JP2007023162A - 色変換材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機EL素子、LED素子などの発光源と組み合わせた、高精細化な膜厚の薄い色変換膜を提供する。
【解決手段】波長が350nm以上600nm未満の光を吸収して、波長600nm以上の可視領域に発光極大を有する、下記一般式(I)で表される色素を含む。
Figure 2007023162

(R1、R2はアルキル基、アリール基等、R3、R4は水素、アルキル基等、R5は縮環構造を有する複素環基、R6は電子吸引性の置換基を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、色変換材料、色変換膜に関する。さらに詳しくは有機EL素子もしくはLEDのような発光源と組み合わせることにより、青色光を高い変換効率で赤色光に変換しうる色変換膜に関するものである。
有機EL素子は完全固体素子であり、視認性に優れ、軽量化・薄型化が図られ、数ボルトという低電圧での駆動が可能であるため、ディスプレイへの展開が期待でき、したがって、現在盛んに研究が行われている。有機EL素子をディスプレイにする場合の最大の課題は、フルカラー化の方法の開発である。
有機ELディスプレイのマルチカラー化またはフルカラー化の方法の1例は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の発光体をマトリクス状に分離配置し、それぞれ発光させる方法である。(たとえば特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
しかしながら、有機EL素子を用いてカラー化する場合、RGBの3種の発光材料をマトリクス上に高精細に配置しなくてはならないため、技術的な困難度が高く、生産性が低いため安価で製造することができない。加えて、3種の発光材料の寿命(輝度変化特性)がそれぞれ異なるために、長期間にわたる使用により色度がずれてしまうなどの欠点を有する。
また、白色で発光するバックライトにカラーフィルタを用い、3原色を透過させる方法(特許文献4、特許文献5、特許文献6)が知られているが、高輝度のRGB光を得るために必要な長寿命かつ高輝度の白色発光の有機EL発光素子は、未だ得られていない。白色光の光源としては、白色LEDの利用が考えられるが、白色LED自体が近紫外もしくは青色光を蛍光体で波長変換することで白色を形成していることから、光エネルギーの有効利用の観点からは無駄が多くなり、以下に述べる色変換方式と比較して理論的に輝度の低下度が大きい。
第3の方式として、発光素子の発光域の光を吸収し、波長分布変換を行って可視光域の蛍光を発光する蛍光材料をフィルタに用いる色変換(CCM)方式(たとえば特許文献7、特許文献8)が開示されている。有機EL素子の発光色は白色に限定されないため、より輝度の高い有機EL素子を光源に適用することができ、青色発光の有機EL素子を用いた色変換方式(たとえば特許文献7、特許文献9、特許文献10)においては、青色光を緑色光および赤色光に波長変換している。このような蛍光色素を含む蛍光色素変換膜を高精細にパターニングすれば、発光体の近紫外光ないし可視光のような弱いエネルギー線を用いても、フルカラーの発光型ディスプレイを構築できる。また、色変換膜法は光源である青色光によって励起された色素の蛍光によって緑色・赤色を発光させるため、正面へ光を取り出すことができればカラーフィルタ法に比べ理論的には輝度の損失が少ないことが利点である。
ここで、用いられる色変換材料は入射光を効率よく吸収して、効率よく波長変換を行う材料であることが必要である。入射光を効率よく吸収する(吸光度が大きい)という観点からは、例えば90%の入射光を吸収するためには吸光度1が必要であり、99%の入射光を吸収するためには吸光度2が必要である。
ところが、一般に、色変換材料に用いられる蛍光色素は高濃度状態では濃度消光と呼ばれる失活経路により、色変換の効率が著しく低下することが知られている。すなわち、吸光度を高くするために同一膜厚で色素濃度を高めると、色変換の効率が低下し、“吸光度”ד変換効率”が悪くなってしまう現象である。したがって、変換の効率が高い状態を維持して色変換膜を形成するためには、通常、色素濃度を固形分比1%以下程度の希薄な状態にすることが必要であり、そのような低濃度状態では入射光を効率よく吸収するために膜厚を厚くしなければならない。
なお吸光度と膜厚の関係はランバート=ベール(Lambert−Beer)の法則より明らかである。吸光係数εは色素に固有の値であることから、色変換層の吸光係数を一定とするならば、蛍光体層を厚膜とする必要があることがわかる。
ランバート=ベールの法則
A=ε・c・l
A:吸光度
