JP2007017929A - カテーテル手術シミュレータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カテーテル手術シミュレータ60は、光源61、一対の偏光板62及び63、1波長板68、立体モデル21、受光部70から大略構成される。第1の偏光板62及び63は相互に直交した偏光方向を有する。これにより、立体モデル21の内部応力に起因する光弾性効果を第2の偏光板63側において観察することができる。立体モデル21の腔所へカテーテルを挿入したとき、カテーテルと腔所の周壁とが干渉すると、当該腔所周壁に応力が生じそこに光弾性効果(干渉縞)が現れる。また、コイル塞栓時の動脈瘤の変形に伴う当該動脈瘤周囲領域の応力状態も光弾性効果からシミュレートすることができる。
【選択図】図9
Description
立体モデル成形材料としてシリコーンゴムなどのエラストマー材料を採用することにより、立体モデルの腔所(血管などを再現したもの)へ液体を送り込んだり、またカテーテルを挿入したりしたときの当該腔所の動的変形を観察することができる。
また、膜状の立体モデル(非特許文献2)を提案している。
また、ゲル状の基材で構成した立体モデルを提案している(非特許文献3)
そこでこの発明は、立体モデルにおいて腔所部分の周囲領域の応力状態を観察できるようにすることを目的とする。
少なくとも体腔を再現した腔所の周囲領域が弾性材料で形成され、カテーテルの挿入が可能な透光性の立体モデルを通過する光に生じる光弾性効果を検出する立体モデルの応力観測装置であって、
偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタと、
該偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される位相シフトフィルタと、を備え、
前記立体モデルへ挿入されたカテーテルを目視可能とした、ことを特徴とするカテーテル手術シミュレータ。
また、例えば偏光光源を構成する第1の偏光フィルタと観察者側の第2の偏光フィルタとの間に位相シフトフィルタを配置させることにより、第1の偏光フィルタを透過した光の一部が第2の偏光フィルタを透過可能となる。このとき、立体モデル内にカテーテルが挿入されていた場合、カテーテルは光を透過させないので、カテーテルが影となって観察される。勿論、カテーテルにより応力変化の生じた立体モデルの周囲領域においては光弾性効果が観察される。なお、この位相シフトフィルタが存在しないと一対の偏光フィルタにより光源からの光は完全に遮断され、光弾性効果により変調された光のみが第2の偏光フィルタを透過して観察可能となる。この場合、カテーテル自体を観察することはできない。
(立体モデル形成材料)
立体モデルの応力状態を光弾性により観察するには、立体モデルにおいて少なくとも応力状態の観察が必要な部位を等方性材料で形成する。立体モデルは透光性を有するものとする。
かかる光弾性を有する材料として、例えば、シリコーンゴム(シリコーンエラストマー)や熱硬化性のポリウレタンエラストマー等のエラストマーの他、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等の熱可塑性樹脂を単独で、或いは複数組み合わせて使用することができる。
カテーテルや液体を立体モデルの腔所へ挿入したとき、当該腔所の周囲領域における応力状態が光弾性効果として観察されるためには、少なくとも当該周囲領域が弾性変形可能な材料で形成される必要がある。勿論、立体モデルを全体的に弾性変形可能な材料で形成することができる。
かかる立体モデルの形成材料として、カテーテル等の挿入にともなって変形しやすく(即ち、縦弾性係数が大きく)、かつ僅かな変形でも大きな光弾性効果の変化を観察できる(即ち、光弾性系係数が大きい)材料が好ましい。かかる材料としてゼラチン(動物性かんてん)を挙げることができる。また、植物性かんてんやカラギーナン、ローカストビーンガムのような多糖類のゲル化剤を採用することもできる。
立体モデルにおいて腔所は被検体の断層像データに基づき形成された血管などの体腔を再現したものとすることができる。
ここに、被検体は人体の全体若しくは一部を対象とするが、動物や植物を断層撮影の対象とすることができる。また、死体を除くものではない。
断層像データは積層造形を実行するための基礎となるデータをいう。一般的に、X線CT装置、MRI装置、超音波装置などによって得られた断層撮影データから三次元形状データを構築し、当該三次元形状データを二次元に分解して断層像データとする。
