以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
図1および図2は、本発明の実施例であるレンズ鏡筒(レンズ装置)の構成を示している。本実施例のレンズ鏡筒は、被写体側(図の左側)から順に、凸,凹,凸,凸の4つのレンズユニットにより構成される変倍光学系(撮影光学系)を有する。図1はレンズ鏡筒の分解斜視図、図2は断面図である。なお、説明のために一部の形状は省略されている。
これらの図において、L1は固定の第1レンズユニット、L2は光軸方向に移動することにより変倍動作を行う第2レンズユニット、L3は撮影光学系の光軸AXLに略直交する平面(以下、単に光軸直交面という)内を移動して像振れ補正動作を行う第3レンズユニットである。第3レンズユニットL3は、第3aレンズユニットL3aと第3bレンズユニットL3bとにより構成されている。L4は光軸方向に移動することにより合焦動作を行う第4レンズユニットである。
ここで、本実施例では、撮影光学系の光軸AXLと、第3レンズユニットL3の光軸Lは略平行の関係にあるため、光軸直交面又は光軸に略直交する方向(以下、単に光軸直交方向という)というときにはいずれの光軸を基準としても同じ面又は方向を表す。なお、「略直交」および「略平行」は、完全に直交又は平行である場合に限らず、製造許容誤差、組立て許容誤差の範囲で完全な直交又は平行からずれている場合も含む意味である。
1は第1レンズユニットL1を保持する前玉鏡筒、2は第2レンズユニットL2を保持する変倍移動枠、3は第3レンズユニットL3を光軸直交面内で移動可能とするシフトユニットである。4は第4レンズユニットを保持する合焦移動枠、5はその前端が前玉鏡筒と3本のビスで前方から結合された固定鏡筒であり、5aは固定鏡筒の外周壁部である。固定鏡筒5は、請求項にいうケーシング部材に相当する。
601はCCDセンサやCMOSセンサ等、撮影光学系により形成された被写体像を光電変換する撮像素子である。6は該撮像素子601が固定される後部鏡筒である。602は撮像素子601を後部鏡筒6に取り付けるための中間部材である。後部鏡筒6は、固定鏡筒5に対して位置決めされ、シフトユニット3を挟み込んだ上で2本のビスと1箇所の係合部(係合爪603と係合穴501)により前方から固定される。中間部材602は、撮像素子601を接着等により固定した後、後部鏡筒5に対してビス止めされて後部鏡筒6に固定される。
シフトユニット3は固定鏡筒5と後部鏡筒6に位置決めされた上で挟み込まれ、2本のビスにより前方から固定されている。
7は光量調節ユニットである。該光量調節ユニット7は、押え板701、2枚の絞り羽根702,703、仕切り板704、絞り地板705およびNDフィルタ706、ND地板707、絞りアーム708、NDアーム709、ビス710より構成されている。そして、2枚の羽根702,703を光軸直交面内を互いに逆方向に移動させて開口径を変化させる、いわゆるギロチン式の光量調節装置である。光量調節ユニット7は、ビス708によりシフトユニット3に固定されている。また、NDフィルター706は2つの異なる濃度領域を有し、絞り羽根702,703とは独立して光路に対して進退可能である。
8は固定鏡筒5と後部鏡筒6とによりその両端が保持されたガイドバーであり、9は固定鏡筒5に圧入保持されたガイドバーである。また、10,11は後部鏡筒6とシフトユニット3とによりその両端を保持されたガイドバーである。変倍移動枠2はガイドバー8,9により光軸方向に移動可能に支持されている。また、合焦移動枠4はガイドバー10,11により光軸方向に移動可能に支持されている。なお、変倍移動枠2および合焦移動枠4はそれぞれ、一方のガイドバーに対して光軸方向に所定の長さを有するスリーブ部で係合している。これにより、光軸に対する倒れが防止され、他方のガイドバーにU溝部で係合することにより上記一方のガイドバー回りでの回転が阻止される。
200は、第2レンズユニットL2(変倍移動枠2)を光軸方向に駆動して変倍動作を行わせるステッピングモータ(以下、ズームモータともいう)であり、モータ本体201と、モータ本体201内のロータと一体回転するリードスクリュー202とを有する。また、リードスクリュー202には、変倍移動枠2に取り付けられたラック203が噛み合っている。このため、リードスクリュー202が回転することにより、変倍移動枠2(第2レンズユニットL2)が光軸方向に駆動される。ステッピングモータ200は、2本のビスによって固定鏡筒5と後部鏡筒6にまたがるように固定される。
