JP2007020578A - トリペプチジルアミノペプチダーゼ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】トリペプチジルアミノペプチダーゼ(TPAP)活性を実質的に伴わないAMGを製造する方法において、TPAPの活性が低下又は除去されているアスペルギルス(Aspergillus)の細胞を、AMGをコードするDNAにより形質転換し、そしてAMGを採取する、ことを含んでなる方法。
【選択図】なし
Description
本明細書中、用語「TPAP」は、ペプチドまたはタンパク質配列のN末端から、例えばプロホルモンまたはプロ酵素に見られる、延長されたタンパク質配列から、トリペプチドを開裂させるアミノペプチダーゼを指すのに使う。一般的に表現すると、TPAPはペプチドまたはタンパク質の非置換形N末端アミノ基からトリペプチドXYZを開裂させることができる。ここでX,Y,Zは任意のアミノ酸残基(即ち、Ala, Arg, Asn, Asp, Cys, Gln, Glu, Gly, His, Ile,Leu, Lys, Met, Phe, Pro, Ser, Thr, Trp, Tyr, Valから選ばれる)を表す。TPAP基質中、X,YおよびZの全部が異なっても同じでもよく、またはX,YおよびZのうちの2つが同じであってもよい。本発明のTPAPは開裂することのできるトリペプチドのアミノ酸配列に関して非特異的であると理解されるだろう。実施例7には、天然に存在するペプチドおよびタンパク質の開裂から得られるトリペプチド生成物の具体例が与えられる。
同じように、本発明のTPAPに関連して使う時の「得られる」という語は、TPAPが問題の生物から回収することができるか、または前記生物から得られるDNA配列によりコードされそして前記DNA配列を発現する生物から回収することができることを指す。
本発明のTPAP
本発明に至る研究の途中で、2つの異なるTPAPが単離されそして特徴づけられた。1つはA.ニガー(A. niger)の株からでありもう1つはA.オリゼ(A. oryzae)の株からであった。この2つのTPAPはトリペプチジルアミノペプチダーゼの新規種類の典型例であると期待される。
i)配列番号1,2および3に示される部分DNA配列のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、または
ii)DSM 9570中に存在する成熟TPAPのN末端部分をコードする部分DNA配列、または
iii )配列番号1,2もしくは3に示されるDNA配列に基づいてまたは配列番号4〜14に示されるアミノ酸配列のいずれかに基づいて調製したオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズし且つTPAPをコードするヌクレオチド配列
を含んで成るDNA構成物によりコードされるTPAPに関する。
別の観点では、本発明は次の特徴のうちの1つまたは複数を有する実質的に純粋なTPAPに関する:
−基質Phe-Pro-Ala-pNA を開裂させる能力、
−4〜6の範囲のpI、
−約5.0 〜7.5 の範囲の最適pH、
−精製したA.ニガーTPAPまたは精製したA.オリゼTPAPと免疫学的に交差反応性であること、
Ala-Xaa(1)-Asn-Xaa(2)-Ser-His-Cys-Asp-Ser-Ile-Ile-Thr-Pro-Xaa(3)-Cys-Leu-Lys-Xaa(4)-Leu-Tyr-Asn-Ile-Gly-Asp-Tyr-Gln-Ala-Asp-Xaa(5)-Xaa(6) (配列番号15)を含んで成ること、ここでXaa(1), Xaa(2), Xaa(3), Xaa(4), Xaa(5)およびXaa(6)のいずれか1つが同一または異なることができ、そして天然アミノ酸残基から選択することができる。好ましくは、Xaa(1)がLys またはGln であり、Xaa(2)がIle またはThr であり、Xaa(3)がPro またはHis であり、Xaa(4)がGlu またはGln であり、Xaa(5)がPro またはAla であり、そして/またはXaa(6)がLys またはAsn である。
別の態様では、本発明のTPAPは配列番号10〜14に示される部分アミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含んで成りそして/または約5.5 〜7.5 の範囲の最適pHおよび/または約4.5 のpIを有する。
