JP2007035370A - イオンビーム照射装置および半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

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順三 石川
Yasuhito Goto
康仁 後藤
Koji Matsuda
耕自 松田
Shigeki Sakai
滋樹 酒井
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Abstract

【課題】 外部から供給した電子によって輸送中のイオンビームの空間電荷を効率良く中和することによって、イオンビームの発散を抑制し、イオンビームの輸送効率を向上させる。
【解決手段】 このイオンビーム照射装置は、イオンビーム4の経路の側方に配置されていて電子42をイオンビーム4の経路に向けて放出する電界放出型電子源30と、少なくとも電界放出型電子源30にイオンビーム4の経路を挟んで対向する位置に配置されていて電界放出型電子源30から供給された電子42を静電的に追い返す追い返し電極60と、イオンビーム4の経路であって電界放出型電子源30から電子42が供給される領域を含む領域に、イオンビーム4の経路に沿う方向の磁界B1 を発生させるコイル66とを備えている。追い返し電源62を用いて、電界放出型電子源30のカソード基板32に対する追い返し電極60の電位を第2引出し電極44の電位よりも低く保つ。
【選択図】 図3

Description

この発明は、イオン源から引き出したイオンビーム(この明細書では正イオンビーム)をターゲットに照射してイオン注入等の処理を施すイオンビーム照射装置およびそれを用いた半導体デバイスの製造方法に関する。イオン注入を行う場合は、このイオンビーム照射装置はイオン注入装置とも呼ばれる。
従来のイオンビーム照射装置の一例を図1に示す。このイオンビーム照射装置は、イオン源2から引き出したイオンビーム4をターゲット16に照射する構成をしている。ターゲット16は、例えば半導体基板である。より具体例を挙げれば、シリコン基板である。
より具体的には、このイオンビーム照射装置は、特許文献1にも記載されているように、イオンビーム4を引き出すイオン源2と、それから引き出されたイオンビーム4から特定のイオン種を選別して導出する質量分離マグネット6と、それから導出されたイオンビーム4を加速または減速する加減速管8と、それから導出されたイオンビーム4から特定エネルギーのイオンを選別して導出するエネルギー分離マグネット10と、それから導出されたイオンビーム4を磁界によってX方向(例えば水平方向)に走査する走査マグネット12と、それから導出されたイオンビーム4を曲げ戻して走査マグネット12と協働してイオンビーム4の平行走査を行う、即ち平行なイオンビーム4を作る平行化マグネット14とを備えている。
平行化マグネット14から導出されたイオンビーム4は、処理室20内のホルダ18に保持されたターゲット16に照射され、それによってターゲット16に対してイオン注入等の処理が施される。その際、ターゲット16は、この例では図示しない走査機構によって、前記X方向と実質的に直交するY方向(例えば垂直方向)に往復駆動される。このターゲット16の往復駆動とイオンビーム4の走査との協働によって、ターゲット16の全面に均一性良くイオン注入等の処理を施すことができる。なお、イオンビーム4の経路は全て真空雰囲気に保たれる。
上記のようなイオンビーム照射装置において、ターゲット16に照射するビーム電流増大のためには、イオン源2からターゲット16までのイオンビーム4の輸送効率を高くすることが有効であるが、このビーム輸送効率を下げる大きな要因の一つに、イオンビーム4の空間電荷による発散がある。これは、イオンビーム4を構成するイオンが同極性(正極性)電荷のために相互に反発し合い、それによってイオンビーム4が発散することである。
このような空間電荷によるイオンビーム4の発散は、イオンビーム4が低エネルギーかつ大電流の場合ほど大きくなる。これは、大電流だとイオンの密度が濃くなり、低エネルギーだとイオンの速度が小さくてイオンビーム相互が反発する時間が長くなり、いずれもイオン同士の反発力を大きくするからである。
上記課題を解決する手段の一つとして、輸送中のイオンビーム4に外部から電子を供給することによって、当該イオンビーム4の空間電荷を中和することが考えられる。
例えば、特許文献2には、低エネルギーの電子を多量に発生させることができる電子源として、電界放出型電子源を用いて、イオンビーム照射の際のターゲット表面の帯電(チャージアップ)を抑制する技術が記載されており、このような電界放出型電子源を、輸送中のイオンビーム4の空間電荷中和に利用することが考えられる。
特開2001−143651号公報(段落0004−0050、図1) 特開2005−26189号公報(段落0007−0009、図1)
しかし、上記特許文献2に記載の電界放出型電子源から放出させた電子を単に輸送中のイオンビーム4に供給しても、イオンビーム4の空間電荷を効率良く中和することは難しい。なぜなら、上記電界放出型電子源からイオンビーム4に向けて電子を放出しても、当該電子の多くは、当該電子が持つ運動エネルギーによって、あるいはイオンビーム4が持つビームポテンシャルによる加速も加わって、イオンビーム4を通り抜けてしまい、そのために上記電子のイオンビーム4中での存在確率が低く、従ってイオンビーム4の空間電荷を効率良く中和することが難しいからである。
そこでこの発明は、外部から供給した電子によって輸送中のイオンビームの空間電荷を効率良く中和することによって、イオンビームの発散を抑制し、イオンビームの輸送効率を向上させることを主たる目的としている。
