図1以下の図面は本発明のより具体的な実施の形態を示す図であり、ここでは例えばV型6気筒エンジンの吸気系に適用される可変動弁機構の場合の例を示している。
すなわち、図1〜4はシリンダヘッド1上に設けられる可変動弁機構の一例として、一気筒当たり二つの吸気バルブ2を開閉駆動しつつ吸気バルブ2のリフト量および作動角の双方を連続的に可変制御可能なリフト・作動角(バルブイベント)可変機構3の構造を示している。なお、このリフト・作動角可変機構3は、特開2002−256832号公報等として先に本出願人が提案しているものある。
リフト・作動角可変機構3は、図示外のクランクシャフトに連動して回転する駆動軸4と、駆動軸4に揺動可能に嵌合支持されていて且つ吸気バルブ2をリフトさせる揺動カム5とを、後述するロッカアーム9のほか複数のリンク10,11で連係したものである。より詳しくは、リフト・作動角可変機構3は、駆動軸4に偏心して設けられて駆動カムとして機能する円形の偏心カム6と、駆動軸4と平行に設けられた制御軸7と、この制御軸7に偏心して設けられた円形の偏心カム8と、この偏心カム8に揺動可能に嵌合するロッカアーム9と、駆動軸4側の偏心カム6とロッカアーム9の一端とを連結している第1のリンク部材としてのリング状の第1リンク10と、ロッカアーム9の他端と揺動カム5の先端とを連結している第2のリンク部材としての第2リンク11とを有している。
駆動軸4は、図示しないチェーンやプーリ等の伝達機構を介してクランクシャフトに連係されていて、そのクランクシャフトに連動して回転駆動される一方、制御軸7はサーボモータ等の図示しない回転型のアクチュエータによってその回転位置が任意に可変制御される。
第1リンク10は駆動軸4側の偏心カム6の外周に回転可能に嵌合している一方、ロッカアーム9の一端と第1リンク10の先端とは第1の連結ピン12により回転可能に連結されている。また、ロッカアーム9の他端と第2リンク12の一端とは第2の連結ピン13により回転可能に連結されている。さらに、第2リンク11の他端と揺動カム5の先端とは第3の連結ピン14により回転可能に連結されている。ここで、図4から明らかなように、揺動カム5は各吸気バルブ2ごとに独立している二つのカム本体5a,5bを同軸一体に形成したものであり、その一方のカム本体5aに第2リンク11が第3の連結ピン14を介して連結されている。
図1,2に示すように、駆動軸4および制御軸7はシリンダヘッド1の上部にそれぞれ回転可能に軸受支持されている。シリンダヘッド1は、ヘッド本体として機能するヘッドロア1aの上面に、複数の軸受キャップを枠状のフレームとともに一体に形成したいわゆるラダーフレーム構造のラダーカムブラケット1bを着脱可能に装着したもので、ヘッドアッパとして機能するラダーカムブラケット1bは複数の取付ボルト15によりヘッドロア1aに締結固定されている。そして、駆動軸4および制御軸7ともに平行状態を保ちながら気筒列方向に延びていて、駆動軸4はヘッドロア1aとラダーカムブラケット1bに挟持されるようにして軸受支持されている一方、制御軸7はラダーカムブラケット1bの上面に載置された上で、ラダーカムブラケット1bに対してボルト締め固定される軸受キャップ16にて軸受支持されている。
なお、先に述べたように気筒列方向に延びている駆動軸4および制御軸7は気筒列を構成する複数の気筒に共用されるのに対して、リフト・作動角可変機構3の構成部品である揺動カム5、ロッカアーム9、第1リンク10、第2リンク11等は気筒列を構成する個々の気筒毎に独立して設けられている。
このようなリフト・作動角可変機構3では、クランクシャフトに連動して駆動軸4が回転すると、偏心カム6および第1リンク10を介してロッカアーム9が揺動動作し、このロッカアーム9の揺動運動が第2リンク11を介して揺動カム5に伝達されて、その揺動カム5が揺動動作することになる。そして、揺動カム5の揺動運動に伴い、吸気バルブ2の上方に設けたバルブリフタ17に接触してこれを押圧することにより、吸気バルブ2がバルブスプリング18(図2参照)の反力に抗して開閉作動、すなわちリフト動作することになる。
その一方、回転型アクチュエータの作動により制御軸7の回転位置を変更すると、ロッカアーム9の揺動支点である偏心カム8の中心位置が変化する。これにより、揺動カム5の揺動範囲が変化して、クランク角(クランクシャフトの回転位置)に対する吸気バルブ2の作動角の中心位相がほぼ一定のままで、吸気バルブ2のリフト量(最大リフト量)および作動角の双方の大きさが連続的且つ無段階に変化する。このリフト・作動角可変機構3の制御状態は、例えば制御軸7の回転位置に応答する角度センサである制御軸センサ(リフトセンサ)によって検出される。
このようなリフト・作動角可変機構3によれば、例えばリフト量が1mm以下の極小リフト域を用いることにより、スロットルバルブに依存することなく吸入空気量を幅広く調整することが可能で、いわゆるスロットル損失を大幅に軽減もしくは解消することが可能となる。ただし、このような極小リフト領域では、気筒間でのわずかなリフト量ばらつきが比較的大きな吸入空気量のばらつきとなって表れるので、リフト量を所定の管理限界内(寸法公差内)に入るように精度良く調整し、気筒間のリフト量のばらつきをを極力小さくすることが重要である。
本実施の形態では、上記リフト・作動角可変機構3を構成することになるロッカアーム9と第2リンク11とを連結している第2の連結ピン13の位置を調整することにより、リフト量の調整を可能としている。
図5〜7は上記ロッカアーム9と第2リンク11とのピン連結部を示している。ロッカアーム9は、制御軸7側の偏心カム8に回転可能に嵌合することになる環状部19を有する変形アーム状のものであって、一端には第1リンク10との結合部となる第1の連結ピン12が一体に突設されているほか、他端には第2リンク11との連結部として機能するアームエンド20が一体に形成されている。そして、アームエンド20には第2の連結ピン13が挿入される長穴状のピン挿入穴21が形成されている。
なお、第1の連結ピン12とアームエンド20とは環状部19の軸心方向で互いにオフセットしている。また、アームエンド20に形成されたピン挿入穴21の短径をロッカアーム9自体の長手方向にほぼ一致させてあることから、ピン挿入穴21はそれ自体の長径方向に移動可能に第2の連結ピン13を受容することになる。