タンパク質生成物中のTPAPの存在は結果として前記生成物の安定性の減少を引き起こすために望ましくないと考えられる一方で、タンパク質生成物の限定された不安定化に本発明の精製TPAPを使用することは有利かもしれない。例えば、本発明の精製TPAPは、酵素がそれらの所望の効果を発揮した後で該酵素を失活させるのに使うことができ、よって「キラー酵素」として機能することができる。そのような失活は便利には熱失活により達成される(あるいはまた、精製により望ましくない酵素活性が取り除かれる)。好熱性酵素の不安定化へのTPAPの利用は特に有利であるかもしれない。
更に別の観点によれば、本発明は、TPAPをコードするDNA構成物であって、
i)配列番号1,2および3に示される部分DNA配列のうちの少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、または
ii)DSM 9570中に存在する、TPAPのN末端部分をコードする部分DNA配列、または
iii )配列番号1,2もしくは3に示されるDNA配列のいずれかに基づいてまたは配列番号4〜14に示されるアミノ酸配列のいずれかに基づいて調製したオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズするヌクレオチド配列、または
iv)上記i),ii)またはiii )のDNA/ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列
を含んで成るDNA構成物に関する。
ヌクレオチド配列iii )はDNA配列であってもRNA配列であってもよい。
あるいは、DNA配列i)およびii)は単にDSM 9570から単離することができる。
更に、本発明のDNA構成物のDNA配列、例えばDNA/ヌクレオチド配列i),ii)またはiii )に相補的であるヌクレオチド配列iv)は、確立された技術により、例えばNarang, SA, 1983,Tetrahedron 39:3およびItakura 他, 1984, Annu. Rev. Biochem.53:323により開示された原理に基づいて、合成することができる。
DNA配列i),ii)またはiii )の好ましい利用は組換えTPAPの調製における利用であり、一方DNA配列iv)の好ましい利用はTPAPに感受性であるタンパク質生成物の生産に使われる細胞のTPAP生産能力の減少のための利用である。
本発明のDNA構成物および/または発現ベクターは、TPAPをコードするDNA配列に作用可能に連結された適当なターミネーターおよび/またはポリアデニル化配列を更に含んでもよい。ターミネーターとポリアデニル化配列は、プロモーターと同じ源に由来してもよい。構成物中にエンハンサー配列を挿入してもよい。
DNA構成物および/またはベクターは選択マーカーを含んでもよい。選択マーカーの例としては、amdSまたはargB, trpCもしくはpyrGが挙げられる(最後の3つのマーカーは例えばA.ニデュランスまたはA.ニガー由来である)。
本発明のDNA構成物を作製するのに使う手順は上述したDNA配列をプロモーター、ターミネーターおよび他の要素のそれぞれと連結せしめることを含んで成り、複製に必要な情報を含む適当なベクター中にそれを挿入する手順は当業者に周知である(例えばSambrook他, 前掲,を参照のこと)。
一態様では、上記に限定したような本発明のDNA構成物または発現ベクターのいずれかを含んで成る本発明の細胞が、本発明のTPAPの組換え生産における宿主細胞として使われる。この場合、DNA構成物または発現ベクターは上述のTPAPをコードするDNA配列i)〜iii )またはDSM 9570の挿入断片のいずれかを含んで成る。便利には該DNA構成物を宿主染色体中に組み込むことにより、該DNA構成物によって細胞を形質転換せしめることができるが、該DNA構成物は染色体外存在物として存在してもよい。しかしながら、一般に、該DNA配列が多分細胞中に安定に維持されるだろうから組み込みの方が有利であると考えられる。宿主の染色体中へのDNA構成物の組み込みは、常法に従って、例えば相同組換えにより、行うことができる。あるいは、異なる型の宿主細胞に関連して後述するような発現ベクターを使って細胞を形質転換せしめてもよい。
i)TPAPの発現を可能にする条件下で上記に定義した本発明の細胞を適当な培地中で培養し、そしてii)培養物からTPAPを回収することを含んで成る方法に関する。