ε:吸光係数
c:色素濃度
l:膜厚
現在知られている具体的な青色光の赤色光への色変換材料としては特許文献11、特許文献12、特許文献13などに記載のクマリン、ローダミン系の蛍光色素の組み合わせが広く用いられているが、クマリン6、ローダミン6G、ローダミンBの混合物では、変換効率、色相、膜厚の観点から必ずしも充分に満足しうるものではなかった。特に上記の特許文献の膜厚は10μm以上と厚く、高精彩化が求められるディスプレイ用の色変換層として膜厚を薄くすると、十分に光を吸収して波長変換できないという問題があった。独立した色変換層を積層する構造(特許文献14)においても膜厚を薄くすることはできていない。
この膜厚の上昇は、高精細化を目指すディスプレイ用色変換材料としては好ましくない現象を与える。すなわち、画素を形成する点のアスペクト比が小さくなることから、正面から深いところで発光した光は正面に光を取り出すにあたっては、色もれ、色にじみを生じる原因となりうる。隔壁となるブラックマトリクスの屈折率を極めて大きくして全反射させやすくすることで正面への光取出し率を向上させることが可能ではあるが、製造工程を考えると必ずしも容易な施策ではない。このような取り組みは例えば特許文献15に報告されている。
赤色発光の色変換の効率を向上させることに関しては、例えば、特許文献16、特許文献17、特許文献18に記載されるように、かさ高い置換基を導入したローダミン誘導体を用いて、赤色光への変換効率を向上させることが検討されているが、色素/樹脂量が低く、同様な問題から十分な入射光の吸収の為には膜厚が非常に厚くなるということがある。
特開昭57−157487号公報 特開昭58−147989号公報 特開平3−214593号公報 特開平1−315988号公報 特開平2−273496号公報 特開平3−194885号公報 特開平3−152897号公報 特開平5−258860号公報 特開平8−286033号公報 特開平9−208944号公報 特開2003−257658号公報 特開2004−103519号公報 特開2005−38682号公報 特開2003−264081号公報 国際公開WO98/34437号パンフレット 特開2000−103975号公報 特開2000−44824号公報 特開2005−2290号公報
本発明は、このような状況下で、有機EL素子、LED素子などの発光源と組み合わせることにより、高精細化を指向した膜厚の薄い色変換膜を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(I)で表されるベンゾ−α−ピロン骨格(クマリン骨格)を有する色素を用いることで、青色光を赤色光に色変換できることを見い出した。
さらに、異なる2種類以上のベンゾ−α−ピロン骨格を有する色素を用いることで、薄膜で高い吸光度を達成するような色素の高濃度条件下においても、積極的な色素の会合状態を形成させ、すみやかなエネルギー移動を達成し、高い効率で赤色発光が可能であることを見い出した。具体的には、たとえば青色光もしくは近紫外光を吸収して緑色光を発光するようなベンゾ−α−ピロン骨格を持つ色素を高濃度に分散して入射光に対する高い吸光度を達成し、緑色光を吸収して赤色光を効率よく発光するようなベンゾ−α−ピロン骨格を持つ色素にエネルギー移動をすみやかに起こさせることで、青色光の赤色光への高い色変換が達成できることを見い出した。
本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
本発明の目的は、下記手段により達成された。
(1)波長が350nm以上600nm未満の光を吸収して、波長600nm以上の可視領域に発光極大を有する光線を放出する色変換材料であって、下記一般式(I)で表される色素を含むことを特徴とする、色変換材料。
Figure 2007023162
(R1、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、もしくは炭素環基を表し、R3、R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはR1、R2と5員環若しくは6員環の炭素骨格を形成する基を表し、R5は縮環構造を有する複素環基を表し、R6はハメットのσp値が0.5より大きい電子吸引性の置換基を表す。)
(2)R6がシアノ基であることを特徴とする、(1)項に記載の色変換材料。
(3)少なくとも1種の青色光を緑色光に変換する色素と、少なくとも1種の前記一般式(I)で表される色素とを混合したものを含むことを特徴とする、(1)又は(2)に記載の色変換材料。
(4)前記の青色光を緑色光に変換する色素が、下記一般式(II)で表される色素であることを特徴とする、(3)項に記載の色変換材料。
Figure 2007023162