この発明に係る第1のイオンビーム照射装置は、イオン源とターゲットとの間におけるイオンビームの経路の側方に配置されていて電子をイオンビームの経路に向けて放出する電子源であって、導電性のカソード基板上に形成されていて先端が尖った形状をした多数の微小なエミッタと、この各エミッタの先端付近を微小な間隙をあけて取り囲む第1引出し電極と、この第1引出し電極に沿って設けられていて多数の小孔を有する第2引出し電極とを有する電界放出型電子源と、前記電界放出型電子源のカソード基板と第1引出し電極との間に後者を正極側にして直流の第1引出し電圧を印加する第1引出し電源と、前記電界放出型電子源のカソード基板と第2引出し電極との間に後者を正極側にして直流の第2引出し電圧を印加する第2引出し電源と、少なくとも前記電界放出型電子源にイオンビームの経路を挟んで対向する位置に配置されていて、前記電界放出型電子源から供給された電子を追い返すものであって非磁性体から成る追い返し電極と、前記追い返し電極と前記電界放出型電子源のカソード基板との間に直流の追い返し電圧を印加して、カソード基板に対する前記追い返し電極の電位を前記第2引出し電極の電位よりも低くする追い返し電源と、前記イオンビームの経路であって前記電界放出型電子源から電子が供給される領域を含む領域に、イオンビームの経路に沿う方向の磁界を発生させるコイルと、前記コイルを励磁する直流のコイル電源とを備えていることを特徴としている。
この第1のイオンビーム照射装置においては、電界放出型電子源から低い電圧で多量の電子を放出させることができる。しかも、電界放出型電子源から放出させた電子を、追い返し電極によって静電的にイオンビームの経路の方へ追い返すことができる。更に、コイルによって発生させた磁界によって、イオンビームの経路中やその付近において電子に回転運動を与えることができる。これらの作用の相乗効果によって、電界放出型電子源から供給した電子のイオンビーム中での軌道を長くして、当該電子のイオンビーム中での存在確率を高くすることができるので、輸送中のイオンビームの空間電荷を効率良く中和することができる。
前記コイルは、中をイオンビームがそれぞれ通るものであってイオンビームの経路に沿う方向に互いに間隔をあけて設けられた対を成す環状のコイルから成り、前記電界放出型電子源は、当該対を成すコイルの間から電子をイオンビームの経路に向けて放出するように配置されていても良い。
この発明に係る第2のイオンビーム照射装置は、イオン源とターゲットとの間におけるイオンビームの経路の側方に配置されていて電子をイオンビームの経路に向けて放出する電子源であって、導電性のカソード基板上に形成されていて先端が尖った形状をした多数の微小なエミッタと、この各エミッタの先端付近を微小な間隙をあけて取り囲む第1引出し電極と、この第1引出し電極に沿って設けられていて多数の小孔を有する第2引出し電極とを有する電界放出型電子源と、前記電界放出型電子源のカソード基板と第1引出し電極との間に後者を正極側にして直流の第1引出し電圧を印加する第1引出し電源と、前記電界放出型電子源のカソード基板と第2引出し電極との間に後者を正極側にして直流の第2引出し電圧を印加する第2引出し電源と、少なくとも前記電界放出型電子源にイオンビームの経路を挟んで対向する位置に配置されていて、前記電界放出型電子源から供給された電子を追い返すものであって非磁性体から成る追い返し電極と、前記追い返し電極と前記電界放出型電子源のカソード基板との間に直流の追い返し電圧を印加して、カソード基板に対する前記追い返し電極の電位を前記第2引出し電極の電位よりも低くする追い返し電源と、前記イオンビームの経路であって前記電界放出型電子源から電子が供給される領域を含む領域に、イオンビームの経路に交差する方向の磁界を発生させるコイルと、前記コイルを励磁する直流のコイル電源とを備えていることを特徴としている。
この第2のイオンビーム照射装置は、上記第1のイオンビーム照射装置とはコイルが発生する磁界の方向が異なるけれども、上記第1のイオンビーム照射装置とほぼ同様の作用を奏する。
第2のイオンビーム照射装置を構成する前記コイルは、イオンビームの経路に沿ってそれぞれ巻かれていてイオンビームの経路を挟んで相対向させて配置された対を成すコイルから成り、前記電界放出型電子源は、当該対を成すコイルの間から電子をイオンビームの経路に向けて放出するように配置されていても良い。
上記第1および第2のイオンビーム照射装置のいずれにおいても、以下の構成を更に採用しても良い。
即ち、前記追い返し電極は、前記電界放出型電子源の正面に配置された第1追い返し電極と、当該第1追い返し電極の側方に配置された複数の第2追い返し電極とから成っていても良い。
前記第1追い返し電極に対する前記第2追い返し電極の電位を調整する電位調整手段を更に備えていても良い。
前記追い返し電極および前記コイルは、前記イオンビームの経路を真空雰囲気に保つ真空容器内に配置されており、かつ前記追い返し電極および前記コイルは、前記ターゲットと同じまたは同系の材質から成る膜または薄板で覆われていても良い。
前記電界放出型電子源を、前記イオンビームの経路に沿って複数個配置しておいても良い。
また、前記ターゲットを半導体基板とし、上記イオンビーム照射装置を用いて、当該半導体基板に前記イオンビームを照射してイオン注入を行って、当該半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造しても良い。
請求項1〜4に記載の発明によれば、電界放出型電子源から低い電圧で多量の電子を放出させることができる。しかも、電界放出型電子源から放出させた電子を、追い返し電極によって静電的にイオンビームの経路の方へ追い返すことができる。更に、コイルによって発生させた磁界によって、イオンビームの経路中やその付近において電子に回転運動を与えることができる。これらの作用の相乗効果によって、電界放出型電子源から供給した電子のイオンビーム中での軌道を長くして、当該電子のイオンビーム中での存在確率を高くすることができるので、輸送中のイオンビームの空間電荷を効率良く中和することができる。その結果、輸送中のイオンビームの発散を抑制し、イオンビームの輸送効率を向上させることができる。