以下、断層像データ生成の一例を説明する。
積層造形システム(或いは積層造形システムに対応したソフトウェア)では、積層造形時の体腔モデルの配置や積層方向などの各種設定項目の設定を行うと同時に、積層造形中における形状保持などの目的で、サポート(支持構造)をサポートが必要な箇所に付加する(必要なければ付加する必要はない)。最後に、このようにして得られた造形用データを積層造形時の造形厚さに基づいてスライスすることによって、積層造形に直接利用されるスライスデータ(断層像データ)を生成する。尚、上記の手順とは逆に、スライスデータの生成を行った後にサポートの付加を行ってもよい。また、スライスデータが使用する積層造形システム(或いは積層造形システムに対応したソフトウェア)によって自動的に生成される場合には、この手順を省略することができる。但し、この場合でも積層造形厚さの設定を行っても良い。サポートの付加についても同様であり、積層造形システム(或いは積層造形システムに対応したソフトウェア)によってサポートが自動的に生成される場合には、手動で生成する必要はない(手動で生成してもよい)。
形成の方法は特に限定されるものではないが、積層造形が好ましい。ここに積層造詣とは、断層像データに基づき薄い層を形成し、これを順次繰り返すことにより所望の造形を得ることをいう。
積層造形された体腔モデルは後の工程で分解除去されなければならない。除去を容易にするため、積層造形に用いる材料を低い融点の材料とするか、若しくは溶剤に容易に溶解する材料とすることが好ましい。かかる材料としては低融点の熱硬化性樹脂若しくはワックス等を用いることができる。いわゆる光造形法(積層造形に含まれる)において汎用される光硬化性樹脂においてもその分解が容易であれば、これを用いることができる。
具体的な積層造形の方式として、例えば粉末焼結方式、溶融樹脂噴出方式、溶融樹脂押出方式等を挙げることができる。
体腔モデルの表面を他の材料でコーティングすることにより、体腔モデルの材料の一部の成分又は全部の成分が立体モデル成形材料中に拡散することを防止することができる。その他、体腔モデルの表面を物理的に処理(熱処理、高周波処理等)、若しくは化学的に処理することにより、当該拡散を防止することもできる。
立体モデルを多層構造とすることもできる。即ち、
血管などの体腔を再現した腔所をその内部に有する膜状モデルと、該膜状モデルを囲繞する基材から立体モデルを形成する。
このように構成された立体モデルでは、生体血管の有する膜状構造と血管周囲の軟組織の構造が物理特性も含めて個別に再現される。これにより、柔軟性を有する膜状構造の血管のモデルが、血管周囲組織の粘弾性特性を有する基材に埋設された状態となる。このため、医療器具や流体の挿入シミュレーションに際して、立体モデル内部の膜状構造の血管モデルが基材内で生体内における血管と同様に柔軟に変形することができ、生体血管の変形特性を再現するのに好適なものとなる。
ここに、膜状モデルは、既述の体腔モデルの表面へ膜状モデル成形材料を薄く積層し、これを硬化して得られる。
膜状モデルの成形材料は光弾性効果を示す等方性材料であれば特に限定されず、例えば、シリコーンゴム(シリコーンエラストマー)や熱硬化性のポリウレタンエラストマー等のエラストマーの他、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等の熱可塑性樹脂を単独で、或いは複数組み合わせて使用することができる。これらの材料を塗布、吹き付け、若しくはディッピング等の方法で体腔モデルの表面へ薄く積層し、その後周知の方法で加硫若しくは硬化させる。
膜状モデルの対象を脳血管モデルとするときには、透明でかつ生体組織に近い弾力性及び柔軟性を備える材料を採用することが好ましい。かかる材料としてシリコーンゴムを挙げることができる。また、シリコーンゴムは生体組織と同等の接触特性を有するので、カテーテル等の医療器具を挿入し手術の試行に適したものとなる。
膜状モデル形成材料を複数層から形成することができる。その厚みも任意に設定できる。
膜状モデルはその全体が実質的に均一な厚さに形成されることが、光弾性効果を観察する点から、好ましい。
ここに、生体組織とは膜状モデルが再現した血管等を囲繞する柔軟な組織である。かかる柔軟性(物理特性)を再現する材料として、実施例ではシリコーンゲル及びグリセリンゲルを用いた。ゼラチン、かんてん、多糖類のゲルなどを用いることもできる。なお、ケーシングに気密性を確保できれば高粘度の液体を基材として用いることもできる。
