JP2007056228A - インクジェット記録用水性インクセット及びインクジェット記録方法 - Google Patents

インクジェット記録用水性インクセット及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高濃度プリント部におけるシアン方向の色再現範囲を縮小させることなく、シアン方向の低濃度プリント部の粒状感を低減させ、さらにブルー方向及び/又はグリーン方向の色再現範囲を拡大し、ブルー色及び/又はグリーン色の鮮明性を向上させ、シアン方向のプリント部の耐ガス性を向上させる。
【解決手段】 着色剤として顔料を用いたシアン顔料インク、着色剤として染料を用いたブルー染料インク及び/又は着色剤として染料を用いたグリーン染料インクを備えたインクジェット記録用水性インクセットであって、シアン顔料インクが、L***表色系による明度指数(L*)がL*≧60のライトシアン顔料インクからなる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、低濃度プリント部における粒状感の低減、耐ガス性の向上、色再現範囲の拡大に好適なインクジェット記録用水性インクセット及びこのインクジェット記録用水性インクセットを使用したインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方式でカラー画像を表現する場合、一般に、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)及びシアンインク(C)の3色のインクから構成されるインクセット、あるいは、さらにブラックインク(K)を加えた4色のインクから構成されるインクセットが用いられている。
また、インクジェット記録方式において、一般に、画像の階調はインクの吐出により被記録材上に形成されるドットの密度によって制御される。しかしながら、このような方法で階調を制御すると、低濃度プリント部においてはドット密度が減少するため、相対的に個々のドットが視認され易くなり、その結果として、画像が粒状感を呈するという問題が生じる。
これに対しては、シアンインクに関し、染料濃度の異なる2以上のインクを使用し、かつこれらの染料の種類を異ならせ、濃色インクには、耐光性には劣るが鮮明性に優れる染料を選択し、淡色インクには、鮮明性には劣るが耐光性に優れる染料を選択することが提案されており(特許文献1)、また、マゼンタインクについても同様の提案がなされている(特許文献2)。しかしながら、これらの方法に従うと、粒状感の改善は見られるものの、色再現範囲を拡大することができないという問題がある。さらに、染料インクを用いた場合、低濃度プリント部が先に退色し、低濃度プリント部のみが白っぽくなってしまうため、全体的な画像バランスが崩れてしまい、プリント部の耐ガス性、特に耐オゾン性が問題となっている。
また、一般に、イエローインク、マゼンタインク及びシアンインクの3色のインクから構成されるインクセット、あるいは、さらにブラックインクを加えた4色のインクから構成されるインクセットでは、ブルー色は、シアンインクとマゼンタインクを用いて表現されるが、このように2種のインクを用いてブルー色を表現すると、重ね打ちの着弾誤差によってシャープな印字品質や鮮やかな発色性が得にくいという問題点があり、同様の問題は、シアンインクとイエローインクを用いてグリーン色を表現する場合にも生じている。
特開平1−95093号公報 特開平2−127482号公報
本発明は、前述した問題点を解決するためになされたものであり、インクジェット記録方法において、
(i)高濃度プリント部におけるシアン方向の色再現範囲を縮小させず、かつインクセットを構成するインク数を最小限に抑えつつ、シアン方向の低濃度プリント部における粒状感を低減させること
(ii)ブルー方向及び/又はグリーン方向について色再現範囲を拡大し、鮮明性を向上させること
(iii)シアン方向、ブルー方向及び/又はグリーン方向の耐ガス性を向上させること
を目的する。
本発明者らは、インクジェット記録用水性インクセットを構成するインクのL***表色系による明度指数(L*)、色相角(h)及び彩度(C*)が、カラー画像の低濃度プリント部における粒状感の低減、色再現範囲の拡大に密接な関係があるという仮説の下に鋭意研究を行った結果、シアンインクを備えたインクジェット記録用水性インクセットにおいて、シアンインクとして、従前のインクセットで用いられているノーマルシアンインクに代えて、明度指数(L*)が特定値以上の着色剤が顔料であるライトシアン顔料インクを使用し、かつ着色剤が染料であるブルー染料インク及び/又はグリーン染料インクを使用することにより、上述の目的(i)、(ii)及び(iii)を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、着色剤として顔料を用いたシアン顔料インク、着色剤として染料を用いたブルー染料インク及び/又は着色剤として染料を用いたグリーン染料インクを備えたインクジェット記録用水性インクセットであって、シアン顔料インクがL***表色系による明度指数(L*)がL*≧60のライトシアン顔料インクであることを特徴とするインクジェット記録用水性インクセットを提供する。
また、本発明は、上述のインクジェット記録用水性インクセットを使用したインクジェット記録方法を提供する。
本発明のインクジェット記録用水性インクセットは、シアン顔料インクとして着色剤濃度が低いライトシアン顔料インクを備えているので、このインクセットを用いてインクジェット記録を行うことにより、シアン方向の低濃度プリント部の粒状感を低減させることができる。