なお、変倍移動枠2とラック203との間に配置されたねじりコイルばね204は、変倍移動枠2をガイドバー8,9に対して該ガイドバーの径方向に付勢する。また、ねじりコイルばね204は、ラック203を変倍移動枠2に対して光軸方向に付勢するとともに、リードスクリュー202への噛み合い方向にも付勢する。これにより、変倍移動枠2とガイドバー8,9との間、変倍移動枠2とラック203との間およびラック203とリードスクリュー202との間のガタをなくしている。
205はフォトインタラプタからなるズームリセットスイッチであり、変倍移動枠2に形成された遮光部206の光軸方向への移動による遮光/透光状態の切り換りを検出する光電スイッチである。このズームリセットスイッチ205により、第2レンズユニットL2が所定の基準位置(遮光/透光状態の切り換り位置)に位置するか否かを検出する。ズームリセットスイッチ205は、ビスにより固定鏡筒5に固定されている。
400は第4レンズユニットL4(合焦移動枠4)を光軸方向に駆動して合焦動作を行わせるフォーカスモータ(ボイスコイルモータ)であり、コイル401、ドライブマグネット402および2つのヨーク403a,403bにより構成されている。コイル401に電流を流すと、コイル401とマグネット402の間に発生した磁力線相互の反発によってローレンツ力が発生し、第4レンズユニットL4を移動させる。また、移動枠4には光軸方向に多極着磁された不図示のセンサマグネットが保持されている。また、固定鏡筒5には、該センサマグネットに対向した位置にMRセンサ404が保持されており、MRセンサ404からの信号を用いることで、第4レンズユニットL4が所定の基準位置に位置するか否かを検出することができる。
次に、図3〜図6を用いて第3レンズユニットL3を光軸直交面内で移動可能とするシフトユニット3の構成について詳しく説明する。図3はシフトユニット3を分解して、光軸方向のうち像面方向から見た図、図4はシフトユニット3の分解斜視図、図5はシフトユニット3および光量調節ユニット7の断面図である。
シフトユニット3は3つのユニット、すなわちシフトマグネットユニット31、シフトベースユニット32およびシフト移動枠ユニット33より構成されている。このうち、シフトマグネットユニット31とシフト移動枠ユニット33はシフトベースユニット32をその間に配置した状態でビス301により一体化されている。シフトマグネットユニット31とシフト移動枠ユニット33は、請求項にいう可動ユニットに相当する。以下、シフトマグネットユニット31とシフト移動枠ユニット33を一体として表現するときは、可動ユニット34と記す。
可動ユニット34は、第3レンズユニットL3を保持した状態で、シフトベースユニット32に対してピッチ方向(カメラの縦方向)およびヨー方向(カメラの横方向)にシフト移動し、これらの方向のカメラ振れによる像振れを補正する。
331,332はそれぞれ、シフト移動枠ユニットを構成する第1シフト鏡筒および第2シフト鏡筒である。第1シフト鏡筒331は、第3aレンズユニットL3aを、第2シフト鏡筒332は第3レンズユニットL3bをそれぞれ保持している。第1シフト鏡筒331には、第3aレンズユニットL3aを保持するレンズ保持部331aと第2シフト鏡筒332とを連結する連結部331bが設けられている。第1シフト鏡筒331と第2シフト鏡筒332は、相対的な偏心をなくする、すなわち第3aレンズユニットL3aと第3bレンズユニットL3bの光軸を合わせるための調整を行った後、接着固定される。
第2シフト鏡筒332は、第1シフト鏡筒331の連結部331bに対して接着される。第3aレンズユニットL3aと第3bレンズユニットL3bとの光軸方向の間隔は不変である。
311はシフトマグネットユニット31を構成しているマグネットベース、312は同じくシフトマグネットユニット31を構成している金属プレートである。マグネットベース311の像面側の面と金属プレート312の被写体側の面は接している。金属プレート312の材質としては、例えばステンレス鋼などが適している。
321はシフトベースユニット32を構成しているシフトベースであり、固定鏡筒5と後部鏡筒6との間に挟み込まれて固定される。322a,322b,322cはシフトベースユニット32を構成している金属プレートである。金属プレート322a,322b,322cはシフトベース321に設けられた凹部321a,321b,321c内にそれぞれ配置される。金属プレート322a,322b,322cの材質としては、例えばステンレス鋼が適当である。
