本発明は、原動機の動力を駆動輪へ伝達する車両用遊星歯車式変速機の改良に関するものである。
車両用の自動変速機として、複数の遊星歯車装置及びそれらを構成する要素を相互に係合するための係合要素であるクラッチ及びブレーキ等を用いた遊星歯車式変速機が多用されている。例えば、特許文献1に記載された車両用遊星歯車式変速機がそれである。この車両用遊星歯車式変速機では、2組の前置遊星歯車装置から成る第1変速部と2組の後置遊星歯車装置から成る第2変速部とが同軸上に配置され、入力回転部材の回転を第1変速部からその入力回転部材の回転を減速して伝達する第1中間出力部材及び入力回転部材の回転を逆転して伝達する第2中間出力部材を介して第2変速部へ伝達させることにより9速の前進変速段が達成されている。
ところで、車両用遊星歯車式変速機の多段化に関して、切り換えられる変速比ステップ(連続する変速段の変速比の変化割合)が等比乃至はそれに近い態様で変化させられることが望まれるのはもちろんであるが、変速機の多段化に伴って遊星歯車装置の数や係合要素の数が増えると、変速機の大型化を招くという問題があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、各変速段におけるギヤ比のステップをバランスよく保ちながら多段化が実現されると共に、多段化に伴う大型化が抑制される車両用遊星歯車式変速機を提供することにある。
すなわち、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、車両用遊星歯車式変速機であって、(a) 入力回転部材の回転を減速して伝達する第1中間出力部材及び前記入力回転部材の回転を逆転して伝達する第2中間出力部材を有する第1変速部と、該第1変速部と同一軸心上に配置され、2組の遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、及びリングギヤの一部が互いに連結されることにより4つの回転要素が構成される第2変速部とを備え、(b) 前記4つの回転要素の回転速度を直線で表すことのできる共線図上において、それら4つの回転要素を一端から他端に向かって順番に第1回転要素、第2回転要素、第3回転要素、及び第4回転要素としたとき、前記第1中間出力部材と前記第4回転要素とを選択的に連結する第1クラッチ要素と、前記入力回転部材と前記第2回転要素とを選択的に連結する第2クラッチ要素と、前記第1中間出力部材と前記第1回転要素とを選択的に連結する第3クラッチ要素と、前記入力回転部材と前記第1回転要素とを選択的に連結する第4クラッチ要素と、前記第2中間出力部材と前記第1回転要素とを選択的に連結する第5クラッチ要素と、前記第1回転要素を選択的に非回転部材に連結する第1ブレーキ要素と、前記第2回転要素を選択的に非回転部材に連結する第2ブレーキ要素とを有すると共に、前記第3クラッチ要素、前記第4クラッチ要素、及び前記第5クラッチ要素は、前記第1変速部の径方向外周側において軸方向と平行に並べて配置され、前記第1ブレーキ要素及び前記第2ブレーキ要素は、該第1ブレーキ要素及び第2ブレーキ要素をそれぞれ作動させる一対の油圧アクチュエータの一部を構成するシリンダ部材が共用された態様で、前記第1変速部と前記第2変速部との間において軸方向と平行に隣接して配置されていることを特徴とするものである。
このようにすれば、前記第1変速部及び第2変速部が備えられることにより各変速段におけるギヤ比のステップをバランスよく保ちながら多段化が実現される車両用遊星歯車式変速機が提供される。また、第3クラッチ要素乃至第5クラッチ要素は、何れも第1回転要素を第1中間出力部材、第2中間出力部材、及び入力回転部材の回転が入力される第1変速部の回転部材にそれぞれ連結させるものであることから、それら第3クラッチ要素乃至第5クラッチ要素は第1変速部の径方向外周側に軸方向と平行に並べて配置されることが可能とされる。このように配置されることにより軸方向において第1変速部と第2変速部との間にブレーキ要素が配置される為の空間が作られるので、第1変速部、第2変速部、或いは各クラッチ要素等の径方向外周側にブレーキ要素が配置されることに比較して径方向寸法の増大を抑制することが可能となり車両用遊星歯車式変速機の多段化に伴う大型化が抑制される。そして、その空間に、第1ブレーキ要素及び第2ブレーキ要素がそれらをそれぞれ作動させる一対の油圧アクチュエータのシリンダ部材が共用された態様で隣接配置されることによりその空間が省かれるので、車両用遊星歯車式変速機の多段化に伴う大型化が一層抑制される。
ここで、請求項2にかかる発明では、前記一対の油圧アクチュエータの一部を構成するピストンをそれぞれ原位置に向かって付勢するリターンスプリングが更に共用されているものである。このようにすれば、第1変速部と第2変速部との間のブレーキ要素が配置される為の空間が一層省かれる。
また、請求項3にかかる発明では、前記シリンダ部材は、前記車両用遊星歯車式変速機に備えられるセンターサポートを兼ねているものである。このようにすれば、第1変速部と第2変速部との間のブレーキ要素が配置される為の空間が一層省かれる。
また、請求項4にかかる発明では、前記第1変速部は、シングルピニオン型の第1前置遊星歯車装置及びダブルピニオン型の第2前置遊星歯車装置から成り、該第1前置遊星歯車装置のキャリヤ及び該第2前置遊星歯車装置のサンギヤが常に非回転部材に連結され且つ該第1前置遊星歯車装置のサンギヤ及び該第2前置遊星歯車装置のキャリヤが前記入力回転部材に連結されることにより、該第2前置遊星歯車装置のリングギヤが前記第1中間出力部材として機能する一方、該第1前置遊星歯車装置のリングギヤが前記第2中間出力部材として機能するものである。このようにすれば、実用的な車両用遊星歯車式変速機が提供される。
また、請求項5にかかる発明では、前記第2変速部は、シングルピニオン型の第1後置遊星歯車装置及びダブルピニオン型の第2後置遊星歯車装置から成り、該第1後置遊星歯車装置のサンギヤによって前記第1回転要素が構成され、互いに連結された該第1後置遊星歯車装置のキャリヤ及び該第2後置遊星歯車装置のキャリヤによって前記第2回転要素が構成され、互いに連結された該第1後置遊星歯車装置のリングギヤ及び該第2後置遊星歯車装置のリングギヤによって前記第3回転要素が構成され、該第2後置遊星歯車装置のサンギヤによって前記第4回転要素が構成されるものである。このようにすれば、実用的な車両用遊星歯車式変速機が提供される。
また、請求項6にかかる発明では、前記第1後置遊星歯車装置のキャリヤと前記第2後置遊星歯車装置のキャリヤとは、及び該第1後置遊星歯車装置のリングギヤと該第2後置遊星歯車装置のリングギヤとはそれぞれ共通の部材で構成されると共に、該第1後置遊星歯車装置の遊星歯車が該第2後置遊星歯車装置の互いに噛み合う一対の遊星歯車のいずれか1つを兼ねている所謂ラビニヨ型の遊星歯車列である。このようにすれば、第1後置遊星歯車装置及び第2後置遊星歯車装置を構成する部材が削減できる。また、車両用遊星歯車式変速機の軸心方向の寸法が短縮される。
また、請求項7にかかる発明では、前記第1クラッチ要素及び第2ブレーキ要素を係合させることにより第1変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第1ブレーキ要素を係合させることにより第2変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第3クラッチ要素を係合させることにより第3変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第4クラッチ要素を係合させることにより第4変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第2クラッチ要素を係合させることにより第5変速段を成立させ、前記第2クラッチ要素及び第4クラッチ要素を係合させることにより第6変速段を成立させ、前記第2クラッチ要素及び第3クラッチ要素を係合させることにより第7変速段を成立させ、前記第2クラッチ要素及び第1ブレーキ要素を係合させることにより第8変速段を成立させ、前記第2クラッチ要素及び第5クラッチ要素を係合させることにより第9変速段を成立させるものである。このようにすれば、前進9段変速を実現できることに加え、第8変速段と第9変速段とのステップが比較的小さくクロレシオスで好適な設定とすることができる。
また、請求項8にかかる発明では、前記第1クラッチ要素及び第2ブレーキ要素を係合させることにより第1変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第5クラッチ要素を係合させることにより第2変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第1ブレーキ要素を係合させることにより第3変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第3クラッチ要素を係合させることにより第4変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第4クラッチ要素を係合させることにより第5変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第2クラッチ要素を係合させることにより第6変速段を成立させ、前記第2クラッチ要素及び第4クラッチ要素を係合させることにより第7変速段を成立させ、前記第2クラッチ要素及び第3クラッチ要素を係合させることにより第8変速段を成立させ、前記第2クラッチ要素及び第1ブレーキ要素を係合させることにより第9変速段を成立させ、前記第2クラッチ要素及び第5クラッチ要素を係合させることにより第10変速段を成立させるものである。このようにすれば、前進10段変速を実現できることに加え、第9変速段と第10変速段とのステップが比較的小さくクロスレシオで好適な設定とすることができる。
また、請求項9にかかる発明では、前記第5クラッチ要素及び第2ブレーキ要素を係合させることにより第1変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第2ブレーキ要素を係合させることにより第2変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第5クラッチ要素を係合させることにより第3変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第1ブレーキ要素を係合させることにより第4変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第3クラッチ要素を係合させることにより第5変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第4クラッチ要素を係合させることにより第6変速段を成立させ、前記第1クラッチ要素及び第2クラッチ要素を係合させることにより第7変速段を成立させ、前記第2クラッチ要素及び第4クラッチ要素を係合させることにより第8変速段を成立させ、前記第2クラッチ要素及び第3クラッチ要素を係合させることにより第9変速段を成立させ、前記第2クラッチ要素及び第1ブレーキ要素を係合させることにより第10変速段を成立させ、前記第2クラッチ要素及び第5クラッチ要素を係合させることにより第11変速段を成立させるものである。このようにすれば、前進11段変速を実現できることに加え、第8変速段から第11変速段の各変速段のステップが比較的小さくクロスレシオな設定とすることができる。さらに、第1変速段を非常にローギヤな設定とすることができる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、車両用自動変速機として好適に用いられる車両用遊星歯車式変速機(以下、単に変速機と称する)10の構成を説明する骨子図である。この図1に示すように、本実施例の変速機10は、車体に取り付けられる非回転部材であるトランスミッションケース12内において共通の軸心C上に順次配設されたロックアップクラッチ14付きのトルクコンバータ16、そのトルクコンバータ16に連結された入力回転部材である入力軸18、第1前置遊星歯車装置20及び第2前置遊星歯車装置22を主体として構成される第1変速部24、第1後置遊星歯車装置26及び第2後置遊星歯車装置28を主体として構成される第2変速部30、第1変速部24の出力を第2変速部30へ伝達するための第1中間出力部材32及び第2中間出力部材34、及び出力回転部材である出力軸36を同心に備えて構成されている。
変速機10は、車両において縦置きされるFR用自動変速機や、横置きされるFF用自動変速機等として好適に用いられるものであり、原動機であるエンジン8と図示しない駆動輪との間に配設され、そのエンジン8の出力(回転)を変速して駆動輪に伝達する。トルクコンバータ16は、エンジン8のクランク軸9に作動的に連結され、エンジン8から出力される動力を入力軸18へ出力する。すなわち、トルクコンバータ16の出力側回転部材であるタービン軸に連結される入力軸18は、エンジン8により回転駆動されることになり、トルクコンバータ16のタービン軸も入力軸18と同様に入力回転部材に相当する。また、出力軸36は、例えば図示しない差動歯車装置等を介して左右一対の駆動輪を回転駆動する。なお、変速機10は、その軸心Cに対して略対称的に構成されているため、図1に示す骨子図においてはその下側が省略されている。以下の説明に用いる骨子図においても同様である。
