発明の詳細な説明
発明の背景
発明の分野
本発明は一般に、単純および複雑な系においてタンパク質、ペプチド、核酸、リガンド、抗原、脂質、酵素およびその他分子等の被分析物を検出する方法に関する。
背景の説明
発明の背景を示し実施に関して追加的な詳細を提供する本明細書中の開示は、参照によって本明細書に含められ、便宜上の理由から以下の本文において数字を用いて参照され、付属の参考文献にそれぞれグループ化される。
単一細胞における遺伝子発現を迅速にモニターするために使用することができる装置はいくつかの重要な用途を有する。例えば、外科医は多くの場合、手術中に組織学的な方法に依存して腫瘍と正常組織とを識別してがんを取り除く。これらの方法は、異常細胞と正常な細胞とが簡単に識別できる形態学においてよく役立つ。残念ながら、多くの腫瘍の境界が常に区分されるわけではなく、手術を導くよう使用可能な明確な特徴が提供されない。さらに、切片が組織学的染料によって染色された後すら、腫瘍の特徴を測定することが難しい可能性もある。この結果、すべてのがん性組織を除去しようとする試みにおいて不必要な手術を行ってしまうこともありえる。実際、乳がんの手術の中には、多くの場合追加的な手術によって有意な利益があることを示す証拠がないにもかかわらず、がんの原因となるリンパ節を除去することを伴っている。これら凍結切片に遺伝子発現をモニターする能力を有する手技を使用すれば、手術手順の指針となるべく相当な応用があるであろう。またこの手技は後続の手術に使用する種類の治療の指針となることにも有用であろう。
遺伝学の最近の進歩によって、外科医および科学者が細胞融合に新しい洞察を得る基礎が提供された。バイオインフォマティクス(生物情報工学)解析は、ヒトは3万から4万個の遺伝子を有し[1、2]、これら遺伝子を転写、挿入、編集することによって発現された配列タグとして検出される10万個のmRNAを産出する[3]ことを示唆している。この情報によって一度に数千個の遺伝子生成物をモニターすることができるマイクロアレイの設計が可能となった[4、5]。マイクロアレイ技術が広範に適用され、種々の腫瘍および腫瘍治療の予後と関連付けられた遺伝子発現パターンの変化の特徴を明らかにしている[5−7]。実際のところ、これら試験の結果によって腫瘍のより正確な分類が可能となり、これによって外科手術後の治療選択の指針となる。この技術の便益の一つに、不必要な化学療法または放射線療法の低減があるかもしれない[5]。これらの治療手順は患者の病態を悪くすることが多く、後の人生における悪性腫瘍の発生源となる可能性すらある[8]。
マイクロアレイ測定から利用可能となりつつある新しい情報を完全に利用するためには、遺伝子発現生成物の測定においてさらに技術的な進歩が必要とされる。多くの場合腫瘍は非常に複雑であり、形質転換細胞の他に内皮細胞、線維芽細胞、リンパ球、他の細胞種を含有する。全腫瘍組織のマイクロアレイ解析は、これら細胞種の発現生成物を同時に検出するが[4、5]、これは特定の腫瘍細胞との特定の遺伝子発現パターンの関連付けの見分けが付かなくなってしまう現象である。これら解析はさらに被分析物中に異なる種類の腫瘍細胞の存在によっても損ねられる可能性がある。それでもなお、この複雑さにもかかわらず、いくつかの腫瘍中で検出される遺伝子発現パターンは、5年生存率との相関が高く[5]、この情報は患者をどのように治療すべきかを決定する際に使用される主要なパラメータである腫瘍分類を促進するよう使用することができる。
マイクロアレイ解析中に入手された大量のデータは非常に価値が高いが、複数の細胞種から入手した遺伝子生成物の存在によって見分けがつかなくなる。入手は時間のかかる場合があり、また含まれる情報が非常に多いため正確に解釈することが難しい可能性もある。アレイ解析の結果は、腫瘍を正確に分類するためには可能性のあるすべての遺伝子の発現をモニターする必要がないことを示唆している。実際のところ、大部分がAPCおよびp53遺伝子の突然変異の優勢を有する結腸がんの検討から得られた知見が示すように[10]、腫瘍の分類には比較的少数の遺伝子生成物で十分であるようである。モニターするべき遺伝子の種類は、腫瘍の部位(すなわち、乳腺、前立腺、結腸、肺、脳等)外科手術時に通常知られた情報を利用して決定することができる。本明細書に記述される技術によって、外科手術手順において通常調製される凍結切片の単一細胞における複数の遺伝子生成物の発現を測定することができる。マイクロアレイおよび所定の腫瘍種類に最も特徴的な他の解析法において発現がみとめられた遺伝子に集中することによって、腫瘍を正確に分類することができるであろう。本明細書で教示されている装置によって、この情報を非常に迅速な態様で決定することができ、患者の治療に必要な瞬時の決断の根拠として使用することができる。
がんの細胞はその特性を変えることによって、通常は細胞の成長を制限するアポトーシス機序を回避することができる。これら特性のいくつかは、ゲノムの統合性に関する確認を含んでおり、これら特性が失われたり機能不全となると、がん細胞は突然変異を蓄積する傾向があり、このため細胞はより攻撃的となる。腫瘍細胞のすべてが同一の突然変異を持つため、腫瘍は非均一である可能性がある。一部の腫瘍の非均一性は、単一の細胞からではなく複数の異なる細胞から由来することを原因とする可能性すらある。このように、腫瘍を正確に分類するためには、非均一性の程度を確認できるよう、個別の細胞から遺伝子生成物を評価することが最も良い。また、たとえ少数であっても、正常な調節機構への感受性が低下した細胞の存在および位置を検出することが重要である。この能力によって、病理学者および外科医は、腫瘍ががんのさらに進行したステージを示す特徴を有する細胞を含有しているか、およびその細胞が腫瘍内のどこにあるかを知ることができる。この情報が手術時に入手可能であれば、外科医は手術手順を各患者に合うよう適切に調整することができたであろう。例えば、このような細胞が存在しないことは、腫瘍の一部ではないリンパ節の近傍または遠位にあるリンパ節を必ずしも除去する必要はないと思われることを示唆する可能性がある。これとは反対に、小さなそうでなければ著明でない腫瘍中に2、3の進行した細胞が存在することは、より広範囲の手術をする根拠となるかもしれない。このように外科手術時に入手した凍結切片の単一細胞中で遺伝子発現を迅速に定量化しうるセンサを有することが望ましいであろう。さらに、この情報は化学療法および/または放射線療法等の術後治療の選択にも影響するはずである。
病的状態をきたす改変された遺伝子型および/または表現型を有する細胞を識別することの治療上の利点は、長年にわたって認識されてきた。これら細胞を分類する必要性によって、単純な染色手法から細胞内の特定の遺伝子および特定の生成物を識別するための高度に洗練されたアプローチにわたるいくつかの細胞検討のための方法が開発された。細胞機能に関する知識が増加すると、単一の細胞の病的状態を評価するために使用可能な多数のマーカーを提供する。
個々の細胞における細胞の機能を検討するためのいくつかの方法が開発されてきた。蛍光励起細胞分離(FACS)法によって、単一の表面タンパク質への抗体の使用に基づいて、個々の細胞を複雑な細胞混合物から分離することができる。この手法には、組織を構成細胞へと分裂させることが必要となるが、これは時間のかかる過程であるため、FACS解析は日常の外科手順としての使用にはあまり適さない。組織内の細胞中の単一の遺伝子を検出するには、蛍光インシトゥハイブリダイゼーション(Fluorescent in situ Hybridization)(FISH)法、等の手技で十分である。これらの手技のうち最も高感度のものは、かなりの量の組織標本を必要とするが、外科手術中の日常使用に適するほど迅速ではない。さらに、細胞中の固有の蛍光およびその他の要因が高いバックグラウンドをきたすこともある。このため、いくつかの時間を要する内部対照を実行することを要し、これを実施しなければ解析を解釈することは不可能であろう。蛍光共鳴エネルギー移動として知られるプロセスである互いに反応する隣接する蛍光プローブの能力等、その他の蛍光特性が、遺伝子発現の解析を促進するよう使用されてきた。例えば蛍光性のオリゴヌクレオチドを使用して、オリゴヌクレオチドのmRNAの隣接するタンパク質への結合能に基づいて、単一の遺伝子細胞のmRNA生成物を検出するよう使用することができる[11]。これにもかかわらず、これらの手技は細胞の高い固有の蛍光性によって損なわれる可能性がある。時間分解法を使用してこの問題を回避することは可能であるが[12]、これによってアッセイ感度が損なわれ、方法の複雑さが高くなる。さらに、mRNAと相互反応可能な細胞への蛍光プローブを得る必要がある。このように、このアプローチは組織切片の日常検査には実用的ではない。また、光ファイバー技法を使用して遺伝子生成物をモニターする試みもなされてきた[13]。これらの方法もまた組織切片には適用可能でなく、非常に低い応答時間が問題である。
要するに、異なる病状と関連付けられた遺伝子生成物の知識が、迅速に蓄積されつつある。ヒトゲノムの配列が公に入手可能なことおよびマイクロアレイ技術の進歩によって、大量の遺伝子生成物の同時の半定量的測定が可能となった。数種類の正常組織および異常組織における遺伝子発現の変化の特徴を明らかにするよう、アレイ手順が使用されてきた。実際のところ、腫瘍組織における遺伝子発現パターンを、外科手術、化学療法および/または放射線療法の後の腫瘍再発と患者の長期生存率を比較することによって、最も利益があると思われる種類の治療について予測することができる[4]。先に記載したように、アレイ手順は単一の細胞の解析には簡単に適応しない。したがって、この技法の適用により生成されたデータは、非腫瘍細胞における被分析物の存在、および多くの主要が異なる種類の異常細胞を含有する事実によって混同される。このため、たとえ半定量的な態様であっても、遺伝子発現を特定の細胞に関連付けることが難しくなる。さらにアレイ解析は時間がかかり、患者が手術室にいる間に遺伝子発現の迅速な推定に適さない。腫瘍内の単一細胞中の遺伝子発現を測定することによって、腫瘍を分類するためには大きな価値が必要となるであろう。遺伝子発現は、外科手術の範囲および引き続き行われる治療に関する決定を伝達するために使用される主要な構成要素である。この方法は、研究中にどの遺伝子発現生成物が予測値を最も持ちやすいかを知るためにも、適用されるであろう。最終的に、この方法は、発達および細胞分化中に起こるような複雑なプロセスにおける細胞機能の検討にも有用であろう。
発明の要旨
本発明は、被分析物が検出試薬と結合して結合錯体を形成している標本中の被分析物を検出するためのセンサ装置を提供し、該装置は
(a)導電性流体中にイオン性被分析物と検出試薬とを含み、該検出試薬は被分析物とは異なる正味荷電を有する試料(5)と、
(b)試料を区画する第1の透過性高分子ヒドロゲルプレート(3)と第1のスペーサプレート(8)と、
(c)第1のヒドロゲルプレートの外側に並列し、試料とは接触しない陽極(1)と、
(d)第1のヒドロゲルプレートの外側に並列し、試料とは接触しない陰極(9)と、
(e)電位を陽極および陰極に印加する電圧発生装置(10)と、
(f)検出器(11)と
を備え、
被分析物と検出試薬から形成される結合錯体は、結合錯体が電荷を有し、そのため電位印加持の非結合被分析物と反対方向に検出試薬を移動させるため、検出器によって検出される。
また本発明は、被分析物が検出試薬と結合し、結合錯体を形成する試料中においてイオン性被分析物を検出する方法も提供し、該方法は
(A)センサ装置を提供する工程であって、該センサ装置は
(a)導電性流体中にイオン性被分析物と検出試薬とを含み、該検出試薬は被分析物とは異なる正味荷電を有する試料(5)と、
(b)試料を区画する第1の透過性高分子ヒドロゲルプレート(3)と第1のスペーサプレート(8)と、
(c)第1のヒドロゲルプレートの外側に並列し、試料とは接触しない陽極(1)と、
(d)第1のヒドロゲルプレートの外側に並列し、試料とは接触しない陰極(9)と、
(e)電位を陽極および陰極に印加する電圧発生装置(10)と、
(f)検出器(11)と
を備える工程と、
(B)区画に対して、導電性流体中のイオン性被分析物と検出試薬とを追加する工程と、
(C)電圧発生装置を介して電位を印加する工程と、
(D)結合錯体は電位が印加されたときに非結合被分析物の方向とは反対の方向に該結合錯体を移動させる電荷を有しているので、検出器を介して被分析物から形成れる結合錯体を検出する工程と
を含む。
また本発明は、細胞ないし組織切片試料中の遺伝子生成物を、遺伝子生成物に結合して検出可能な生成物を構成する分析試薬を用いて検出するセンサ装置も提供し、該装置は
(a)互いに平行であり導電性材料で被覆された第1および第2の被覆されたプレートと、
(b)互いに平行であり(a)の被覆されたプレートの上方に並列に並べられている第1および第2の導電性プレートと、
(c)(a)の被覆されたプレートの第1の端部と(b)の導電性プレートとを接続する第1の導電性テープと、(a)の被覆されたプレートの第2の端部と(b)の導電性プレートとを接続する第2の導電性テープと、
(d)(a)の被覆されたプレートの第1の端部と(b)の導電性プレートとを絶縁する第1のガスケット絶縁体と、(a)の被覆されたプレートの第2の端部と(b)の導電性プレートとを絶縁する第2のガスケット絶縁体と、
(e)第1および第2の導電性プレートに接続され、電位を導電性プレートに印加する電圧発生装置と
(f)検出器と
を備え、
第1および第2の被覆されたプレートは細胞ないし組織切片試料を区画し、導電性流体および分析試薬が試料に供給されるかあるいは第1または第2の被覆されたプレートの表面に係留され、その結果、電圧発生装置が電位を導電性プレートに印加する時に検出器が細胞ないし組織切片試料中の電荷物質との相互反応を検出し、被覆されたプレートのいずれかの表面および分析試薬へと移動する。
センサ装置は試料の検出の前または検出中に試料を加熱する加熱手段をさらに備えてもよく、試料の検出の前または検出中に試料を冷却する冷却手段をさらに備えてもよい。検出器は蛍光発光、ルミネセンス、比色分析または全内部反射照明検出器でもよく、また位相差顕微鏡法、明視野顕微鏡法、暗視野顕微鏡法、微分干渉コントラスト顕微鏡法、共焦点顕微鏡法またはエピ蛍光発光顕微鏡法によって検出してもよい。電位は被覆されたプレートに対して直角に印加され、全影響が各プレートが正味荷電を有し組織中で電荷を帯びた該被分析物が1平面に向かって移動するように、一定ないし変化していてもよい。あるいは。また電位は被覆されたプレートに対して直角に印加されてもよい。また交互に行われて、いずれの平面でも正味荷電がなく、電荷を帯びた被分析物が、電荷を帯びた被分析物が被分析物試薬と相互に反応するいずれかのプレートから間隔をおき中心空間中で前後に振動してもよい。
また本発明は、細胞ないし組織切片試料中の遺伝子生成物を、遺伝子生成物に結合して検出可能な生成物を形成するとともにセンサ装置の表面に係留された分析試薬を使用することによって検出および定量化する方法も提供し、該方法は
(A)センサ装置を提供する工程であって、該センサ装置は
(a)互いに平行であり導電性材料で被覆された第1および第2の被覆されたプレートと、
(b)互いに平行であり(a)の被覆されたプレートの上方に並列に並べられている第1および第2の導電性プレートと、
(c)(a)の被覆されたプレートの第1の端部と(b)の導電性プレートとを接続する第1の導電性テープと、(a)の被覆されたプレートの第2の端部と(b)の導電性プレートとを接続する第2の導電性テープと、
(d)(a)の被覆されたプレートの第1の端部と(b)の導電性プレートとを絶縁する第1のガスケット絶縁体と、(a)の被覆されたプレートの第2の端部と(b)の導電性プレートとを絶縁する第2のガスケット絶縁体と、
(e)第1および第2の導電性プレートに接続され、電位を導電性プレートに印加する電圧発生装置と
(f)検出器と
を備える工程と、
(B)細胞ないし組織切片試料、導電性流体および溶解性の分析試薬を、センサ装置の第1および第2の被覆されたプレート内の区画に追加する工程と、
(C)電圧発生装置を介して電位を導電性プレートに印加する工程と、
(D)検出器を介して、細胞ないし組織切片試料中において帯電され、被覆された面のいずれかの面へと移動する材料と分析試薬との相互反応を検出する工程と
を含む。
さらに本発明は、細胞ないし組織切片試料中の遺伝子生成物を、遺伝子生成物に結合して検出可能な生成物を形成するとともに試料中で溶解可能な分析試薬を使用することによって検出および定量化する方法も提供し、該方法は
(A)センサ装置を提供する工程であって、該センサ装置は
(a)互いに平行であり導電性材料で被覆された第1および第2の被覆されたプレートと、
(b)互いに平行であり(a)の被覆されたプレートの上方に並列に並べられている第1および第2の導電性プレートと、
(c)(a)の被覆されたプレートの第1の端部と(b)の導電性プレートとを接続する第1の導電性テープと、(a)の被覆されたプレートの第2の端部と(b)の導電性プレートとを接続する第2の導電性テープと、
(d)(a)の被覆されたプレートの第1の端部と(b)の導電性プレートとを絶縁する第1のガスケット絶縁体と、(a)の被覆されたプレートの第2の端部と(b)の導電性プレートとを絶縁する第2のガスケット絶縁体と、
(e)第1および第2の導電性プレートに接続され、電位を導電性プレートに印加する電圧発生装置と
(f)検出器と
を備える工程と、
(B)細胞ないし組織切片試料、導電性流体および溶解性の分析試薬を、センサ装置の第1および第2の被覆されたプレート内の区画に追加する工程と、
(C)電圧発生装置を介して電位を導電性プレートに印加する工程と、
(D)検出器を介して、細胞ないし組織切片試料中において帯電され、被覆された面のいずれかの面へと移動する材料と分析試薬との相互反応を検出する工程と
を含む。
検出器は蛍光発光、ルミネセンス、比色分析または全内部反射照明検出器でもよく、また位相差顕微鏡法、明視野顕微鏡法、暗視野顕微鏡法、微分干渉コントラスト顕微鏡法、共焦点顕微鏡法またはエピ蛍光発光顕微鏡法によって検出してもよい。電位は被覆されたプレートに対して直角に印加され、全体効果として各プレートが正味荷電を有し、組織中の電荷を帯びた被分析物が一方のプレートに向かって移動するように、電位が一定または変化してもよい。あるいは、電位は被覆されたプレートに対して直角に印加されてもよく、電位が入れ替わることによって、また各面上に正味荷電がないよう、電荷を帯びた被分析物が、分析試薬と相互反応する各プレートから離れた中心空間中で前後に振動してもよい。遺伝子生成物は核酸またはタンパク質でもよい。分析試薬はビオチン−ストレプトアビジンの共役であってもよく、あるいは分子指標であってもよい。好適には、同一の蛍光プローブで標識された分子指標の混合物を使用して、腫瘍分類と関連付けられた遺伝子生成物の混合物を検出する。第2の分子指標は内部対照として使用してもよい。好適には、第1の分子指標を使用して制御遺伝子生成物を検出し、第2の分子指標を使用して実験または診断の対象となる遺伝子生成物を検出してもよく、第1および第2の分子指標はそれぞれ、異なる波長で発光する蛍光プローブで標識され、第1および第2の分子指標が同時に解析されるようにしている。制御遺伝子生成物はβアクチンであってもよい。透明なプレートは、インジウムスズ酸化物または二酸化物で被覆してもよい。
