以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
まず、複数の移動式ノズルを備えた薬液塗布装置について図1、図2を用いて説明する。図1は、本発明の薬液塗布装置の側面図であり、図2は、上面図である。吸着ステージ101(回転支持台、ターンテーブルとも呼ぶ)には基板102がセットされている。そして、ガイドレール106(図2では記載を省略している)に複数の移動式のノズル103(a)〜(d)が固定されている。各ノズル103(a)〜(d)は、x軸、y軸、z軸方向に可変であり、配管104(a)〜(d)を通って薬液圧送部(タンク)105(a)〜(d)と接続されている。複数のノズル103とタンク105の間には、これらを制御する薬液吐出制御機構(吐出制御手段又は制御部ともいう)109(a)〜(d)が接続されている。そして、薬液吐出制御機構109(a)〜(d)から信号を受信した各タンク105(a)〜(d)は、この信号により各タンク105(a)〜(d)の薬液圧送を調整して、各ノズル103(a)〜(d)より所定量の薬液を吐出する。この薬液吐出制御機構109(a)〜(d)により、基板の位置や形状によって吐出量や吐出速度を変えることができる。また、カップ107及びカップの蓋108は、基板102が回転している最中に薬液が外に飛び散らないようにするためと、カップ107内の気流を制御し、霧状になった薬液の基板102への再付着を防止するために設置されている(図1)。
なお、タンク105(a)〜(d)は各ノズル103(a)〜(d)と薬液吐出制御機構109(a)〜(d)の間に設けてもよい。また、各タンク105(a)〜(d)自体に薬液圧送を調整する機構が設けてあれば、薬液吐出制御機構109(a)〜(d)はなくてもよい。
なお、タンク105(a)〜(d)及び薬液吐出制御機構109(a)〜(d)は各ノズル103(a)〜(d)ごとに設けなくてもよく、図2(B)に示すように一つの薬液吐出制御機構209とタンク205を設けてもよい。
なお、ステージには、ステージを水平方向及び垂直方向に移動する駆動機構が設けられていてもよい。また、ステージの代わりの基板保持方法として、メカチャック方式を採用したスピンチャックを用いてもよい。なお、図面において、ステージ101より基板102の方が大きく図示されているが、ステージ101の方が大きくてもよい。
なお、基板102と移動式ノズル103の間隔は、基板を上下させて調整することもできる。
なお、複数の移動式ノズル103の移動は自動でも手動でもよい。自動の場合、複数のノズルを個々に移動可能な駆動機構を設けることによって自由に移動させることができる。手動の場合の薬液塗布装置の斜視図を図3に示す。ターンテーブル301に固定された基板(塗布対象物)302上方には、碁盤目状にガイドレール306が配置されている。ガイドレール306下には、複数のノズル303が冶具で固定されている。各ノズル303を矢印で示す方向に手動で移動させて、固定する位置を変更して吐出させることができる。このとき、碁盤目を細かくすることでノズルの配置の自由度が増す。
なお、複数の移動式ノズルは、全てを同時に用いなくてもよい。基板の大きさや薬液の量、粘度に応じてその都度必要な箇所のノズルだけ稼働させ吐出させることができる。そして、残りのノズルに接続されているタンクには次の塗布膜に用いる薬液を入れておき、連続して塗布膜を形成することもできる。その結果、スループットの向上を図ることができる。
なお、図1、図2では、ノズルは4つしか記載されていないが、もちろんこの数に限定されないのはいうまでもない。ノズル数は2個以上であればいくつでもよい。基板の大きさ、塗布する薬液の粘度などによって数を決定するとよい。例えば、図3に示すようにノズル数は行数と列数の乗算で求められる数(n×m(n、m>0))であってもよい。また、その乗算で求められる数でなくてもよく、図17に示す薬液塗布装置のように、ノズルは5つでもよい。
本発明では、基板や薬液を変更する度に、その基板の大きさ、薬液の粘度、薬液の乾燥のしやすさに応じて、ノズルの配置を変更することができる。例えば、長方形の大型基板であれば、四隅にもノズルを移動、配置させる。例えば、乾燥しやすい薬液であれば、基板全体に均等にノズルを移動、配置する。このように複数のノズルが各々自在に移動可能であるため、基板の大きさや薬液の粘度などによって、ノズルの配置を微調整することで、基板全体に均一な塗布膜の形成が可能となる。
(実施の形態2)
本実施の形態について、図7〜図15を用いて説明する。より詳しくは、本発明を適用した表示装置(ここでは液晶表示装置をいう)の作製方法について説明する。まず、本発明を適用した、チャネルエッチ型の薄膜トランジスタを有する表示装置の作製方法について説明する。図7〜図9、図11〜図13(A)は表示装置画素部の上面図であり、図7〜図9、図11〜図13(B)は、図7〜図9、図11〜図13(A)における線G―Hによる断面図である。
基板700の上に、下地前処理として下地膜701を形成する。基板700は、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス等からなるガラス基板、石英基板、シリコン基板、金属基板、ステンレス基板又は本作製工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板を用いる。また、基板700の表面が平坦化されるようにCMP(Chemical Mechanical Polishing)法などによって、研磨しても良い。なお、基板700上に、絶縁層を形成してもよい。絶縁層には珪素を含む酸化物材料、窒化物材料を少なくとも一つ用いて、単層又は積層して形成される。この絶縁層は、形成しなくても良いが、基板700からの汚染物質などを遮断する効果がある。この絶縁層を本発明の薬液塗布装置を用いて形成することができる。絶縁膜の材料の粘度に合わせた最適な吐出パターンとすることにより、膜厚が均一な絶縁層を形成することができる。ガラス基板からの汚染を防ぐための下地層を形成する場合は、その上に液滴吐出法によって形成するゲート電極層703の下地前処理として下地膜701を形成する。なお、液滴吐出法とは、導電膜や絶縁膜等の材料を含んだ組成物の液滴(ドットともいう)を選択的に吐出(噴射)して下地膜701やゲート電極層703などを任意の場所に形成する方法を示す。その方式によっては液滴吐出法はインクジェット装置の吐出のことを指すこともある。