第1変速部24を構成している第1前置遊星歯車装置20は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS1、遊星歯車P1、その遊星歯車P1を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA1、及び遊星歯車P1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えて構成されている。また、第2前置遊星歯車装置22は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS2、互いに噛み合う複数対の遊星歯車P2、それら遊星歯車P2を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA2、及び遊星歯車P2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えて構成されている。
第1変速部24において、第1前置遊星歯車装置20のキャリヤCA1と第2前置遊星歯車装置22のサンギヤS2とが相互に連結されると共にトランスミッションケース12に一体的に連結されて、そのトランスミッションケース12に対する相対回転が禁止されている。また、第1前置遊星歯車装置20のサンギヤS1と第2前置遊星歯車装置22のキャリヤCA2とが相互に連結されると共に入力軸18に一体的に連結されている。また、第2前置遊星歯車装置22のリングギヤR2が第1中間出力部材32に一体的に連結されている。また、第1前置遊星歯車装置20のリングギヤR1が第2中間出力部材34に一体的に連結されている。第1変速部24は、このような構成により、第1中間出力部材32を介して入力軸18の回転を減速して第2変速部30へ伝達すると共に、第2中間出力部材34を介して入力軸18の回転を逆転して第2変速部30へ伝達する。
第2変速部30を構成している第1後置遊星歯車装置26は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS3、遊星歯車P3、その遊星歯車P3を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA3、及び遊星歯車P3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えて構成されている。また、第2後置遊星歯車装置28は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS4、互いに噛み合う複数対の遊星歯車P4、それら遊星歯車P4を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA4、及び遊星歯車P4を介してサンギヤS4と噛み合うリングギヤR4を備えて構成されている。
第2変速部30において、第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3が第1回転要素RE1を構成している。また、第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4が互いに連結されて第2回転要素RE2を構成している。また、第1後置遊星歯車装置26のリングギヤR3及び第2後置遊星歯車装置28のリングギヤR4が互いに連結されてが第3回転要素RE3を構成している。また、第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4が第4回転要素RE4を構成している。
そして、変速機10は、第1中間出力部材32と第4回転要素RE4とを選択的に連結する第1クラッチ要素である第1クラッチC1と、入力軸18と第2回転要素RE2とを選択的に連結する第2クラッチ要素である第2クラッチC2と、第1中間出力部材32と第1回転要素RE1とを選択的に連結する第3クラッチ要素である第3クラッチC3と、入力軸18と第1回転要素RE1とを選択的に連結する第4クラッチ要素である第4クラッチC4と、第2中間出力部材34と第1回転要素RE1とを選択的に連結する第5クラッチ要素である第5クラッチC5と、第1回転要素RE1を選択的にトランスミッションケース12に連結する第1ブレーキ要素である第1ブレーキB1と、第2回転要素RE2を選択的にトランスミッションケース12に連結する第2ブレーキ要素である第2ブレーキB2とを備えている。
第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、第5クラッチC5、第1ブレーキB1、及び第2ブレーキB2は、例えば、従来の車両用自動変速機において多用されている油圧式摩擦係合装置であり、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本乃至は2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキ等により構成され、それらが介挿されている両側の部材を選択的に連結するための装置である。
以上のように構成された変速機10では、例えば予め定められた変速ギヤ段とそれらを成立させるための油圧式摩擦係合装置の作動との関係を示す図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、第5クラッチC5、第1ブレーキB1、及び第2ブレーキB2のうちから選択された2つの油圧式摩擦係合装置が同時に係合作動させられることにより、前進ギヤ段(前進変速段)である第1速ギヤ段(第1変速段)「1st」乃至第11速ギヤ段(第11変速段)「11th」の何れか、或いは後進ギヤ段(後進変速段)である後進第1速ギヤ段(第1後進変速段)「R1」又は後進第2速ギヤ段(第2後進変速段)「R2」が選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。尚、図2の係合作動表において、「○」は係合を表しており、空欄は解放を表している。
すなわち、図2に示すように、第5クラッチC5及び第2ブレーキB2の係合により、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第2中間出力部材34との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である互いに連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γ1が最大値、例えば「5.298」程度である第1速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である互いに連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値、例えば「3.841」程度である第2速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第5クラッチC5の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第2中間出力部材34との間が連結されることにより、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値、例えば「3.233」程度である第3速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値、例えば「2.280」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第3クラッチC3の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第1中間出力部材32との間が連結されることにより、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.714」程度である第5速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第4クラッチC4の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と入力軸18との間が連結されることにより、変速比γ6が第5速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.456」程度である第6速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されることにより、変速比γ7が第6速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.228」程度である第7速ギヤ段が成立させられる。
また、第2クラッチC2及び第4クラッチC4の係合により、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と入力軸18との間が連結されることにより、変速比γ8が第7速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.000」程度である第8速ギヤ段が成立させられる。
また、第2クラッチC2及び第3クラッチC3の係合により、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第1中間出力部材32との間が連結されることにより、変速比γ9が第8速ギヤ段よりも小さい値、例えば「0.869」程度である第9速ギヤ段が成立させられる。
また、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γ10が第9速ギヤ段よりも小さい値、例えば「0.734」程度である第10速ギヤ段が成立させられる。
また、第2クラッチC2及び第5クラッチC5の係合により、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第2中間出力部材34との間が連結されることにより、変速比γ11が最小値、例えば「0.645」程度である第11速ギヤ段が成立させられる。
また、第3クラッチC3及び第2ブレーキB2の係合により、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γR1が「10.194」程度である後進第1速ギヤ段「R1」が成立させられる。
また、第4クラッチC4及び第2ブレーキB2の係合により、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と入力軸18との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γR2が後進第1速ギヤ段よりも小さい値、例えば「5.375」程度である後進第2速ギヤ段「R2」が成立させられる。
第1前置遊星歯車装置20のギヤ比ρ1、第2前置遊星歯車装置22のギヤ比ρ2、第1後置遊星歯車装置26のギヤ比ρ3、及び第2後置遊星歯車装置28のギヤ比ρ4は、以上のような変速比が得られるように設計されている。
図2の係合作動表に従い変速段を成立させる変速機10では、第1速ギヤ段の変速比γ1と第3速ギヤ段の変速比γ3との比(=γ1/γ3)であるステップが「1.639」とされ、第2速ギヤ段の変速比γ2と第4速ギヤ段の変速比γ4との比(=γ2/γ4)が「1.685」とされ、第3速ギヤ段の変速比γ3と第4速ギヤ段の変速比γ4との比(=γ3/γ4)が「1.418」とされ、第4速ギヤ段の変速比γ4と第5速ギヤ段の変速比γ5との比(=γ4/γ5)が「1.330」とされ、第5速ギヤ段の変速比γ5と第6速ギヤ段の変速比γ6との比(=γ5/γ6)が「1.177」とされ、第6速ギヤ段の変速比γ6と第7速ギヤ段の変速比γ7との比(=γ6/γ7)が「1.185」とされ、第7速ギヤ段の変速比γ7と第8速ギヤ段の変速比γ8との比(=γ7/γ8)が「1.228」とされ、第8速ギヤ段の変速比γ8と第9速ギヤ段の変速比γ9との比(=γ8/γ9)が「1.151」とされ、第9速ギヤ段の変速比γ9と第10速ギヤ段の変速比γ10との比(=γ9/γ10)が「1.184」とされ、第10速ギヤ段の変速比γ10と第11速ギヤ段の変速比γ11との比(=γ10/γ11)が「1.139」とされ、各変速比γが略等比的に変化させられている。また、第1速ギヤ段の変速比γ1と第11速ギヤ段の変速比γ11との比(=γ1/γ11)であるギヤ比幅が比較的大きな値である「12.688」とされている。
図3は、変速機10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことのできる共線図を示している。この図3の共線図は、横軸方向において各遊星歯車装置20、22、26、28のギヤ比ρの関係を示し、縦軸方向において相対的回転速度を示す二次元座標であり、4本の横線のうち最も下側の横線(破線)X1が第1変速部24の出力である第2中間出力部材34の回転速度を示し、その上側の横線XZが回転速度零を示し、その更に上側の横線(破線)X2が第1変速部24の出力である第1中間出力部材32の回転速度を示し、最も上側の横線X3が回転速度「1.0」すなわち入力軸18の回転速度を示している。
図3の共線図の左側部分に示す第1変速部24の4本の縦線Y1乃至Y4は、左から順に、Y1が第1前置遊星歯車装置20のリングギヤR1を、Y2が相互に連結された第1前置遊星歯車装置20のキャリヤCA1及び第2前置遊星歯車装置22のサンギヤS2を、Y3が第2前置遊星歯車装置22のリングギヤR2を、Y4が相互に連結された第1前置遊星歯車装置20のサンギヤS1及び第2前置遊星歯車装置22のキャリヤCA2をそれぞれ表し、それ等の間隔は第1前置遊星歯車装置20のギヤ比ρ1及び第2前置遊星歯車装置22のギヤ比ρ2に応じて定められている。