また、このライトシアンインクの着色剤が顔料インクであるため、シアン方向のプリント部の耐ガス性が良好となり、シアン色が低濃度であっても褪色や変色を防止できる。
さらに、このライトシアン顔料インクはブループリント部及び/又はグリーンプリント部に打ち込んでも良く、それによりブルー及び/又はグリーンの色相をほとんど変えずに、ブルー方向及び/又はグリーン方向の耐ガス性を向上させることが可能となる。
また、本発明のインクセットにおいて、ライトシアン顔料インクと共にブルー染料インクを備えた態様によれば、高濃度プリント部におけるシアン方向の色再現範囲が縮小せず、ブルー方向については色再現範囲が顕著に拡大し、さらに、ブルーインクの着色剤が染料であることにより、彩度の高いブルー色を再現することが可能となる。また、シアンインクとマゼンタインクの混色によらず、ブルー染料インク単独でブルー色を表現できるので、ブルー色の鮮明性が向上する。ここでブルー色は、一般に、黒色及び赤色に次いで、文字、記号、罫線等を含むテキスト印字に多用される色であるから、本発明によれば、このブルー色のテキストを2種のインクの重ね打ちによらず、単一のブルー染料インクのみでプリントできることとなり、フェザリングを抑制したシャープな印字品質を実現することが可能となる。
一方、本発明のインクセットにおいて、ライトシアン顔料インクと共にグリーン染料インクを備えた態様によれば、高濃度プリント部におけるシアン方向の色再現範囲が縮小せず、グリーン方向については色再現範囲が顕著に拡大し、さらに、グリーンインクの着色剤が染料であることにより、彩度の高いグリーン色を再現することが可能となる。また、シアンインクとイエローインクの混色によらず、グリーン染料インク単独でグリーン色を表現できるので、グリーン色の鮮明性が向上する。
以上により、本発明のインクセットにおいて、ライトシアン顔料インク、ブルー染料インク及びグリーン染料インクの全てのインクを備えている態様によれば、シアン方向の低濃度プリント部の粒状感の低減、耐ガス性向上、高濃度プリント部におけるシアン方向の色再現範囲の縮小防止、ブルー方向及びグリーン方向における色再現範囲の顕著な拡大、ブルー色及びグリーン色の鮮明性の向上という効果を得ることができ、さらにかかる効果をライトシアン顔料インク、ブルー染料インク及びグリーン染料インクという3種のインクで達成することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、明度指数(L*)、色相角(h)及び彩度(C*)は、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化されたL***表色系に基づくものである。なお、日本工業規格(JIS)では、JIS Z 8729に規定されている。
また、本発明において明度指数(L*)は、光沢紙に各インクを1200×1200dpiベタプリントしたものに対して、分光測色計等を用いて測定される値であり、色相角(h)と彩度(C*)は、同様のベタプリントに対して、まず知覚色度指数(a*、b*)を分光測色計等を用いて測定し、測定されたa*、b*を用いて次式(1)、(2)により算出される値である。
Figure 2007056228
Figure 2007056228
なお、L*、a*及びb*の測定で用いる「光沢紙」とは、ベースペーパー(原紙ペーパー)に表面平滑性が得られるコート層を設けた紙のことをいい、具体的には、画彩(登録商標)光沢仕上げ(富士写真フィルム(株)製)、インクジェットプリンタ用紙(光沢紙)(コクヨ(株)製)、厚手光沢紙(コダック(株)製)等が挙げられる。また、「解像度1200×1200dpiベタプリント」とは、解像度1200×1200dpiの領域が100%被覆されるようにプリントすることである。プリントに使用できるインクジェットプリンタとしては、ブラザー工業(株)製インクジェットプリンタ搭載デジタル複合機MFC−5200J等を挙げることができ、分光測色計としては、Gretag Macbeth社製Spectrolino等を使用することができる。測色条件は、光源:D65、視野角:2°とした。
本発明のインクジェット記録用水性インクセットは、シアン顔料インク、ブルー染料インク及び/又はグリーン染料インクを備え、シアン顔料インクがL*≧60のライトシアン顔料インクであることを特徴としている。したがって、L*<60のノーマルシアンインクは、本発明のインクセットを構成しない。シアンインクとしてL*<60のノーマルシアンインクを用いると、シアン方向の低濃度プリント部において、粒状感が目立つため好ましくない。
本発明のインクセットを構成するライトシアン顔料インクのL*は、好ましくは60≦L*≦85である。ライトシアン顔料インクのL*が85を超えると、本来のシアン色を再現することが困難となるので好ましくない。
また、ライトシアン顔料インクのhは、215°≦h≦255°となるように調整することが好ましい。hがこの範囲内でないと、充分にシアン色を表現することが困難となる。
さらに、ライトシアン顔料インクのC*は、40≦C*≦70となるように調整することが好ましい。C*をこの範囲内とすることにより、鮮やかなシアン色を再現することが可能となる。
一方、本発明のインクセットを構成するブルー染料インクとしては、L*≦45のものが好ましい。ブルー染料インクのL*が45を超えると、本来のブルー色を再現することが困難となるので好ましくない。ブルー染料インクのL*について、より好ましい範囲は35≦L*≦45である。ブルー染料インクのL*をこの範囲内とすることにより充分な濃度のブルー色及びシアン色を再現することができる。
ブルー染料インクのhは、270°≦h≦285°となるように調整することが好ましい。hをこの範囲内に調整することにより、充分にブルー色を表現することが可能となる。
