しかし、上述の従来の車両周辺視認装置では、主に車両後方の駐車スペースを撮像して撮像画像を提供するものであるため、例えば、車両後方側における左右の死角領域について有効な撮像画像を提供することができなかった。また、従来の車両周辺視認装置では、車両後方側における車両から少し離れた領域(例えば、8m程度離れた領域)について支援画像を提供しようとしても、画像の歪みが大きい、画像サイズが小さすぎる、カメラの視野範囲外である等の理由により、有効な支援が行えない状況である。
そこで、本発明の解決すべき第1の課題は、車両の前方側の真正面又は後方側におけ真後ろだけでなく、車両前方側又は後方側における左右の死角領域についても有効な支援画像を提供できる車両周辺視認装置を提供することである。
また、第2の課題は、車両前方側又は後方側における直近の領域だけでなく、少し離れた領域についても有効な支援画像を提供できる車両周辺視認装置を提供することである。
また、第3の課題は、撮像画像中の自車から8m離れた地点に相当する部分の部分の樽型歪みが所定レベル以下に抑えられ、樽型歪みよる違和感が小さく視認性の高い撮像画像を提供できる車両周辺視認装置を提供することである。
また、第4の課題は、広い視野範囲について視野範囲中の各部の重要度を考慮して、画像サイズ及び歪みレベル等が調整され、視認性及び有用性の高い撮像画像を提供できる車両周辺視認装置を提供することである。
上記の課題を解決するため、請求項1の発明では、車両周辺の画像を撮像して車室内にて表示するようにした車両周辺視認装置であって、車両前方側又は後方側の視野範囲からの光線をレンズ系により集光して撮像素子上に結像する撮像カメラと、前記撮像カメラが撮像した画像を車室内にて表示する表示装置とを備え、前記撮像カメラの前記視野範囲の水平画角は149度以上に設定され、前記撮像カメラの前記レンズ系の光軸の水平方向に対する斜め下側への傾き角は、光軸と地面との交点と車両前端又は後端との距離が3m以上になるように設定されている。
また、請求項2の発明では、請求項1の発明に係る車両周辺視認装置において、前記撮像カメラの前記視野範囲及び車体への取付位置は、車両の前端部又は後端部が前記画像に写り込むように設定されている。
また、請求項3の発明では、請求項1又は2の発明に係る車両周辺視認装置において、前記レンズ系には、等距離射影光学系が採用されている。
また、請求項4の発明では、請求項1ないし3のいずれかの発明に係る車両周辺視認装置において、前記画像中における車両から前方側又は後方側に8mだけ離れた地点に対応する部分の前記画像の下端からの高さhiと前記画像の縦寸法Hiとの比hi/Hiが、0.5以上、0.9以下に設定されている。
また、請求項5の発明では、請求項1ないし4のいずれかの発明に係る車両周辺視認装置において、前記画像中における車両から前方側又は後方側に8mだけ離れた地点に対応する部分の樽型歪みよる湾曲度合いについて、その部分の湾曲度合いに対応する曲率半径rと前記画像の横寸法Viとの比r/Viが、0.9以上になるように設定されている。
また、請求項6の発明では、請求項1ないし5のいずれかの発明に係る車両周辺視認装置において、前記レンズ系の前記光軸が前記撮像素子の受光面の中心位置から下方にシフトされ、その光軸の前記受光面の前記中心位置からの下方へのずれ量Daが、撮像素子の受光面の縦寸法をSvとしたとき、0.11≦Da/Sv≦0.15の関係を満たす範囲に設定されている。
また、請求項7の発明では、請求項1ないし6のいずれかの発明に係る車両周辺視認装置において、前記撮像カメラが車両の左右中心から左側又は右側にずれた位置に設置され、前記レンズ系の前記光軸が、前記撮像素子の前記受光面の中心位置から、前記撮像カメラの前記車両の左右中心からのずれ方向と反対側にシフトされている。
また、請求項8の発明では、車両周辺の画像を撮像して車室内にて表示するようにした車両周辺視認装置であって、車両前方側又は後方側の視野範囲からの光線をレンズ系により集光して撮像素子上に結像する撮像カメラと、前記撮像カメラが撮像した画像を車室内にて表示する表示装置とを備え、前記画像中における車両から前方側又は後方側に8mだけ離れた地点に対応する部分の前記画像の下端からの高さhiと前記画像の縦寸法Hiとの比hi/Hiが、0.5以上、0.9以下に設定されている。
また、請求項9の発明では、車両周辺の画像を撮像して車室内にて表示するようにした車両周辺視認装置であって、車両前方側又は後方側の視野範囲からの光線をレンズ系により集光して撮像素子上に結像する撮像カメラと、前記撮像カメラが撮像した画像を車室内にて表示する表示装置とを備え、前記画像中における車両から前方側又は後方側に8mだけ離れた地点に対応する部分の樽型歪みよる湾曲度合いについて、その部分の湾曲度合いに対応する曲率半径rと前記画像の横寸法Viとの比r/Viが、0.9以上になるように設定されている。
