JP2006225231A - キチン質物質を原料とする活性炭及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明はキチン質物質を原料とする比表面積が高い活性炭及びそれを効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、キチン質物質にアルカリ金属化合物を含浸させた後、炭化することを特徴とする活性炭の製造方法に関する。本発明はまた、比表面積が1000m2/g以上である、キチン質物質の炭化物を主成分とする活性炭に関する。
【選択図】 なし
【解決手段】 本発明は、キチン質物質にアルカリ金属化合物を含浸させた後、炭化することを特徴とする活性炭の製造方法に関する。本発明はまた、比表面積が1000m2/g以上である、キチン質物質の炭化物を主成分とする活性炭に関する。
【選択図】 なし
Description
本発明は高比表面積を有する活性炭及びその製造方法に関する。
キチンは、カニやエビ等の甲殻類の骨格を形成している構成成分であり、セルロースに類似した構造の窒素を含む多糖類である。このものは、廃棄物となったカニやエビの甲殻から回収されている。一方、キトサンは、キチンを濃アルカリ水溶液中で加熱し、脱アセチル化することによって得られる塩基性多糖類である。キチン、キトサン等はキチン質物質と呼ばれ、健康食品成分として利用される他、凝集剤やクロマトグラフィー用充填剤等として利用されているが、その量は僅かであり大部分は不要物として廃棄処理されているのが現状である。また、キチン質物質の廃棄処理は運搬、廃棄場所など種々の規制があり、それに要するコストも高くつく。そのためキチン質物質の有効利用に関する研究が望まれている。
一方、吸着剤として用いる活性炭を得るために、木材等のセルロース質物質を炭化することは広く行われているが、キチン、キトサン等のキチン質物質を炭化して活性炭を得ることはほとんど行われていない。特許文献1にはキチン質物質を原料として活性炭を製造する方法が記載されているが、この方法で得られる活性炭は比表面積が低いこと、炭化反応と賦活反応の2段階の製造工程が必要であること等の欠点を有している。特許文献2には炭化反応と賦活反応とを同時に行う活性炭の製造方法が記載されているが、この方法は出発原料としておからを使用しているという点で本明細書で開示する本発明とは全く異なる。
本発明はキチン質物質を原料とする比表面積が高い活性炭及びそれを効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究を重ね、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)キチン質物質にアルカリ金属化合物を含浸させた後、炭化することを特徴とする活性炭の製造方法。
(2)アルカリ金属化合物が炭酸カリウムである(1)に記載の方法。
(3)比表面積が1000m2/g以上である、キチン質物質の炭化物を主成分とする活性炭。
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)キチン質物質にアルカリ金属化合物を含浸させた後、炭化することを特徴とする活性炭の製造方法。
(2)アルカリ金属化合物が炭酸カリウムである(1)に記載の方法。
(3)比表面積が1000m2/g以上である、キチン質物質の炭化物を主成分とする活性炭。
本発明によれば、炭化と賦活とを一段階で行うことができるため、比表面積が高い活性炭を効率的に製造することができる。
本発明により製造される活性炭は比表面積が高い。
本発明により製造される活性炭は比表面積が高い。
現在廃棄処分されることが多いカニやエビ等の甲殻類の殻に含まれるキチン質を原料として用いるために、本発明はバイオマス廃棄物の有効利用に寄与できる。また本発明により、比表面積が高い活性炭を低コストで製造することができる。
本発明において出発原料として用いるキチン質物質には、キチン(chitin)及びキチンの化学変性物が包含される。キチン(chitin)は、アセチル化アミノ糖から成る多糖類の一種であり、甲殻類などにおける主要な構造多糖類である。キチンの化学変性物としては、例えば、キチンの脱アセチル化物であるキトサン(chitosan)等がある。
これらのキチン質物質は、カニやエビの甲殻から回収されたものや、カニやエビの甲殻から回収されたものを化学処理して得られたものを利用し得る他、カニやエビの甲殻自体を原料とすることができる。甲殻自体を原料とする場合には、それをそのまま又は破砕して出発原料とすればよい。カニやエビの種類や食品製造工程の違いによって得られるキチン質物質に多少の違いが生じるが、いずれも本発明の出発原料として使用できる。
