JP2007056328A - 酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法及びこの複合体を用いたiii−v族窒化物半導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 欠陥や転位の発生のおそれをより低減でき、かつ、低コストで簡便にIII−V族窒化物半導体を結晶成長させる新規な基板としても利用可能性を有する、酸化ガリウム単結晶の表層部に窒化ガリウム変性層を備えた酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 酸化ガリウム(Ga2O3)単結晶の表層部に窒化ガリウム(GaN)を含有した窒化ガリウム変性層を備えた酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法であって、酸化ガリウム単結晶の表面に窒素イオンをイオン注入して窒化ガリウム変性層を形成する酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】 酸化ガリウム(Ga2O3)単結晶の表層部に窒化ガリウム(GaN)を含有した窒化ガリウム変性層を備えた酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法であって、酸化ガリウム単結晶の表面に窒素イオンをイオン注入して窒化ガリウム変性層を形成する酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
この発明は、電子・光デバイスの製造において用いるのに適した、酸化ガリウム(Ga2O3)単結晶の表層部に窒化ガリウム(GaN)変性層を備えた酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法、及びこの酸化ガリウム単結晶複合体を用いたIII−V族窒化物半導体の製造方法に関する。
窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)等のIII−V族窒化物半導体は、発光ダイオード(LED)やレーザー等をはじめ、また、これらの短波長発光デバイスのみならず、次世代エレクトロニクスに不可欠な超高周波・高出力動作のトランジスタや波長選択性に優れた紫外線検出素子用材料等の電子・光デバイスとしての応用開発が盛んな材料である。なかでも、窒化ガリウム(GaN)については、高効率青色、緑色及び白色発光ダイオードが市販されると共に、紫外及び青紫色レーザダイオードの実用化をも間近に控え、近時特に注目を集める材料である。
これらIII−V族窒化物半導体は、上記電子・光デバイスに応用するために結晶成長させる必要があり、この結晶成長の際には、これまでは主にサファイアを基板として用いている。しかしながら、例えば窒化ガリウムを結晶成長させようとすると、サファイアと窒化ガリウムとは格子定数のミスマッチが大きいため、サファイア基板上に成長させて得た窒化ガリウムの結晶膜中には少なからず欠陥や転位等が含まれてしまい、必ずしも良質な膜が得られるとは言えない。そして、このようにサファイア基板上に成長させた窒化ガリウム膜を発光デバイスに応用しても、発光効率等のデバイス特性が十分ではないといった問題を抱える。
そこで、サファイア基板と窒化ガリウム膜との間に窒化アルミニウム(AlN)等をバッファー層(緩衝層)として挿入し、格子定数のミスマッチを緩和させることによって、高品質の窒化ガリウム膜を成長させる試みもなされている。しかしながら、このようなバッファー層も窒化ガリウムとは格子定数が完全に一致するものではないため、さらに高品質の窒化ガリウム膜を得るためには、より一層格子定数のミスマッチが少ない基板の実現が求められている。
究極的には、例えば窒化ガリウムとの格子定数のミスマッチを少なくするためには、成長させる窒化ガリウム膜と同じ窒化ガリウムからなる基板を用いることも考えられるが、バルクの窒化ガリウム単結晶からなる基板を作製するためには高温・高圧の条件が必要であり、装置が大掛かりとなってしまうほか、電子デバイスの開発に必要なサイズの基板を得るためには多くの制約が存在する。そのため、このような手段は実用化に向けては大幅なコスト高となってしまう。
一方で、ハイドライド気相成長(HVPE)法により高速で厚膜の窒化ガリウム膜をサファイア基板上に成長させ、この窒化ガリウム膜をサファイア基板から剥離して窒化ガリウム膜用の基板とする方法が提案されている。しかしながら、この方法では窒化ガリウム厚膜を基板から剥離する工程が必要となるほか、得られた窒化ガリウムの厚膜自体はサファイア基板上に作製したものであるため、膜中の欠陥や転位等を完全に排除することはできない。
