従来、電子写真方式の画像形成装置において、像担持体としての電子写真感光体(感光体)を帯電処理する帯電手段としては、一般的に、コロナ帯電器が使用されてきた。近年、低オゾン、低電力等の利点を有することから、電圧を印加した帯電部材を被帯電体たる感光体に当接させて感光体の帯電処理を行う接触帯電方式の装置(接触帯電装置)が実用化されてきている。特に、帯電部材として導電性ローラ(帯電ローラ)を用いたローラ帯電方式の接触帯電装置が、帯電の安定化という点から好ましく用いられている。ローラ帯電方式の接触帯電装置では、帯電部材としての導電性の弾性ローラを感光体に加圧当接させ、これに電圧を印加することによって感光体を帯電処理する。
より具体的には、ローラ帯電方式による感光体の帯電処理は、帯電部材から感光体への放電によって行われる。そのため、ある閾値電圧以上の電圧を帯電部材が印加されることによって、感光体の帯電処理が開始される。一例を示すと、厚さが15μmの負帯電性のOPC感光体に対して帯電ローラを加圧当接させて帯電処理を行う場合には、帯電ローラに対して約−560V程度の電圧を印加すれば、感光体の表面電位の絶対値が上昇し始め、それ以降は印加電圧に対して1次線形的に感光体の表面電位の絶対値が増加する。この閾値電圧を、「帯電開始電圧Vth」という。つまり、電子写真画像形成プロセスに必要とされる感光体の表面電位VD(暗部電位)を得るためには、帯電ローラには感光体の帯電極性においてVth+VDなるDC電圧を印加することが必要となる。このようにDC電圧のみを接触帯電部材に印加して感光体の帯電処理を行う接触帯電方式を「DC帯電方式」という。
特に、このDC帯電方式により感光体の帯電処理を行う場合には、主に帯電工程前の感光体上の電位の乱れによってハーフトーン画像などに生じる「横スジ(横白スジ)」、或いは主に感光体上の帯電電位の差によって生じる「ポジゴースト」と呼ばれる画像不具合が発生し易いことが分かった。
ここで、上記画像不具合として特に顕著である「横白スジ」の発生メカニズムについて更に説明する。尚、ここで電位の大小関係に言及する場合、それは絶対値におけるものである。
図9(a)〜(c)は像担持体としての円筒型の電子写真感光体(感光ドラム)1と、転写手段としてのローラ型の転写帯電器(転写ローラ)5とで形成される転写部(転写ニップ)Tの近傍を示す。図9(a)に示すように記録材Pが転写ニップTに突入するまでは、転写工程前の感光ドラム1上の電位は、帯電ローラ2によって帯電処理された表面電位、即ち、暗部電位VDである。転写ニップTを通過した後の感光ドラム1上の電位は、転写電流によって暗部電位VDよりも低いVtrに落ちる。
次に、図9(b)に示すように記録材Pの搬送方向先端が感光ドラム1と転写ローラ5との間に形成された転写ニップTに突入すると、感光ドラム1と転写ローラ5とが接しないエアギャップGができる。このエアギャップGの部分では、感光ドラム1の表面が転写電流で除電され難くなるため、感光ドラム1上の電位が上記Vtrよりも高いVtr0の部分ができる。更に、記録材Pが転写ニップTを進行すると、図9(c)に示すように、転写ニップTを過ぎた感光ドラム1上の電位は再びVtrとなる。
感光ドラム1上の電位Vtrは、帯電ローラ2によって再び帯電されると暗部電位VDに戻る。しかし、感光ドラム1上の電位がVtr0の部分は、電位がVtrの部分と比較して帯電前の電位が高いため、帯電後の電位も高くなってしまう。そのため、上述のように感光ドラム1上の電位がVtr0となる部分の前後の部分において、感光ドラム1の1周後に均一な濃度のハーフトーン画像等を出力すると、感光ドラム1の表面移動方向と略直交する方向に沿う白スジ状の横スジ画像が発生することがある。これは、感光ドラム1上の電位がVtr0の部分に相当する部分の電位が高くなるためであると考えられる。尚、これと同様の理由で、記録材Pの搬送方向後端に対応する感光ドラム1上にも、横白スジ画像が発生し易い。
以上、記録材Pに対して直接転写ローラ5が当接する場合を例として説明したが、転写帯電器が硬度の低いスポンジローラの場合には、上記ギャップGは小さくなる。又、転写ローラの上に更に硬度の高い樹脂ベルトが重なる場合には、上記ギャップGは大きくなり、横白スジは発生しやすくなる。
一方、「ポジゴースト」は、感光ドラム1の1周前の画像に応じて、帯電工程後に感光ドラム1上の帯電電位のムラが生じることで、感光ドラム1の1周前の画像に応じた画像濃度ムラが生じる現象である。
このように、特に、DC帯電方式の接触帯電装置では、転写部を通過した後の感光体上の電位履歴を完全に消すことが難しい。このような白横スジ、或いはポジゴーストといった画像不具合を防止するには、転写部を通過した後で帯電工程前に感光体の表面に光を照射して残留電位を除電する除電手段として帯電前露光手段を設けることが効果的である。
特許文献1は、感光体の長手方向に対向して設けられ、発光部材から入射した光を感光体に導く光照射部材を有する除電装置を備えた画像形成装置を開示する。図10〜図12を参照して斯かる従来の帯電前露光手段について更に説明する。
図10に示す画像形成装置200は、感光ドラム201と、帯電ローラ202と、現像器204と、クリーニング装置206とが一体的にユニット化されたプロセスカートリッジBを、装置本体Aに着脱可能に有する。又、装置本体A内には、露光装置203、転写ローラ205等が配置されている。図11は、図10の画像形成装置200を図中矢印X方向から見た概略図である。尚、画像形成装置200の外装部及びプロセスカートリッジBの現像器204及びクリーニング装置206は図示していない。
除電装置210は、装置本体Aの図10中手前側と奥側に装備された光源としてのLEDランプ211を有する。又、除電装置210は、プロセスカートリッジBに装備され、両方のLEDランプ211に対向して光入光部が形成され、導光された光を感光ドラム201の長手方向表面に照射する光照射部材としての棒状ライトガイド212を有する。LEDランプ211は、装置本体A側に設けられ、感光ドラム201上の除電領域よりも外側の領域に配置されている。更に、LEDランプ211からの光が不必要に感光ドラム201の端部を露光しないように、LEDランプ211の外周を取り囲んで遮光する遮光部材213が設けられている。
