JP2007016460A - 木質系炭化物を主原料とする成形建材 - Google Patents

木質系炭化物を主原料とする成形建材 Download PDF

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Abstract

【課題】持続的なホルムアルデヒド吸着能を確保することができ、かつ安価な炭材を原料とする木質系炭化物の成形建材を提供する。
【解決手段】原料の木質系炭化物粉末とバインダーを混合して加圧成形した建材において、1000℃以上の高温炭化処理で製造された木質系炭化物を原料の1/3以上使用する。また、この成形建材中に、吸着されたホルムアルデヒドの酸化を促進するための酸化助剤、とくに酸化チタン及び/又は白金を添加する。

Description

本発明は、木炭、竹炭、もみ殻炭等の木質系炭化物の粉末を加圧成形した建築用資材に関し、特に持続的にホルムアルデヒドを吸着する特性を有するために、内装材として用いるのに好適な成形建材に関するものである。
木質系資源を利用する方法として、例えば炭にする方法が一般に行われている。この炭は、水質浄化用や土壌の改良材或いは家畜などの臭気除去などに用いられる。しかし、かかる用途の炭は、必ずしも付加価値の高い商品とはみなされず、原料の収集や炭化の費用に見合うだけの価格に評価されない場合が多い。
このため、より付加価値の高い炭の利用方法として、炭に消臭、調湿、電磁波遮蔽等の効果があることから、その粉末を成形して建築資材の一部として利用することが試みられている。とくに、炭がシックハウス症候群の原因とされるホルムアルデヒド等の有害物質を吸収することは従来からよく知られており、室内空気清浄化を目的として、炭を建材の一部として利用する方法が種々検討されている。
かかる目的で炭の粉末を成形する場合に、揮発性有機物を発生するバインダーを用いることは好ましくないので、その成形方法についても検討されている。例えば、木炭と石膏の粉末を混合して成形する方法(下記特許文献1など)や、天然繊維を利用して木炭粉末を成形する方法(下記特許文献2など)などが開示されている。
特開平11−293841号公報 特開2001−130962号公報
炭の粉末を成形したボード等を建築資材として利用した場合に、使用開始時(新築時)は有害物質を吸着する性能は高いが、短期間で吸着飽和が起きて、ホルムアルデヒド等の有害物質の除去性能が著しく低下してしまうことが考えられる。通常の吸着剤は、吸着性能が劣化したら交換又は再生することができるが、成形建材として用いた炭は交換や再生をすることができない。
本発明者らは、従来から木質資源の有効利用について種々研究を行なっており、その一環として、炭を建築資材として利用する方法についても検討してきた。
その結果、ホルムアルデヒドが蟻酸に酸化されることを利用して、上述のような吸着飽和の問題を解決し、長期持続的にホルムアルデヒドの吸着性能を維持する可能性があることに着眼して、本発明を完成させるに至った。
また、炭に吸着されたホルムアルデヒドの量が多いほど、蟻酸への酸化量も多く、持続的なホルムアルデヒド吸着能も高くなると予想される。炭への吸着量はその比表面積に比例するから、比表面積の大きい炭の粉末を原料として用いることが望まれる。しかし、活性炭のように非常に比表面積の大きなものは、通常は炭化工程の後に、気孔を増加させる賦活工程を設けて製造されるため、非常に高価になる。建材として使用する炭にかかる高価な活性炭を用いることは適当でない。したがって、賦活処理をすることなく、ある程度以上の比表面積を有する炭の製造条件を明らかにすることも重要である。
そこで本発明は、木質系炭化物の成形建材において、ホルムアルデヒドが蟻酸に酸化される反応を利用して、持続的なホルムアルデヒド吸着能を確保することができ、かつ原料となる木質系炭化物を安価に製造することのできる手段を提供することを課題としている。
上記課題を解決するための本発明は、
木質系炭化物を主体とする粉末原料とバインダーを混合して加圧成形した建築用資材であって、前記木質系炭化物の3分の1以上が、最高温度1000℃以上の高温炭化処理で製造されていることを特徴とする持続的ホルムアルデヒド吸着能を有する成形建材である。