本実施の形態では、下地膜701としてぬれ性が低い物質を形成する(図7参照)。この下地膜701も本発明の薬液塗布装置を用いて形成することができる。下地膜の材料の粘度に合わせて最適な吐出パターンとすることにより、膜厚が均一な下地膜を得ることができる。
次に、ゲート電極層が形成される領域にレーザ装置によりレーザ光771aを照射し、下地膜を改質処理する(図8参照)。この改質処理により、下地膜702a、702bは、上に積層されるゲート電極層を形成する導電性材料を含む組成物に対してよりぬれ性が高い領域となる。よって、下地膜702a、702bと、その周囲の下地膜とでは、導電性材料を含む組成物に対してぬれ性の程度に差が生じる。
ここでぬれ性について説明する。ぬれ性が高いとは、親液性が高い(撥液性が低い)ことであり、ぬれ性が高い領域の表面に流動性を有する液状の組成物を形成した場合、その組成物の接触角が小さくなる。接触角が小さいと、表面上流動性を有する液状の組成物は広がり、よく表面をぬらすことになる。反対に、ぬれ性が低いとは、撥液性が高い(親液性が低い)ことであり、ぬれ性が低い領域の表面に流動性を有する液状の組成物を形成した場合、その組成物の接触角は大きくなる。接触角が大きいと、流動性を有する液状の組成物は、領域表面上で広がらず、組成物をはじくので、表面をぬらさない。ぬれ性が異なる領域は、表面エネルギーが異なる。ぬれ性が高い領域表面における表面エネルギーは大きく、ぬれ性の低い領域における表面の、表面エネルギーは小さい。ぬれ性が高い領域上に形成された流動性を有する液状の組成物の接触角は、30度以下であると好ましく、ぬれ性が低い領域上に形成された流動性を有する液状の組成物の接触角は、90度以上であると好ましい。
レーザ光により改質処理された下地膜702a、702bの領域に、導電性材料を含む組成物の液滴を、液滴吐出装置780aによって吐出し、ゲート電極層703、容量配線層704を形成する(図9参照)。吐出された液滴は、下地膜701上において、周囲の下地膜よりぬれ性が高い下地膜702a、702bの領域に形成される。液滴が吐出されるノズルの吐出口の大きさが、形成したい導電層の所望の大きさより大きい場合であっても、ぬれ性を高める処理をその被形成領域に施すことによって、液滴は、被形成領域のみに付着し、細線化された導電層が形成される。被形成領域とその周囲の領域とで、ぬれ性の程度に差を生じさせているので、液滴は周囲の領域でははじかれ、よりぬれ性の高い形成領域に留まるからである。
レーザ光を被処理物に照射して改質を行うことにより、ゲート電極層703など、微細なパターンを形成したい場合、液滴の吐出口が多少大きくても、液滴が形成領域上で広がらず、細線化できる。また液滴の液量を制御することによって、その導電層の膜厚制御も可能になる。レーザ光照射により膜の改質を行うと、レーザ光は微細な加工ができるため、微細な配線や、電極などを制御性よく形成することができる。
なお、下地前処理として形成する下地膜701を、本発明の薬液塗布装置を用いて形成する場合、溶媒を除去する必要があるときは焼成したり、乾燥すればよい。
下地膜701は0.01〜10nmの厚さで形成すれば良いが、極薄く形成すれば良いので、必ずしも層構造を持っていなくても良い。下地膜として、金属材料や、3d遷移金属元素を用いて、下地膜が導電性を有している場合、導電層形成領域以外の下地膜においては、下記の2つの方法を行うことが望ましい。
第1の方法としては、ゲート電極層703と重ならない下地膜701(つまり周囲のよりぬれ性の低い領域)を絶縁化して、絶縁層を形成する。つまり、ゲート電極層703と重ならない下地膜701を酸化して絶縁化する。このように、ゲート電極層703と重ならない下地膜701を酸化して絶縁化する場合には、下地膜701を0.01〜10nmの厚さで形成しておくことが好適であり、そうすると容易に酸化させることができる。なお、酸化する方法としては、ゲート電極層703と重ならない下地膜701を酸素雰囲気下に晒す方法を用いてもよいし、熱処理を行う方法を用いてもよい。
第2の方法としては、ゲート電極層703の形成領域(導電性材料を含む組成物の吐出領域)に選択的に絶縁層を形成する。ゲート電極層703と重ならない下地膜701は、液滴吐出法などを用いて、基板上に選択的に形成してもよいし、全面に本発明の塗布方法によって形成した後、ゲート電極層703をマスクとして選択的に下地膜701をエッチングして除去してもよい。この工程を用いる場合には下地膜701の厚さに制約はない。
また、他の方法として、液滴吐出法によるパターンとその形成領域との密着性を上げるために、接着材として機能するような有機材料系の物質を形成してもよい。有機材料(有機樹脂材料)(ポリイミド、アクリル)やシリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成され、置換基に少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基としてフルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基を用いてもよい。
ゲート電極層703、容量配線層704の形成は、液滴吐出手段を用いて行う。液滴吐出手段とは、組成物の吐出口を有するノズルや、1つ又は複数のノズルを具備したヘッド等の液滴を吐出する手段の総称とする。
液滴吐出法を用いて形成する導電層の下地前処理として、前述した下地膜701を形成する工程を行ったが、この処理工程は、ゲート電極層703、容量配線層704を形成した後にも行なっても良い。
また、液滴吐出法により、ゲート電極層703、容量配線層704を組成物を吐出し形成した後、その平坦性を高めるために表面を圧力によってプレスして平坦化してもよい。プレスの方法としては、ローラー状のものを表面に走査することによって、凹凸をならすように軽減したり、平坦な板状な物で表面を垂直にプレスしてもよい。プレスする時に、加熱工程を行っても良い。また溶剤等によって表面を軟化、または融解させエアナイフで表面の凹凸部を除去しても良い。また、CMP法を用いて研磨しても良い。この工程は、液滴吐出法によって凹凸が生じる場合に、その表面を平坦化する場合適用することができる。その結果、ゲート電極層として線幅が5μm以下となるような配線が形成される。