また、同様に、図3の共線図の右側部分に示す第2変速部30の4本の縦線Y5乃至Y8は、左から順に、Y5が第1回転要素RE1に対応する第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3を、Y6が第2回転要素RE2に対応する相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4を、Y7が第3回転要素RE3に対応する相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のリングギヤR3及び第2後置遊星歯車装置28のリングギヤR4を、Y8が第4回転要素RE4に対応する第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4をそれぞれ表し、それ等の間隔は、前記第1後置遊星歯車装置26のギヤ比ρ3及び第2後置遊星歯車装置28のギヤ比ρ4に応じて定められている。
図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機10は、第1変速部24において、4つの回転要素のうちの縦線Y2に対応する回転要素(CA1、S2)が常にトランスミッションケース12に連結(固定)され且つ4つの回転要素のうちの縦線Y4に対応する回転要素(S1、CA2)が入力軸18に連結されることにより、4つの回転要素のうちの縦線Y3に対応する回転要素(R2)が第1中間出力部材32と一体的に設けられて第1中間出力部材として機能する一方、4つの回転要素のうちの縦線Y1に対応する回転要素(R1)が第2中間出力部材34と一体的に設けられて第2中間出力部材として機能する。
また、第2変速部30において、第1回転要素RE1(S3)が第3クラッチC3を介して第1中間出力部材32に選択的に連結され、第4クラッチC4を介して入力軸18に選択的に連結され、第5クラッチC5を介して第2中間出力部材34に選択的に連結されると共に、第1ブレーキB1を介してトランスミッションケース12に選択的に連結(固定)される。また、第2回転要素RE2(CA3、CA4)が第2クラッチC2を介して入力軸18に選択的に連結されると共に、第2ブレーキB2を介してトランスミッションケース12に選択的に固定される。また、第3回転要素RE3(R3、R4)が出力軸36と一体的に設けられて出力回転部材として機能する。また、第4回転要素RE4(S4)が第1クラッチC1を介して第1中間出力部材32に選択的に連結される。
図3の共線図において、第1速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第5クラッチC5の係合により第2中間出力部材34に連結されてその回転速度とされ、第2回転要素RE2は第2ブレーキB2の係合によりトランスミッションケース12に連結されて回転速度「0」とされるため、縦線Y5及び横線X1の交点と縦線Y6及び横線XZの交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(1st)により、出力軸36の回転速度が示される。
第2速ギヤ段では、第2回転要素RE2は第2ブレーキB2の係合によりトランスミッションケース12に連結されて回転速度「0」とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y6及び横線XZの交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(2nd)により、出力軸36の回転速度が示される。
第3速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第5クラッチC5の係合により第2中間出力部材34に連結されてその回転速度とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線X5及び横線X1の交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(3rd)により、出力軸36の回転速度が示される。
第4速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第1ブレーキB1の係合によりトランスミッションケース12に連結されて回転速度「0」とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y5及び横線XZの交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(4th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第5速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第3クラッチC3の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、横線X2が縦線Y7と交差する点(5th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第6速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第4クラッチC4の係合により入力軸18に連結されて回転速度「1」とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y5及び横線X3の交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(6th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第7速ギヤ段では、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸18に連結されて回転速度「1」とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y6及び横線X3の交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(7th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第8速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第4クラッチC4の係合により入力軸18に連結されて回転速度「1」とされ、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸18に連結されて回転速度「1」とされるため、横線X3が縦線Y7と交差する点(8th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第9速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第3クラッチC3の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされ、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸18に連結されて回転速度「1」とされるため、縦線Y5及び横線X2の交点と縦線Y6及び横線X3の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(9th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第10速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第1ブレーキB1の係合によりトランスミッションケース12に連結されて回転速度「0」とされ、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸18に連結されて回転速度「1」とされるため、縦線Y5及び横線XZの交点と縦線Y6及び横線X3の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(9th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第11速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第5クラッチC5の係合により第2中間出力部材34に連結されてその回転速度とされ、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸18に連結されて回転速度「1」とされるため、縦線Y5及び横線X1の交点と縦線Y6及び横線X3の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(11th)により、出力軸36の回転速度が示される。
後進第1速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第3クラッチC3の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされ、第2回転要素RE2は第2ブレーキB2の係合によりトランスミッションケース12に連結されて回転速度「0」とされるため、縦線Y5及び横線X2の交点と縦線Y6及び横線XZの交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(Rev1)により、出力軸36の回転速度が示される。
後進第2速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第4クラッチC4の係合により入力軸18に連結されて回転速度「1」とされ、第2回転要素RE2は第2ブレーキB2の係合によりトランスミッションケース12に連結されて回転速度「0」とされるため、縦線Y5及び横線X3の交点と縦線Y6及び横線XZの交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(Rev2)により、出力軸36の回転速度が示される。
ここで、第3クラッチC3、第4クラッチC4、第5クラッチC5、第1ブレーキB1、及び第2ブレーキB2の配置について以下に説明する。
前述したように変速機10において、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5は、何れも第1回転要素RE1を第1変速部24の回転部材(回転要素)に、すなわち第1中間出力部材32(R2)、入力軸18に連結される回転部材(S1、CA2)、及び第2中間出力部材34(R1)にそれぞれ選択的に連結させる油圧式摩擦係合装置である。よって、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5は、第1変速部24の径方向外周側に軸心C方向と平行に並べて配置させられ得る。図1の骨子図は、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5がそのように配置されていることを示している。
また、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5が図1に示すように配置されることにより、軸心C方向において第1変速部24と第2変速部30との間に第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2が配置される為の空間が作られる。よって、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2は、この第1変速部24と第2変速部30との間の空間において軸心C方向と平行に隣接して配置させられ得る。図1の骨子図は、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2がそのように配置されていることを示している。これにより、第1変速部24、第2変速部30、或いは各クラッチ要素C1乃至C5の径方向外周側にそれら第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2が配置されることに比較して、径方向寸法の増大が抑制される。
そして、このように第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2を隣接して配置させるとき、第1変速部24と第2変速部30との間の空間を節約する為に、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2をそれぞれ作動させる一対の油圧アクチュエータの一部を構成するシリンダ部材が共用された態様で隣接配置させる。このとき、第1変速部24と第2変速部30との間の空間を一層節約する為に、一対の油圧アクチュエータの一部を構成するピストンをそれぞれ原位置に向かって付勢するリターンスプリングが更に共用された態様で隣接配置させてもよい。
図4は、第1変速部24と第2変速部30との間の空間に隣接配置された第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の一例を示す図である。図4において、第1ブレーキB1を作動させる第1ブレーキ油圧アクチュエータ50は、第1ブレーキピストン52と共用シリンダ部材54と共用リターンスプリング56と油室58とを主体として構成されており、油室58に係合油圧が供給されることにより矢印Aに示す方向に第1ブレーキピストン52が移動させられて第1ブレーキB1を係合させる。また、第2ブレーキB2を作動させる第2ブレーキ油圧アクチュエータ60は、第2ブレーキピストン62と共用シリンダ部材54と共用リターンスプリング56と油室64とを主体として構成されており、油室64に係合油圧が供給されることにより矢印Bに示す方向に第2ブレーキピストン62が移動させられて第2ブレーキB2を係合させる。