さらに、ブルー染料インクのC*は、70≦C*≦80となるように調整することが好ましい。C*をこの範囲内に調整することにより、鮮やかなブルー色を再現することが可能となる。
一方、本発明のインクセットを構成するグリーン染料インクとしては、L*≦60のものが好ましい。グリーン染料インクのL*が60を超えると、本来のグリーン色を再現することが困難となるので好ましくない。グリーン染料インクのL*について、より好ましい範囲は35≦L*≦60である。グリーン染料インクのL*をこの範囲内とすることにより充分な濃度のグリーン色とシアン色を再現することができる。
グリーン染料インクのhは、175°≦h≦215°となるように調整することが好ましい。hをこの範囲内に調整することにより、充分にグリーン色を表現することが可能となる。
さらに、グリーン染料インクのC*は、60≦C*≦80となるように調整することが好ましい。C*をこの範囲内に調整することにより、鮮やかなグリーン色を再現することが可能となる。
本発明のインクセットとしては、ライトシアン顔料インクに加えて、ブルー染料インク又はグリーン染料インクの何れか一方を備えても良いが、これら全てのインクを備えてもよい。また、本発明のインクセットは、上述のライトシアン顔料インク、ブルー染料インク及び/又はグリーン染料インクの他、任意のインクを備えることができ、例えば、イエローインク及び/又はマゼンタインクを備えることができる。必要に応じてブラックインクを備えてもよい。ライトシアン顔料インク、ブルー染料インク及び/又はグリーン染料インクに加えて、イエローインク、マゼンタインク、さらに必要に応じてブラックインクを備えることにより、フルカラー画像を再現することができる。
本発明のインクセットにマゼンタインクを備える場合、そのマゼンタインクとしては、公知のインクセットに用いられているノーマルマゼンタインクを使用することもできるが、ノーマルゼンタインクに代えて、L*≧50のライトマゼンタインクを使用し、さらにレッドインクを使用することが好ましい。この場合、L*<50のノーマルマゼンタインクは不要である。マゼンタインクとしてL*≧50のライトマゼンタインクを使用することにより、マゼンタ方向の低濃度プリント部において、粒状感を低減させることができる。ライトマゼンタインクの好ましいL*は50≦L*≦65である。ライトマゼンタインクのL*が65を超えると、本来のマゼンタ色を再現することが困難となるので好ましくない。
また、ライトマゼンタインクのhは、335°≦h≦360°又は0°≦h≦5°となるように調整することが好ましい。hがこの範囲内でないと、充分にマゼンタ色を表現することが困難となる。
さらに、ライトマゼンタインクのC*は、80≦C*≦90となるように調整することが好ましい。C*をこの範囲内に調整することにより、鮮やかなマゼンタ色を再現することが可能となる。
ライトマゼンタインクと共に使用するレッドインクとしては、L*≦50のものが好ましい。レッドインクのL*が50を超えると、レッド方向の色再現範囲を充分に得ることが困難となる。レッドインクのL*について、より好ましい範囲は25≦L*≦50である。レッドインクのL*をこの範囲内に調整することにより充分な濃度のレッド色とマゼンタ色を再現することができる。
レッドインクのhは、20°≦h≦35°となるように調整することが好ましい。hをこの範囲内に調整することにより、充分にレッド色を表現することが可能となる。
さらに、レッドインクのC*は、80≦C*≦90となるように調整することが好ましい。C*をこの範囲内に調整することにより、鮮やかなレッド色を再現することが可能となる。
加えて、ライトマゼンタインクの着色剤及びレッドインクの着色剤の少なくとも一方を顔料としてもよい。
本発明のインクセットにイエローインクやブラックインクを備える場合、これらのインクとしては公知のインクセットに用いられているものを使用することができる。例えば、イエローインクとしては、hが70〜140°のノーマルイエローインクを使用することができる。
本発明のインクセットを構成する個々のインクは、それぞれ上述の所定のL*、h及びC*を有するように着色剤、水及び水溶性有機溶剤を含有する。
インクに含まれる着色剤としては、水溶性染料又は顔料を挙げることができ、これらを適宜組み合わせて用いることにより所期のインク色に調整する。
即ち、水溶性染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料等に代表される水溶性染料が用いられる。また、水溶性染料の構造としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、アニリン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等が好ましい。特に、インクジェット記録方式のインクとして好適で、鮮明性、水溶性、安定性、耐光性その他の要求される性能を満たす水溶性染料としては、C.I.ダイレクトイエロー12,24,26,27,28,33,39,58,86,98,100,132及び142、C.I.ダイレクトレッド4,17,28,37,63,75,79,80,81,83及び254、C.I.ダイレクトバイオレット47,48,51,90及び94、C.I.ダイレクトブルー1,6,8,15,22,25,71,76,80,86,87,90,106,108,123,163,165,199及び226、C.I.ダイレクトグリーン1,26,28,59,80及び85等の直接染料;C.I.アシッドイエロー3,11,17,19,23,25,29,38,42,49,59,61,71及び72、C.I.