本発明で用いるキチン質物質からなる原料は、粉末状、ペレット状、細片状、粗大粒子状、繊維状、織布状等の種々の形状をとることができる。繊維状の原料は、キチン質物質を、いったん溶液状にし、これをノズルから繊維状で吐出させて固化することによって得ることができる。織布状原料は、維状原料を布状に繊成することによって得ることができる。
本発明で用いるアルカリ金属化合物としては典型的にはカリウム化合物(例えば炭酸カリウム、水酸化カリウム、リン酸カリウム)、ナトリウム化合物(例えば炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウムカリウム)、リチウム化合物(例えば炭酸リチウム、水酸化リチウム)、ルビジウム化合物(例えば炭酸ルビジウム、水酸化ルビジウム)、及びセシウム化合物(例えば炭酸セシウム、水酸化セシウム)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、なかでも炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ルビジウム化合物及びセシウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、炭酸カリウムが最も好ましい。これらのアルカリ金属化合物は賦活剤として機能していると考えられる。
キチン質物質にアルカリ金属化合物を含浸させる方法としては例えばキチン質物質とアルカリ金属化合物の溶液とを十分に混合する方法が挙げられる。キチン質物質は含浸前に十分に乾燥されることが好ましい。典型的には、110℃で24時間乾燥させたキチン質物質の乾燥粉末にアルカリ金属化合物の水溶液を加えて十分に練り合わせることにより含浸を行うことができる。
アルカリ金属化合物の含浸率は(含浸したアルカリ金属化合物の重量)/(乾燥キチン質物質の重量)で定義される。含浸率は他の反応条件等を考慮して適宜選択することが可能であり、典型的には0.5〜5.0である。本発明によれば、含浸するアルカリ金属化合物の量を従来の炭化物製造方法と比較して大幅に低減することができる。また本発明では、使用したアルカリ金属化合物の回収が容易である。従って、本発明の方法はコスト低減及び装置の腐食防止という面からも従来の炭化物製造方法と比較して優れている。
上記の含浸処理を施した後、キチン質物質を炭化処理する。本発明の方法では驚くべきことに、炭化処理と賦活処理とが同時に進行する(従って本明細書では「炭化」と「炭化・賦活」とは同義で用いられる場合がある)。炭化処理は、含浸後のキチン質物質を、酸素濃度が実質的にゼロ%の不活性ガス雰囲気中で高温、例えば500〜1000℃、好ましくは600〜900℃の温度で焼成することによって行うことができる。不活性ガスとしては、窒素ガスが一般的に用いられる。焼成の時間は、キチン質物質の炭化に必要な時間を諸条件に応じて適宜選択することができ特に限定されないが、例えば所定の炭化・賦活温度に60分間保持することにより行うことができる。典型的には、焼成後、得られた炭化物を熱水により洗浄し、高温(例えば110℃)で乾燥して活性炭を得る。
本発明によれば、アルカリ金属化合物を含浸して炭化・賦活することにより従来の活性炭の比表面積よりはるかに大きな比表面積を有する活性炭を製造することができる。比表面積は、活性炭の吸着温度77.4Kにおける窒素の吸着等温線を定容系吸着量測定装置(SORPTOMATIC−1990,ファイソンズ)を用いて測定し、得られた吸着平衡関係からBET法により活性炭の比表面積を計算することにより求められる。
なお、本発明により得られる活性炭が粉末状である場合には、圧縮による成形、キチン、キトサン、デンプン、糖蜜、高分子樹脂など各種の粘結剤を添加しての造粒、あるいはゾル−ゲル法によるセラミックスとの複合化などにより、高い強度を有する成形体とすることができる。
本発明の方法では活性炭の細孔分布を炭化・賦活温度を調整することにより制御することができるので、本発明の方法により吸着剤の最適細孔構造の設計が可能になり、環境保全、資源回収等の分野で好適に応用できる。
本発明により得られるキチン質物質の炭化物を主成分とする活性炭の比表面積は好ましくは1000m2/g以上、より好ましくは1500m2/g以上、最も好ましくは2000m2/g以上である。比表面積の上限は特に限定されないが典型的には2300m2/g以下である。このように、本発明の方法により得られる活性炭は高比表面積を有しているので二次電池のキャパシター等のエネルギー分野で利用できる。