請求項1に記載の発明によれば、撮像カメラの水平画角が149度以上に設定されているため、本発明に係る条件に適合するように撮像カメラを構成することにより、車両の前方側の真正面又は後方側における真後ろだけでなく、車両前方側又は後方側における左右の死角領域についても有効な撮像画像を提供できる。
また、撮像カメラのレンズ系の光軸の水平方向に対する斜め下側への傾き角は、光軸と地面との交点と車両前端又は後端との距離が3m以上になるように設定されているため、車両前方側又は後方側における直近の領域だけでなく、少し離れた領域についても有効な撮像画像を提供できる。
請求項2に記載の発明によれば、撮像画像中に車両の前端部又は後端部が映り込むため、撮像画像中の各部分と自車との位置関係を容易に把握することができ、撮像画像の視認性が向上する。
請求項3に記載の発明によれば、撮像カメラのレンズ系に等距離射影系が採用されているため、重要度の高い車両の前方側の真正面又は後方側におけ真後ろの直近の領域については、樽型歪みの少ない大きな画像サイズで撮像画像を提供するとともに、広範囲な視野を要求される視野範囲の左右両縁部についても画像サイズ及び歪みの点で視認性を確保しつつ撮像画像を提供することができ、その結果、広い視野範囲について視野範囲中の各部の重要度を考慮して、画像サイズ及び歪みレベル等が調整され、視認性及び有用性の高い撮像画像を提供できる。
請求項4に記載の発明によれば、車両から少し離れた(例えば、5m程度離れた)位置にある他の車両等の障害物についても撮像画像内に確実に捉えることができるようになっているとともに、車両後方側の直近の画像が小さくなりすぎたり、重要度の低い地平線よりも上の領域の画像の割合が大きくなりすぎるのを防止できるようになっているため、車両後方の直近から少し離れた領域について有効な支援画像を提供できる。例えば、道路脇の駐車スペースから道路に出るときや、駐車場の駐車スペースから通路上に出るときなどに、有効な視線画像を提供できる。
請求項5に記載の発明によれば、撮像画像中の自車から8m離れた地点に相当する部分の部分の樽型歪みが所定レベル以下に抑えられ、樽型歪みよる違和感が小さく視認性の高い撮像画像を提供できる。例えば、道路脇の駐車スペースから道路に出るときや、駐車場の駐車スペースから通路上に出るときなどに、有効な視線画像を提供できる。
請求項6に記載の発明によれば、本発明に係るこのレンズ系の光軸の傾き角についての条件と、レンズ系の光軸の撮像素子の中心からのシフト量についての条件との組み合わせによって、画像中の所定部分(レンズ系の光軸に対応する部分)の樽型歪みを抑制しつつ、撮像画像中におけるその所定部分の上下位置を最適な位置に調節することができ、視認性及び有用性の高い撮像画像を提供できる。
請求項7に記載の発明によれば、撮像カメラのレンズ系の光軸が、撮像素子の受光面の中心位置から、撮像カメラの左右中心からのずれ方向と反対側にシフトされているため、車両の左右中心に設置された撮像カメラで撮像した画像に近い撮像画像を提供でき、撮像カメラの車両の左右中心からの設置位置のずれによる画像の違和感を軽減できる。
請求項8に記載の発明によれば、車両前方側又は後方側における直近の領域だけでなく、少し離れた領域についても有効な支援画像を提供できる。
請求項9に記載の発明によれば、撮像画像中の自車から8m離れた地点に相当する部分の部分の樽型歪みが所定レベル以下に抑えられ、樽型歪みよる違和感が小さく視認性の高い撮像画像を提供できる。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両周辺視認装置の構成を示す図である。この車両周辺視認装置は、図1に示すように、撮像カメラ1と、制御ユニット3と、表示装置5とを備えて構成されており、撮像カメラ1が撮像した画像を表示装置5にて表示することにより、運転者に対する運転支援を行う。
撮像カメラ1は、図1及び図2に示すように、車両の後端部に、車両後方側の視野範囲Aを撮像するように設置されている。表示装置5は、車室内における運転席の周囲に設置され、制御ユニット3の制御により撮像カメラ1が撮像した画像を表示する。制御ユニット3は、この車両周辺視認装置の制御を統括するものであり、その機能には、撮像カメラ1が撮像した画像に対する画像処理も含まれている。