基材の材料としてゲルを用いた場合、物理特性の異なる複数の材料を用いて基材をより生体組織に近づけることができる。
膜状モデルの動的な挙動を観察するため、基材は透光性とすることが好ましい。膜状モデルと基材との境界を明確にするため、膜状モデル若しくは基材の少なくとも一方を着色することができる。また、膜状モデルの動的挙動をより正確に観察できるように、膜状モデルの材料の屈折率と基材の材料の屈折率とを実質的に等しくすることが好ましい。
膜状モデルの全部が当該基材内に埋設される必要はない。即ち、膜状モデル一部は空隙部内に位置していてもよい。また、膜状モデルの一部はソリッド基材(生体組織と非類似の物理特性を有する)内にあってもよい。
基材は弾性を有するものとする。好ましくは、縦弾性係数が2.0kPa〜100kPaの低弾性とする。更に好ましくは、基材は充分な伸びを有する。これにより、膜状モデルが大きく変形しても、膜状モデルから基材が剥離することがない。例えば、無負荷時を1として、膜状モデルに対する接着性を確保した状態で引っ張ったときに基材は無付加時の2〜15倍の伸び率を有することが好ましい。ここで伸び率とは、基材が元に戻ることの出来る最大変形量を指す。また、荷重を加えて変形させた基材から荷重を除去したときに基材が元に戻る速度は比較的緩やかであることが好ましい。例えば、粘弾性パラメータである損失係数tanδ(1Hz時)は0.2〜2.0とすることができる。
これにより、血管等の周囲に存在する組織と同等若しくは近い特性を基材が持ち、膜状モデルの変形がより実際に近い環境で行われることとなる。即ち、カテーテル等の挿入感をリアルに再現可能となる。
基材は膜状モデルに対して密着性を有するものとする。これにより、膜状モデルへカテーテル等を挿入して膜状モデルを変形させも基材と膜状モデルとの間にズレの生じることがない。両者の間にズレが生じると、膜状モデルにかかる応力に変化が生じるので、例えばカテーテルの挿入シミュレーションをする場合に支障をきたし、その挿入時に違和感を生じるおそれがある。
膜状モデルとして脳血管モデルを対象としたとき、基材と膜状モデルとの密着性(接着強度)は1kPa〜20kPaとすることが好ましい。
かかる基材として実施例ではシリコーンゲル及びグリセリンゲルを用いているが、その材質が特に限定されるものではない。なお、ケーシングに気密性を確保できれば高粘度の液体を基材として用いることもできる。これは特に、弾性を有さない生体組織に囲まれる血管を再現した膜状モデルに対する基材として好適である。これら複数種類の流動体を混合し、さらにはこれらへ接着性の薬剤を混合することにより、好適な基材を調製することもできる。
基材の材料としてゲルを用いた場合、物理特性の異なる複数の材料を用いて基材をより生体組織に近づけることができる。
膜状モデルの動的な挙動を観察するため、基材は透光性とすることが好ましい。膜状モデルと基材との境界を明確にするため、膜状モデル若しくは基材の少なくとも一方を着色することができる。また、膜状モデルの動的挙動をより正確に観察できるように、膜状モデルの材料の屈折率と基材の材料の屈折率とを実質的に等しくすることが好ましい。
膜状モデルの全部が当該基材内に埋設される必要はない。即ち、膜状モデル一部は空隙部内に位置していてもよい。また、膜状モデルの一部はソリッド基材(生体組織と非類似の物理特性を有する)内又は流体内にあってもよい。
ケーシングには膜状モデルの腔所に連通する穴が空けられている。この穴からカテーテルを挿入することができる。
立体モデルは全体として透光性であることが好ましい。カテーテルの挿入状態を観察する点からいえば、少なくともその膜状モデルの内部が視認できればよい。
ケーシングと膜状モデルとの間には充分な距離を設ける。これにより、弾性を有する基材に充分なマージン(厚さ)が確保され、カテーテル挿入等により膜状モデルへ外力がかけられたときその外力に応じて膜状モデルは自由に変形できることとなる。なお、このマージンは立体モデルの対象、用途等に応じて任意に選択できるものであるが、例えば膜状モデルの膜厚の10倍〜100倍以上とすることが好ましい。
その後、体腔モデルを除去すると膜状モデルが基材中に残された状態となる。
体腔モデルの除去の方法は体腔モデルの造形材料に応じて適宜選択され、立体モデルの他の材料に影響の出ない限り、特に限定されない。
体腔モデルを除去する方法として、(a) 加熱により溶融する加熱溶融法、(b) 溶剤により溶解する溶剤溶解法、(c) 加熱による溶融と溶剤による溶解とを併用するハイブリッド法等を採用することができる。これらの方法により体腔モデルを選択的に流動化し、立体モデルの外部へ溶出してこれを除去する。