発明の詳細な説明
本発明は、ほとんどすべての被分析物の測定に使用可能な迅速、高感度、かつ正確な方法を提供する。特に、本方法は遺伝子発現と組織形態学との関係を視覚化するよう使用することができる。本方法は電位を使用して、ある場所から別の場所への被分析物の移動を促進し、その結果測定可能な領域に被分析物を集中させる。電位を制御することによって、センサ表面において組織試料、電気泳動ゲルまたはその他の媒体から物質を集中させ、その結果測定の感度および速度を向上させる。さらに、電位を使用して、解析中に発生する非特異性相互反応を低減することができ、共有結合、配位または物理的な吸着によってセンサ分子を表面に固定することができる。プレート表面に向かって移動する物質とプレートに付着しているかプレート表面の近傍に固定された試薬との特異的な相互反応によって、解析が開始される。この解析法は、解析対象の細胞またはその他の因子の相対的な位置を変更しないため、特異的な細胞種類または解析対象の材料の特異的な部分と関連付けられる被分析物の識別を許容する。この試料はまた、還元または酸化されることによって、装置の特異性および精度を向上させてもよい。本方法によって、医師および病理学者は手順を行う時に決定を行うことができ、例えば、Pap試験の基本的な読み取りあるいはルーチンに大量に行われる他の解析を行う技術者等、これらの業務にあまり熟練していない者による解析の助けになる。この情報は、手順が完了した後、治療に関する意思決定を行う際にも有用となるであろう。
一実施形態において、本発明は組織切片における遺伝子発現生成物を測定するよう使用することができる。これら遺伝子発現生成物は、メッセンジャーRNAないしその他RNA等の核酸、または酵素ないし転写因子等のタンパク質であってもよい。組織切片を使用するよう提案されるこの方法は、外科手術時に採取したものを初めとして組織切片または細胞を、電気を通す物質で被覆したあるいは電気を通すよう作成された2枚の透明なプレートまたはスライドの間に載置する。電位が組織のいずれかの側に印加されると、組織内の電荷を帯びた物質をいずれかのプレートに向かって移動させることができる。正の正味荷電を有する物質は陰極に向かって移動し、負の正味荷電を有する物質は陽極に向かって移動する。電極としての働きをする透明なプレートに印加される電位には、種々の態様において、一定であってもよく変化をしてもよい。電位が一定である場合あるいは全体的効果として各プレートが正味荷電を有するよう電位が変化する場合、組織内の電荷を帯びた被分析物は一方の電極に向かって移動する。いずれの板も正味荷電を有さないよう電位が交互に印加される場合は、被分析物はいずれの電極とも離れた中心空間で前後に振動し、ここで測定試薬と反応する。
本方法は組織切片に限定されず、他の物質を検出するよう適用することが可能であり、または2枚のスライドの使用を必要としないこともある。遺伝子発現の変化の結果変化した代謝産物もまた検出される可能性がある。
第2の実施形態では、試料は、溶液中で行われ、センサ装置のいずれかの表面、いずれかの表面の近傍、あるいはいずれの側からも離れた場所で行うことができる相互反応において、結合剤によって認識される。形成される錯体は結合剤とは異なる電荷を有している。電位をプレート全体にわたって印加した結果、錯体がいずれか1枚のプレートに向かって移動してそこで測定を行うことができる。結合剤および錯体は異なる電荷を有するため、錯体から結合剤を分離させることが可能であり、これは測定ノイズを低減させるための現象である。この態様で作動すると、本装置は電荷の変化の原因となるすべての相互反応をモニターするために使用することができる。これには、酵素活性が基質の電荷を変化させる酵素相互反応が含まれる。
このような実際の測定は、電荷を帯びた物質が1枚または両方のプレートに到達すると行われる。ほとんどの場合、測定は蛍光強度の変化に依存する。蛍光強度の検討には2つの基本的な方法がある。一方法では、蛍光プローブが表面に付着している。被検出物が表面に向かって移動することによって、蛍光強度が増加するか、または結合性検出試薬の蛍光強度が減少する。例えば、被検出物の分子指標への結合によって蛍光強度が増加すると思われる。急冷、エネルギー伝達、または(例えばタンパク質分解またはヌクレアーゼ分解等)表面蛍光プローブの破壊を原因とする蛍光強度の減少を利用することができる一方で、このことによってバックグラウンドが高くなるという事実から感度が低下するであろう。検出の第2の方法は、被分析物が持つ蛍光プローブを表面へ移動させる能力に依存する。この場合、蛍光検出試薬は、帯電している場合も帯電していない場合もあり、装置の検査の対象とならない側へと移動させる。被分析物を蛍光プローブへと結合することによって、正味荷電を変化させ、検査の対象となっている表面へと移動させるであろう。蛍光プローブ上の電荷もまた、蛍光プローブを切断したり(例えばリン酸を追加する等)修正したりすることによって変更することができるが、この手順によって酵素の検出も許容してしまうであろう。この方法は、ほとんど破壊不能であり非常に輝度の高い、量子ドットとともに簡単に使用することが可能である。
両方の方法ともそれぞれ利点がある。第2の方法は、(難解な化学が要求される作業である)表面標識を要求しないため好適である。この方法によって、はるかに高い試薬濃度を持つ試薬を使用することができ、電気泳動後に発生する物質を物理的に分離するため生成するバックグラウンドも非常に低い。第1の方法の利点としては、結合された被分析物と遊離した被分析物とは分離されないため、低親和性の相互反応の検出が可能であり、多数の光学的技法とともに使用することが可能である。実際、蛍光プローブが表面に付着しているため、表面に対する照射を制限する光学的技法を使用する必要はない。
センサ装置を加熱および/また冷却することによって、試薬間の相互反応またはさらには被分析物の増幅(すなわちPCRによる増幅)を促進する。表面上の蛍光強度は、当業においてよく知られている方法を用いるTIRF顕微鏡法(TIRFM)を初めとするTIRFを利用して、モニターしてもよい。これら測定を拡張するためにイオン系の方法もまた考案されてきた。表面上の蛍光プローブをモニターするための別の手順は、2個の光子の使用を伴う。これら方法において、個々の試料を励起するためには不十分なエネルギーしか持たない光子が、同時に表面上に方向付けられている。使用可能な別の手順は、表面上に収束可能なレンズ野の深さが浅いレンズの採用である。比色分析法もまた、たとえば被分析物の検出錯体が表面に到達し、色を呈した時に使用することができる。
組織切片を検討しようとする時、組織切片を自動的に走査できる方法を使用することは有用なことであり、医師または病理学者が時間をかけて最大の検査対象領域を見つけることから解放している。ひとたび、組織切片が蛍光分析法によって検出されると、これら切片は手動で検査される。
上記に規定したように、被分析物と試薬との間の相互反応の検出は、蛍光分析技法を用いて実行してもよいが、比色分析および化学発光法等の他の可視的な方法もまた同様に適用することができる。mRNA等の核酸の遺伝子発現の検出に最も有用な技法の一つは、分子指標を採用している。これらは種々の方法を用いてセンサプレートに付着させることができる。最も便利なものの一つは、ストレプトアビチンが被覆された表面にビオチン化した分子指標を付着させることを伴う。この方法において、米国アイオア州(52241)コラルビルにあるIDT Technologies, Inc.を初めとする分子指標合成を専門とする企業によって採用されているような標準的な方法によって、指標がビオチン誘導体として合成される。ビオチン化した分子指標を面の表面に付着させることは、該指標を面の表面にすでに付着されているストレプトアビチンに付着させることによって実行可能である。ストレプトアビチンの表面への付着は当業において広く知られており、プレートに共有的に付着したビオチン誘導体と反応させたり、米国ミズーリ州(63195)セントルイスのSigma Chemical Co.から入手されるようなウシ血清アルブミン−ビオチン共役物と相互反応させることによって達成することができる。センサ装置のプレートとプレートとの間に電荷を導入することによって、組織からセンサの正に電荷を帯びた表面へのmRNAの移動を促進する。この移動は、少量(すなわち0.1〜2%)のオクチルグルコシド等の非イオン性界面活性剤によって促進可能であり、この物質は組織切片中の細胞を囲繞する原形質膜を分裂させる。これは、プレート表面上の電荷を、負に電荷を帯びた核酸が直接プレート表面に付着することがないような態様で変化させることによっても促進することができる。mRNA遺伝子生成物を分子指標と相互反応させることは、当業において標準的な方法を使用した分子指標の設計によって高い特異性を持つようになったプロセスであるが、これによって蛍光発光が増加する。蛍光発光は解析対象の物質の真上または真下で起こるため、蛍光発光量は試験対象の物質の細胞または局所部分中にある核酸量と略比例している。
解析用センサの表面と共有結合した蛍光試薬を使用する必要はない。例えばmRNAは、ペプチド結合によって置換された糖リン酸骨格を有する核酸のアナログであるペプチド核酸(PNA)を使用してモニターすることができる。PNAは核酸と同じ結合特異性を有しており、当業において核酸と相互反応するオリゴヌクレオチドを作成するためによく知られている原理を用いて設計することができる。しかし、核酸には特徴的である負に強く電荷を帯びたリン酸骨格構造が不足しているため、センサでの測定にはPNAのほうが核酸よりもすぐれている。このため、PNAはリン酸緩衝液中では略中性であり、測定装置のいずれかの表面へと移動する傾向もあまり強くない。PNAがmRNAまたは他の核酸と結合すると、錯体は、核酸から誘導された錯体の一部が負に電荷を帯びた骨格であることを理由に、負に帯電している。したがって、この錯体は陽極に向かって移動するであろう。PNAが蛍光プローブを含有する場合、錯体を形成することによって、蛍光プローブは陽極へと移動し、陽極においてTIRFM、共焦点顕微鏡法、2個または3個の光子を用いて試料を励起する顕微鏡技法、またはレンズ野の深さが非常に浅い対物レンズを使用して、蛍光プローブを簡単に測定することができる。PNAに付着した蛍光プローブは正に帯電していれば、非結合PNA分子が陰極に向かって移動するであろう。こうして、陽極における蛍光発光を測定することによって、試料中の特異的なmRNA遺伝子生成物を検出および定量化することが可能である。
物質を測定するには蛍光発光を測定可能なほとんどすべての手順を使用することができる一方、光学的顕微鏡での技法を行うことが最も有用である。組織および組織切片中において、技法の感度を制限するバックグラウンドの蛍光発光がみとめられる場合には、この目的に向けて特に作成され日常使用に適合しやすい装置TIRFM等の顕微鏡技法を使用している。TIRFMは単一細胞の検討も可能な非常に感度の高い手順であり、RNAの単一分子の折り畳みの検討に使用されてきた[14]。TIRFMは、光が屈折率の異なる2個の光学媒体どうしの界面から反射する場合に発生する電磁放射の物理特性を利用している。TIRFMにおいて、光線は(例えばガラス、石英ガラス、サファイア等)高い屈折率の物質を通過し、(例えば水溶液、組織切片等)より低い屈折率の物質との界面に到達するようにする。入射角が臨界角として知られている値を下回る場合、光はすべ屈折率の高い物質へと反射される。界面では、電磁波または「エバネセント」定常波が生成されるであろう。界面において波のエネルギーは最大となり、より屈折率の高い表面からの距離の関数として、例えば、電磁波が水溶液を浸透するつれ、指数関数的に減衰する。エバネセント波光におけるエネルギーは、表面に付着し屈折率の高い表面の近傍(100〜400nm)にある蛍光プローブを励起することができる。TIRFMセンサ(すなわち屈折率の高い物質)の表面上かそのごく近傍にある物質を照射するTIRFMの能力は、エバネセント波が移動する距離が制限されていることに起因する。TIRFMの物理原則の結果、他の種類の蛍光発光顕微鏡法において問題となることが多かった組織試料の固有の蛍光発光に起因する望ましくないバックグラウンド光は、事実上除去される。この高い信号対雑音比も、圧倒量の非特異性汚染破片の面における微量物質を検出し定量化するTIRFMの能力の原因となる。
TIRFMの使用によって、被分析物を検出するために使用されている試薬が必ずしもセンサ表面上に付着しない条件において、解析用センサを使用することが可能になる。このようにして、細胞膜の完全性は分裂させるが組織の全構造は分節させない非イオン性界面活性剤等の物質で処理された蛍光PNAが組織切片に追加される場合、蛍光PNAは核酸遺伝子生成物(すなわちmRNAおよびその他RNAポリメラーゼ誘導核酸)と相互反応する。電位の適用によって、蛍光PNA−RNAハイブリッド錯体は、センサ表面へと移動し、そこで蛍光PNAが検出される。複数のPNAを使用し、複数の蛍光プローブを使用することができるため、この技法によって多くの異なる解析物の同時測定が可能であり、このことは検討中の遺伝子発現生成物を特定するために重要な利点である。
TIRFMにおいて使用されるセンサ表面に対して電気化学的分極を加えることによって、解析の感度および速度をさらに増加させることができる。TIRFMセンサチップをインジウムスズ酸化物(ITO)、スズ二酸化物(SnO2)またはその他のいくつかの金属で被覆しても、紫外線近傍または可視光波長でTIRFMに使用される能力には影響を及ぼさない。これは、測定を行う際の検出感度および測定は増加する可能性がある。例えばTIRFMセンサ表面上の電場を変化させることによって、核酸オリゴマーのセンサ表面への移動を促進し、そこで核酸オリゴマーはセンサ表面上の他の物質とハイブリダイズすることができる。電場が存在することによって、原形質膜を分裂させることによって、電気穿孔法として知られるプロセスである、mRNAを組織切片からの放出を促進することができる。このことによってmRNAの陽極センサ表面への移動を促進するであろう。これはまたmRNAとPNA等の他の物質との相互反応も促進するであろう。分子指標等の適切な蛍光プローブがセンサ表面に付着している場合、この原理を使用して、単一細胞中のほとんどすべての遺伝子生成物を選択的に測定することが可能である。組織切片は外科手術中にセンサ表面上に直接載置されるため、この手順によって細胞内の遺伝子生成物の迅速かつ定量的な解析を行うことができ、組織内の発現パターン細胞を区別することができる。
いくつかの異なる種類の蛍光プローブは検出用に使用されるよりも、分子により組み入れられており、オレゴン州ユージンのMolecular Probe、アイオア州コラルビルのIntegrated DNA Technologies(IDT)が販売している。蛍光プローブの最も有用な特性の一つは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)としての知られている共鳴エネルギー移動(RET)を行う能力である。隣接する蛍光プローブ間のRETは、一方の吸着スペクトルが他方の吸着スペクトルと重なると、発生する。最初にForsterによって確立された原理によると[15]、2個の蛍光プローブの間のRET量は両者の距離の七乗に反比例して変化する。このように蛍光プローブが隣接している場合はRETはほぼ提要的であり、蛍光プローブ間の距離が100Åおよび多くの場合それ未満となるとほぼ検出不能となる。RETの実施中、より短い波長の光を吸着する蛍光プローブからのエネルギーは、吸着スペクトラムが第1の蛍光プローブの発光スペクトラムと重なる蛍光プローブのエネルギーへと移動する。これによって第1の蛍光プローブが発する光の量が減少し、第2のプローブが発する光の量が増加する。この第1の蛍光プローブが発する光の減少は、蛍光プローブ間の距離を推定するために有用である。またこの減少は、RETを実行可能な蛍光プローブで標識した2個の分子間における錯体の形成を評価するために使用することもできる。2個の蛍光プローブ間のRETの実行によって通常、発せられる光のスペクトルが変更する。発光スペクトルの測定は2個の蛍光プローブ間の距離の定量化にも有用であり、βラクタマーゼの存在時にみとめられるような酵素反応をモニターするために広く使用されてきた。RETはまた、被分析物およびリガンドと受容体との間の相互反応の定量化にも有用である。これら目的のための利用は広く知られている。
光を吸着する分子のすべてが蛍光を発生するわけではない。蛍光プローブと非蛍光性分子との間でRETが発生する場合、非蛍光性分子は蛍光プローブの蛍光発光を消光する。蛍光プローブおよび消光分子が互いに十分近接している場合、すべてあるいはほとんどすべての蛍光エネルギーは消光し、わずかな光しか発せられないかあるいは光は全く発せられないであろう。この特性は、発せられた光の量は被分析物の量に直接比例するため、蛍光プローブと消光分子との間の接触を分裂させる被分析物の測定に特に有用である。被分析物が存在しない場合、光は全く発せられず、非常に低いアッセイブランクが生じる。この特性によって核酸の測定用に設計されたヘアピン形状の分子である「分子指標」が開発された[16]。被分析物が存在しない場合、蛍光プローブを含有する分子指標の端部は、消光分子を含有する分子指標の端部と、核酸のハイブリダイゼーションの原因となるものと同様水素結合によって、隣接して固定されている。これら相互反応が核酸の第2の分子の結合によって分裂すると、蛍光プローブと消光分子との間の距離はRETに必要な距離を上回り、蛍光発光は簡単に目に見える。RETとTIRFMとを組み合わせることによって、各技術に関連する好適な特性を向上させることができ、その結果被分析物の測定を促進することができる。RETおよびTIRFMの組み合わせた感度により、単一分子の検討が可能になる[14]。
装置の好適な適用において、電場をかけることによって、被分析物がセンサ表面へと移動し、ここで被分析物は固定された分子指標または他の蛍光プローブと相互反応する。この結果固定された蛍光プローブの蛍光発光に変化が生じる。分子指標は、その蛍光発光は核酸との相互反応後に高感度で予測可能な態様で増加するため、この装置における使用に特に適している。この種類のセンサの制約の一つは、物質をセンサ表面に付着させる必要性である。このことは、センサの構成において追加的な手順を必要とし、表面に付着可能な物質の量によって制約を受ける。通常この制約は重大なものではないが、センサ構成の費用を増大させる。本装置において使用されるセンサ表面に材料を付着させるためには広範な化学手法が利用可能であり、これを行うための試薬はペンシルバニア州ブリストルのバートラムロード2731にあるUnited Chemical Technologies,Inc.を初めとするいくつかの企業から入手可能である。さらに、追加的な付着点として役に立ちうるデキストラン等の化合物を付着することによって、表面の「深さ」を大幅に増加させることができる。
