JP2007045357A - ステアリングコラム装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
チルト又はテレスコ調整可能であり且つ二次衝突時の衝撃を吸収できるコンパクトなステアリングコラム装置を提供する。
【解決手段】
コラム本体1が二次衝突によりA方向に移動しようとする場合、比較的硬度の高いテレスコ用ローラ8が、矩形開口2aの側面2b、2bに対し、コラム本体1の相対移動とともに塑性変形させていく。この塑性変形に必要なエネルギーと、テレスコ用ローラ8と側面2bとの摺動に必要なエネルギーとが衝撃吸収のために消費される。
【選択図】 図3

Description

本発明は、ステアリングシャフトを、チルト方向及びテレスコ方向の少なくとも一方向に対して調整可能に支持するステアリングコラム装置に関し、特に運転者に快適なドライピングポジションを供するべくステアリングホイールの調整における操作性を向上させ、かつ二次衝突時の衝撃力を吸収できるステアリングコラム装置に関する。
ステアリングコラム装置は、車両の重要安全保安部品であり、衝突時に乗員の安全を確保するために衝突時におけるその挙動を、どのように制御するかが非常に重要である。通常は、ステアリングコラム装置自体に衝撃エネルギー吸収機構を設けるともに、ステアリングホイール内に収納したエアーバッグの支持部材としても重要な役割を担っている。
一方、運転者の運転姿勢を最適にするために、一般的なステアリングコラム装置は、運転者の体格や運転姿勢に応じて、ステアリングホイールの傾斜角度を調整でき、ステアリングホイールの軸線方向位置を調整できるようになっている。従って、ステアリングコラム装置には、コラム本体(即ちステアリングホイール)の位置や姿勢の調整が容易でなければならず、且つ二次衝突時には衝撃力を吸収しなければならないという異なる機能が必要になる。このような異なる機能をコンパクトな構成で実現すべく、従来のステアリングコラム装置では、種々の工夫がなされているが、安全性のより高度な要求や、ユーザーの操作性に対する要求の高まりなどにより、更なる向上が求められている。
従来技術のステアリングコラム装置は、チルト・テレスコ調整機構と共に、衝撃吸収機構を有しているのが一般的であるが、これらは独立して別々の要素となっていることが多く、その場合には、当然構造が複雑となりスぺース、コスト、重量ともに不利になる。
このような問題を解消するために、テレスコ方向の調整用長穴部を改良し衝撃吸収機構を付加したり(特許文献1)、また、テレスコ調整機構をもたず単に長穴を利用して衝撃吸収を行うようにしたものがある(特許文献2,3)。
特開2002−308114号公報 実開昭49−85726号公報 実開昭59−147673号公報
しかしながら、特許文献1に示すように、テレスコ方向の調整用長穴部を改良し衝撃吸収機構を付加した場合、テレスコの調整範囲においては衝撃吸収機能が作用しない。従って、テレスコの調整範囲分の距離にわたっては、衝撃吸収を行うことなくコラムが動くので、その後に急に衝撃吸収が始まると、ステアリングコラム装置から運転者が受けるG(減速度)が高まり、安全上不利になるといった問題点がある。
一方、特許文献2,3に示すように、テレスコ調整機構をもたず単に長穴を利用して衝撃吸収を行う場合、テレスコ調整機構を持たない、もしくは別途独立した機構が必要になり、構造が複雑になるといった問題点がある。
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、チルト又はテレスコ調整可能であり且つ二次衝突時の衝撃を吸収できるコンパクトなステアリングコラム装置を提供することを目的とする。
本発明のステアリングコラム装置は、ステアリングシャフトを、チルト方向及びテレスコ方向の少なくとも一方向に対して調整可能に支持するステアリングコラム装置において、
車体に対して固定された固定部材と、
ステアリングシャフトを回転自在に支持するコラム本体と、