(R1、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、もしくは炭素環基を表し、R3、R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはR1、R2と5員環若しくは6員環の炭素骨格を形成する基を表し、R5は縮環構造を有する複素環基を表す。R7はハメットのσp値が−0.3以上0.3未満の置換基を表す)
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の色変換材料を用いたことを特徴とする色変換膜。
(6)(5)項に記載の色変換材膜を用いることを特徴とする情報表示機器。
本発明の色変換材料は有機EL素子、LED素子などの発光源と組み合わせることにより、青色光を高い効率で赤色光に変換しうる高精細化を指向した膜厚の薄い色変換膜を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、波長が350nm以上600nm未満の光を吸収して、波長600nm以上の可視領域に発光極大を有する光線を放出する色変換材料であって、下記一般式(I)で表されるベンゾ−α−ピロン骨格(クマリン骨格)を有する色素を含むことを特徴とする。
Figure 2007023162
(R1、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、もしくは炭素環基を表し、R3、R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはR1、R2と5員環若しくは6員環の炭素骨格を形成する基を表し、R5は縮環構造を有する複素環基を表し、R6はハメットのσp値が0.5より大きい電子吸引性の置換基を表す。)
本発明の色変換材料は、波長が350nm以上600nm未満の光を吸収して、波長600nm以上の可視領域に発光極大を有する光線を放出する。好ましくは、青色光を色変換する色変換膜の観点から吸収波長は430〜530nmが好ましく、発光極大波長は600〜650nmが好ましい。また、緑色光を色変換する色変換膜の場合には、吸収波長は480〜570nmが好ましく、発光極大波長は600〜650nmが好ましい。
前記一般式(I)において、R1、R2はそれぞれ独立して炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜7)のアルキル基、アリール基、もしくは炭素環基を表し、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基、または枝分かれ構造を有してそれぞれR1、R2と結合することで5または6員環の炭素骨格を形成する基を表す。一般式(I)におけるR1、R2、R3、R4はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
一般式(I)において、R5は縮環構造を有する複素環基を表し、その複素環基は、環内に窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子を1又は複数含んでなる、例えば、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ナフトチアゾリル基、ナフトオキサゾリル基、ナフトイミダゾリル基、フェナントロチアゾリル基、ピレノチアゾリル基などの複素環基が挙げられる。これらの複素環基は、例えば、シアノ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、ブロモフェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などの芳香族炭化水素基、若しくはハロゲン置換芳香族炭化水素基あるいは、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基などの炭素数4までの脂肪族炭化水素基若しくはハロゲン置換脂肪族炭化水素基などの置換基を1又は複数有していてもよい。
一般式(I)において、R6はハメットのσp値が0.5より大きい電子吸引性の置換基を表す。
なお、ハメットの置換基定数σpについては、例えば稲本直樹著「ハメット則−構造と反応性−」(丸善)、「新実験化学講座14・有機化合物の合成と反応V」2605頁(日本化学会編、丸善)、仲矢忠雄著「理論有機化学解説」217頁(東京化学同人)、ケミカル・レビュー(91巻),165〜195頁(1991年)等の成書に詳しく解説されている。
6はハメットのσp値が0.5より大きい電子吸引性の置換基であり、より好ましくはハメットのσp値が0.6より大きい電子吸引性の置換基である。具体例として、ニトロ基、トリフルオロメチル基、メタンスルホニル基、ジエチルホスホリル基、シアノ基、ベンゼンスルホニル基などが挙げられ、最も好ましくはシアノ基である。