図4からも明らかなように、第1ブレーキ油圧アクチュエータ50と第2ブレーキ油圧アクチュエータ60とは、シリンダ部材及びリターンスプリングにそれぞれ共通の共用シリンダ部材54及び共用リターンスプリング56が用いられている。
上述のように、本実施例によれば、入力軸18の回転を減速して伝達する第1中間出力部材32及び入力軸18の回転を逆転して伝達する第2中間出力部材34を有する第1変速部24と、第1変速部24と同一軸心上に同心に配置され、第1後置遊星歯車装置26と第2後置遊星歯車装置28との2組の遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、及びリングギヤの一部が互いに連結されることにより4つの回転要素を構成する第2変速部30とを備え、4つの回転要素の回転速度を直線で表すことのできる共線図上において、それら4つの回転要素を一端から他端に向かって順番に第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、第3回転要素RE3、及び第4回転要素RE4としたとき、第1中間出力部材32と第4回転要素RE4とを選択的に連結する第1クラッチC1と、入力軸18と第2回転要素RE2とを選択的に連結する第2クラッチC2と、第1中間出力部材32と第1回転要素RE1とを選択的に連結する第3クラッチC3と、入力軸18と第1回転要素RE1とを選択的に連結する第4クラッチC4と、第2中間出力部材34と第1回転要素RE1とを選択的に連結する第5クラッチC5と、第1回転要素RE1を選択的にトランスミッションケース12に連結する第1ブレーキB1と、第2回転要素RE2を選択的にトランスミッションケース12に連結する第2ブレーキB2とを有することから、各変速段におけるギヤ比のステップをバランスよく保ちながら多段化が実現される変速機10が提供される。
また、本実施例によれば、第3クラッチC3、第4クラッチC4、及び第5クラッチC5は、第1変速部24の径方向外周側において軸心C方向と平行に並べて配置されるので、軸心C方向において第1変速部24と第2変速部30との間に第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2が配置される為の空間が作られ、その空間において軸心C方向と平行に第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2が隣接して配置されることにより第1変速部24、第2変速部30、或いは各クラッチ要素C1乃至C5の径方向外周側にそれら第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2が配置されることに比較して、径方向寸法の増大が抑制される。
また、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2は、第1ブレーキ油圧アクチュエータ50と第2ブレーキ油圧アクチュエータ60とをそれぞれ構成するシリンダ部材に共通の共用シリンダ部材54が用いられた態様で、その第1変速部24と第2変速部30との間の空間に軸心C方向と平行に隣接して配置されるので、その空間が省かれて変速機10の多段化に伴う大型化が一層抑制される。
また、本実施例によれば、第1ブレーキ油圧アクチュエータ50と第2ブレーキ油圧アクチュエータ60とをそれぞれ構成するリターンスプリングに共通の共用リターンスプリング56が用いられた態様で、その第1変速部24と第2変速部30との間の空間に軸心C方向と平行に隣接して配置されるので、第1変速部24と第2変速部30との間の第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2が配置される為の空間が一層省かれる。
また、本実施例によれば、第5クラッチC5及び第2ブレーキB2を係合させることにより第1速ギヤ段を成立させ、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2を係合させることにより第2速ギヤ段を成立させ、第1クラッチC1及び第5クラッチC5を係合させることにより第3速ギヤ段を成立させ、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1を係合させることにより第4速ギヤ段を成立させ、第1クラッチC1及び第3クラッチC3を係合させることにより第5速ギヤ段を成立させ、第1クラッチC1及び第4クラッチC4を係合させることにより第6速ギヤ段を成立させ、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を係合させることにより第7速ギヤ段を成立させ、第2クラッチC2及び第4クラッチC4を係合させることにより第8速ギヤ段を成立させ、第2クラッチC2及び第3クラッチC3を係合させることにより第9速ギヤ段を成立させ、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1を係合させることにより第10速ギヤ段を成立させ、第2クラッチC2及び第5クラッチC5を係合させることにより第11速ギヤ段を成立させるので、前進11段変速を実現できる。
また、本実施例によれば、前進11速、後進2速の変速機を成立させることができることに加え、各変速段のステップが比較的クロスレシオな変速機10を得ることができる。
更に、本実施例では、第1速ギヤ段と第3速ギヤ段との間のステップ及び第2速ギヤ段と第4速ギヤ段との間のステップをともにバランスよく設定できることから、これらの飛変速を状況に応じて使い分けることができる。例えば、動力性能が要求されるスポーツモード時では、第1速ギヤ段から第3速ギヤ段への飛変速を使用し、クリープ特性を抑えたい時などは第2速ギヤ段から第4速ギヤ段への飛変速を使用するなどの選択が可能となる。このような場合には、合計10速のギヤ段として用いられることになる。
また、第1変速部24は、シングルピニオン型の第1前置遊星歯車装置20及びダブルピニオン型の第2前置遊星歯車装置22から成り、第1前置遊星歯車装置20のキャリヤCA1及び第2前置遊星歯車装置22のサンギヤS2が常にトランスミッションケース12に連結されると共に、第1前置遊星歯車装置20のサンギヤS1及び第2前置遊星歯車装置22のキャリヤCA2が入力軸18に連結されることにより、第2前置遊星歯車装置22のリングギヤR2が第1中間出力部材32として機能する一方、第1前置遊星歯車装置20のリングギヤR1が第2中間出力部材34として機能するので、実用的な変速機10が提供される。
また、第2変速部30は、シングルピニオン型の第1後置遊星歯車装置26及びダブルピニオン型の第2後置遊星歯車装置28から成り、第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3によって第1回転要素RE1が構成され、互いに連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4によって第2回転要素RE2が構成され、互いに連結された第1後置遊星歯車装置26のリングギヤR3及び第2後置遊星歯車装置28のリングギヤR4によって第3回転要素RE3が構成され、第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4によって第4回転要素RE4が構成されるので、実用的な変速機10が提供される。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
前述の実施例において、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2を隣接して配置させるとき、第1変速部24と第2変速部30との間の空間を節約する為に、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2をそれぞれ作動させる油圧アクチュエータの一部を構成するシリンダ部材が共用された態様で隣接配置させた。このとき、第1変速部24と第2変速部30との間の空間を一層節約する為に、共用されるシリンダ部材が変速機10に備えられるセンターサポートを兼ねた態様で隣接配置させてもよい。
図5は、第1変速部24と第2変速部30との間の空間に隣接配置された第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の一例を示す図であって、図4に相当する図である。図5において、第1ブレーキB1を作動させる第1ブレーキ油圧アクチュエータ70は、第1ブレーキピストン72と共用シリンダ部材74とリターンスプリング76と油室78とを主体として構成されており、油室78に係合油圧が供給されることにより矢印Aに示す方向に第1ブレーキピストン72が移動させられて第1ブレーキB1を係合させる。また、第2ブレーキB2を作動させる第2ブレーキ油圧アクチュエータ80は、第2ブレーキピストン82と共用シリンダ部材74とリターンスプリング84と油室86とを主体として構成されており、油室86に係合油圧が供給されることにより矢印Bに示す方向に第2ブレーキピストン82が移動させられて第2ブレーキB2を係合させる。
図5からも明らかなように、第1ブレーキ油圧アクチュエータ70と第2ブレーキ油圧アクチュエータ80とは、シリンダ部材に共通の共用シリンダ部材74が用いられていると共に、その共用シリンダ部材74は変速機10のセンターサポートを兼ねている。
上述のように、本実施例によれば、第1ブレーキ油圧アクチュエータ50と第2ブレーキ油圧アクチュエータ60とのリターンスプリングが共用されないことを除けば、前述の実施例と同様の効果が得られる。加えて、共用シリンダ部材74は、変速機10に備えられるセンターサポートを兼ねているので、第1変速部24と第2変速部30との間の第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2が配置される為の空間が一層省かれる。
前述の実施例の変速機10では、第1速ギヤ段と第3速ギヤ段との間のステップ及び第2速ギヤ段と第4速ギヤ段との間のステップをともにバランスよく設定できることから、これらの飛変速を状況に応じて使い分けることができ、例えば動力性能が要求されるスポーツモード時では、第1速ギヤ段から第3速ギヤ段への飛変速を使用し、クリープ特性や発進時の飛び出し感を抑えたい時などは第2速ギヤ段から第4速ギヤ段への飛変速を使用するなどの選択が可能となる。
つまり、変速機10においては、第1速ギヤ段乃至第11速ギヤ段のうち第2速ギヤ段を用いない第1ギヤ比列と、第1速ギヤ段乃至第11速ギヤ段のうち第1速ギヤ段と第3速ギヤ段とを用いない第2ギヤ比列とが選択可能となる。このようなギヤ比列を選択的に切り換える変速機10の変速制御について以下に説明する。
図6は、本実施例の変速機10を制御するための電子制御装置90に入力される信号及びその電子制御装置90から出力される信号を例示している。この電子制御装置90は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8の出力制御や変速機10の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
電子制御装置90には、図示しない各センサやスイッチから、エンジン水温を示す信号、シフト操作装置92(図7参照)におけるシフトレバー94のシフトポジションPSHを表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、エアコンの作動を示すエアコン信号、出力軸36の回転速度に対応する車速Vを表す信号、変速機10の作動油温を示すAT油温信号、サイドブレーキ操作を示す信号、フットブレーキ操作を示す信号、触媒温度を示す触媒温度信号、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを示す信号、カム角信号、スノーモード設定を示すスノーモード設定信号SSNO、車両の前後加速度を示す車両加速度信号、スポーツモード設定を示すスポーツモード設定信号SSPO、ノーマルモード設定を示すノーマルモード設定信号SNOR等がそれぞれ供給されるようになっている。
また、電子制御装置90からは、図示しない電子スロットル弁の開度を操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、エンジン8の点火時期を指令する点火信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、変速機10に備えられた油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するための電磁弁を作動させるATソレノイド指令信号、電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等がそれぞれ出力されるようになっている。