第2の連結ピン13が挿入されることになるアームエンド20には、調整ねじとして機能することになるアジャストボルト22とロックねじとして機能することになるロックボルト23を、長穴状のピン挿入穴21を挟んで互いに同軸線上に位置するようにその上下に対向配置してある。すなわち、アームエンド20にはピン挿入穴21に開口するめねじ24,25をそれぞれ形成してあるとともに、一方のねめじ24には六角穴26付きのアジャストボルト22を、他方のめねじ25には六角形の頭部27を有するロックボルト23をそれぞれ螺合させてある。
ここで、アジャストボルト22は六角穴26に図3に示す六角レンチタイプのビット28を挿入・嵌合させてその回転操作を行うものであるから、ロックボルト23の方向からのビット28の挿入が可能なようにロックボルト23は貫通穴29を形成して中空状のものとしてある。他方、ピン挿入穴21に挿入されることになる第2の連結ピン13には図5に示すように二面幅部30を形成してあるとともに、その二面幅部30,30間にはロックボルト23と同様に貫通穴31を形成してある。
そして、図5から明らかなように第2リンク11の一端の二股状の側片部11aには第2の連結ピン13と嵌合可能なピン穴32を形成してあることから、その二股状の側片部11a,11a間にアームエンド20を挟み込むようにしてピン挿入穴21とピン穴32とを合致させた上で、それらのピン挿入穴21およびピン穴32に第2の連結ピン13を挿入してある。さらに、ピン挿入穴21に挿入された第2の連結ピン13の上下からアジャストボルト22とロックボルト23をそれぞれに締め込んで二面幅部30に着座させることで、アームエンド20に対して第2の連結ピン13を圧締固定してある。これにより、二面幅部30はアジャストボルト22とロックボルト23が着座する着座面として機能することになる。
なお、第2の連結ピン13の端面にはピン挿入穴21と同方向を長径とする長穴状の窪み33を形成してあり、双方の長穴状の長径を合致させることで、第2の連結ピン13の二面幅部30を上記長径方向に合致させることができるように考慮してある。したがって、この状態では、ロックボルト23の貫通穴29と第2の連結ピン13の貫通穴31のほか、アジャストボルト22の六角穴26が互いに同一軸線上において連通するかたちとなる。
以上により、長穴状のピン挿入穴21に沿って移動可能ではあっても通常は所定の位置に回転不能に拘束されることになる第2の連結ピン13を介して、ロッカアーム9と第2リンク11とが相対回転可能に連結されており、リフト量調整に関与する主機能部品であるところの第2の連結ピン13とアジャストボルト22およびロックボルト23の三者をリフト量調整部品として、これらをもってリフト量調整手段たるリフト量調整機構145を形成している。
このようなリフト・作動角可変機構3のバルブリフト量調整を行うには、ロッカアーム9と揺動カム5とを連結している第2リンク11のリンク長を調整することで行うものとする。
これに先立ち、各リフト・作動角可変機構3のリフト量が最小となる回転位置に制御軸7を割り出した上で、駆動軸4を低速にて回転させて、その時の各リフト・作動角可変機構3ごとのリフト量を予め測定し、必要なリフト調整量を予め把握しておく。
続いて、図3に示すように、六角形のソケット34をロックボルト23の頭部27に嵌合させた上でそれを回転操作して緩め、長穴状のピン挿入穴21の長径方向において第2の連結ピン13の位置の自由度を持たせる一方、ロックボルト23側からビット28を挿入してアジャストボルト22の六角穴26に嵌合させる。そして、アジャストボルト22を正転方向もしくは逆転方向に所定量だけ回転操作して、すなわち、予め把握してあるリフト調整量に必要な量だけアジャストボルト22を回転操作して、第2の連結ピン13の位置を調整した上で、再びロックボルト23を締め付けて第2の連結ピン13を固定する。こうすることにより、ロッカアーム9と揺動カム5とを連結している第2リンク11のリンク長、すなわち第2の連結ピン13と第3の連結ピン14とのなす軸心間距離が変化し、その結果として、リフト・作動角可変機構3のリフト量および作動角の調整が可能となる。
このように、かかるリフト・作動角可変機構3によれば、ソケット34によるロックボルト23の回転操作と、ビット28によるアジャストボルト22の回転操作とを、同一もしくは単一方向から行えるように考慮されていることから、リフト量の調整をきわめて容易に行うことができる。
ここで、図2に示すように、各リフト・作動角可変機構3のリフト量の調整に先立って、各リフト・作動角可変機構3のリフト量が最小となるように制御軸7を割り出した場合に、各ロックボルト23の頭部27がラダーカムブラケット1bの上面よりも上方に位置するように予め設定してあることがリフト量調整の作業性および操作性向上の上で望ましい。
なお、以上のようなリフト量調整機構は、先に本出願人が特願2004−332623として出願している内容である。
次に、上記のようなリフト・作動角可変機構3のリフト量の測定および調整作業の自動化を図った装置の一例について説明する。
リフト・作動角可変機構3でのバルブリフト量の測定および調整に際して、リフト・作動角可変機構3をシリンダヘッド1に組み付けた状態において燃焼室に面したバルブ端面をリフト量測定部位としたのでは、同部位がいわゆる黒皮のままであることが多く、リフト量調整以前にそもそもリフト量の測定精度の向上に限界があることは先に述べた。
そこで、本実施の形態では、リフト・作動角可変機構3のバルブリフト量の測定および調整作業を機構単体の状態で行うに当たり、リフト・作動角可変機構3をシリンダヘッド1に組み付けることなく、そのヘッドロア1aの形状を模した専用の位置決め治具50を用いて行うものとし、同時にバルブ端面ではなく揺動カム5のカム面をリフト量の測定部位としてリフト量測定を行うことを前提とする。
図8,9はその位置決め治具50の詳細を示しており、図1,2と比較すると明らかなように、位置決め治具50は正規のシリンダヘッド1のヘッドロア1aとその形状がほとんど同一ではあるものの、バルブ挿入穴に相当する部分のみ例えばバルブリフタ17の径と同サイズの貫通穴51をもって貫通させてあり、この貫通穴51が後述するようにバルブリフト量測定のためのリフト量測定手段の挿入穴として機能することになる。すなわち、位置決め治具50は正規のヘッドロア鋳造用の鋳型を用いて鋳造して上で、シリンダブロックやラダーカムブラケットとの接合面となる上下面の加工、各種の取付穴やロケート穴の加工、ジャーナル部の加工等を正規のヘッドロア1aと同様に行った上で、先に述べたバルブ挿入穴に相当する部分に貫通穴51を形成したものである。