請求項5に記載の発明によれば、電界放出型電子源から放出させた電子を、第1追い返し電極によってだけではなく、複数の第2追い返し電極によっても静電的に追い返すことができるので、上記電子のイオンビーム中での存在確率をより高くすることができる。その結果、輸送中のイオンビームの空間電荷をより効率良く中和して、イオンビームの発散をより抑制し、イオンビームの輸送効率をより向上させることができる。
請求項6に記載の発明によれば、第2追い返し電極の電位を電位調整手段によって調整することによって、第2追い返し電極による電子の追い返しの程度を調整することができるので、電界放出型電子源から放出させた電子によるイオンビームの空間電荷の中和の程度を調整して、当該中和をより最適なものにすることができる。その結果、イオンビームの発散をより抑制し、イオンビームの輸送効率をより向上させることができる。
請求項7に記載の発明によれば、イオンビームの経路を真空雰囲気に保つ真空容器内に配置された追い返し電極およびコイルは、ターゲットと同じまたは同系の材質から成る膜または薄板で覆われているので、当該膜または薄板からその構成粒子が飛び出してターゲットに到達したとしても、ターゲットにそれと同じまたは同系の粒子が付着するだけである。従って、追い返し電極およびコイルを上記膜または薄板で覆っていない場合に比べて、ターゲットに対するコンタミネーション(汚染)の問題を遙かに少なくすることができる。
請求項8に記載の発明によれば、電界放出型電子源をイオンビームの経路に沿って複数個配置しているので、イオンビームの空間電荷を、より長い領域に亘って効率良く中和することができる。その結果、イオンビームの発散をより抑制し、イオンビームの輸送効率をより向上させることができる。
請求項9に記載の発明によれば、空間電荷が中和されて発散の少ないイオンビームを用いて、半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造することができるので、同一の半導体基板上に特性の揃った複数の半導体デバイスを製造することができる。その結果、歩留まりが向上し、半導体デバイスの生産効率が向上する。
図2は、この発明に係るイオンビーム照射装置の一実施形態を部分的に示す側面図である。図3は、図2の装置の線H−Hに沿う断面図であり、電界放出型電子源は拡大すると共に大幅に簡略化して示している。両図中の矢印Zは、イオンビーム4の進行方向の一例を示すが、イオンビーム4の進行方向は図示例とは逆でも良い。図4および図5に示す実施形態においても同様である。なお、イオン源からターゲットまでの公知の機器構成は、例えば、図1を参照して先に説明したものと同様であるのでそれを参照するものとし、以下においては重複説明を省略する。
このイオンビーム照射装置は、前記イオン源2とターゲット16との間におけるイオンビーム4の経路の側方の近傍に配置されていて、電子42をイオンビーム4の経路に向けて放出する電界放出型電子源30を備えている。なお、図3においては、電界放出型電子源30から放出された電子42の一部を模式的に図示している。図5においても同様である。また、この電界放出型電子源30等を、イオン源2からターゲット16までの間のどの辺りの場所に設けるのが良いかについては後述する。
この明細書で「イオンビームの経路の側方」とは、イオンビーム4の経路の左右の方向に限定されるものではなく、上下の方向でも良いし、斜めの方向でも良い。また、この図2および図3に示す実施形態では、電源56、58、62、64、65、68以外は、全て、イオンビーム4の経路を真空雰囲気に保つ真空容器(図示省略)内に配置されている。図4および図5に示す実施形態も同様てある。
電界放出型電子源30は、イオンビーム4の経路にできるだけ近づけて配置するのが好ましい。その方が、電界放出型電子源30から放出された電子42をイオンビーム4により効率良く供給することができるからである。
電界放出型電子源30は、図7にその一部分を拡大して示すように、導電性のカソード基板32と、このカソード基板32の表面に形成されていて先端が尖った形状をした多数の微小なエミッタ34と、この各エミッタ34の先端付近を微小な間隙41をあけて取り囲む、各エミッタ34に共通の第1引出し電極(ゲート電極とも呼ばれる)38と、この第1引出し電極38とカソード基板32との間に設けられていて両者間を絶縁する絶縁層36と、第1引出し電極38よりも電子42の放出方向側に第1引出し電極38に沿って設けられていて多数の小孔46を有する第2引出し電極44とを備えている。第1引出し電極38と第2引出し電極44との間は、空間または図示しない絶縁層等を介して電気的に絶縁されている。
上記のような構造の電界放射型電子源30は、例えば、半導体デバイスの製造プロセスと同様の製造プロセスを用いて、より具体的にはエッチングプロセスおよび薄膜形成プロセス等を用いて、簡単に製造することができる。
カソード基板32は、例えばシリコン基板(より具体的には単結晶シリコン基板)であるが、その他の導電性材料、例えば金属から成るものでも良い。また、絶縁性の基板の表面にシリコン(より具体的には単結晶シリコン)等の導電性膜(層)を形成して表層部のみが導電性を有する構造のものでも良い。
各エミッタ34は、例えばシリコン(より具体的には単結晶シリコン)から成るが、その他の導電性材料、例えば金属から成るものでも良い。各エミッタ34は、図7に示すように、上記カソード基板32の表面に、当該カソード基板32と一体的に形成しても良い。いずれにしても、カソード基板32と各エミッタ34とは電気的に導通状態にある。
各エミッタ34は、先端が鋭く尖った形状をしている。換言すれば、先端ほど尖った形状をしている。図7に示した例は円錐状をしているが、それ以外に角錐状等の形状をしていても良い。
各エミッタ34は、微小なものである。微小というのは、簡単に言えば、μm単位の大きさということである。具体例を示せば、各エミッタ34の基底部の直径D1 は、約0.5μm〜3μm程度である。各エミッタ34の高さ(カソード基板32から先端までの高さ)は、約0.5μm〜3μm程度である。