前記コラム本体及び前記固定部材のうちの一方と一体的に変位する駒部材と、
前記固定部材及び前記コラム本体のうちの他方と、前記駒部材との間に介在し、第1の位置に移動することによって、前記他方との摩擦力が大きくなり、第2の位置に移動することによって、前記他方との摩擦力が小さくなる又は前記他方と非接触状態となる楔部材と、
前記楔部材を前記第2の位置へと移動させる駆動部材とを有し、
前記楔部材が前記第1の位置にあるときに、前記ステアリングシャフトに衝撃力が付与された場合、前記駒部材が前記他方に対して相対移動することにより、前記楔部材は前記第3の位置へと移動し、前記楔部材と前記駒部材と前記他方のうち少なくとも1つの変形量は、前記楔部材が前記第1の位置にあるときよりも前記第3の位置にあるときの方が大きいことを特徴とする。
本発明のステアリングコラム装置によれば、前記楔部材を、前記第2の位置へと移動させる駆動部材を有するので、前記駆動部材により、前記楔部材を前記第2の位置へと移動させることによって、前記楔部材と前記固定部材及び前記駒部材の他方との摩擦力を小さくして保持力を弱め或いは非接触状態とし、それにより前記コラム本体を、チルト方向及びテレスコ方向の少なくとも一方向に変位させることができる。一方、前記楔部材が前記第1の位置へと移動することで元に戻れば、いわゆる楔効果によって、前記楔部材と前記固定部材及び前記駒部材の他方との摩擦力を大きくすることができ、それにより前記コラム本体の保持力を高めることができる。特に、本発明は、ギヤを用いていないので無段階で調整行うことができ、多板の摩擦プレートを用いていないので、金属同士のこすり感がなく、コンパクトな構造でコラム本体の位置・姿勢調整ができ、且つ高い保持(ロック)力を得ることができる。
加えて、本発明のステアリングコラム装置によれば、前記楔部材が前記第1の位置にあるときに、前記ステアリングシャフトに衝撃力(運転者の通常の操作で付与される最大の力を超える力をいう)が付与された場合、前記駒部材と前記他方とが相対移動することにより、前記楔部材は前記第3の位置へと移動し、前記楔部材と前記駒部材と前記他方のうち少なくとも1つの変形量は、前記楔部材が前記第1の位置にあるときよりも前記第3の位置にあるときの方が大きいので、前記少なくとも1つの塑性変形を利用して効果的に衝撃力の吸収を行うことができる。又、前記楔部材が変形しつつ前記駒部材と共に前記他方に対して摺動すれば、衝撃力の一部を摩擦熱に変換して吸収することもできる。
なお、本明細書中、「テレスコ方向」とはステアリングシャフトの軸線方向をいい、「チルト方向」とは、それに交差する方向(特に上下方向)をいうものとする。又、「第1〜3の位置」は、前記楔部材と前記駒部材との相対位置をいうが、点でなく所定の範囲であって良い。
更に、前記少なくとも1つの変形を所定量以下に制限する変形制限手段を有すると、前記少なくとも1つの変形が過大になって破壊が生じたり、前記楔部材と前記他方との摩擦力が過大となって摺動が阻止されるなど、衝撃吸収効果を失わせる恐れのある不具合を未然に回避できる。
更に、前記楔部材を、前記第1の位置に向かって付勢するばね部材を有すると、前記駆動部材による駆動がなくなれば、前記ばね部材に付勢されて、前記楔部材が前記第1の位置へと移動するので、自動的に前記楔部材と前記固定部材及び前記駒部材との摩擦力を高めることができるので好ましい。
更に、前記楔部材が接する前記固定部材及び前記駒部材の対向面は、前記第1の位置に向かうにつれて間隔が狭くなっており、前記対向面のなす角度は摩擦角以下であると好ましい。前記対向面のなす角度を摩擦角以下にすることにより、対向面が動こうとするとき 前記楔部材と対向面とがすべることなく噛み込んだ状態となる。これを楔作用という。これにより前記固定部材及び前記駒部材の相対運動を抑えることができる。