一般式(I)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記具体例中の波線は化合物の立体化学がラセミであることを表す。
Figure 2007023162
Figure 2007023162
一般式(I)においてR6がシアノ基を有するベンゾ−α−ピロン骨格を有する色素誘導体は種々の方法で調製することができる。たとえば米国特許第4,736,032号明細書、同第6,020,078号明細書、オルガニック・レターズ(Org.Lett.,2004,6,p.1241)、ケミストリー・マテリアル(Chem.Mater.,2003,15,p.2305)などにしたがって色素骨格を形成した後に、例えば、ブルテン・オブ・ザ・ケミカル・ソサエティ・オブ・ジャパン(Bull.Chem.Soc.Jpn.,1985,58,p731)に記載された方法に従って、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルピロリジノウレアなどの親水性溶剤か、あるいは、これらの親水性熔剤と水との混液中、シアン化ナトリウム、シアン化カリウムなどのシアン化合物を作用させてシアノ化し、臭素などで処理することにより容易に合成することができる。
本発明の色変換材料は、後述するマトリクス樹脂1g当たり一般式(I)で表される色素を5〜50μモル含有することが好ましく、5〜30μモル含有することがより好ましい。
本発明の色変換材料を色変換膜に用いた場合、青色光もしくは近紫外光を吸収して緑色光を発光するような色素を高濃度に分散して入射光に対する高い吸光度を達成し、緑色光を吸収して赤色光を効率よく発光するような前記一般式(I)で表されるベンゾ−α−ピロン骨格を持つ色素にエネルギー移動をすみやかに起こさせることで、青色光の赤色光への高い色変換が達成できる。
したがって、本発明の色変換材料を色変換膜に用いた場合、少なくとも1種の青色光を緑色光に変換する色素と、少なくとも1種の前記一般式(I)で表される色素とを同一層に含むことが好ましく、前記の青色光を緑色光に変換する色素が、下記一般式(II)で表されるベンゾ−α−ピロン骨格を持つ色素であることがより好ましい。
Figure 2007023162
(R1、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、もしくは炭素環基を表し、R3、R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはR1、R2と5員環若しくは6員環の炭素骨格を形成する基を表し、R5は縮環構造を有する複素環基を表す。R7はハメットのσp値が−0.3以上0.3未満の置換基を表す)
前記一般式(II)において、R1〜R5は、前記一般式(I)におけるR1〜R5と同様であり、好ましい範囲も同様である。
前記一般式(II)において、R7はハメットのσp値が−0.3以上0.3未満の置換基を表す。R7は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、フェニル基、置換基を有していても良いアリール基であり、さらに好ましくは水素原子、フッ素、メチル基、フェニル基であり、最も好ましくは水素原子である。
一般式(II)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記具体例中の波線は化合物の立体化学がラセミであることを表す。
Figure 2007023162
一般式(II)で表されるベンゾ−α−ピロン骨格を有する色素として公知なものとしては、クマリン6、クマリン7、クマリン153、クマリン545、クマリン545T、クマリン545P、クマリン6S,クマリン7Sなどが好ましく、これらの色素をシアノ化して一般式(I)におけるR6がシアノ基の化合物を合成することができる。なお、クマリン545、クマリン545T、クマリン545P、クマリン6S,クマリン7Sについては、米国特許第6,020,078号明細書、Org.Lett.,2004,6,p.1241、Chem.Mater.,2003,15,p.2305に詳しく記載されている。
本発明の色変換材料を色変換膜に用いた場合において、上述したように青色光の赤色光への色変換に際しては、同一層に異なる2種類以上のベンゾ−α−ピロン骨格を有する色素が含まれていることが好ましいが、さらに他の骨格を有する色素を含有していても良い。他の骨格を有する色素としては、たとえばローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、ベーシックバイオレット11、ベーシックレッド2などのローダミン系色素、シアニン系色素、ピリジン1などのピリジン系色素、あるいはオキサジン系色素、ソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も蛍光性があれば使用することができる。