細胞を培養するのに使う培地は、問題の宿主細胞を増殖させるのに適する任意の常用培地であることができる。適当な培地は販売業者から入手可能でありまたは発表された作製法〔例えばアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)のカタログ中の〕に従って調製することもできる。培地中のタンパク質の存在はTPAP生産の増加をもたらし得ると思われる。
微生物が生産したタンパク質生成物の中の不安定化因子としてのTPAPの同定は、多数の様々なタンパク質生成物の生産にとって重大な結果となり得る。例えば、本発明者らにより立証されたように、たとえ少量であってもTPAPがタンパク質生成物中に存在していると、前記生成物の耐熱性を減少させてしまうことがある。従って本発明により、減少されたTPAP生産能力を有する生産株を作製することが可能である。
変更すべきDNA配列は、例えば、TPAPをコードするDNA配列もしくはTPAP活性を表すのに不可欠なそれの部分であることができ、またはTPAPをコードするDNA配列からのTPAPの発現に必要な調節配列であることができる。
一例として、調節配列はプロモーター配列またはそれの機能性部分、即ちTPAPを発現させるのに十分である部分であることができる。
そのような剤を使う時、突然変異誘発は典型的には、変異が起こるのに適当な条件下で、変異させようとする細胞を特定の変異誘発剤の存在下でインキュベーションし、そして減少したTPAP生産を有する変異細胞について選択することにより行われる。
更なる観点では、本発明はTPAP活性を本質的に含まない生成物を調製する方法であって、該生成物をコードするDNA配列を用いて減少したTPAP生産能力を有するかまたは全くTPAP生産能力を持たない上述の宿主細胞を形質転換せしめ、形質転換された細胞を該生成物の発現に適当な条件下で培養し、そして培養物から該生成物を回収することを含んで成る方法に関する。
本発明のこの観点によれば、TPAP活性の少なくとも60%、例えば該活性の少なくとも75%、より好ましくは該活性の少なくとも85%、更により好ましくは該活性の少なくとも95%、最も好ましくはTPAP活性の本質上少なくとも99%を除去することが可能である。この方法を使ってTPAP活性の完全な除去が得られるだろうと期待される。
培養方法と着目の生成物の精製方法は当業者に既知の方法により、例えば上述したような方法により、実施することができる。
更なる観点では、本発明は本発明の方法により生産されるTPAP活性を本質的に含まないタンパク質生成物に関する。
材料と方法
Phe-Pro-Ala-pNA 基質(Bachem, スイス国から入手可能)
プロテアーゼ阻害剤
Ala-Ala-Phe-クロロメチルケトン
ベンジルオキシカルボニル−Ala-Pro-Phe-クロロメチルケトン
ベンジルオキシカルボニル−Gly-Gly-Phe-クロロメチルケトン。
市販のA.ニガーAMG製剤(Novo Nordisk A/S, デンマークから入手可能)からTPAPを精製した。伝導率が1.5 mS/cm 未満になるまで、300 mLのAMG製品の試料を希釈しそして3 kDa カットオフ膜が取り付けられたFiltron(商標)濃縮装置中で4℃にて濃縮することを繰り返した。他の全ての精製段階は周囲温度で実施した。
濃縮物(600 mL)をpH 4.0に調整し、濾過した後、20 mM 酢酸ナトリウム, pH 4.0で平衡化した200 mL(2.6 ×37cm)のS−セファロースカラムに適用した。10 mL/分の流速を使った。10カラム容積での0から0.2 Mへの直線NaCl勾配によりTPAPを溶出させた。ペプチダーゼ活性の最大部分を含む1つのプールを作った。10 kDaのカットオフを有するDiaflo膜が取り付けられたAmiconセルにおいて20mM酢酸ナトリウム, pH 5.5に緩衝液を交換した。
S−セファロースカラムからのプールを、20 mM 酢酸ナトリウム,pH 5.5で平衡化したHiLoad Q−セファロースHPカラム(50 mL, 2.6×10cm)上で更に精製した。15カラム容積での0から0.5 Mへの直線NaCl勾配によりTPAPを溶出させた。タンパク質を8.0 mL/分の流速で適用しそして5.0 mL/分の流速で溶出させた。TPAPの最大部分を含むプールを作った。上記と同様にしてAmiconセルにおいて20mM酢酸ナトリウム, pH 4.0に緩衝液を交換した。