図7は、複数種類のシフトポジションを人為的操作により切り換えるシフト操作装置92の一例を示す図である。このシフト操作装置92は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフトレバー94を備えている。そのシフトレバー94は、例えば何れの油圧式摩擦係合装置も係合されないような変速機10内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ変速機10の出力軸36をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とする中立ポジション「N(ニュートラル)」、例えば図10や図11に示す予め記憶された関係すなわち変速線図に基づいて変速機10の自動変速が実行される制御様式である自動変速モードで第1速ギヤ段乃至第11速ギヤ段の範囲で自動変速される前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または変速機10の手動変速が実行される制御様式である手動変速モードを選択する前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
例えば、シフトレバー94の各シフトポジションへの手動操作に連動してそのシフトレバー94に機械的に連結された油圧制御回路100内のマニュアル弁が切り換えられて、図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」等が成立するように油圧制御回路100が機械的に切り換えられる。また、「D」または「M」ポジションにおける図2の係合作動表に示す1st乃至11thの各変速段は、油圧制御回路100内の電磁弁が電気的に切り換えられることにより成立させられる。
上記「M」ポジションは、例えば車両の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両の幅方向に隣接して設けられており、シフトレバー94が「M」ポジションへ操作されることにより、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかがシフトレバー94の操作に応じて変更される。具体的には、この「M」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「+」、およびダウンシフト位置「−」が設けられており、シフトレバー94がそれ等のアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ操作されると、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかが選択される。また、シフトレバー94はスプリング等の付勢手段により上記アップシフト位置「+」およびダウンシフト位置「−」から、「M」ポジションへ自動的に戻されるようになっている。
例えば、「M」ポジションにおいて選択される「D」レンジ乃至「L」レンジの各変速レンジは、変速機10の変速可能なギヤ段の範囲における高速側(変速比が小さくなる側)のギヤ段が異なる複数の変速レンジを切り換えることができるものであり、異なる変速レンジである「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかが電気的に成立させられる。例えば「D」レンジでは第1速ギヤ段乃至第11速ギヤ段の範囲で自動変速され、「10」レンジでは第1速ギヤ段乃至第10速ギヤ段の範囲で自動変速される。その他の各変速レンジは同様にそのレンジの数字に相当するギヤ段の範囲で自動変速される。
また、シフト操作装置92にはシフトレバー94の各操作位置(シフトポジション)を検出するためシフトポジションセンサ96が備えられており、そのシフトレバー94のシフトポジションPSHを表す信号や「M」ポジションにおける操作回数等を電子制御装置90へ出力する。
また、このシフト操作装置92には、動力性能が要求されるスポーツ走行に適した第1ギヤ比列を用いて自動変速される制御様式で走行する所謂スポーツモードと、雪道等の低μ路走行に適した第2ギヤ比列を用いて自動変速される制御様式で走行する所謂スノーモードとを切り換える為のギヤ比列選択装置としてのモード選択スイッチ98がユーザにより手動操作可能に設けられている。図8は、そのモード選択スイッチ98の一例を示した拡大図である。このモード選択スイッチ98は、シーソー型スイッチであって、ユーザが所望する変速モードでの車両走行を選択可能とするものであり、スポーツモードに対応する”SPORT”と表示された指令釦、或いはスノーモードに対応する”SNOW”と表示された指令釦がユーザにより押されることで、スポーツモード或いはスノーモードが選択(設定)される。これにより、スポーツモードでは第1速ギヤ段が最低速ギヤ段とされるので、発進時の駆動力が大きく加速性能が向上し、或いはスノーモードでは第2速ギヤ段が最低速ギヤ段とされるので、発進時の駆動力が減少して飛び出し感が抑制されたり、クリープ力が抑制される。なお、モード選択スイッチ98には、図8に示すように”SPORT”と表示された指令釦および”SNOW”と表示された指令釦が何れも押されていない中立状態”N”が設けられており、通常の車両走行が実行される変速制御様式である所謂ノーマルモードが選択(設定)される。
図9は、電子制御装置90による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図9において、変速モード判定手段102は、モード選択スイッチ98により選択(設定)された変速モードを判定する。例えば、変速モード判定手段102は、モード選択スイッチ98により選択(設定)された変速モードを判定することにより、スノーモードが選択(設定)されているか否かを判定する。また、変速モード判定手段102は、モード選択スイッチ98により選択(設定)された変速モードを判定することにより、スポーツモードが選択(設定)されているか否かを判定する。また、本実施例における通常の車両走行時とは、この変速モード判定手段102によりスノーモードおよびスポーツモードの何れもがが選択(設定)されていないと判定されるときの車両走行時である。
低μ路判定手段104は、走行路面が低μ路であるか否かを、例えば前後輪の回転速度差や車輪加速度に基づいて駆動輪の空転を検出することにより判定する。例えば、低μ路判定手段104は、前後輪の回転速度差が予め実験的に求められた空転判定値を超えたことにより駆動輪の空転を検出し、走行路面が低μ路であると判定する。また、本実施例における通常の車両走行時とは、この低μ路判定手段104により走行路面が低μ路であると判定されないような走行路面、例えば乾燥した舗装路における車両走行時である。
所定エンジン回転速度判定手段106は、エンジン8のアイドリング時にエンジン回転速度NEが所定エンジン回転速度NE1以上であるか否かを判定する。この所定エンジン回転速度NE1は、エンジン回転速度NEが暖機後のアイドル回転速度に比較して暖機促進の為に上昇させられている所謂ファーストアイドルアップ状態であるか否かを検出するための予め定められた判定値であって例えば1200rpmに設定されている。つまり、ファーストアイドルアップ中に変速機10が第1速ギヤ段とされると、発進時の飛び出し感が大きくなったりクリープ力が大きくなったりするので、このファーストアイドルアップ中には第2ギヤ比列が用いられるようにするためである。
ギヤ比列選択手段108は、変速機10の変速に用いられるギヤ比列として第1ギヤ比列と第2ギヤ比列との何れかを選択する。例えば、ギヤ比列選択手段108は、前記変速モード判定手段102によりスノーモードが選択されていると判定された場合には、或いは変速モード判定手段102によりスポーツモードが選択されていないと判定された場合例えばノーマルモードが選択されていると判定された場合には、或いは前記低μ路判定手段104により走行路面が低μ路であると判定された場合には、或いは前記所定エンジン回転速度判定手段106によりエンジン8のアイドリング時にエンジン回転速度NEが所定エンジン回転速度NE1以上であると判定された場合には、第2ギヤ比列を選択する。反対に、ギヤ比列選択手段108は、変速モード判定手段102によりスノーモードが選択されていないと判定され、低μ路判定手段104により走行路面が低μ路でないと判定され、所定エンジン回転速度判定手段106によりエンジン8のアイドリング時にエンジン回転速度NEが所定エンジン回転速度NE1以上でないと判定され、変速モード判定手段102によりスポーツモードが選択されていると判定された場合には、第1ギヤ比列を選択する。
変速制御手段110は、シフトレバー94のシフトポジションPSHに基づいて変速機10の変速を実行するために変速機10の油圧式摩擦係合装置(クラッチC、ブレーキB)の係合状態を切り換えるための切換信号SPを油圧制御回路100に出力する。例えば、変速制御手段110はシフトポジションPSHが「D」ポジションである場合には、図10或いは図11に示すような運転者の駆動力要求量(例えばアクセル開度Accやスロットル弁開度θTHやそのアクセル開度Accから算出される目標出力トルクTOUT等)および車速Vを変数とする二次元座標において予め記憶された変速線図(変速マップ)から実際の駆動力要求量および車速Vに基づいて変速機10の変速すべきギヤ段を決定しすなわち現在のギヤ段から変速先のギヤ段への変速判断を実行し、その決定されたギヤ段となるように変速機10の油圧式摩擦係合装置(クラッチC、ブレーキB)の係合状態を切り換えるための切換信号SPを油圧制御回路100に出力する。
このとき、変速制御手段110は、前記ギヤ比列選択手段108によって選択されたギヤ比列を用いて変速を行う。また、変速制御手段110は、ギヤ比列選択手段108によって第1ギヤ比列が選択された場合にはその第1ギヤ比列用の変速線図である例えば図10の変速線図を読み込み、ギヤ比列選択手段108によって第2ギヤ比列が選択された場合にはその第2ギヤ比列用の変速線図である例えば図11の変速線図を読み込み、選択した変速線図に従って変速を行う。図10は第1ギヤ比列用に第2速ギヤ段が飛ばされる変速線図であり、図11は第2ギヤ比列用に第1速ギヤ段および第3速ギヤ段が飛ばされる変速線図である。なお、図10においては5←→6変速線より高車速側の変速線が省略されており、図11においては6←→7変速線より高車速側の変速線が省略されている。
図12は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわち変速機10の変速に用いられるギヤ比列を選択する制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
先ず、前記変速モード判定手段102に対応するステップ(以下、ステップを省略する)SA1において、モード選択スイッチ98により選択された変速モードが判定されることにより、スノーモードが選択されているか否かが判定される。
上記SA1の判断が否定される場合は前記低μ路判定手段104に対応するSA2において、走行路面が低μ路であるか否かが、例えば前後輪の回転速度差や車輪加速度に基づいて駆動輪の空転を検出することにより判定される。
上記SA2の判断が否定される場合は前記所定エンジン回転速度判定手段106に対応するSA3において、エンジン8のアイドリング時にエンジン回転速度NEが所定エンジン回転速度NE1以上であるか否かが判定される。
上記SA3の判断が否定される場合は前記変速モード判定手段102に対応するSA4において、モード選択スイッチ98により選択された変速モードが判定されることにより、スポーツモードが選択されているか否かが判定される。
上記SA4の判断が肯定される場合は前記ギヤ比列選択手段108に対応するSA5において、第1ギヤ比列が選択される。そして、前記変速制御手段110により第1ギヤ比列用の変速線図である例えば図10の変速線図が読み込まれ、その図10の変速線図に従って第1ギヤ比列を用いて変速が行われる。
前記SA1の判断が肯定されるか、前記SA2の判断が肯定されるか、前記SA3の判断が肯定されるか、或いは前記SA4の判断が否定される場合は前記ギヤ比列選択手段108に対応するSA6において、第2ギヤ比列が選択される。そして、前記変速制御手段110により第2ギヤ比列用の変速線図である例えば図11の変速線図が読み込まれ、その図11の変速線図に従って第2ギヤ比列を用いて変速が行われる。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例と同様の効果が得られることに加えて、ユーザが所望する変速モードや走行路面や車両状態に合わせて、第1ギヤ比列と第2ギヤ比列とが切り換えられて変速が行われるので、ドライバビリティが向上される。
前述の実施例では、走行路面が低μ路でなく且つエンジン回転速度NEが所定エンジン回転速度NE1以上でない場合でもモード選択スイッチ98によりノーマルモードが選択されているときには、スノーモードが選択されているときや走行路面が低μ路であるときと同様に第2ギヤ比列が選択されて第2ギヤ比列用の変速線図に従って変速が行われた。しかし、スノーモードが選択されず且つ走行路面が低μ路でないときであれば、より大きな駆動力が発生する第1速ギヤ段を用いたとしても運転者の駆動力要求量が小さければ例えばアクセル開度Accが小さければ違和感が発生し難い。そこで、スノーモードが選択されず且つ走行路面が低μ路でないときには、一律に第2ギヤ比列を選択するのではなく運転者の駆動力要求量に基づいて第1ギヤ比列と第2ギヤ比列とを切り換えて変速を行う。
前記ギヤ比列選択手段108は、前述の機能に換えて、前記変速モード判定手段102によりスノーモードが選択されていると判定された場合には、或いは前記低μ路判定手段104により走行路面が低μ路であると判定された場合には、第2ギヤ比列を選択する。また、ギヤ比列選択手段108は、変速モード判定手段102によりスノーモードが選択されていないと判定され、低μ路判定手段104により走行路面が低μ路でないと判定され、所定エンジン回転速度判定手段106によりエンジン8のアイドリング時にエンジン回転速度NEが所定エンジン回転速度NE1以上でないと判定され、変速モード判定手段102によりスポーツモードが選択されていると判定された場合には、第1ギヤ比列を選択する。