323a,323b,323cは金属プレート322a,322b,322cと、金属プレート312との間に挟持された3つのボールである。これらボール323a,323b,323cは、その近傍に配置されている、後述するマグネットに吸引されないように、例えばステンレス鋼が適当である。
また、3つのボール323a,323b,323cは金属プレート322a,322b,322cにそれぞれ当接し、さらにマグネットベース311に接して一体となった金属プレート312上の面312a,312b,312cに当接する。これら3箇所ずつの当接面は、撮影光学系の光軸に対して略直交する面である。これにより、3つのボール323a,323b,323cの呼び径が同じ場合は、3箇所の当接面の光軸方向位置間の差を小さく抑えることにより、可動部ユニット34を光軸に対して直角な姿勢を保ったまま保持およびシフト案内が可能となる。
302は円筒形状の棒を略90度屈曲させて作られたL形軸であり、可動ユニット34の光軸回りの回転を阻止する。L形軸302の材質には、SUS303のようなステンレス鋼が好適である。
L形軸302は、シフトベース321に設けられた後述する支持部にピッチ方向において組み込まれる。その後、シフトマグネットユニット31とシフト移動枠ユニット33とを一体化する際に、マグネットベース311や第1シフト鏡筒331に設けられた後述する支持部に組み込まれる。
次に、シフトユニット3の駆動系について説明する。なお、ピッチ方向およびヨー方向の駆動系および位置検出系は互いに同一の構成を有し、光軸回りに90度の位相差を持って配置されているのみである。このため、ここではピッチ方向の駆動系および位置検出系を中心に説明する。図中、ピッチ方向の符号にはpを、ヨー方向の符号にはyの添え字を付す。
313pは光軸から放射方向に2極着磁された位置検出系の構成要素としても用いられる駆動用マグネットである。314pはマグネット313pの被写体側の磁束を閉じるためのバックヨーク、324pはコイル、325pはマグネット313pの像面側の磁束を閉じるためのヨークである。ヨーク325pは、マグネット313pとは光軸方向において略同一の投影形状を有している。326はフレキシブルプリントケーブル(以下、FPCという)である。
マグネット313pは、マグネットベース311pに圧入されて位置決め固定されている。バックヨーク314pは、マグネットベース311pに対して、光軸に向かう方向にスライドされて組み込まれる。コイル324pは、シフトベース321に圧入により固定されている。ヨーク325pは、シフトベース321に対して、光軸に向かう方向にスライドされて組み込まれる。
また、ヨーク325pには、半抜き加工によって凸部325′pが設けられている。この凸部325′pはマグネット313pの2極着磁の両磁極からほぼ均等な距離にあるので、両方の磁極が凸部325′pを引っ張る力もほぼ均等となり、バランスの取れた状態になっている。
321d,321e,321f,321g,321h,321i,321j,321kはFPC326を位置決め固定するためにシフトベース321に設けられた位置決め部材である。FPC326、は該位置決め部材321d〜321kに組み込まれて位置決めされ、シフトベース321に固定される。
コイル324pとヨーク325pは、シフトベース321に固定され、マグネット313pとバックヨーク314pは、マグネットベース311に固定されている。そして、これらマグネット313pとバックヨーク314pとヨーク325pとにより磁気回路が形成される。コイル324pはこの磁気回路内に配置された構成である。このため、コイル324pに電流を流すと、マグネット313pにおける2極着磁の着磁境界に対して略直交する方向に、磁石とコイルに発生する磁力線相互間の反発によるローレンツ力が発生し、マグネットと共に可動部ユニット34がシフト移動する。
このような構成の駆動系がピッチ方向およびヨー方向に関して設けられているので、光軸直交面内で互いに略直交するピッチ方向およびヨー方向への駆動力を可動ユニット34に与えることができる。
すなわち、本実施例では、マグネット313pを含む磁気回路のギャップにコイル324pを配置し、マグネット313pとともに可動ユニット34および第3レンズユニットL3aをシフト駆動する、いわゆるムービングマグネット型の駆動系を構成している。