次に、ゲート電極層703、容量配線層704の上にゲート絶縁層705を形成する(図10(A))。ゲート絶縁層705としては、珪素の酸化物材料又は窒化物材料等の公知の材料で形成すればよく、積層でも単層でもよい。本実施の形態では、窒化珪素膜、酸化珪素膜、窒化珪素膜の3層の積層を用いる。またそれらや、酸化窒化珪素膜の単層、2層からなる積層でも良い。好適には、緻密な膜質を有する窒化珪素膜を用いるとよい。また、液滴吐出法で形成される導電層に銀や銅などを用いる場合、その上にバリア膜として窒化珪素膜やNiB膜を形成すると、不純物の拡散を防ぎ、表面を平坦化する効果がある。なお、低い成膜温度でゲートリーク電流が少ない緻密な絶縁膜を形成するには、アルゴンなどの希ガス元素を反応ガスに含ませ、形成される絶縁膜中に混入させると良い。
次に半導体層を形成する。一導電性型を有する半導体層は必要に応じて形成すればよい。本実施の形態では、半導体層706と一導電型を有する半導体層としてN型半導体層707を積層する(図10(B))。なお、N型半導体層707の代わりにP型半導体層を形成したPチャネル型TFTを形成することもできる。また、Nチャネル型TFTとPチャネル型TFTとで形成されたCMOS構造を作製することもできる。また、導電性を付与するために、導電性を付与する元素をドーピングによって添加し、不純物領域を半導体層に形成することで、Nチャネル型TFT、Pチャネル型TFTを形成することもできる。
本実施の形態では、半導体として、非晶質半導体を用いる。半導体層を形成し、その後、プラズマCVD法等により一導電型を有する半導体層としてN型半導体層を形成する。
続いて、ネガ型のレジスト740を本発明の薬液塗布装置を用いてN型の半導体層707上に塗布する(図10(C))。感光剤を含む市販のレジスト材料として、ネガ型レジストである、ベース樹脂、ジフェニルシランジオール及び酸発生剤などを用いることができる。ネガ型レジストの代わりにポジ型のレジスト材料を用いてもよく例えば、代表的なポジ型レジストである、ノボラック樹脂と感光剤であるナフトキノンジアジド化合物を用いることもできる。また、レジストの代わりのマスクとして、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂材料を用いる。また、ベンゾシクロブテン、パリレン、フッ化アリレンエーテル、透過性を有するポリイミドなどの有機材料、シロキサン系ポリマー等の重合によってできた化合物材料、水溶性ホモポリマーと水溶性共重合体を含む組成物材料等を用いてもよい。いずれの材料を用いるとしても、その表面張力と粘度は、溶媒の濃度を調整したり、界面活性剤等を加えたりして適宜調整する。
続いて、レジストを残したい部分に光を照射する(図10(D))。その後、現像処理により、感光していない部分のレジストを除去してマスク741を形成する。そして、マスク741を用いて半導体層及びN型半導体層を同時にパターン加工し、半導体層706、N型半導体層707を形成する(図10(E))。なお、マスクは組成物を選択的に吐出して形成することもできる。以上のようにして、半導体層706とN型半導体層707を形成する(図11参照)。
また、本実施の形態で、ゲート電極層703、容量配線層704を液滴吐出法によって形成する際、前処理として、下地膜を形成し、レーザ光照射で改質処理をしたように、選択的にパターンを形成することもできる。液滴吐出法により液滴を吐出してパターンを形成する際、パターンの被形成領域にレーザ光照射処理によって、改質処理を行うことができる。この改質処理を被形成領域にのみ行うことによって、被形成領域とその周囲の領域では、ぬれ性に差が生じ、ぬれ性が高い被形成領域のみ液滴が留まり、制御性よくパターンを形成することができる。
導電性材料を含む組成物を吐出して、ソース電極層又はドレイン電極層730、708を形成し、該ソース電極層又はドレイン電極層730、708をマスクとして用いて、半導体層706及びN型半導体層707をパターン加工して、半導体層706を露出させる(図12参照)。ソース電極層又はドレイン電極層730、708も、前述したゲート電極層703を形成したときと同様に形成することができる。ソース電極層又はドレイン電極層730は配線層としても機能する。
ソース電極層又はドレイン電極層730、708を形成する導電性材料としては、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)、W(タングステン)、Al(アルミニウム)等の金属の粒子を主成分とした組成物を用いることができる。また、透光性を有するインジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、有機インジウム、有機スズ、酸化亜鉛、窒化チタンなどを組み合わせても良い。
また、液滴吐出法を用いて形成する導電層の下地前処理として、前述した下地膜を形成する工程を行い、かつ、この処理工程は、導電層を形成した後にも行っても良い。この工程により、層間の密着性が向上するため、表示装置の信頼性も向上することができる。
続いて、ソース電極層又はドレイン電極層708と接するように、ゲート絶縁層705上に選択的に、導電性材料を含む組成物を吐出して、画素電極層711を形成する(図13参照)。画素電極層711は、透過型の液晶表示パネルを作製する場合には、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)などを含む組成物により所定のパターンを形成し、焼成によって形成しても良い。
画素電極層711は、ソース電極層又はドレイン電極層708の形成前に、ゲート絶縁層705上に選択的に形成することもできる。この場合、本実施の形態ではソース電極層又はドレイン電極層708と、画素電極層711の接続構造が、画素電極層の上にソース電極層又はドレイン電極層708が積層する構造となる。画素電極層711をソース電極層又はドレイン電極層708より先に形成すると、平坦な形成領域に形成できるので、被覆性がよく、CMPなどの研磨処理も十分に行えるので画素電極層711は平坦性よく形成できる。