アシッドレッド1,6,8,18,32,35,37,42,52,85,88,115,133,134,154,186,249、289及び407、C.I.アシッドバイオレット10,34,49及び75、C.I.アシッドブルー9,22,29,40,59,62,93,102,104,112,113,117,120,167,175,183,229及び234、C.I.アシッドグリーン3,5,9,12,15,16,19,25,27,28,36,40,41,43,44,56,73,81,84,104,108及び109等の酸性染料;C.I.ベーシックイエロー40、C.I.ベーシックレッド9,12及び13、C.I.ベーシックバイオレット7,14及び27、C.I.ベーシックブルー1,3,5,7,9,24,25,26,28及び29、C.I.ベーシックグリーン1及び4等の塩基性染料;C.I.リアクティブイエロー2、C.I.リアクティブレッド4,23,24,31及び56、C.I.リアクティブブルー7,13及び49、C.I.リアクティブグリーン5,6,7,8,12,15,19及び21等の反応性染料が挙げられる。
また、顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,13,16,74,83,93,128,134及び144、C.I.ピグメントレッド5,7,12,23,48(Mn),57(Ca),112,122,144,170,177,221,254及び264、C.I.ピグメントバイオレット19及び48(Ca)、C.I.ピグメントブルー 1,2,3,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:5,15:6,16,17:1,22,27,28,29,36及び60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
ブラックインクの着色剤としても、水溶性染料又は顔料を挙げることができ、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。水溶性染料としては、例えば、C.I.ダイレクトブラック17,19,32,51,71,108,146,154及び168等の直接染料;C.I.アシッドブラック2,7,24,26,31,52,63,112及び118等の酸性染料;C.I.ベーシックブラック2等の塩基性染料;C.I.フードブラック1及び2等が挙げられる。また、顔料としては、例えば、MA8、MA100(三菱化学(株)製)、カラーブラックFW200(デグサ製)等のカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックとしては、分散剤を用いなくても水に分散可能な自己分散型のものを用いてもよい。自己分散型カーボンブラックは、その表面に、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はスルホン基のような少なくとも一種の親水基又はその塩を結合させる処理をすることによって得ることができる。この表面処理の具体例としては、特開平8−3498号公報及び特表2000−513396号公報に記載の方法を挙げることができる。また、自己分散黒色顔料としては、例えば、CAB−O−JET(登録商標)200及び300(キャボット製)、ボンジェット(登録商標)CW1(オリエント化学工業(株)製)等の市販品を利用することも可能である。
染料インクにおける水溶性染料の含有量は、所望のプリント濃度や色彩により異なるが、少なすぎると被記録材上での発色が不充分であり、多すぎるとインクジェットヘッドのノズルの目詰まりが起きやすくなるので、好ましくは各インク全重量に対して0.1〜15重量%、より好ましくは0.3〜10重量%、特に好ましくは0.5〜5.0重量%の範囲である。
顔料インクにおける顔料の含有量は、所望のプリント濃度や色彩により異なるが、少なすぎると被記録材上での発色が不充分であり、多すぎるとインクジェットヘッドのノズルの目詰まりが起きやすくなるので、好ましくは各インクの全重量に対して0.2〜15重量%、より好ましくは0.2〜10重量%の範囲である。
一方、インクに使用する水は、脱イオン水とすることが好ましい。水の含有量は、水溶性有機溶剤の種類、インク組成、所望のインク特性に応じて決定されるが、少なすぎるとインクの粘度が上昇するためにインクジェットヘッドのノズルからの吐出が困難となり、多すぎると水分蒸発によって着色剤の析出、凝集等が生じ、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりが起きやすくなるので、好ましくは各インクの全重量に対して10〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは20〜80重量%の範囲である。
インクで使用する水溶性有機溶剤は、湿潤剤と浸透剤に大別される。
湿潤剤は、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりを防止するためにインクに添加される。湿潤剤の具体例としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の水溶性グリコールが挙げられる。湿潤剤としての水溶性有機溶剤の含有量としては、少なすぎるとインクジェットヘッドのノズルの目詰まりを防止するために不充分であり、多すぎるとインクの粘度が上昇し、吐出が困難となるので、好ましくは各インクの全重量に対して5〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは5〜35重量%の範囲である。