このようなエミッタ34をカソード基板32上に多数形成している。多数というのは、数十個〜数百個というような数ではなく、簡単に言えば、少なくとも1万個程度以上ということである。具体例を示せば、この実施形態の電界放射型電子源30は、図6に示すように、1個の電界放射型電子源30内に、6個の電子源アレイ52を有しており、各電子源アレイ52はそれぞれ16,000個のエミッタ34を有している。従って、合計で96,000個のエミッタ34を有している。なお、図6中の50はケースであり、その直径は例えば6mm〜20mm程度であり、この電界放射型電子源30は非常に小型にユニット化されている。54はピン端子である。
再び図7を参照して、第1引出し電極38は、例えば、リン(P)をドープした多結晶シリコンから成るが、その他の導電性材料、例えば金属から成るものでも良い。この第1引出し電極38は、各エミッタ34に対応する位置に微小な小孔40を有している。各小孔40は、例えば円形をしており、この各小孔40の中心部に各エミッタ34の先端付近が、小孔40の内壁との間に微小な間隙41をあけて位置している。ここでも微小というのは、簡単に言えば、前記と同様、μm単位の寸法ということである。具体例を示せば、各小孔40の直径は、約0.5μm〜3μm程度である。従って各間隙41の寸法は、それよりも小さく、約0.25μm〜1.5μm程度である。
絶縁層36は、例えば二酸化シリコン(SiO2 )から成るが、その他の絶縁材から成るものでも良い。
第2引出し電極44も、例えば、第1引出し電極38と同様の材質から成る。第2引出し電極44の小孔46は、図7の例では、第1引出し電極38の小孔40と1対1で対応する位置に設けられているが、必ずしもそのようにする必要はない。第2引出し電極44は第1引出し電極38と違ってエミッタ34から電子42を電界放出させるためのものではなく、放出された電子42のエネルギーを制御するためのものだからである。例えば、第2引出し電極44の各小孔46を第1引出し電極38の小孔40よりもかなり大きくして、多数の小孔40(ひいてはエミッタ34)に対して一つの小孔46を対応させるようにしても良く、通常はそのようにしている。この第2引出し電極44は、必要に応じて平面的に分割されていても良い。但し電気的には互いに導通させておく。
上記各エミッタ34は、ターゲット16と同じまたは同系の材質から成るのが好ましい。例えば、ターゲット16がシリコン基板の場合は、各エミッタ34もシリコンまたはシリコン系の材質から成るものが好ましい。そのようにすると、各エミッタ34からその構成粒子(シリコン)が飛び出してターゲット16に到達したとしても、ターゲット16にそれと同系の粒子が付着するだけであるので、コンタミネーションの問題を少なくすることができる。カソード基板32、絶縁層36、第1引出し電極38、第2引出し電極44についても同様である。そのために、上においては、これらの材質の例として、シリコンまたはシリコン系を第1に挙げている。
再び図3を参照して、電界放出型電子源30のカソード基板32(換言すれば、当該カソード基板32と導通状態にある各エミッタ34)と第1引出し電極38との間には、第1引出し電極38を正極側にして直流の第1引出し電圧V1 を印加する第1引出し電源56が接続されている。例えば、カソード基板32は図6に示すどれかのピン端子54を経由して第1引出し電源56に接続され、第1引出し電極38は他のピン端子54を経由して第1引出し電源56に接続される。カソード基板32と第2引出し電極44との間には、第2引出し電極44を正極側にして直流の第2引出し電圧V2 を印加する第2引出し電源58が接続されている。この第2引出し電極44は、例えば、図6に示した上記とは別のピン端子54を経由して第2引出し電源58に接続される。
カソード基板32は、どこかの基準電位部に接続しておけば良い。例えば、イオンビーム4の経路を真空雰囲気に保つ前記真空容器と同様に、接地電位部に接続して接地電位にしておけば良い。
上記電界放出型電子源30においては、上記第1引出し電圧V1 を印加すると、各エミッタ34の先端部に電界が集中し、電界放出現象により、各エミッタ34の先端から法線方向に電子42が放出される。
その場合、各エミッタ34は上記のように微小でしかも先端が鋭く尖った形状をしており、かつその先端付近を取り囲む第1引出し電極38との間隙41も微小であるので、各エミッタ34の先端部に電界が強く集中する。従って、低い第1引出し電圧V1 で電子42を放出させることができる。例えば、100V±90V程度の低い第1引出し電圧V1 で電子42を放出させることができる。この第1引出し電圧V1 の大きさによって、各エミッタ34から放出させる電子42の量および初期エネルギーを調整することができる。
しかも、上記のように多数のエミッタ34を有しているので、電子42を多量に放出させることができる。例えば、図6を参照して具体例を示した電界放出型電子源30では、上記のような低い第1引出し電圧V1 で、1個の電子源アレイ52から100μA〜1mA程度、従ってそれを6個有する電界放出型電子源30からは600μA〜6mA程度の電子42を放出させることができる。また、後述するように必要に応じてこのような電界放出型電子源30を複数個設ければ、その分、電子42の放出量を増やすことができる。
第2引出し電極44に印加する第2引出し電圧V2 によって、電界放出型電子源30から放出する電子42の最終的なエネルギーを調整することができる。この第2引出し電圧V2 の大きさは特定の範囲に限定されるものではない。例えば、V2 >V1 の場合(簡単に言えば加速モードの場合)、電子42のエネルギーが大きくなり電子42の直進性は高いけれども、電子42はイオンビーム4をより短時間で通過するのでイオンビーム4の空間電荷中和の作用は減少する。反対にV2 <V1 の場合(簡単に言えば減速モードの場合)、電子42のエネルギーが小さくなり電子42の直進性は劣るけれども、電子42はイオンビーム4中により長時間滞在するのでイオンビーム4の空間電荷中和の作用は増大する。