更に、前記楔部材はローラであると好ましい。たとえばローラクラッチなどで、ローラとくさびによりロックする手法が知られているが、本発明は、それをステアリングコラム装置のチルト/テレスコ調整後のロック(保持)に適用したものである。通常、ローラクラッチは回転運動を一方向のみロックする機構である。本発明においては、それをステアリングコラム装置のチルト・テレスコ運動を拘束するために用いている。また、本発明においては、一方向(例えば衝突時に力のかかる方向のみ)とすることもできるし、通常使用時の位置・姿勢を保持するためにチルト・テレスコの両方向(例えば テレスコならば伸び縮み両方向)に保持するような機構にすることもできる。
特に、前記楔部材にローラを用いた場合、任意の位置での位置決めが可能で、ギア式のような噛み合い不具合や不連続感を生じることが無い。また、チルト・テレスコ調整時には、前記第2の位置にローラを逃がしておくことにより、金属接触なく或いは僅かな接触のみで調整することができる。以上により、運転者がステアリングホイールを調整する際に、理想の位置・姿勢を確保できると共に、非常に滑らかな動きで調整ができるので操作フィーリングにも優れる。また、ローラと楔作用により非常にコンパクトな占有スぺースで、小型化、軽量化でき、更に非常に高いクランプ力(保持力)を得ることができる。
ただし、前記楔部材はテーパ形状やスプラグ形状であっても良い。
以下、本発明の実施の形態に係るチルト ・テレスコピック式のステアリング装置 を図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態に係るステアリングコラム装置の分解図である。
不図示の車体に対して、ブラケットBKTを介して、板状のチルト用フレーム(固定部材)3が溶接などにより固定されている。一方、角管状のコラム本体1には、剛性を持った板状のテレスコ用フレーム(固定部材)2が溶接等により一体化されている。コラム本体1内には、不図示のステアリングホイールと操舵機構とを連結するステアリングシャフトSが挿通され、不図示のベアリングにより回転自在に支持されている。
一端(図1で左端)に操作レバー4を取り付けたレバーシャフト5は、ステアリングシャフトSを横切る方向に、コラム本体1と、チルト用フレーム3の矩形開口3a及びテレスコ用フレーム2の矩形開口2aとを貫通している。長孔である矩形開口2a、3aは、互いに交差する方向に延在している。
レバーシャフト5には、操作レバー4側から見て、シャフト中央から、押しばね11,テレスコ解除用ブロック12,平面カム10,テレスコ用駒部材6,チルト用駒部材7,平面カム10,チルト解除用ブロック14,押しばね11,面押しブロック13,平面カム18,ワッシャ16,ナット17がこの順序で取り付けられている。なお、レバーシャフト5と一体的に回転するのは、平面カム10,18、ワッシャ16,ナット17のみである。シャフト中央から操作レバー4側の構成については省略するが、同様な構成を有している。
平面カム10に対応して、駆動部材であるテレスコ解除用ブロック12及びチルト解除用ブロック14には、対向カム部(不図示)が形成されており、平面カム18に対応して、面押しブロック13にも、対向カム部13aが形成されている。平面カム10が回転すると、テレスコ解除用ブロック12及びチルト解除用ブロック14の対向カム部に乗り上がるので、両者は離隔する方向に変位する。ただしロック時は離隔している。又、平面カム18が回転すると、面押しブロック13の対向カム部13aに乗り上がるので、両者は離隔する方向に変位する。ただしロック時は離隔している。
レバーシャフト5において、テレスコ用フレーム2の矩形開口2aに対応する位置にテレスコ用駒部材6が取り付けられている。テレスコ用駒部材6と各テレスコ用フレーム2の間には、クランプ用の4つのテレスコ用ローラ8が配されている。なお、テレスコ用フレーム2と、テレスコ用駒部材6と、テレスコ用ローラ8とで、テレスコ方向のロック機構を構成する。
更に、レバーシャフト5には、矩形開口3aに対応する位置にチルト用駒部材7が挿入されている。チルト用駒部材7と各チルト用フレーム3の間には、クランプ用のチルト用ローラ9が配されている。なお、チルト用フレーム3と、チルト用駒部材7と、チルト用ローラ9とで、チルト方向のロック機構を構成する。