また、図14で示すように、ソース電極層又はドレイン電極層708上に層間絶縁層となる絶縁物750を形成し、配線層752を介して、画素電極層711と電気的に接続する構造を用いてもよい。この場合、開口部(コンタクトホール)を絶縁物750を除去して形成するのではなく、絶縁物750に対してぬれ性が低い物質751をソース電極層又はドレイン電極層708上に形成する。その後、絶縁物750を含む組成物を塗布法などで塗布すると、ぬれ性が低い物質751の形成されている領域を除いた領域に絶縁物750は形成される(図14(A)参照)。
加熱、乾燥等によって絶縁物750を固化して形成した後、ぬれ性が低い物質751を除去し、開口部を形成する。この開口部を埋めるように配線層752を形成し、この配線層752に接するように画素電極層711を形成する(図14(B)参照)。この方法を用いると、エッチングによる開口部の形成が必要ないので工程が簡略化する効果がある。
また、図14のようにソース電極層及びドレイン電極層708上に層間絶縁層となる絶縁物750を形成する場合、他の開口部の形成方法を用いることもできる。この場合、絶縁物750に感光性を有する絶縁物を用いる。感光性の絶縁物を層間絶縁層として形成したのち、その開口部を設けたい領域にレーザ光を照射し、その領域の絶縁物を感光させる。感光した絶縁物をエッチング等によって除去し、ソース電極層又はドレイン電極層708に達する開口部(コンタクトホール)を形成する。この開口部に導電層を、ソース電極層又はドレイン電極層708に接続するように形成し、この導電層に接続するように第1の電極層を形成する。本実施形態では、レーザ光の照射による改質、加工処理を行うため微細な加工が実現できる。
また、好ましくは画素電極層711は、スパッタリング法によりインジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、酸化亜鉛(ZnO)などで形成する。より好ましくは、ITOに酸化珪素が2〜10wt%含まれたターゲットを用いてスパッタリング法で酸化珪素を含む酸化インジウムスズを用いて画素電極層711を形成する。この他、酸化珪素を含み酸化インジウムに2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)を混合した酸化物導電性材料を用いても良い。スパッタリング法で画素電極層711を形成した後は、液滴吐出法を用いてマスク層を形成しエッチングにより、画素電極層711を所望のパターンに形成すれば良い。本実施の形態では、画素電極層711は、透光性を有する導電性材料により液滴吐出法を用いて形成し、具体的には、インジウム錫酸化物、ITOと酸化珪素から構成されるITSOを用いて形成する。
また、反射型の液晶表示パネルを作製する場合には、Ag(銀)、Au(金)、Cu(銅)、W(タングステン)、Al(アルミニウム)等の金属の粒子を主成分とした組成物を用いることができる。他の方法としては、スパッタリング法により透明導電膜若しくは光反射性の導電膜を形成して、液滴吐出法によりマスクパターンを形成し、エッチング加工を組み合わせて画素電極層711を形成しても良い。
画素電極層711は、その表面が平坦化されるように、CMP法、ポリビニルアルコール系の多孔質体で拭浄し、研磨しても良い。またCMP法を用いた研磨後に、画素電極層711の表面に紫外線照射、酸素プラズマ処理などを行ってもよい。
以上の工程により、基板700上にボトムゲート型(逆スタガ型ともいう。)のTFTと画素電極が接続された表示パネル(液晶表示パネル)用のTFTを有する基板700が完成する。また本実施の形態のTFTはチャネルエッチ型である。
次に、図14(C)に示すように、画素電極層711を覆うように、本発明の薬液塗布法により、配向膜として機能する絶縁層712を形成する。図14(C)は図7乃至9、11乃至13で示した上面図Aの線G―Hによる断面図であり、表示パネルの完成図である。なお、絶縁層712は、スクリーン印刷法やオフセット印刷法を用いれば、選択的に形成することができる。その後、ラビングを行う。続いて、シール材を液滴吐出法により画素を形成した周辺の領域に形成する(図示せず)。
その後、配向膜として機能する絶縁層712、カラーフィルタとして機能する着色層722、対向電極として機能する導電体層723、偏光板725が設けられた対向基板724とTFTを有する基板700とをスペーサを介して貼り合わせ、その空隙に液晶層720を設けることにより表示パネル(液晶表示パネル)を作製することができる(図14(C)参照)。シール材にはフィラーが混入されていても良く、さらに対向基板724には、遮蔽膜(ブラックマトリクス)などが形成されていても良い。なお、液晶層を形成する方法として、ディスペンサ式(滴下式)や、基板700と対向基板724を貼り合わせてから毛細管現象を用いて液晶を注入するディップ式(汲み上げ式)を用いることができる。
ディスペンサ方式を採用した液晶滴下注入法を図15を用いて説明する。図15において、40は制御装置、42は撮像手段、43はヘッド、33は液晶、35、41はマーカー、34はバリア層、32はシール材、30はTFT基板、20は対向基板である。シール材32で閉ループを形成し、その中にヘッド43より液晶33を1回若しくは複数回滴下する。そのとき、シール材32と液晶33とが反応することを防ぐため、バリア層34を設ける。続いて、真空中で基板30と対向基板20を貼り合わせ、その後紫外線硬化を行って、液晶が充填された状態とする。もちろん、ディスペンサ方式の代わりに本発明の薬液塗布装置を用いて液晶を滴下注入してもよい。
以上の工程で形成された画素部と外部の配線基板を接続するために接続部を形成する。大気圧又は大気圧近傍下で、酸素ガスを用いたアッシング処理により、接続部の絶縁層を除去する。この処理は、酸素ガスと、水素、CF4、NF3、H2O、CHF3から選択された一つ又は複数とを用いて行う。本工程では、静電気による損傷や破壊を防止するために、対向基板を用いて封止した後に、アッシング処理を行っているが、静電気による影響が少ない場合には、アッシング処理をどのタイミングで行っても構わない。