再び図2、図3を参照して、このイオンビーム照射装置は、更に、少なくとも電界放出型電子源30にイオンビーム4の経路を挟んで対向する位置に配置されていて、電界放出型電子源30から供給された電子42を静電的に追い返す追い返し電極60と、この追い返し電極60と電界放出型電子源30のカソード基板32との間に直流の追い返し電圧V3 を印加して、カソード基板32に対する追い返し電極60の電位を、カソード基板32に対する第2引出し電極44の電位よりも低くする直流の追い返し電源62とを備えている。そのためにこの例では、V3 <V2 にしている。
なお、必要に応じて、追い返し電源62の極性を図示とは反転させても良い。そのようにすれば、カソード基板32に対する追い返し電極60の電位を第2引出し電極44の電位よりもより一層低くして、追い返し電極60による電子42の静電的な追い返し作用をより強くすることができる。そのために、追い返し電源62を両極性電源にしても良い。図4、図5に示す実施形態においても同様である。
追い返し電極60は、例えばアルミニウム、銅等の非磁性体から成る。後述するコイル66が発生する磁界B1 を乱さないためである。後述する第1追い返し電極60a、第2追い返し電極60b、60cも同様である。
上記のような電位の追い返し電極60によって、電界放出型電子源30から放出されイオンビーム4の経路を通り抜けた電子42を、例えば図3中に矢印C、Dで模式的に示すように、イオンビーム4の経路の方へ静電的に追い返すことができる。
追い返し電極60は、イオンビーム4の近くに、しかもイオンビーム4の周辺部が当たらない位置に設けておくのが好ましい。そのようにすれば、イオンビーム4によるスパッタを防止しつつ、電子42をイオンビーム4のすぐ近くから効率良くイオンビーム4の方へ追い返すことができる。そのためには、追い返し電極60は、この実施形態のように、コイル66よりも内側に設けておくのが好ましい。図4、図5に示す実施形態においても同様である。
また、追い返し電極60は、イオンビーム4の経路に沿ってできるだけ長く配置しておくのが好ましい。そのようにすれば、イオンビーム4の経路に沿う長い領域において電子42をイオンビーム4の方へ効率良く追い返すことができる。図4、図5に示す実施形態においても同様である。
このイオンビーム照射装置は、更に、上記イオンビーム4の経路であって電界放出型電子源30から電子42が供給される領域を含む領域に、イオンビーム4の経路に沿う方向の磁界B1 を発生させるコイル66と、このコイル66を励磁して上記磁界B1 を発生させる直流のコイル電源68とを備えている。但し、磁界B1 の向きは、図示例とは逆でも良い。
上記コイル66は、この実施形態では、中をイオンビーム4がそれぞれ通るものであってイオンビーム4の経路に沿う方向に互いに間隔をあけて設けられた対を成す環状のコイル66であり、電界放出型電子源30は、この対を成すコイル66の間から電子42をイオンビーム4の経路に向けて放出するように配置されている。対を成すコイル66は、互いに同方向の磁界B1 を発生させる。
コイル66によって上記のような磁界B1 を発生させると、電界放出型電子源30から放出され、追い返し電極60による追い返しを受ける前および受けた後の電子42は、図3中に矢印Eで模式的に示すように、紙面に平行な面内でサイクロトロン運動をする。即ち、磁界B1 によって、イオンビーム4の経路中やその付近において電子42に回転運動を与えることができる。
従ってこのイオンビーム照射装置によれば、電界放出型電子源30から低い電圧で低エネルギーの電子42を多量に放出させることができる。しかも、電界放出型電子源30から放出させた電子42を、追い返し電極60によって静電的にイオンビーム4の経路の方へ追い返すことができる。更に、コイル66によって発生させた磁界B1 によって、イオンビーム4の経路中やその付近において電子42に回転運動を与えることができる。これらの作用の相乗効果によって、電界放出型電子源30から供給した電子42のイオンビーム4中での軌道を長くして(伸ばして)、当該電子42のイオンビーム4中での存在確率を高くすることができるので、輸送中のイオンビーム4の空間電荷を効率良く中和することができる。その結果、イオンビーム4の発散を抑制し、イオンビーム4の輸送効率を向上させることができる。
なお、追い返し電極60は、電界放出型電子源30の正面にのみ配置しても良いけれども、イオンビーム4の経路の周りをできるだけ広く取り囲むのが好ましい。そのようにすると、より広い範囲で電子42を追い返すことができるので、電子42のイオンビーム4中での存在確率をより高くして、イオンビーム4の空間電荷をより効率良く中和することができる。その場合、追い返し電極60は一つの筒状のものでも良いけれども、複数個に分割しておくのが好ましい。そのようにすると、各追い返し電極間で電位を異ならせて、電子42の追い返しの程度を調整することができるので、電子42のイオンビーム4中での存在確率をより高くして、イオンビーム4の空間電荷をより効率良く中和することができる。
上記のようにする一例としてこの実施形態では、追い返し電極60を、電界放出型電子源30の正面に配置された第1追い返し電極60aと、第1追い返し電極60aの側方に配置された複数の(この例では二つの)第2追い返し電極60b、60cとで構成している。二つの第2追い返し電極60b、60cは、電界放出型電子源30の中心と第1追い返し電極60aの中心とを結ぶ線に対してほぼ対称に配置しておくのが好ましく、この実施形態ではそのようにしている。そのようにすると、第1追い返し電極60から上記線に対してほぼ対称に追い返された電子42をより効率良くイオンビーム4の経路に向けて再び追い返すことができる。