図2は、テレスコ用フレーム2と、テレスコ用駒部材6と、テレスコ用ローラ8との関係を示す斜視図であるが、図で手前側がコラム本体1側になる。テレスコ用駒部材6は、図に示すように略十字形状の板材であり、その上下側面の右部には、右方端に向かうにつれて互いに接近する斜面6a、6aが形成され、上下側面の左部には、左方端に向かうにつれて互いに接近する斜面6b、6bが形成されており、各斜面6a、6bの間には凸状ブロック部6cがそれぞれ形成されている。4つのテレスコ用ローラ8は、テレスコ用フレーム2の開口2aにおける平面である側面(図2では上下面)2b、2bと、斜面6a、6bとの間に移動自在に配置されている。互いに対向する側面2b、2bと、斜面6a、6bとのなす角度は、摩擦角以下である。隣接するテレスコ用ローラ8,8間に架橋するようにして、板状のばね部材15がそれぞれ駒部材6の左方端及び右方端に取り付けられており、テレスコ用ローラ8,8を、テレスコ用フレーム2の側面2bとテレスコ用駒部材6の斜面6a、6bの間の間隙が狭くなる方向(凸状ブロック部6cに近づく方向)に向かって付勢している。
矩形開口2aの各側面2bには、ねじ固定してなる一対の硬質ゴム又は樹脂板の第1ストッパ19が、対向するようにして延在しており、また矩形開口2aの端部側面には、樹脂材などからなる第2ストッパ20が接着されている。矩形開口2a内は、第1ストッパ19により仕切られており、通常テレスコ用駒部材6が存在する側をテレスコ調整領域R1とし、それ以外の側を衝撃吸収領域R2とする(図3参照)。
なお、チルト用フレーム3と、チルト用駒部材7と、チルト用ローラ9との関係も、大凡90度方向が変わるのみで同様であるため、説明を省略する。
テレスコ解除用ブロック12は、矩形状のベース12aの四隅から、4本の脚部12bを垂直に延在させている。ローラ8に接近する際に端面当たりを回避して駆動をスムーズに行えるように各脚部12bは先細形状となっているが、先端に面取りを形成しても良い。チルト解除用ブロック14も同様の構成を有する。
本実施の形態の動作について説明する。図3は、テレスコ用フレーム2と、テレスコ用駒部材6と、テレスコ用ローラ8との関係を示す概略図であるが、理解しやすいように左右方向に引き延ばして示しており、また図2とは表裏の関係となっている。図1を参照して、コラム本体1に一体化されたテレスコ用フレーム2内に、レバーシャフト5を介してブラケットBKTと結合されたテレスコ用駒部材6が位置している。テレスコ用フレーム2はコラム本体1とともにテレスコ方向、すなわち図2、3の左右方向に移動できるものとする。
まず、ロックを解除して、チルト・テレスコ位置を調整する手順について説明する。図1において、操作者が操作レバー4を回すと、両面取りしてあるレバーシャフト5が一体的に回転する。レバーシャフト5が回転すると、平面カム10が同時に回転する。
平面カム10が回転すると、押しばね11の作用でチルト解除用ブロック14が、チルト用駒部材7に近接する方向へと移動し、脚部14bがチルト用フレーム3とチルト用駒部材7との間に侵入しながら、側方のチルト用ローラ9を互いに離隔する方向へと駆動する。するとチルト用ローラ9は、チルト用駒部材7の斜面に沿って、チルト用フレーム3の側面との間隙が広がる方向(第2の位置)へと移動するので、ロック状態が解除され、チルト可能な状態になる。
チルト位置調整時には、チルト用ローラ9、9が、チルト用フレーム3の側面3b、3bとチルト用駒部材7の斜面7a、7bの間の間隙が広がる第2の位置へと移動するので、チルト用ローラ9,9と、側面3b、3bとが非接触状態(又は低摩擦力状態)となり、それにより容易にチルト用駒部材7(即ちレバーシャフト5)とチルト用フレーム3とを相対移動できる。