撮像カメラ1は、図3に示すように、可能なレンズ系11(なお、図3ではレンズ系11を簡略化して記載している)と、CCD等の撮像素子13とを備えて構成されている。レンズ系11は、等距離射影光学系が採用された広角撮像が可能なものが用いられ、視野範囲Aからの光線を集光して撮像素子13上に結像するようになっている。撮像素子13の受光面13aの縦横の比は、例えば縦が3に対して横が4に設定されており、その具体的な縦横のサイズSv,Shは、例えば2.7mm,3.6mmに設定されている。ここで、等距離射影光学系とは、像高y、焦点距離f及び半画角θの関係が、y=f・θの関係をなす光学系である。
このような撮像カメラ1の水平画角φhは、149度以上、200度以下の範囲内に設定されている。なお、水平画角φhが決定されると、それに伴って撮像素子13の受光面13aの縦横比に応じて垂直画角φvが決定される。具体例としては、撮像カメラ1の水平画角φhは約180度に設定され、垂直画角φvは約120度に設定されている。ここで、本実施形態における画角φh,φvとは、レンズ系11単体の画角を言うのではなく、実際に撮像素子13の受光面13a上に映り込む視野範囲Aに対応した画角を指すものとする。
また、撮像カメラ1の上下方向に対する設置角度は次のように設定される。即ち、レンズ系11の光軸ALの水平方向Dhに対する斜め下側への傾き角δは、図4に示すように、光軸ALと地面Gとの交点Pgと車両後端との距離Laが3m以上になるように設定されている。すなわち、撮像カメラ1の車両への取付高さをHc(単位をメートルとする)とすると、傾き角度δは、tanδ≦Hc/3の関係を満たすように設定される。これによって、車両後方側における直近の領域だけでなく、少し離れた領域についても有効な撮像画像が得られるようになっている。
また、撮像カメラ1では、図3及び図5に示すように、レンズ系11の光軸ALが撮像素子13の受光面13aの中心位置Paから下方にシフトされ、その光軸ALの中心位置Paからの下方へのずれ量Daが、受光面13aの縦寸法をSvとしたとき、0.11≦Da/Sv≦0.15の関係を満たす範囲に設定されている。なお、図5中において符号「Pb」は光軸ALと受光面13aとの交点(光軸位置)を示している。
このようにレンズ系11の光軸ALを撮像素子13に対して下方にシフトさせることにより、図6に示すように、撮像素子13により撮像される撮像画像I中の中心光軸ALに対応する点Pcが、撮像視野Aの中心に対応する画像中心Pdから上方に移動され、これによって、光軸ALの傾き角δを大きくすることなく、撮像カメラ1の撮像方向(視野範囲Aの中心を指す方向)をより大きく下側に向かせることができるようになっている。ここで、本明細書において「撮像画像」というときは、撮像カメラ1で撮像された後、縦横比の変更、画像縁部の切り捨て等がなされていない画像を意味するものとする。よって、撮像画像Iの縦横比は、撮像素子13の受光面13aの縦横比と同一であり、撮像画像I中には受光面13aに映り込む視野範囲A内のすべての画像が保持されている。
また、このような撮像カメラ1の視野範囲A及び取付位置は、図2に示すように、視野範囲Aの下側縁部に車両の後側バンパー21が映り込むように設定されている。この設定条件は、撮像カメラ1の光軸ALの傾き角δとも関係しており、傾き角δに対する条件としては、このバンパー21の映り込みに関する条件と、上述の条件(光軸ALと地面Gとの交点Pgと車両後端との距離Laが3m以上)とが2重に付与されることとなる。例えば、図7に示す撮像画像Ia中の部分I1がその後側バンパー21の画像に対応している。
撮像カメラ1についての上述の条件を満たすようように、撮像カメラ1の構成及び車両への取付条件を設定すると、図7に示すような構成を有する撮像画像Iaが得られる。撮像画像Ia中におけるハッチングを付した四隅の部分I2は、撮像視野Aの範囲外の部分が黒く映り込んだものであり、部分I1は上述の如く車両の後側バンパー21の画像である。また、撮像画像Ia中における四角枠状の画像I3は、図8に示すように車両後端から所定距離Lb(例えば、1m)だけ後方側に離れた前後、左右の辺の長さが3m,2mの駐車スペースを模した枠領域23の画像である。また、撮像画像Ia中における左右方向に延びる仮想線I4は、車両後端から後方側に8mだけ離れた地点(基準地点)に左右方向(光軸ALと直交する方向)に仮想的に引かれた直線に対応するものである。
この撮像画像Iaの構成については、次のような特徴が含まれている。
第1に、撮像画像Ia内には、車両後方側における水平画角φhが149度以上の視野範囲Aの画像が含まれている。