ところで、半導体素子の形成において不純物をドーピングする際等で広く使われるイオン注入の技術を利用し、サファイア(Al2O3)基板の表面に窒素イオンをイオン注入することによって、サファイア基板上にAlNを形成せしめ、このサファイア基板に窒化ガリウムを結晶成長させる方法が報告されている(非特許文献1及び2参照)。しなしながら、この方法は窒化ガリウムを結晶成長させるバッファー層としてAlNを形成させるものであって、イオン注入によって窒化ガリウムを形成させることについて報告された例は見ない。
Yong Suk CHO et al. Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41 (2002) pp.4267-4270 Yong Suk CHO et al. Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41 (2002) pp.4299-4303
Yong Suk CHO et al. Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41 (2002) pp.4267-4270 Yong Suk CHO et al. Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41 (2002) pp.4299-4303
そこで、本発明者らは、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)等のIII−V族窒化物半導体を結晶成長させるのに適した新規な基板を開発すべく鋭意検討した結果、酸化ガリウム(Ga2O3)単結晶の表面に窒素イオンをイオン注入することにより、窒化ガリウム(GaN)を含有した窒化ガリウム変性層を形成することができることを見出し、本発明を完成した。
従って、本発明の目的は、欠陥や転位の発生のおそれをより低減でき、かつ、低コストで簡便にIII−V族窒化物半導体を結晶成長させる新規な基板としても利用可能性を有する、酸化ガリウム単結晶の表層部に窒化ガリウム変性層を備えた酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、低コストで簡便に、かつ、結晶性に優れたIII−V族窒化物半導体を得ることができるIII−V族窒化物半導体の製造方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、低コストで簡便に、かつ、結晶性に優れたIII−V族窒化物半導体を得ることができるIII−V族窒化物半導体の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、酸化ガリウム(Ga2O3)単結晶の表層部に窒化ガリウム(GaN)を含有した窒化ガリウム変性層を備えた酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法であって、酸化ガリウム単結晶の表面に窒素イオンをイオン注入して窒化ガリウム変性層を形成することを特徴とする酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法である。
また、本発明は、上記で得た酸化ガリウム単結晶複合体を用いて、III−V族窒化物半導体を結晶成長させることを特徴とするIII−V族窒化物半導体の製造方法である。
本発明においては、窒素を陽イオン化したN2 +を酸化ガリウム単結晶の表面にイオン注入する。この際、窒素イオンの加速エネルギーについては好ましくは10〜100keV、より好ましくは20〜50keVとするのがよく、また、窒素イオンの注入量については好ましくは1×1017〜1×1018ions/cm2、より好ましくは3×1017〜5×1017ions/cm2であるのがよい。加速エネルギーが10keVより小さいとスパッタ効果が影響して酸化ガリウム単結晶の表面に窒素イオンが注入されないおそれがあり、反対に100keVより大きくなるとイオンによる照射損傷のためGaとNの結合が生じなくなるおそれがある。窒素の注入量が1×1017ions/cm2より少ないとGaNの化合物が十分に形成されないおそれがあり、反対に1×1018ions/cm2より多くなると処理時間が長くなるだけでその効果は飽和する。
窒素イオンをイオン注入する際の雰囲気については特に制限はなく、通常のイオン注入と同様に行うことができるが、例えばイオン注入を行う注入室を2×10-6〜5×10-6Torr程度になるまで排気した後、注入室に窒素ガスをフローして窒素雰囲気にした状態でイオン注入を行ってもよい。また、注入室の温度については室温となるようにしてイオン注入を行ってもよい。