体腔モデルを中子としてゲル状の基材へ埋設し、当該体腔モデルを除去する。これにより、基材中に体腔を再現した腔所が形成される。その後、腔所の周壁へ膜状モデルの形成材料を付着させ重合若しくは加硫等により硬化する。膜状モデル形成材料を基材の腔所へ流すこと、若しくは基材を膜状モデル形成材料にディッピングすることにより、膜状モデル形成材料を基材の体腔周壁へ付着させることができる。
当該腔所の周壁を疎水化処理(親油化処理)した場合も同様に、腔所へ油を充填したとき周壁に油膜が形成され、カテーテルの挿入抵抗が緩和される。即ち、この油膜が膜状モデルに対応する。
ケーシングには膜状モデルの腔所に連通する穴が空けられている。この穴からカテーテルを挿入することができる。
立体モデルは全体として透光性であることが好ましい。カテーテルの挿入状態を観察する点からいえば、少なくともその膜状モデルの内部が視認できればよい。
光弾性効果とは、透光性材料において内部応力が生じると、一時的に複屈折性をおび、最大主応力と最小主応力の方向で屈折率が異なるため、入射光が2つの平面偏光に分かれて進むことをいう。当該2つの波の位相差により干渉縞が生じ、この干渉縞を観察することにより透光性材料の内部応力の状態を知ることができる。
この光弾性効果を生じさせるには、図1に示すように、光源からの光を第1の偏光板(偏光フィルタ)に通して偏光させ、立体モデルにこの直線偏光を通す。立体モデルにおいて内部応力が生じていると内部応力に強さに応じて複屈折が生じ、最大主応力(acosφsinωt)と最小主応力(acosφsin(ωt−A))が生成する。これらの光は速度が異なるため位相差を生じ、第2の偏光板(偏光フィルタ)を通して観察すると、干渉縞が現れる。なお、この第2の偏光板の偏光方向は第1の偏光板の変更方向と実質的に直交している。
一対の偏光板に間に立体モデルを介在させ、立体モデルを透過する光に生じる光弾性効果を観察する方法として、直交ニコル法、平行ニコル法、鋭敏色法等が知られている。また、偏光板と立体モデルとの間に一対の1/4波長板(1/4波長フィルタ)を介在させることにより光弾性効果を検出する方法として、円偏光法やセナルモン法等が知られている。
そこでこの発明では、光源側の第1の偏光フィルタと観察者側の第2の変更フィルタとの中へ位相シフトフィルタを介在させることにより、カテーテル自体の位置及び状態を観察可能とした。即ち、位相シフトフィルタを存在させることにより、第1の偏光フィルタを透過した光の一部が第2の偏光フィルタを透過し、バックグランド光を構成する。ここに、立体モデル中にカテーテルが存在すると、それが影となって現れてその位置、状態及び動作が観察される。即ち、カテーテルとカテーテルにより生じた光弾性効果を同時に観察可能となる。
この発明では、観察者側の第2の偏光フィルタからバックグランド光を取り出すことができれば、複数枚の波長シフトフィルタを用いてもよい。なお、円偏光法やセナルモン法等においては1/4波長板が用いられているが、これらの方法においてはバックグランド光を第2の変更フィルタから取り出すことができないので、カテーテルの観察は不可能である。
かかる構成を図2に示す。図2において、符号201は白色光源、符号203及び204は偏光フィルタ、符号205及び206は1/4波長フィルタ、207は観察対象である立体モデル、209は位相シフトフィルタ(この例では2波長板)である。
位相シフトフィルタ209の傾斜角度ψ=±5度〜±40度のとき、より好ましくはψ=±22.5度のとき、第2の偏光フィルタ204において観察される光弾性効果(光の色(波長))から、観察対象の応力とその方向を特定することができる。
これは、次の理由による。
図2の構成において、観察される光の強さIは下記式1で表現される。
ψ=22.5として、上記式1にRGBの各波長を代入したとき、観察される光の色(波長)は応力の方向と応力の強さとを反映している。換言すれば、観察された光の色から応力の方向と応力の強さが特定できる。観察された光と応力方向及び応力強さとの関係は図3のマップで表される。なお、紙面の都合上、図3は白黒表記となったが、実際には、図3の全領域に渡り色変化が認められ、図3の縦軸(応力方向)の任意の座標と横軸(応力強さ)の任意の座標とで指定される色(波長)は実質的に1つに特定される。このようなカラーマップはψ=±5度〜±40度のとき、より鮮明にはψ=±22.5度のとき得られる。