図12(a)に示すように、棒状ライトガイド212は、光を透過及び反射するライトガイド部214と、反射効率を高めるための白色樹脂ケース215との2つから構成されている。ライトガイド部214の材質としては、光の透過率の高いアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、又はガラスなどが用いられる。又、白色樹脂ケース215は、両端部に入光部215aを有する。又、側面には所定の幅を持った開口部215bを有する。棒状ライトガイド212は、開口部215b側が感光ドラム201に対向するように配置される。
図12(b)は、棒状ライトガイド212を図12(a)中の矢印Z方向から見た図である。白色樹脂ケース215の開口部215bとは反対側のライトガイド表面には、V字型の刻み216が多数施されている。棒状ライトガイド212の入光部215aから入射された光は、各V字型の刻み部分で各々反射され、その光路を変更し、白色樹脂ケース215の開口部215bからライトガイド長手方向に対して垂直方向に照射される。つまり、この光は、所定の除電幅(図11参照)をもって感光ドラム201表面に除電光として照射される。このように、感光ドラム201への光照射部材としてライトガイドを用いた場合、LEDを複数個配列したチップアレイタイプに比べて、感光ドラム201上における光量のリップル(振れ幅)も小さく、均一な除電が可能である。
しかしながら、感光体の表面を除電光によって連続して露光すると、感光体上に光メモリーが発生し、この光メモリーによりハーフトーン画像に細かい「横黒スジ」画像が発生する場合がある。この光メモリーは、連続して数百枚程度の画像出力であれば問題無い場合が多い。しかし、連続して2000〜3000枚程度の画像出力を行う場合、即ち、20枚/分(以下ppm)程度の速度の画像形成装置であれば2〜3時間程度休み無く画像出力を行う場合には発生し易い。或いは、休み休み画像出力を行う場合であっても、1日に数千枚程度の画像出力を続けた場合には、上記光メモリーは発生し易い。そのため、1カ月当たり数千枚程度の出力を行うような平均的なプリンタの使い方をしている限りは問題になり難いが、印刷機のような使い方をして、一時に大量の画像出力を行う場合には、上記「横黒スジ」が問題になる場合があった。
その一方で、この光メモリーは、一旦発生すると数時間放置していただけでは消滅し難く、消滅するまでの1日程度の期間は、「横黒スジ」画像が発生し易い。そのため、発生頻度は低いものの、一旦発生すると使用者が画像不良を見続けることになり易い。
この光メモリー発生のメカニズムは、次の通りであると考えられる。つまり、感光体を非常に長い時間露光し続けた場合に、感光体の表面に形成された電荷発生層において電荷が部分的に残存し易い状態になる。そのため、帯電ローラによって帯電し、その後均一なハーフトーン画像を露光した際に、細かい横スジ状に電位が低い部分が発生する。これが横黒スジ画像になると考えられる。又、上記の電荷の残存現象は、低温低湿環境下で顕著となるため、絶対水分量が0.008kg/kg程度以上の通常のオフィス環境であれば、画像不良が顕在化し難い。
特開2001−142365号公報
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
[画像形成装置の全体構成及び動作]
先ず、図1を参照して、本発明に係る画像形成装置の一実施例の全体構成及び動作について説明する。本実施例の画像形成装置100は、画像情報に従って、フルカラー画像を記録材(記録用紙、プラスチックシート、布等)Pに形成することができる電子写真方式のプリンタである。画像情報は、画像形成装置本体(装置本体)Aに接続された原稿読み取り装置、デジタルカメラ或いはパーソナルコンピュータ等の外部機器から、装置本体Aに送られる。カラー画像形成装置としては、例えば多重転写方式、中間転写体方式、或いは感光体表面にカラー像を重ねた後一括転写して像形成を行う多重現像方式などが知られている。本実施例では多重転写方式を採用する。特に、本実施例では、それぞれ異なる色のトナー像を形成する複数の画像形成手段を直列に配置し、記録材担持体により搬送される記録材に、各画像形成手段により形成されるトナー像を重ね合わせて転写するインライン方式を用いる。インライン方式による多重転写方式は、高速化が可能であること、像転写の回数が少なく画質に有利であることなどにより優れた方式である。
画像形成装置100は、複数の画像形成手段として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成する第1、第2、第3、第4のプロセスステーション(以下、単に「ステーション」という。)SY、SM、SC、SKを有する。第1〜第4のステーションSY、SM、SC、SKは、無端移動するベルト状の記録材担持体、即ち、静電吸着搬送ベルト(以下、単に「搬送ベルト」という。)11の記録材担持面の移動方向に沿って直列に配置されている。
尚、本実施例では、各ステーションSY、SM、SC、SKの構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除けば実質的に同一である。従って、以下、特に区別する必要のない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを示すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して総括的に説明する。