本発明における窒化ガリウム変性層については、窒化ガリウム(GaN)を含有するものであればよく、酸化ガリウムの一部が残存していてもよいが、好ましくは窒化ガリウムが優位に形成された窒化ガリウム変性層であるのがよい。そして、この窒化ガリウム変性層に含まれる窒化ガリウムについては窒化ガリウム単結晶であるのがより好ましい。窒化ガリウム変性層が窒化ガリウム単結晶を含むことによって、例えば本発明によって得た酸化ガリウム単結晶複合体を窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)等のIII−V族窒化物半導体を結晶成長させる基板として用いた場合に、この基板上にIII−V族窒化物半導体をエピタキシャル成長させる点で有利であり、この有利性は窒化ガリウム変性層に含まれる窒化ガリウム単結晶の割合が多くなるに伴い増加する。
また、窒化ガリウム変性層の膜厚については、例えばその後に成長させるIII−V族窒化物半導体膜を良質なものにせしめる観点から、加速エネルギーや注入量を調節することにより3〜30nm、好ましくは5〜20nmとなるように形成するのがよい。窒化ガリウム変性層の膜厚が3nmより薄いと、例えば本発明の酸化ガリウム単結晶複合体を窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)等のIII−V族窒化物半導体を結晶成長させる基板として用いる場合に結晶性に優れたIII−V族窒化物半導体を成長させるのに十分ではなく別途バッファー層を形成する必要が生じるおそれがある。反対に窒化ガリウム変性層の膜厚が30nmより厚くなると、III−V族窒化物半導体を結晶成長させる基板としては効果が飽和し、処理時間やコストの面で不利となる。なお、窒化ガリウム変性層の膜厚については、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)等による深さ方向分析から算出することができ、あるいは電子顕微鏡による断面観察から算出することもできる。
また、本発明において、窒素イオンをイオン注入する酸化ガリウム単結晶の表面については、好ましくは酸化ガリウム単結晶の成長方向に対して平行な(100)面であるのがよい。酸化ガリウム単結晶は(100)面にへき開し易いことから、このへき開面を利用するのが好ましい。本発明においては、窒素イオンをイオン注入する処理に先駆けて、イオン注入する酸化ガリウム単結晶の表面を研磨処理するようにしてもよい。この研磨処理については、化学的な研磨であっても物理的な研磨であってもよく、あるいは化学的機械研磨であってもよい。
また、酸化ガリウム単結晶については、所定のイオン注入によってその表層部に窒化ガリウムを含有した窒化ガリウム変性層を形成させることができるものであればよく、その形状や大きさ等については最終的に得られる酸化ガリウム複合体の用途・性質等に応じて適宜自由に選択することができる。
また、本発明において用いる酸化ガリウム単結晶については特に制限はないが、好ましくは浮遊帯域溶融法(フローティングゾーン法;FZ法)を用いて製造した酸化ガリウム単結晶であるのがよい。浮遊帯域溶融法は、容器を使用せずに原料を融解させて目的の単結晶(本発明においては酸化ガリウム単結晶)を育成することから、得られる単結晶は不純物による汚染を可及的に低減せしめることができる。また、FZ法により酸化ガリウム単結晶を得る場合には、酸化ガリウムの粉末を焼成して得た酸化ガリウム焼結体を原料棒として単結晶を得るようにするのがよい。酸化ガリウム粉末は比較的入手が容易であることから、安価に酸化ガリウム単結晶を得ることができる。
また、本発明においては、窒素イオンをイオン注入して窒化ガリウム変性層を形成した後に、後処理として例えば800〜1000℃程度の温度で熱処理をして窒化ガリウム変性層の結晶性を更に向上させるようにしてもよい。
本発明により製造した酸化ガリウム単結晶複合体については、例えばハイドライド気相成長(HVPE)法、有機金属気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシャル法(MBE)等を用いて、その窒化ガリウム変性層の表面に窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウ(AlN)、窒化インジウム(InN)等のIII−V族窒化物半導体を結晶成長させることができる。
本発明における酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法によれば、酸化ガリウム単結晶の表面に窒素イオンをイオン注入して窒化ガリウム変性層を形成することができる。この窒化ガリウム変性層は酸化ガリウムを改質したものであることから、欠陥や転位の発生を可及的に低減することができ、また、酸化ガリウム単結晶を使用していることから、その表層部に形成される窒化ガリウム変性層を単結晶化することも可能である。そのため、得られた酸化ガリウム単結晶複合体は、バッファー層を必要とせずに窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)等のIII−V族窒化物半導体を結晶成長させることができる基板としても応用が可能であり、例えば高温・高圧の製造条件が必要なバルクの窒化ガリウムの製造方法や、HVPE法により成長させた厚膜の窒化ガリウム膜をサファイア基板から剥離するような方法と比べて、低コストで簡便にかつ工業的に有利にIII−V族窒化物半導体用の基板を入手することができるようになる。
