でき、しかも、インナパネル2は、車室内側にあるため、ここに凹凸状部10を設け、線状部材Sを収納スペースとすれば、線状部材Sの取付けが容易になり、組付けの利便性が向上する。各種線状部材Sとしては、例えば、排水用のドレイン管13、各種ハーネス14およびアンテナ線15などがあるが、これのみでなく他の線状をしたものであれば、どのようなものであってもよい。
本実施形態の凹凸状部10は、アウタパネル3とは反対側(車室内側)に突出した凸部11と、凸部11の両側に形成された凹部12a、12bとを有しており、一方の凹部12aにはドレイン管13を、他方の凹部12bにはハーネス14を収納する部分である。アンテナ線13も、前記いずれかの凹部12a、12bに収納してもよいが、本実施形態ではインナパネル1を覆う室内側カバー16との間に収納している。
室内側カバー16は、インナパネル2を覆うものであればよいが、本実施形態では、各種線状部材Sが内部を挿通される保持部17が一体的に形成された樹脂製であり、図3に示すように、保持部17を凹凸状部10の凸部11に凹凸嵌合させて取付ている。
したがって、インナパネル2側の凹凸状部10の凸部11は、長手方向に直交する断面形状が略T字状で、先端に幅広にした係合部11aを形成してあり、樹脂製の室内側カバー16の保持部17に形成された略T字状の凹部17aと凹凸嵌合する構成となっている。
この結果、室内側カバー16の保持部17をインナパネル2の凸部11に凹凸嵌合するのみで、複数の線状部材Sを凸部11の隣接位置に一括して簡単に取付けることができることになり、組付け作業性は大幅に向上することになる。また、線状部材S配置固定的に設けられることになるので、線状部材Sが相互に干渉を起こすことはなく、設置スペースも不必要に大きくする必要もなく、最小限のスペースで設置できる。しかも、凹凸状部10に詰め物をした構成となるので、単に凹凸状に成形したインナパネル2よりも捩り剛性は大幅に向上させることができ、ピラーの細径化を図ることができる。加えて、インナパネル2の外観もきれいな仕上がりとなる。
係合部11aは、前記T字状をしたもののみでなく、保持部17と凹凸嵌合する形状であればどのようなものであってもよい。例えば、図4(A)に示すようにT字状の頭部を大きくしたもの、図4(B)に示すように凹部12a,12b側に形成したもの、図4(C)に示すように凹部12a,12bを円弧状に形成したものなどであってもよい。
ただし、このような形状のインナパネル2にすれば、インナパネル2自体が比較的複雑な形状を有するものとなるので、成形性が問題となるが、本実施形態では、超塑性金属材料を使用して形成し、成形の容易化を図っている。
一般に、超塑性金属は、小さな応力下でも伸び、複雑な形状であってもくびれを生じることなく成形できる特性を有しているが、特に、自動車のフロントピラーのように、三次元形状を有し、しかも高強度を必要とするものでは、この特性が有効に発揮されることになる。
具体的には、例えば、アルミニウム、チタン、鉄、マグネシウムの元素を主元素とする超塑性合金材料を使用することが好ましいが、より好ましくは、急冷凝固によって生ずる微細結晶粒を有するアルミニウム合金材料や、微細析出物が均一分散され且つ結晶粒を微細に制御したチタン、鉄系合金を挙げることができる。
凹凸状部10を有するインナパネル1を製造する方法は、まず、超塑性金属材料の変態温度もしくは再結晶化温度から300℃低い温度に加熱する。次に、加熱装置を備えた可動型による熱間成形するか、あるいは不活性ガスを使用してブロー成形により塑性加工する。これにより、超塑性金属材料は、結晶粒の配列が変化し、くびれを生じることなく伸び、塑性変形する。
この成形では、歪速度が10−5S−1〜10S−1の範囲になるようにする。つまり、少なくとも50%を超える伸びが得られるように、加熱温度および歪速度を設定することが好ましい。
<具体例>
例えば、図2に示すような断面形状のフロントピラー1を製造する場合には、アウタパネル3として、板厚が0.8mmで、引張り強度が270MPaの自動車用軟鋼鈑を用い、レインホースパネル4として、板厚が1.0mmで、引張り強度が590MPaの自動車用高強度鋼鈑を用いた。室内用カバー16は、曲げ弾性率が700MPaのポリプロピレン材を使用した。
例えば、図2に示すような断面形状のフロントピラー1を製造する場合には、アウタパネル3として、板厚が0.8mmで、引張り強度が270MPaの自動車用軟鋼鈑を用い、レインホースパネル4として、板厚が1.0mmで、引張り強度が590MPaの自動車用高強度鋼鈑を用いた。室内用カバー16は、曲げ弾性率が700MPaのポリプロピレン材を使用した。
インナパネル2は、超塑性合金材料として二相ステンレス合金を用い、加熱温度を750℃、流体の成形圧が約10MPa、歪速度が10−3S−1でブロー成形し凹凸状部10を有するものとした。板厚は2.0mmで、引張り強度が780MPaのものが得られた。