HiLoad Q−セファロースHPカラムからのプールを、20 mM 酢酸ナトリウム, pH 4.0で平衡化したMono Sカラム(5/5 )上で最終精製した。20 mM 酢酸ナトリウム, pH 4.0と20 mM 酢酸ナトリウム, pH6.0 を使って30カラム容積でpH 4.0からpH 6.0への勾配を適用した。流速は1.0 mL/分であった。TPAPの2つのイソ酵素がそれぞれpH5.1 と5.2 において溶出した。
AMG G1は、Q-セファロースを使ったアニオン交換クロマトグラフィーにより市販のAMG 製剤(Novo Nordisk A/S)から精製した。50 mLカラムを20 mM 酢酸ナトリウム, pH 5.5で平衡化し、8カラム容積での0から0.6 M NaClへの直線NaCl勾配を使ってG1形を溶出させた。流速は8.0 mL/分であった。
AMG trunc は、AMG G1のTPAP処理後に20 mM 酢酸ナトリウム, pH4.3 で平衡化したMono Qカラム上で精製した。30カラム容積での0から1.0 Mへの直線NaCl勾配を溶出に使った。流速は1.0 mL/分であった。
精製したAMG G1のアリコートを、0.1 M酢酸ナトリウム, pH 4.3中のTPAPと緩衝液の様々な混合物と共に37℃で数週間に渡りインキュベートした。最終容量は10 AGU/ml のAMG G1の濃度を有する1または2mlであった。インキュベーション混合物の100 μlを取り、0.1 M 酢酸ナトリウム, pH 4.3を使って2 AGU/mlに希釈した。希釈した試料に65℃で30分の熱処理を行った。
このアッセイは、0.1 M 酢酸ナトリウム緩衝液, pH 4.3中の0.2mM Phe-Pro-Ala-pNAの基質濃度を使って、マイクロタイタープレートリーダー中または分光光度計中のいずれかで実施した。Phe-Pro-Ala-pNA の5 mM原液をDMSO中に作製し、それを使用前に希釈した。UV-maxキネティックマイクロプレートリーダー中または分光光度計中のいずれかで405 nmで反応を4分間追跡し、開裂の初速度を計算した。
4μg のTPAPを含むアリコートを様々なプロテアーゼ阻害剤:1mM Ala-Ala-Phe−クロロメチルケトン、1 mMベンジルオキシカルボニル-Ala-Pro-Phe−クロロメチルケトンおよび1 mMベンジルオキシカルボニル-Gly-Gly-Phe−クロロメチルケトンと共にインキュベートした。30分間のインキュベーション後、残余活性を測定した。
培養ブロスを遠心分離し、0.22μm のフィルターを通して滅菌濾過した。該ブロスをソルビン酸ナトリウムと安息香酸ナトリウムに関して0.1 %にし、そしてpHを4.3 に調整した。2mlのアリコートを200 μlの10 mM Ala-Ala-Phe-クロロメチルケトンか200 μlの0.1 M 酢酸ナトリウム, pH 4.3のいずれかに添加した。試料を採取し、2 AGU/mlに希釈した後、上記と同様にしてT30を測定した。
AMG活性はK.A. Holm, 1980, Anal. Chem. Acta, 117, pp.359-362により記載された通りに測定した。簡単に言えば、この方法はα−D−グルコースの形成下でのAMGによるマルトースの加水分解に基づく。短時間の連続した透析作業の後、グルコースデヒドロゲナーゼ(GlucDH)反応(pH 7.6で実施)によりグルコースの濃度を測定した。Auto-Analyzer 自動化法の標準条件は次の通りである:
インキュベーション緩衝液:0.1 M 酢酸塩, pH 4.3
インキュベーション温度:37℃
インキュベーション時間:5分
この方法の酵素使用範囲は0.5 〜4 AGU/mlである。
表1に示す精製スキームに従って市販のAMG製剤(Novo Nordi-sk A/S)からTPAPが均質まで精製された。最後のカチオン交換カラムからの溶出曲線は、それぞれpI 5.1と5.2 を有する2種類のTPAPイソ酵素(TPAP−IとTPAP−II)の存在を明らかにした。SDS-PAGEとN末端配列分析により判断すると両イソ型タンパク質とも純粋であったが、酵素の比活性は異なっていた(表1参照)。TPAP−IIはTPAP−Iよりも20%高い比活性を有していた。
TPAPの2つのイソ型タンパク質間の小さなpI差は、醗酵ブロス中でのまたは精製中の1個もしくは数個のAsn もしくはGln 残基の脱アミドにより説明することができる。