第2に、撮像画像Iaの下縁部には、車両の後側バンパー21の画像が映り込んでいる。
第3に、撮像画像Ia中における車両後端から後方側に8mだけ離れた基準地点Pr(図13参照)に対応する点Piの撮像画像Iaの下端からの高さhiと撮像画像Iaの縦寸法Hiとの比hi/Hiが、0.5以上、0.9以下になっている。この第3の特徴は、上述の撮像カメラ1の水平方向Dhに対する傾き角δに関する条件と光軸ALのシフト条件と撮像カメラ1の垂直画角φvの条件との組み合わせによって実現されるものである。
第4に、撮像画像Ia中における車両後端から後方側に8mだけ離れた基準地点Prに対応する点Piの仮想線I4の樽型歪みよる湾曲度合いについて、その点Piにおける仮想線I4の曲率半径rと撮像画像Iaの横寸法Viとの比r/Viが、0.9以上になっている。この第4の特徴は、撮像カメラ1のレンズ系11に採用するレンズ系の特性によって主に決定されるものである。
第5に、撮像カメラ1のレンズ系11に等距離射影系が採用されているため、車両後方側における真後ろの直近の領域については、樽型歪みの少ない大きな画像サイズで撮像されているとともに、視野範囲Aの左右両縁部についても画像サイズ及び歪みの点で視認性が確保されつつ撮像されている。
次に、このような撮像画像Iaの構成が必要とされる根拠(理由)及びその意義について説明する。
まず、上記第1の特徴である視野範囲Aの水平画角φhについて149度以上の条件が課せられる理由について説明する。
まず、図9に示すような状況について検討する。この図9に示す状況のように、駐車場等において自車A1駐車スペースの隣の駐車スペースに駐車している車両A2の後方位置P1(例えば、自車A1から後方側に0.5m、自車A1の左右中心から左方向に1.95mの位置)に立っている人を視野範囲A内に捉えようとした場合、水平画角φhは151度以上必要となる。また、この場合において、撮像画像Iaを表示装置5に表示する場合に生じるオーバースキャンの影響を考慮すると、より好ましくは水平画角φhは158度以上である必要がある(第1の条件)。
次に、図10に示すように、駐車場内の通路を走行する車両A3についての対応について考える。調査の結果、通路を走行する車両A3と駐車中の車両A4の列との間隔が1mである場合、車両A3の速度は平均(10台平均)で13km/hであることが分かった。また、速度13km/hで走行中の車両A3がブレーキをかけてから停止するまでに走行する距離(停止距離)はおよそ4.2mであることが分かっている。そして、図11に示すように、自車A1が駐車中の車両A4の列中にある場合において、撮像カメラ1の撮像画像Iaにより走行中の車両A3についての有効な情報を適用しようとすると、自車A1の後方位置から左右方向に少なくとも停車距離(4.2m)以上離れた位置で車両A3を視野範囲A内に捕捉する必要があることが分かった。また、その際、車両A3のフロントノーズ部の横幅の少なくとも3/4の部分が視野範囲A内に含まれているのが望ましいことが分かった。そして、この条件を満たすためには、視野範囲Aの水平画角φhは142度以上、オーバースキャンを考慮すると149度以上必要であることが分かった(第2の条件)。
そして、さらに調査検討を行った結果、図11に示すような状況では、より高い安全性を考慮した場合、図12に示すように、接近車両A3が自車A1の後方の手前6mの地点にあるときに視野範囲A内に捕捉するのが望ましいことが分かった。また、接近車両A3のフロントノーズのうち車幅の半分程度が視野範囲A内に捕捉できれば、接近車両A1に対する最低限の視認性は確保できることが分かった。さらに、必ずしも自車A1が駐車スペース内に真っ直ぐに駐車できているとは限らないため、自車A1の駐車位置の傾き度合いも考慮する必要があることも分かった。この点についての調査検討の結果、例えば駐車スペースの横幅が2mである場合、自車A1の傾き角は最大で10度程度となることがことが分かった。このため、自車A1が駐車スペース内で接近車両A3と反対側に10度傾いているとき、自車A1の後方の手前6mの地点で接近車両A1のフロントノーズ部の横幅の半分程度を視野範囲A内に捕捉しようとすると、視野範囲Aの水平画角φhは168度以上、オーバースキャンを考慮すると176度以上であるのが望ましいことが分かった(第3の条件)。
この結果、撮像カメラ1の視野範囲Aの水平画角φhの望ましい数値範囲については、上記第1ないし第3の条件の条件との関係で3段階で定めることができることが分かる。すなわち、オーバースキャンの影響を考慮した第2の条件のみを満たすように設定する場合、水平画角φhは149度以上に設定すればよい。また、オーバースキャンの影響を考慮した第1及び第2の条件を満たすように設定する場合、水平画角φhは158度以上に設定すればよい。また、オーバースキャンの影響を考慮した第1ないし第3のすべての条件を満たすように設定する場合、水平画角φhは176度以上に設定すればよい。