同様に、平面カム10が回転すると、押しばね11の作用でテレスコ解除用ブロック12が、テレスコ用駒部材6に近接する方向へと移動し、脚部12bがテレスコ用フレーム2とテレスコ用駒部材6との間に侵入しながら、側方のテレスコ用ローラ8を互いに離隔する方向へと駆動する(図3(a))。するとテレスコ用ローラ8は、テレスコ用駒部材6の斜面6a、6bに沿って、テレスコ用フレーム2の側面2bとの間隙が広がる方向(第2の位置)へと移動するので、ロック状態が解除され、テレスコ可能な状態になる。
テレスコ位置調整時には、テレスコ用ローラ8、8が、テレスコ用フレーム2の側面2b、2bとテレスコ用駒部材6の斜面6a、6bの間の間隙が広がる第2の位置へと移動するので、テレスコ用ローラ8,8と、側面2b、2bとが非接触状態(又は低摩擦力状態)となり、それにより容易にテレスコ用駒部材6(即ちレバーシャフト5)とテレスコ用フレーム2とを相対移動できる。テレスコ位置の調整は、テレスコ用駒部材6が、移動制限手段である第1ストッパ19又は第2ストッパ20に突き当たり、それ以上の移動を制限されるまでの範囲(テレスコ調整領域R1)内で行うことができる。チルト位置の調整に関しても、同様なストッパを用いて制限することができる。
なお、テレスコ解除用ブロック12とチルト解除用ブロック14とは、樹脂またはプラスチックなどで成形することが望ましい。脚部14bの外側がフレーム2,3と接するため、チルト・テレスコ調整時にする際のガイドとして機能し、摺動抵抗を減少させることができるからである。したがって、チルト・テレスコ調整時に、金属接触などの抵抗がなく、滑らかな調整感を得ることができる。
チルト・テレスコ調整終了後、操作レバー4をロック方向に回転させると、まず最初に、平面カム18の作用により、面押し用ブロック13がレバーシャフト5の軸線方向に変位し、それによりブラケットと一体となったチルト用フレーム3と、コラム本体1と一体となったテレスコ用フレーム2が押付けられコラム本体1を固定する作用が働く。
更に、操作レバー4をロック方向に回転させたとき、平面カム10の作用により、解除用ブロック12、14が押しばね11の付勢力に抗して両側に開かれ、それらの脚部(12b)が抜け出してローラ8、9の駆動を中止するので、ローラ8,9はばね部材(15)により押され、フレーム2,3と駒部材6,7との間の間隙が狭くなる方向(第1の位置)へと移動するが(図3(b)参照)、ロックは主として面押し用ブロック13により行われる。
より具体的には、チルト・テレスコ位置の調整が終了し、駆動部材であるテレスコ解除用ブロック12とチルト解除用ブロック14が退避すると、ばね部材(15)の付勢力により、テレスコ用ローラ8,8及びチルト用ローラ9,9に予圧がかかる。図3(b)においては、テレスコ用ローラ8,8が、テレスコ用フレーム2の側面2bとテレスコ用駒部材6の斜面6a、6bとの間の間隙が小さくなる第1の位置に移動するので、これらとテレスコ用ローラ8,8との摩擦力は増大する。これをロック状態という。同様なロック状態は、チルト用フレーム3と、チルト用駒部材7と、チルト用ローラ9との関係においても生じる。これによりシャフト軸線方向(ステアリングホイール横方向)の拘束と剛性を確保し、かつ、チルト、テレスコ方向は両フレーム間の摩擦力により保持を行うことができる。
ところで、チルト・テレスコ位置の調整が終了した状態においては、面押し用ブロック13によりチルト・テレスコ方向の保持がなされる。しかるに、衝突時の際に、エアバッグを介してステアリングホイール(不図示)に運転者が二次衝突すると、ステアリングシャフトSに衝撃力が作用するが、かかる衝撃力が過大であると、面押し用ブロック13だけでは保持しきれない恐れがある。
これに対し、本実施の形態によれば、二次衝突などの際にステアリングシャフトSに所定値以上の衝撃力が作用すると、コラム本体1と共にテレスコ用フレーム2が、図3(c)のA方向に、レバーシャフト5を介してBKTに固定されたテレスコ用駒部材6に対して相対移動するので、テレスコ用ローラ8が、テレスコ用フレーム2とテレスコ用駒部材6との間における、第1の位置よりより狭い間隙の第3の位置(ここでは凸状ブロック部6cに突き当たる位置)へと移動することとなる。