ステーションSは、像担持体としての円筒型の電子写真感光体、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1の周囲には、帯電手段としての帯電ローラ2、現像手段としての現像器4、クリーニング手段としてのクリーニング装置6が設けられている。又、ステーションSには、帯電工程後の感光ドラム1上を露光し得るように露光手段としての露光装置(スキャナユニット)3が設けられている。又、搬送ベルト11を介して感光ドラム1に対向する位置には、転写手段としての転写ローラ5が配置されている。転写ローラ5と感光ドラム1とが対向する位置で、搬送ベルト11は感光ドラム1に接触して転写部(転写ニップ)Tを形成する。更に、詳しくは後述するように、ステーションSには、帯電工程の前に感光ドラム1に光を照射して除電するための帯電前露光手段10が設けられている。
画像形成動作時には、感光ドラム1は、図示矢印方向に回転駆動される。本実施例では、20ppmの画像出力速度を達成するために、感光ドラム2の表面の移動速度、即ち、プロセススピードを120mm/secに設定した。回転する感光ドラム1は、帯電ローラ2によって一様に帯電される。この時、帯電ローラ2には、帯電バイアス出力手段としての帯電バイアス電源(図示せず)より、所定の帯電バイアスが印加される。本実施例では、帯電ローラ2は、感光ドラム1に接触し、DC電圧が印加されることで、DC帯電方式により感光ドラム1を帯電させる。帯電ローラ2と感光ドラム1との接触部が、感光ドラム1を帯電させる帯電部Nを形成する。
帯電ローラ2によって帯電させられた感光ドラム1は、露光装置3により、各ステーションSに対応する分解色の画像情報信号に応じて走査露光される。即ち、露光装置3は、レーザ、ポリゴンミラー、レンズ系等を備え、画像信号に応じて変調されたレーザ光をスキャン出力して、感光ドラム1の表面にレーザ光を照射する。これにより、感光ドラム1上に、各ステーションSに対応した静電像(潜像)が形成される。
レーザ光の照射によって感光ドラム1上に形成された静電像は、次いで現像器4によって、各ステーションSに対応する分解色のトナーを用いてトナー像として現像される。
一方、記録材Pが、記録材供給部20から搬送ベルト11へと搬送される。即ち、カセット21内に収納された記録材Pは、給紙ローラ22によって送り出される。そして、この記録材Pは、レジストローラ23によって、ステーションSでの感光ドラム1上へのトナー像の形成とタイミングを合わせて搬送ベルト11へと供給される。
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、転写部Tにおいて、搬送ベルト11上に担持されて搬送されてきた記録材P上に、転写ローラ5の作用によって転写される。この時、転写ローラ5には、転写バイアス出力手段としての転写バイアス電源51より所定の転写バイアスが印加される。一般的に用いられる反転現像方式において、感光体が例えば負極性のOPC感光体の場合、露光部を現像する際には負極性トナーが用いられる。本実施例においても、現像方式として反転現像方式を採用し、感光体としてOPC感光体が用いられている。従って、転写ローラ5には転写バイアス電源51よりトナーの正規の帯電極性とは逆極性である正極性の転写バイアスが印加される。
尚、転写工程で記録材Pに転写されなかったトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置6が備えるクリーニング部材としてのクリーニングブレード61により掻き落とされ、廃トナー容器62に収容される。
例えば、フルカラー画像形成を行う際には、上述の動作が第1〜第4のステーションSY、SM、SC、SKにおいて行われる。実際のプリントプロセスにおいては、搬送ベルト11の移動速度と各ステーションSY、SM、SC、SKの転写位置間の距離を考慮して、記録材P上に形成される各色のトナー像の位置が一致するタイミングで、各ステーションSY、SM、SC、SKでの画像形成、転写プロセス、記録材Pの搬送が行われる。これにより、記録材Pが各ステーションSY、SM、SC、SKにおける転写部Tをそれぞれ一度通過する間に、記録材P上にトナー像が完成される。
記録材P上にトナー像が完成された後、記録材Pは定着装置30に通される。定着装置30は、加熱手段を備える定着ローラ31と、これに圧接する加圧ローラ32との間で記録材Pを挟持して搬送し、熱及び圧力により記録材P上にトナー像を定着させる。
その後、記録材Pは、排出ローラ16によって、装置本体Aの上面に設けられた排出部としてのトレー17上に排出される。
尚、例えば、ブラック単色の画像など、複数のステーションSのうちいずれか1つを用いて単色の画像を形成することもできる。又、複数のステーションSのうち2つ以上の組み合わせを用いて(全てのステーションは用いない)画像を形成することもできる。
本実施例では、感光ドラム1と、帯電ローラ2と、現像器4と、クリーニング装置6とは、枠体8によって一体的にユニット化されたプロセスカートリッジBを構成する。プロセスカートリッジBは、装置本体Aが備える装着ガイド、位置決め部材等の装着手段(図示せず)を介して、取り外し可能に装置本体Aに装着される。又、プロセスカートリッジBは、装置本体Aから取り外された状態で、感光ドラム1を保護(遮光)するための感光ドラムシャッター(シャッター)7を開閉可能に有している。シャッター7は、例えば、プロセスカートリッジBを装置本体Aに装着した時、或いはプロセスカートリッジBを装置本体Aに装着して、装置本体Aの開閉部材(例えば、搬送ベルト11と共に、装置本体Aの図1中右側側面が開閉する。)を閉じる時に開くようにすることができる。本実施例では、シャッター7は、感光ドラム1が搬送ベルト11に接触することを許すように、プロセスカートリッジBが装置本体Aに装着された状態で感光ドラム1の下側に移動する。
[搬送ベルト]
次に、搬送ベルト11について更に説明する。搬送ベルト11は、複数のローラとして駆動ローラ12、吸着対向ローラ13、テンションローラ14及び15の各ローラに張架されている。搬送ベルト11は、駆動ローラ12に回転駆動力が伝達されることにより、図示矢印方向に周回移動(回転)する。