続いて、異方性導電体層を介して、ゲート電極層703が電気的に接続するように、接続用の配線基板を設ける。配線基板は、外部からの信号や電位を伝達する役目を担う。上記工程を経て、チャネルエッチ型のスイッチング用TFTと容量素子を含む表示パネル(液晶表示パネル)が完成する。容量素子は、容量配線層704とゲート絶縁層705と画素電極層711とで形成される。
本実施の形態では、スイッチングTFTはシングルゲート構造を示したが、ダブルゲート構造などのマルチゲート構造でもよい。
以上示したように、本実施の形態では、下地膜の塗布に、複数のノズルが個々に移動可能な薬液塗布装置を用いることにより、膜厚が均一な下地膜を形成することができる。その結果、ガラス基板からの汚染物質などを遮断する効果が得られる。また、基板と下地膜との間に絶縁層を形成する際にも、本発明の薬液塗布装置を用いることにより、膜厚が均一な絶縁層を形成することができる。その結果、よりいっそうガラス基板から半導体膜への汚染を防止することができる。
(実施の形態3)
本発明を適用して、様々な表示装置を作製することができる。即ち、それら表示装置を表示部に組み込んだ様々な電子機器に本発明を適用できる。
その様な電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、プロジェクター、ヘッドマウントディスプレイ(ゴーグル型ディスプレイ)、カーナビゲーション、カーステレオ、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それらの例を図16に示す。
図16(A)は、パーソナルコンピュータであり、本体2101、筐体2102、表示部2103、キーボード2104、外部接続ポート2105、ポインティングマウス2106等を含む。本発明は、表示部2103の作製に適用される。本発明を用いると、各層の全体にわたり膜厚を均一にすることができるため、信頼性の高い画像を表示することができる。
図16(B)は記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体2201、筐体2202、表示部A2203、表示部B2204、記録媒体(DVD等)読み込み部2205、操作キー2206、スピーカー部2207等を含む。表示部A2203は主として画像情報を表示し、表示部B2204は主として文字情報を表示するが、本発明は、これら表示部A2203、表示部B2204の作製に適用される。本発明を用いると、各層の全体にわたり膜厚を均一にすることができるため、信頼性の高い画像を表示することができる。
図16(C)は携帯電話であり、本体2301、音声出力部2302、音声入力部2303、表示部2304、操作スイッチ2305、アンテナ2306等を含む。本発明により作製される表示装置を表示部2304に適用することで、各層の全体にわたり膜厚を均一にすることができるため、信頼性の高い画像を表示することができる。
図16(D)はビデオカメラであり、本体2401、表示部2402、筐体2403、外部接続ポート2404、リモコン受信部2405、受像部2406、バッテリー2407、音声入力部2408、接眼部2409、操作キー2410等を含む。本発明は、表示部2402に適用することができる。本発明により作製される表示装置を表示部2402に適用することで、各層の全体にわたり膜厚を均一にすることができるため、信頼性の高い画像を表示することができる。
本実施例では、EL発光素子の陽極表面に本発明の薬液塗布装置を用いて絶縁膜を形成する例について図5(A),(B)を用いて説明する。
まず、基板500上にスイッチング用TFT(スイッチング素子として機能する薄膜トランジスタ)502と電流制御用TFT(EL素子に供給する電流を制御するための素子として機能するTFT。駆動用TFTともいう)503を形成する。ここでは、TFTの詳細な作製方法は省略する。なお、基板500としては、石英基板など透光性を有する基板を用いても良い。また、本実施例の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板を用いてもよい。
そして、スイッチング用TFT502及び電流制御用TFT503を覆って、無機絶縁材料からなる層間絶縁膜535を1.0〜2.0μmの平均膜厚で形成する。無機絶縁材料としては、酸化珪素膜または酸化窒化珪素膜を公知のスパッタ法またはプラズマCVD法を用いて形成すればよい。さらに窒化酸化珪素膜を用いる場合は、プラズマCVD装置によって、原料ガスにSiH4とN2Oを用いて、成膜条件は、圧力40Pa、基板温度400℃、RF出力100W、原料ガス流量はSiH4は4sccm、N2Oは400sccmで形成すればよい。
次いで、CMP(Chemical Mechanical Polish:化学機械研磨)法と呼ばれる技術で層間絶縁膜を研磨し平坦化する。CMP法は、被加工物の表面を化学的または機械的に平坦化する手法である。一般的に定盤(Platen or Polishing Plate)の上に研磨布または研磨パッド(本明細書では、以下総称してパッド(Pad)と呼ぶ)を貼り付け、被加工物とパッドとの間にスラリーを供給しながら定盤と被加工物とを各々回転または揺動させて化学作用と機械的研磨の複合作用により被加工物の表面を研磨する方法である。本実施例では、層間絶縁膜535を形成した後、層間絶縁膜535をCMP法によって研磨する。CMP法に用いるスラリー、パッド及びCMP装置などは、公知のものを用いることができ、また研磨の方法も公知の方法を用いて行うことができる。なお、CMP法による平坦化処理工程が終了した後に、層間絶縁膜535の平均膜厚が1.0〜2.0μm程度になるようにする。また、平坦化処理をした層間絶縁膜535上に、窒化珪素膜またはDLC膜からなる絶縁膜を設けても良い。このように窒化珪素膜またはDLC膜からなる絶縁膜を形成することにより、発光素子を形成する際に用いられるアルカリ金属が、層間絶縁膜を通してTFT側に侵入するのを防ぐことができると考えられる。