このとき、テレスコ用ローラ8と、テレスコ用フレーム2の矩形開口2aの側面2b、2bの接触面には非常に高い面圧がかかる。ここで、テレスコ用ローラ8は、焼入れ処理をしておくことで硬度を上げておき、矩形開口2aは焼入れ処理をしないか適度な熱処理や表面改質により、テレスコ用ローラ8より硬度を落としておくと、矩形開口2aの側面2bにテレスコ用ローラ8が食込み塑性変形することとなる。ただし、変形制限手段である凸状ブロック部6cにテレスコ用ローラ8が当接することで、それ以上の塑性変形が制限され、安定した衝撃吸収作用を発揮できる。
このような状態で、コラム本体1が二次衝突により、さらに図3(c)のA方向に移動しようとする場合、コラム本体1の相対移動とともに、比較的硬度の高いテレスコ用ローラ8が矩形開口2aの側面2b、2bに沿って摺動し、側面2b、2bを塑性変形させていく。この塑性変形に必要なエネルギーと、テレスコ用ローラ8と側面2bとの摺動に必要なエネルギーとが衝撃吸収のために消費されていくこととなる。
テレスコ用フレーム2に対して相対移動するテレスコ用駒部材6は、第1ストッパ19を破壊し、テレスコ調整領域R1を超えて衝撃吸収領域R2へと侵入し、衝撃吸収に十分な距離だけ、矩形開口2a内を移動することができる。このようにして、二次衝突時に運転者を衝撃から守り安全を確保できる。
なお、衝撃吸収エネルギー量については、衝撃吸収領域R2の長さ、テレスコ用ローラ8の外径、テレスコ用駒部材6の凸状ブロック6cの位置や側面6a、6bのくさび角度の設定、テレスコ用ローラ8による矩形開口2aの側面2bへの食込み量を規定したり、矩形開口2aの幅や硬度などを設定することにより、所望の値を設定することができる。
又、テレスコ用ローラ8の駆動には、その他各種の機構を採用することができる。なお、本実施の形態では、テレスコ両方向、すなわち図3(c)でA方向、B方向に衝撃吸収できるようにしているが、運転者の身体がコラム本体1に衝接する方向が一方向(すなわちA方向)のみに限定できる場合には、テレスコ用ローラ8を片方(図3で右側)の2個のみとして、部品点数を削減することもできる。また、本実施の形態では、チルト用フレーム3と、チルト用駒部材7と、チルト用ローラ9も、同様に衝撃吸収機能を持たせた構造としているが、二次衝突の際、最も問題となるのはテレスコ方向の衝撃吸収であり、運転者の身体がコラム本体1に衝接する方向がテレスコ方向に限定される場合には、テレスコ方向のみ、衝撃吸収機能を持たせた構造としても良い。
本実施の形態では、クランプ力(保持力)に対しくさび角により倍加された法線力がテレスコ用フレーム2にかかる。したがって、テレスコ用フレーム2は、所望クランプ力に応じ、高い剛性を持たせておく必要がある。
更に、本実施の形態においては、コラム本体1の両側にロック機構を設け(片側のみ図示)、保持力を倍増させたり、対称性を増し動作のさらなる安定化を図っているが、片側だけでも保持力が確保できる場合には、片側だけ設けることもできる。なお、以上述べたテレスコ方向のロック動作と同様に、チルト方向においても、ロック動作が行える。
本実施の形態により実現できる保持力は、フレーム内での閉じた設計(即ちコラム本体の剛性やレバー(クランプ)軸の剛性などに影響されないよう)にできるで、設計の自由度が向上する。従って、チルト機構及びテレスコ機構と、それぞれ個別に設計・設置することもでき、片方のみを設けることもできる。
なお、テレスコ用フレーム2は個別ユニットとしてコラム本体1に接合し一体化することもできるし、コラム本体1と完全に一体に製造することもできる。チルト用フレーム3も個別ユニットとして、ブラケットBKTに接合し一体化することもできるし、ブラケットBKTと完全に一体に製造することもできる。