本装置を作動させるために表面に検出試薬を付着させる必要はない。しかし、センサの別の好適な実施形態は溶解性の検出試薬の使用に基づいている。これら試薬は表面結合物質の使用と比べて大きな利点を有している。第1に溶解性試薬はセンサ表面とは結合していないため、これら試薬を使用して表面結合手順を取り除くことによってセンサ設計が向上する。第2にこれら試薬は多くの場合大量に使用することができる。これは検出の感度および速度を増加することができる現象である。第3に、これら試薬は被分析物との相互反応を行わない限り表面に到達しないよう設計することができる。これによって、被分析物が存在しないときにみとめられるバックグラウンド蛍光を低下させることができる。実際、過剰な試薬は解析中にセンサ表面から離れるよう移動するよう設計することができる。これはバックグラウンドをさらに最小化可能な現象である。第4に、検出試薬と被分析物との相互反応が表面とは離れたところで発生する可能性があり、これは表面現象に起因する人工物を最小化する。この中には、被分析物と検出試薬との相互反応を防止可能な、表面に対する非特異性吸着が含まれている。これら吸着は装置の表面上への電位を変化させることで最小化することもできるが、これによって解析手順がさらに複雑になる。第5に、これら試薬は、簡単に光退色せず量子効率が非常に高い蛍光プローブである量子ナノドットとともに使用することに適している。量子ナノドットは米国カリフォルニア州ヘーワード、リサーチロード(26118)のQuantum Dot Corporationから購入することができる。さらに、量子ナノドットは短波長で励起することができ、蛍光スペクトルが狭い。このことによって、わずか1つのレーザ光線によって励起後に複数の被分析物を同時に検出することができ、これは一時に多くの遺伝子生成物を観察することが望ましい場合に遺伝子発現を解析する際大きな利点となる。
被分析物が観察される前にセンサ表面に到達する必要があることは、特異的相互反応を非特異的相互反応と区別することを促進するTIRFMの一特性であるが、これによって応答時間が遅くなる。またこれは、特に測定すべき物質がセンサ表面に到達することが妨げられている場合にTIRFMの感度を低下させる可能性もある。mRNAまたはタンパク質等組織切片に固定された遺伝子発現性生物は、電荷を帯びた被分析物が検出を行うことができるセンサの表面へと駆り立てられるよう切断されることはないと思われる。組織切片に対して直角に電荷を印加することによって遺伝子生成物の横方向の核酸が低減され、その結果観察される蛍光発光が遺伝子を発現する細胞と関連する確率が高まる。さらに電荷を変化させることによって、表面分子間の相互反応を加速させ非特異結合を減少させることができる。
高倍率顕微鏡レンズを使用しなくてもTIRFもまたモニターすることができる。この場合、試料内で個別の細胞を識別するために必要とされる空間分解能が失われる。それにもかかわらず、腫瘍の周囲を走査して縁部が外科手術中に除去されたかどうかを決定する試みを行っている際など大きな領域で発光をモニターすることが有用な場合がある。TIRFセンサに対する大きさの制限はほとんどなく、病理学者によって通常使用されているセンサとは異なる大きさのセンサもこの技法にとって価値があると考えられる。
TIRFMの測定は、対物プリズムの使用を介していくつかの異なる倍率で行うことができる。商業的に入手可能な60倍および100倍の顕微鏡用対物レンズを使用する高倍率TIRFMは、現在はこの目的用に特別に設計された装置を使用して達成することができる。この目的に有用な機器は、米国ニュージャージー州(07927)シーダノール、シーダノールロード240のMicron Optics等のニコン顕微鏡の販売店から購入することができる。これらの装置では、レーザ光が直接対物レンズ、油層、および約0.17mmのカバースリップを通過するよう導かれる。これら装置は組織試料中の蛍光発光を視覚化するためにすぐれている。微分干渉光学手法とともに使用する場合、これら顕微鏡はまた被分析物から由来した細胞をモニターするためにも使用することができる。
TIRFM用の商業的顕微鏡に使用される対物レンズは倍率が高いため、迅速に組織切片を走査することは難しい。センサとともに使用することも可能な低倍率のTIRFMに対する必要性がある。本明細書で教示されているように、この必要性は試料を照射する新しい方法を設計することによって満たされる。広範な画像をモニターするこの戦略を使用することによって、試料をはるかに高速に走査することができる。
データ収集は、電荷結合素子(CCD)カメラまたは十分な感度を有するそれに関連するカメラを使用して行うことができる。これらカメラの大部分は、Micron Optics等の顕微鏡販売店から商業的に入手可能である。はるかに感度の高い増倍型CCDカメラもまた利用可能である。これらカメラもまたほとんどの顕微鏡販売店から購入することができる。光強度の測定は、大部分の高品質顕微鏡の光学ポートの一つに取り付けられた光電子増倍管を使用して行うこともできる。この目的のために設計された有用な装置の一つは、米国ペンシルバニア州(17036)ヒュメルスタウン、スカウトレーン314のC&L Instrumentsから購入可能である。
低倍率の対物レンズを使用した場合でも、センサの表面を走査することが好ましい場合も多い。これによって、組織切片のサブセット中の遺伝子生成物を検出し、それによって正常および病理組織を区別することができる。このプロセスは、センサを保持するほとんどの顕微鏡販売店から入手可能な顕微鏡のステージを手動で動かすことによって達成することができる。コンピュータ駆動によるステージ移動・データ収集と組み合わせることによって、高い分解能で全センサ表面の画像を考え出すことができる。次に操作者は、特に関心のある領域を検査することができ、これはこの方法の時間節約という特徴をなす。
本明細書で教示されている解析技法は核酸の解析に限定されていない。もっともこの用途は重要な用途であるが。例えばタンパク分解酵素にセンサ表面に付着した特異物質を開裂させることによって、タンパク分解酵素を測定することが可能である。このような方法のうち一つは、蛍光プローブおよび消光剤を含有するペプチドの調製を伴う。ペプチドのタンパク質分解は蛍光プローブを消光剤から解放し、その結果蛍光発光が強化される。タンパク質分解はまた、基質およびそれに付着した蛍光プローブを観察のためにセンサ表面へと移動させる基質の電荷を帯びた構成要素を除去することもできる。同じように、この手法はリン酸化状態を改変しその結果被分析物の電荷も変化させる酵素であるキナーゼおよびフォスファターゼの測定にも適用することができる。蛍光キナーゼおよびフォスフォリパーゼ基質の電荷が変化することを使用して、測定が行われるセンサ表面への基質の移動を促進することができる。またこれは、これら物質の酵素解析の基盤を形成している。
測定の対象となる被分析物の検出に蛍光技法を使用することは必須ではない。酵素的な被分析物は、センサの表面に有色試薬を沈着させる酵素活性によって検出されることも多い。
上記に説明したように、本方法は、結合分子または酵素を初めとする被分析物との相互反応を原因とする任意の蛍光物質の電荷の変化を測定するためにも使用することができる。電荷の変化は、複数の酵素結合反応など連続的に起こるイベントによっても起こる。
本発明は以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、実施例は特許請求の有効な範囲を制限することを意図していない。実施例、本明細書全体および請求項におけるすべての部分およびパーセントは、他に規定のない限り最終組成物の重量を単位とする。
実施例
実施例1
全解析手順中に分析試薬が装置の一表面に結合した、凍結組織切片中の遺伝子発現をモニターするセンサ装置
図1は組織切片の細胞中にある遺伝子生成物の測定が可能なセンサ装置の特徴を示す。装置のこの好適な実施例は解析を行う物質(すなわち組織切片)の両側に載置された2枚のプレートからなる。プレートを組織切片に対して押し付けることによっていくつかの遺伝子生成物を検出することが可能であるが、一方ではこれは比較的効率の低いプロセスであり適切に制御することが難しい。操作の好適な態様は図1に示すように組織に直角のプレートとプレートとの間に磁場を導入することである。使用される電位は広い制限条件下で変化することが可能であるが、通常は水の電気分解を促進し装置内の気泡の蓄積を防止する電位よりも小さい。このように、約200μmの厚さの凍結組織切片では、結果として1cmあたり50ボルト程度の電位が得られ、この値はmRNA等の核酸の高速の電気泳動を促進するにあたって必要な量よりもはるかに大きい。しかし、組織が組織の切片作成中に凍結および解凍によって部分的に損なわれる場合であっても、組織試料中のmRNAの電気泳動の移動性が細胞膜によって妨げられる可能性がある。通常遺伝子生成物は、非イオン性洗浄剤(例:0.1〜1%のオクチルグルコシド)またはその他物質等、細胞骨格構成要素または細胞のその他構造要素を大きく変更することなく細胞膜を分裂する物質を含有することによって、その解析用利用可能性が増す。組織の分裂は、これら物質の可能な限り最小量を使用することによって、最小化することができる。組織切片の組織学的解析を遺伝子発現解析の結果と比較する場合、組織損傷を低減するための注意を払うべきである。
図1に示す装置を使用して負に電荷を帯びたRNAポリメラーゼ生成遺伝子生成物を検出するために使用することができる2つの原理法がある。うち1つの原理法では、検出試薬(例:分子指標)が陽極の働きをするプレート表面に付着している。他の原理法は、実施例2にて説明するが、検出試薬は手順中に陽極の近傍に配置されるようになる。
検出試薬をセンサ表面に付着させることは、種々の方法によって行うことができる。最も便利な方法は、ビオチン−ストレプトアビチン縮合手順を塩鵜することである。この方法ではビオチン部分は、ビオチン誘導体を適切に誘導体化した表面に対して直接付着することによって、あるいは、ウシ血清アルブミンビオチン錯体をセンサ表面に吸着させることによって、表面に付着されている。ビオチニル化された表面は次に、4個のビオチン結合部位を有するストレプトアビジンと反応する。ストレプトアビジンを表面に結合させることによって表面上にビオチン結合部位を形成し、該ビオチン結合部位はビオチニル化された分子指標等のビオチニル化された検出試薬を固定化するよう使用することができる。ビオチンを指標に内蔵することは、指標が合成される時に行うことができる。例えば図2に示す指標は、βアクチンを認識するよう設計されていたが、IDT DNA TEchnologies,Inc.の合成中に組み込まれたビオチンを含有している。この組み込みはミズーリ州(63178)セントルイスのSigmaから購入したストレプトアビジンへの付着を可能にするために行われる。該ストレプトアビジンは、米国Delta Technologiesから購入したインジウムスズ酸化物(ITO)を被覆したスライドの表面に吸着されたビオチニル化ウシ血清アルブミン(同じくSigmaから購入)に付着されていた(図3)。
化学的にビオチニル化されたITO表面の調製には多くの方法が、当業においてよく知られている。有益な一つの方法は、ITO被覆スライドを10:2:0.6の比率のH20/H202/NH3で55℃において75分間処理したあと、真空オーブン中で165℃において150分間焼き、水分を除去する。次にスライドを乾燥窒素中で冷却し、トルエン中の0.5%3−アミノプロピルトリメトキシシランで処理した。両試薬ともミズーリ州セントルイスSigma−Aldrichから購入することができる。次にこれらをメタノールで洗浄し、結果生じる表面のアミノ基は、ビオチンアミドカプロエート、N−ヒドロキシスクシニミジルエステルアミノ基と反応可能な、オレゴン州(97042)ユージンウィロウクリーク29851のMolecular Probeから入手したビオチンアナログとスライドを反応させることによってビオチニル化する。
化学的に洗浄されたスライドもまた、ビオチン含有ならびにその他化合物との結合を促進するチオール、アルデヒドおよびその他の基によってスライドを誘導体化できる他の薬剤によって処理することもできる。これらは、ポリエチレングリコール(PEG)およびPEG誘導体によってスライドを誘導体化する薬剤によっても処理することができる。これら薬剤はShearwater Corp.(米国)、アラバマ州(35801)ハンツビルチャーチストリート1112から購入することができる。これらスライドはまた、Sigmaから入手するSigmacote等の試薬で処理することもでき、この試薬は表面を疎水性にし、ビオチニル化した血清アルブミンの吸着を促進する。
光学的に透明な室壁を作成するために使用されるITOまたは他の金属で被覆されたスライド全体にわたって電位を導入することによって、mRNA等の負に電荷を帯びた遺伝子生成物を陽極へと移動させ、陽極において分子指標など検出試薬と相互反応することができる。実際のところ、分子指標は被分析物が存在しない場合はバックグラウンド蛍光が通常低く、当業においてよく知られた方法を使用して所定の遺伝子生成物と特異的に相互反応するよう設計することができることから、該分子指標は好適な検出試薬である。実際のところIDT DNA TEchnologies Inc.等のDNAおよび分子指標の合成を専門とする企業は、適切に機能する指標の設計支援業務を行っている。
分子指標は設計対象となる被分析物と結合する際に、より蛍光強度が強くなるであろう。この現象によって、指標の形状が変更し、消光剤を蛍光プローブから移動する。mRNAが指標と相互反応するためには、mRNAは細胞環境から陽極センサ表面へと移動しなければならない。このことは電位の存在によって促進される。mRNAの分子指標との相互反応は、遺伝子生成物の陽極へと運動させるために使用される電位を変化させることによって、促進することができる。mRNAと指標との相互反応を改善できる典型的な分極化パターンを表す図が図4に示される。このテーマに関する多くの変更によって、遺伝子発現の測定に有用なmRNA指標の十分な相互反応が提供される。しかし、この図において示されるものを使用することは必須ではない。電位の変化は、定電圧装置または同様の装置によって実行することができる。有用な装置としては、米国テキサス州(78733)オースチン、テニソンヒルドライブ3700のCH Instruments製の装置があげられる。
単一の分子指標を解析中に使用することができるが、通常は、少なくとも2つの異なる指標を使用することが好適であり、うち一つは方法論的内部対照に使用するよう意図されている。この指標は、ほとんどの細胞中で大量にみとめられ、大部分の病態においても発現が大きく変化しないβアクチン等の遺伝子生成物を検出するよう作成することができる。もう一方の指標は、実験的ないし診断的に関心の対象となる生成物を検出するよう作成され、指標は異なる波長で対照指標の同時解析ができる蛍光プローブで標識することがのぞましい。これらの遺伝子生成物の比率が変化するという知見は、遺伝子発現中の重要な変化が組織内で発生したことを強く示唆している。さらに多くの組織切片は、2個以上の細胞型を有している。別の対照は、各細胞型中におけるアクチンの発現と病的状態と関連付けられた遺伝子生成物とを比較することを意図している。
実験的ないし診断的目的で測定を行う遺伝子生成物の選択は、予備検討または発表済みのマイクロアレイ解析の結果に依存するであろう。これらの多くは当業に精通した者に対してはすでに既知である。さらに、診断的関心のある複数の遺伝子生成物を同時にモニターすることも好ましいと思われる。例えば前述のように、マイクロアレイ解析は、複数の異なる遺伝子生成物が乳がんの特異型と関連付けられることを示唆してきた。同一の蛍光プローブで標識され、腫瘍分類に関連付けられたいくつかの遺伝子生成物を認識する指標の組み合わせを使用することによって、この種類の主要を検出する確率を高めることができる。この理由は、これら遺伝子生成物のうちの任意のものあるいはすべてとこれら指標との相互反応が、特定の蛍光発光スペクトルと関連付けられるからである。異なる種類の主要と関連付けられた遺伝子生成物を認識する指標の集まりを、発光スペクトルの異なる蛍光プローブで標識することによって、腫瘍内での2分類以上から誘導された病理細胞を検出、分類する、または腫瘍の型をより正確に分類することができる。これは診断の実践において大きな進歩である。解析は外科手術時に入手された切片に対して行うことができるため、センサの使用によって、外科医および病理学者は、外科手順を患者に最も適した様式へと外科手順の最中に変更することが可能になる。
表面に付着した検出試薬を用いてセンサを作動させることによって生じる2つの原理的な利点がある。第1の利点は解析の単純性である。手順の最中全体にわたって検出試薬は組織から物理的に切り離されているため、蛍光励起を陽極または陰極に制限する方法を使用する必要はない。したがって、TIRFMならびに多光子励起等の手順を使用してセンサ表面における指標と遺伝子生成物との相互反応をモニターすることができる一方、指標が表面のみにみとめられるということは、これら技法は必要ないということである。実際のところ、バックグラウンド照明が十分制御できる場合、標準的な蛍光顕微鏡的技法を使用することが可能な場合が多い。これによって、必要な装置の費用が低減される。また第2に、表面に結合した蛍光プローブの使用は結合および非結合被分析物の物理的分離を必要としない。これによって親和性の低い相互反応のモニタリングが可能である。これは分子指標の問題ではない一方、蛍光プローブと表面結合タンパク質との相互反応等の他種類の解析手順に関する問題でもありうる。
固定された検出試薬を使用する利点も、いくつかの要因によって相殺されうる。これら要因は、試薬の表面への付着が困難であること、表面に付着できる材料の量の制限、センサ表面への付着に起因するリガンド認識への影響、光退色しうる有機着色料を使用する必要性、および非特異的反応の影響を含む。後者は、ウシ血清アルブミンおよびポリエチレングリコール等の薬剤を使用してこれら反応を阻止することによって最小化できることが多い。センサ表面に載置可能な基の数に対する制約は、付着部位として役に立つデキストランおよび他の薬剤で表面を被覆して表面積を増加することによって一部相殺することができる。これら技法は、当業に精通した者に対してはよく知られている。
実施例2