浸透剤は、プリントした際、インクを速やかに紙内部に浸透させるためにインクに添加される。浸透剤の具体例としては、エチレングリコール系及びプロピレングリコール系のアルキルエーテルに代表されるグリコールエーテル等が挙げられる。エチレングリコール系アルキルエーテルの具体例としては、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールイソブチルエーテル等が挙げられ、プロピレングリコール系アルキルエーテルの具体例としては、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−エチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル等が挙げられる。
浸透剤としての水溶性有機溶剤の含有量としては、少なすぎると浸透性が不充分であり、多すぎると過剰な浸透性によってフェザリング等のにじみを生じやすくなるので、好ましくは各インクの全重量に対して0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。
本発明のインクセットを構成するインクには、上述の湿潤剤及び浸透剤の他、インクジェットヘッドの先端部におけるインクの乾燥を防止したり、プリント濃度を高くしたり、鮮やかな発色をさせたりする水溶性有機溶剤を含むことができる。このような水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;グリセリン;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
本発明のインクセットを構成するインクには、さらに、従来公知の界面活性剤;ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等の粘度調整剤;表面張力調整剤;防黴剤等を必要に応じて添加することができる。
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット記録を本発明のインクセットを使用して行うものである。インクジェット記録の方式には特に制限はなく、静電吸引方式、圧電素子を用いる方式、サーマル方式などを挙げることができる。
本発明のインクジェット記録方法において、ライトシアン顔料インクとブルー染料インク及び/又はグリーン染料インクとを被記録材で併用するにあたり、これらの使用割合は、ライトシアン顔料インクがブルー染料インク及び/又はグリーン染料インクに対して体積割合で25%以上75%以下となることが好ましい。ライトシアン顔料インクの使用が25%未満であるとブルー色及び/又はグリーン色の耐ガス性の改善効果が低く、75%を超えるとブルー色及び/又はグリーン色の色目が明らかに変化してしまうため好ましくない。勿論、ライトシアン顔料インクのみで表現できる色目の場合には、ブルー染料インク及び/又はグリーン染料インクとの併用を行わなくてもよい。
また、ライトシアン顔料インクと、ブルー染料インク及び/又はグリーン染料インクとを被記録材で併用するにあたり、これらの着弾順序は、再現したい色目が再現できれば特に限定はないが、ブルー染料インク記録部分及び/又はグリーン染料インク記録部分にライトシアン顔料インクを重ねて着弾させると、顔料が印字物の表面に存在するため、下層に存在する染料分子に届く光が減少し、耐光性が向上する。また、同様の理由で、下層に存在する染料分子にアタックするオゾン等の酸化物が減少するため、耐ガス性も向上する。一方、ライトシアン顔料インクが被記録材に着弾した部分にブルー染料インク及び/又はグリーン染料インク重ねて着弾させると、染料分子の光透過性により発色性が向上する。
以下に、実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明する。なお、本実施例において、%は、特にことわらない限り、重量%を表す。
実施例B1〜B6、比較例B1〜B7、実施例G1〜G4、比較例G1〜G7
(1)インクの調製
表1に示したインク組成で、ライトシアン顔料インク1を次のように調製した。
まず、C.I.ピグメントブルー15:3:5重量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(オキシエチレン平均重合度=12):5重量部、グリセリン:15重量部、水:75重量部を混合した後、直径0.3mmのジルコニアビーズを媒体として湿式サンドミルにて分散処理を行い、シアン顔料分散体100重量部を得た。
さらに、水:54重量部、グリセリン:24重量部、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル(以下、DPGPEという):2重量部を混合して、インク溶媒:80重量部を調製した。その後、上述のシアン顔料分散体100重量部から20重量部を秤取り、その攪拌中に、調製したインク溶媒:80重量部を徐々に加え、さらに30分間撹拌した後に、孔径1μmのメンブランフィルターにて濾過し、ライトシアン顔料インク1を調製した。なお、インク全重量に対するC.I.ピグメントブルー15:3の配合量は、1重量%であった。
組成を表1に記載のように変更した以外は、ライトシアン顔料インク1と同様の操作を繰り返すことにより、ライトシアン顔料インク2,3及びノーマルシアン顔料インクを調製した。
また、表1に示したインク組成で、ライトシアン染料インク1を次のように調製した。
まず、水:69重量部、グリセリン:27重量部、DPGPE:2重量部を混合して、インク溶媒:98重量部を調製した。次いで、シアン水溶性染料(C.I.ダイレクトブルー199):2重量部を攪拌中のインク溶媒98重量部に加え、さらに30分間撹拌し、孔径1μmのメンブランフィルターにて濾過し、ライトシアン染料インク1を調製した。