このように本実施の形態においては、衝突により過剰な荷重が作用した際、ローラ8,9によるくさび作用により、保持力を高める構成となっているが、この際フレーム2,3に非常に大きな法線力が働き、フレーム2,3が開くように変形するが、フレーム2,3が過度に開きすぎると、衝撃吸収機能の低下を招く恐れがある。これを抑止するにはフレーム2,3の幅を大きくすればよいが、重量もその分重くなる。そこで、面押し用ブロック13がロック位置に変位したときに、テレスコ用フレーム2とチルト用フレーム3の幅方向を、それぞれ挟み込むようにして抑える4本の脚部13bを、面押し用ブロック13の四隅外側に形成してもよい。これにより、強い外力が生じた場合にも、フレーム2,3の変形をある程度抑えることができる。
加えて、面押し用ブロック13の4本の脚部13bは、面押し用ブロック13がロック位置に変位したときに、テレスコ用フレーム2とチルト用フレーム3の幅方向で抑えるため、テレスコ方向とチルト方向の角度が適正値に維持され、衝突時などにコラム本体1に過度のモーメント力が作用したとしても、コラム本体1の姿勢を維持しつづけることができる。
図4は、本実施の形態のステアリングコラム装置を車両に組み込んだ状態で示す側面図である。図4において、車両の車体VBに、ブラケットBKTを介してコラム本体1が固定されている。ところで、車両の二次衝突時、運転者はエアバッグ(不図示)を介してステアリングホイールSWに衝接する。しかるに、衝接した運転者からステアリングホイールSW及びステアリングシャフトSが受ける襲撃力Fは、ほぼ水平方向に向かうので、テレスコ用フレーム2のみに上述した衝撃吸収機構を設けた場合、衝撃力Fの方向と衝撃吸収方向とが異なってしまい、効率的な衝撃吸収を行えない恐れがある。
これに対し、本実施の形態においては、チルト用フレーム3にも同様な衝撃吸収機構を設けることもできるので、テレスコ方向の衝撃吸収とチルト方向の衝撃吸収とを組み合わせることで、運転者からの衝撃力Fを効率的に吸収することができる。
より具体的には、水平方向に対して、テレスコ方向が角度αで傾き、チルト方向が角度βで傾いているとした場合、レバーシャフト5に作用する衝撃力Fは、テレスコ方向の分力Fαと、チルト方向の分力Fβとに分解され、これらは以下の式で与えられる。
Fα=F・sinβ/(cosαsinβ一sinαcosβ)・・・・・(1)
Fβ=F・sinα/(sinαcosβ―cosαsinβ)・・・・・(2)
即ち、最大の衝撃力Fが求まれば、角度α、βが既知であることから、(1)式よりテレスコ側の衝撃吸収機構で吸収すべき衝撃力Fαが決定し、且つ(2)式よりチルト側の衝撃吸収機構で吸収すべき衝撃力Fβが決定するので、それに応じて、衝撃吸収特性を最適に設計することができる。
なお、衝撃吸収機構の最適化に当たっては、厳密にはチルト調整角γによる補正が必要であるが、一般に衝撃吸収力はばらつきが大きく、かつ衝撃吸収ストローク内で力のパターンが変化しやすいという実情があるので、例えばチルト中立位置で角度α、βを設定値として用いれば十分である。
このように2方向の衝撃吸収機構を組み合わせれば、衝撃力Fの方向が水平方向以外の方向でも、2方向の衝撃吸収機構の負担分が多少変化するのみで、任意の方向における衝撃吸収を実現できる。
なお、衝撃力の方向及び強さによっては、いずれか一方の衝撃吸収機構において、駒部材が衝撃吸収領域の末端まで相対移動することによって、それ以上衝撃吸収できない部分においては、理想的な方向とならないが、他方の衝撃吸収機構が残りの衝撃を吸収することもできる。ただし、衝撃吸収機構としては、上述のローラと駒部材とを用いたものに限られない。一般的な使用では、本実施の形態のように2方向で十分な衝撃吸収効果を得られるが、予測できる全ての衝突パターンを考慮して、更にレバーシャフト5の軸線方向の衝撃力を吸収する衝撃吸収機構を設け、3次元方向における衝撃力を吸収できるようにしても良い。
以上、実施の形態を参照して本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきでなく、その趣旨を損ねない範囲で適宜変更、改良可能であることはもちろんである。例えば、駆動部材は操作レバーで連動させるものを実施の形態としているが、モータで移動させるようにしても良い。楔部材としてはスプラグを用いることもできるし、ばね部材は種々の形状を選択できる。