解析中に分析試薬が遺伝子生成物とともに陽極へと移動する、凍結組織切片中の遺伝子発現をモニターするセンサ装置
第2の好適な実施形態である図1に示す装置は、センサ表面のいずれにも安定して付着してない検出試薬を採用している。解析は、被分析物との相互反応後の、検出試薬の陰極または陽極のいずれかへの移動に依存している。このアプローチは、表面固定検出試薬を使用することから生じる制限の多くを回避している。錯体の電荷に依存して、錯体が一方または他方の表面に到達すると、検出が発生する。
センサが作動するメカニズムの概略を示す図を図5に示す。基本的には、被分析物と相互反応する薬剤は帯電していないか弱く帯電しているかのいずれかであり、その結果薬剤は被分析物を検知するよう使用されている表面と反対にある装置表面へと移動する傾向がある。mRNA遺伝子生成物は、この装置においてリボ核酸と類似しているがリボースリン酸骨格がペプチド結合に置換されたPNA(ペプチド拡散)を使用して測定することが可能である。これによってmRNAは帯電されないが、相補的RNA配列を有するヘテロ二量体を形成する能力には影響しない。これら試薬は蛍光プローブに付着することができるが、量子ナノドットにも付着することが可能である。後者の試薬は、光退色への抵抗性および固有蛍光強度が高いため、大きな利点を有するであろう。mRNAを蛍光PNA分子に結合させることによって、蛍光PNA分子は負に帯電する。これは、蛍光PNA分子が陽極センサ表面へと移動する現象であり、ここでその蛍光強度によって分子を検出することができる。
電場において分子する可能性のある溶解性試薬を使用して被分析物を検出することに比べて、いくつかの利点がある。第1に、被分析物を共有結合させる必要はない。これによって装置の設計が簡便になる。第2に、被分析物との錯体を形成した場合のみ、蛍光プローブはセンサ表面へと移動する。この現象によって、バックグラウンド蛍光発光を制限する固有のメカニズムを提供する。事実、PNA蛍光プローブ錯体は弱い正の電荷を持つよう作成することができるため、mRNA遺伝子生成物に結合しない分子がセンサ表面から移動して離れてしまうであろう。その結果、バックグラウンドノイズの認容できない増加をきたすことなく、装置内で大量の過剰な試薬を使用することができる。装置内でより大量の試薬を使用できるという事実によって、装置の感度および作動の速度もまた増加させることができる。最終的には、後の例でみとめられるように、この解析的アプローチの根幹をなすメカニズムを使用して、核酸以外の遺伝子生成物をモニターすることができる。
ヌクレオチド系遺伝子生成物の解析に溶解性試薬を使用するこれら利点は、照射が陽極センサ表面に限られるという要求によって一部相殺される。この要求を行うための実践的なアプローチの一つは、全内部反射によって表面を照射する装置を使用する。これによって試薬に使用されるセンサの表面への照射が制限される。TIRFM用の機器は、NikonまたはOlympusのいずれかによって製造された装置を扱う顕微鏡販売業者から商業的に入手可能である。しかし、これら企業から購入した装置は、比較的高倍率の対物レンズ(すなわち60倍および100倍)に制限される。これによって全センサ表面を急速に走査することが困難となる。TIRFMの実行には、低倍率の対物レンズとともに使用可能な他の方法がある。これらは、図6に示すようなプリズムを介して試料を照射することを伴う。
陽極表面を照射する他の手段は、2個または3個の光子顕微鏡法または共焦点顕微鏡法を使用することである。前者のアプローチでは、単一の光子では試料を励起できないように、陽極表面が照射される。照射源をセンサ表面に集光させて2個またはそれ以上の光子によって「同時に」表面を照射することによって、十分なエネルギーを供給し蛍光発光を得ることができる。この種の照射を日常的に使用する場合の主な制約は、その高い費用である。
結合および有利検出試薬の分離は電場を印加することによって行うことができる。これによって、錯体が負に帯電している場合は陽極へと、あるいは錯体が正に帯電している場合は陰極へと結合した検出試薬を移動させる。被分析物が表面へと到達する速度は、面と面との間の電位差、面に対する電位が変化する頻度、被分析物の大きさならびに電荷、および試薬の面の表面へと移動する能力を制限する要因に依存するであろう。錯体を形成させるには電場における変動が非常に有用である。このように、電場を変更することによって、電荷を帯びた被分析物をセンサの領域内で前後に移動させることができる。これによって、錯体の形成を促進する、被分析物と検出試薬との相互反応を向上させることが可能な混合効果を形成する。
例3
センサ構造の詳細
図1に示すセンサは2枚のガラス、石英、サファイア、雲母、プラスチックその他製で、使用される照射時および蛍光波長において光学的に透過性である。これによって被分析物とセンサ内物質との相互反応を原因とする蛍光またはその他光学的事象を直接視覚化することができる。多くの場合、センサの光学的部分の構成には標準的な顕微鏡スライドまたはカバースリップを使用することが好都合であり、両方のスライドが同一の材料から構成される必要はない。実際、センサが内容物の視覚的な観察のために使用される場合、センサの両表面を光学的に透過性のある材料から構成する必要はない。実施、内容を検査する雨に、センサの1表面を取り除くこともできる。
センサは、同様に使用される波長において光学的透過性を有するITO、SnO2、またはその他導電性ないし半導電性材料によって被覆される。このことは、これら2つの表面間で電位を発現させるために使用される。これは、光学的構成要素および電気的構成要素の両方を組み合わせることができるため、センサの電気的構成要素を設計する好適な手段である一方、これら表面のうち片側ないし両側のかわりに導電性グリッドまたは膜を含有する作動可能なセンサを想定することができるであろう。
図1に概略を示す装置は、光を透過する第2の金属被覆表面を含有する。位相差顕微鏡法またはその他定常の光学顕微鏡技法によって表面を取り外さずに組織切片を観察したい場合を除いて、この面は光透過性である必要はない。類似の場合において、定常の光学顕微鏡技法による観察の前に表面を取り除くことが望ましい場合もある。その理由は、これによってTIRFMによる解析の前ないし跡に組織学的染色を使用して組織を染色することが可能となるためである。また電極として固体の表面を使用する必要もない。例えば、組織切片全体に電圧を印加するよう使用可能な金属製スクリーン、金属格子、金属線、半透過性金属被覆、その他の装置を使用することが可能である。
電位をプレート表面へと到達させるため、いくつかの方法を使用することができる。一手順においては、プレート全体がITOまたはその他導電性金属で被覆されている。このプレートが金属線またはその他の導電面に載置される場合、試料と接触する部位を初めとして、電位をプレートの全部位に導入することが可能である。試料に接触するプレートの片側のみがITOまたは導電性金属に被覆されている場合、プレートの導電面を金属線または導電面へと接続する別の方法を使用しなければならない。被覆された表面を一面のみ有するプレートの使用によって、これは紫外線または近紫外線波長において重要なことが多い特性である、装置の光透過を促進する。適切な電気的接続を作成する一手段では、金属線をプレートの金属面に直接載置することを伴わない。このアプローチには、特に装置が繰り返し操作される場合、均一な電気導電性を得るために表面上の金属線と金属被覆との間に十分な接触を維持できないという困難を伴う。これを避けるために、米国ミネソタ州(55082)スティルウォーター、北47番ストリート、13960のDelta Technologies Limitedから入手される材料を使用して、金属線を金属被覆表面に接着することができる。代替的に、プレートの導電面上に薄い金属ストリップを載置することができる。これも適当な位置に接着することができる。このために好適な材料は、米国、ニューヨーク州(14623)ロチェスターのSchelegel Systemsから購入することができる。特に有用な薄いストリップは、Conductive Anti−Tarnish Copper Tapeであり、これは種々の幅で入手可能であり、粘着性の一面を含み、121℃で熱安定性であるためオートクレーブ可能である。これによって、細胞培養増殖チャンバとして使用可能な無菌センサの構成が可能である。これらテープと、Delta Technologiesから購入したガラス製顕微鏡スライドのITO表面との間の抵抗は1オーム未満である。図1では、装置内にこのストリップを載置する一つの方法を示している。この位置では、光学的に被覆した材料の表面と真ちゅうのホルダとの間に良好な電気的接触が提供される。被覆は、センサのITO被覆された部分にのみ現れるため、センサのこの部分は簡単に変更することができる。この特徴は、センサ表面を使い捨て可能な態様で製作する場合に特に望ましい。二重被覆された材料を使用することによって、光学面をしっかりとホルダに取り付けることができ、これは装置全体が使い捨て可能な場合特に望ましい特徴である。
図1に示す装置の2枚のプレートの間の電気的接触を防止する必要性は、この2枚のプレートの間に絶縁体を導入することによって満たされる。この絶縁体を、PDMS(ポリジメチルシロキサン)膜またはシリコンゴムガスケット等良好な密封性を提供する可撓性材料から調整することが好都合であることが多い。この材料はほとんどすべての厚さでもかまわないが、解析の対象となる試料の厚さと同様の厚さであることが好適である。スペーサはまた短い区域から構成されてもよく、図1に示すように試料を囲繞する必要はない。スペーサはまた製造中において片面または両面へと成形することができる。スペーサまたはガスケットの組成は、装置がどのように使用されるかに依存するであろう。大部分の使用において、スペーサまたはガスケットはセンサの表面との間を良好に密封し、流体の漏出を防止する非反応性の絶縁ゴム材料から構成されることが望ましい。スペーサは、より良好な密封を得たい場合は、センサの片方の表面に接着することができる。これによって、センササンドイッチを組み立てる次の工程である、導電性流体の追加を促進する浅い開口チャンバを形成する。
センサと試料との間の電気的接触は、導電性流体を介して発生する。この流体は、電気を導くことができるほとんど任意の希釈緩衝液でかまわない。緩衝液のpHは、被分析物が観察されるべき表面へと移動するよう、被分析物を帯電させるよう選択するべきである。これには、被覆された表面(実施例1)または被分析物検出錯体が移動して向かう表面(実施例2)が含まれる。接続流体に使用される緩衝液の種類は、解析される試料によって異なるであろう。RNA転写の解析は、最も中性である緩衝液、多くの場合リボヌクレアーゼ活性を低減することが可能な二価の陽イオンキレート剤であるEDTAを使用して解析することができる。0.3〜1%と少量のアガロースを含有する導電性流体を使用することは、組織切片中の被分析物および細胞の整列を維持するために有用であることが多い。この用途に適した低温融解形態を初めとするアガロースは、米国、04841、メイン州ロックランドにあるFMC 191 Thomaston St.など多くの商業的供給業者から入手することができる。
試料および導電性流体を追加した後、2枚の構成要素表面は、導電性面が流体と接触するよう「サンドイッチ」構造を形成するよう結合される。この位置において、センサの各導電面は導電性流体と接触し、一部の場合試料にも接触する。各表面は、図1に示す絶縁膜によって他表面と分離する。サンドイッチは、この目的のために設計されているばねまたはクランプによってつなぎ合わせられる。表面が互いに押し合わされる際に、センサへの気泡の導入を防止するために注意を払うべきである。気泡が存在する場合、サンドイッチを横から保持して、サンドイッチをペーパータオルまたはその他吸着材料の上で互いに緩く保持しながら、シリンジと針をガスケットを介して挿入することによって、気泡を除去することができる。プレートの間では空気および過剰な緩衝液が表れ、吸着剤へと流れる。すべての空気が除去されると、試料を解析する準備ができたことになる。
実施例4
加熱および冷却可能なセンサ
ITOおよびその他金属被覆は、その厚さにより十分な抵抗を有する。操作中には比較的少量の電流しかセンサを流れないため、厚さがセンサの光学的透明度を損なわない限り、大部分の用途において、これら層の厚さ、したがって電気抵抗は大きな懸念事項とはならないであろう。より大量の電流を金属被覆に流してセンサを加熱することができるが、これを行うための両表面を金属被覆したガラススライドを使用した、好適な手段を図7に示す。2つのITO被覆を含有するスライドは、Delta Technologiesから購入することができる。これらスライドは、導電性緩衝液と接触しないITOを、センサ表面の長さにわたって電圧を印加して抵抗加熱するよう、装置中に配置される。この表面は導電性流体を接触しないため、この印加された電圧は熱を供給する以外は、センサの操作に影響を及ぼさない。この様式で装置の片面または両面を加熱することができる。図7に示す設計は、センサの両面を加熱するために使用可能な様式を示す。
センサを作動前または作動中に加熱することによって解析をより容易にする。解析前に加熱することによって、組織内の細胞膜の分裂を促進することができ、これによって被分析物のセンサ表面への移動を促進し、および/または被分析物と検出試薬との相互反応を促進する。加熱はまた核酸検出の特異性を高めることにも寄与する。例えば、イオン強度の関数としてのオリゴヌクレオチドの温度安定性がよく知られている。片方の変化は、オリゴヌクレオチドの対の安定性に大きな変化をもたらす可能性がある。センサ表面を加熱することによって、mRNAと分子指標との間の相互反応を正確に制御することが可能である。短い加熱処理によっても過渡態様にある分子指標を分裂させることができ、これによって指標が自らの「リガンド」をより迅速に認識することができる。
加熱は、使用前にセンサ表面の質を検査するためにも使用することができる。例えば、分子指標を含有するセンサが指標の融点を上回って加熱されると、センサは蛍光発光する。観察された蛍光の量と均一性を測定することによって、被覆の質をモニターするっことができる。指標の作動は可逆的であるため、センサが冷却されると、指標は非蛍光立体構造へと戻るであろう。センサが実施例2に記載される様式で使用される場合、加熱は、mRNAおよびその他核酸ハイブリダイゼーションアッセイの解析中における非特異性相互反応と特異性相互反応とを区別するために使用することもできる。センサが暖められるにつれ、mRNAと蛍光PNAとの間の非特異性相互反応が中断し、センサ表面へのPNAの輸送を防止している。したがってセンサ温度の精密制御によって、単一塩基対の不一致を容易に識別することができる。これは、単一の対立遺伝子対のみに変異を半有する細胞を識別するにあたって特に有用である。
またセンサを冷却するメカニズムを内蔵することも可能である。これを行う方法は、センサをPeltier加熱/冷却ステージ上に載置することと同じ程度簡単であり、下側センサプレートの下方または上側センサプレートの上方に構造可能なチャンバ中に冷却された流体を通過させることと同じ程度複雑であろう。センサの温度を変更することによって、センサを研究の対象となる被分析物を増幅することができるポリメラーゼ連鎖反応解析に使用できることが考えられる。
実施例5
センサ中の電場の使用
センサは、印加電圧の存在時に作動するよう設計されてきた。いくつかの解析が電位の非存在時に得られることも考えられる一方、印加電圧を使用する利点によって解析の感度および速度を大幅に促進する。電位を装置に印加することによって、電荷に応じたセンサ表面への被分析物の移動を加速させることができる。この結果、測定の速度および感度の向上をきたす。電位の存在によって細胞の分裂を起こす可能性があり、この結果、そうでないとセンサ表面に到達することが防止される被分析物の検出が可能となる。一定の電圧条件下において多くの解析を実行することができる。しかし、必ずしもセンサ全体にかかる電圧が一定である必要でない。所定の測定系に対して最良であることが実験的にみとめられている図4a、bのパターンを使用して電圧を変化させることが好適な場合が多い。使用される分極パターンの種類は、試料に高度に依存する。図4aに示ものは、核酸と表面吸着分子指標との間で相互反応を促進するには十分である。さらに、センサが実施例1に記載されるように操作されている条件下で電位を変化させることによって、センサ表面近傍の被分析物の高い濃度を維持し、また同時に被分析物が金属酸化物と直接接触することを防止することが可能である。この場所において、被分析物は分子指標等結合相手と接触するには理想的な位置にあるが、反応速度を高めることもできる。
センサが実施例2に記載のように使用される場合、電場の変更によって解析を促進することができる。この場合、図4bの電荷と類似の表面電荷の変化のほうがより適切である。一定の電場を使用することによって、蛍光PNA検出分子の濃度が低い場合、負の電荷を帯びた核酸の陽極への移動を促進する傾向がある。センサにかかる電荷を変化させることによって、核酸をセンサの最も高濃度のPNAを含有する部分を介して移動させることができる。さらにPNAが中等度の正の電荷を有する場合、電位の変化によって核酸の経路とPNA検出試薬の経路が何度も交差する可能性がある。これによって、両者が相互反応し解析速度を高める可能性が高まるであろう。
センサのタンパク質遺伝子生成物を検出能力は、電位の使用によって高めることができる。適切なpHでセンサを作動させることによって、そうでなければ同一の検出分子と相互反応する可能性のあるタンパク質イソ型を分離することが可能である。多くのタンパク質がリン酸化される可能性がある。リン酸化もまた等電点の移動をきたしうる現象である。したがって、たとえ2個のタンパク質が同一の蛍光プローブによって認識される場合であっても、試料の測定時に一方がセンサ表面に向かって移動し他方がセンサ表面から離れるよう移動すれば、区別することが可能である。また2個のタンパク質は、金属酸化物の被覆と接触する時に異なって酸化される場合も、区別することが可能である。
実施例6
灌流チャンバとしてフローセル配置されたセンサの使用
センサが正確に組み付けられた場合、試料はガスケットの厚さを有する小さいチャンバ中に含有されるであろう。「ポート」の役割をする細い管ないし針を取り付けて、ガスケット内にあるチャンバの内部に到達させることができる。これに物質を装置を通して灌流させることができる。さらに装置の両面を観察するために使用することができる。細胞を使用して、被分析物と、センサ表面ないし該センサ表面に付着した材料との間の相互反応を促進するために電気的分極パラメータを迅速に最適化することができる。このように、それ自体センサとしての使用に加えて、図1に示すような目的で採用された装置において、組織切片の解析に必要なパラメータを最適化するためにセンサを使用することができる。
実施例7
センサの全内部反射(TIR)照射