そして、図8,9に示すように、予めラダーカムブラケット1bを母体として各リフト・作動角可変機構3を予め仮組みしておく。つまり、ラダーカムブラケット1bに制御軸7を載せた上でその制御軸7用の軸受キャップ16をラダーカムブラケット1bに対してボルト締め固定しておけば、第1,第2リンク10,11が正しく連結されているかぎりは、駆動軸4はラダーカムブラケット1bから垂れ下がることはあっても脱落することはない。その上で、図9に示すようにラダーカムブラケット1bとともに駆動軸4を位置決め治具50のジャーナル部上に載せて一次的に位置決めしておく。ただし、図2と比較すると明らかなように、ラダーカムブラケット1bは位置決め治具50に対して取付ボルト15にて固定することはしないものとする。以上をもってリフト・作動角可変機構3のバルブリフト量の測定および調整のための前準備が完了する。
図10は、図8,9の形態での位置決め治具50を用いてリフト・作動角可変機構3のバルブリフト量の測定および調整を行うための装置の構造を示している。
枠状のフレーム52には水平なテーブル53が配置されており、このテーブル53は、それ自体から垂下したガイドロッド54と下段フレーム要素55から立設したガイドスリーブ56とからなる昇降ガイド機構をもって昇降可能に案内支持されている。そして、テーブル53の中央部の所定位置に先に述べた位置決め治具50が位置決め載置されるようになっていて、そのテーブル53上には位置決め治具50をはさんでその両側に駆動軸ドライブユニット57とトグルクランプ機構58を対向配置してある。
また、下段フレーム要素55上には、後述するリフト量測定ユニット59とともに、リフター60が立設してある。リフター60は、リフターテーブル61上に左右で対をなす押し上げアーム62を設けてあり、リフトシリンダ64にてリフターテーブル61を上昇動作させることで押し上げアーム62がテーブル53側の当て板63に当接し、テーブル53を所定量だけリフトアップ動作させるようになっている。
一方、フレーム52の上部フレーム要素65には位置決め治具50の上方に相当する位置に複数のクランプ駒66を配置してあるとともに、リフト量調整操作手段としてのリフト量調整操作ユニット67を搭載してある。そして、先に述べたようにリフター60にてテーブル53を押し上げることにより、押し上げアーム62とクランプ駒66にて位置決め治具50を強固に位置決めクランプするようになっている。
ここで、各クランプ駒66は、図1,2に示すようにシリンダヘッド1のヘッドロア1aに対してラダーカムブラケット1bを固定するための取付ボルト15の位置(図8に示すラダーカムブラケット1b取付用のボルト穴の位置)と同じ位置に同数だけ設定されている。
したがって、先に述べたようにリフター60のリフトアップ動作に基づいて、押し上げアーム62とクランプ駒66にてその圧締状態をもって位置決め治具50を位置決めクランプしたときには、リフター60による押し上げ力(シリンダの出力)を適宜調整することで実際のエンジン組立状態と同等の状態を再現できるように、すなわちリフト・作動角可変機構3を正規トルクにてシリンダヘッド1にボルト締めした場合に発生する締結力と同等の押し付け力でそのリフト・作動角可変機構3を位置決め治具50に対して位置決め固定するようになっている。
下部フレーム要素55上のリフト量測定ユニット59はシフトシリンダ68の伸縮作動に応じてガイドレール69上を水平移動可能なシフトテーブル70に搭載してあり、ガイドロッド71とそれを受容するガイドチューブ72とからなる昇降ガイド機構と、同じくシフトテーブル70に垂設したリフトシリンダ73をもって昇降動作させるように構成してある。そして、図10に示すように、仮にリフト量測定ユニット59が位置決め治具50の最も右側の気筒の真下に位置しているものとすると、リフト量測定ユニット59は気筒間ピッチを一回のシフトピッチとして気筒列方向に複数段階にわたってそのシフト動作が可能となっている。
なお、上記リフト量測定ユニット59側でのガイドロッド71とガイドチューブ72とからなる昇降ガイド機構とリフトシリンダ73との組み合わせは、リフター60側でも同様に採用されている。
また、リフト量測定ユニット59は、図11に示すように位置決め治具50のバルブ挿入穴に相当する貫通穴51(図9参照)から挿入されて揺動カム5における一対のカム本体5a,5b(図2〜4参照)に当接可能な一対の測定子74を主要素とするもので、各測定子74はガイドブロック75にガイドブッシュ77を介して昇降可能に案内支持させたガイドロッド76の上端に装着してある。その一方、ガイドロッド76の下端は中間プレート78を介して予圧用シリンダ79のピストンロッド80に連結してあるとともに、ガイドロッド76の下端にはボルト形状の接触子81を介してリニアタイプの変位計であるリニアゲージ82の入力ロッド82aを当接させてある。なお、接触子81は中間プレート78をガイドロッド76に固定する機能を併せ持っている。
ここで、上記予圧用シリンダ79はシリンダチューブ内に所定の液体を封入することにより強力な流体ばねとして機能するようにしたもので、ガイドロッド76に対して常時上向きの付勢力を付与している。そして、予圧用シリンダ79のばね力としては、図2に示すように正規のエンジン組立状態においてバルブスプリング18がバルブリフタ17に及ぼすばね力と同等の大きさに設定してある。
したがって、リフトシリンダ73の伸長動作により測定子74を上昇させると、図11に示すようにガイドロッド76が位置決め治具50の貫通穴51に挿入されて、測定子74が揺動カム5のカム本体5a,5bに個別に圧接して、後述するようにこの状態でバルブリフト量の測定が行われることになる。その際に、予圧用シリンダ79のばね力が揺動カム5に作用することになり、それによって、実際のエンジン組立状態を再現するべく、エンジン組立状態におけるバルブスプリング18(図2参照)の力と同等の押し付け力をもって揺動カム5のカム面に測定子74を押し付けることができる。
図10において、テーブル53上に配置された駆動軸ドライブユニット57は、シフトシリンダ83の伸長動作によりガイドレール84上をスライド動作するスライドテーブル85にモータ86駆動の円板状のドライブプレート87を設けたもので、ドライブプレート87は駆動軸4と同一軸線上においてその駆動軸4の軸端のフランジ部4a(図8参照)と正対している。なお、フランジ部4aにはその軸心からオフセットした位置にダウエルピン4bを突設してある。また、モータ86としては、ドライブプレート87を指定した任意の回転位置まで回転させた上でその位置で定角停止可能ないわゆるオリエンテーリング(割り出し)機能付きのものが採用されている。