その後、所定のパターンのレジストマスクを形成し、それぞれのTFTの半導体層に形成されたソース領域またはドレイン領域とする不純物領域に達するコンタクトホールを形成する。コンタクトホールはドライエッチング法で形成する。
そして、導電性の金属膜をスパッタ法や真空蒸着法で形成し、マスクを用いて金属膜をエッチングすることで、配線536〜539を形成する。図示していないが、本実施例ではこの配線を膜厚50nmのTi膜と、膜厚500nmの合金膜(AlとTiとの合金膜)との積層膜で形成した。
次いで、その上に透明性導電膜を80〜120nmの厚さで形成し、エッチングすることによって陽極543(画素電極)を形成する(図5(A))。なお、本実施例では、透明電極として酸化インジウムスズ(ITO)膜や酸化インジウムに2〜20wt%の組成の酸化亜鉛(ZnO)を混合した透明導電膜を用いる。
また、陽極543は、ドレイン配線538と接して重ねて形成することによって電流制御用TFTのドレイン領域と電気的な接続が形成される。ここで、陽極543に対して180〜350℃で加熱処理を行ってもよい。
次に、陽極543上に第2の層間絶縁膜を形成し、第2の層間絶縁膜をエッチングして、画素(発光素子)に対応する位置に開口部を有する隔壁(バンク)546を形成する。本実施例ではレジストを用いてバンク546を形成する。バンク546の厚さは1μm程度とし、配線と陽極とが接する部分を覆う領域が傾斜するように形成する。
なお、本実施例においては、バンク546としてレジストでなる膜を用いているが、場合によっては、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、BCB(ベンゾシクロブテン)、酸化珪素膜等を用いることもできる。バンク546は絶縁性を有する物質であれば、有機物と無機物のどちらでも良い。なお、感光性アクリルを用いてバンク546を形成する場合は、感光性アクリル膜をエッチングしてから180〜350℃で加熱処理を行うのが好ましい。また、非感光性アクリル膜を用いて形成する場合には、180〜350℃で加熱処理を行った後、エッチングしてバンクを形成するのが好ましい。
次に、陽極(電極)543表面に拭浄処理を行う。なお、本実施例においては、界面活性剤(弱アルカリ性)を含ませた多孔質なスポンジ(代表的にはPVA(ポリビニルアルコール)製、ナイロン製など)を用いて陽極543表面を拭うことにより、陽極543表面の平坦化および表面に付着したゴミの除去を行う。ゴミの除去の際の洗浄液としては、純水を用い、多孔質なスポンジを巻き付けている軸の回転数は100〜300rpmとし、押し込み値は0.1〜1.0mmとする。なお、洗浄機構として、基板の面に平行な軸線まわりに回動して基板の面に接触するロールブラシ(PVA製)を有する洗浄装置を用いてもよいし、基板の面に垂直な軸線まわりに回動しつつ基板の面に接触するディスクブラシ(PVA製)を有する洗浄装置を用いてもよい。
次いで、バンク546および陽極543を覆って第3の絶縁膜547を形成する。第3の絶縁膜547は、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミドなどの有機樹脂膜を本発明の薬液塗布装置を用いて膜厚1〜5nmで形成する。有機樹脂膜の塗布に本発明の薬液塗布装置を用いることで、その樹脂膜の使用量を抑制しつつ、膜厚が均一となる塗布膜を設けることができる。膜厚が均一な第3の絶縁膜547を形成することで、陽極543表面のクラック等を掩蔽することができ、発光素子の劣化を防ぐことができる。
次に、第3の絶縁膜547上に有機化合物層548、陰極549を蒸着法により形成することで発光素子550を形成する(図5(B))。なお、本実施例では発光素子550の陰極549としてMgAg電極を用いるが、公知の他の材料であっても良い。なお、有機化合物層548は、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層及びバッファー層といった複数の層を組み合わせて積層することにより形成されている。なお、本実施例では、陽極543上に有機化合物層548、陰極549を形成しているが、陰極549上に、有機化合物層548、陽極543を設けてもよい。他の実施例においても同様である。
本実施例では、発光素子に用いられる発光層の形成に本発明の薬液塗布装置を用いた例について説明する。
まず、発光素子の代表的な構造について図6に示す。基板600の上に陽極601、発光層602、陰極603が積層されている。発光層602は、少なくとも発光性の有機化合物を含んでいればよく、低分子化合物、高分子化合物(ポリマー)の他、オリゴマーやデンドリマー等の中分子化合物、あるいは無機化合物を用いて形成することができる。発光性の有機化合物に関しても、低分子化合物、高分子化合物(ポリマー)の他、オリゴマーやデンドリマー等の中分子化合物を用いることができる。
本実施形態の図6においては、発光層602はホール注入層611、ホール輸送層612、発光性の有機化合物を含む層613、電子輸送層614、電子注入層615から構成されているが、必ずしもこの構成に限定されることはない。なお、ホール注入層は陽極からホールを受け取る機能を示す層であり、ホール輸送層は発光性の有機化合物を含む層にホールを受け渡す機能を示す層である。また、電子注入層は陰極から電子を受け取る機能を示す層であり、電子輸送層は発光性の有機化合物を含む層に電子を受け渡す機能を示す層である。
まず、それら各層に用いることのできる材料を具体的に例示する。ただし、本発明に適用できる材料は、これらに限定されるものではない。