以下、実施例及び試験例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
[酸化ガリウム単結晶の作製]
純度99.99%の酸化ガリウム(β-Ga2O3)粉末をラバーチューブに封じ、静水圧450MPaにてロッド整形し、整形したロッドを電気炉で大気中1600℃にて20時間焼成した。焼成後のロッドは直径9mm、長さ70mmであった。
純度99.99%の酸化ガリウム(β-Ga2O3)粉末をラバーチューブに封じ、静水圧450MPaにてロッド整形し、整形したロッドを電気炉で大気中1600℃にて20時間焼成した。焼成後のロッドは直径9mm、長さ70mmであった。
酸化ガリウム単結晶を作製するため、双楕円の赤外線集光加熱炉(ASGAL Co.製SS-10W)を用いて光FZ(フローティングゾーン:浮遊帯域溶融)法により酸化ガリウム単結晶の育成を行った。
上記で得た酸化ガリウム焼結体を原料棒として赤外線集光加熱炉の上軸に備え付け、下軸には種結晶として酸化ガリウム単結晶の[001]方向を軸方向に向くように取り付けた。そして、赤外線集光加熱炉における透明石英管内の雰囲気がドライエア(O2/N2=20.0vol%)となるようにして、原料棒と種結晶のそれぞれの先端を炉中心になるように移動させて溶解接触させ、原料棒と種結晶とをそれぞれ20rpmの回転速度で互いに逆向きに回転させながら、結晶成長速度5mm/hとなるように上下軸を移動させて1気圧下で酸化ガリウム単結晶の育成を行った。
上記で得た酸化ガリウム焼結体を原料棒として赤外線集光加熱炉の上軸に備え付け、下軸には種結晶として酸化ガリウム単結晶の[001]方向を軸方向に向くように取り付けた。そして、赤外線集光加熱炉における透明石英管内の雰囲気がドライエア(O2/N2=20.0vol%)となるようにして、原料棒と種結晶のそれぞれの先端を炉中心になるように移動させて溶解接触させ、原料棒と種結晶とをそれぞれ20rpmの回転速度で互いに逆向きに回転させながら、結晶成長速度5mm/hとなるように上下軸を移動させて1気圧下で酸化ガリウム単結晶の育成を行った。
[酸化ガリウム単結晶複合体の製造]
次いで、上記で得られた酸化ガリウム単結晶の(100)面を切り出し、これをサイズが8mm×8mm×厚さ2mmの酸化ガリウム単結晶となるように研磨した。この酸化ガリウム単結晶をイオン注入装置にセットし、注入室を3×10-6Torrになるまで排気した後、上記酸化ガリウム単結晶の(100)面に対して垂直方向から窒素イオン(N2 +)をイオン注入して酸化ガリウム単結晶複合体を製造した。この際の条件は加速エネルギー50keV、イオン注入量5×1017ions/cm2、電流密度〜5μm/cm2、及び室温での処理として行った。
次いで、上記で得られた酸化ガリウム単結晶の(100)面を切り出し、これをサイズが8mm×8mm×厚さ2mmの酸化ガリウム単結晶となるように研磨した。この酸化ガリウム単結晶をイオン注入装置にセットし、注入室を3×10-6Torrになるまで排気した後、上記酸化ガリウム単結晶の(100)面に対して垂直方向から窒素イオン(N2 +)をイオン注入して酸化ガリウム単結晶複合体を製造した。この際の条件は加速エネルギー50keV、イオン注入量5×1017ions/cm2、電流密度〜5μm/cm2、及び室温での処理として行った。
[低角X線回折(XRD)による分析]
本実施例で得た酸化ガリウム単結晶複合体について、酸化ガリウム単結晶の表層部におけるイオン注入の効果を確認するため、酸化ガリウム単結晶の(100)面に対応する表面を低角X線回折(XRD)により分析した。分析にはブルカー・エイエックスエス(株)製X線回折装置MXP18(X線源にはCu)を用い、酸化ガリウム単結晶の(100)面に対するX線入射角度を1°として測定した。得られた結果を図1に示す。図1から分かるように、Ga2O3(400)の強いピークの他に、34°付近に六方晶GaNと思われるブロードなピークが検出された。
本実施例で得た酸化ガリウム単結晶複合体について、酸化ガリウム単結晶の表層部におけるイオン注入の効果を確認するため、酸化ガリウム単結晶の(100)面に対応する表面を低角X線回折(XRD)により分析した。分析にはブルカー・エイエックスエス(株)製X線回折装置MXP18(X線源にはCu)を用い、酸化ガリウム単結晶の(100)面に対するX線入射角度を1°として測定した。得られた結果を図1に示す。図1から分かるように、Ga2O3(400)の強いピークの他に、34°付近に六方晶GaNと思われるブロードなピークが検出された。