より詳しくは、図12に示すように、スライドテーブル85上のホルダ88にベアリング89を介してドライブシャフト90を回転可能に支持させるとともに、そのドライブシャフト90をモータ86の回転軸91にカップリング92を介して連結してある。さらに、ドライブシャフト90には先端にドライブプレート87を有するサポートシャフト92をスライド可能に挿入してあるとともに、ドライブプレート87とドライブシャフト90との間に介装した圧縮コイルスプリング93によってサポートシャフト92体を前方側に付勢している。なお、サポートシャフト92はドライブシャフト90対してスライド可能ではあるものの、サポートシャフト92を径方向に貫通するピン94とドライブシャフト90側の長穴95との係合のために両者の相対回転は不能となっており、同時に長穴95の範囲内でのみドライブシャフト90に対してサポートシャフト92のスライド動作が可能となっている。また、ドライブプレート87には、駆動軸4の軸端のフランジ部4aに突設したダウエルピン4bを受容する位置決め穴96を形成してある。
図10において、テーブル53上のトグルクランプ機構58は、同図から明らかなように位置決め治具50上の制御軸7に近接するように配置してあり、エアシリンダ97の伸長動作によりクランプレバー98がスイング動作して、制御軸7を所定の割り出し位置に割り出して位置決めクランプする機能を有している。より詳しくは、制御軸7の軸端には図13の(A)に示すように略楕円形もしくは略菱形状のフランジ部7aが形成されているとともに、同図(B)および図8にも示すように、制御軸7にはそのフランジ部7aに近接するようにストッパーリング99が止めねじ100にて固定されている。このストッパーリング99は、正規のエンジン組立状態において制御軸7をラダーカムブラケット1bに軸受支持させる際にそのラダーカムブラケット1b自体の回転範囲を機械的に制限するために設けられるもので、図13の(B)に示すようにストッパーリング99のストッパー面99a,99b以外の円筒面がラダーカムブラケット1b側のジャーナル101に軸受支持される。
そこで、先に述べたようにリフト・作動角可変機構3を位置決め治具50に位置決め支持させた状態では、ストッパーリング99の一方のストッパー面99aをラダーカムブラケット1b側のストッパー面101aに着座させることで、ラダーカムブラケット1bに対する制御軸7の回転方向の割り出しとその位置決めを行うものとし、先に述べたトグルクランプ機構58のクランプレバー98を制御軸7の軸端におけるフランジ部7aの一辺部102に押し当てて拘束することで、同図(B)に示したようにストッパーリング99の一方のストッパー面99aをラダーカムブラケット1b側のストッパー面101aに着座させてその状態を保持するようになっている。
また、図10に示すテーブル53上には上記トグルクランプ機構58に近接して非接触式のセンサ102を設けてある。他方、図8に示すように駆動軸4の軸端に偏心カム6の位相を検出するための突起付きのセンシングプレート103を設けてあることから、センサ102はセンシングプレート103側の突起を検知可能なように配置してあり、このセンサ102によって各偏心カム6の位相が検出されるようになっている。
また、図10において、上部フレーム要素65上のリフト量調整操作ユニット67は、例えば図5に示したロッカアーム9と第2リンク11との連結部におけるアジャストボルト22とロックボルト23を回転操作するために設けられているもので、例えば同図に示すようにバルブリフト量の測定の際には図10に実線で示す退避位置で待機しているものの、後述するようにリフト量の調整の際にはそれぞれのリフト・作動角可変機構3のロックボルト23等の位置まで気筒列方向にスライド移動可能となっている。
より詳しくは、多段停止動作が可能なシフトシリンダ104の伸縮作動に応じてガイドレール106a上をスライド可能なスライダ106に対して同じくリフトシリンダ105の伸縮作動に応じて昇降可能なバーチカルスライダ160を搭載して、そのバーチカルスライダ160に対し、図14に示すようにアジャストボルト22の操作のための調整ねじ操作手段として機能するナットランナー107とロックボルト23の操作のためのロックねじ操作手段として機能するナットランナー108とを並設してある。さらに、各ナットランナー107,108の下側にはギヤボックス109を配置し、そのギヤボックス109からは、ロックボルト23の回転操作のための六角形のソケット34と、アジャストボルト22の回転操作のための操作治具として機能する六角形のビット28とを突出させてある。
すなわち、図14は上記ソケット34やビット28を含むギヤボックス109の詳細を、図15は同図の要部下面図をそれぞれ示している。同図に示すように、アジャストボルト22の回転操作のためのナットランナー107側では、中空状のベアリングホルダ110に対しその外側にベアリング111を介して同じく中空状のソケットホルダ112を回転可能に支持させてある。ソケットホルダ112の外周にはドリブンギヤ113をキー114を介して固定するとともに、ソケットホルダ112の下部には先端に六角穴115を有するソケット34を上下動可能で且つ相対回転不能に内挿してある。つまり、ソケットホルダ112の内周に形成したガイド溝116に対してソケット34の外周に形成したガイド突起117を摺動可能に噛み合わせてあるとともに、ソケットホルダ112の内底面とソケット34との間には圧縮コイルスプリング118を介装してあり、これによりソケット34はソケットホルダ112に対して回転不能ではあるものの、上下動可能となっている。
また、同じくソケットホルダ112の内部において、ナットランナー107の回転軸119には中間ロッド120の大径部を外挿するかたちで相対回転不能に連結するとともに、さらに中間ロッド120にはビットホルダ121を外挿するかたちで相対回転不能で且つ上下動可能に連結してある。つまり、中間ロッド120側のピン122とビットホルダ121側の長穴123との係合をもって中間ロッド120とビットホルダ121とを相対回転不能で且つ上下方向に相対移動可能に連結してあり、両者の間に介装した圧縮コイルスプリング124をもってビットホルダ121を常時下方に付勢している。そして、ビットホルダ121の先端にはビット28を着脱可能に装着してあり、したがってビット28はソケット34と同心状をなしながらそのソケット34を貫通して下方に突出している。