組成を表1に記載のように変更した以外は、ライトシアン染料インク1と同様の操作を繰り返すことにより、ライトシアン染料インク2、ノーマルシアン染料インク、ブルー染料インク1,2、グリーン染料インク1,2、イエローインク及びマゼンタインクを調製した。
(2)L*、a*、b*、C*、hの取得
インクを所定のインクカートリッジに充填し、インクジェットプリンタ搭載デジタル複合機(ブラザー工業(株)製;MFC−5200J)に装着して、光沢紙(富士写真フィルム(株)製;画彩(登録商標)光沢仕上げ)に1200×1200dpiベタプリントをプリントし、そのベタプリントのL*、a*及びb*を、Gretag Macbeth社製Spectrolino(光源:D65;視野:2°)により測定した。
また、C*及びhは、得られた測定値をもとに、次式(1)及び(2)を用いて求めた。これらの結果を表1示す。



Figure 2007056228
Figure 2007056228
(3)インクセットの構成
表1に示したインクを、表2及び表3に示したように組み合わせてインクジェット記録用水性インクセットを構成した。なお、比較例B5及び比較例G5は、従来のインクセットに相当する。
(4)インクセットの評価
表2及び表3に示したインクセットについて、インクセットを構成するインクを所定のインクカートリッジに充填し、インクカートリッジをインクジェットプリンタ搭載デジタル複合機(ブラザー工業(株)製;MFC−5200J)に装着し、光沢紙(富士写真フィルム(株)製;画彩(登録商標)光沢仕上げ)に、下記のサンプルをプリントした。
シアンインク、ブルー染料インク及びマゼンタインクからなるインクセット(表2)では、シアン色粒状感評価用及びシアン色プリント部の耐ガス性評価用として、シアンインク(ライトシアン顔料インク、ライトシアン染料インク、ノーマルシアン顔料インク又はノーマルシアン染料インク)のグラデーションサンプルをプリントし、ブルー色及びシアン色の色再現評価用として、シアンインク(ライトシアン顔料インク、ライトシアン染料インク、ノーマルシアン顔料インク又はノーマルシアン染料インク)、ブルー染料インク及びマゼンタインクの混合割合を変えて、種々の色相のパッチを含むプリントパターンサンプルをプリントした。
シアンインク、グリーン染料インク及びイエローインクからなるインクセット(表3)では、シアン色粒状感評価用及びシアン色プリント部の耐ガス性評価用として、シアンインク(ライトシアン顔料インク、ライトシアン染料インク、ノーマルシアン顔料インク又はノーマルシアン染料インク)のグラデーションサンプルをプリントし、グリーン色及びシアン色の色再現評価用としてシアンインク(ライトシアン顔料インク、ライトシアン染料インク、ノーマルシアン顔料インク又はノーマルシアン染料インク)、グリーン染料インク及びイエローインクの混合割合を変えて、種々の色相のパッチを含むプリントパターンサンプルをプリントした。
得られた各サンプルのパッチについて、a*、b*及びL*を前述と同様に測定し、インクセットにおいて、(a)シアン色粒状感評価、(b)ブルー色再現評価又は(c)グリーン色再現評価、(d)シアン色再現評価、(e)シアン色プリント部の耐ガス性評価、(f)総合評価を次のように行った。その結果を表2及び表3に示す。
(a)シアン色粒状感評価
上述のグラデーションサンプルにおけるL*=90のパッチに対して、目視にてシアン色の粒状感を以下の評価基準に基づき評価した。評価結果を表2及び表3に示す。
◎…粒状感が認められない
○…粒状感がほとんど目立たない
×…粒状感が目立ち、実用上問題あり
(b)ブルー色再現評価
(b−1)目視評価
上述のプリントパターンサンプルより、h=277°±5°に該当するブルー色パッチを選択し、目視にて、ブルー色が充分に表現されているか否かを以下の評価基準に基づき評価した。評価結果を表2に示す。
◎…高濃度ブルー色を充分に表現できている
○…高濃度ブルー色を表現できている
×…高濃度ブルー色の表現が不足している
(b−2)彩度(C*)、彩度差(ΔC*
上述のプリントパターンサンプルから、ブルー色に対応するhが277°±5°であって、L*が40±5のパッチを選択し、C*を前述の式(1)により算出した。
また、比較基準として比較例B5のパッチ(h=278°)のC*を使用し、次式(3)により、上述のパッチのC*と比較例B5のパッチのC*との差を彩度差(ΔC* )として求めた。ここで、彩度差(ΔC* )が大きいほど、高濃度ブルー色再現性が優れていることを示す。評価結果を表2に示す。
Figure 2007056228
(c)グリーン色再現評価
(c−1)目視評価
上述のプリントパターンサンプルより、h=200°±10°に該当するグリーン色パッチを選択し、目視にて、グリーン色が充分に表現されているか否かを以下の評価基準に基づき評価した。評価結果を表3に示す。
◎…高濃度グリーン色を充分に表現できている
○…高濃度グリーン色を表現できている
×…高濃度グリーン色の表現が不足している
(c−2)彩度(C*)、彩度差(ΔC*
上述のプリントパターンサンプルから、グリーン色に対応するhが200°±10°であって、L*が55±3のパッチを選択し、C*を前述の式(1)により算出した。
また、比較基準として比較例G5のパッチ(h=196°)のC*を使用し、次式(4)により、上述のパッチのC*と比較例G5のパッチのC*との差を彩度差(ΔC* )として求めた。ここで、彩度差(ΔC* )が大きいほど、高濃度グリーン色再現性が優れていることを示す。評価結果を表3に示す。
Figure 2007056228
(d)シアン色再現評価
(d−1)目視評価