TPAPの最適pHは上述のTPAPアッセイと同様な手順を使って決定した。pHを調節するのに0.1 M酢酸塩緩衝液を使った。得られた最適pH曲線を図1に示す。5.0 〜5.5 の範囲のpHにおいてTPAPが最適に機能することがわかる。
TPAPの最適温度の決定
上述のTPAPアッセイを使って0.1 M酢酸ナトリウム緩衝液中でTPAPの温度/活性関係を測定した。下表からわかるように、TPAPは45〜55℃の温度範囲に最大活性を有する。
A.ニガーから精製したTPAPのマトリックス補助レーザー脱着イオン化飛行時間型(Matrix assisted laser desorption ionisationtime-of-flight)質量分析法は幅広いシグナルを与え、これはTPAPがグリコシル化されていることを暗示する。平均質量は54.5 kDaであると測定された。
材料と方法
精製のための出発材料として、大豆含有培地中でpH 5で醗酵させたA.オリゼ IFO 4177 醗酵液の上清を使った。醗酵後、培養ブロスを遠心して細胞の大部分を除去した。
約4Lの上清をSeitz EKS プレート上で微生物濾過した。EKS 濾液を3 K カットオフのFiltron カセット(Minisette )上で最少量に限外濾過した。限外濾液=240 mL。限外濾液170 mLを固体の硫酸アンモニウム(AMS) を使って沈澱させ、約90%のAMS 飽和を与えた。少なくとも30分間攪拌した後、AMS 沈澱をSorvall RC3B遠心機中での遠心により回収した(4500 rpm, 15分, 室温)。このAMS 沈澱に100 mLの脱イオン水を加えてタンパク質を溶かし、1%(w/v) のFGV120活性炭を加えて色を取り除いた。約1時間攪拌した後、Seitz EK1 プレート上で懸濁液を濾過して活性炭(および色)を除去した。EK1 濾液を(1)100 mM H3PO4, 10 mMグルタル酸ジメチル,2 mM CaCl2, pH 5および(2)脱イオン水に対して透析した。EK1 濾過後、透析物(260 mL)をアリコートに分けて凍結保存した。
NaClのところで溶出した。TPAP活性をプールし、20 mM CH3COOH/NaOH, pH 4.0に対して透析した。S−セファロースカラムが与えることができたものよりも良好な分離を与えるために、同緩衝液(20mM CH3COOH/NaOH, pH 4.0 )中で平衡化した8 mLのSOURCE Sカラムに透析したプールを適用した。カラムを洗浄した後、結合したタンパク質をNaCl勾配(0→200 mM)により溶出させた。カラムからの画分をTPAP活性について分析した。TPAP活性は60 mM NaClのところで溶出した。TPAP活性をプールし、そして20 mM CH3COOH/NaOH, pH5.5 に対して透析した。
TPAP含有画分を限外濾過により1mlに濃縮し、20 mM Tris−酢酸塩, 100 mM NaCl, pH 5.5 中で平衡化した150 mLのSephacryl S-100カラムに適用した。1.0 mL/分の流速で2つのバンドが分離した。TPAP活性を含む画分をA.オリゼTPAPとしてプールした。
A.オリゼから精製したTPAPのマトリックス補助レーザー脱着イオン化飛行時間型(Matrix assisted laser desorption ionisationtime-of-flight)質量分析法は幅広のシグナルを与え、これはTPAPがグリコシル化されていることを示す。平均質量は55.0 kDaであるとわかった。
色素形成基質Phe-Pro-Ala-pNA を使って、A.オリゼTPAPの活性のpH依存性を調べた。50μlの酵素に指摘のpHのBritton-Robinson緩衝液 150μlを添加した後、0.2 mMの最終基質濃度で50μlのPhe-Pro-Ala-pNA と共にインキュベーションした。UV-maxキネティックマイクロタイタープレートリーダー中でアッセイを行い、405 nmで3.5 分間反応を追跡した。比活性(RA)を下の表3に与える。
A.ニガーTPAPのペプチド配列
完全なA.ニガーTPAPのI形とII形(実施例1)並びにTPAP−I形から誘導したペプチドのN末端アミノ酸配列決定は、製造業者の指示に従ってApplied Biosystems 473A シークエンサー中で実施した。
完全なTPAP−I形とII形のN末端アミノ酸配列を30残基に渡り決定した。2つの配列は同一であり次のものであることがわかった:
Ala-Gln-Asn-Thr-Ser-His-Cys-Asp-Ser-Ile-Ile-Thr-Pro-His-Cys-Leu-Lys-Gln-Leu-Tyr-Asn-Ile-Gly-Asp-Tyr-Gln-Ala-Asp-Pro-Lys-
この配列は他のタンパク質に対して全く相同性を示さなかった。
Ala-Gln-Asn-Thr-Ser-His-Cys-Asp-Ser-Ile-Ile-Thr-Pro-His-Cys-Leu-Lys
質量分析とアミノ酸配列分析により示されるようにAsn3がグリコシル化されている。ペプチド1は完全TPAPのアミノ酸残基1〜17と同一であり、従って配列番号4に示される配列のアミノ酸残基1〜17と同一である。
Gln-Leu-Tyr-Asn-Ile-Gly-Asp-Tyr-Gln-Ala-Asp-Pro-Lys
ペプチド2は完全TPAPの(従って配列番号4に示されるアミノ酸配列の)アミノ酸残基18〜30と同一である。ペプチド2は質量分析とアミノ酸配列分析により明らかなように次の2つの形態で回収される。N末端にGln 残基を有する1つの形態とこのGln 残基がピログルタミン酸残基に変換されているもう1つの形態。
Thr-Ser-Pro-Glu-Gln-Ala-Val-Ser-Phe-Ser-Ser-Gly-Gly-Phe-Ser-Asp-Leu-Trp-Pro-Arg-Pro-Ser-Tyr-Gln-His-(配列番号5)
Phe-Ser-Gly-Leu-Phe-Asn-Ala-Ser-Gly-Arg-Ala-Phe-Pro-Asp-Val-Ser-Ala-Gln-Gly-Val-Asn-Tyr-Ala-Val-Tyr-Asp-Lys (配列番号6)
ペプチド5:
Ile-Gly-Phe-Ala-Ser-Tyr-Leu-Gln-Glu-Tyr-Ala-Arg-Tyr-Ala-Asx-Leu-Glu-Arg-Phe-Glu-Gln-His-Leu-(配列番号7)
Asx15 はAsp 残基かAsn 残基か識別できなかった。
Xaa-Leu-Asx-Leu-Gln-Tyr-Ile-Leu-Gly-Val-Ser-Ala-Pro-Val-Pro-Ile-Thr-Glu-Tyr-Ser-Thr-Gly-Gly-Arg-Gly-Glu-Leu-Val-Pro-(配列番号8)
Asx3はAsp 残基かAsn 残基か識別できなかった。Xaa1は未同定であった。
Gly-Ala-Leu-Asx-Asp-Ile-Val-Asn-Gly-Thr-Ser-Val-Gly-Gln-Asp-Gly-Arg-Asn-Arg-Phe-Gly-Gly-Thr-Pro-Asn-Gly-Ser-(配列番号9)
Asx4はAsp 残基かAsn 残基か識別できなかった。Asn25 はN−グリコシル化の共通配列中に見つかるけれどもそれはグリコシル化されないことに注意。
完全なTPAPの並びにTPAPから誘導したペプチドのN末端アミノ酸配列決定は、製造業者の指示に従ってApplied Biosystems 473A タンパク質シークエンサー中で実施した。
完全なTPAPのN末端アミノ酸配列は、標準手順を使ったSDS-PAGEとPVDF膜上への電気ブロッティング後に決定した。次の23残基のアミノ酸配列が判明した:
Ala-Lys-Xaa-Ile-Ser-His-Yaa-Asp-Ser-Ile-Ile-Thr-Pro-Pro-Yaa-Leu-Lys-Glu-Leu-Tyr-Asn-Ile-Gly-(配列番号14)
この配列はA.ニガーからのTPAPのN末端アミノ酸配列と明らかに相同である。この相同性に基づくと、Xaa は多分グリコシル化されたAsn 残基であり、Yaa は多分Cys 残基を表すだろう。
Glu-Leu-Tyr-Asn-Ile-Gly-Asp-Tyr-Gln-Ala-Asp-Ala-Asn-Ser-Gly-Ser-Lys (配列番号10)
このペプチドは完全なTPAPのN末端配列分析により決定された最後の6アミノ酸残基と重複し、従ってN末端配列を34残基に延長する。
Thr-Thr-Pro-Glu-Arg-Gly-Thr-Tyr-Phe-Ser-Ser-Gly-Gly-Phe-Ser-Asn-Tyr-Trp-Pro-Arg-Pro-Glu-Trp-Gln-Asn-Gln-Ala-Val-Ala-Ser-Tyr-Leu-(配列番号11)
このペプチドはA.ニガーTPAPからのペプチド3と相同である。