次に、上記第2の特徴である後側バンパー21の映り込みについて説明する。この後側バンパー21の映り込みによって、表示された撮像画像Iaを見た運転者が、自車と撮像画像Ia中の画像部分との実際の位置関係を把握しやすくなるという意義がある。
次に、上記第3の特徴について説明する。この第3の特徴とは、上述の如く、車両後端から8mだけ離れた基準地点Prに対応する撮像画像Ia上の点Piの撮像画像Iaの下端からの高さhiと撮像画像Iaの縦寸法Hiとの比hi/Hiが、0.5以上、0.9以下になっていることである。この特徴について説明するために、図13に示すような状況を考える。駐車場内等において撮像画像Iaによる車両後方側の運転支援を行う場合、車両後方側にある障害物(特に、他の車両A11等)の存在を如何に運転者に認知させるかが重要な問題となる。この点について、車両後方側において自車A1からどのくらいの距離の範囲内にある他の車両A11が撮像カメラ1の視野範囲A(撮像画像Ia)内に含まれているのが望ましいかという観点から調査した結果、車両から5m離れた車両A11が視野範囲A内に完全に捉えられているのが望ましいことが分かった。ここで、図14は、撮像カメラ1の垂直画角φvが約120度で、上記比hi/Hiが0.9であるときの図13の状況に対応した撮像画像Iaを示しており、車両A11の画像I11が撮像画像Iaの上端の際部分に映り込んでいる。このため、上記比hi/Hiが0.9を上回ると、車両A11の画像I11が欠けたり、撮像画像Ia外に外れてしまう。よって、これより、上記比hi/Hiは0.9以下であることが必要となる。
また、図15は、撮像カメラ1の垂直画角φvが約120度で、上記比hi/Hiが0.5であるときの図13の状況に対応した撮像画像Iaを示している。この図15の撮像画像Iaは上記比hi/Hiが許容下限値(0.5)いっぱいとなっており、上記比hi/Hiがこの下限値を下回ると、車両駐車時等に車両をバックさせるときに最も重要度の高い車両後方側における直近領域(例えば、枠領域23)の画像が小さくなりすぎたり、撮像画像Ia中に占める地平線よりも上の領域(空等)に対応する部分の割合が多くなりすぎる等の問題が生じる。よって、これより、上記比hi/Hiは0.5以上であることが必要となる。
このように、上記比hi/Hiが0.5以上、0.9以下に設定されることにより、車両後方の直近から少し離れた領域について有効な支援画像を提供できるようになっている。
次に、上記第4の特徴について説明する。この第4の特徴とは、上述の如く、撮像画像Ia中における車両後端から後方側に8mだけ離れた基準地点Prに対応する点Piの仮想線I4の樽型歪みよる湾曲度合いについて、その点Piにおける仮想線I4の曲率半径rと撮像画像Iaの横寸法Viとの比r/Viが0.9以上になっていることである。この特徴の必要性について説明するため、図16に示すように、車両に搭載された撮像カメラの視点から、建物25を含む車両後方側を条件を変えて撮像し、仮想線I4の樽型歪みによる湾曲度合いの許容限度について調査した。具体的には、撮像画像Ia中に含まれる建物25の前面側の壁面が地面から立ち上がる直線状の部分25aに対応する線状の画像の湾曲度合いを基準として、点Piにおける許容される樽型歪みの限界値について、サンプル画像を用いてアンケート調査した。なお、建物25と自車A1との間の距離は8mに設定されている。
その調査の結果、撮像画像Iaの視認性確保のためには、上記比r/Viが0.9以上である必要があることが分かった。ここで、図17ないし図18の各撮像画像Iaは、その撮像画像Iaの縦寸法を30.0(mm)とすると、上記点Piにおける仮想線I4の曲率半径rが80.0(mm),36.0(mm),21.4(mm)、上記r/Viが2.0,0.9,0.5となっている。すなわち、図17の撮像画像Iaは点Piでの歪みが小さく非常に良好な状態な画像であり、図18の撮像画像Iaは点Piでの歪みが許容限度いっぱいになっている画像であり、図19の撮像画像Iaは点Piでの歪が許容限度を超えてしまっている画像である。