他方、ロックボルト23の回転操作のためのナットランナー108側では、中空状のベアリングホルダ125に対しその内周側にベアリング126を介して中間ロッド127を回転可能に支持させてあり、その中間ロッド127をナットランナー108側の回転軸128に相対回転不能に連結してある。そして、中間ロッド127にはドライブギヤ129をキー130をもって固定してあり、ドライブギヤ129はソケットホルダ112側のドリブンギヤ113に噛み合っている。したがって、ナットランナー108の起動によりソケット34が正転または逆転動作し、逆にナットランナー107の起動によりビット28が正転または逆転動作することになる。
なお、上記のようなリフター60やリフト量測定ユニット59、駆動軸ドライブユニット57、トグルクランプ機構58、およびリフト量調整操作ユニット67等の作動制御のほか、後述するリフト量調整部品の組付異常の検出は図10に示す制御盤140が司っている。同時に、後述するように制御盤140はリフト量調整部品の組付異常を検出する判定手段としても機能することになる。
次に上記のようなバルブリフト量測定および調整装置の一連の動きを図16,17のフローチャートを参照しながら説明する。
リフト・作動角可変機構3を有するエンジンの性能を最大限に発揮させるためには、リフト・作動角可変機構3個々のバルブリフト量を規定値となるように管理することもさることながら、複数の気筒間でのリフト量のばらつきを±0.05mm以下に押さえることが重要であることは先に述べた。
そこで、本実施の形態では、図1に示すように3気筒分のリフト・作動角可変機構3が横一連に並設されている点を考慮し、それぞれのリフト・作動角可変機構3のリフト量を測定したならば、最小リフト量となるリフト・作動角可変機構3を特定する。その上で、特定したリフト・作動角可変機構3の最小リフト量を基準として、その最小リフト量に対する他の二つのリフト・作動角可変機構3のリフト量の差をそれぞれに求め、その差が管理限界(例えば、先に述べた0.05mm)を越えている場合に、該当するリフト・作動角可変機構3のリフト量調整を行うものとする。
先に述べたように、リフト・作動角可変機構3が一次的に位置決めされた位置決め治具50が図8,9の状態で前工程にて待機していることから、図示外のローダが位置決め治具50を把持して図10のテーブル53上の所定位置にセットする(図16のステップS1)。
位置決め治具50がテーブル53上の所定位置に位置決めされると、リフター60がリフトアップ動作して位置決め治具50をテーブル53ごと押し上げて、クランプ駒66との間に位置決めクランプする(ステップS2)。この場合、リフター60とクランプ駒66によるクランプ形態では、先にも述べたようにリフト・作動角可変機構3を正規トルクにてシリンダヘッドにボルト締めした場合と同等の位置および締結力(押し付け力)で位置決め固定するように予め設定してあることから、そのクランプ状態をもって正規のエンジン組立状態が再現されることになる。
続いて、テーブル53上で待機しているトグルクランプ機構58が作動して、図13に示すように制御軸7の軸端のフランジ部7aの一辺部を押圧することにより、ストッパーリング99側のストッパー面99aとラダーカムブラケット1b側のストッパー面101aとを圧接させた上でその状態を保持する。これにより、最小リフト量となる回転位置に制御軸7が割り出されて位置決めされる(ステップS3)。
さらに、同じくテーブル53上で待機している駆動軸ドライブユニット57が前進動作して、図8および図10,12に示すように先端のドライブプレート87を駆動軸4の軸端のフランジ部4a(図8参照)に圧接させる一方(ステップS4)、リフト量測定ユニット59が上昇動作して、図11に示すようにリフト・作動角可変機構3の揺動カム5を形成している一対のカム本体5a,5bに対して測定子74を圧接させる(ステップS5)。この場合、先にも述べたようにカム本体5a,5bには正規のエンジン組立状態でのバルブスプリング(図2参照)のばね力に相当する予圧用シリンダ79のばね力が作用することから、これによってもまたエンジン組立状態が再現される。
この状態で、モータ86の起動によりドライブプレート87が回転し(ステップS6)、図12に示すように、ドライブプレート87が少なくとも一回転する間にそのドライブプレート87側の位置決め穴96と駆動軸4のフランジ部4aにおけるダウエルピン4bとが相互に合致して係合することから、さらに駆動軸4が所定量だけ回転駆動されることにより、図11に示したリニアゲージ82によって揺動カム5におけるカム本体5a,5bのリフト量が個別に測定され、その実測データは制御盤140側のデータ記憶部に記憶・蓄積される(ステップS7)。
この後、駆動軸ドライブユニット57におけるドライブプレート87の回転が停止する一方(ステップS8)、リフト量測定ユニット59が一旦下降動作する(ステップS9)。
リフト量測定ユニット59が下降すると、多段停止が可能なシフトシリンダ68の伸長動作に基づいてリフト量測定ユニット59が1ピッチ分だけ図10の左方向にシフト動作し、隣の気筒のリフト・作動角可変機構3の真下に移動する。以降は先に述べたステップS5〜ステップS9までの動作を繰り返し、2番目および3番目の気筒のリフト・作動角可変機構3について、それぞれの揺動カム5におけるカム本体5a,5bのリフト量を測定する。
以上をもって、3気筒分のリフト・作動角可変機構3について、それぞれの揺動カム5におけるカム本体5a,5bのリフト量測定が終了する。
ここで、先に述べたようにそれぞれのリフト・作動角可変機構3における揺動カム5を形成している一対のカム本体5a,5bのリフト量を個別に収集してはいても、揺動カム5に付帯しているリフト量調整機構は一つ、すなわち図5に示したリフト量調整のためのロックボルト23やアジャストボルト22は一対のカム本体5a,5bが共有していることから、各カム本体5a,5bごとに個別にリフト量調整を行うことはできない。