駆動ローラ12と吸着対向ローラ13とで形成される記録材担持面に対向して、第1〜第4のステーションSY、SM、SC、SKが一列に配置されている。そして、各ステーションSY、SM、SC、SKに設けられた感光ドラム1Y、1M、1C、1Kが、搬送ベルト11を介して転写ローラ5に当接されている。
又、搬送ベルト11による記録材Pの搬送方向において最上流側の第1のステーションSYよりも上流に、吸着ローラ24が配置されている。吸着ローラ24は、搬送ベルト11を介して吸着対向ローラ13に当接されている。記録材Pは、吸着ローラ24と吸着対向ローラ13とが対向する位置で搬送ベルト11が吸着ローラに接触して形成されるニップ部(吸着ニップ)を通過する際に、バイアスを印加されて搬送ベルト11に静電的に吸着される。即ち、吸着ローラ24には、吸着バイアス出力手段として吸着バイアス電源25から所定の吸着バイアスが印加される。これにより、搬送ベルト11上に静電的に吸着された記録材Pは、図示矢印方向に搬送される。
搬送ベルト11としては、厚さ50〜200μm、体積抵抗率109〜1016Ωcm程度のPVdF、ETFE、ポリイミド、PET、ポリカーボネート等の樹脂フィルムを用いることができる。或いは、搬送ベルト11としては、厚さ0.5〜2mm程度の、例えば、EPDMなどのゴムの基層の上にウレタンゴムにPTFEなどのフッ素樹脂を分散したものなどを表層として設けたものを用いることができる。特に、本実施例においては、初期から耐久後まで表面の反射率が高い状態を維持することのできるベルトとして、厚さが100μmのPVdFの基層の上に、厚さが1μmのアクリル樹脂をコーティングしたものを用いた。このベルトの光沢度(グロス値)は90以上であり、非常に高い反射率を有する。尚、ベルトのグロス値は市販の光沢度計(日本電色製PG−3D)で測定した値である。
[帯電前露光手段]
本実施例の画像形成装置100は、前述のような白横スジ、或いはポジゴーストといった画像不具合を防止するために、帯電工程前に感光体に光を照射して残留電位を除電する帯電前露光手段10を有している。
このように帯電前露光手段を設けて帯電工程前に感光体を露光して除電する画像形成装置では、前述のように、従来、「横黒スジ」といった画像不具合が発生することがあった。
本発明の目的の1つは、大量画像出力後であっても細かい横黒スジ画像の発生を抑制することができ、しかも通常の画像出力時に横白スジやドラムポジゴーストといった画像不具合の発生を抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
そこで、本実施例では、トナー像を担持する感光ドラム1と、感光ドラム1を帯電させる帯電ローラ2と、感光ドラム1上のトナー像を記録材Pに転写させる転写ローラ5と、感光ドラム1の表面移動方向において転写ローラ5による感光ドラム1から記録材Pへのトナー像の転写部Tよりも下流側で、且つ、帯電ローラ2によって感光ドラム1を帯電させる帯電部Nよりも上流側において感光ドラム1を露光する帯電前露光手段10と、を有する画像形成装置100は、所定の表面移動速度で移動する感光ドラム1の表面の単位面積当たりに帯電前露光手段10から照射される光の光量を、第1の光量と、該第1の光量よりも少ない第2の光量とで切り替える光量切替手段を有する構成とする。詳しくは以下説明するように、本実施例では、画像形成装置100は、光量切替手段として帯電前露光手段10の点灯と消灯を繰り返すことで、感光ドラム1上の単位面積あたりに堆積される光量を減少させる手段を有する。以下、更に詳しく説明する。
本実施例では、帯電前露光手段10は、感光ドラム1の表面移動方向において転写ローラ5(即ち、転写位置)の下流側で、且つ、クリーニングブレード61(即ち、クリーニング位置)の上流側に配置されている。
図2をも参照して、近年、多色画像形成装置は小型化のために感光ドラムの径と間隔が非常に小さくなってきている。そのため除電のための帯電前露光手段10を設置するスペースが非常に限られてきている。本実施例では、露光手段10を感光ドラム1、搬送ベルト11、シャッター7、プロセスカートリッジBの枠体8で囲まれた部分を側方から照射する角度に設置している。実際には、搬送ベルト11により搬送する記録材Pとの間隔が狭いため、従来のようなライトガイドをプロセスカートリッジBの枠体8と搬送ベルト11とで挟まれた空間に設置することは難しい。そのため、本実施例では、ライトガイドは設けず、帯電前露光手段としてのLED10の光を直接感光ドラム1に照射する。尚、本発明はこれに限定されるものではなく、装置内のスペースなどとの関係で許容される場合には、従来技術として説明したものと同様のライトガイドを使用することもできる。
本実施例では、LED10の光軸は感光ドラム1の回転軸と平行に設定されており、LED10の光束は感光ドラム1上の転写後の領域L1に投影される。
ここで、LED10の光が隣接するステーションSにおける転写工程前の感光ドラム1の表面に照射されると、ライン画像の飛び散り等の画像不具合を引き起こすことが考えられる。そのため、感光ドラム1上の転写工程前の領域は遮光する必要がある。本実施例では、シャッター7が、プロセスカートリッジBを装置本体Aに装着した状態で、隣接するステーションSのLED10の光が感光ドラム1の転写工程前の領域に照射されるのを遮る。上述のように、シャッター7は、本来プロセスカートリッジBを装置本体Aから取り外したときに感光ドラム1を遮光するためのものである。このため、本実施例では、特別な遮光手段を設ける必要がない。
一方で、本実施例では、非常に高いグロスを有する搬送ベルト11を使用している。そのため、特に記録材Pの先端部の横白スジが発生する部位では、LED10の光は搬送ベルト11及び感光ドラム1の表面で反射を繰り返し、照射側と反対側の感光ドラム1の端部まで効果的に光を導くことが可能である。