ここで、上述のように、自車A1の後方8mの地点Prの画像を基準にして、撮像画像Ia中における遠近の画像配分割合(第3の特徴)、及び歪み特性(第4の特徴)についての条件設定を行う理由について説明する。例えば、図20に示すように、道路51脇の駐車スペースからバック走行で道路51に出るときのことを考える。日本の一般的な2車線の道路51では、両端の歩道の幅が約0.5〜1mで、片側の走行車線の幅が約3mであるので、道路51全体では約8mの幅になる。このため、図20の状況において、撮像カメラ1で自車A1の後方側の領域を撮像する場合、道路51の左右方向に直線状に延びる向こう側の縁部51aがどのように撮像されるかが重要なポイントとなる。すなわち、少なくとも道路51の縁部51aよりも手前側に位置している他の車両等の障害物については、撮像画像Ia中に確実に捕捉される必要がある。すると、そのためには、車両後方の8mの地点Prに対応する撮像画像Ia中の点Piの高さ位置に基づいて、撮像画像Ia中の遠近画像のバランス等を決定すればよいことが分かる。また、道路51の左右に直線状に延びる縁部51aの画像の樽型歪みが大きいと、視認性が低下するため、この点からも、車両後方の8mの地点Prに対応する撮像画像Ia中の点Piの歪度合いを基準に、樽型歪みについての条件を決めれば、図20に示す状況等にも良好な支援画像が得られることが分かる。
また、例えば、図21に示すように、スーパーマーケット等の駐車場の駐車スペース53からバック走行で通路55上に出るときのことを考える。例えば、アメリカのスーパマーケット等の一般的な駐車場では、駐車スペース53の奥行きは約6m、通路55の幅は約7.4mであるので、一般的な車両A1が駐車スペース53に駐車しているときの車両A1の後端から通路55の向こう側の端までの距離は約8.4m程度になる。そして、このような状況では、自車A1から通路55の少なくとも向こう側の端までの領域に位置している他の車両等の障害物を撮像画像Ia中に確実に捕捉する必要がある。よって、このような状況に対応するためにも、車両後方の8mの地点Prに対応する撮像画像Ia中の点Piの高さ位置及び歪度合いを基準に、撮像画像Ia中の遠近画像のバランスや、樽型歪みについての条件を決めれるのが望ましいことが分かる。
次に、上記第5の特徴について説明する。この第5の特徴とは、上述の如く、撮像カメラ1のレンズ系11に等距離射影系が採用されているため、車両後方側における真後ろの直近の領域については、樽型歪みの少ない大きな画像サイズで撮像されているとともに、視野範囲Aの左右両縁部についても画像サイズ及び歪みの点で視認性が確保されつつ撮像されているというものである。この第5の特徴について分かりやすく説明するために、レンズ系11に等距離射影系を採用した場合と、他の射影方式を採用した場合とについて、具体的に撮像画像Iaを比較して説明を行うこととする。
図22、図23及び図24は、レンズ系11に等距離射影系を採用した場合における車両後方の約20m先、約1m先及び約8m先を撮像して得られた撮像画像を示している。図25、図26及び図27は、レンズ系11に正射影系(f・sinθ)を採用した場合における車両後方の約20m先、約1m先及び約8m先を撮像して得られた撮像画像を示している。図28、図29及び図30は、レンズ系11に立体射影系(2f・tan(θ/2))を採用した場合における車両後方の約20m先、約1m先及び約8m先を撮像して得られた撮像画像を示している。なお、これらの画像の撮像において、カメラ設置位置、画角等の条件はほぼ等しく設定されている。
まず、図25ないし図27の正射影系で撮像された画像について検討する。この射影系を採用した場合には、図25ないし図27に示すように、バックで駐車を行う場合等に特に重要度が高い車両後方の直近の領域(例えば、枠領域23)の画像は大きいサイズで撮像画像中に映り込んで、この点については良好な結果が得られている。具体的には、図8の枠領域23を撮像した場合の撮像画像中における枠領域23に対応する画像の占める割合は、約22%となっている。しかし、この射影系では、視野範囲Aの左右の縁部の画像が小さく、この部分の視認性の低下が著しい。例えば、図27の撮像画像の左縁部には、図24及び図30の撮像画像と同様に左側から接近してくる車両の画像が映り込んでいるのであるが、その車両の画像が判別不可能なほど視認性が悪くなっている。また、視野範囲Aの外縁部(特に、左右縁部)における画像の樽型歪みが大きく、この点によっても視認性が大きく低下している。
次に、図28ないし図30の立体射影系で撮像した画像について検討する。この射影系を採用した場合には、図28ないし図30に示すように、視野範囲Aの外縁部(特に、左右縁部)を比較的大きなサイズで、しかも歪みも小さく撮像することができていて、この点は良好な結果が得られているいる。しかし、重要度が高い車両後方の直近の領域(例えば、枠領域23)の画像サイズが小さくなりすぎていて、視認性が低下しており、この点が問題である。具体的には、図8の枠領域23を撮像した場合の撮像画像中における枠領域23に対応する画像の占める割合は、約14%となっている。