そこで、制御盤140のデータ処理部では、各リフト・作動角可変機構3における一対のカム本体5a,5bのリフト量の平均値、すなわち二つ一組のカム本体5a,5bの実測リフト量データの平均値を予め算出し、これらの平均値を各リフト・作動角可変機構3ごとの(気筒ごとの)リフト量データとする。そして、3気筒分のリフト・作動角可変機構3のリフト量データ相互に照合して、最小リフト量となるいずれかのリフト・作動角可変機構3を特定する。その上で、特定したリフト・作動角可変機構3の最小リフト量を基準として、その最小リフト量に対する他の二つのリフト・作動角可変機構3のリフト量の差をそれぞれに求め、その差が管理限界値(例えば、先に述べた0.05mm)を越えている場合に該当するリフト・作動角可変機構3を「要リフト量調整」として特定した上で、その該当するリフト・作動角可変機構3についてリフト量調整作業を実行するものとする。
さらに、「要リフト量調整」として特定されたリフト・作動角可変機構3については、先に述べた最小リフト量との差がそのままリフト量調整量となるが、データ処理部に予め設定してあるところのリフト量調整量−アジャストボルト調整角の相関に関するマップと照合して、そのリフト量調整量をアジャストボルト22の調整角(回転操作角)を換算して予め求めておく。そして、このアジャストボルト22の調整角データは後述するリフト量調整操作ユニット67に指令として与えられる。
代わって、図10,14に示した多段停止が可能なエアシリンダ104の伸長動作に基づきリフト量調整操作ユニット67がシフト動作を開始し、「要リフト量調整」と特定されたリフト・作動角機構3の真上で停止する(ステップS10)。この状態では駆動軸ドライブユニット57がなおも前進したままの状態にあることから、モータ86の再起動により駆動軸4を回転させて、リフト量調整操作ユニット67によるロックボルト23等の操作が容易な回転位置に割り出す(ステップS11)。つまり、図9に示したようにロッカアーム9に付帯しているロックボルト23の軸心が最も鉛直状態に近い位置となる回転位置に駆動軸4を割り出す。
その状態で、図14に示したリフト量調整操作ユニット67側のソケット34およびビット28が下降動作し(ステップS12)、図3に示すようにビット28をロックボルト23の貫通穴29に通してアジャストボルト22に、ソケット34をロックボルト23にそれぞれ押し付ける。なお、この押し付けの際に、ビット28とアジャストボルト22同士、およびソケット34とロックボルト23同士が正しく嵌合することもあるが、この時点ではそれぞれに押し付けられているだけで必ずしも嵌合する必要はない。
これと相前後して、ナットランナー107の起動によりビット28が低トルクにて左回転駆動(アジャストボルト22およびロックボルト23が共に右ねじとすれば、ビット28の回転方向はアジャストボルト22を上方に移動させる方向)される一方、ナットランナー107自体のトルク管理機能によりトルクアップを感知した時点でそのビット28の回転が停止する(ステップS13)。これは、六角レンチとして機能することになるビット28がアジャストボルト22の六角穴26に正しく嵌合したことにほかならない。
続いて、もう一方のナットランナー108が起動してソケット34を左回転駆動させる(図17のステップS14)。この際に少なくともソケット34が一回転すればソケット34とロックボルト23の頭部27が嵌合することから、それ以上の回転量をもってロックボルト23緩めることになる。
この後、ビット回転駆動用のナットランナー107が再起動して、先の求めたリフト調整量に相当する調整角度だけアジャストボルト22を左回転させて、つまり図5に示したアジャストボルト22を上昇変位させて、リフト量が小さくなる方向にリフト量調整を行う(ステップS15)。そして、所定量だけアジャストボルト22を回転操作したならば、代わってソケット回転駆動用のナットランナー108が再起動して、ソケット34を右回転させることでロックボルト23を締め込んでロックする(ステップS16)。すなわち、図5に示したように、先に回転操作したアジャストボルト22の変位に応じて第2の連結ピン13の位置が微調整されることから、ロックボルト23の締め付けをもって第2の連結ピン13をその位置にロックする。
以上をもってリフト量調整操作ユニット67によるリフト量調整作業が終わり、そのリフト量調整操作ユニット67が一旦上昇動作するとともに、もう一つのリフト・作動角可変機構3についてリフト調整の必要がある場合には、リフト量調整操作ユニット67は該当する位置まで再度シフト動作して上記の同様のリフト量調整を行う一方、他にリフト量調整の必要がない場合にはリフト量調整操作ユニット67は当初の退避位置に戻る(ステップS17)。
こうして、リフト量測定に続くリフト量調整を終えたならば、先のステップS5〜ステップS9までの動作を繰り返して、それぞれのリフト・作動角可変機構3について再度リフト量測定を行った上で、その適否判定を行う(ステップS18,S19)。
リフト量の再測定の結果、いずれかのリフト・作動角可変機構3についてリフト量調整の必要がある場合には、先の再測定および再調整のステップを繰り返す。
この後、各気筒間、すなわち3気筒分のリフト・作動角可変機構相互間のリフト量ばらつきが管理限界値内におさまっていることを条件に、リフター60がリフトダウンしてそれまでの位置決め治具50の位置決めクランプ状態を解除し(ステップS20)、さらに駆動軸ドライブユニット57が退避動作するとともに(ステップS21)、トグルクランプ機構58がアンクランプ動作してそれまでの制御軸7の位置決めクランプ状態を解除し(ステップS22)、一連のリフト量測定および調整作業が完了する。そして、最後に図示しないローダが位置決め治具50を取り出すことになる(ステップS23)。
ここで、各気筒ごとの調整前および調整後のリフト量データは、図18に示すように基準となる最小リフト量との差およびアジャストボルト22による調整角度とともに、品質管理のために記憶および記録をもって蓄積されるほか、必要に応じて制御盤140の表示部にリアルタイムで可視表示するものとする。
このように上記リフト量測定および調整装置によれば、位置決め治具50を母体として実際のエンジン組立状態と同等の状態を再現した上で、揺動カム5のカム面を測定部位としてリフト量の測定および調整を行うことから、高精度なリフト量測定と調整を行うことができることはもちろんのこと、従来では手作業に依存せざるを得なかったリフト量測定および調整作業の完全自動化を実現できるよ
うになる。