LED10の特性としては、感光ドラム1の感光波長域内にピーク波長があり、指向角が絞られており、光度も大きいものが望ましい。本実施例では、東芝(株)製のTLRE20TP型を用いた。このLEDはピーク波長が630nmで、指向角が7度と非常に狭く、光度は7000mcdという非常に高いものである。そのため、特別な集光手段を設けること無く、感光ドラム1の長手全域に良好に光を照射することが可能である。
上述のような画像形成装置100を用い、その設置環境を変化させながら、次のような画像出力試験を実施した。温度℃/湿度%を15℃/10%(絶対水分量:0.001kg/kg)、20℃/35%(絶対水分量:0.005kg/kg)、23℃/40%(絶対水分量:0.007kg/kg)、23℃/60%(絶対水分量:0.010kg/kg)と変化させた4種類の環境下で連続画像出力を実施した。1000枚、3000枚、5000枚の出力がそれぞれ終了した時点で、25%ハーフトーンの均一な濃度の画像を出力して、横黒スジ画像を評価した。尚、ここでは、帯電前露光手段10は、従来と同様、画像形成動作中点灯させ続けた。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、帯電前露光を実施すると、絶対水分量が少なくなるのに従い、連続画像出力後の横黒スジ画像のレベルが悪化する。そして、絶対水分量が0.005kg/kgを下回る環境では、許容できないレベルまで横黒スジ画像が発生することが判明した。
次に、帯電前露光の光量と連続画像出力後の横黒スジ画像のレベルとの関係、更に、帯電前露光の光量と横白スジ画像及びポジゴーストのレベルとの関係を評価した。帯電前露光の光量を変化させるためには、帯電前露光手段たるLED10に入力する電流値を変化させる方法と、LED10に入力する電流をパルス波形にし、実際に感光ドラム1の表面を照射する実効時間を減らす方法とがある。
LED10に入力する電流値を変化させるためには回路を切り替える必要があるため、LED10を駆動する回路が複雑になり易い。又、LED10のオンオフをパルス状にコントロールするためには、制御手段にPWM変調をかけるための新たな信号回路を設ける必要がある。これら2つの方法では装置のコストアップや回路の複雑化を招き易い。このため、本実施例では、LED10のオンオフを制御するファームウェアでLED10をパルス発光させる。即ち、本実施例では、ファームウェア、該ファームウェアに従って動作するLED10のドライバ回路(図3)が、帯電前露光手段たるLED10の光量を減少させる光量切替手段として機能する。
尚、本発明はこれに限定されるものではなく、所望により、LED10に入力する電流を変化させる方法、LED10のオンオフをパルス状にコントロールするために制御手段にPWM変調をかける方法を使用することもできる。
ファームウェアでLED10のオンオフをコントロールする場合、ファームウェア固有の切り替え時間が律速となる。本実施例にて用いたファームウェアの最小切り替え時間は2msecであるため、2msec単位でオンオフ時間を変化させた。又、ファームウェアの場合、他の制御が割り込むと制御が遅れるため、正確なコントロールができず、制御時間がばらつくことがある。このように制御時間がばらつくと正確な光量が得られず、更に、一定の光量にならずに、見た目でも明滅する状態になる。そこで、オンオフ時間を振りながら実際の光量を計測し、明滅が最も安定する条件に設定した。実際の光量はアドバンテスト製光パワーメータTQ8210を用い、LED10から最も遠い感光ドラム1の表面上でパワーメータの受光部をLED10に正対させて測定した。
上記のように設定した光量で、初期状態の横白スジ及びポジゴーストと、連続5000枚画像出力後の横黒スジ画像とを3つの環境条件で評価した。結果を表2に示す。
表2に示すように、帯電前露光の光量を全点灯(フル発光)時の1/3程度に弱めることで、温湿度15℃/10%(絶対水分量0.001kg/kg)の環境下でも連続画像出力後の横黒スジが良化する。帯電前露光の光量を弱めたときに発生する画像不具合としては、横白スジとポジゴーストがある。ポジゴーストに関しては、帯電前露光の光量をフル発光の1/3程度にしても問題無いレベルであった。一方、横白スジに関しては、ポジゴーストよりも現象が顕在化しやすく、温湿度20℃/35%(絶対水分量0.005kg/kg)の環境下では、帯電前露光の光量をフル発光時の1/3程度としたとき、許容できる範囲ではあるものの横白スジが発生した。
そこで、本実施例では、絶対水分量0.005kg/kgを境にして、それ以下の絶対水分量の場合には、帯電前露光をフル発光時の1/3の光量にするべく、ON時間が6msec、OFF時間が12msecのパルス発光に切り替える。絶対水分量が0.005kg/kgを超えている場合には、帯電前露光をフル発光させる。
更に説明すると、図3は本実施例の画像形成装置100の概略制御ブロックを示す。画像形成装置100は、画像形成装置の各部を統括的に制御する制御手段としてのコントローラ110を有する。コントローラ110は、記憶部、制御部、演算部を備えるCPU等の演算制御素子であってよく、内蔵又は接続された記憶部111に記憶されたプログラム、データ等に従って画像形成装置100の各部を制御してシーケンス動作させる。コントローラ110には、装置本体Aに設けられた環境検知手段としての温湿度センサ112が接続されている。温湿度センサ112は、装置環境として装置本体Aの周囲(或いは装置本体A内)の温度/湿度に応じた信号をコントローラ110に入力することができる。コントローラ110は、所定のタイミング(例えば、所定の時間間隔毎、或いは画像形成開始指示が入力された時など)で温湿度センサ112の検知出力を読み込む。そして、温湿度センサ112によって検知した環境絶対水分量が0.005kg/kg以下である場合には、コントローラ110は、LED10をON時間6msec、OFF時間12msecでパルス発光させるように、LED10のドライバ回路113に制御信号を送信する。一方、絶対水分量が0.005kg/kgを超えている場合には、コントローラ110は、LED10をフル発光させるように、ドライバ回路113に制御信号を送信する。