上述のプリントパターンサンプルから、シアン色に対応するh=215〜255°のパッチを選択し、目視にて、シアン色が充分に表現されているか否かを以下の評価基準に基づき評価した。評価結果を表2及び表3に示す。
◎…高濃度シアン色を充分に表現できている
○…高濃度シアン色に近い色が表現できている
×…高濃度シアン色表現が不足している
(d−2)彩度(C*)、明度差(ΔL*
上述のプリントパターンサンプルから、シアン色の範疇に属すると認められるh=215〜255°のパッチであって、従来のインクセットでプリントした場合のシアン色を呈する比較例B5又は比較例G5のパッチ(h=234°、L*=54)と、L*及びhが最も近いパッチを選択し、C*を前述の式(1)により算出した。
また、各パッチと比較例B5又は比較例G5のパッチとの明度差(ΔL*)を次式(5)により求めた。ここで、明度差(ΔL*)は、その値が大きいほど高濃度のシアン色が充分に表現できないことを示している。
Figure 2007056228
(e)シアン色プリント部の耐ガス性評価
上述のグラデーションサンプルを用いて、耐ガス性評価として、耐オゾン性試験を行った。
耐オゾン性試験は、スガ試験機(株)製オゾンウェザーメーターOMS−Hを用いて、オゾン濃度1ppm、槽内温度24℃、湿度60%RHで200時間放置して行った。耐オゾン性試験前にOD値が0.6を示すシアン色プリント部カラーパッチについて、耐オゾン性試験後のOD値を測定した。OD値はGretag Macbeth社製反射濃度計RD−914を用いて測定した。次式(6)により、試験前のOD値0.6のパッチに対するOD値減少率を求め、得られたOD値減少率を以下の評価基準に基づき評価した。評価結果を表2及び表3に示す。
Figure 2007056228

○…OD値減少率が30%未満
×…OD値減少率が30%以上
(f)総合評価
インクセットにおける各評価結果から、以下の評価基準に基づき総合評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
○…すべての評価結果が、◎又は○である
△…シアン色粒状感評価、ブルー色再現評価又はグリーン色再現評価、及びシアン色再現評価については評価結果が◎又は○である
×…シアン色粒状感評価、ブルー色再現評価又はグリーン色再現評価、及びシアン色再現評価の評価結果のいずれかに×がある




























Figure 2007056228


Figure 2007056228


Figure 2007056228
表2に示したように、実施例B1〜B6では、L*≧60のライトシアン顔料インクを用いているためにシアン色低濃度プリント部(L*=90)において粒状感がほとんど目立たなくなっている。また、L*≦45のブルー染料インクを用いているために、従来のインクセット(比較例B5)と比較してブルー色の再現範囲が広がり(ΔC* 値が大きい)、従来のインクセット(比較例B5)で表現できるシアン色と遜色ない程度の高濃度のシアン色も表現できた。さらに、ブルー色をブルー染料インク単色で表現することができるので、ブルー色のテキストについて重ね打ちによる着弾誤差が生ずることがなく、シャープな印字が得られた。加えて、ライトシアンインクの着色剤が顔料であるため、シアン色プリント部の耐ガス性が向上した。
これに対し、比較例B1では、ライトシアンインクの着色剤が染料であるためシアン色プリント部の耐ガス性が劣っていた。
比較例B2及びB3では、L*<60のノーマルシアン顔料インクを用いているため、シアン色低濃度プリント部(L*=90)の粒状感が目立った。さらに、比較例B2ではブルーインクを用いていないため、本願発明のインクセット(実施例B1〜B6)と比較してブルー色の再現範囲も劣っていた。
比較例B4は、ブルーインクを用いていないため、本願発明のインクセット(実施例B1〜B6)と比較してブルー色の再現範囲が狭く(ΔC* 値が小さい)、高濃度シアン色の再現範囲が不足していた。
比較例B5及びB6では、L*<60のノーマルシアン染料インクを用いているため、シアン色低濃度プリント部(L*=90)において粒状感が目立ち、シアン色プリント部の耐ガス性も劣っており、さらに比較例B5ではブルーインクを用いていないため、本願発明のインクセット(実施例B1〜B6)と比較してブルー色の再現範囲も劣っていた。
比較例B7は、ブルーインクを用いていないため、本願発明のインクセット(実施例B1〜B6)と比較してブルー色の再現範囲が狭く(ΔC* 値が小さい)、高濃度シアン色の再現範囲が不足し、さらにシアンインクの着色剤が染料であるため、シアン色プリント部の耐ガス性も劣っていた。
以上により、シアン色の色再現範囲を縮小させることなく、シアン色低濃度プリント部における粒状感を低減させること、ブルー色の再現範囲を拡大すること及びシアン色プリント部の耐ガス性を向上させることについて、実施例B1〜B6のインクセットは、比較例B1〜B7のインクセットに比して優れていた。
一方、表3に示したように、実施例G1〜G4では、L*≧60のライトシアン顔料インクを用いているためにシアン色低濃度プリント部(L*=90)において粒状感がほとんど目立たなくなっている。また、L*≦60のグリーン染料インクを用いているために、従来のインクセット(比較例G5)と比較してグリーン色の再現範囲が広がり(ΔC* 値が大きい)、従来のインクセット(比較例G5)で表現できるシアン色と遜色ない程度の高濃度のシアン色も表現できた。さらに、グリーン色をグリーン染料インク単色で表現することができるので、グリーン色のテキストについて重ね打ちによる着弾誤差が生ずることがなく、シャープな印字が得られた。加えて、シアンインクの着色剤が顔料であるため、シアン色プリント部の耐ガス性が向上し改善した。