Gly-Thr-Leu-Gly-Glu-Phe-Asp-Gly-Thr-Ser-Ala-Ser-Ala-Pro-Ala-Phe-Ser-Ala-Val-Ile-Ala-Leu-Leu-Asn-Asp-Ala-Arg-Leu-Arg-Ala-Gly-Lys-Pro-Thr-Leu-Gly-Phe-Leu-Asn-Pro-Trp-Leu-Tyr-Lys (配列番号12)
Thr-Gly-Arg-Gln-Gly-Leu-Gln-Asn-Ile-Thr-Leu-Gly-Ala-Ser-Ile-Gly-Xaa-Thr-Gly-Arg-Ala-Arg-Phe-Gly-Gly-Ala-Pro-Asn-Gly-Gly-Pro-Val-Val-Pro-Tyr-Ala-Ser-(配列番号13)
Xaa は未同定の残基を表す。
A.ニガーTPAPのI形とII形のアミノ酸組成を決定した。TPAPのI形とII形の凍結乾燥アリコートの複製物を、0.1 %フェノールを含む6 N HCl 中で110 ℃で16時間、真空中で加水分解した。トリプトファンは3Mメタンスルホン酸中での加水分解後に決定した。加水分解後、製造業者の指示に従って操作したApplied Biosystems420Aアミノ酸分析システムを使ってアミノ酸組成を決定した。その結果は、表4に示す通り、TPAPI形とII形が実験誤差内で同じアミノ酸組成を有することを示した。
A.ニガーTPAPI形とII形の単糖組成を決定した。TPAPのI形とII形の凍結乾燥したアリコートの複製物を、2 M TFA 中で100 ℃で1時間、2時間および4時間真空中で加水分解した。加水分解後、16 mM NaOHを使って溶出させるCarboPacTM PA1カラム上での高性能イオン交換クロマトグラフィーにより、単糖組成を分析した。単糖類はパルス電流測定検出法によって検出した。2 M TFA 中での単糖類の安定性と放出が異なるため、1時間加水分解後のガラクトースの量、2時間加水分解後のマンノースの量および4時間加水分解後のグルコサミンの量を決定した。得られた結果は、下表に示すように、TPAPI形とII形のマンノース含量にごくわずかな相違があることを示す。
配合物中のものに等しいTPAP/AMG比において精製済のAMGとTPAP(実施例1の材料と方法の項目に記載した通りに得られたもの)を使って、AMG G1形を不安定にするA.ニガーTPAPの能力を調べた。不安定化された調製物のアミノ酸配列分析は、AMG の触媒領域のN末端部の修飾を明らかにした。最初の3つのアミノ酸残基を含んで成るトリペプチド(Ala-Thr-Leu)が該ペプチダーゼにより開裂されており、このことは該酵素がトリペプチジルアミノペプチダーゼであることを示す。
様々な生来のタンパク質とペプチド基質を使ってA.ニガーTPAPの特異性を調べた。それらの基質を使って、TPAPが開裂部位のN末端側のアミノ酸残基に関して高度に非特異的であることがわかった。TPAPはPro 残基やCM-Cys残基の後であっても開裂させることができる。しかしながら、開裂部位のC末端側のPro 残基はTPAPによる開裂を完全に阻害する。生来のタンパク質をTPAP処理にかけることから得られた特定の開裂生成物としては、トリペプチド配列IPE, YVD,WRQ, KGA, LPS, ANL, NGT, LMQ, YFE, GPG, GGG, ADG, RST, SVE,KKP, EGV, NTG, AGD, RHN, LKT, VEK, KPE, GVN, TGA, GDR, HNL,HSQ, GTF, TSD, YSK, YLD, SRR, AQD, FVQ, WLM およびATL が挙げられる。
プロテアーゼ阻害剤であるAla-Ala-Phe-クロロメチルケトン(CMK)(AAF-CMK) によるTPAPの阻害を上記条件下で試験した。AAF-CMK は完全にTPAPを阻害することがわかった。
醗酵ブロスへのAAF-CMK の添加はTPAP活性を完全に阻害することができる。TPAP活性の存在下と非存在下で5種類のAMG バッチの耐熱性を調べた。TPAPが阻害された時、37℃で2週間の貯蔵後に5つのAMG バッチ全ての耐熱性が変わらなかった。阻害剤を添加しない対応試料は全て明らかに不安定化された。