TIRを使用するセンサにおいて被分析物をモニターするために、いくつかの方法が利用可能である。先に述べたように、TIRFMシステムはNikonおよびOlympus Corporationsから購入することができる。これらシステムによって、試料を含有するカバースリップと光学接触する60倍または100倍の開口数の多い対物レンズを介して、試料を照射することができる。これらTIRFMシステムを使用するには、解析に使用される表面が、約0.17mmの厚さのカバースリップである必要がある。このシステムはまた、液浸油を使用して対物レンズとカバースリップとの間の光学的接触を形成することも必要とする。
試料を検査するためにいつくかの他の種類のTIR照射も使用することが可能である。好適な照明器は図6に示す設計を有する。この設計によってセンサを、対物レンズの範囲の広いTIRFMに使用することができる。実際、この配置ではほとんどすべての対物レンズを使用して蛍光発光を測定することができる。
照明器は、レーザからの光を平面および凸面を有する長方形のレンズを通貨させることによって機能する。このレンズは、図示するような0.17mmのカバースリップとの光学的に接触する三角形のプリズムと光学的に接触する。このプリズムは図6の破線で示す立方体によって置換してもよい。これら3つの構成要素は、カナダバルサムないし適切な高分子を使って一緒に固定化することができ、あるいはこれらはグリセロールを使用して光学的接触を保つことができる。後者は、カバースリップの載置を容易にするため、多くの場合好適である。レンズとプリズムの最も好適な配置は、レンズの焦点がプリズムの端部とカバースリップの接合部にある場合に起こる。すべての光は臨界角より下からカバースリップに入射するため、光はカバースリップ内で全反射し、照射対象となるセンサ面の表面に隣接するカバースリップの縁部から発光する。レンズは、レーザから一次元に拡大するレンズの能力に応じて選択される。設計のとおり、照明器はセンサの側部に近づくように動かすことはできない。このように、レンズはセンサの幅全体を照射するために十分は光を生成するよう選択しなければならない。
照明器およびセンサは、照明器をセンサ側部に隣接して保持するよう設計されたホルダ中の顕微鏡ステージ上に載置される。しかし、照明器がセンサに恒久的に接合されないことが重要である。センサの幅全体にわたる顕微鏡的観察は、図6に示すように照明器とセンサを協同して移動させることによって達成される。センサの他の部分において蛍光発光を観察するためには、センサを照明器に沿って動かし、センサの縁部と照明器との接触を保つ。これら手段によって、センサの全表面を走査することが可能である。適切な電動式のドライバを加えることによって、走査を自動的な様式で達成できるよう意図されている。観察された蛍光発光のコンピュータ記録をつけることによって、病理学者ないし外科医に即座に観察してもらう必要がなく、関心領域を識別することができるはずである。コンピュータからこの位置情報を検索することによって、ヒトによる観察および迅速な診断を容易にすることができる。
実施例8
標準的な光学顕微鏡法による装置の使用
この装置の設計によって、位相差顕微鏡法、明視野顕微鏡法、暗視野顕微鏡法、微分干渉コントラスト顕微鏡法、共焦点顕微鏡法およびエピ蛍光発光顕微鏡法を初めとする標準的な光学的顕微鏡的手法の使用が可能になる。これら用途の大部分において、試料には、センサのプレートを略直角に通過する光が照射される。これによってセンサ表面に隣接する部分だけでなく、全試料の検査を可能とする。これら技法を使用して得た画像と、TIRFMによって得た画像とを比較することによって、TIRFMを使用して細胞全体を観察することは不可能であっても、TIRFM中に観察される被分析物を含有する特異的な細胞を識別することが可能である。
この組織切片もまた、種々の細胞種または細胞小器官の間の差を増すよう染色することができる。これは、TIRFMの前に、非蛍光染料を使用して行うことができる。染料が解析対象となる物質を認識する場合、あるいは染料が電場を印加することによってエバネセント場から除外することができる場合にも、TIRFMの前に蛍光染料を使用することができる。TIRFMを実施する前に染料を使う利点は、特定の細胞種を蛍光の位置と関連付けやすくすることである。しかし、いくつかの場合において、TIRFMの前に組織を染色することができない場合もある。この場合、組織切片へのアクセスを得るために装置から非センサ面を取り除くことが必要となる場合がある。この作業は、非センサ面と組織切片との間にガーゼの小さな層を加えて、表面が組織に付くことを防止することによって容易に行うことができる。
いくつかの場合において、センサ表面に電荷を印加することによって生成可能な電位を用いて、組織切片から余剰の染料を除去し、それによって染色とバックグラウンドの除去に必要とされる時間を低減することもまた有用であろう。この作業は、槽内にセンサ表面とそれに付着した組織切片を載置し、センサ表面と槽全体に低電圧を印加することによって行うことができる。
実施例9
装置内での光退色の利用
蛍光発光を遺伝子発現の研究に使用することの制約の一つは、一度に区別可能な蛍光プローブの数に関連する。しかし、光退色は測定範囲を拡張することができる。例えば、フルオレセイン(蛍光色素)とAlexa Fluor488はほぼ等しい蛍光スペクトルを有する。前者のほうがはるかに簡単に光退色し、このためフルオレセインで標識した被分析物とAlexa Fluor488で標識した被分析物とを、光退色する速度の差によって識別することができる。光退色をほとんどきたさない有機染料と量子ナノドットを組み合わせて使用すれば、この技法をさらに拡張することができるはずである。
実施例10
酵素を測定するための装置の使用
この装置の別の用途は、組織試料中の酵素のレベルを測定することである。多くのがんは異なるレベルの細胞外および細胞内タンパク分解酵素を有し、これらタンパク分解酵素はタンパク分解酵素開裂部位を含有する蛍光プローブを使用することによって簡単に識別できる。特異的なタンパク分解酵素の作用によるこれら部位における開裂によって、蛍光プローブから消光剤が放出し、その結果蛍光発光が発生する。本明細書に記載される装置の利点の一つは、電位を利用して、mRNAならびに核酸ほど負の電荷を帯びていないタンパク質および他の分子を、核酸とは異なるセンサ表面へと移動させることが可能なことである。これによってmRNAとタンパク質を同時に分解することが可能となるであろう。同様のアプローチを適用することによって、蛍光発光の出現または消滅をきたしうる任意の種類の酵素反応の測定が可能となるであろう。
分子の正味荷電の差を検出するセンサの能力は、分子のリン酸化状態と電荷を変化させる酵素であるキナーゼおよびフォスファターゼのアッセイに使用することもできる。例えば、種々のタンパク質キナーゼ用の基質である蛍光ペプチドを調製することが可能である。試料中にキナーゼ活性が存在することによって、蛍光ペプチドアナログを陽極へと移動させる一方、リン酸化されていないアナログを、移動させないか、あるいは導電性の流体緩衝液中で使用されるpHにおいて陰極へと移動させる。これによって、細胞酵素の多くが腫瘍形成中に示唆されているが、これら重要な細胞酵素の細胞特異的な解析が可能になる。
電荷差を検出するセンサの能力は、タンパク分解酵素の活性を検出するために使用することもできる。蛍光タンパク分解酵素基質は、タンパク質分解が蛍光プローブの陽極または陰極のいずれかに移動する能力を変化するよう、簡単に設計することができ、陽極または陰極においてタンパク質分解が簡単に検出される。この検出は、電荷を帯びたアミノ酸残留物を基質に追加し、次にタンパク分解酵素によって開裂されて達成することができる。
実施例11
小さい分子を測定する装置の使用
小さな蛍光プローブをタンパク質またはより大きな高分子に結合させた結果、分子の移動性が喪失する。小さな分子を蛍光プローブで標識すると、簡単に検出される蛍光分極の変化をきたすであろう。図1に示す装置は蛍光分極の変化をモニターし、それによって組織切片中の小さな被分析物の量をモニターするためにも使用することができる。この場合、被分析物を非特異的に認識できる抗体でセンサ表面を被覆することが望ましいことが多い。抗体を表面へと付着させる手段の一つは、抗体をビオチニル化した後にストレプトアビジンの架橋を介して表面と結合させることを伴う。抗体およびその他のタンパク質をビオチニル化する方法は、当業においてよく知られている。
実施例12
細胞分類のための複数の分子指標の使用
前述したように、マイクロアレイを用いて得たデータは、がん性および悪性細胞において多くのmRNAが同時に上昇することを示唆している。この現象は、装置の感度の増加に寄与している。複数のmRNAに特異的な分子指標が、実施例1に示すセンサ面の表面に結合される。これら指標が同一の蛍光プローブで標識されている場合、指標は任意のmRNAの増加を検出するであろう。同じようにmRNAのうちいくつかはがん性細胞において減少する。これら指標を混合し、発現の変化がみとめられないmRNAをモニターするために指標に使用されるものとは異なる蛍光プローブを標識するか、または発現の増加がみとめられるmRNAをモニターするよう設計された指標に使用される異なる蛍光プローブで標識することによって、この方法の感度を高めることが可能である。前述したように、装置の両面を使用してモニター可能な被分析物の数を増加させることもできる。同じような種類の混合物を使用して、実施例2に記載のセンサを用いて遺伝子転写手順の解析を行うこともできる。
実施例13
3次元電気泳動における試料の電気泳動分離のための装置の使用
図1に示す装置において示される原理は、組織切片の解析以外の技法に適用することもできる。この装置の用途の一つは、少量の材料を電気泳動によって分離することである。例えば装置の両端が開口したままとなっている場合、各端部に電極を取り付けることによって、電流を装置の一端から他端まで通過させることが可能である。タンパク質、核酸またはその他の物質を電気泳動によって分離するために使用されるポリアクリルアミドゲルまたは他の媒体を装置に投入すると、ゲル内に入れた試料は純電荷/質量比に応じて分離するであろう。このように、pH勾配を含むゲル中の等電点によってタンパク質を分離することが可能であろう。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有するゲル中の分子量によってタンパク質を分離することも可能であろう。電流を装置の端部と装置の側部を介して交互に通すことによって、2次元様式でセンサを作動させることも可能であろう。これによって微量の被分析物の2次元解析が可能になるであろう。分離に続いて、構成要素である金属酸化物層の間に電流を流すことによって、分離された被分析物を片面または両面へと移動させることができる。タンパク質または被分析物が表面に到達すると、TIRFないしTIRFMモードで装置を使用して実行される蛍光アッセイを使用して、これらを検出することができる。この手順の一用途は、単一細胞または核の成分等、極小量の試料の解析であろう。表面に付着した材料の蛍光強度に対して影響する蛍光強度によって、表面上の被分析物の位置がひとたび特定されると、被分析物は取り除かれ質量分光または他の方法によってさらに識別される。
実施例14
マイクロタイターウェルプレート中のセンサの使用
マイクロタイタープレートが高頻度に解析に使用され、このアッセイ方式に電位を印加することによって解析を容易にする。例えばマイクロタイタープレートは、プレート表面における被分析物の濃度を増加させるために使用することができる。また、プレート表面における被分析物の濃度を低下させるためにも使用することができる。センサの用途のうち、組織切片にかかわるものを除く多くは、マイクロタイターウェルプレート方式へと移すことができる。これら用途には、酵素アッセイおよび核酸アッセイも含まれる。電位とともに使用することができるマイクロタイタープレートを作成するために、いくつかの様式を使用することができる。これら様式のうち一つを図8に示す。
実施例15
透過性光学高分子(高分子ヒドロゲル)
図1に示すセンサの制約の一つは、電極の位置に関する。この制約はガラス表面上のITO被覆から構成される。これらの被覆は、検査される試料の表面と光学面との間に施されている。金属は表面の光学的品質にごくわずかに干渉する一方、試料と、試料が検討される領域との間にある流体に金属が接触するという事実は、印加可能な電圧の量を制限する。この電圧は、水の電気泳動を発生させる電圧よりも低く保つべきである。水の電気泳動は、気泡を生成し、被分析物の移動に干渉することによって、解析の妨げとなる現象である。さらに、これはほとんど確実に起こりうることであるが、被分析物が金属電極表面に接触する場合、余剰の電位は被分析物に負の影響を及ぼす可能性がある。装置に印加可能な電圧の量に対するこの制約は、細胞から材料を効率よくかつ均一に抽出することを妨げることによって、解析を阻害する可能性がある。ガラスの図1に示す面とは反対の面に金属電極を配置することが好適である。そこでは、水の電気泳動は解析に干渉せず、試料も電荷を帯びた金属被覆とは接触しないと思われる。しかし残念ながらこれを行うと、光学面近傍の電場の均一性に干渉する可能性があり、この現象は被分析物の非均一な移動をもたらす可能性がある。図1に示す面とは反対のガラス面に電極を載置することによって、被分析物を光学面に不均一に配置することによって、ガラス面上の被分析物の分布と組織切片中の被分析物の相関関係に干渉する可能性がある。
センサの電圧の制約は、センサのガラス光学素子を、イオン透過性を有する透過性光学高分子(高分子ヒドロゲル)で置換し、図9Aに概略的に示すように該高分子を試料と電極との間に配置することによって解決できる。その結果、水の電気分解は解析に干渉をせず、被分析物は電極と接触しないであろう。このことによって、大幅に増加した電圧を使用して、組織切片からの被分析物の電気泳動、および被分析物が解析される場所への被分析物の移動が可能となる。透過性の光学素子(うなわち光を屈折させる素子)は、種々の高分子から生産することができる。これら高分子の特性はよく知られており、この特性によって磨耗に長時間かかるコンタクトレンズの構成が可能とする。さらに、これら高分子はセンサ中での使用を促進する多くの化学的特性を備えるよう設計することができる。例えば、高分子は、正の正味荷電または負の正味荷電のいずれかを有するか、または高分子が位置する領域のpHを干渉する能力を有する材料から構成されてもよい。これは、被分析物の電荷を変更し、装置内における移動性を変更するために使用することができる。これら高分子は、全内部反射の使用を可能にする屈折率を有するよう設計することができる。全内部反射とは、高分子を組織切片からの被分析物を含む微量の材料の解析に有用にする特性である。
高分子材料の使用にはもう一つの大きな利点もある。高分子材料の使用によって、密封された袋に保存可能な水溶液を含む構成要素の設計が可能になる。この使用によって、操作者は水または緩衝液を追加する必要から解放される。これによって、間違いが発生する可能性が低下するため、このことは重要である。組織切片が外科手術の途中に作成される場合、時間が最も重要である。必要な操作が少なければ少ないほど、間違いが発生する可能性が低くなる。さらに、液体構成要素がゲル内に存在するため、組織切片を切断する者によって手動で行われることが多いプロセスである、センサ素子の組み立ての際に組織切片とセンサ素子間に気泡が入る可能性が低下する。
高分子系センサの動作の根幹をなす全体的な原理は、図1のセンサの操作の原理と同じである。両装置において、解析は、被分析物を検出試薬と混合させ、光学的に検出可能な錯体を形成する電場の使用に依存している。図9に示す高分子系センサの設計は、図1のセンサと、検出に使用される光学面に対する電極の位置が異なっている。図1では、電極は試料と表面との間に存在する。図1では、光学面は試料と電極との間に存在する。図9に示すセンサと図1のセンサとのもう一つの違いは、図9の光学面は電流を通すが、図1の光学面は電流の流れを阻止することである。
図9のセンサの設計において高分子を使用することによって、センサをモジュール方式で構成することができる。図9Bに示すように、センサは2つの部分に分けて配置可能であり、この2つの部分はそれぞれ陽極、陰極と接触するアセンブリを反映して、陽極センサアセンブリ、陰極センサアセンブリと名付けられるであろう。これら部分は色コード、例えば陽極用に赤、陰極用に黒のコードで印をつけ、より区別しやすくすることができる。この識別は、組成および/または緩衝液の含有物が異なる高分子をアセンブリが含有する場合に、特に有用である。大部分の場合において、センサを組み付ける特別な順序はなく、陽極アセンブリを最も下に陰極アセンブリを最も上に組み立てる必要もない。このように多くの場合、陰極センサアセンブリを追加する前に、試料を陽極センサアセンブリに適用することが可能である。通常は同一の方式ですべての操作を実行することが最良である。しかし、これら高分子の組成が同一でない場合は、2個の陽極アセンブリまたは2個の陰極アセンブリを使用する等、間違いを避けることが最良である。この間違いを犯す可能性は、電気泳動に使用する装置を設計することによって低下する。該装置は、2個の陽極アセンブリまたは2個の陰極アセンブリを投入することができない。さらに、陽極アセンブリおよび陰極アセンブリ(図9D)およびこのボックス(図9C)の設計は、陽極アセンブリおよび陰極アセンブリが逆になることを不可能にしている。
陽極センサアセンブリは、組織切片からRNA遺伝子生成物を検出する際に解析の一次部位となる高分子を含有するであろう。その理由は、この方向に遺伝子生成物が電気泳動中に移動するためである。これは、図9Aにおける構成要素#3として識別される。この構成要素#3に隣接し、図9Aで構成要素#4として示される高分子において、RNAと検出試薬との組み合わせのほとんどが発生するであろう。構成要素#4中にある高分子は、構成要素#3を構成するために使用される屈折率よりも、通常低い屈折率を有する。この屈折率によって構成要素#3中の高分子を全内部反射によって照射することができるからである。この結果、構成要素#4に残存する蛍光性材料は照射されず、したがって解析と干渉する。構成要素#3と#4に存在する高分子のpHに対する緩衝能が異なるよう作成されているため、この特性を使用して蛍光検出試薬上の正味荷電を変化することができ、その結果検出試薬は負に電荷を帯びたRNAと結合しない限り構成要素#3中の高分子に進入することが阻止される。例えば、構成要素#4中の緩衝pHにおいて正の正味荷電を有する場合、検出試薬は陰極に向かって移動し、組織切片から陽極に向かって移動しているRNAの経路と交差するであろう。このことによって、結合されていない検出試薬の存在に起因するバックグラウンドを最小化することによって、この方法の感度を高めるであろう。またこれによって、より高い濃度の検出試薬の使用が可能となり、その結果検出試薬がRNAの測定される種と相互反応する確率が高まるであろう。