これに対し、比較例G1では、ライトシアン染料インクを用いているためシアン色プリント部の耐ガス性が劣っていた。
比較例G2及びG3では、ノーマルシアン顔料インクを用いているため、シアン色低濃度プリント部(L*=90)の粒状感が目立った。さらに比較例G2ではグリーンインクを用いていないため、本願発明のインクセット(実施例G1〜G4)と比較して、グリーン色の再現範囲が劣っていた。
比較例G4は、L*≧60のライトシアン顔料インクを用いているがグリーンインクを用いていないため、本願発明のインクセット(実施例G1〜G4)と比較してグリーン色の再現範囲が狭く(ΔC* 値が小さい)、高濃度シアン色の再現範囲が不足していた。
比較例G5及びG6では、L*<60のノーマルシアン染料インクを用いているため、シアン色低濃度プリント部(L*=90)の粒状感が目立ち、シアン色プリント部の耐ガス性も劣っており、さらに比較例G5ではグリーンインクを用いていないため、本願発明のインクセット(実施例G1〜G4)と比較して、グリーン色の再現範囲が狭かった(ΔC* 値が小さい)。
比較例G7は、L*≧60のライトシアン染料インクを用いているがグリーンインクを用いていないため、明らかにグリーン色の再現範囲が狭く、高濃度シアン色の再現範囲も不足し、さらにシアンインクの着色剤が染料であるためシアン色プリント部の耐ガス性も劣っていた。
以上により、シアン色の色再現範囲を縮小させることなく、シアン色低濃度プリント部における粒状感を低減させること、グリーン色の再現範囲を拡大すること及びシアン色プリント部の耐ガス性向上について、実施例G1〜G4のインクセットは、比較例G1〜G7のインクセットに比して優れていた。
本発明のインクジェット記録用水性インクセットは、シアン方向の低濃度プリント部における粒状感の低減、耐ガス性の向上、色再現範囲の拡大を実現するので、インクジェット記録用プリンタでカラー画像を再現する場合に有用となる。

Claims (15)

  1. 着色剤として顔料を用いたシアン顔料インク、着色剤として染料を用いたブルー染料インク及び/又は着色剤として染料を用いたグリーン染料インクを備えたインクジェット記録用水性インクセットであって、
    シアン顔料インクが、L***表色系による明度指数(L*)がL*≧60のライトシアン顔料インクであることを特徴とするインクジェット記録用水性インクセット。
  2. シアン顔料インクとして、明度指数(L*)がL*<60のノーマルシアンインクをもたない請求項1記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  3. ライトシアン顔料インクの明度指数(L*)が、60≦L*≦85である請求項1又は2記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  4. ライトシアン顔料インクのL***表色系による色相角(h)が、215°≦h≦255°である請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  5. ライトシアン顔料インクのL***表色系による彩度(C*)が、40≦C*≦70である請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  6. ブルー染料インクのL***表色系による明度指数(L*)が、L*≦45である請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  7. ブルー染料インクのL***表色系による明度指数(L*)が、35≦L*≦45である請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  8. ブルー染料インクのL***表色系による色相角(h)が、270°≦h≦285°である請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  9. ブルー染料インクのL***表色系による彩度(C*)が、70≦C*≦80である請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  10. グリーン染料インクのL***表色系による明度指数(L*)が、L*≦60である請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  11. グリーン染料インクのL***表色系による明度指数(L*)が、35≦L*≦60である請求項1〜10のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  12. グリーン染料インクのL***表色系による色相角(h)が、175°≦h≦215°である請求項1〜11のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  13. グリーン染料インクのL***表色系による彩度(C*)が、60≦C*≦80である請求項1〜12のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  14. さらに、イエローインク及び/又はマゼンタインクを備えた請求項1〜13のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクセット。
  15. 請求項1〜14のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクセットを使用することを特徴とするインクジェット記録方法。
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