また、マグネット313pとヨーク325pの間には磁気的吸引作用が生じ、この吸引力によってヨーク325pはマグネット313p側に引き付けられる。つまり、ピッチ方向およびヨー方向の磁気回路での合力が、3つのボール323a〜323cの内側に働くように、これら磁気回路およびボール323a〜323cを配置している。これにより、3つのボール323a〜323cを挟んで可動ユニット34をシフトベース321側に付勢することができる。
また、ボール323a〜323cと金属プレート322a〜322cの当接面間、およびボール323a〜323cと金属プレート312の当接面間には、潤滑油が塗布されている。潤滑油の粘度は、上記吸引力に依らなくてもボール323a〜323cがシフトベース321および可動ユニット34の間から用意に脱落しない程度の粘度である。このため、上記吸引力を上回る慣性力が可動ユニット34に働いて金属プレート312の当接面312a〜312cがボール323a〜323cから浮いた状態となっても、ボール323a〜323cの位置が容易にずれるのを防止できる。
次に、図6Aおよび図6Bを用いて、ボール323aに対するシフトベースユニット32と可動ユニット34の関係を説明する。なお、他のボール323b,323cについても同一の関係となっているため、ここではボール323aについてのみ説明する。
図6Aは、ボール323aおよびその周辺をボール中心を通る光軸に略平行な面で切ったときの断面図を模式化したものである。図6Bは、ボール323aおよびその周囲を被写体方向から見た様子を示す模式図である。
327aは、シフトベース321に設けられた、光軸方向視において矩形状の開口を有する凹部321aに金属プレート322aを配置して形成される空間である。ボール323aは図6Aに示す空間327a内に配置され、金属プレート322aの内底面322a1と当接する。ボール323aの移動は金属プレート322aの内側面322a2、322a3と、シフトベース321の内壁面321a1,321a2からなる4つの面、つまり当接面322a1を囲んだ4面により制限されている。
ボール323aは、金属プレート322aの面322a1および金属プレート312の面312aにそれぞれ当接した状態で、該4面322a2,322a3,321a1,321a2により制限された範囲(移動制限範囲)内を移動する。なお以下、これらボール323a、金属プレート322a、金属プレート312および4面322a2,322a3,321a1,321a2をまとめて可動ユニット支持機構と称する。
また、ボール323aは、金属プレート322aと金属プレート312に挟持されて移動制限範囲内で転動する。ここで、転がり摩擦は滑り摩擦に対して十分小さいので、ボール323aは金属プレート322aの当接面322a1と金属プレート312の当接面312aとに対して滑らずに転がる。可動ユニット34はボール323aを転がしながらシフトベースユニット32に対して移動する。このとき、ボール323aの中心に対して、可動ユニット34とシフトベースユニット32は相対移動するため、シフトベースユニット32に対するボール323aの移動量は可動ユニット34の移動量の半分となる。
次に、位置検出系について説明する。図4および図5において、313pは上述したように位置検出兼駆動用のマグネットである。328pは磁束密度を電気信号に変換するホール素子であり、FPC326の光軸像面側に半田付けにより固定される。FPC326は圧入固定されているコイル324pの光軸前玉側の面を覆うように固定されるため、ホール素子328pはコイル324pの内側に配置される。
可動部ユニット34および第3レンズユニットL3がピッチ方向若しくはヨー方向に駆動されたとき、ホール素子328p(シフトベースユニット32側)によってマグネット313p(可動ユニット34側)の磁束密度の変化が検出される。そして、この磁束密度の変化を示す電気信号がホール素子328pから出力される。このホール素子328pからの電気信号に基づいて、後述のコントロール回路(図10の37)が可動ユニット34および第3レンズユニットL3の位置を検出することができる。
また、ピッチ方向、ヨー方向それぞれの2極着磁の境界は、自らの検出方向軸(ピッチ方向軸およびヨー方向軸)に対して直角に配置されている。このため、他方のマグネット313pの検出方向軸の動きに対して、その動きがマグネット313pの大きさに比べて小さい場合は、ホール素子328pに対する磁束分布が実質的に変化しない。したがって、2軸方向において独立に可動ユニット34の位置を検出することができる。