他方、ψ=0度あるいはψ=90度のときは、図4Aに示す通り、縦軸の90度を中心にして上下対称の色分布のなるので、観察された色から応力方向や応力強さを特定することは出来ない。またψ=±45のときは、図4Bに示す通り、前記位相シフトフィルタの効果を得ることができないため、カテーテルの影を観察することが困難である。
また、本発明者らの検討によれば、ψ=±22.5のとき、光源をG(緑色系)の光とすると、図3のマップにおいて、緑色の明るさ(強さ)が横軸に対応して分布していることがわかった。実際には横軸のほぼ中央で最も明るく、左右に移行するに従い明るさが低減する。立体モデルにかかる最高応力はほぼRe=265〜400程度であり、それを超えると破損するおそれが強い。従って、緑色の明るさに注目すれば、立体モデルにかかっている応力の強さを特定することができる。これにより、オペレータはカテーテル手術シミュレーションを行なうときの立体モデルの応力状態を、リアルタイムでかつ直感的に把握することができる。
立体モデル化の対象とする脳血管及び患部である脳動脈の形状に関する三次元データを得るため、撮影領域の血管内部へ造影剤を投与しながら、患者の頭部に対して、0.35×0.35×0.5mmの空間分解能を持つヘリカルスキャン方式のX線CT装置により撮影を行った。撮影により得られた三次元データは、3次元CADソフトへの受け渡しのため、体軸方向に等間隔に配列された500枚の512×512の解像度をもつ256階調の二次元画像(断層撮影データ)に再構成した後、各二次元画像に対応する画像データを撮影方向に一致する順序で前記X線CT装置に内蔵されたドライブにより5.25インチ光磁気ディスクへ保存した。
なお、この段階で、三次元形状データに付加データを加え、体腔モデル12(図6参照)の端部からガイド部13を膨出させた(図5参照)。このガイド部13は中空柱状の部材である。中空部31を備えることにより、積層造形時間の短縮を図っている。このガイド部13の先端は拡径されており、この部分が立体モデル表面に表出して、大径な開口部25(図6参照)を形成することとなる。
このようにして生成された積層造形用のデータをコンピュータ上で所定の積層造形厚さ(13μm)にスライスして多数のスライスデータを生成した。そして、このようにして得られた各スライスデータに基づいて、p−トルエンスルホンアミドとp−エチルベンゼンスルホンアミドを主成分とした造形材料(融点:約100度、アセトンに容易に溶解)を加熱により溶融して噴出することにより、各スライスデータに一致する形状を有する指定厚さの樹脂硬化層を一面ずつ積層形成することよって積層造形を行った。最終層の形成の後にサポートを除去することによって、脳血管内腔領域の積層造形モデル(体腔モデル12)を作成した。
更に、この体腔モデル12の表面を処理して円滑にする。
この実施例では、体腔モデル12の全表面をシリコーンゴム層15で被覆したが、体腔モデル12の所望の部分を部分的にシリコーンゴム層15で被覆することも可能である。
基材22の材料として、2液混合型のシリコーンゲルを用いた。このシリコーンゲルは透明かつ弾性を有しており、かつ血管周囲の軟組織に極めて近い物理特性を有している。縮合重合型のシリコーンゲルを用いることもできる。このように基材は、透光性、弾性を備えるとともに、膜状モデルに対する密着性を備えるものとする。
なお、この実施例では針入度、流動性、粘着性、応力緩和性などを指標にして、最終的にはオペレータの手触り(カテーテルの挿入感覚)によりその物理特性を生体組織に近づけるようにしている。
シリコーンゲルの場合、そのポリマーの骨格を調製することはもとより、シリコーンオイルを配合することにより当該物理特性を調整することができる。
その後、試料を120℃に設定された恒温層内で約1時間加熱して、膜状モデル(シリコーンゴム層15)の曇りをとった。
この場合、基材として光弾性係数の高いゼラチンを用いることが好ましい。
この実施例のカテーテル手術シミュレータ60は、光源61、一対の偏光板62及び63、1波長板68、図7に示した立体モデル21、受光部70から大略構成される。
光源61には白色光源を用いることが好ましい。太陽光を光源として用いることもできる。また、単色光源を用いることも可能である。第1の偏光板62及び63は相互に直交した偏光方向を有する。これにより、立体モデル21の内部応力に起因する光弾性効果を第2の偏光板63側において観察することができる。1対の偏光板62及び63の間に1波長板68を介在させることにより、波長530nm近傍の光がバックグランド光として第2の偏光板63を透過するカテーテルのような非透明部材が影として観察される。なお、1波長板68に代表される波長シフトフィルタは第1の偏光板62と立体モデル21との間に介在させてもよい。