本実施の形態に係るステアリングコラム装置の分解図である。 テレスコ用フレーム2と、テレスコ用駒部材6と、テレスコ用ローラ8との関係を示す斜視図である。 テレスコ用フレーム2と、テレスコ用駒部材6と、テレスコ用ローラ8との関係を示す概略図であり、(a)はテレスコ位置調整時、(b)は通常使用時、(c)は衝撃吸収時の状態をそれぞれ示す。 本実施の形態のステアリングコラム装置を車両に組み込んだ状態で示す側面図である。
符号の説明
1 コラム本体
2 テレスコ用フレーム
2a 矩形開口
2b 側面
3 チルト用フレーム
3a 矩形開口
3b 側面
4 操作レバー
5 レバーシャフト
6 テレスコ用駒部材
6a 側面
6a 斜面
6b 斜面
6c 凸状ブロック
7 チルト用駒部材
7a 斜面
8 テレスコ用ローラ
9 チルト用ローラ
10 平面カム
12 テレスコ解除用ブロック
12a ベース
12b 脚部
13 面押しブロック
13a 対向カム部
13b 脚部
14 チルト解除用ブロック
14b 脚部
15 ばね部材
16 ワッシャ
17 ナット
18 平面カム
19 ストッパ
20 ストッパ
BKT ブラケット
S ステアリングシャフト
SW ステアリングホイール
VB 車体

Claims (5)

  1. ステアリングシャフトを、チルト方向及びテレスコ方向の少なくとも一方向に対して調整可能に支持するステアリングコラム装置において、
    車体に対して固定された固定部材と、
    ステアリングシャフトを回転自在に支持するコラム本体と、
    前記コラム本体及び前記固定部材のうちの一方と一体的に変位する駒部材と、
    前記固定部材及び前記コラム本体のうちの他方と、前記駒部材との間に介在し、第1の位置に移動することによって、前記他方との摩擦力が大きくなり、第2の位置に移動することによって、前記他方との摩擦力が小さくなる又は前記他方と非接触状態となる楔部材と、
    前記楔部材を前記第2の位置へと移動させる駆動部材とを有し、
    前記楔部材が前記第1の位置にあるときに、前記ステアリングシャフトに衝撃力が付与された場合、前記駒部材が前記他方に対して相対移動することにより、前記楔部材は前記第3の位置へと移動し、前記楔部材と前記駒部材と前記他方のうち少なくとも1つの変形量は、前記楔部材が前記第1の位置にあるときよりも前記第3の位置にあるときの方が大きいことを特徴とするステアリングコラム装置。
  2. 前記少なくとも1つの変形を所定量以下に制限する変形制限手段を有することを特徴とする請求項1に記載のステアリングコラム装置。
  3. 前記楔部材を、前記第1の位置に向かって付勢するばね部材を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリングコラム装置。
  4. 前記楔部材が接する前記固定部材及び前記駒部材の対向面は、前記第1の位置に向かうにつれて間隔が狭くなっており、前記対向面のなす角度は摩擦角以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のステアリングコラム装置。
  5. 前記楔部材はローラであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のステアリングコラム装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101083938B1 (ko) 2007-04-16 2011-11-15 주식회사 만도 조향 컬럼의 틸트 앤 텔리스코프 장치
JP2015155218A (ja) * 2014-02-19 2015-08-27 株式会社山田製作所 ステアリング装置

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