第1追い返し電極60aと、二つの第2追い返し電極60b、60cとは互いに同電位にしても良いけれども、第1追い返し電極60aに対する第2追い返し電極60b、60cの電位を調整する電位調整手段を設けておくのが好ましい。
そのようにすると、第2追い返し電極60b、60cの電位を電位調整手段によって調整することによって、第2追い返し電極60b、60cによる電子の追い返しの程度を調整することができるので、電界放出型電子源30から放出させた電子42によるイオンビーム4の空間電荷の中和の程度を調整して、当該中和をより最適なものにすることができる。
上記のような電位調整手段として、この実施形態では、第1追い返し電極60aと第2追い返し電極60b、60cとの間に直流の電位調整電源64、65をそれぞれ設けている。この電位調整電源64、65によって、第2追い返し電極60b、60cの電位を第1追い返し電極60aの電位よりも低く設定するのが好ましい。そのようにすれば、第1追い返し電極60aから追い返された電子42を、第2追い返し電極60b、60cによってより効率良くイオンビーム4の経路の方へ追い返すことができる。
上記追い返し電極60、第1追い返し電極60a、第2追い返し電極60b、60cによる電子42の追い返しの程度は、例えば追い返し電源62から出力する追い返し電圧V3 によって、更に電位調整電源64、65を設けている場合はそれらから出力する電圧によっても、調整することができる。それによって、電子42によるイオンビーム4の空間電荷の中和作用を最適化することができる。
上記のような電界放出型電子源30をイオンビーム4の経路に沿って複数個配置しても良い。そのようにすれば、イオンビーム4の空間電荷をより長い領域に亘って効率良く中和することができる。その結果、イオンビーム4の発散をより抑制し、イオンビーム4の輸送効率をより向上させることができる。
電界放出型電子源30を上記のようにイオンビーム4の経路に沿って複数個配置する場合は、その両側の対を成すコイル66も電界放出型電子源30の数に応じて設けるのが好ましい。また、追い返し電極60(複数に分けている場合は60a〜60c。以下同様)は、電界放出型電子源30の数に応じた数をイオンビーム4の経路に沿って並べても良いし、それらを一体化してイオンビーム4の経路に沿って長く伸びたものとしても良い。
図4は、この発明に係るイオンビーム照射装置の他の実施形態を部分的に示す側面図である。図5は、図4の装置の線I−Iに沿う断面図であり、電界放出型電子源はブロックに簡略化すると共に、引出し電源の図示を省略している。以下においては、上記図2、図3に示した実施形態との相違点を主体に説明する。簡単に言えば、両実施形態は、コイルによって発生させる磁界の方向が約90度異なる。
即ち、このイオンビーム照射装置は、上記コイル66およびコイル電源68に代えて、上記イオンビーム4の経路であって上記電界放出型電子源30から電子42が供給される領域を含む領域に、イオンビーム4の経路に交差する方向の磁界B2 を発生させるコイル70と、このコイル70を励磁して上記磁界B2 を発生させる直流のコイル電源72とを備えている。但し、磁界B2 の向きは、図示例とは逆でも良い。
コイル70は、この実施形態では、イオンビーム4の経路を挟んで相対向させて配置された対を成すコイル70であり、電界放出型電子源30は、この対を成すコイル70の間から電子42をイオンビーム4の経路に向けて放出するように配置されている。対を成すコイル70は、互いに同方向の磁界B2 を発生させる。
対を成す各コイル70は、この実施形態では、イオンビーム4の経路に沿って長く(図4参照)、かつその両端が丸く盛り上がる(図5参照)ように巻かれた鞍形をしている。
図5では、電界放出型電子源30をブロックで簡略化して示すと共に、それ用の第1引出し電源および第2引出し電源の図示を省略しているけれども、この電界放出型電子源30は、図3、図6、図7を参照して説明したのと同様の構造をしており、かつ図3、図7を参照して説明したのと同様の第1引出し電源56および第2引出し電源58が接続されている。
この実施形態においても、少なくとも電界放出型電子源30にイオンビーム4の経路を挟んで相対向する位置に配置されていて、電界放出型電子源30から放出された電子42を静電的に追い返す追い返し電極60が設けられており、この追い返し電極60と電界放出型電子源30を構成するカソード基板32(図3、図7参照)との間に前述した追い返し電源62が接続されている。追い返し電極60は、先に例示したような非磁性体から成る。
この実施形態においても、追い返し電極60によって、電界放出型電子源30から放出されイオンビーム4の経路を通り抜けた電子42を、例えば図5中に矢印Fで模式的に示すように、イオンビーム4の経路の方へ静電的に追い返すことができる。
更に、コイル70によって上記のような磁界B2 を発生させると、電界放出型電子源30から放出され、追い返し電極60による追い返しを受ける前および受けた後の電子42は、図5中に矢印Gで模式的に示すように、紙面に垂直な面内でサイクロトロン運動をする。即ち、磁界B2 によって、イオンビーム4の経路やその付近において電子42に回転運動を与えることができる。
従ってこの実施形態のイオンビーム照射装置の場合も、電界放出型電子源30から低い電圧で低エネルギーの電子42を多量に放出させることができる。しかも、電界放出型電子源30から放出させた電子42を、追い返し電極60によって静電的にイオンビーム4の経路の方へ追い返すことができる。更に、コイル70によって発生させた磁界B2 によって、イオンビーム4の経路中やその付近において電子42に回転運動を与えることができる。これらの作用の相乗効果によって、電界放出型電子源30から供給した電子42のイオンビーム4中での軌道を長くして(伸ばして)、当該電子42のイオンビーム4中での存在確率を高くすることができるので、輸送中のイオンビーム4の空間電荷を効率良く中和することができる。その結果、イオンビーム4の発散を抑制し、イオンビーム4の輸送効率を向上させることができる。