なお、上記の例では、各気筒のリフト・作動角可変機構3についてリフト量が最小になる位置に割り出した上でそれぞれのリフト量を測定し、それら三つのリフト量のうち最も小さなものを基準としたときの気筒間ばらつきが管理限界を超えるものについてのみリフト量調整を行うようしたが、全ての気筒のリフト量が管理限界内におさまるようにそれぞれのリフト・作動角可変機構3のリフト量を個別に調整するようにしてもよい。
ここで、上記リフト・作動角可変機構3の構造が複雑であるが故にその組み立ては手作業にて行われ、リフト量調整部品である第2の連結ピン13やアジャストボルト22およびロックボルト23の組付状態の最終確認もまた目視にて行われることから、万が一リフト量調整部品の脱落や位置ずれ等の組付異常を見逃した場合には、上記のようなリフト量の測定および調整装置では正しい動作ができずに異常停止してしまう可能性があることは先に述べた。
そして、上記リフト・作動角可変機構3では、リフト量調整部品の組付異常として、図19に示すように、(A)の状態をリフト量調整機構145の正常状態とした場合に、同図(B)〜同図(G)に丸囲み数字(1)〜(6)で示す下記の合計6パターンのものが想定される。
・調整ねじであるアジャストボルト22の脱落(または不存在)(異常1)
・調整ねじであるアジャストボルト22の緩み(異常2)
・ロックねじであるロックボルト23の脱落(または不存在)(異常3)
・ロックねじであるロックボルト23の緩み(異常4)
・主機能部品である第2の連結ピン13の脱落(異常5)
・主機能部品である第2の連結ピン13の回転ずれ(異常6)
そこで、図16に示したフローチャートのステップS4の後であって且つステップS5の前に、上記6パターンの組付異常の検出を目的として予め図20に示すような組付異常検出処理を実行するものとし、その組付異常検出処理に備えて、図14に示すようにビットホルダ121の上端にはフランジ部141a付きのスリーブ141を設けてあるとともに、ベアリングホルダ110には検出手段として上記スリーブ141のフランジ部141aを近接体とする近接センサLS1,LS2を上下二段にわたって設けてある。そして、後述するようにリフト量調整機構145のアジャストボルト22およびロックボルト23を仮締め操作した時の着座トルク発生の有無と、近接センサLS1,LS2にて検知される操作治具であるビット28の高さ位置情報との組み合わせ情報をもって上記6パターンの組付異常を個別に検出することになる。
ここで、図19の各パターンのリフト量調整部品にナットランナー107側のビット28およびナットランナー108側のソケット34の位置関係を加えたものが図21であり、同図から明らかなように、リフト量調整機構145の主機能部品である第2の連結ピン13のほか、アジャストボルト22およびロックボルト23の正規組付状態において、ビット28がアジャストボル22の六角穴26に正しく嵌合した場合、すなわち図21の(A)の「正常状態」のほか、同図(D)〜(F)の異常(3),(4),(5)の場合にそれぞれの状態がスリーブ141のフランジ部141aを近接体とする上側の近接センサLS1のON作動をもって検出され、アジャストボルト22が脱落していて且つビット28を最下降位置まで押し込んでも何物にも接触しない場合、すなわち同図(B)の異常(1)の場合にその状態が下側の近接センサLS2のON作動をもって検出される。同図(C)の異常(2)の場合はアジャストボルト22の緩み量が少ないと近接センサLS1がON作動し、緩み量が多いと近接センサLS2がON作動する。同図(G)の異常(6)の場合には双方の近接センサLS1,LS2は共にOFFのままでON作動しないことになる。
より詳しくは図20のフローチャートに示すように、最初にリフト量調整ユニット67がシフト動作し、いずれかの気筒のリフト・作動角機構3の真上で停止する。つまり、図10,14に示した多段停止が可能なエアシリンダ104の伸長動作に基づきリフト量調整操作ユニット67がシフト動作を開始し、いずれかのリフト・作動角機構3の真上で停止する(ステップS31)。この状態では駆動軸ドライブユニット57がなおも前進したままの状態にあることから(図16のステップS4参照)、モータ86の再起動により駆動軸4を回転させて、リフト量調整操作ユニット67によるロックボルト23等の操作が容易な回転位置に割り出す(ステップS32)。つまり、図9に示したようにロッカアーム9に付帯しているロックボルト23の軸心が最も鉛直状態に近い位置となる回転位置に駆動軸4を割り出す。
その状態で、図14に示したリフト量調整操作ユニット67側のソケット34およびビット28が下降動作し(ステップS33)、図3に示すようにビット28をロックボルト23の貫通穴29に通してアジャストボルト22に、ソケット34をロックボルト23にそれぞれ押し付ける。この押し付けの際に、ビット28とアジャストボルト22同士、およびソケット34とロックボルト23同士が正しく嵌合することもあるが、この時点ではそれぞれに押し付けられているだけで必ずしも嵌合する必要はない。なお、ここまでのステップS31〜S33に関する動きは図16のステップS10〜S12のものと基本的に同様である。
この状態で、ナットランナー108の起動により予め設定されている仮締めトルクにてソケット34が右回転駆動(アジャストボルト22およびロックボルト23が共に右ねじとすれば、ソケット34の回転方向はロックボルト23を第2の連結ピン13に対して締め込む方向)されて、ロックボルト23を仮締めする(ステップS34)。これは、ソケット34がロックボルト23の頭部に正しく嵌合した上で、そのロックボルト23の先端が第2の連結ピン13に着座するまで回転操作することを意味する。そして、ナットランナー108自体のトルク管理機能によりステップS35において着座トルクの発生の有無判定を行い、そのロックボルト23の仮締め時のトルクが予め設定されている着座トルクに達している場合には次のステップS36に移行し、着座トルクが発生していない場合にはステップS37において図19,21,22の(D)に示した異常(3)の「ロックボルト23の脱落」として判定する。
先の図21に上記の着座トルク発生の有無を書き加えたものが図22であり、同図から明らかなようにステップS34のロックボルト23の仮締めとそれに続くステップS35の着座トルク発生の有無判定は、図22の(D)に示した異常(3)の「ロックボルトの脱落」の有無判定を目的としたもので、ソケット34をもってロックボルト23を締め込んでも着座トルクの発生が認められない場合にはロックボルト23の脱落にほかならず、直ちにステップS37のように図22の(D)に示したところの異常(3)の「ロックボルト23の脱落」であると判定する。そして、アラーム等をもってリフト量調整部品の組付異常を「ロックボルト23の脱落」と特定した上でオペレータに告知する。