<比較例>
比較例として、図5に示すような断面形状を有するフロントピラーを成形した。なお図5において、前記図1〜4に示す部材と共通する部材には同一符号を付している。このフロントピラーは、インナパネル2及びアウタパネル3を閉断面構造とし、内部にレインフォース4を設けたものであるが、インナパネル2には凹凸状部10を形成していないものである。線状部材Sは、クリップ20を用いてインナパネル2の室内側に取付け、室内用カバー16で覆った。
比較例として、図5に示すような断面形状を有するフロントピラーを成形した。なお図5において、前記図1〜4に示す部材と共通する部材には同一符号を付している。このフロントピラーは、インナパネル2及びアウタパネル3を閉断面構造とし、内部にレインフォース4を設けたものであるが、インナパネル2には凹凸状部10を形成していないものである。線状部材Sは、クリップ20を用いてインナパネル2の室内側に取付け、室内用カバー16で覆った。
インナパネル2は、超塑性合金材料ではなく、板厚が1.2mmで、引張り強度が590MPaの自動車用鋼鈑を用い、アウタパネル3及びレインフォース4の材料と形状は、前述のものと同様とした。室内用カバー16の材料も同じであるが、形状は、線状部材Sと干渉しない形状とした。
具体例と比較例のねじり剛性を比較した。ただし、このねじり剛性は、フロントピラー自体のもので、ドレイン、ハーネス、アンテナ線が一体となった室内用樹脂カバーを取付けていない状態でのものである。本実施形態に係る具体例の方が比較例よりも約20%高い値を示した。また、フロントピラーの断面積を比較したところ、具体例は、比較例よりも10%以上小さくできることが判明した。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。例えば、上述した実施形態は、自動車のピラー例としてフロントピラーを用いたが、これのみでなく、センタピラーやリヤピラー等にも適用できる。
1…フロントピラー、
2…インナパネル
3…アウタパネル、
4…レインホースパネル、
2a,3a,4a…フランジ部、
10…凹凸状部、
11…凸部、
11a…係合部、
12…凹部、
17…保持部、
16…室内側カバー、
S…線状部材。
2…インナパネル
3…アウタパネル、
4…レインホースパネル、
2a,3a,4a…フランジ部、
10…凹凸状部、
11…凸部、
11a…係合部、
12…凹部、
17…保持部、
16…室内側カバー、
S…線状部材。
Claims (8)
- 室内側のインナパネルと室外側のアウタパネルとにより閉断面構造に形成され、内部にレインホースパネルが設けられた自動車のピラーであって、
前記インナパネルは、前記アウタパネルと接合されるフランジ部間に、長手方向に直交する断面形状が凹凸状でかつ長手方向に連続する凹凸状部が形成された超塑性金属材料により構成したことを特徴とする自動車のピラー。 - 前記凹凸状部の凹部は、内部に各種線状部材を収納したことを特徴とする請求項1に記載の自動車のピラー。
- 前記インナパネルは、前記凹凸状部と係合し当該インナパネルの室内側の面を覆う室内側カバーを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車のピラー。
- 前記室内側カバーは、前記各種線状部材が内部を挿通する保持部と一体的に形成された樹脂製である請求項3に記載の自動車のピラー。
- 前記インナパネルは、前記凹凸状部の凸部先端に係合部を形成し、前記室内側カバーの前記保持部に前記係合部が凹凸嵌合する構成としたことを特徴とする請求項4に記載の自動車のピラー。
- 前記超塑性金属材料は、アルミ、チタン、鉄、マグネシウムの元素を主元素とする超塑性合金材料である請求項1に記載の自動車のピラー。
- 室内側のインナパネルと室外側のアウタパネルとにより閉断面構造に形成され、内部にレインホースパネルが設けられた自動車のピラーの製造方法であって、
超塑性金属材料の変態温度もしくは再結晶化温度から300℃低い温度に加熱し、歪速度が10−5S−1〜10S−1の範囲で塑性加工することにより、前記アウタパネルと接合されるフランジ部間に、長手方向に直交する断面形状が凹凸状でかつ長手方向に連続する凹凸状部を有する前記インナパネルを形成することを特徴とする自動車のピラーの製造方法。 - 超塑性金属材料は、アルミ、チタン、鉄、マグネシウムの元素を主元素とする超塑性合金材料である請求項7に記載の自動車のピラーの製造方法。
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2005
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