上記の成形建材中には、これに吸着されたホルムアルデヒドの酸化を促進するための酸化助剤が添加されていることが好ましい。この目的で添加される酸化助剤は、酸化チタン及び/又は白金であってもよい。
また、上記の成形建材は、窒素ガス吸着(BET)法で測定された比表面積が、200m2/g以上であることが好ましい。
本発明の成形建材は、その素材である炭の細孔に吸着されたホルムアルデヒドを蟻酸に酸化する特性を有し、これにより炭としてのホルムアルデヒド吸着能を、長期持続的に維持することを可能にしたものである。
この成形建材を室内の壁面や天井等に用いることにより、空気の清浄化や消臭を図ることができる。その効果は、吸収剤の交換や再生をすることなく維持されるため、非常に経済的であり、生活環境の改善や健康維持に資する意義が大きい。また、これにより室内空調機や換気扇の使用頻度を減らすことができ、省エネルギー効果も期待することができる。
本発明者らは、木炭に吸着されたホルムアルデヒドの酸化挙動について、基礎的検討を行なった。すなわち、同じ木材を炭化温度を変えて木炭を製造し、その比表面積を測定するとともに、この木炭をホルムアルデヒド溶液に漬けて飽和状態まで吸着させた後、常温の室内に放置して空気酸化させ、一週間後の蟻酸の生成量を調査した。
その結果、炭化温度1000℃以上で製造した木炭は、蟻酸の生成が認められるのに対して、炭化温度が1000℃未満の木炭では、蟻酸の生成が認められなかった。なお、この蟻酸の生成は、下記の化学反応によるものである。
HCHO + 1/2O2 = HCOOH
この反応で、炭の細孔表面の吸着サイトを占拠しているホルムアルデヒドが蟻酸に変化することにより、吸着サイトが再びフリーな状態になり、炭の吸着性能が維持されるものと考えられる。
また、上記の木炭の比表面積を測定した結果、比表面積は炭化温度と密接な関係があり、炭化温度が高いほど比表面積が大きく、1000℃以上で炭化した木炭は、賦活工程を経なくとも、300cm2/g以上の比表面積を有することが知れた。
このように、炭化温度によって、吸着したホルムアルデヒドの酸化挙動に差が生じる理由は、未だ十分解明されてはいない。一つの推論として、木炭中に含まれる微量の金属元素等が、酸化反応を促進する助剤として作用する可能性が考えられる。この場合、炭化温度が高いほど炭素の減量割合が大きく、その分微量元素の残存割合が大きくなること、及びかかる微量元素が高温で変化して、酸化助剤として作用し易い形態になっていることなどが理由でないかと考えられる。また、炭化温度が1000℃未満の木炭は、ホルムアルデヒドの吸着量自体が少ないため、これに対応して蟻酸の生成もほとんど検出されないという可能性も考えられる。さらに、炭は高温になると収縮が始まり、ミクロな気孔の生成も起こる。これがホルムアルデヒドの気体の吸着を促進し、その結果蟻酸の生成が顕著に増加する可能性も考えられる。
本発明は、上記の知見に基づき、「炭化温度(最高温度)1000℃以上の炭の粉末を加圧成形して、持続的なホルムアルデヒド吸着能を有する建材を得る」ことを骨子とする。粉末原料の全てが炭化温度1000℃以上の炭であってもよいが、1/3以上が炭化温度1000℃以上の炭であれば、ある程度の持続的なホルムアルデヒド吸着能が確保される。しかし、これが原料粉末の1/3未満では、実用上必要なホルムアルデヒド吸着能を確保することが難しいため、好ましくない。
また、ホルムアルデヒドの蟻酸への酸化反応を促進させるために、粉末原料中に酸化助剤を少量添加することも有用である。本発明者らの知見によれば、かかる酸化助剤として、酸化チタン粉末や白金コロイド又は白金コロイドを担持した酸化チタン粉末等が有効である。これらの酸化助剤は5%以下で充分である。
また、本発明者らの知見によれば、炭の原料は、木材、竹材、樹皮、籾殻、わらその他植物性の繊維質のいずれであっても、ほぼ同様な特性の炭を得ることができる。成形建材の原料とする炭の粉末は、セルロースとリグニンを主成分とする天然繊維質の1種又は2種以上を主な原料として炭化した炭(本発明では、これを「木質系炭化物」という)であればよい。さらに、成形建材の原料は、上記の木質系炭化物を主体とするものであればよく、その一部(例えばバインダーを除く原料粉末の30%以下程度)が、炭以外の他の原料であってもよい。