以下に本発明の好適な実施例を示すが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
キチン粉末(株式会社キミカ製キチン)を110℃で24時間乾燥させた。この乾燥キチン粉末18gに対して炭酸カリウム85g(含浸率4.7)を蒸留水を用いて練り合わせた。
これを電気炉で、窒素ガスを流しながら200℃/時間の昇温速度で、500℃〜900℃の炭化・賦活温度まで昇温し、その温度で60分間保持した。こうして得られた炭化物を熱水により洗浄した後、110℃で乾燥して活性炭を得た。
比表面積に及ぼす炭化・賦活温度の影響を調べるために、得られた活性炭の吸着温度77.4Kにおける窒素の吸着等温線を定容系吸着量測定装置(SORPTOMATIC−1990,ファイソンズ)を用いて測定した(図1)。図1においてAdsは「吸着」を指し、Desは「脱着」を指し、P0はBET理論の飽和蒸気圧を指し、横軸のP/P0は相対圧を指す(後述する図5についても同様)。得られた吸着平衡関係からBET法により活性炭の比表面積を計算した(図2)。また、活性炭の細孔分布を計算した(図3)。図4には、メソポア(径20〜500オングストローム)とミクロポア(径5〜20オングストローム)の比に対する、炭化・賦活温度の影響を示す。
また図1では比較のためにヤシ殻活性炭(水蒸気賦活法による製造法で作られたナカライテスク株式会社から購入したもの)についての窒素の吸着等温線を併せて示す。
図1〜3に示される通り、本発明の方法により得られる活性炭は既存の活性炭と比較し吸着容量が大きく、比表面積が高い。
また図4に示される通り、本発明の方法では活性炭の細孔分布(メソポア:ミクロポア比)を炭化・賦活温度を調整することにより制御することができる。
キチン粉末(株式会社キミカ製キチン)を110℃で24時間乾燥させた。この乾燥キチン粉末15gに対して、炭酸カリウムをそれぞれ7.5g〜60g(含浸率0.5〜4.0)を蒸留水を用いて練り合わせた。
これを電気炉で、窒素ガスを流しながら200℃/時間の昇温速度で、700℃の炭化・賦活温度まで昇温し、700℃で60分間保持した。こうして得られた炭化物を熱水により洗浄した後、110℃で乾燥して活性炭を得た。
比表面積に及ぼす賦活剤の含浸率の影響を調べるために、実施例1と同様の方法で活性炭の比表面積を求めた(図5)。含浸率4の試料については2回測定した。図5において「IR」は「含浸率(impregnation ratio)」を意味する。
図6に比表面積と含浸率との関係を示す。図6の結果より、乾燥キチン粉末に対する炭酸カリウムの含浸率が0.5程度の小さい値の場合でも高比表面積の活性炭が得られるとともに、含浸率を1.0以上に高めても比表面積が増加する傾向は見られないことが示される。このことから高比表面積の活性炭を得るには含浸率が0.5〜1.0程度であることが望ましいといえる。すなわち本発明の活性炭の製造方法では、石油コ−クス、石炭ピッチ、ヤシ殻などにアルカリ金属化合物を含浸して高比表面積活性炭を得る従来の方法と比較して、含浸する賦活剤の量を大幅に減少できる。
実施例1で製造されたキチン粉末炭化物について染料であるメチレンブルーの脱色効果を検討した。比較のためにヤシ殻活性炭(水蒸気賦活法による製造法で作られたナカライテスク株式会社から購入したもの)についても同様の検討を行った。
吸着温度77.4Kにおけるメチレンブルーの吸着等温線を定容系吸着量測定装置(SORPTOMATIC−1990,ファイソンズ)を用いて測定した。結果を図7に示す。図7の横軸Ce[ppm]は吸着後に水溶液中に残っているメチレンブルーの濃度(ppm)を指す。600℃以上の炭化・賦活温度で調製された本発明の炭化物は市販のヤシ殻活性炭よりも優れたメチレンブルー脱色作用を有していた。
Claims (3)
- キチン質物質にアルカリ金属化合物を含浸させた後、炭化することを特徴とする活性炭の製造方法。
- アルカリ金属化合物が炭酸カリウムである請求項1に記載の方法。
- 比表面積が1000m2/g以上である、キチン質物質の炭化物を主成分とする活性炭。
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JP2005044281A JP2006225231A (ja) | 2005-02-21 | 2005-02-21 | キチン質物質を原料とする活性炭及びその製造方法 |
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2005
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