更に、ギヤ比列選択手段108は、変速モード判定手段102によりスノーモードが選択されていないと判定され且つ低μ路判定手段104により走行路面が低μ路でないと判定されたときに、前記所定エンジン回転速度判定手段106によりエンジン8のアイドリング時にエンジン回転速度NEが所定エンジン回転速度NE1以上であると判定された場合には、或いは変速モード判定手段102によりスポーツモードが選択されていないと判定された場合例えばノーマルモードが選択されていると判定された場合には、運転者の駆動力要求量に基づいて第1ギヤ比列と第2ギヤ比列とを切り換える。例えば、ギヤ比列選択手段108は、運転者の駆動力要求量が所定値より小さい場合には第2ギヤ比列を選択し、反対に所定値以上である場合には第1ギヤ比列を選択する。
前記変速制御手段110は、前述の機能に換えて、ギヤ比列選択手段108によって第1ギヤ比列が選択された場合にはその第1ギヤ比列用の変速線図である例えば図10の変速線図を読み込み、ギヤ比列選択手段108によって第2ギヤ比列が選択された場合にはその第2ギヤ比列用の変速線図である例えば図11の変速線図を読み込み、ギヤ比列選択手段108によって運転者の駆動力要求量に基づいて第1ギヤ比列と第2ギヤ比列とが切り換えられる場合にはその切り換え用の変速線図すなわち通常変速線図である例えば図13の変速線図を読み込み、選択した変速線図に従って変速を行う。
図13は運転者の駆動力要求量に応じて第1ギヤ比列と第2ギヤ比列とが切り換えられるときに合わせて変速が行われるための変速線図である。図13に示されるように、駆動力要求量が所定値より小さい場合には第2ギヤ比列用に第1速ギヤ段および第3速ギヤ段が飛ばされる変速線図とされ、駆動力要求量が所定値以上である場合には第1ギヤ比列用に第2速ギヤ段が飛ばされる変速線図とされている。なお、図13においては5←→6変速線より高車速側の変速線が省略されている。
図14は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわち変速機10の変速に用いられるギヤ比列を選択する制御作動を説明するフローチャートであって、前記図12の別の実施例であり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
先ず、前記変速モード判定手段102に対応するSB1において、モード選択スイッチ98により選択された変速モードが判定されることにより、スノーモードが選択されているか否かが判定される。
上記SB1の判断が否定される場合は前記低μ路判定手段104に対応するSB2において、走行路面が低μ路であるか否かが、例えば前後輪の回転速度差や車輪加速度に基づいて駆動輪の空転を検出することにより判定される。
上記SB2の判断が否定される場合は前記所定エンジン回転速度判定手段106に対応するSB3において、エンジン8のアイドリング時にエンジン回転速度NEが所定エンジン回転速度NE1以上であるか否かが判定される。
上記SB3の判断が否定される場合は前記変速モード判定手段102に対応するSB4において、モード選択スイッチ98により選択された変速モードが判定されることにより、スポーツモードが選択されているか否かが判定される。
上記SB4の判断が肯定される場合は前記ギヤ比列選択手段108に対応するSB5において、第1ギヤ比列が選択される。そして、前記変速制御手段110により第1ギヤ比列用の変速線図である例えば図10の変速線図が読み込まれ、その図10の変速線図に従って第1ギヤ比列を用いて変速が行われる。
前記SB3の判断が肯定されるか、或いは前記SB4の判断が否定される場合は前記ギヤ比列選択手段108に対応するSB6において、運転者の駆動力要求量に基づいて第1ギヤ比列と第2ギヤ比列とが切り換えられる。そして、前記変速制御手段110により通常変速線図である例えば図13の変速線図が読み込まれ、その図13の変速線図に従って選択されたギヤ比列を用いて変速が行われる。
前記SB1の判断が肯定されるか、前記SB2の判断が肯定される場合は前記ギヤ比列選択手段108に対応するSB7において、第2ギヤ比列が選択される。そして、前記変速制御手段110により第2ギヤ比列用の変速線図である例えば図11の変速線図が読み込まれ、その図11の変速線図に従って第2ギヤ比列を用いて変速が行われる。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例と同様の効果が得られることに加えて、ユーザが所望する変速モードや走行路面や車両状態に合わせて、第1ギヤ比列と第2ギヤ比列とが切り換えられて変速が行われるので、ドライバビリティが向上される。
図15は本発明の他の実施例における変速機120の構成を説明する骨子図である。この図15に示すように、本実施例の変速機120は、第2変速部122の構成が異なる点を除けば図1に示す変速機と同様の構成であり、図2の係合作動表や図3の共線図がそのまま適用され、前述した実施例と同様の効果が得られる。以下、変速機120に関して、変速機10と相違する部分について説明する。
第2変速部122は、第2変速部30を構成している第1後置遊星歯車装置26及び第2後置遊星歯車装置28がラビニヨ型の遊星歯車列とされていることがその第2変速部30と相違する。具体的には、第2変速部122を構成している第1後置遊星歯車装置124は第1後置遊星歯車装置26に相当するものであり、第2後置遊星歯車装置126は第2後置遊星歯車装置28に相当するものであって、これら第1後置遊星歯車装置124及び第2後置遊星歯車装置126は、キャリヤCA3及びCA4が共通の部材にて構成されていると共に、リングギヤR3及びR4が共通の部材にて構成されており、且つ第1後置遊星歯車装置124のピニオンギヤが第2後置遊星歯車装置126の第2ピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。つまり、第1後置遊星歯車装置124及び第2後置遊星歯車装置126は、ラビニヨ型の遊星歯車列とされている点を除けばそれぞれ第1後置遊星歯車装置26及び第2後置遊星歯車装置28と同様の構成とされている。
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例と同様の効果が得られることに加えて、第1後置遊星歯車装置124及び第2後置遊星歯車装置126は、ラビニヨ型の遊星歯車列とされているので、第1後置遊星歯車装置124及び第2後置遊星歯車装置126を構成する部材が削減される。また、変速機120の軸心C方向の寸法が短縮される。
図16は、変速機10或いは変速機120において予め定められた変速ギヤ段とそれらを成立させるための係合作動表であって、図2とは別の実施例である。また、図17は、図16における係合作動と変速ギヤ段に対応する共線図であって、図3に相当する図である。
具体的には、図16に示すように、また、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28或いは第2後置遊星歯車装置126(以下、第2後置遊星歯車装置28のみ表記)のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である互いに連結された第1後置遊星歯車装置26或いは第1後置遊星歯車装置124(以下、第1後置遊星歯車装置26のみ表記)のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γ1が最大値、例えば「4.596」程度である第1速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値、例えば「2.724」程度である第2速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第3クラッチC3の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第1中間出力部材32との間が連結されることにより、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.863」程度である第3速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第4クラッチC4の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と入力軸18との間が連結されることにより、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.464」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されることにより、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.231」程度である第5速ギヤ段が成立させられる。
また、第2クラッチC2及び第4クラッチC4の係合により、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と入力軸18との間が連結されることにより、変速比γ6が第5速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.000」程度である第6速ギヤ段が成立させられる。
また、第2クラッチC2及び第3クラッチC3の係合により、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第1中間出力部材32との間が連結されることにより、変速比γ7が第6速ギヤ段よりも小さい値、例えば「0.824」程度である第7速ギヤ段が成立させられる。
また、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γ8が第7速ギヤ段よりも小さい値、例えば「0.685」程度である第8速ギヤ段が成立させられる。
また、第2クラッチC2及び第5クラッチC5の係合により、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第2中間出力部材34との間が連結されることにより、変速比γ9が最小値、例えば「0.598」程度である第9速ギヤ段が成立させられる。
また、第3クラッチC3及び第2ブレーキB2の係合により、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γR1が「4.056」程度である後進第1速ギヤ段「R1」が成立させられる。
また、第4クラッチC4及び第2ブレーキB2の係合により、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と入力軸18との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γR2が後進第1速ギヤ段よりも小さい値、例えば「2.176」程度である後進第2速ギヤ段「R2」が成立させられる。
第1前置遊星歯車装置20のギヤ比ρ1、第2前置遊星歯車装置22のギヤ比ρ2、第1後置遊星歯車装置26のギヤ比ρ3、及び第2後置遊星歯車装置28のギヤ比ρ4は、以上のような変速比が得られるように設計されている。
図16の係合作動表に従い変速段を成立させる変速機10或いは変速機120では、第1速ギヤ段の変速比γ1と第2速ギヤ段の変速比γ2との比(=γ1/γ2)であるステップが「1.688」とされ、第2速ギヤ段の変速比γ2と第3速ギヤ段の変速比γ3との比(=γ2/γ3)が「1.462」とされ、第3速ギヤ段の変速比γ3と第4速ギヤ段の変速比γ4との比(=γ3/γ4)が「1.273」とされ、第4速ギヤ段の変速比γ4と第5速ギヤ段の変速比γ5との比(=γ4/γ5)が「1.189」とされ、第5速ギヤ段の変速比γ5と第6速ギヤ段の変速比γ6との比(=γ5/γ6)が「1.231」とされ、第6速ギヤ段の変速比γ6と第7速ギヤ段の変速比γ7との比(=γ6/γ7)が「1.213」とされ、第7速ギヤ段の変速比γ7と第8速ギヤ段の変速比γ8との比(=γ7/γ8)が「1.203」とされ、第8速ギヤ段の変速比γ8と第9速ギヤ段の変速比γ9との比(=γ8/γ9)が「1.146」とされ、各変速比γが略等比的に変化させられている。また、第1速ギヤ段の変速比γ1と第9速ギヤ段の変速比γ9との比(=γ1/γ9)であるギヤ比幅が比較的大きな値である「7.686」とされている。
図17の共線図において回転要素やそのその連結関係等は図3の共線図と同じであるので、その説明を省略する。
この図17の共線図において、第1速ギヤ段では、第2回転要素RE2は2ブレーキB2の係合によりトランスミッションケース16に連結されて回転速度「0」とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y6及び横線XZの交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(1st)により、出力軸36の回転速度が示される。
第2速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第1ブレーキB1の係合によりトランスミッションケース16に連結されて回転速度「0」とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y5及び横線XZの交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(2nd)により、出力軸36の回転速度が示される。