本発明者の上述の及び更なる研究実験によると、帯電前露光手段10の光量減少時に感光ドラム1の露光領域を露光する光量を、通常光量時(即ち、フル発光時)の10%〜50%に設定することが好ましい。10%未満では、白横スジ、ポジゴーストを抑制する効果が顕著ではなくなる。又50%を越えると、横黒スジを抑制する効果が顕著ではなくなる。又、光量安定性等の点で、帯電前露光手段10の点灯と消灯の周期(1つの点灯期間と1つの消灯期間とで1周期とする)は4msec〜100msecであることが好ましい。
帯電前露光手段10の光量を減少させるか否かを決定するための環境条件の所定の閾値は、装置の構成に応じて適宜選定すればよい。本発明者の検討によれば、この所定の閾値は、絶対水分量で0.003〜0.008kg/kgが好適である。そして、装置環境を検知する環境検知手段により上記閾値以下の絶対水分量が検知された時にLED10の光量を減少させる。
このように、画像形成装置100は、帯電前露光の光量を減少させる手段、より詳細には点灯と消灯を繰り返えさせることで帯電前露光手段たるLED10から感光ドラム1に照射する光の光量を減少させる光量切替手段を備える。これにより、大量の画像出力を繰り返す際の横黒スジの発生を抑制すると共に、横白スジやポジゴーストも効果的に抑制することが可能になる。本実施例では、特に、高湿度側の環境下では帯電前露光をフル発光させ、低湿度側の環境下では帯電前露光をパルス発光させる。これにより、低湿環境下で連続して5000枚という非常に大量の画像出力を繰り返す場合でも、横黒スジの発生を抑制することができる。しかも、高湿環境下での横白スジやポジゴーストも効果的に抑制することが可能である。このため、常に安定した高画質の画像を形成することが可能である。
以上、本実施例によれば、画像形成装置が設置される低温低湿から高温高湿の環境下まで環境によらずに最適な光量の帯電前露光を実施することが可能になる。そのため、特別な装置を必要としないローコストな構成で、ハーフトーン画像などで発生する横白スジやドラムポジゴーストといった画像不具合を抑制することができる。又、強い帯電前露光を長時間照射することで発生する細かい横黒スジ画像の発生も抑制することができる。即ち、本実施例によれば、大量画像出力後であっても細かい横黒スジ画像の発生を抑制することができ、しかも通常の画像出力時に横白スジやドラムポジゴーストといった画像不具合の発生を抑制することができる。従って、本実施例によれば、感光ドラム1の帯電工程の前に感光ドラム1を露光する帯電前露光手段10による感光ドラム1の除電処理をより効果的に行うことができる。
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置と同一又は相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略し、以下本実施例にて特徴的な点について説明する。
実施例1において、温湿度20℃/35%の環境下で帯電前露光をパルス発光すると、ポジゴーストは問題無いものの、横白スジは、許容できる範囲ではあるが完全に消すことはできなかった。本実施例では、これらの画像不良を共により完全に近く消去するため、転写部Tを通過する記録材Pの領域に対応して、帯電前露光の強度を変更する。
即ち、前述したように、横白スジは記録材Pの搬送方向先端と後端が転写ニップTを通過するときに特に発生する現象である。そこで、本実施例では、先ず、実施例1と同様に絶対水分量0.005kg/kgを境にして、それ以下の絶対水分量の場合に、帯電前露光をフル発光時の1/3の光量にするべく、ON時間が6msec、OFF時間が12msecのパルス発光に切り替える。そして、本実施例では、帯電前露光をパルス発光として光量を減少させる場合に以下のように、フル発光とパルス発光とを繰り返すようにする。
即ち、本実施例では、少なくとも記録材Pの搬送方向先端と後端とがそれぞれ転写ニップTを通過するときに転写ニップTを通過する感光ドラム1の表面に対しては帯電前露光手段10をフル発光させる。そして、少なくとも記録材Pの搬送方向先端と後端とを除く記録材Pの搬送方向中央部の潜像を形成する感光ドラム1上の部位に対しては、帯電前露光手段10をパルス発光させて光量を減少させる。換言すれば、1枚の記録材Pが転写ニップTを1回通過するのに伴って、帯電前露光手段10から感光ドラム1に照射される光の光量が第1の光量である第1の期間と、この第1の期間よりも感光ドラム1に照射される光の光量が少ない第2の光量である第2の期間がある。典型的には、1枚の記録材Pが転写ニップTを1回通過するのに伴って、少なくとも、2回の上記第1の期間と、これら2回の第1の期間の間における1回の第2の期間がある。
更に説明すると、図4に示すように、本実施例では、少なくとも記録材Pの先端と後端がそれぞれ転写ニップTを通過する前後は帯電前露光をフル発光させ、その他の部分の記録材Pが転写ニップTを通過する際には帯電前露光をパルス発光させている。又、記録材Pの先後端の前後で帯電前露光をパルス発光させることができる。具体的には、本実施例では、記録材Pの先端が転写ニップTに入る5mm手前に来た時から帯電前露光のフル発光を開始し、記録材Pの先端余白に相当する先端から5mmの部分が転写部Tを通過する間はフル発光を継続する。記録材Pの後端側では、記録材Pの後端余白である5mmだけ記録材Pの後端の手前の部分が転写部Tに来た時から帯電前露光のフル発光を開始し、記録材Pが転写ニップTを抜けてから5mm進む間は帯電前露光のフル発光を継続する。