センサが遺伝子生成物は測定せずRNAを測定するよう使用される場合、陽極アセンブリ中の構成要素#3(図9)として示されるセンサの部分上で、実質的にすべての測定が行われるであろう。これによって陰極アセンブリの設計が簡便になり、単一の高分子、スペーサ(構成要素#8)および電極(構成要素#9)から構成することも可能になる。この場合の陰極アセンブリの一次機能は、装置全体に対して電圧を送達することであろう。しかし、陰極アセンブリを正に電荷を帯びた被分析物の測定にも使用することができることに留意するべきである。この場合、図9に概略を示す光学解析に使用される高分子を追加したいと考えるであろう。さらに、陰極アセンブリを使用して、正に電荷を帯びた染料による組織切片の染色を容易にすることもできる。しかし、陰極アセンブリにおいて使用される高分子は、解析に使用されない場合であっても光学的品質であるべきである。これによって、RNAの電気泳動および解析が完了した後、組織切片の視覚化を可能にする。この視覚化の要件は、後に明らかにされる。
また、透析管の小片を高分子と高分子との間に挿入することによって、センサを分子量カットオフ装置とともに製作することができることも留意すべきである。これらを構成要素#2と#3との間に置く場合、高分子蛍光種のすべてが、より良好に検出するために非常に薄く作ることができる表面(図9Aの構成要素#2aを参照)で収集されるであろう。RNAが構成要素#3を通過し喪失することを透析管が防止するため、RNA解析には有用である。
センサはまた、光学高分子ではない他の構成要素、あるいは高分子であるが電位のセンサへの送達を促進する高分子もまた含んでいる。それぞれ陽極および陰極として作用する構成要素#1および#9は、装置全体に電位を形成するよう設計されている。構成要素#2および#8は、図9Dに示すように陽極および陰極に含めることができる。図9Dに示す陽極素子および陰極素子は、背面として機能する導電性金属の薄片と、底部および側部として機能する透明なプラスチックの成形片から構成される。焼結ポリエチレン片を使用して前部を作成し、装置に流体を入れた後、上面の蓋を作成する。前部にある焼結ポリエチレンガラス材は、高分子ゲルに必要な支持体(すなわち図9Aに示す構成要素#3または#7)を提供する。装置の上面は、装置のこの部分を密封するための熱収縮性プラスチック片によって囲繞されている。このプラスチック片は、使用中には取り外されるが、気泡の量が電極構成要素中の圧力を解析に干渉する圧力まで増加させるには十分でない場合もある。この場合、熱収縮性プラスチックを取り除くことは必須ではない。
陽極アセンブリおよび陰極アセンブリの構成における最終工程は、陽極および陰極上にそれぞれ構成要素#3および#4、構成要素#6および#7として示す高分子を層状にすることを伴う。これは図9Eに示す。RNA種がモニターされている時、透析管の片を陽極と構成要素#3との間に挿入することが有用である。この層状化は、RNAの移動を阻害するために十分な穴の大きさを有する透析膜の片の上に構成要素#3を高分子化することによっても、達成することができる。この膜片は、構成要素#3を通って移動する任意のRNA蛍光錯体を捕捉する。さらに、この膜片は非常に薄くてもかまわないので、装置の分解能を増加させることができる。しかし、透析管の存在は必須ではない。錯体を細くする他のいくつかの手段もまた可能であり、これら手段は高分子に付着させることができる。ひとたび図9Eに示すようにゲルが装置に付着すると、装置は気密性の袋内に入れられる。2、3滴の水あるいは好適には水飽和したタオル片を加えて、使用されるまで装置が湿気を保つようにする。細菌または他の汚染を防止するために、アセンブリの調製におけるすべての工程は清潔な条件下で行うべきである。また、この装置はRNAを測定するために使用されるので、装置がRNA分解酵素で汚染されないよう注意を払うべきである。このことは、これら構成要素を組み付ける作業者がRNA汚染材料を取り扱うために手袋を装着し、標準的な予防措置を取るべきであることを意味している。また、アセンブリの半減期を延長するために、袋を密封する前にエチレンオキシドでこの装置を滅菌することも可能である。
センサ装置の使用には2、3の単純な工程が必要なだけである。陽極または陰極アセンブリパックのいずれかが、区分化の際に開かれているか、切片があるいは露出したゲル上に直接載置されている。アセンブリパックが使用される直前に開かれた場合、組織切片をゲルに良好に接触するよう十分な水分があるべきである。しかし、切片と切片の間に気泡が捕捉されないことが重要である。気泡によって組織からRNAまたは他の被分析物を抽出することに干渉するからである。必要に応じて、この時滅菌水を2、3滴加えて、この問題を避けてもよい。ひとたび、切片が陽極アセンブリまたは陰極アセンブリ上に載置されると、陰極アセンブリまたは陽極アセンブリによって覆われ、陰極アセンブリまたは陽極アセンブリは、アセンブリのゲルが切片に接触するよう切片の上に載せられる。組織切片がどのように高分子に接触し、この接触が最も重要であるから、慣行上、いずれかの陽極アセンブリから始めることが良い。次に、陰極アセンブリのゲル側が組織切片に面するよう陰極アセンブリを加える。再び、2、3滴の水が必要になる場合もあるが、アセンブリパッケージが使用時に開かれ、水分補給状態を保っている限り水は必要ないであろう。
ひとたびセンササンドイッチが組み立てられると、電気泳動工程の準備が整う。センササンドイッチは図9Cに描かれた電気泳動チャンバに挿入される。サンドイッチ上の切欠によって電極が電気泳動ボックスに不適切な方向で挿入されることを防止する。またこれら切欠は、2個の陽極アセンブリまたは2個の陰極アセンブリからサンドイッチを調製する等、組み付けにおける間違いを防ぐことも行う。電気泳動は100ボルト/cmまでの電圧において実行される。使用される実施の電圧は組織に依存し、大量の連続組織を含有する組織に比べて柔らかい組織のほうが要求される電圧は低い。非常に高い過渡電圧を使用して、細胞の電気泳動を起こし、RNAを放出することが有用であることも多い。使用可能な電圧の量に対する制約は、遺伝子生成物の検出後に組織をどのように検出するべきかに依存する。非常に高い電圧を使用すると、組織を破壊する傾向が強く、その結果電気泳動後の検討がより困難になる。この破壊は、組織切片と接触する高分子層中に少量の洗浄剤を含めることによって低減可能である。
電気穿孔および電気泳動の後、試料を視覚化する準備ができる。視覚化は、電気泳動ボックスからサンドイッチを除去することによって、およびRNA等の負に電荷を帯びた被分析物の場合センサの構成要素#2aまたは#3(図9A)の部分で収集された蛍光材料を観察することによって行われる。図9Fに見られるように、陽極構成要素#1および#2がサンドイッチから除去される。次にサンドイッチは、光ファイバーウィンドウまたはDupontのFEPフィルム片ないし他の屈折率の引く薄いフィルム片に覆われた光ファイバーテーパの上に載せられる。透析膜が含まれている場合サンドイッチを水で覆ってもよいが、こうするとウィンドウまたはテーパの汚染リスクが生じる。汚染されると取り替えることが可能な顕微鏡的液浸油および薄いカバースリップで、サンドイッチを注意深く覆うことによって、汚染を防ぐことができる。照射源から検出器に入射する望まれない迷光を最小にするためには、センサとウィンドウないしテーパとの間に屈折率の低い材料が存在する必要である。FEPフィルムの下方にカットオフフィルタを取り付けても、迷光を減少させることができるが、これによって装置の感度も低下するであろう。光ファイバーウィンドウまたは光ファイバーテーパの反対側端部が、電荷結合素子(CCD)のセンサチップ上に取り付けられる。取り付けは、(存在する場合)透析管または構成要素#3が光ファイバー上面に直接載ったDupont FEPフィルムと接触するような態様で行われる。試料は、レーザまたは適当な波長を有する他の光源を使用して構成要素#3の側から照射される。構成要素#3の屈折率が、隣接する高分子ゲルないしDupont FEPフィルムの屈折率よりも大きいことを理由に、励起波長はゲル内で内反射し、被分析物と関連付けられた蛍光材料をゲル内で照射することが可能である。したがって、装置の他の部分に残存する未反応の蛍光検出試薬は全く照射されず、視覚化されないままであろう。
実施例16
ペプチド核酸(PNA)を用いるセンサ
核酸に対する望ましい検出試薬は、核酸とワトソン・クリック塩基対を形成できるよう秩序だって保持された塩基を有し、該塩基を秩序だって保持する骨格原子に負の電荷が欠けている分子である。これは、核酸の負に電荷を帯びたリン酸塩が、オリゴヌクレオチド二本鎖の形成に対して反発効果を与えるためである。負に電荷を帯びたリン酸塩原子を、電荷を持たないか正に電荷を帯びた原子または原子の基で置換することによって、特異的なオリゴヌクレオチド配列に対して親和性の高い検出試薬を考え出すことができる。実際、これら検出試薬の親和性は、核酸の相補的核酸に対する親和性よりも大きい可能性がある。
PNAは、ペプチド骨格を有する核酸とワトソン・クリック塩基対を形成する電荷を帯びた糖リン酸骨格がないため、RNA−PNAおよびDNA−PNA のハイブリッドが安定性が高いことが知られている[24]。PNAは、単に標準的なペプチド合成化学法によってアミノ酸をPNAの骨格に組み入れることによって、実質電荷がない、負に帯電、または正の電荷を帯びるよう構成することができる。PNAもまた、蛍光プローブで標識し[18、21]、蛍光インシトゥハイブリデーション法(FISH)によって核酸を検出するためにこれまで使用されてきた。しかしPNAは、この目的に使用可能な唯一の構造ではない。リン酸塩が硫黄または炭素で置換された薬剤もまた有用である。
PNAが核酸に結合すると、ゲル内またはキャピラリー電気泳動管[17]内における移動性[20]を変更することができる。しかし、PNAの電場における移動を逆行させるようPNAの電荷を変更するDNAの能力はこれまで使用されてこなかった。これは本明細書で教示された種類のセンサにおける用途にとって特に重要な特性であり、ここでは電気泳動の移動距離が比較的短いことが好適である。帯電していないか正に電荷を帯びたPNAをRNAないしDNAに結合することによって、PNAが負に帯電するであろう。この結果、錯体は、電場内の錯体を形成していないPNAとは反対の方向に移動するであろう。これは、結合したPNAと結合していないPNAとを分離するために使用することができる。PNAが蛍光プローブ、放射性同位体、ビオチンまたはその他PNAに負の電荷を獲得させない分子等の試薬で標識される場合、標識されたPNAと核酸との結合によって標識されたPNAは結合されていないPNAと分離されるであろう。この分離は、核酸の識別のための非常に有用で簡単なツールとなる。さらに、これによって標識されたPNAを非常に高い濃度で使用することができ、これによって、信号をTIRFMの全内部反射蛍光法等の技法で測定する場合にバックグラウンド信号を増加させることなく、核酸との相互反応を促進することができる。さらに、この特性を使用して、核酸または他の電荷を帯びた材料をこれら物質の錯体を作ることができる領域へと移動させることができる。
PNAはペプチド骨格を有し、ペプチドと同じように合成することができるため、いくつかの異なる種類の標識をPNAに組み入れることが可能である。例えば、PNAにシステイン残基を加え、それによってチオールと反応するかチオールと反応させることができる蛍光プローブで分子を標識できるであろう。このようなプローブの多くが、オレゴン州ユージーンのMolecular Probesから入手可能である。リジン分子をPNAに組み入れることもできる。これによって分子に正の電荷を与えるか、またはアミノ反応物質に対する標識部位として働くであろう。このリジン分子も、様々な吸収波長および発光波長でMolecular Probesから入手することができる。アルギニン残基をPNAに組み入れて、電荷を変更することも可能である。PNAはヒスチジン残基ででも標識されてきた。ヒスチジンのイミダゾール部分は、pH勾配を有する電場でのPNAの移動に好ましい影響を及ぼしうる。例えば低いpHでは、ヒスチジンは正の電荷を帯びる。高いpHでは、電荷を帯びない。ヒスチジンを含有するPNAは、低pH環境にある場合、陽極から離れるよう移動する傾向にあるであろう。より高いpH環境に到達すると電荷を喪失するため、PNAの移動性は低下するであろう。このように、移動速度が低くなる電気泳動チャンバ領域に到達するまで、ヒスチジン標識PNAが陽極から離れるよう移動する条件を簡単に作り出すことができる。この一用途では、PNAを陽極から離れたチャンバ領域へと移動させるが、オリゴヌクレオチドと反応できない領域へと移動することを防止する。オリゴヌクレオチドに結合したPNAは、非結合のPNAから離れて陽極に戻るよう移動するであろう。
PNAの設計は比較的直線的であり、ワトソン・クリック塩基対の概念に基づいている[24]。PNAが電荷を帯びないことあるいはPNAが正の電荷を帯びることができるという事実によって、PNAを大部分の遺伝子発現生成物にみとめられる短いRNA−RNA二本鎖に侵入する。装置の温度が上がると、これが促進される。ハイブリダーゼーション反応の通常の長さは16−25bpである。PNAを設計する際の唯一の他の考慮事項は、分子の溶解度に関連する。長い電荷を帯びないPNAは全般的に溶解度が高く、センサにおける用途にはあまり適していない。特に例えばヒスチジン等の残基がpH6〜8の範囲において使用される際に、電荷がpHの関数として変更可能な場合、正の電荷を帯びたPNAのほうがはるかに溶解性が高く、センサでの測定にはるかに適している。
センサの作動に対して重要なことは、非常に低いバックグラウンドを維持する能力である。この能力によって微量のRNA被分析物の検出ができる。ちょうど今論じたように、PNAの使用および電場における標識PNA分子の移動を逆行させる能力は、低いバックグラウンドを維持するための一手段である。もう一つのバックグラウンドを減少させる方法は、分子指標にみとめられるPNAと同じようなヘアピン立体構造を有するPNAの使用である。PNAがオリゴヌクレオチドと錯体を形成する前にみとめられるPNAヘアピン立体構造[23]において、PNAの一端における蛍光プローブは、PNAの他端に共鳴エネルギー移動によって付着した分子によって、消光される。これは蛍光プローブと消光剤が互いに近接していることによって発生し、PNAがヘアピン立体構造を有するときのみこの二者は互いに近接する。PNAをRNAに結合することによって、ヘアピンは直線になり、この結果蛍光プローブが消光剤から離れて移動する。この結果蛍光発光が見えるようになり、観察可能になる。PNAがRNAに結合するまではヘアピン形状の形成はPNAの等電点を変化させないが、ヘアピン形状のPNAも陽極から離れて移動するであろう。しかしこれによって、PNAがRNAと相互反応する際に、蛍光PNA−RNA錯体が陽極に向かって移動する時間を変化させるであろう。この運動は概略的におよび詳細に図10に示す。
バックグラウンド蛍光を低減するもう一つの重要な手段は、全内部反射光学の使用である。蛍光RNA−PNA*錯体を含有するセンサ構成要素への照射を制限することによって、バックグラウンドに寄与すると思われる錯体を形成していないPNA*への照射を防止することができる。センサ中の構成要素#3のみを照射することが望ましい。これは、構成要素#3が照射光に対して透過性がある場合、構成要素#3が構成要素#4よりも屈折率が高い場合、および構成要素#3が臨界角よりも小さい角度で照射される場合に行うことができる。これは構成要素#3および#4の屈折率からSnellの法則に基づいて計算することができる。
構成要素#3の全内部反射照射に対する要求事項は、長期使用を意図したソフトコンタクトレンズ構造の設計に使用されてきた高分子を使用することによって満足することができる。これらレンズは、十分多孔性であり、角膜にレンズが到達する場所では空気および流体がレンズを通過できるように設計されてきた。さらにこの屈折率は、視力矯正に必要となる光の屈折には十分である。これら材料の屈折率は、屈折率から期待されているとおり、全内部反射蛍光[22]への使用ができることが示されてきた。
コンタクトレンズを構成するためにこれまで使用されてきたいくつかの材料がある。最も一般的なものはHEMA(ヒドロキシエチルメタクリエート)およびHEMA−MAA(HEMA−メタクリル酸)の二つである。前者の商業的に入手可能なレンズは屈折率が約1.437であり水分含有率が42%である。後者の商業的に入手可能なレンズは屈折率が約1.407であり水分含有率が55%である。後者のほうがはるかに透過性が高く、細孔の大きさもはるかに大きい。このようにこれら材料は、屈折率が1.33〜1.37である水性緩衝液中における全内部反射と、電気泳動に必要な電気伝導の両方に適している。両方の種類の高分子とも、簡単に成形し、装置内での使用に適するほど十分薄く作成することができ、一般的には0.2mmの範囲の大きさに作成される。最も高い分解能を持つことが好適であるため、構成要素#3の厚さを小さく、0.2mm程度に保つことが重要である。構成要素#4の厚さもまた小さく保つべきであるが、照射を受ける構成要素である構成要素#3の厚さほどは重要ではない。構成要素#4は照射を受けないため、その組成の重要度は構成要素#3の組成に比べてはるかに低い。実際、構成要素#4の組成は、構成要素#3と組織切片との間に嵌まる形状へと成形可能な実質すべてのソフトゲルであってよい。構成要素#4の重要な特性は、RNA、PNA*およびRNA−PNA*錯体の移動を可能にすることと、構成要素#3より屈折率が低いため構成要素#3を全内部反射蛍光で照射可能とすることである。したがって、構成要素#4に低パーセントポリアクリルアミドまたはアガロースゲルを使用することすら可能である。ポリアクリルアミドの使用によって、高分子化の途中でイモビラインをゲルに組み入れることもできる[25、19]。これらイモビラインは、PNA*が正の電荷を帯び、組織切片に向かい構成要素#3から離れて移動するよう、局所pHを緩衝するよう選択されるべきである。いずれか1個のイモビラインを使用する場合、選択されるイモビラインは、PNA*の設計に依存し、この設計もまたモニター対象のRNAに依存するであろう。一般に構成要素#4のpHを0.1pH単位以上でPNA*のpI未満へと緩衝するイモビラインを選択することが最も有用である。構成要素#1〜3中の溶液のpHもまた、構成要素#4中のイモビラインのpHよりも低くするべきである。