第3速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第3クラッチC3の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、横線X2が縦線Y7と交差する点(3rd)により、出力軸36の回転速度が示される。
第4速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第4クラッチC4の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y5及び横線X3の交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(4th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第5速ギヤ段では、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y6及び横線X3の交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(5th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第6速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第4クラッチC4の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされ、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされるため、横線X3が縦線Y7と交差する点(6th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第7速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第3クラッチC3の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされ、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされるため、縦線Y5及び横線X2の交点と縦線Y6及び横線X3の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(7th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第8速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第1ブレーキB1の係合によりトランスミッションケース16に連結されて回転速度「0」とされ、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされるため、縦線Y5及び横線XZの交点と縦線Y6及び横線X3の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(8th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第9速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第5クラッチC5の係合により第2中間出力部材34に連結されてその回転速度とされ、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされるため、縦線Y5及び横線X1の交点と縦線Y6及び横線X3の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(9th)により、出力軸36の回転速度が示される。
後進第1速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第3クラッチC3の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされ、第2回転要素RE2は前記第2ブレーキB2の係合によりトランスミッションケース16に連結されて回転速度「0」とされるため、縦線Y5及び横線X2の交点と縦線Y6及び横線XZの交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(Rev1)により、出力軸36の回転速度が示される。
後進第2速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第4クラッチC4の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされ、第2回転要素RE2は第2ブレーキB2の係合によりトランスミッションケース16に連結されて回転速度「0」とされるため、縦線Y5及び横線X3の交点と縦線Y6及び横線XZの交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(Rev2)により、出力軸36の回転速度が示される。
このように、本実施例では、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2を係合させることにより第1変速段を成立させ、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1を係合させることにより第2変速段を成立させ、第1クラッチC1及び第3クラッチC3を係合させることにより第3変速段を成立させ、第1クラッチC1及び第4クラッチC4を係合させることにより第4変速段を成立させ、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を係合させることにより第5変速段を成立させ、第2クラッチC2及び第4クラッチC4を係合させることにより第6変速段を成立させ、第2クラッチC2及び第3クラッチC3を係合させることにより第7変速段を成立させ、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1を係合させることにより第8変速段を成立させ、第2クラッチC2及び第5クラッチC5を係合させることにより第9変速段を成立させるものであるため、前進9変速段を実現できる。また、前進11変速段が前進9変速段となるだけで、前述の実施例と同様の効果が得られる。
また、本実施例では、第8変速段と第9変速段とのステップが比較的小さくクロスレシオで好適な設定とすることができる。
図18は、変速機10或いは変速機120において予め定められた変速ギヤ段とそれらを成立させるための係合作動表であって、図2とは別の実施例である。また、図19は、図18における係合作動と変速ギヤ段に対応する共線図であって、図3に相当する図である。
具体的には、図18に示すように、また、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28或いは第2後置遊星歯車装置126(以下、第2後置遊星歯車装置28のみ表記)のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である互いに連結された第1後置遊星歯車装置26或いは第1後置遊星歯車装置124(以下、第1後置遊星歯車装置26のみ表記)のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γ1が最大値、例えば「4.596」程度である第1速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第5クラッチC5の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第2中間出力部材34との間が連結されることにより、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値、例えば「4.088」程度である第2速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値、例えば「2.724」程度である第3速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第3クラッチC3の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第1中間出力部材32との間が連結されることにより、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.863」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第4クラッチC4の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と入力軸18との間が連結されることにより、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.464」程度である第5速ギヤ段が成立させられる。
また、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により、第4回転要素RE4である第2後置遊星歯車装置28のサンギヤS4と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されることにより、変速比γ6が第5速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.231」程度である第6速ギヤ段が成立させられる。
また、第2クラッチC2及び第4クラッチC4の係合により、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と入力軸18との間が連結されることにより、変速比γ7が第6速ギヤ段よりも小さい値、例えば「1.000」程度である第7速ギヤ段が成立させられる。
また、第2クラッチC2及び第3クラッチC3の係合により、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第1中間出力部材32との間が連結されることにより、変速比γ8が第7速ギヤ段よりも小さい値、例えば「0.824」程度である第8速ギヤ段が成立させられる。
また、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γ9が第8速ギヤ段よりも小さい値、例えば「0.685」程度である第9速ギヤ段が成立させられる。
また、第2クラッチC2及び第5クラッチC5の係合により、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4と入力軸18との間が連結されると共に、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第2中間出力部材34との間が連結されることにより、変速比γ10が最小値、例えば「0.611」程度である第10速ギヤ段が成立させられる。
また、第3クラッチC3及び第2ブレーキB2の係合により、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と第1中間出力部材32との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γR1が「4.056」程度である後進第1速ギヤ段「R1」が成立させられる。
また、第4クラッチC4及び第2ブレーキB2の係合により、第1回転要素RE1である第1後置遊星歯車装置26のサンギヤS3と入力軸18との間が連結されると共に、第2回転要素RE2である相互に連結された第1後置遊星歯車装置26のキャリヤCA3及び第2後置遊星歯車装置28のキャリヤCA4とトランスミッションケース12との間が連結されることにより、変速比γR2が後進第1速ギヤ段よりも小さい値、例えば「2.176」程度である後進第2速ギヤ段「R2」が成立させられる。
第1前置遊星歯車装置20のギヤ比ρ1、第2前置遊星歯車装置22のギヤ比ρ2、第1後置遊星歯車装置26のギヤ比ρ3、及び第2後置遊星歯車装置28のギヤ比ρ4は、以上のような変速比が得られるように設計されている。
図18の係合作動表に従い変速段を成立させる変速機10或いは変速機120では、第1速ギヤ段の変速比γ1と第3速ギヤ段の変速比γ3との比(=γ1/γ3)であるステップが「1.688」とされ、第2速ギヤ段の変速比γ2と第3速ギヤ段の変速比γ3との比(=γ2/γ3)が「1.501」とされ、第3速ギヤ段の変速比γ3と第4速ギヤ段の変速比γ4との比(=γ3/γ4)が「1.462」とされ、第4速ギヤ段の変速比γ4と第5速ギヤ段の変速比γ5との比(=γ4/γ5)が「1.273」とされ、第5速ギヤ段の変速比γ5と第6速ギヤ段の変速比γ6との比(=γ5/γ6)が「1.189」とされ、第6速ギヤ段の変速比γ6と第7速ギヤ段の変速比γ7との比(=γ6/γ7)が「1.231」とされ、第7速ギヤ段の変速比γ7と第8速ギヤ段の変速比γ8との比(=γ7/γ8)が「1.213」とされ、第8速ギヤ段の変速比γ8と第9速ギヤ段の変速比γ9との比(=γ8/γ9)が「1.203」とされ、第9速ギヤ段の変速比γ9と第10速ギヤ段の変速比γ10との比(=γ9/γ10)が「1.122」とされ、各変速比γが略等比的に変化させられている。また、第1速ギヤ段の変速比γ1と第10速ギヤ段の変速比γ10との比(=γ1/γ10)であるギヤ比幅が比較的大きな値である「7.522」とされている。
図19の共線図において回転要素やそのその連結関係等は図3の共線図と同じであるので、その説明を省略する。