本発明の色変換材料において、異なる2種類のベンゾ−α−ピロン骨格を有する色素を含有する場合、吸収波長がより短波である方の色素と他方の色素との組成比は、質量比で100:1〜0.5:1が好ましく、10:1〜1:1がより好ましい。また、吸収波長がより短波である方の色素の使用量は、後述のマトリクス樹脂1g当たり好ましくは50μモル以上、より好ましくは50〜300μモル、さらに好ましくは50〜200μモルである。また、もう一種類のベンゾ−α−ピロン骨格を有する色素の使用量は、好ましくは5〜50μモル、より好ましくは5〜30μモルである。このようにベンゾ−α−ピロン骨格を有する色素を高濃度に存在させることで、薄膜でも高い吸光度を得ることができ、さらにベンゾ−α−ピロン骨格を有する色素間ですみやかなエネルギー移動、発光が達成でき、高効率で色変換を行うことが可能となる。なお、上記の異なる2種類のベンゾ−α−ピロン骨格を有する色変換材料に対して、使用量の多い方の色素の添加量を超えない範囲の任意の割合で色素を添加して、3種類以上の異なるベンゾ−α−ピロン骨格を有する色素を含有する色変換材料を形成することも好ましい。この際のベンゾ−α−ピロン骨格を有する色素としては、前記一般式(I)もしくは一般式(II)で表される化合物であることが好ましい。
このように、高濃度に色素を分散させた本発明の色変換膜は、吸光度1.0以上の吸収を示す色素濃度において、膜厚が5μm未満、好ましくは2〜4μmの膜厚を有する。このような薄膜化が可能になることにより、製造工程が簡便で、かつ、色変換効率の高い色変換膜を得ることが可能となる。
本発明に用いることができるマトリクス樹脂は、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アルキッド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂およびこれらの樹脂混合物などを含む。また、色変換膜をパターニングする必要がある場合には、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)を用いることができる。この場合、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)の硬化物がマトリクス樹脂として機能する。また、色変換層のパターニングを行うために、該光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂は、未露光の状態において有機溶媒またはアルカリ溶液に可溶性であることが好ましい。
用いることができる光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂(レジスト)は、具体的には、(1)アクロイル基やメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマーおよびオリゴマーと、光または熱重合開始剤とからなる組成物、(2)ポリビニル桂皮酸エステルと増感剤とからなる組成物、(3)鎖状または環状オレフィンとビスアジドとからなる組成物(ナイトレンが発生して、オレフィンを架橋させる)、および(4)エポキシ基を有するモノマーと酸発生剤とからなる組成物などを含む。
本発明で用いることができる光重合開始剤、増感剤および酸発生剤は、含まれる蛍光変換色素が吸収しない波長の光によって重合を開始させるものであることが好ましい。本発明の色変換膜において、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂中の樹脂自身が光または熱により重合することが可能である場合には、光重合開始剤および熱重合開始剤を添加しないことも可能である。
本発明の色変換膜は、マトリクス樹脂、蛍光色素を含む溶液を調製し、それをスピンコート、ディップコート、ロールコート、スクリーン印刷など当該技術に知られている方法を用いて該溶液を塗布し、乾燥することにより形成される。また、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂、色変換色素を含む溶液を調製し、該溶液を透明基板上に塗布し、引き続いて露光、パターニングを行うことにより、パターンを有して配設された色変換膜を形成することができる。該パターニングは、未露光部分の樹脂を溶解または分散させる有機溶媒またはアルカリ溶液を用いて、未露光部分の樹脂を除去するなどの慣用の方法によって実施することができる。