また、本実施例のように、1つのマグネットを用いて駆動と位置検出の両方を行うことで、従来の位置検出系を構成していた公知のセンサマグネットが不要となり、シフトユニット3全体の光軸方向の薄型化が可能となっている。
次に、図3および図5を用いて光量調節ユニット7とシフトユニット3の位置関係について説明する。
333は第1のシフト鏡筒331におけるレンズ保持部331aと、第2シフト鏡筒332と、第1のシフト鏡筒331における両側の連結部331bとにより囲まれた空間である。この空間333の光軸方向寸法は、光量調節ユニット7の押え板701からND地板707までの光軸方向寸法よりも若干大きくなっている。光量調節ユニット7は、被写体側から見て可動ユニット34のピッチ移動方向下側、つまりレンズ鏡筒が正姿勢にあるときのシフトユニット3の下側に隣接して配置されている。
次に、光量調節ユニット7の組立て方について説明する。光量調節ユニット7は、該空間333内に、光軸直交方向にシフトユニット3のピッチ方向下側から挿入され、シフトベース321に対して、ビス708により固定される。つまり、シフトユニット3の空間333内に対して光量調節ユニット7を後から差し込み、シフトベース321にビス止め固定する。このような構成を採ることにより、光量調節ユニット7の組み付け前においてシフトユニット3の単品での性能評価を容易に行うことができ、かつ光量調節ユニット7の組み付け作業も容易である。
次に、図3および図4を用いてL形軸302を含むシフト案内機構について説明する。321g,321hはシフトベース321に設けられた凹部を有する支持突起である。331c,331dは第1シフト鏡筒331に設けられた支持部であり、L形軸302のヨー方向の像面方向を支持している。L形軸302が該支持突起321g,321hと相対摺動することで、可動ユニット34は光軸直交面内の回転を抑制されつつヨー方向へ移動する。
321i,321jは、シフトベース321に設けられた支持部であり、該支持部321i,321jによりL形軸302のピッチ方向の光軸方向位置が決まる。311a,311bはマグネットベース311に設けられた凹部を有する支持突起である。可動ユニット34は支持突起311a,311bがL型軸302と相対摺動することにより、光軸直交面内の回転を抑制されながらピッチ方向にシフト移動する。L形軸302、支持突起321g,321h,311a,311bおよび支持部331c,331d,321i,321jによってシフト案内機構が構成される。
次に、図7を用いてシフト案内機構の寸法関係について説明する。図7は、シフト案内機構の一部を模式的に示した図であり、L形軸302と支持突起321gと支持部331cをL形軸302の軸方向に略直交する方向に切断したときの断面図である。なお、他の支持突起と支持部およびL形軸302との関係も同様である。
DはL形軸302の外径寸法である。H1は支持突起311gに形成された凹部の光軸方向開口幅であり、その大きさはL形軸302の径よりも若干大きい。H2は支持部321cと支持突起311gの凹部の底面との間の寸法(光軸方向間隔)であり、これもL形軸302の径より若干大きい。
支持部321i,321jおよび支持突起321g,321hはシフトベースユニット32を構成するシフトベース321に設けられているため、支持部321i,321jおよび支持突起321g,321hの光軸方向位置によってL形軸302の光軸方向位置が決まる。
一方、支持突起311a,311bおよび支持部331c,331dにおけるL形軸302の光軸方向に対向する面とL形軸302との間には、若干のスペースが形成されている。支持突起311a,311bおよび支持部331c,331dはそれぞれ可動ユニット34側に設けられ、可動ユニット34はシフトベースユニット32を介して光軸方向の位置が決まっている。このため、仮に光軸方向の寸法公差が積み重なった場合でもそれを逃げられる最小限の余裕が必要となる。したがって、このような寸法構成を採ることで、L形軸302を光軸方向および光軸直交方向の双方にスムーズに摺動案内することができる。
次に、図8を用いて、光軸方向から見たときのシフト案内機構の位置関係について説明する。図8はシフトユニット3と光量調節ユニット7を被写体側から見た図である。なお、図8では、シフトユニット3の内部の構成および位置関係をわかりやすく説明するために、シフト案内機構および前述した可動ユニット支持機構を点線で示し、光軸直交面内における可動ユニット支持機構が占める領域を斜線部A,Bで示している。また、一部の形状は省略している。