立体モデル21の腔所へカテーテルを挿入したとき、カテーテルと腔所の周壁とが干渉すると、当該腔所周壁に応力が生じそこに光弾性効果(干渉縞)が現れる。また、コイル塞栓時の動脈瘤の変形に伴う当該動脈瘤周囲領域の応力状態も光弾性効果からシミュレートすることができる。
画像処理装置73では次のような処理が行われる(図10参照)。
まず、立体モデル21へ何ら外力を加えていない初期状態の画像をバックグラウンド画像として取り込む(ステップ1)。立体モデル21が高い光弾性係数の材料で形成されている場合、自重で光弾性効果を生じる場合がある。従って、光源61から光を照射し、更に外力を加えたとき(例えばカテーテルを挿入したとき)の光弾性効果による干渉縞画像を取り込んだ後(ステップ3)、これからバックグランド画像を差分処理する(ステップ5)。
この実施例では受光部70により光弾性効果による干渉縞を画像処理しているが、当該干渉縞を観察者が直接若しくは撮像装置71を介して観察してもよい。
この実施例では第1の偏光板62と立体モデル21との間に第1の1/4偏光板82を介在させ、立体モデル21と第2の偏光板63との間に第2の1/4偏光板83を介在させている。これにより、円偏光に基づき立体モデル21の光弾性効果を観察可能になる。円偏光に基づく光弾性効果の観察によれば、干渉縞に応力方向の影響が現れないので、立体モデルの姿勢制御が容易になる。
図12には目視観察に適した例が示されている。この例では、メガネ90が準備されている。このメガネ90のレンズ部分は2層構造とされており、図12(B)に示すように、観察者側に第2の偏光板63が配置され、その外側に1波長板68が配設されている。
このメガネ90を掛けずに光源61をオンの状態とすると、立体モデル21が第1の偏光板62を通過した光により照明されて、カテーテルの状態やその血管構造など目視による構造観察が可能になる。他方、メガネ90を掛けると、基本的に図9の構成が形成されるので、カテーテルの状態と当該カテーテルによる立体モデルの応力状態に対応した光弾性効果とが同時に観察可能となる。
この実施例ではメガネ90を採用したが、観察者側から第2の偏光板と位相シフトフィルタとを積層したプレートを準備すればよい。
また、1波長板に代表される位相シフトフィルタを第1の偏光板62と立体モデル21との間に配置したときには、メガネのレンズ部分を第2の偏光板のみから形成すればよい。
次に、図13に示したカテーテル手術シミュレータ160の動作を図14のフローチャートに基づき説明をする。
立体モデル21に対向する第2の偏光板63の部分を撮像装置71で撮像し、膜状モデルの状態量を特定する特徴量としてピクセル毎の輝度を画像処理装置のメモリの所定の領域に保存する(ステップ11)。ステップ15では最も高い輝度のピクセルを抽出し(ステップ15)、予め準備されているテーブル若しくは関係式を参照して当該最高輝度に対応する応力を特定する(ステップ17)。次に、所定のルールに従い特定された応力のレベルを特定する(ステップ19)。例えば、応力の小さい方から、安全段階、注意段階、危険段階の3段階に応力をレベル分けすることができる。
特定された応力のレベルに応じ、スピーカ装置179を介してその段階を音声案内することができる。段階が変化したときに当該音声案内をすることが好ましい(ステップ23)。
また、特定されたレベルに応じてランプ装置178を点灯させることができる(ステップ25)。例えば、安全段階では緑色のランプを点灯し、注意段階では黄色のランプを点灯し、危険段階になったとき赤色のランプを点灯する。
このようにアラームを出力することにより、オペレータはカテーテルの挿入作業に集中することができる。
更には、撮像装置で撮影した画像内のピクセルについて一定の法則に基づいて輝度に重み係数を乗じ、画像の所定領域若しくは全領域につき当該輝度を足しあわせることにより得られる計算値を特徴量とすることもできる。
上記の説明では、輝度より応力を求めているが、輝度そのものを演算対象、即ち、輝度の大きさ、その変化率に基づき、何ら応力計算を経ることなく、レベルを決定してアラーム(音声案内やランプ)を動作させることもできる。
上記のような画像処理が可能となったのは、1波長板を介在させることにより、感度が向上して画像処理を精度よく行えるようになったためである。