ホール注入層に用いることができるホール注入材料としては、フタロシアニン系の化合物が有効であり、フタロシアニン(略称:H2−Pc)、銅フタロシアニン(略称:Cu−Pc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等を用いることができる。また、導電性高分子化合物に化学ドーピングを施した材料もあり、ポリスチレンスルホン酸(略称:PSS)をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン(略称:PEDOT)やポリアニリン(略称:PAni)などを用いることもできる。また、酸化モリブデン(MoOx)、酸化バナジウム(VOx)、酸化ニッケル(NiOx)などの無機半導体の薄膜や、酸化アルミニウム(Al2O3)などの無機絶縁体の超薄膜も有効である。また、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:α−NPD)、4,4’−ビス[N−(4−(N,N−ジ−m−トリル)アミノ)フェニル−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DNTPD)などの芳香族アミン系化合物も用いることができる。さらに、それら芳香族アミン系化合物に対してアクセプタ性を示す物質を添加してもよく、具体的にはVOPcにアクセプタである2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(略称:F4−TCNQ)を添加したものや、α−NPDにアクセプタであるMoOxを添加したものを用いてもよい。
ホール注入材料の塗布に本発明の薬液塗布装置を用いることにより、陽極全体にわたって膜厚分布が小さく、均一な厚さのホール注入材料の塗布膜が得られる。また、複数のノズルにより最適なパターンに吐出することができるため、薬液の無駄を省き、使用効率を高めることができる。
ホール輸送層に用いることができるホール輸送材料としては、芳香族アミン系化合物が好適であり、上述したTDATA、MTDATA、TPD、α−NPD、DNTPDなどを用いることができる。
ホール輸送材料の塗布に本発明の薬液塗布装置を用いることにより、ホール注入層全体にわたって膜厚分布が小さく、均一な厚さのホール輸送材料の塗布膜が得られる。また、複数のノズルにより適当なパターンに吐出するため、薬液の無駄を省き、使用効率を高めることができる。
次に、発光性の有機化合物として用いることのできる材料を列挙するが、本発明においてはこれらに限定されず、いかなる発光性の有機化合物を用いても良い。
例えば青色〜青緑色の発光は、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。また、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)などのスチリルアリーレン誘導体や、9,10−ジ−2−ナフチルアントラセン(略称:DNA)、9,10−ビス(2−ナフチル)−2−t−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)などのアントラセン誘導体から得ることができる。また、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)等のポリマーを用いても良い。
例えば青緑色〜緑色の発光は、クマリン30、クマリン6などのクマリン系色素や、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N、C2’](ピコリナト)イリジウム(略称:FIrpic)、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)(アセチルアセトナト)イリジウム(略称:Ir(ppy)2(acac))などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。また、上述のペリレンやTBPを5wt%以上の高濃度で適当なホスト材料に分散させることによっても得られる。また、BAlq、Zn(BTZ)2、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)クロロガリウム(Ga(mq)2Cl)などの金属錯体からも得ることができる。また、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリマーを用いても良い。
例えば黄色〜橙色の発光は、ルブレン、4−(ジシアノメチレン)−2−[p−(ジメチルアミノ)スチリル]−6−メチル−4H−ピラン(略称:DCM1)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(9−ジュロリジル)エチニル−4H−ピラン(略称:DCM2)、ビス[2−(2−チエニル)ピリジナト]アセチルアセトナトイリジウム(Ir(thp)2(acac))、ビス(2−フェニルキノリナト)アセチルアセトナトイリジウム(Ir(pq)2(acac))などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。ビス(8−キノキリノラト)亜鉛(略称:Znq2)やビス[2−シンナモイル−8−キノリノラト]亜鉛(略称:Znsq2)などの金属錯体からも得ることができる。また、ポリ(2,5−ジアルコキシ−1,4−フェニレンビニレン)等のポリマーを用いても良い。
例えば橙色〜赤色の発光は、4−(ジシアノメチレン)−2,6−ビス[p−(ジメチルアミノ)スチリル]−4H−ピラン(略称:BisDCM)、4−(ジシアノメチレン)−2,6−ビス[2−(ジュロリジン−9−イル)エチニル]−4H−ピラン(略称:BisDCJ)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(9−ジュロリジル)エチニル−4H−ピラン(略称:DCM2)、ビス[2−(2−チエニル)ピリジナト]アセチルアセトナトイリジウム(Ir(thp)2(acac))、ビス(2−フェニルキノリナト)アセチルアセトナトイリジウム(Ir(pq)2(acac))、ビス[2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C3’](アセチルアセトナト)イリジウム(Ir(btp)2(acac))などをゲスト材料として用い、適当なホスト材料に分散させることによって得られる。ビス(8−キノキリノラト)亜鉛(略称:Znq2)やビス[2−シンナモイル−8−キノリノラト]亜鉛(略称:Znsq2)などの金属錯体からも得ることができる。また、ポリ(3−アルキルチオフェン)等のポリマーを用いても良い。