このように、本実施例では、高湿度側の環境下では帯電前露光を常にフル発光させ、低湿度側の環境下では、感光ドラム1上の記録材Pの先端及び後端以外の部分に対応する部分に対してのみパルス発光を実施する。従って、高湿度側の環境下では、実施例1と同様に帯電前露光による横白スジやポジゴーストの発生を抑制することができる。又、低湿側の環境下でも、帯電前露光がフル発光するのは記録材Pの先後端に対応する感光ドラム1の部分に対する一瞬だけであるため、5000枚といった非常に大量の連続画像出力を実行する場合にも、横黒スジ画像の発生を抑制することができる。しかも、低湿側の環境下において、実施例1と比較して更に横白スジの発生を抑制し、高品位の画像を形成することが可能である。
尚、本実施例では、帯電前露光をフル発光とパルス発光の2種類のみを使用する構成としたが、感光ドラム1上の光量切り替え時に対応する部分における切り替え跡を画像上で目立たなくするために、光量切り替えを漸次的に行う等、ファームウェアの柔軟性を生かした構成を用いることも可能である。
実施例3
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置と同一又は相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略し、以下本実施例にて特徴的な点について説明する。
実施例1、2において、絶対水分量が0.005kg/kg以下である場合に、帯電前露光をパルス発光に切り替えた。帯電前露光の光量が実際の画像濃度に及ぼす影響はさほど大きくない。例えば、絶対水分量が0.005kg/kgの環境下で帯電前露光をフル発光とパルス発光にした場合、帯電後の非画像部電位の差は10〜20V程度である。そのため画像部の電位差としては数V程度となり、例えばビジネス用途で使用する画像や、粗いディザのハーフトーン画像であれば、カラー画像であってもユーザーが気付かない程度の差である。
しかし、昨今のカラー画像形成装置の高画質化により、特に自然画を出力する際に用いるような、淡いハーフトーン濃度の再現性においては、非常に高精度の画像濃度制御が要求されてきている。ところが、上述のように非画像部の電位が異なると、厳密には、ハーフトーンの淡い側の濃度で、潜像が可視化する閾値が異なる。そのため、画像形成装置が置かれた環境の変化により、帯電前露光がフル発光からパルス発光に切り替えられる際には、帯電前露光の切り替えと同時に、ハーフトーン濃度の微調整をかけることが望ましい。
このような画像濃度変動を補正するためには、画像濃度制御を好ましく用いることができる。本実施例では、画像形成装置100はトナー像の濃度を調整する手段を有し、帯電前露光手段10の露光量の切り替えから、画像出力を実行するまでの間に、トナー像の濃度調整動作を実行する。ここで、この画像濃度制御について説明する。
<画像濃度制御>
画像濃度制御においては、感光体上、又は感光体からトナー像が転写される被転写体(中間転写体又は記録材担持体)上に、画像濃度制御用の基準トナー像として各色の濃度パッチ画像を形成し、これを画像濃度検知手段(画像濃度検知センサ)で読み取る。そして、高圧条件やレーザーパワーといったプロセス形成条件にフィードバックすることによって各色の最大濃度、ハーフトーン階調特性を合わせる。
一般的には、画像濃度検知センサは、発光素子(光源)を備える投光部と、受光素子を備える受光部とを有する光学センサである。光学センサは、濃度パッチに光源から光を照射し、反射光強度を受光素子で検知する。その反射光強度の信号は、A/D変換された後、CPUで処理され、プロセス形成条件にフィードバックされる。
画像濃度制御は、各色の最大濃度を一定に保つこと(以下「Dmax制御」という。)と、ハーフトーンの階調特性を画像信号に対してリニアに保つこと(以下、「Dhalf制御」という。)を目的とする。又、Dmax制御は、各色のカラーバランスを一定に保つことと同時に、トナーの載りすぎによる色重ねした文字の飛び散りや、定着不良を防止する意味も大きい。
Dmax制御では、具体的には、画像形成条件を変えて形成した複数の濃度パッチを光学センサで検知し、その結果から所望の最大濃度を得られる条件を計算し、画像形成条件を変更する。ここで、濃度パッチはハーフトーンで形成するのが好ましい場合が多い。その理由は、ベタ画像(最大濃度レベルの画像)を検知した場合、トナー量の変化に対するセンサ出力の変化の幅が小さくなってしまい、十分な検知精度が得られないからである。
一方、Dhalf制御は、電子写真画像形成プロセスに特有の非線形的な入出力特性(γ特性)によって、入力画像信号に対して出力濃度がずれて自然な画像が形成できないことを防止するように行われる。即ち、Dhalf制御では、γ特性を打ち消して入出力特性をリニアに保つような画像処理を行う。具体的には、入力画像信号が異なる複数の濃度パッチを光学センサで検知して、入力画像信号と濃度の関係を得る。そして、その関係から、ホストコンピュータ等の外部機器からの入力画像信号に対して所望の濃度が出るよう、画像形成装置に入力する画像信号を、画像形成装置のコントローラにより変換する。このDhalf制御は、Dmax制御により画像形成条件を決定した後行うのが一般的である。
尚、中間転写体や記録材担持体上に形成された濃度パッチは、クリーニングプロセスによって、プロセス装置に静電的に回収することができる。即ち、例えば、クリーニングプロセス時には、感光体にトナーの帯電極性と逆極性のバイアスを印加し、転写部でトナーを感光体にひきつけることができる。感光体上にひきつけられたトナーは、転写残トナーと同様に感光体のクリーニング装置が備えるクリーニングブレードで掻き取ることができる。
特に、本実施例では、図5に示すように、駆動ローラ12に対向する位置で搬送ベルト11上のトナー像の画像濃度を検知できるように、画像濃度検知手段としての光学センサ18を配置する。図6をも参照して、本実施例では、コントローラ110には、光学センサ18が接続されている。光学センサ18は、搬送ベルト11上の濃度パッチの画像濃度(トナー付着量)に応じた信号をコントローラ110に入力することができる。コントローラ110は、上述のようなDmax制御、Dhalf制御の実行時に、光学センサ18の検知出力を読み込み、それぞれの制御により出力画像の濃度階調特性を補正する。又、本実施例では、コントローラ110は、画像出力枚数を積算して、内蔵又は接続された記憶部に記憶する。