[X線光電子分光法(XPS)による分析]
また、本実施例で得た酸化ガリウム単結晶複合体について、酸化ガリウム単結晶の表層部に形成された窒化ガリウム変性層の結合状態を調べるため、X線光電子分光法(XPS)を用いて分析を行なった。その結果を図2に示す。このうち(1)は最表面におけるGa2pの結合状態を表し、(2)は最表面をArイオンで100secスパッタした後のGa2pの結合状態を表し、(3)は最表面におけるN1sの結合状態を表す。
また、本実施例で得た酸化ガリウム単結晶複合体について、酸化ガリウム単結晶の表層部に形成された窒化ガリウム変性層の結合状態を調べるため、X線光電子分光法(XPS)を用いて分析を行なった。その結果を図2に示す。このうち(1)は最表面におけるGa2pの結合状態を表し、(2)は最表面をArイオンで100secスパッタした後のGa2pの結合状態を表し、(3)は最表面におけるN1sの結合状態を表す。
図2の(3)に示したN1sのスペクトルから窒素(N)が検出され、窒素の存在が確認できるがその強度は弱いものであった。この窒素(N)についてGaとの結合状態を調べるために、(1)及び(2)に示すようにGa2pのスペクトルを分析した結果、それらのほとんどがGa−Oの結合を示すスペクトルであった。しなしながら、これらのスペクトルをピーク分離するとわずかであるがGa−Nの結合によるピークが存在することが確認された。また、このXPSによる深さ方向の分析結果によれば、表面から酸化ガリウム単結晶の内部への窒素の拡散深さがSiO2換算でおよそ5nmであることから、酸化ガリウム単結晶の表層部に形成された窒化ガリウム変性層の膜厚はおよそ数nm程度であると考えられる。
本発明により製造した酸化ガリウム単結晶複合体は、酸化ガリウム単結晶の表層部に窒化ガリウムを含有した窒化ガリウム変性層を有することから、更なる電子デバイスの応用・開発に欠かせないIII−V族窒化物半導体用の基板としての用途に加え、次世代エレクトロニクスに不可欠な超高周波・高出力動作のトランジスタ用基板、及び次世代の窒化物半導体レーザーとして期待される青色面発光レーザーや青色量子ドットレーザー等の光デバイス用基板等としても利用が可能であり、種々の電子・光デバイスの製造に用いるのに適した材料である。
Claims (6)
- 酸化ガリウム(Ga2O3)単結晶の表層部に窒化ガリウム(GaN)を含有した窒化ガリウム変性層を備えた酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法であって、酸化ガリウム単結晶の表面に窒素イオンをイオン注入して窒化ガリウム変性層を形成することを特徴とする酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法。
- 窒素イオンをイオン注入する際の処理条件が、加速エネルギー10〜100keV、及び注入量1×1017〜1×1018ions/cm2である請求項1に記載の酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法。
- 窒化ガリウム変性層の膜厚が3〜30nmである請求項1又は2に記載の酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法。
- 窒素イオンをイオン注入する処理に先駆けて、酸化ガリウム単結晶の当該表面を研磨処理する請求項1〜3のいずれかに記載の酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法。
- 酸化ガリウム単結晶が、浮遊帯域溶融法により製造した酸化ガリウム単結晶である請求項1〜4のいずれかに記載の酸化ガリウム単結晶複合体の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の方法により製造した酸化ガリウム単結晶複合体を用いて、III−V族窒化物半導体を結晶成長させることを特徴とするIII−V族窒化物半導体の製造方法。
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Cited By (1)
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KR101781505B1 (ko) * | 2010-10-15 | 2017-09-26 | 엘지디스플레이 주식회사 | 질화갈륨계 반도체 발광소자 및 그 제조방법 |
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