RNAが解析の対象となる唯一の細胞成分である場合、陰極アセンブリ中の構成要素の組成は、構成要素#3および#4の組成ほど重要ではない。一般に構成要素#6およびそれ以上の構成要素は、構成要素#4のpHと等しいかそれより大きいpHであるべきである。これら構成要素はポリアクリルアミドまたはHEMA−MAAから製作することができる。構成要素#7が全内部反射に使用される場合、これをHEMAから構成するほうがよい。これらは、次に構成要素#3に対して論じる検討事項と同じ検討事項の対象となるであろう。イモビラインを使用しない場合、センサ全体にわたる緩衝液はPNA*のpIのpHよりも低いpHを持つべきである。
構成要素#3は、照射を受け、試料検出のために使用されるセンサ構成要素であるため、構成要素#3の設計は注意深く検討するべきである。原則として構成要素#3は、いずれかの側の上にある緩衝液よりも大きく、構成要素#4よりも大きい光学密度を有し、全内部反射方式での照射を可能にするヒドロゲルである。また電流を送信する能力もあることが理由である。これは、HEMAを含有するもの等大部分のソフトコンタクトレンズ用ヒドロゲルにみとめられる特性でもある。HEMAおよびその他物質を含有する高分子ヒドロゲルを調製する方法は当業においてよく知られており、米国特許データベースを「HEMA」および「コンタクトレンズ」という用語で検索すれば、これら種類の高分子の製造に関連する700を超える特許が入手できる。特に有用な米国特許は、第6,447,118号、第6,552,103号、第6,582,631号、第6,623,747号であり、これらは適切な型を使用してセンサ中の構成要素#3を調製するために使用可能なヒドロゲルを成形し、変更する方法を記述している。光の全内部反射を可能にする緩衝液よりも十分大きな屈折率を有し、電流を通す能力があり、照射および蛍光に使用される光の波長で光学的に明瞭な、任意のヒドロゲル材料が、センサ構成要素#3への使用、ならびに全内部反射によって解析し照射するために使用される場合、センサ構成要素#7への使用に適切であることを理解するべきである。
構成要素#3のいくつかの態様は、センサの作動にも影響を及ぼしうる。例えば正の電荷を持つPNAがRNAを検出するよう使用される場合、構成要素#3の表面を正に帯電することが有用である。これによって、錯体を形成していないPNAの構成要素#3の表面から、全内部反射蛍光によって照射されない構成要素#4の領域への移動が促進される。RNAを検出するためにセンサを使用する場合、細孔の大きさがより小さいヒドロゲルから構成要素#3を作成することも有用である。この作成によって、構成要素#3が半透過性様式の挙動を行い、その結果RNA−PNA*錯体が該構成要素を通って移動することを防止する。これによって、核酸を結合する能力を有する材料を構成要素#3に付着し、構成要素#2a等の半透過性膜を使用する必要性を避けることができるであろう(図9A)。細孔の大きさが小さく水分含有量の少ないヒドロゲルは屈折率が高いので、解析中に使用される全内部反射光学の設計が促進される。構成要素#3の設計のもう一つの態様は、構成要素#2に面した表面に関連している。検出システムが光ファイバーウィンドウまたは光ファイバーテーパの使用を伴う場合、構成要素#3は光ファイバーに接触する可能性がある。光ファイバーは屈折率が高いため、照射に使用される光を直接ファイバーへと通す電位を形成し、それによって高いバックグラウンドを形成し、RNA−PNA*錯体からの光の検出を防止する可能性がある。したがって、構成要素#3と光ファイバーとの間に、屈折率の低い薄層材料を含有することが必須である。この層は、ファイバーと構成要素#3との間にDupont FEPフィルムを置くことによって提供することができる。またこの層は、光ファイバーに最も近い構成要素#3の表面に付着可能な薄い緩衝層によって提供することもできる。例えば、光ファイバーがSigma Chemicals(ミズーリ州セントルイス)から購入したSigmacote等の疎水性シリコン単層で被覆されている場合、光ファイバーに面する構成要素#3の表面は、水の小さな層を保持するようオリゴ糖で被覆されるよう設計され、該層は光ファイバーから分離されるであろう。これは表面から全内部反射を発生させるには十分である。構成要素#3のこれら特性は図11に示されるとおりである。
電気泳動が完了した後、または、構成要素#3を横切り構成要素#2a上に蓄積した構成要素#3の細孔が十分大きい場合、構成要素#3の表面に結合した蛍光プローブを検出する必要がある。これは、図9に示す構成要素#3の側に集光する照射器を使用することによって達成することができる。レーザは、小さな規模に集光可能なコヒーレントな単色光の光源として使用可能なため、この目的には最も有用な種類の照射である。1色を超える蛍光プローブを検討する場合、使用される照射の種類は、試料からの信号を検出する方法に依存するであろう。これが光ファイバーウィンドウないし光ファイバーテーパを有するカメラ系検出器である場合、複数波長で構成要素#3を照射できる照射器を使用することが有用である。これは、光ファイバーと構成要素#3との間の距離をできる限り小さく抑えることが重要なため、試料と光ファイバーとの間に異なるフィルタを挿入しないことが望ましいからである。複数色の蛍光プローブを検出するため、複数のレーザ、または異なる色素とともに使用可能で所望の波長を生成する色素レーザを使用する。より長い赤色波長を照射しその後ますます短くなる波長で照射することによって、試料の複数の写真を獲得し、これらを異なる色へと分解することが可能である。これを示す図を図12に示す。このように、励起波長と発光波長の両方を変化させることができる。光ファイバー系システムの利点は、蛍光発光の大部分を回収し、全試料から一度に蛍光を検出するよう設計できることである。これによって検出の感度が向上し、解析の速度を大幅に上げる。これは、対物レンズ系設計により簡単に導入される発光フィルタの使用から得られるより大きな自由度を相殺するには、通常十分である。
遺伝子生成物の蛍光画像がひとたび撮影されると、(まだ取り外されてなければ)構成要素#8および#9が取り外され、センササンドイッチの残存部分が光学顕微鏡へと移される。これによって、所望であれば組織切片の目視検査が可能になる。切片の蛍光画像との整列は、切片が顕微鏡のステージに載置されている時の構成要素#3の位置と、光ファイバーに載置されている時の位置とを比較することによって、行うことができる。これは構成要素#3の位置に対して組織切片の位置が一定のままであるからであろう。
構成要素#2および#8を製作するために使用可能な焼結材料は、英国PE31 6TN、ノーフォーク、ハープレイ、ネーデルゲートストリート、ラヴェンズヤードのSPC Technologies Ltd.から入手可能である。
図面の詳細な説明
図1A〜1Cは、3つの異なる視点からのセンサを示すセンサ装置の概略図である。図1Aはセンサ装置100の端面図である。センサ装置100は組織切片または他の被分析物101、真ちゅうまたはその他の導体102、導電性テープ103、ITOないしSnO2被覆スライド104、ガスケット絶縁体105、基質(緩衝剤を含む)106、顕微鏡対物レンズ107、CCDカメラないし他の検出器108および電圧発生装置109から成る。
センサの主要な用途は顕微鏡検査法であるため、本明細書で示す実施例は顕微鏡スライドから構成される。しかしこれより大きいセンサまたは小さいセンサを作成できない理由はない。センサはまた、顕微鏡検査法の一般的な大きさである1mmの厚さのスライド、顕微鏡検査法の一般的な大きさである0.17mmの厚さのカバースリップ、あるいはこの2つの組み合わせから構成することも可能である。実際、装置がTIRFMによって観察される可能性が高いため、好適な構造は、センサのうちTIRFを用いて観察される可能性が最も高い部分にカバースリップを使用することを伴うことが多いと思われる。RNA遺伝子発現生成物を検査する場合、これは陽極となるであろう。図1Aに示す図は、端部から見たセンサの図である。(灰色べた掛けで示す)スライドはITO、SnO2、またはその他伝導性金属で被覆されている。層は、電気を通すに十分な厚さがあり組織を観察するのに十分な薄さがある限り、層の厚さは重要でない。センサに組織切片を投入するために必要な取り扱い中にセンサをより頑強にするために、真ちゅうまたは他の伝導体(上向きに伸びる灰色の斜線)から成る金属製ホルダ内に保持されるよう設計された。このホルダの厚さはセンサの機能に対して重要ではないが、手術室の設置環境での乱暴な取り扱いに耐えうるほどの十分な厚さを持つべきである。装置にかかる電位を制御する鉛(黒線)は真ちゅう製の導電体に半田付けまたは他の方法で固着されている。金属被覆と導電体との間は、電極(黒い長方形)に巻かれた真ちゅうのテープを介して接触している。電極は、装置を滅菌するオートクレーブにおいて安定する接着剤によってスライドに固着されている。センサの2つの部分は、絶縁体の働きをするガスケット(緑色)によって分離されている。このガスケットの組成は重要ではないが、ゴムの堅さがあれば装置の使用および漏出の防止を行いやすいため最良である。ガスケットを1個のセンサに接着することによって、装置への投入が容易になる。装置が電位を組織切片(斑点の対照で示す)全体に送達することができる限り、いくつかの他の設計も可能である。材料は、本図に示すように底部から、または上部から観察することができる。
図1Bは、センサ装置100の上面図である。センサ装置100は真ちゅうまたは他の導電体102(注:導電体は該導電体との電気的接続を形成する導電性テープとの接触が可能な形状をとり、少なくとも1個の導電体は金属被覆スライドおよび該スライドに挟まれた材料の観察を可能にする穴を有する)、ITOないしSnO2被覆スライド104(注:該テープは両面と接触するようスライドの縁で折り畳まれている)、およびガスケット絶縁体105(注:この形状によってガスケット絶縁体は創始のスライド上にある導電体テープ、および流体が存在する場合は装置の端部のスライドと接触する)から成る。
センサは少なくとも1個の、好適には2個の光学的透過性のある構成要素を含む。これら構成要素は、上面図の第1の画像に示すようにセンサ周りに折り畳まれたテープで覆われる。電気的接続を与える他の方法も作動するが、頑強さ、高い導電性、および製作の簡単さを理由にこの設計が選択された。導電性テープが全センサ表面の上面および下面全体に伸びることによって、金属酸化物層および真ちゅう導電対との均一な電気的接続を容易にしていることに留意すべきである。しかし、スライドのほとんどの縁部は被覆されず、TIRF照射のために利用可能としている。テープを金属酸化物層に沿って延ばし、端部の回りで反対向きに折り返す等、テープを付着する他の手段もある。テープを付着する方法は、センサの機能には重要ではない。ただし、TIRF照射が解析中に使用される場合は、板の縁部によってTIRF照射が可能となるであろう。スライドの下方に示すのは、導電体およびガスケットの構造である。基本的に、それぞれは長方形の形状を有し、ユーザがセンサの内容物、例えば組織切片を観察する能力を妨げることなく、導電性テープと接触することができる。
図1Cは、センサの側面図を示す。図1Cはセンサ装置100の端面図である。センサ装置100は組織切片または他の被分析物101、真ちゅうまたはその他の導体102、導電性テープ103、ITOないしSnO被覆スライド104、ガスケット絶縁体105、基質(緩衝剤を含む)106、顕微鏡対物レンズ107、CCDカメラないし他の検出器108および電圧発生装置109を備える。
導電性テープが半透過性様式で示されていることに留意されたい。該導電性テープは、センサの長さの大部分に関してセンサプレート(スライド)の端部を覆っていない。これは、照射器が解析結果の視覚化のために後に使用可能な場合、センサのTIRF照射に使われる部分である。次に説明するように、いくつかの種類の視覚化を使用することができる。
図2は、βアクチン用の分子指標を示す。図2はIDT DNA technologiesから購入したβアクチンを認識するよう使用可能な分子指標の塩基配列を示す。この分子指標は、5’端に、βアクチンの非存在時に3’端でブラックホール2消光剤によって消光されたローダミンレッド蛍光プローブを含有する。この指標は、合成中に導入され指標をストレプトアビチンにしっかりと結合させる、チミジンに付着したビオチン部を含有する。5’ローダミン−レッド−CAC−CGC−TAG−ATG−GGC−ACA−GTG−TGG−GTG−ACG−CGG−TG−ブラックホールQ2−3’。
図3は、ビオチニル化されたセンサ面の調製工程を示す。ビオチンアルブミン被覆センサ表面の調製手順は(1)H2O/H2O2/NH3(10:2:0.6)中でITOスライドを55℃において75分間洗浄する。(2)真空オーブン中で165℃で150分スライドを乾燥させる。(3)乾燥窒素で冷却しSigmaCoteで被覆する。(4)スライドを0.05%ウシ血清アルブミン−ビオチン(BSA−B)に一晩被覆する。(5)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中でよく洗浄する。(6)BSA−B処理スライドをストレプトアビチン0.1mg/mlで60分間被覆する。(7)PBS中でよく洗浄する。(8)ストレプトアビチンスライドを分子指標(0.1nモル/ml)で60分間被覆する。(9)よく洗浄する。
図4Aから4Bは、分極ルーチンを示す。図4Aは負の電荷を帯びたオリゴヌクレオチドの正の電荷を帯びたセンサ表面への移動を示す。このルーチンは、実施例1に示す解析の間、センサ表面に分子指標が被覆されているセンサに適している。このルーチンの多くの他のセンサに被覆される。通常ははるかに高い周波数(すなわち200,000Hz)が使用されるであろう。周波数、振幅、波長の変更によってセンサ表面近傍のオリゴヌクレオチドの濃度を変更し、ハイブリダイゼーションを促進ないし阻害する可能性がある。本例に示すような電圧パターンの使用を使用して、ハイブリダイゼーションを変化と周波数の関数として変更することができる。これによって被分析物のセンサ表面への結合を加速し、結合相互反応の特異性を増加し、非特異結合を減少することができる。図4Bは被分析物と検出試薬(すなわち単一の正の電荷)の未成熟分離を防止するための波長の使用を示す。これは、分子指標がセンサ表面に付いておらず実施例2の解析中に遊離しているセンサに適したルーチンである。多くの他の修正でもまたうまく機能するであろう。ここに示す周波数は概略図にすぎないことに留意されたい。通常ははるかに高い周波数(すなわち200,000Hz)が使用されるであろう。この工程には、錯体を陽極まで移動させるための定電圧を変化させた後の結合工程中に大きな振動を伴う。
図5Aから5Bは、実施例2に示すセンサ調製の原理を示す。この操作モードにおいて、蛍光検出分子は通常電荷を帯びず、被分析物の電荷とは反対の小さな電荷を有する。図5Aは錯体の形成を示す。錯体は被分析物上にみとめられる電荷を有する。錯体の形成後、蛍光分子は非結合蛍光プローブから離れて電極へと運搬される。図5Bは、移動段階において蛍光錯体が陽極に移動し、陽極では該錯体がみとめられ非結合PNAが陰極へと移動する。陰極に非結合PNAが存在することによって、観察者はTIRFMで陽極を見ることができない。
図6Aから6Bは、複数の対物レンズに対するTIRF照射器を示す。図6Aは光源および対物レンズの位置を示す側面図を示す。照射器600は、レーザ源601、レンズ602、立方体603、プリズム604、プリズムとカバースリップ605との結合部に配置された焦点、照射されたセンサ表面606、組織試料607、照射されていないセンサ表面608、ホルダ609および対物レンズ610を備える。
センサに照射される表面領域は、円筒形要素の曲率およびセンサ表面からの距離に依存するであろう。試料に面する表面のみが蛍光を発現する。カットオフフィルタが、例えば異なる量子ナノドードからの異なる色の光を区別するために、センサと検出器との間に置く必要がある。
図6Bは、照明器が顕微鏡の上に載置されている様式を示す。
図示するように、照明器は、照明器とセンサ表面の両方が一方の側から他方の側へと一単位として、センサ表面に隣接して保持されているであろう。これによって観察対象となるセンサを異なるように「薄片化」することができる。
図7Aから7Bは、加熱に使用可能なセンサの変更を示す。図7Aはセンサの端面図であり、図7Bはセンサの側面図である。主要な差は、加熱のためのメカニズムを提供する必要のある変更にかかわる。この変更例では、センサ側にある第2のITO層を含み、この層に加えられる電圧を維持するために、測定装置としてのセンサの作動を制御する層による干渉を防ぐために絶縁が必要である。
図7Aは、センサ装置700の端面図である。センサ装置700は、組織切片またはその他被分析物701、真ちゅうまたは他の導体(内側被覆)702、導電性テープ703、ITOまたはSnO2被覆スライド704、ガスケット絶縁体705、基質(緩衝剤を含む)706、顕微鏡対物レンズ707、CCDカメラまたは他の検出器708、電圧発生装置709、真ちゅうまたは他の導体(外側被覆)710および絶縁テープ711を備える。
図7Bは、センサ装置700の端面図を示す。センサ装置700は、組織切片または他の被分析物701、真ちゅうまたは他の導体(内側被覆)702、導電性テープ703、ITOまたはSnO2被覆スライド704、ガスケット絶縁体705、基質(緩衝剤を含む)706、顕微鏡対物レンズ707、CCDカメラまたは他の検出器708、電圧発生装置709、真ちゅうまたは他の導体(外側被覆)710および導電性テープ711を備える。
図8は、マイクロタイターウェルプレートの設計を示す。マイクロタイタープレート800は、底部802に接着され電気的接触をする上面ピン801を備える。
導電性の表面を含有するマイクロタイターウェルプレートは、種々の方法で構成することができる。唯一の要件は、2つの電気的な導電性表面がウェル内の流体と接触することである。すべてのウェルが同一の電位となるプレートを作成する一方法を図8に示す。ITOまたはその他導電性材料を被覆するプレートが、マイクロタイターウェルプレートの基板として使用される。個別のウェルを形成する成形されたプラスチックアダプターが、プレートの金属表面に接着されている。プレートの上面の下部は、プラスチックまたは他の便利な材料から作成されたピンを含有するよう作成され、これらピンはスパッタリング工程によってITOないし他の金属で被覆されている。プレートを閉じることによって金属被覆ピンがプレート内の流体と接触し、該流体はプレートの下面上にある金属被覆表面と接触している。電極は上面および下面被覆に接着され、ウェル内の電位を形成するよう使用される。
この配置では各ウェルは同じ電位であろう。プレート上面を作成する代替モードを使用して、各ウェル中の電位を別々に制御可能なプレートを作成することができる。これを行う一つの方法は、導電層のない上面を使用することである。別々の電線が各ウェルに対して上面を介して挿入される。