その一方、ステップS35において着座トルクの発生が認められた場合には、図22の(A)の「正常状態」のほか、同図(E)の異常(4)の「ロックボルト23の緩み」が発生している可能性を残している。しかしながら、少なくともロックボルト23の頭部27とソケット34とが嵌合して仮締め動作が進行すればその「ロックボルト23の緩み」は解消されて図22の(A)の「正常状態」と同じ状態となる。
次のステップS38では、もう一方のナットランナー107の起動により予め設定されている仮締めトルクにてビット28が左回転駆動(アジャストボルト22およびロックボルト23が共に右ねじとすれば、ビット28の回転方向はアジャストボルト22を第2の連結ピン13に対して締め込む方向)されて、アジャストボルト22を仮締めする。これは、ビット28がアジャストボル22の六角穴26に正しく嵌合した上で、そのアジャストボルト22の先端が第2の連結ピン13に着座するまで回転操作することを意味する。そして、ナットランナー107自体のトルク管理機能によりステップS39において着座トルクの発生の有無判定を行い、そのアジャストボルト23の仮締め時のトルクが予め設定されている着座トルクに達している場合には次のステップS40に移行し、着座トルクが発生しない場合にはステップS41において図23の(B)に示した異常(1)の「アジャストボルト22の脱落」あるいは同図(G)に示した異常(6)の「第2の連結ピン13の回転ずれ」として判定する。
なお、図23は図22に上記の着座トルク発生の有無を書き加えたものであり、既に組付異常として特定された異常(3)の「ロックボルト23の脱落」のほか、一旦は異常(4)と判定されながらも既に「正常状態」に復帰している「ロックボルト23の緩み」は図示を省略している。
上記ステップS38のアジャストボルト22の仮締めとそれに続くステップS39の着座トルク発生の有無判定は、図23の(B)に示した異常(1)の「アジャストボルト22の脱落」または同図(G)に示した異常(6)の「第2の連結ピン13の回転ずれ」の発生の有無判定を目的としたもので、ビット28をもってアジャストボルト22を締め込んでも着座トルクの発生が認められない場合には「アジャストボルト22の脱落」または「第2の連結ピン13の回転ずれ」にほかならず、直ちにステップS41のように図23の(B)に示したところの異常(1)の「アジャストボルトの脱落」または同図(G)に示したところの異常(6)の「第2の連結ピン13の回転ずれ」であると判定する。
その一方、ステップS39において着座トルクの発生が認められた場合には、図23の(A)の「正常状態」の場合のほか、同図(C)に示した異常(2)の「アジャストボルト22の緩み」が発生している可能性を残している。しかしながら、少なくともアジャストボルト22の六角穴26とビット28とが嵌合して仮締め動作が進行すればその「アジャストボルト22の緩み」は解消されて同図(A)の「正常状態」と同じ状態となる。
ステップS41において異常(1)の「アジャストボルト22の脱落」または異常(6)の「第2の連結ピン13の回転ずれ」の発生と判定された場合には、次のステップS42で図24の下側の近接センサLS2がONであるかどうかの判定を行う。
なお、図24は図23に上記近接センサLS2の作動状態を書き加えたものであり、既に組付異常として特定された異常(3)の「ロックボルト23の脱落」のほか、一旦は異常(4)と判定されながらも既に「正常状態」に復帰している「ロックボルト23の緩み」、および一旦は異常(2)と判定されながらも既に「正常状態」に復帰している「アジャストボルト22の緩み」は図示を省略している。
つまり、図24の(B)から明らかなようにアジャストボルト22が最初から脱落していれば下側の近接センサLS2がON作動することから、これをもってステップS43にて異常(1)の「アジャストボルト22の脱落」と判定し、また下側の近接センサLS2がOFFであればステップS44にて異常(6)の「第2の連結ピン13の回転ずれ」と判定する。そして、いずれの組付異常の場合であっても、アラーム等をもってリフト量調整部品の組付異常を「アジャストボルト22の脱落」または「第2の連結ピン13の回転ずれ」と特定した上でオペレータに告知する。
このように、下側の近接センサLS2のON−OFF作動状態を組付異常の判定に用いることにより、異常(1)の「アジャストボルト22の脱落」と異常(6)の「第2の連結ピン13の回転ずれ」が特定され、図25のように特定されていない組付異常は異常(5)の「第2の連結ピン13の脱落」だけとなる。
ステップS40において異常(2)の「アジャストボルト22の緩み」が解消されて実質的に正常状態と判定された場合には、次のステップS45で図25の上側の近接センサLS1がONであるかどうかの判定を行う。つまり、図25の(F)から明らかなように第2の連結ピン13が最初から脱落していれば上側の近接センサLS1がOFFとなることから、これをもってステップS46にて異常(5)の「第2の連結ピン13の脱落」と判定し、また上側の近接センサLS1がON作動すればステップS47にて図25の(A)に示した「正常状態」と判定する。そして、異常(5)の「第2の連結ピン13の脱落」と判定した場合には、アラーム等をもってリフト量調整部品の組付異常を「連結ピン13の脱落」と特定した上でオペレータに告知する。
このように、アジャストボルト22およびロックボルト23を仮締め操作した時の着座トルク発生の有無と、近接センサLS1,LS2にて検知される操作治具であるところのビット28の高さ位置情報との組み合わせ情報をもって上記6パターンの組付異常を個別に特定した上で検出することが可能となる。
この後、残る二つの気筒のリフト・作動角機構3についても、同様に上記ステップS34〜S46までの処理を繰り返してリフト量調整部品の組付異常の有無の判定を行う。そして、一つでも組付異常が検出されれば以降のリフト量の測定および調整の動作を停止させ、オペレータに各気筒のリフト・作動角機構3の点検を促す一方、組付異常が全く検出されないことを条件に初めて図16のステップS5以降のリフト量の測定に移行することになる。