この図19の共線図において、第1速ギヤ段では、第2回転要素RE2は2ブレーキB2の係合によりトランスミッションケース16に連結されて回転速度「0」とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y6及び横線XZの交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(1st)により、出力軸36の回転速度が示される。
第2速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第5クラッチC5の係合により第2中間出力部材34に連結されてその回転速度とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y5及び横線X1の交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(2nd)により、出力軸36の回転速度が示される。
第3速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第1ブレーキB1の係合によりトランスミッションケース16に連結されて回転速度「0」とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y5及び横線XZの交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(3rd)により、出力軸36の回転速度が示される。
第4速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第3クラッチC3の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、横線X2が縦線Y7と交差する点(4th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第5速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第4クラッチC4の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y5及び横線X3の交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(5th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第6速ギヤ段では、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされ、第4回転要素RE4は第1クラッチC1の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされるため、縦線Y6及び横線X3の交点と縦線Y8及び横線X2の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(6th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第7速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第4クラッチC4の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされ、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされるため、横線X3が縦線Y7と交差する点(7th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第8速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第3クラッチC3の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされ、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされるため、縦線Y5及び横線X2の交点と縦線Y6及び横線X3の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(8th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第9速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第1ブレーキB1の係合によりトランスミッションケース16に連結されて回転速度「0」とされ、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされるため、縦線Y5及び横線XZの交点と縦線Y6及び横線X3の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(9th)により、出力軸36の回転速度が示される。
第10速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第5クラッチC5の係合により第2中間出力部材34に連結されてその回転速度とされ、第2回転要素RE2は第2クラッチC2の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされるため、縦線Y5及び横線X1の交点と縦線Y6及び横線X3の交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(10th)により、出力軸36の回転速度が示される。
後進第1速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第3クラッチC3の係合により第1中間出力部材32に連結されてその回転速度とされ、第2回転要素RE2は前記第2ブレーキB2の係合によりトランスミッションケース16に連結されて回転速度「0」とされるため、縦線Y5及び横線X2の交点と縦線Y6及び横線XZの交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(Rev1)により、出力軸36の回転速度が示される。
後進第2速ギヤ段では、第1回転要素RE1は第4クラッチC4の係合により入力軸22に連結されて回転速度「1」とされ、第2回転要素RE2は第2ブレーキB2の係合によりトランスミッションケース16に連結されて回転速度「0」とされるため、縦線Y5及び横線X3の交点と縦線Y6及び横線XZの交点とを結ぶ直線が、縦線Y7と交差する点(Rev2)により、出力軸36の回転速度が示される。
このように、本実施例では、第1クラッチC1及び第2ブレーキB2を係合させることにより第1変速段を成立させ、第1クラッチC1及び第5クラッチC5を係合させることにより第2変速段を成立させ、第1クラッチC1及び第1ブレーキB1を係合させることにより第3変速段を成立させ、第1クラッチC1及び第3クラッチC3を係合させることにより第4変速段を成立させ、第1クラッチC1及び第4クラッチC4を係合させることにより第5変速段を成立させ、第1クラッチC1及び第2クラッチC2を係合させることにより第6変速段を成立させ、第2クラッチC2及び第4クラッチC4を係合させることにより第7変速段を成立させ、第2クラッチC2及び第3クラッチC3を係合させることにより第8変速段を成立させ、第2クラッチC2及び第1ブレーキB1を係合させることにより第9変速段を成立させ、第2クラッチC2及び第5クラッチC5を係合させることにより第10変速段を成立させるものであるため、前進10変速段を実現できる。
更に、本実施例では、第1速ギヤ段と第3速ギヤ段との間のステップ及び第2速ギヤ段と第3速ギヤ段との間のステップをともにバランスよく設定できることから、これらの飛変速を状況に応じて使い分けることができる。例えば、動力性能が要求されるスポーツモード時では、第1速ギヤ段から第3速ギヤ段への飛変速を使用し、クリープ特性を抑えたい時などは第2速ギヤ段から第3速ギヤ段への飛変速を使用するなどの選択が可能となる。このような場合には、合計9速のギヤ段として用いられることになる。また、前進11変速段が前進10変速段となるだけで、前述の実施例と同様の効果が得られる。
また、本実施例では、第9変速段と第10変速段とのステップが比較的小さくクロスレシオで好適な設定とすることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例の変速機10、120では、第1速ギヤ段乃至第11速ギヤ段、後進第1速ギヤ段、及び後進第2速ギヤ段というように、複数の変速段が成立させられるものであったが、それらの変速段のうち任意の変速段を用いて変速が実行されるものであってもよい。
また、前述の実施例の共線図では、縦線Y1乃至Y8が左から右へ向かって順次配列されていたが、右から左へ向かって順次配列されるものでも構わない。また、回転速度「0」に対応する横線XZの上側に回転速度「1」に対応する横線X2が配置されていたが、横線XZの下側に配置されていてもよい。
また、前述の実施例では、係合要素として第1クラッチC1乃至第5クラッチC5、第1ブレーキB1、及び第2ブレーキB2のように油圧式摩擦係合装置が設けられていたが、電磁クラッチや磁粉式クラッチ等の電磁式係合装置を用いたものであってもよい。
また、前述の実施例の変速機10、120では、エンジン8とトルクコンバータ16とはクランク軸9を介して直結されていたが、たとえばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。また、エンジン8は他の駆動力源たとえば電動モータ等であってもよい。
また、前述の実施例では、エンジン8と入力軸18との間に流体伝動装置としてロックアップクラッチ付のトルクコンバータ16が設けられていたが、ロックアップクラッチは備えられてなくてもよい。また、そのトルクコンバータ16に替えて、フルードカップリング、磁粉式電磁クラッチ、多板或いは単板式の油圧クラッチが設けられていてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
本発明の一実施例である車両用多段変速機の構成を説明する骨子図である。
図1の変速機に予め定められた変速ギヤ段とそれらを成立させるための油圧式摩擦係合装置の作動との関係を示す係合作動表である。
図1の変速機において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことのできる共線図である。
第1変速部と第2変速部との間の空間に隣接配置された第1ブレーキ及び第2ブレーキの一例を示す図である。
第1変速部と第2変速部との間の空間に隣接配置された第1ブレーキ及び第2ブレーキの一例を示す図であって、図4に相当する図である。
変速機を制御するための電子制御装置に入力される信号及びその電子制御装置から出力される信号を例示している。
複数種類のシフトポジションを人為的操作により切り換えるシフト操作装置の一例を示す図である。
モード選択スイッチの一例を示した拡大図である。
電子制御装置による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
第1ギヤ比列用に第2速ギヤ段が飛ばされる変速線図である。
第2ギヤ比列用に第1速ギヤ段および第3速ギヤ段が飛ばされる変速線図である。
電子制御装置の制御作動の要部すなわち変速機の変速に用いられるギヤ比列を選択する制御作動を説明するフローチャートである。
運転者の駆動力要求量に応じて第1ギヤ比列と第2ギヤ比列とが切り換えられるときに合わせて変速が行われるための変速線図である。
電子制御装置の制御作動の要部すなわち変速機の変速に用いられるギヤ比列を選択する制御作動を説明するフローチャートであって、図12の別の実施例である。
本発明の他の実施例における変速機の構成を説明する骨子図である。
図1の変速機或いは図15の変速機において予め定められた変速ギヤ段とそれらを成立させるための係合作動表であって、図2とは別の実施例である。
図16における係合作動と変速ギヤ段に対応する共線図であって、図3に相当する図である。
図1の変速機或いは図15の変速機において予め定められた変速ギヤ段とそれらを成立させるための係合作動表であって、図2とは別の実施例である。
図18における係合作動と変速ギヤ段に対応する共線図であって、図3に相当する図である。
符号の説明
10:車両用遊星歯車式変速機
12:トランスミッションケース(非回転部材)
18:入力軸(入力回転部材)
20:第1前置遊星歯車装置
22:第2前置遊星歯車装置
24:第1変速部
26、124:第1後置遊星歯車装置
28、126:第2後置遊星歯車装置
30、122:第2変速部
32:第1中間出力部材
34:第2中間出力部材
36:出力軸(出力回転部材)
50:第1ブレーキ油圧アクチュエータ
54:共用シリンダ部材(シリンダ部材)
56:共用リターンスプリング(リターンスプリング)
60:第2ブレーキ油圧アクチュエータ
70:第1ブレーキ油圧アクチュエータ
74:共用シリンダ部材(シリンダ部材)
80:第2ブレーキ油圧アクチュエータ
B1:第1ブレーキ(第1ブレーキ要素)
B2:第2ブレーキ(第2ブレーキ要素)
C1:第1クラッチ(第1クラッチ要素)
C2:第2クラッチ(第2クラッチ要素)
C3:第3クラッチ(第3クラッチ要素)
C4:第4クラッチ(第4クラッチ要素)
C5:第5クラッチ(第5クラッチ要素)
CA1、CA2、CA3、CA4:キャリヤ
R1、R2、R3、R4:リングギヤ
S1、S2、S3、S4:サンギヤ
RE1:第1回転要素
RE2:第2回転要素
RE3:第3回転要素
RE4:第4回転要素