AMG を生産するA.ニガー株の培養から得られた10mlの培養ブロスの一部を水酸化ナトリウムでpH 6.5かpH 7.0のいずれかに調整した。試料をそれぞれ25℃, 40℃および50℃で1時間インキュベートし、次いで酢酸を使ってpH 4.3に調整した。処理した試料の貯蔵安定性を測定した。この試料回収工程(高温でのpH処理に基づく)がTPAP活性の効率的除去をもたらすことがわかった(表6)。pH 6.5/40℃での1時間の培養ブロスの処理はTPAP活性を5%に減少させ、40℃での2週間の貯蔵後も変わらない耐熱性を有する非常に安定な生成物を与えた。
PCRクローニング
A.ニガーTPAPのN末端アミノ酸配列(その配列は配列番号3に示される)から、4つのPCRプライマーをデザインした(表7)。A.ニガーの株からのゲノムDNAを4つのPCR反応において鋳型として使った。予想サイズ65 bp のPCR断片を精製し、プラスミド pCRTMII(Invitrogen Corporation)中にクローニングした。3つのクローンについての挿入断片の配列分析は、それらのうちの2つがプライマーに相当する領域中に縮重配列を含み、間の配列がN末端アミノ酸配列に対して不変であることを示した。
以前に記載された通りに(Yelton他, 1984, Proc. Natl. Acad.Sci. USA 81: 1470-1474)、A.ニガーの株およびA.オリゼ IFO4177株からゲノムDNAを単離した。ゲノムDNAを適当な制限酵素で消化し、0.7 %アガロースゲル上で分画し、そして製造業者により記載された通りに ImmobilonTM-Nにブロッティングした。この膜を、Feinberg他, 1983, Anal. Biochem. 132:6により記載された方法に従ったランダムプライミングにより、α-32P dATP (NewEngland)で標識された950 bp TPAP 遺伝子配列の存在について探査した。
Claims (13)
- トリペプチジルアミノペプチダーゼ(TPAP)活性を実質的に伴わないAMGを製造する方法において、TPAPの活性が低下又は除去されているアスペルギルス(Aspergillus)の細胞を、AMGをコードするDNAにより形質転換し、そしてAMGを採取する、ことを含んでなる方法。
- 前記TPAP活性が、前記細胞内に存在する、TPAPの発現のために必要なDNA配列を修飾することにより低下又は除去されている、請求項1に記載の方法。
- 前記DNA配列が、TPAP又はTPAP活性の発生のために必要なその部分をコードする、請求項2に記載の方法。
- 前記DNA配列が、TPAPをコードするDNA配列からのTPAPの発現のために必要な制御配列である、請求項2に記載の方法。
- 前記DNA配列が、プロモーター配列又はその機能的部分である、請求項4に記載の方法。
- 前記DNA配列の修飾が、TPAP生産細胞を変異誘発にかけそしてTPAP生産能力が低下又は除去されている細胞を選択することにより得られる、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記変異誘発が、ランダム変異誘発又は部位特定変異誘発である、請求項6に記載の方法。
- 前記修飾が欠失である、請求項2〜5にいずれか1項に記載の方法。
- 前記TPAP活性が、前記アスペルギルスの細胞へのヌクレオチド配列の導入により低下又は除去されており、当該ヌクレオチド配列が、TPAPコード配列に対して十分に相補的でありそしてそのために細胞内で生産されたTPAP mRNAにハイブリダイズすることが出来、これにより当該ヌクレオチド配列が当該TPAP mRNAにハイブリダイズし、そしてそのために当該mRNAから翻訳されるTPAPの量が減少しまたは当該翻訳が除去される、請求項1に記載の方法。
- 発酵中又は発酵が完了した後に発酵液にTPAP活性を阻害することが出来るのに有効な量の阻害剤を添加することにより前記TPAP活性が低下又は除去され、そして所望により採取されたAMGを更に精製する、請求項1に記載の方法。
- 発酵液又は当該発酵液から分離されたTPAP及びAMGを含む酵素調製物を、TPAP活性を低下させるのに十分な時間にわたり、pH及び温度処理にかける、請求項1に記載の方法。
- 前記TPAP低下処理を6.5〜7のpH及び25〜40℃の温度で行う、請求項11に記載の方法。
- 請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法により製造される、TPAP活性を実質的に伴わないAMG。
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