次に、本実施形態の構成である等距離射影系で撮像した図22ないし図24の画像について検討する。等距離射影系を採用した場合には、図22ないし図24に示すように、重要度が高い車両後方の直近の領域(例えば、枠領域23)の大きな画像サイズで撮像しつつ、視野範囲A中の外縁部(特に、左右縁部)の画像についても画像サイズが小さくなりすぎないように、かつ歪みが大きくなりすぎないように撮像できていることが分かる。すなわち、広い視野範囲Aについて視野範囲A中の各部の重要度を考慮して、画像サイズ及び歪みレベル等が調整され、視認性及び有用性の高い撮像画像が得られていることが分かる。なお、この射影系を採用したときの図8の枠領域23を撮像した場合の撮像画像中における枠領域23に対応する画像の占める割合は、約17%となっている。
以上のように、本実施形態によれば、撮像カメラ1の水平画角φhが少なくとも149度以上に設定されているため、車両後方側における真後ろだけでなく、車両前方側又は後方側における左右の死角領域についても有効な撮像画像を提供できる。
また、撮像画像Ia中に車両の後側バンパー21が映り込むため、撮像画像Ia中の各部分と自車との位置関係を容易に把握することができ、撮像画像Iaの視認性が向上する。
また、撮像カメラ1のレンズ系11に等距離射影系が採用されているため、重要度の高い車両後方側におけ真後ろの直近の領域については、樽型歪みの少ない大きな画像サイズで撮像画像を提供するとともに、広範囲な視野を要求される視野範囲Aの左右両縁部についても画像サイズ及び歪みの点で視認性を確保しつつ撮像画像Iaを提供することができ、その結果、広い視野範囲Aについて視野範囲A中の各部の重要度を考慮して、画像サイズ及び歪みレベル等が調整され、視認性及び有用性の高い撮像画像を提供できる。
また、上述の撮像カメラ1の水平方向Dhに対する傾き角δに関する条件と光軸ALのシフト条件と撮像カメラ1の垂直画角φvの条件との組み合わせによって、車両後端から8mだけ離れた基準地点Prに対応する撮像画像Ia上の点Piの撮像画像Iaの下端からの高さhiと撮像画像Iaの縦寸法Hiとの比hi/Hiが、0.5以上、0.9以下に設定されているため、車両から少し離れた(例えば、5m程度離れた)位置にある他の車両等の障害物についても撮像画像Ia内に確実に捉えることができるようになっているとともに、車両後方側の直近の画像が小さくなりすぎたり、重要度の低い地平線よりも上の領域の画像の割合が大きくなりすぎるのを防止できるようになっている。その結果、車両後方の直近から少し離れた領域について有効な支援画像を提供できるようになっている。
また、撮像画像Ia中における車両後端から後方側に8mだけ離れた基準地点Prに対応する点Piの仮想線I4の樽型歪みよる湾曲度合いについて、その点Piにおける仮想線I4の曲率半径rと撮像画像Iaの横寸法Viとの比r/Viが0.9以上に設定されているため、撮像画像Ia中の自車から8m離れた地点に相当する部分の部分の樽型歪みが所定レベル以下に抑えられ、樽型歪みよる違和感が小さく視認性の高い撮像画像を提供できる。
また、車両後方側の8mの地点Prの撮像画像Ia上の点Piを基準に遠近の画像配分や樽型歪みの度合いついて条件設定を行っているため、例えば、道路脇の駐車スペースからバック走行で道路に出るときや、駐車場の駐車スペースからバック走行で通路上に出るときなどに、有効な視線画像を提供できる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る車両周辺視認装置について説明する前に、第2実施形態に係る技術の技術背景について説明する。
車両後端に設置した設置した撮像カメラ1により車両後方側を撮像する際、理想的には図31に示すように撮像カメラ1を車両の左右中心を示す中心線Acに対して左右に傾けることなく車両の中心線Acに設置するのが望ましいことが分かっている。このような態様で撮像カメラ1を設置することにより、撮像画像が左右非対称になったり、視野範囲A中における駐車枠等の前後左右に延びる線がが撮像画像中で不自然に傾いたり、歪だりするのが防止され、運転者が肉眼で視野範囲Aを視認したときの見え方と撮像画像Iaとを比較したときの違和感が軽減されるようになっている。ここで、図32は、図31で示す態様で設置された車載カメラ1の撮像画像Iaを示している。図32の撮像画像Ia中の枠線画像I21は、図31中の地面に描かれた枠線31の画像であり、撮像画像Ia中のポール状の画像I21は、図31中の地面の基準となる位置33におかれたポールの画像である。