また、上述した発光性の有機化合物の中でも特に、FIrpic、Ir(ppy)2(acac)、Ir(thp)2(acac)、Ir(pq)2(acac)、Ir(btp)2(acac)などの燐光物質を用いることが好ましい。本発明を適用した発光素子は、経時的に電流量が増えていくため消費電力の上昇が大きいが、これら燐光物質を用いれば、一般に消費電力を小さくできる。
なお、上記の構成において、適当なホスト材料としては、発光性の有機化合物よりも発光色が短波長のものであるか、またはエネルギーギャップの大きいものであればよい。具体的には、上述した例に代表されるホール輸送材料や電子輸送材料から適宜選択することができる。また、4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)などを使用しても良い。
発光性の有機化合物の塗布に本発明の薬液塗布装置を用いることにより、ホール輸送層全体にわたって膜厚分布が小さく、均一な厚さの発光性の有機化合物として用いることのできる材料の塗布膜が得られる。また、本発明では、個々に可変な複数のノズルにより適当にパターンを吐出することができるため、薬液の無駄を省き、使用効率を高めることができる。
電子輸送層に用いることができる電子輸送材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq3)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)2)などの金属錯体が挙げられる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)などのオキサジアゾール誘導体、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)などのトリアゾール誘導体、2,2’,2”−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス[1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール](略称:TPBI)のようなイミダゾール誘導体、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などのフェナントロリン誘導体を用いることができる。
電子輸送層の塗布に本発明の薬液塗布装置を用いることにより、発光性の有機化合物を含む層上の全体にわたって膜厚分布が小さく、均一な厚さの電子輸送材料の塗布膜が得られる。また、本発明では、個々に可変な複数のノズルにより適当なパターンを吐出することができるため、薬液の無駄を省き、使用効率を高めることができる。
電子注入層に用いることができる電子注入材料としては、上述したAlq3、Almq3、BeBq2、BAlq、Zn(BOX)2、Zn(BTZ)2、PBD、OXD−7、TAZ、p−EtTAZ、TPBI、BPhen、BCPなどの電子輸送材料を用いることができる。その他に、LiF、CsFなどのアルカリ金属ハロゲン化物や、CaF2のようなアルカリ土類ハロゲン化物、Li2Oなどのアルカリ金属酸化物のような絶縁体の超薄膜がよく用いられる。また、リチウムアセチルアセトネート(略称:Li(acac))や8−キノリノラト−リチウム(略称:Liq)などのアルカリ金属錯体も有効である。また、これら電子注入材料に対してドナー性を示す物質を添加してもよく、ドナーとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属などを用いることができる。具体的にはBCPにドナーであるリチウムを添加したものや、Alq3にドナーであるリチウムを添加したものを用いることができる。
電子注入材料の塗布に本発明の薬液塗布装置を用いることにより、電子輸送層全体にわたって膜厚分布が小さく、均一な厚さの電子注入材料の塗布膜が得られる。また、本発明では、個々に可変な複数のノズルにより適当なパターンを吐出することができるため、薬液の無駄を省き、使用効率を高めることができる。
一方、発光素子における陽極601を構成する材料としては、仕事関数の大きい導電性材料を用いることが好ましい。また、陽極601から光を取り出す場合は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物等の透明導電性材料を用いればよい。また、陽極601を遮光性とするのであれば、陽極601はTiN、ZrN、Ti、W、Ni、Pt、Cr等の単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との三層構造等を用いることができる。あるいは、Ti、Al等の反射性電極の上に上述した透明導電性材料を積層する方法でもよい。
また、陰極603を構成する材料としては、仕事関数の小さい導電性材料を用いることが好ましく、具体的には、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(Mg:Ag、Al:Liなど)の他、YbやEr等の希土類金属を用いて形成することもできる。また、これらの導電性材料の上に、他の導電性材料(例えばアルミニウムなど)を積層しても良い。また、LiF、CsF、CaF2、Li2O等の電子注入層を用いる場合は、アルミニウム等の通常の導電性薄膜を用いることができる。また、陰極603側を光の取り出し方向とする場合は、LiやCs等のアルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属を含む超薄膜と、透明導電膜(ITO、IZO、ZnO等)との積層構造を用いればよい。あるいは、上述した電子輸送材料に対してドナー性を示す物質(アルカリ金属またはアルカリ土類金属など)を添加した層と、透明導電膜(ITO、IZO、ZnO等)を積層した構成としてもよい。具体的にはBCPにドナーであるリチウムを添加した層や、Alq3にドナーであるリチウムを添加した層の上に、ITOを積層すればよい。
以上、上述した発光素子の作製において、発光層602の各層の形成に本発明の薬液塗布装置を用いることができる。その結果、個々に独立して移動可能な複数のノズルにより適当なパターンを吐出することができるため、各層の全体にわたり膜厚を均一にすることができ、さらに、薬液の無駄を省き使用効率を高めることができる。