図8において、支持突起321g,321hおよび支持部331c,331dは光軸方向から見て、それらのピッチ方向(図8の上下方向)の間隔(以下、支持間隔という)を極力長くとっている。また、支持部321i,321jおよび支持突起311a,311bも、光軸方向から見てそれらのヨー方向(図8の左右方向)の支持間隔を極力長くとっている。これにより、L形軸302の支持ガタによる振れ角を極力小さくすることができ、可動ユニット34のピッチ方向およびヨー方向の案内をより正確にできる。シフトユニット3の光軸直交方向における寸法を大きくすることなく支持間隔を長くするため、本実施例では、以下のような構成を採っている。すなわち、光軸方向から見て、可動ユニット支持機構の配置領域A,Bの少なくとも一部と、L形軸302のピッチ方向軸部およびヨー方向軸部の少なくとも一部とがそれぞれ重なる構成を採用している。
なお、本実施例では、シフトベース321に対するL形軸302の移動方向をヨー方向とし、可動ユニット34はL形軸302に対してピッチ方向に移動するわうにしている。これにより、L形軸302までピッチ方向に駆動する必要がなく、ピッチ方向において駆動系に入力するエネルギーは可動ユニット34の駆動にのみ使われる。
次に、L形軸302の移動方向について、図9Aおよび図9Bを用いて説明する。図9Aおよび図9Bは、L形軸302の移動と、可動ユニット34およびシフトベースユニット32の関係とをわかりやすく説明するために、L形軸302および支持突起311a,311b,321g,321hのみを模式的に示している。なお、図9Aは可動ユニット34がピッチ方向に移動する場合、図9BはL形軸302および可動ユニット34がヨー方向に移動する場合を示している。また、これらの図では、移動しない部材を斜線で示している。
図9Aに示すように、可動ユニット34がピッチ方向に移動するとき、L形軸302は可動ユニット34(支持突起311a,311b)の移動を摺動案内するのみである。しかし、可動ユニット34がヨー方向に移動するときは、L形軸302は可動ユニット34と一体となって支持突起321g,321hと相対摺動しながらヨー方向へ移動する。本実施例では、シフトユニット3に隣接している光量調節ユニット7は可動ユニット34のピッチ移動方向下側に隣接しているため、L形軸302の移動方向を光量調節ユニット7のないヨー方向に設定している。仮に、L形軸302の移動方向をピッチ方向とした場合、隣接する光量調節ユニット7をL形軸302の移動量分だけ外側へずらさなければならず、レンズ鏡筒の光軸直交方向寸法の大型化を招いてしまうからである。よって、本実施例のような構成とすることで、レンズ鏡筒の大型化を防止できる。
そして、本実施例では、可動ユニット34がピッチ方向に移動するときには、L形軸302の自重の影響を受けないので、可動ユニット34を駆動する駆動力を小さくすることができ、省エネルギーに有効となる。
次に、図10A〜図10Cを用いて、可動ユニット34と固定鏡筒5との関係について説明する。図10A〜図10Cは、図2におけるX−X断面、すなわち図2に示した可動ユニット34のうち光軸Lから最も光軸直交方向に離れた端部34Aを含む光軸直交面で切断した断面を、光軸方向から見た図である。可動ユニット34は、その輪郭のみを示している。また、図10A〜図10C中の34B,34Cはそれぞれ、端部34Aとは異なる光軸直交方向において、可動ユニット34のうち光軸Lから最も離れた端部を示している。これら端部34A〜34Cは、実際には図3に示すように、シフトマグネットユニット31を構成しているマグネットベース311の光軸直交方向(可動ユニットの移動方向)での端部である。
なお、図10Aは可動ユニット34が光軸中心位置にある状態、すなわち第3レンズユニットL3の光軸Lと撮影光学系の光軸AXLとが略一致した状態を示す。ここで、略一致とは、完全に一致する場合と、許容誤差の範囲内で完全一致からずれている場合とを含む意味である。
また、図10Bは、可動ユニット34が光軸AXLに対してピッチ方向およびヨー方向(図の右上方向)に最大可動量移動した状態を示す。さらに、図10Cは、可動ユニット34が、ピッチ方向およびヨー方向に図10Bとは反対方向(図の左下方向)へ最大可動量移動した状態である。なお、図10Cは、シフトユニット3を固定鏡筒5に組み込む際の光軸直交面内での位置も示している。