しかしながら、車両によっては、車両後端の中央部にはドアハンドルやゲートハンドルなどが設けられている。このような場合には、図33に示すように、撮像カメラ1は車両後端の中央部からずれた位置に設置されることとなる。この図33に示す態様では、車両の中心線Acの延長線上の基準位置33が視野範囲Aの中心に位置するように、撮像カメラ1が中心線Acに対して左右に傾けられている。
図34は図33で示す態様で設置された車載カメラ1の撮像画像Iaを示している。図34の撮像画像Iaを見ると、画像の不自然な傾きや歪みが生じており、視認性が悪くなっていることが分かる。
そこで、本願出願人は、撮像カメラ1を車両の中心線Acから外れた位置に設置した場合に生じる種々の問題を改善するための技術を発明した。以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図35は、本発明の第2実施形態に係る車両周辺視認装置のカメラ設置形態を示す図である。本実施形態では、図35に示すように、撮像カメラ1が車両後端部における車両の中心線Acから左側(車両の前進方向を向いて左側)にずれた位置に設置されている。撮像カメラ1の具体的な設置形態としては、例えば図36に示すように、後側の凹状のナンバープレート設置部35に設置される場合がある。このような場合、ナンバープレート設置部35の上側中央部には、図37に示すようにゲートハンドル37が設けられるため、これを避けて、撮像カメラ1はナンバープレート設置部35の左上隅部37に設置される場合がある。また、ナンバープレート設置部35は凹状に窪んでいるため、撮像カメラ1がその左側の壁部35aに近接することにより、壁部35aにより撮像カメラ1の視野が遮られる場合があり、これに対する対策も必要となる。
このような車載カメラ1の設置形態に対応して、本実施形態では、上述の第1実施形態に係る車載カメラ1の設置形態及び構成に対する条件に加えて、次のような点で工夫を行っている。
すなわち、図38及ぶ図39に示すように、レンズ系11の光軸ALが撮像素子13の受光面13aの中心位置Paから撮像カメラ1の設置位置の中心線Acからのずれ方向と逆向きの水平方向(この場合は、車両の前進方向に向かって右方向)にシフトされている。この光軸ALの中心位置Paからの水平方向へのずれ量Dbは、例えば、車両の中心線Acの延長線上における車両後方側の基準位置(撮像画像Iaの中心位置になるべき視野範囲A中の中心位置)33の画像I22が受光素子13の受光面13aの中心位置Paに結像されるように設定される。なお、本実施形態では、レンズ系11の光軸ALは、車両の中心線Acに対して左右方向に傾かないように設定されていることを想定しているが、撮像画像Iaに深刻な影響が出ない範囲であれば、光軸ALが中心線Acに対して左右方向にいくらか傾いていてもよい。
このようにレンズ系11の光軸ALを撮像素子13に対して水平方向にシフトさせることにより、レンズ系11の光軸ALを車両の中心線Acに対して左右に傾けることなく、図40に示すように視野範囲A中の基準位置33の画像I22を撮像画像Iaの中心位置に位置させてほぼ左右対称な撮像画像Iaが得られるようになっている。また、レンズ系11の光軸ALが車両の中心線Acに対して左右に傾いてないため、枠画像I21の不自然な傾きや歪みも生じていない。なお、このような水平方向への光軸シフトを行わない場合には、図41に示すように基準位置33の画像I22が撮像画像Iaの中心位置から左右にずれるようになっている。
また、上記のように光軸ALを水平方向にシフトさせることにより、図38に示すように、ナンバープレート設置部35の左側の壁部35aにより視野範囲Aが遮られるのを防止できるようになっている。
以上のように、本実施形態によれば、上述の第1実施形態により得られる効果に加えて、撮像カメラ1が車両の左右中心からずれた位置に設置されていても、車両の左右中心に設置された撮像カメラで撮像した画像に近い撮像画像Iaを提供でき、撮像カメラ1の車両の左右中心からの設置位置のずれによる画像の違和感を軽減できるという効果、及び、ナンバープレート設置部35の左側の壁部35aにより視野範囲Aが遮られるのを防止できるという効果が得られる。
<変形例>
上述の各実施形態では、車載カメラ1により車両後方側の支援画像を提供するようにしたが、車載カメラ1により車両前方側等を撮像して、支援画像として用いるようにしてもよい。