本発明における情報表示機器とは、有機EL素子もしくは発光ダイオードを光源とする発光体から本発明の色変換材料を用いて色変換を行う、テレビ、コンピューター用ディスプレイ、カーナビゲーション、携帯ゲーム機、時計、標識、看板や工業制御機器、電子計測機器、通信機器など計器一般の表示パネルおよび表示装置を表す。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例1
化合物I−1を下記スキームにしたがって合成した。
Figure 2007023162
100mLのナス型フラスコにA1 2.65g、A2 2.34gを加え、エタノール10mLを溶媒にして2時間加熱還流した。溶媒を減圧留去して得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、A3 2.40gを油状物として得た(収率82%)。
100mLのナス型フラスコにA4 3.28g、A3 3.76g、アセトニトリル40mL、ピペリジン0.6mLを加え、120℃のオイルバスにて5時間反応させた。そのまま室温までゆっくり冷却し、生じた結晶をろ過することでA5 2.1gを得た(収率35%)。
100mLの3つ口フラスコにA5 1.0gを入れ、DMF15mLを加えて溶解させた。これにシアン化ナトリウム0.11gを加え室温にて2.5時間反応させた後に0℃に冷却し、反応液に臭素0.1mLを加えた。室温に昇温しながら2時間攪拌し、反応液に酢酸エチル100mL、水50mLを加え、有機層を水50mL×3回洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより生成物を単離し、ヘキサン−ジクロロメタンを用いて再結晶することで化合物I−1を320mg得た(収率31%)。
参考例2
2−(2−ベンゾチアゾリル)酢酸エチル1.28g、A4 1.50gを用いて参考例1と同様の操作を行い、化合物II−5を1.88g得た(収率79.4%)。
実施例1
(色変換膜の作製)
ポリメタクリル酸メチル(和光純薬工業社製)5g、参考例1で得られた色素25mgをクロロホルムに溶解し、全量を50mLにメスアップした。このポリマー溶液中のポリメタクリル酸メチル固形分に対して、クマリン6の濃度を1〜5質量%まで変化させて色素混合液を作製し、ガラス板上にスピンコートして色変換膜を得た。得られた色変換膜の膜厚は3.2μmであった。この色変換膜を蛍光光度計を用いて励起波長470nmで620nmにおける発光強度を観測したところ、クマリン6の濃度が3質量%の時に620nmの発光が最大になった。このときの色変換膜の446nmにおける吸光度は1.2であった。
実施例2
(色変換膜の作製)
ポリメタクリル酸メチル(和光純薬工業社製)5g、参考例1で得られた色素25mgをクロロホルムに溶解し、全量を50mLにメスアップした。このポリマー溶液中のポリメタクリル酸メチル固形分に対して、参考例2で得られた化合物II−5の濃度を1〜5質量%まで変化させて色素混合液を作製し、ガラス板上にスピンコートして色変換膜を得た。得られた色変換膜の膜厚は3.2μmであった。この色変換膜について、蛍光光度計を用いて励起波長470nmで620nmにおける発光強度を観測したところ、化合物II−5の濃度が3質量%の時に620nmの発光が最大になった。このときの色変換膜の477nmにおける吸光度は1.0であった。
実施例3
(色変換膜の作製)
ポリメタクリル酸メチル(和光純薬工業社製)5gを50mLのクロロホルムに溶解した溶液200μLに、参考例1で得られた化合物I−1を0.06mg、参考例2で得られた化合物II−5を0.6mg加えて色素混合液を作製し、ガラス板上にスピンコートして色変換膜を得た。得られた色変換膜の膜厚は3.2μmであった。この色変換膜について、蛍光光度計を用いて励起波長470nmで励起したところ、蛍光スペクトルのλmaxは605nmであり、この色変換膜の477nmにおける吸光度は1.0であった。
実施例4
(色変換膜の作製)
ポリメタクリル酸メチル(和光純薬工業社製)5gを50mLのクロロホルムに溶解した溶液200μLに、参考例1で得られた色素0.2mg、下記色素A0.8mgを加えて色素混合液を作製し、ガラス板上にスピンコートして色変換膜を得た。得られた色変換膜の膜厚は3.2μmであった。この色変換膜について、蛍光光度計を用いて励起波長460nmで励起したところ、蛍光スペクトルのλmaxは612nmであり、この色変換膜の422nmにおける吸光度は0.76であった。
Figure 2007023162
比較例1