なお、図4、図5に示す実施形態では、追い返し電極60は、電界放出型電子源30にイオンビーム4の経路を挟んで対向する位置に配置されたもの(即ち図3に示す第1追い返し電極60aに相当するもの)だけを図示しているけれども、それに限られるものではなく、先の実施形態の場合と同様に、追い返し電極60を、電界放出型電子源30の正面に配置された第1追い返し電極60aと、第1追い返し電極60aの側方に配置された複数の(例えば二つの)第2追い返し電極60b、60cとで構成しても良い。また、第1追い返し電極60aと第2追い返し電極60b、60cとの間に前述した電位調整電源64、65を設けても良い。そのようにすることによる効果は、前述のとおりである。
また、電界放出型電子源30をイオンビーム4の経路に沿って複数個配置しても良い。そのようにすることによる効果は前述のとおりである。図4は複数個配置した例を示す。但し、電界放出型電子源30の数は図示例の4個に限られるものではない。電界放出型電子源30を上記のようにイオンビーム4の経路に沿って複数個配置する場合の追い返し電極60については前述のとおりである。
上記いずれの実施形態においても、イオンビーム4の経路を真空雰囲気に保つ前記真空容器を非磁性体で構成しておけば、コイル66、70は必ずしも当該真空容器内に配置する必要はなく、真空容器外に配置しても良い。そのようにすれば、コイル66、70からのアウトガス等による真空容器内の真空度低下を防止することが容易になる。但し、コイル66、70を真空容器外に配置する場合は、コイル66、70の形状が真空容器の外壁形状によって制約され、適切な磁場形成が制約される場合があるので、この観点からは、コイル66、70は真空容器内に設ける方が好ましい。
コイル66、70を上記真空容器内に配置する場合、当該真空容器内に配置されたコイル66、70、および、同真空容器内に配置された上記追い返し電極60(複数に分ける場合は60a〜60c。以下同様)を、前記ターゲット16と同じまたは同系の材質から成る膜または薄板で覆っておくのが好ましい。例えば、ターゲット16がシリコン基板の場合は、上記膜または薄板を、シリコンまたはシリコン系の材質で形成しておく。上記のように覆っておくと、何らかの原因で上記膜または薄板からその構成粒子が飛び出してターゲット16に到達したとしても、ターゲット16にそれと同じまたは同系の粒子が付着するだけである。従って、追い返し電極60およびコイル66、70を上記膜または薄板で覆っていない場合に比べて、ターゲット16に対するコンタミネーションの問題を遙かに少なくすることができる。
上記のような電界放出型電子源30、追い返し電極60、コイル66、70等は、イオン源2からターゲット16までの間のイオンビーム4の経路のどこに設けても良いけれども、当該経路上に例えば図1に示した例のように質量分離マグネット6、加減速管8、エネルギー分離マグネット10、走査マグネット12、平行化マグネット14が設けられている場合は、それらの機器の間および平行化マグネット14の下流側のドリフト空間(即ち電界も磁界も殆ど存在しない空間)に設けるのが、上記各機器の特性との相互干渉を避けることや、スペース上の制約を受けにくい等の観点から好ましい。より具体的には、平行化マグネット14とホルダ18との間のスペースが通常は他よりも広いので、そこに設けるのが現実的である。また、上記のような電界放出型電子源30、追い返し電極60、コイル66、70等は、イオン源2からターゲット16までのイオンビーム4の経路の複数箇所に設けても良い。そのようにすれば、イオンビーム4の空間電荷をより多くの箇所で中和して、イオンビーム4の発散をより抑制して、イオンビーム4の輸送効率をより向上させることができる。
上記ターゲット16を半導体基板(例えばシリコン基板)として、上記各実施形態のイオンビーム照射装置を用いて、当該半導体基板に上記イオンビーム4を照射してイオン注入を行って、当該半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造しても良い。例えば、上記各実施形態のイオンビーム照射装置を、イオン注入によって半導体基板の表面または表層部の所要領域に所要のイオン(例えば不純物となるイオン)を注入する工程に用いて、半導体基板上に半導体デバイスとして複数の集積回路(例えばシステムLSI等)を製造しても良い。
近年は、半導体基板上に形成する半導体デバイスの微細化が非常に進んでおり(換言すれば、超高集積化しており)、そのような半導体デバイスにイオン注入を行う場合、半導体基板の表面に形成された溝または凸状の部分に、イオン注入されない陰の部分が生じるのを防止することが課題となっている。そうしないと、形成される半導体デバイスの特性にばらつきが生じる。不良デバイスが生じることもある。
上記課題を解決するためには、平行性の良いイオンビームを半導体基板に照射する必要があるが、イオンビームの空間電荷による発散が大きいと、平行性の良いイオンビームを半導体基板に照射することは難しい。これに対して、上記各実施形態のイオンビーム照射装置を用いれば、空間電荷が中和されて発散の少ないイオンビーム4を用いて、半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造することができるので、同一の半導体基板上に特性の揃った複数の半導体デバイスを製造することができる。その結果、歩留まりが向上し、半導体デバイスの生産効率が向上する。
従来のイオンビーム照射装置の一例を示す概略平面図である。 この発明に係るイオンビーム照射装置の一実施形態を部分的に示す側面図である。 図2の装置の線H−Hに沿う断面図であり、電界放出型電子源は拡大すると共に大幅に簡略化して示している。 この発明に係るイオンビーム照射装置の他の実施形態を部分的に示す側面図である。 図4の装置の線I−Iに沿う断面図であり、電界放出型電子源はブロックに簡略化すると共に、引出し電源の図示を省略している。 図2〜図5に示す電界放出型電子源のより具体例を、電子放出面側から見て示す正面図である。 図2〜図5に示す電界放出型電子源の一つのエミッタ周りの一例を拡大して示す断面図である。