一般に、上記のような木質系炭化物を成形体にするには、バインダーが必要である。本発明の成形建材に用いるバインダーは、その使用目的から、揮発性有機物を発生するもの(例えばフェノール樹脂等)を用いることは好ましくない。また、熱可塑性樹脂等で、炭の通気性を損なうようなものも好ましくない。しかし、それ以外はとくに限定をする必要はなく、どのようなバインダーを用いてもよい。例えば、後記実施例で用いた海藻類(アルギン酸)や澱粉、パルプ等を用いることができる。あるいは、特許文献1のように石膏と木炭の混合物を原料としてもよく、特許文献2のように天然繊維をバインダーとしてもよい。
本発明の成形建材は、成形体の形状をとくに限定する必要はない。板(ボード)状でも、棒状でもよい。また、他の板材と張り合わせた複合板や、サンドイッチ板でも、炭への通気性が確保されていればよい。
成形の方法は、通常は熱間で加圧成形するが、十分な強度の成形体が得られる方法であれば、とくに限定を要しない。
本発明の成形建材は、持続的ホルムアルデヒド吸着能を確保するために、一定の物性を有することが好ましい。とくに、窒素ガス吸着(BET)法で測定した比表面積が、200m2/g以上であることが好ましい。比表面積がこれ未満では、ホルムアルデヒドの吸着量自体が過少で、それに伴って蟻酸への酸化量も少なく、飽和吸着後の定常的なホルムアルデヒド吸着量のレベルも低くなるためである。
本発明の成形建材を、下記の条件で製造し、持続的ホルムアルデヒド吸着能を評価した。原料木質系炭化物は、木材チップを炭化したもので、1000℃以上の高温で炭化した高温炭を50%と700℃以下の中温炭を50%配合し、6mm以下に粒度調整したものを原料とした。バインダーとしては、海藻類を模擬して、(アルギン酸約1重量%)+(澱粉約5重量%)+(パルプ約2重量%)の混合バインダーを用いた。
この原料を混合機で混合した後、ホットプレス成形機で1000×1000×15mmのボード状に成形した。そののち乾燥機で50〜80℃の温度で乾燥した。このようにして製造したボードは、光沢のある黒色を呈し、石膏ボード以上の強度を有していた。
このボードのホルムアルデヒド吸着能力を測定した結果、空間容積1m3の容器内に表面積0.4m2の上記のボードを置いたとして、容器内空気のホルムアルデヒドが、初濃度2ppmから24時間で0.025ppmまで低下する吸着能を有していた。この量は、建材使用の指針値から計算されるホルムアルデヒドの年間許容発生量(指針発生量)の20倍に相当する値である。吸着されたホルムアルデヒドが、1年間で蟻酸に酸化される割合は、数十%を超えると予想されるので、本発明のボードを空間1m3当たり0.4m2使用すれば、上記指針発生量の数倍〜十数倍の持続的ホルムアルデヒド吸着能力を確保し得るものと予想される。したがって、本発明の成形建材を、天井内張や壁等の内装材の一部に使用することにより、長期持続的な消臭及び空気清浄化の効果を期待することができる。

Claims (4)

  1. 木質系炭化物を主体とする粉末原料とバインダーを混合して加圧成形した建築用資材であって、前記木質系炭化物の1/3以上が、最高温度1000℃以上の高温炭化処理で製造されていることを特徴とする持続的ホルムアルデヒド吸着能を有する成形建材。
  2. 前記成形建材中に、これに吸着されたホルムアルデヒドの酸化を促進するための酸化助剤が添加されていることを特徴とする請求項1記載の成形建材。
  3. 前記酸化助剤が酸化チタン及び/又は白金である請求項2記載の成形建材。
  4. 前記成形建材の窒素ガス吸着(BET)法で測定された比表面積が、200m2/g以上である請求項1乃至3のいずれかに記載の成形建材。
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Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2003088572A (ja) * 2001-05-29 2003-03-25 Fujita Corp 脱臭材料および脱臭方法
JP2003230831A (ja) * 2001-10-17 2003-08-19 Shotaro Moriwaki 吸着材および除去法

Patent Citations (2)

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