ステップ31では、立体モデル21の血管部分(膜状モデル部分)に造影剤を流し込んで立体モデル21の画像を撮影する。このとき、偏光板62,63の少なくとも一方を外して、好ましくは、偏光板62,63及び1波長板68を外して、光源61からの光が立体モデル21を透過するものとする。造影剤が導入された立体モデルは血管部分が染色された状態で撮影され、その画像が保存される(ステップ31)。
その後、図13の状態で立体モデル、特に膜状モデルの光弾性効果を撮影装置71で撮影する(ステップ33)。
撮影された光弾性効果を示す画像を、造影剤導入画像を背景として、これに重ねて表示する(ステップ35)。これにより、カテーテル手術におけうロードマップ作成の信頼性を確認することができる。
この実施例では、第2の1/4波長板83と第2の偏光板63との間に2波長板301を存在させている。この2波長板は、前記1/4波長板の光学軸に対して22.5度傾斜している。
かかる構成は、既述の図2の構成と対応している。光源色を白色光としたとき、撮像装置71で撮像される光の色(波長)を図3に示すカラーマップに対照することにより、立体モデルにおいて光弾性効果を生じた部分の応力の大きさとその向きが特定される。
実施例の装置300では、図3のカラーマップがメモリ303に保存されている。また、図3の横軸Reの値から応力を演算する演算式もメモリ303に保存されている。
符号305はマウス等のポインティングディバイスであって、撮像装置71の撮像画像を表示するディスプレイ75において、所望部分をカーソル310で指定することができる(図17参照)。
画像処理装置73はカーソル310で指定された部分の色を認識し、当該色をメモリ303に保存されているカラーマップ(図3参照)に対照させて、応力の方向とその大きさを特定する。なお、図3において特定される遅延Reをメモリ303に保存されている関係式に代入することにより応力を大きさを求めることができる。そして、図17に示すように、ポップアップウインドウ320を開いて、そこにカーソル310で指定した部分の応力の大きさを数値表示し、また方向を矢印で表す。
12 体腔モデル
15、55 シリコーンゴム層(膜状モデル)
21 立体モデル
22 基材
60、80、160、300 カテーテル手術シミュレータ
61 光源
62、63 偏光板
68 1波長板
70 受光部
82、83 1/4波長板
Claims (18)
- 少なくとも体腔を再現した腔所の周囲領域が弾性材料で形成され、カテーテルの挿入が可能な透光性の立体モデルを通過する光に生じる光弾性効果を検出する立体モデルの応力観測装置であって、
偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタと、
該偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される位相シフトフィルタと、を備え、
前記立体モデルへ挿入されたカテーテルを目視可能とした、ことを特徴とするカテーテル手術シミュレータ。 - 前記偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタの内側に、円偏向法観察が実現されるように一対の1/4波長フィルタが配置され、前記位相シフトフィルタは前記偏光フィルタとそれに近い前記1/4波長フィルタとの間か、あるいは前記偏光光源とそれに近い前記1/4波長フィルタとの間に配置されて、当該1/4波長フィルタの光学軸に対して±5度〜±40度傾斜されている、ことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル手術シミュレータ。
- 前記偏光光源は光源と偏光フィルタからなる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のカテーテル手術シミュレータ。
- 前記位相シフトフィルタは1波長板又は2波長板からなる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカテーテル手術シミュレータ。
- 第1の偏光方向の光によりカテーテルを挿入可能な立体モデルの光弾性効果を観察するためのメガネであって、観察者側に偏光フィルタが配置され、その外側に位相シフトフィルタが配置されて、前記立体モデルへ挿入されたカテーテルを観察可能とするメガネ。
- 少なくとも体腔を再現した腔所の周囲領域が弾性材料で形成された透光性の立体モデルへカテーテルを挿入し、
偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタの間に前記立体モデルを配置して、前記カテーテルにより前記周囲領域に生じた応力に対応する光弾性効果を生じさせ、
偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタの間に位相シフトフィルタを介在させることにより、前記光弾性効果とともに前記立体モデルへ挿入されたカテーテルの影を観察可能とする、ことを特徴とする立体モデルの応力観測方法。 - 血管を再現した弾性材料製の膜状モデルの光弾性効果を観察可能とする光弾性観察部であって、偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタと、該偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される位相シフトフィルタと、を備え、前記膜状モデルへ挿入されたカテーテルを目視可能とする光弾性観察部と、
光弾性観察部の光弾性効果を撮像する撮像部と、
該撮像部により撮像された画像を処理して、前記膜状モデルの状態を特定する特徴量を生成する画像処理部と、
該画像処理装置で生成された特徴量を出力する、又は該特徴量に基づきアラームを出力する出力部と、
を備えてなるカテーテル手術シミュレータ。 - 前記特徴量は、応力値であることを特徴とする、請求項7に記載のカテーテル手術シミュレータ。
- 前記特徴量は、画素の輝度、あるいは当該画素の輝度に一定の法則に基づいて重み係数を乗じ、それらをある領域内の画素について足し合わせることにより得られる計算値であることを特徴とする、請求項7に記載のカテーテル手術シミュレータ。
- 前記画像処理装置で特定された特徴量を積算する手段が更に備えられる、ことを特徴とする請求項7〜9に記載のカテーテル手術シミュレータ。
- 血管を再現した弾性材料製の膜状モデルの光弾性効果を観察可能とする光弾性観察部であって、偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタと、該偏光光源と及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される位相シフトフィルタと、を備え、前記膜状モデルへ挿入されたカテーテルを目視可能とする光弾性観察部と、
該光弾性観察部の光弾性効果を撮像する撮像部と、
該撮像部により撮像された画像を処理してアラーム信号を出力する画像処理部と、
該アラーム信号に基づきアラームを出力する出力部と、
を備えてなるカテーテル手術シミュレータ。 - 前記膜状モデルと比較して光弾性効果をほとんど生じさせないゲルからなりかつ前記膜状モデルに対して密着性のある基材で前記膜状モデルが囲繞されている、ことを特徴する請求項7〜11のいずれかに記載のカテーテル手術シミュレータ。
- 前記基材を収納する透光性のケーシングであって、該ケーシングと前記膜状モデルとの間において、前記基材は前記膜状モデルの自由変形を許容するマージンを有するケーシングが更に備えられる、ことを特徴とする請求項12に記載のカテーテル手術シミュレータ。
- 前記膜状モデルはウレタン樹脂若しくはウレタンエラストマーからなり、前記基材はシリコーンゲルからなる、ことを特徴とする請求項12に記載のカテーテル手術シミュレータ。
- 前記膜状モデルへ造影剤を導入した状態の画像を保存する手段が更に備えられ、
前記出力部は前記画像の上に重ねて前記撮像部が撮像した光弾性効果を表示する、ことを特徴とする請求項7に記載のカテーテル手術シミュレータ。 - 少なくとも体腔を再現した腔所の周囲領域が弾性材料で形成され、カテーテルの挿入が可能な透光性の立体モデルを通過する光に生じる光弾性効果を検出する立体モデルの応力観測装置であって、
偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタと、
前記偏光光源及びそれに対応する偏光フィルタの内側に配置される一対の1/4波長フィルタと、
前記偏光フィルタとそれに近い1/4波長フィルタとの間か、あるいは前記偏光光源とそれに近い前記1/4波長フィルタとの間に配置されて、当該1/4波長フィルタの光学軸に対してほぼ22.5度傾斜されている1波長板若しくは2波長板と、を備えることを特徴とするカテーテル手術シミュレータ。 - 前記偏光光源からは緑色系の光が放出される、ことを特徴とする請求項16に記載のカテーテル手術シミュレータ。
- 検出した光弾性効果に基づき応力の方向及び/又は応力の大きさを特定する手段が更に備えられる、ことを特徴とする請求項16又は17に記載のカテーテル手術シミュレータ。
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