符号の説明
2 イオン源
4 イオンビーム
16 ターゲット
30 電界放出型電子源
32 カソード基板
34 エミッタ
38 第1引出し電極
44 第2引出し電極
56 第1引出し電源
58 第2引出し電源
60 追い返し電極
60a 第1追い返し電極
60b、60c 第2追い返し電極
62 追い返し電源
64、65 電位調整電源
66 コイル
68 コイル電源
70 コイル
72 コイル電源

Claims (9)

  1. イオン源から引き出したイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置において、
    前記イオン源とターゲットとの間におけるイオンビームの経路の側方に配置されていて電子をイオンビームの経路に向けて放出する電子源であって、導電性のカソード基板上に形成されていて先端が尖った形状をした多数の微小なエミッタと、この各エミッタの先端付近を微小な間隙をあけて取り囲む第1引出し電極と、この第1引出し電極に沿って設けられていて多数の小孔を有する第2引出し電極とを有する電界放出型電子源と、
    前記電界放出型電子源のカソード基板と第1引出し電極との間に後者を正極側にして直流の第1引出し電圧を印加する第1引出し電源と、
    前記電界放出型電子源のカソード基板と第2引出し電極との間に後者を正極側にして直流の第2引出し電圧を印加する第2引出し電源と、
    少なくとも前記電界放出型電子源にイオンビームの経路を挟んで対向する位置に配置されていて、前記電界放出型電子源から供給された電子を追い返すものであって非磁性体から成る追い返し電極と、
    前記追い返し電極と前記電界放出型電子源のカソード基板との間に直流の追い返し電圧を印加して、カソード基板に対する前記追い返し電極の電位を前記第2引出し電極の電位よりも低くする追い返し電源と、
    前記イオンビームの経路であって前記電界放出型電子源から電子が供給される領域を含む領域に、イオンビームの経路に沿う方向の磁界を発生させるコイルと、
    前記コイルを励磁する直流のコイル電源とを備えていることを特徴とするイオンビーム照射装置。
  2. 前記コイルは、中を前記イオンビームがそれぞれ通るものであってイオンビームの経路に沿う方向に互いに間隔をあけて設けられた対を成す環状のコイルから成り、
    前記電界放出型電子源は、当該対を成すコイルの間から電子をイオンビームの経路に向けて放出するように配置されている請求項1記載のイオンビーム照射装置。
  3. イオン源から引き出したイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置において、
    前記イオン源とターゲットとの間におけるイオンビームの経路の側方に配置されていて電子をイオンビームの経路に向けて放出する電子源であって、導電性のカソード基板上に形成されていて先端が尖った形状をした多数の微小なエミッタと、この各エミッタの先端付近を微小な間隙をあけて取り囲む第1引出し電極と、この第1引出し電極に沿って設けられていて多数の小孔を有する第2引出し電極とを有する電界放出型電子源と、
    前記電界放出型電子源のカソード基板と第1引出し電極との間に後者を正極側にして直流の第1引出し電圧を印加する第1引出し電源と、
    前記電界放出型電子源のカソード基板と第2引出し電極との間に後者を正極側にして直流の第2引出し電圧を印加する第2引出し電源と、
    少なくとも前記電界放出型電子源にイオンビームの経路を挟んで対向する位置に配置されていて、前記電界放出型電子源から供給された電子を追い返すものであって非磁性体から成る追い返し電極と、
    前記追い返し電極と前記電界放出型電子源のカソード基板との間に直流の追い返し電圧を印加して、カソード基板に対する前記追い返し電極の電位を前記第2引出し電極の電位よりも低くする追い返し電源と、
    前記イオンビームの経路であって前記電界放出型電子源から電子が供給される領域を含む領域に、イオンビームの経路に交差する方向の磁界を発生させるコイルと、
    前記コイルを励磁する直流のコイル電源とを備えていることを特徴とするイオンビーム照射装置。
  4. 前記コイルは、前記イオンビームの経路に沿ってそれぞれ巻かれていてイオンビームの経路を挟んで相対向させて配置された対を成すコイルから成り、
    前記電界放出型電子源は、当該対を成すコイルの間から電子をイオンビームの経路に向けて放出するように配置されている請求項3記載のイオンビーム照射装置。
  5. 前記追い返し電極は、前記電界放出型電子源の正面に配置された第1追い返し電極と、当該第1追い返し電極の側方に配置された複数の第2追い返し電極とから成る請求項1ないし4のいずれかに記載のイオンビーム照射装置。
  6. 前記第1追い返し電極に対する前記第2追い返し電極の電位を調整する電位調整手段を更に備えている請求項5記載のイオンビーム照射装置。
  7. 前記追い返し電極および前記コイルは、前記イオンビームの経路を真空雰囲気に保つ真空容器内に配置されており、
    かつ前記追い返し電極および前記コイルは、前記ターゲットと同じまたは同系の材質から成る膜または薄板で覆われている請求項1ないし6のいずれかに記載のイオンビーム照射装置。
  8. 前記電界放出型電子源を、前記イオンビームの経路に沿って複数個配置している請求項1ないし7のいずれかに記載のイオンビーム照射装置。
  9. 前記ターゲットが半導体基板であり、請求項1ないし8のいずれかに記載のイオンビーム照射装置を用いて、当該半導体基板に前記イオンビームを照射してイオン注入を行って、当該半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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