図2および図10A〜図10Bに示す51は、固定鏡筒5の外周壁5aの内面5bにおける可動ユニット34の端部34A〜34Cに対向する領域に形成された開口部である。この開口部51は、外周壁5aにおいて内側から外側に向かって貫通する貫通開口部50における内面5b側の開口面を形成している。本実施例では、可動ユニット34の3つの端部34A〜34Cに対応して、3つの開口部51(貫通開口部50)を外周壁5aに形成している。
図10Aに示すように、可動ユニット34が光軸中心位置にある状態では、端部34Aが開口部51を通って固定鏡筒5の外周壁5aの内面5bよりも若干外側に位置している。すなわち、光軸方向視において外周壁5aに若干重なる位置に配置されている。また、端部34Bと端部34Cのうちの一部は、開口部51(外周壁5aの内面5b)に略一致する位置に配置されている。
この状態から図10Bに示す最大移動状態とすると、可動ユニット34の端部34A〜34Cは、開口部51を通って外周壁5aの内面5bよりも外側に位置する。すなわち、光軸方向視において外周壁5aに重なる位置に配置される。
一方、図10Cに示す最大移動状態とすると、可動ユニット34の端部34A〜34Cは、いずれも外周壁5aの内面5bよりも内側に位置する。すなわち、光軸方向視において外周壁5aに重ならない位置に配置される。
このように、本実施例では、可動ユニット34の移動方向端部34A〜34Cが外周壁5aの内面5bよりも外側まで移動できるように可動ユニット34の可動範囲を設定している。これにより、可動ユニット34の可動範囲を従来と同等としながら、外周壁5a、つまりはレンズ鏡筒の光軸直交方向寸法を従来に比べて小さくすることができる。
さらに、可動ユニット34が光軸中心位置にある状態で、可動ユニット34の移動方向端部34A〜34Cが外周壁5aの内面5bよりも外側又は内面5bに略一致する位置に配置されることで、さらにレンズ鏡筒の光軸直交方向寸法を小さくすることができる。
なお、シフトユニット3を像面方向から固定鏡筒5に組み込むときは、可動ユニット34を光軸中心位置から図10Cに示す位置まで移動させることで、固定鏡筒5の外周壁5aに干渉させることなくシフトユニット3を組み込むことができる。
また、本実施例のレンズ鏡筒では、上記各貫通開口部50の外側の開口を覆うように、セット部材12を配置している。このセット部材12は、後述する電気回路やアクチュエータ、ビデオテープやDVD等の撮影画像を記録する記録装置、若しくは撮影画像をモニタするディスプレイ装置等に相当する。セット部材12は、レンズ鏡筒(固定鏡筒5)に対しては移動せず、固定された部材である。
前述したように、レンズ鏡筒の光軸直交方向寸法が小型化された結果、固定鏡筒5の外周に近接して配置されるセット部材12も光軸AXLに近づけて配置することができる。したがって、ビデオカメラ全体の小型化を図ることができる。
しかも、セット部材12によって各貫通開口部50の外側を覆うことで、固定鏡筒5の外部から各貫通開口部50を通って光やゴミ、水滴が鏡筒内に侵入することを防止できる。また、新たな部品を追加する必要がいので、部品点数の増加を抑えることができる。
図11には、本実施例のビデオカメラにおける電気的構成を示している。前述したように、200は第2レンズユニット2の駆動源であるズームモータである。400は第4レンズユニット4の駆動源であるボイスコイルモータのコイルである。
35は光量調節ユニット7の駆動源である絞りモータであり、ステッピングモータ等が用いられる。
フォトインタラプタ205は、第2レンズユニットL2が光軸方向における基準位置に位置しているか否かを検出するズームリセットスイッチである。第2レンズユニットL2が基準位置に位置したことが検出された後、ズームモータ33に入力するパルス信号数を連続してカウントすることにより、第2レンズユニットL2の光軸方向の移動量(基準位置に対する位置)の検出を行うことができる。709は絞りエンコーダである。
37はカメラの制御を司る、CPU等からなるコントロール回路である。38はカメラ信号処理回路であり、撮像素子601からの出力に対して所定の増幅やガンマ補正などの信号処理を施す。これらの処理を受けた映像信号のコントラスト信号は、AEゲート39よびAFゲート40に供給される。AEゲート39およびAFゲート40はそれぞれ、露出制御およびピント合わせのために最適な信号の取り出し範囲を全画面の映像信号の中から設定する。ゲートの大きさは可変であったり、複数設けられたりする場合がある。