本実施例では、絶対水分量が0.005kg/kg前後の環境に画像形成装置が置かれた際に、頻繁に帯電前露光の条件の切り替えや、画像濃度制御が実行されるのを避けるため、制御の実行条件を以下のように定めた。図7は、本実施例における帯電前露光の光量切り替え動作の概略フローを示す。
<帯電前露光がフル発光からパルス発光に切り替わる場合>
絶対水分量が0.005kg/kg以下であり(S101)、かつ前回画像濃度制御が実行されてからの絶対水分量の低下が0.002kg/kg以上となった場合に(S102)、帯電前露光をパルス発光に切り替え(S103)、画像濃度制御を実行する(S104)。
<帯電前露光がパルス発光からフル発光に切り替わる場合>
絶対水分量が0.005kg/kgを越えており(S101)、かつ前回画像濃度制御が実行されてからの絶対水分量の上昇が0.002kg/kg以上となった場合に(S105)、帯電前露光をフル発光に切り替え(S106)、画像濃度制御を実行する(S104)。
<枚数カウントによる制御実行>
又、本実施例では、図8に示すように、前回画像濃度制御を実行してから1000枚以上画像形成を実行した場合は(S201)、1000枚を超えて画像形成動作が終了した時点で、画像濃度制御を実行する(S204)。その際、絶対水分量が0.005kg/kg以下であれば、帯電前露光をパルス発光に設定し(S203)、0.005kg/kgを越えていれば(S202)、帯電前露光をフル発光に設定し(S205)、その後画像濃度制御を実行する(S204)。前回画像濃度制御を実行してからの画像形成枚数が1000枚未満の場合は、図7に示す上述のシーケンスによって帯電前露光の切り替え、画像濃度制御を実行する。
以上、本実施例では、帯電前露光の光量が切り替わり、特に淡いハーフトーンの濃度が変わる恐れが有る場合にも、その都度画像濃度制御が実行され、常に安定した画像濃度の画像を形成することが可能となる。又、本実施例では、画像濃度制御の実行タイミングを1000枚、又は、絶対水分量が0.002kg/kg変わったときのみに限定したため、頻繁に画像形成装置100が制御シーケンスのために画像形成動作を停止するようなことも抑制することができる。
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明はこれに限定されるものではないことを理解されたい。
例えば、上記各実施例では、環境条件の閾値は1個とし、この閾値を境に帯電前露光の光量を減少させるか否かを切り替えた。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、閾値を複数設け、帯電前露光の光量を減少させる程度を段階的に切り替えるようにしてもよい。即ち、装置の環境湿度が一の値の時と、他の一の値の時とで、帯電前露光の光量は異なっていてよい。そして、装置の環境湿度が一の値の時と、他の一の値の時とで、帯電前露光の光量を減少させる(フル発光時の光量と比較して)量が異なっていてよい。いずれにしても、装置の環境湿度が低湿側の方が、高湿側よりも帯電前露光の光量が少ない方向とする。又、例えば、装置環境によらずに、実施例2で説明したように記録材の搬送方向先端及び後端に対応する感光体上に対しては帯電前露光の光量を第1の光量(例えば、フル発光)とすることで横白スジ等の画像不具合を抑制し、記録材の搬送方向中央部に対応する感光体上に対しては帯電前露光の光量を第1の光量よりも少ない第2の光量(例えば、パルス発光)とすることで大量画像出力時の横黒スジ等の画像不具合を抑制するようにしてもよい。
又、上記各実施例では、画像形成装置は記録材担持体を備えるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。像担持体と転写手段との間の転写部を記録材が通過する画像形成装置においては、前述のような横白スジが発生し易い。そのため、この横白スジを抑制しつつ、大量画像出力時等における横黒スジを抑制するとの観点から、像担持体と転写手段との間の転写部を記録材が通過する画像形成装置において本発明は極めて有効である。しかし、中間転写方式の画像形成装置においても、例えばポジゴーストを抑制するために帯電前露光手段を設けた場合には、そのポジゴーストを抑制することと、大量画像出力時等における横黒スジを抑制することの両方を達成する上で、本発明を適用することが有利である。尚、当業者には周知の通り、中間転写方式の画像形成装置は、単数又は複数の像担持体からトナー像が転写される中間転写体を有する。そして、例えばフルカラー画像を形成する場合には、上記各実施例において記録材担持体上の記録材にトナー像を重ね合わせて転写したのと同様にして、中間転写体上にトナー像を重ね合わせて転写(一次転写)する。その後、このトナー像を記録材に一括して転写(二次転写)し、定着させることで記録画像を得る。
又、上記各実施例では、本発明はカラー画像形成装置に適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、単一種類のトナーを用いて単色画像を形成する画像形成装置においても同様に適用することができる。
更に、上記各実施例では、DC帯電方式の接触帯電装置で感光体を帯電処理するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。前述のようにDC帯電方式では、横白スジ、ポジゴーストが発生し易いため、帯電前露光を行うことが極めて有効である。しかし、例えば非接触方式の帯電装置など、その他の方式の帯電手段を備える画像形成装置に本発明を適用し、感光体の帯電電位の乱れによる横白スジやポジゴーストなどの画像不具合を抑制すると共に、大量画像出力時の横黒スジなどの画像不具合を抑制することができる。