ポリメタクリル酸メチル(和光純薬工業社製)1g、クマリン6 10mg、ローダミン6G 10mg、ローダミンB 10mgをクロロホルムに溶解し、全量を10mLにメスアップし、ガラス板上にスピンコートして色変換膜を得た。得られた色変換膜の膜厚は3.2μmであった。この色変換膜の465nmにおける吸光度は0.47であった。
<色変換効率の測定>
実施例1、実施例2、および比較例1の色変換膜を用いて、青色LEDの光の色変換効率の測定を行った。日亜化学社製青色LED(NSPB520S、商品名、中心波長470nm)を20mAで発光させ、色変換膜、青色光カットフィルターの順に積層し、鉛直方向正面輝度の変化を輝度計を用いて測定した。結果を表に表す。
Figure 2007023162
表1の結果から明らかなように、本発明における色変換膜は、十分に薄い膜厚においても従来用いられている色素の組み合わせを用いたものと比較して、高い吸光度を有し、さらに青色光の赤色光への変換が効率的に行うことができる。
実施例5
(色変換膜の作製)
ポリメタクリル酸メチル(和光純薬工業社製)5gを50mLのクロロホルムに溶解した溶液200μLに、参考例1で得られた化合物I−1を0.8mg加えて色素液を作製し、ガラス板上にスピンコートして色変換膜を得た。得られた色変換膜の膜厚は3.2μmであった。この色変換膜の吸収スペクトルのλmaxは560nmであり、そのときの吸光度は0.85であった。また、この色変換膜の蛍光スペクトルのλmaxは622nmであり赤色の発光が見られた。このことは560nmに発光極大を持つ緑色光を赤色光に変換できることを表している。
実施例6
(色変換膜の作製)
ポリメタクリル酸メチル(和光純薬工業社製)5gを50mLのクロロホルムに溶解した溶液200μLに、参考例1で得られた化合物I−1を0.1mg加えて色素液を作製し、ガラス板上にスピンコートして色変換膜を得た。得られた色変換膜の膜厚は3.2μmであった。この色変換膜の吸収スペクトルのλmaxは562nmであり、そのときの吸光度は0.14であった。また、この色変換膜の蛍光スペクトルのλmaxは610nmであり赤色の発光が見られた。なお、この色変換膜の470nmにおける吸光度は0.02であった。このことは化合物I−1単独では青色光を赤色光に変換できるものの、吸光度が低いために入射光のほとんどを吸収できないことを表している。
実施例7
(情報表示機器)
実施例1〜4の色変換膜に関して、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置を作製し評価をしたところ、いずれの場合においても良好な性能が得られた。

Claims (6)

  1. 波長が350nm以上600nm未満の光を吸収して、波長600nm以上の可視領域に発光極大を有する光線を放出する色変換材料であって、下記一般式(I)で表される色素を含むことを特徴とする、色変換材料。
    Figure 2007023162
    (R1、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、もしくは炭素環基を表し、R3、R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはR1、R2と5員環若しくは6員環の炭素骨格を形成する基を表し、R5は縮環構造を有する複素環基を表し、R6はハメットのσp値が0.5より大きい電子吸引性の置換基を表す。)
  2. 6がシアノ基であることを特徴とする、請求項1に記載の色変換材料。
  3. 少なくとも1種の青色光を緑色光に変換する色素と、少なくとも1種の前記一般式(I)で表される色素とを混合したものを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の色変換材料。
  4. 前記の青色光を緑色光に変換する色素が、下記一般式(II)で表される色素であることを特徴とする、請求項3に記載の色変換材料。
    Figure 2007023162
    (R1、R2はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、もしくは炭素環基を表し、R3、R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはR1、R2と5員環若しくは6員環の炭素骨格を形成する基を表し、R5は縮環構造を有する複素環基を表す。R7はハメットのσp値が−0.3以上0.3未満の置換基を表す)
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の色変換材料を用いたことを特徴とする、色変換膜。
  6. 請求項5に記載の色変換材膜を用いることを特徴とする、情報表示機器。
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