41はAF(オートフォーカス)のためのAF信号を処理するAF信号処理回路であり、映像信号の高周波成分に関する1つもしくは複数の出力を生成する。
42はズームスイッチ、43はズームトラッキングメモリである。ズームトラッキングメモリ43は、変倍に際して被写体距離とバリエータ(第2レンズユニットL2)の位置に応じたフォーカシングレンズ(第4レンズユニットL4)の位置情報を記憶している。なお、ズームトラッキングメモリとして、コントロール回路37内のメモリを使用してもよい。
例えば、撮影者によりズームスイッチ42が操作されると、コントロール回路37は、ズームトラッキングメモリ43の情報をもとに第2レンズユニットL2の位置に対して第4レンズユニットL4が満たすべき位置を算出する。そして、この位置に第4レンズユニットL4が移動するように、フォーカスモータ34の駆動を制御する。
また、オートフォーカス動作では、コントロール回路37は、AF信号処理回路41の出力がピークを示すようにフォーカスモータ400の駆動を制御する。
さらに、適正露出を得るために、コントロール回路37は、AEゲート39を通過したY信号の出力の平均値を基準値として、絞りエンコーダ35の出力がこの基準値となるように絞りモータ35の駆動を制御し、光量をコントロールする。
61,62はピッチ方向およびヨー方向の角度変化を検出するための振動ジャイロ等の振れセンサである。コントロール回路37は、これら振れセンサ61,62からの出力と、ホール素子328からの信号とに基づいてコイル324への通電を制御して第3レンズユニットL3を駆動し、像振れを補正する。
なお、上記実施例では、可動ユニット34の端部34A〜34Cに対する逃げ形状として貫通開口部50を形成した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、固定鏡筒5の外周壁5aの内面5bにて開口する開口部を有する凹形状部を設けてもよい。
また、上記実施例では、固定鏡筒5に形成した貫通開口部50の外側をセット部材12で覆う構成について説明したが、本発明はこの構成に限らない。例えば、図13に示すように、固定鏡筒5の外周面に、遮光性を有する薄いシート13を貼り付けるようにしてもよい。
また、上記実施例では、シフトユニット3の固定鏡筒5に対する組立て時における可動ユニット34の位置を図10Cに示す位置として説明したが、本発明では、この構成に限らない。すなわち、図10Cの位置ではなくても、可動ユニット34の可動範囲内で固定鏡筒5の外周壁5aに干渉せず組み込める位置であればどのような位置でもよい。
また、上記実施例では、ムービングマグネット型のアクチュエータを用いて第3レンズユニットL3を駆動する場合について説明したが、本発明はこの構成に限らず適用することができる。例えば、コイルを可動ユニットに設け、マグネットをベース部材に設けたムービングコイル型のアクチュエータを用いる場合にも適用することができる。
また、上記実施例では、可動ユニットが二体に分かれた構成について説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。
また、上記実施例では、可動ユニットの光軸回りの回転を阻止する機構としてL形軸302を用いた構成について説明したが、本発明はこの構成に限らない。例えば、図12に示すように、案内溝801を有するL字型の板802をL形軸に代えて用いることができる。また、特許第3229899号公報にて開示された構成等、可動ユニットの回転を阻止できるものなら何でもよい。
また、本発明は、可動ユニット支持機構としてボールを用いた場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、可動ユニット若しくはベース部材に光軸から放射方向に延びるピンを設け、該ピンと光軸方向移動を阻止する長溝とを係合させる構成でもよい。
また、上記実施例では、第3レンズユニットL3を撮影光学系の光軸AXLに対して略直交する方向に駆動する場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、撮影光学系の光軸上の特定位置を中心として、レンズユニットの光軸に略直交する方向に回動させるタイプの可動ユニットを備えた光学機器にも本発明を適用することができる。
さらに、上記実施例では、レンズ鏡筒がカメラ本体に一体的に設けられた撮像装置について説明したが、本発明は、カメラ本体に対して着脱可能な交換レンズ装置や、防振機能を有する双眼鏡等の観察機器等の光学機器にも適用することができる。