マイクロタイタープレートの上面が電極を含有する必要ないことも留意するべきである。オープン方式で使用可能な装置を作成するためには、電気的に導電性の表面が成形されたプラスチック層にスパッタリングされ、これがウェルの内面および外面を完全に被覆するウェルの壁を形成するよう使用される。次に、金属被覆底部に接着する前に、絶縁層は成形片の底部上に被覆されている。
図9Aは、高分子系装置の全体設計を示し、拡大概略図で示す。以下の構成要素が存在し、数字によって識別される。しかし、この設計の他の変形が可能であり、これらは該構成要素に関連した「任意の」という言葉によって示される。これら構成要素の存在によって分解を促進することができるが、これらは解析に絶対的に必要なわけではない。項目1、2、3、4が単一の装置へと組み付けられ、陽極アセンブリと呼ばれる。項目6、7、8、9が単一の装置へと組み付けられ、陰極アセンブリと呼ばれる。これら項目は、装置の作動中に流体によって、互いに接触することも流体によって分離することもできる。センサの各部に印をつけるために使用される斑点は、センサのこれら部分の構成要素が同一でなければならないことを指示するよう留意するべきである。また、各層の厚さは異なってもよく、これらの層を等しい厚さにすることは必要ないことも留意するべきである。実際、これらの層を異なる厚さにすることが有益な場合も多い。
1.電極および電極ホルダ
2.電極およびホルダを光学面から分離するスペーサ(電極ホルダの設計に応じてオプショナルである)。このスペーサは、ヒドロゲル、焼結ポリプロピレンまたは他の多孔性物質から成ってもよい。
2a.被分析物を捕捉するための半透過性膜
3.光学解析に使用される高分子または他の材料
4.スペーサとして使用され、混合を促進し、光学解析と試料を分離する高分子または他の材料
5.試料
6.スペーサ(任意、追加の解析を可能にする)として使用される高分子または他の材料
7.スペーサ(任意、追加の解析を可能にする)として使用される高分子または他の材料
8.電極ならびにホルダを光学面(任意、電極ホルダの設計による)から分離するスペーサ。これによってヒドロゲル、焼結ポリプロピレンまたは多孔性物質から成ってもよい。
9.電極およびホルダ
図9Bは、組みつけられた状態での装置を図示する。組織切片(5)は、それぞれ構成要素1、2、3、4および構成要素6、7、8、9から成る下側アセンブリまたは上側アセンブリのいずれかに載置される。通常は、組織切片をここに示すように陽極アセンブリを載置することが最も便利であるが、どのアセンブリを最初に使用するかは問題ではない。次に、別のアセンブリを加えて装置を完成させ、図に示すように9構成要素すべてを有する。構成要素が図9Aで特定されることに留意すること。
図9Cは、電気泳動の途中に使用されている装置を図示する。電気泳動を行う従来の手段は、図9Bに示すアセンブリの構成要素を取り、構成要素を電極に電圧を加えることができる接続を含むボックスへと摺動させることである。このボックスはセンサ装置をともに保持し、逆向きにすることもできる。逆向きにすることによって、水の電気分解中に発生した気泡が解析に干渉しないようにする。ボックスは、センサ外縁部の電極と電気的接続をする電極を含有している。後ほど記載するように、センサまたはボックス上のいずれかから電極を除去することが可能であるが、両方から除去することはできない。構成要素は図9Aを参照することによって識別されることに留意されたい。また、電気泳動チャンバはPlexiglasまたは類似のプラスチックから成り、「陽極」および「陰極」と表示された縁部に沿った2個の垂直な三角形のプラスチック片を含有する。このプラスチック片は、センササンドイッチ(すなわち、左側の積み重ね)がそれに間違った方向に挿入されることを防止し、あるいは、2個の陰極アセンブリまたは2個の陽極アセンブリから間違って組みつけられた場合。
図9Dは、陽極(構成要素#1と構成要素#2)および陰極(構成要素#3と構成要素#4)の構成を示す。陽極と陰極の両方は同一の方式で構成することができ、それぞれが左側パネルに示すように異なるコーナー部切欠から構成され、これによって陽極および陰極が不適切な方向で電気泳動ボックス(図9C)へと挿入されることを防ぐ。これら構成要素の唯一の機能は、装置全体に対して電圧をゲルの機能を分断させることない方法で、送達することである。灰色のべた罫の長方形は金属電極を示し、クロス模様の領域はプラスチックホルダを示している。これらはともに、図9Aの構成要素#1と#9に相当する。プラスチックホルダは、金属電極を収容するよう切り取られた正方形の棒およびこの図では取り除かれているが図9Aの構成要素#2、#8に相当する焼結ポリエチレンガラス原料から成る。左側パネルは、陽極(下図)および陰極(上図)に対して修正した図面上に示す点で切った、装置の断面である。第2、第3、第4のパネルは側部、前部、後部から見た長手方向図である。(前部は高分子または透析膜に接触する面である。)ガラス面が上面に接着される前に、装置には流体が充填されていることに留意されたい。これによって装置の上面に空気の空間が形成され、電気泳動中の電気分解による気体を放出することがけきる。蓋は熱収縮プラスチック被覆(黒色の正方形の点)によって囲繞されているが、装置の使用中に取り外されることに留意されたい。他のグラス面を介して流体が通過することは流体に接触する構成部品(すなわち図9Aの#2a、および#3ないし#7)の存在によって阻害される。その結果、技術者またはその他操作者は、使用中に装置に流体を追加する必要はない。少量の洗浄剤を使用して、グラス面の湿潤を促進することができるが、これは通常必要ではない。装置は、使用時に操作者が流体を追加するよう構成することも可能である。この場合、陽極または陰極構成要素#1および#9が、電極(灰色のベタ罫の三角形)を含有する必要がないことに留意されたい。陽極および陰極構成要素は電気泳動ボックス内に配置されてもよく、該ボックスに操作者は緩衝液を追加する。この場合、図の長手方向の図に示すようにガラス面または一時的な密封を装置の上面に追加することが必須ではないと思われる。
図9Eは、陽極アセンブリおよび陰極アセンブリの構成を示す。アセンブリに含まれる高分子ゲルは、個別に作成され、装置で使用される大きさへと切られる。このサイズは解析対象となる組織切片または他の材料と等しいか、大きくするべきである。実際のところ、これら組織切片を予測される組織切片よりも25%大きくして、切片を操作中に装置上に配置しやすくすることが通常は好適である。複数の切片を同時に観察可能な装置を作成することが可能なため、使用されるゲル片の大きさは、装置上に載置され、同時に電気泳動を受ける切片の数に依存するであろう。最終の組み付け手順は、蒸発を埋め合わせるための2、3滴の水とともに、装置を水密袋中で密閉状態にして密封することである。水分を含んだペーパータオルの小片もまたこの目的に使用することが可能である。
図9Fは、「露出された」センササンドイッチをカメラ上への載置を示す。陽極および焼結ポリエチレン構成要素が取り外されている。この作業は、構成要素#2の角と透析管ないし構成要素#3との間に小さなへらを置き、ねじって陽極を除去して行う。透析管または構成要素#3を除去しないよう注意を払うべきである。サンドイッチの残りを光ファイバーウィンドウ上、または、高感度CCDカメラ(11)のチップに結合する光ファイバーチップ上に配置する。試料は全内部反射蛍光(TIRFM)によって、構成要素#3を照射するレーザあるいは他の照射装置にもとづく照射システムを用いて検出されるであろう。図示されていないが、照明は構成要素の面の全領域が照射されるよう、照射は設計されている。これによってCCDカメラは、切片全体の画像を記録することができる。カメラの分解能はチップ上の画素数、および光ファイバーウィンドウまたはテーパを作成するファイバーの大きさに依存するであろう。この解析には、2個か3個の細胞におけるRNAの決定ができる20〜50μmの分解能で十分である。この情報はデータ処理のためコンピュータに転送される。陰極も所望であれば取り外すことができるが、組織薄片が通常の顕微鏡法で検査されるまでは必須ではない。これは蛍光画像で見られる内容に依存することが多いであろう。
図10Aは、蛍光プローブ(PNA*)で標識されたPNAが、センサ装置中で遊離およびRNAと結合している時の、PNAの移動を示す。この錯体は、孔の大きさの制約を理由として透析膜(構成要素#2a)を解して通過しないことに留意されたい。構成要素#3の穴の大きさもまた、RNA/PNA*錯体がこの孔を通過しないよう小さくすることができ、この場合透析膜(すなわち#2a)は必須ではなく使用されないと思われる。しかし、錯体をなしていないPNA*が構成要素#3によって作成された区画に入らないことが重要である。その理由は、そうなると装置中に認容不能な高いバックグラウンドを形成すると思われるからである。このように、構成要素#3の近傍にある正の電荷を帯びたPNA*を使用して、PNA*がこの構成要素および表面から離れて移動するようにすることが重要である。この解析は、構成要素#3の照射によって形成される定常のエバネセント波の外側の材料が使用される、全内部反射蛍光(TIRF)の原理を利用しているため、構成要素#3からのPNA*の距離はわずか200〜300ナノメートルでなければならない。
図10Bは、酵素または、組織切片中にあるか組織切片から除去された材料との反応によって電荷が取り除かれる前と後の、蛍光性の電荷を帯びた検出試薬の移動を示す。未反応の検出が正に帯電され、該反応によって未反応の検出は、リジン、アウギニンアミノ酸等の正の電荷の残基を除去することによって負に帯電すると、検出剤上の電荷を変化させ、検出試薬を図に示す構成要素#3に向かって移動させる。さらに、蛍光検出剤は、電荷を帯びた部位を除去することによって構成要素#3と結合した一つまたは複数の部位と相互反応する結合部位に露出するよう、設計することが可能であろう。したがって、検出剤の電荷の変化、ないし、錯体を形成しない検出剤とは異なる電荷を有する錯体の形成を使用して、組織切片中のように空間的にまとめられた被分析物をはじめとする被分析物を検出できることが理解できる。
図11は、構成要素#3に対する設計検討事項を示す。構成要素#3中のヒドロゲルの架橋結合は解析に依存するべきである。RNA等の被分析物の場合、高い架橋結合の使用が有用な場合が多く、これによって屈折率を高く保ち、ヒドロゲルがRNAに対する半透過性バリアとして挙動し構成要素#4に面する面にRNAを保持することができる。また、正の電荷を帯びた残基を含有するPNA等、正の電荷を帯びた試薬で、RNA等の負の電荷を帯びた被分析物を検出する場合、構成要素#3の表面は、負の電荷を帯びたRNAと結合されない限り、検出試薬と反発する正の電荷を帯びた材料と架橋結合可能である。これはまた、PNAのpIよりも低いpHを有する緩衝液を使用して、促進することもできる。構成要素#2に面する構成要素#3の表面は、該構成要素を光ファイバーと分離するために使用可能な水層をひきつけるため、親水性であるべきである。
図12Aは、構成要素#3を(または構成要素#7を使用する場合は構成要素#7)照射するよう使用されるシステムの配置を示す。構成要素#3は光ファイバーの上に載置され、薄い水層または緩衝層がこの2つを分離するようにされる。これは照射光(太い黒矢印)の全内部反射を発生させるために必要とされる。蛍光(細い下向き矢印)は緩衝層、さらに(存在する場合)散乱光を素子するよう設計されたフィルタを通過する。この照射は、構成要素#3と#4との界面および構成要素#3と水との界面が滑らかで清浄な場合、最小にするべきである。カットオフフィルタの使用によって散乱光を低減することができるが、フィルターホイールアセンブリを使用しなければ2つ以上の励起波長での発光の測定はより難しくなるであろう。信号対雑音比を増加する有用な方法は、試料を分極光で照射し、この極性を有する光の透過を、図示する位置にあるフィルタで阻害することである。レーザ光は、構成要素#3の全表面を照射できるよう、垂直方向に圧縮し水平方向に拡大するべきことに留意するべきである。これによって、構成要素#5に描写される組織切片全体における被分析物の画像を、一度に決定することができる。構成要素#3中に反映されるセンサの大きさは、光ファイバーから撮像される画像の大きさよりも若干小さいことが望ましい。これによって、構成要素#3の概略に関して低分解能の画像を撮像することができる。これは、センササンドイッチが対物レンズを通して観察する標準的な倒立型顕微鏡へと移動する場合、蛍光画像を組織切片と整列させるために使用することができる。
図12Bは、色の識別に使用される照射を示す。黒塗りの三角形は、照射に使用された相対波長を示し、最右側が長い波長、最左側が短い波長である。構成要素#3が最初に最も長い波長で照射され、蛍光が測定される。次に、図面の上部から下部へと進むパネルが示すように順次短い波長で照射される。蛍光励起スペクトルは、各パネルにおいて黒点線で表される。蛍光発光スペクトルは各パネルにおいて灰色の破線で表される。測定される蛍光は黒い実線で表される。ここで概略的に示されているように、漸次短くなる波長における黒線で表される全蛍光は、蛍光を後続の線から「減算する」ことによって数学的に分解することができる。これは、使用される各波長における蛍光励起および発光基準が知られているマトリックス代数的アプローチによって行われている。
図12Cは、散乱光の量を低減する必要がある場合に、装置内において色のついた蛍光プローブを識別するために使用可能な好適な種類を示している。この種類のフィルタは、文字B、G、Rの下に示す破線によって示されるいくつかのレーザ光線のブロック波長を阻害する能力を有するため、複数波長域パスフィルタとして知られている。その結果、全内部反射によって試料を励起するために使用される散乱光は、光ファイバーウィンドウまたは光ファイバーテーパに到達を妨げられ、解析に干渉することはない。以下に示す図では、B、G、Rはそれぞれ青色、緑色、赤色レーザの最大発光を意味している。これは発光フィルタであるため、蛍光信号の量も低下するが、散乱光をさらに低減することによって信号対雑音比を増加させると思われる。使用可能な第2の種類のフィルタは分極光を遮断するために使用することができる。エバネセント光によって照射される蛍光プローブによって発せられる光は、構成要素#3を照射するよう使用される光と同じ極性を有するため、蛍光プローブが発する光は照射に使用される分極光を遮蔽するよう設計されたフィルタには、遮蔽されない。したがって、分極フィルタは蛍光信号を遮蔽するよりも、より効果的に光の分散を遮蔽する。これによって信号対雑音比を増加させる。最後に、この装置において色を識別する第3の手段は、異なる速度で光退色する蛍光プローブを使用することである。時間の関数としての信号の変化をモニターすることによって、蛍光プローブのそれぞれを識別することが可能である。これによって、発光スペクトルとほぼ同一である蛍光プローブの使用も可能である。したがって、簡単に光退色する蛍光プローブからの蛍光は、より安定な蛍光プローブからの蛍光よりもはるかに高速に減衰する。この種類の解析が採用される場合、より多くの被分析物に最も不安定な蛍光プローブを標識することが望ましい。
図12Dは、試料を照射するための好適な態様を示している。試料の照射は、本書の構成要素#3の下方に示すように、構成要素#3の隣の直線アレイに保持されたファイバーへと分けられる光ファイバー束を使用して、達成することができる。この図はまた、所望であれば、複数のファイバー束を使用してもいいことを示している。これは、図に示すレーザと同じレーザに接続してもよく、異なるレーザに接続してもよい。この図に示すファイバーの数は例示目的のみに使用されている。ファイバーの数はこれより少なくても、またはるかに多くても良い。ファイバー(コアとクラッド)の直径は、構成要素#3の厚さよりも小さくするべきである。ファイバーの開口数は、全内部反射の原理に反する開口数よりも小さいはずである。これによって構成要素#3の屈折率、および材料が接触する構成要素#3の上方および下方にある材料の屈折率に依存するであろう。この角度はスネルの法則から計算することができる。
本発明の一態様は、センサに使用可能なコンタクトレンズの作成に使用されるヒドロゲルと類似したヒドロゲルを提供する。その理由は、ヒドロゲルは電気泳動および光学的屈折および試薬の捕捉に適しているからである。本発明の他の態様はセンサ自体であり、センサの使用方法に依存するであろう。センサは、ユーザが追加の流体を一切追加する必要ないという点でユーザにとって使いやすくなるよう設計されている。この理由から、電極はセンサに内蔵されている。他の用途では、ユーザは流体を追加することができる。この場合、電極自体はセンサに内蔵される必要はないが、電気泳動ボックスに内蔵することが可能である。図9は単に、センサ装置内の電極と電気接触を確立するために、これらを示している。ボックス内に流体を加える場合、電極はセンサ内に存在する必要はない。本発明のもう一つの態様は、解析を行う材料の電荷を解析中に変化させることである。この電荷の変化は、検出試薬が被分析物に結合するために発生する(すなわち、PNAは正に帯電し、RNAとの錯体が負に帯電する)。被分析物によって検出試薬を変更し、その電荷を変更することも可能である。このように、被分解物の正の電荷を帯びた部分を切り取る酵素がこの電荷を変更する可能性がある。これによって、この変更によって電荷が正から負に変更した場合、この部分が陽極へと移動するであろう。これはまた、被分析物上にも新しい結合面を作成するよう使用することができる。
「結合した」という単語は「結合する」だけでなく「変化」という概念も反映している。検出試薬と被分析物との相互反応によって、それが電場において移動する方向を変化させる。装置がユーザが流体を追加しなくてもいいように設計された場合でなければ、電極自体をセンサに取り付ける必要はない。装置から気泡を逃がすために、構成要素#3が電極に付くのを防ぐために、スペーサは依然として必要である。図に示す装置もまた、組織切片等被分析物における異なる空間位置に位置するものの解析に有用である。
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本明細書全体にわたって、種々の刊行物が引用されている。これら刊行物における開示は、最新技術をより完全に記述するよう参照によって本明細書に含められる。
本発明は特定の実施形態において特別に記載されているが、当業者であればこの開示に照らして本発明に対する多数の変更および修正が可能であり、該変更および修正は本発明の精神および範囲から逸脱しないものとしてみなされるであろう。したがって、本発明は広く作成され、請求項の範囲および精神によってのみ制限される。
図1A〜1Cは、3つの異なる展望からのセンサを示すセンサ装置の概観を示す図である。図1Aは、センサの端面図である。
図1A〜1Cは、3つの異なる展望からのセンサを示すセンサ装置の概観を示す図である。図1Bは、センサの上面図である。
図1A〜1Cは、3つの異なる展望からのセンサを示すセンサ装置の概観を示す図である。図1Cは、センサの側面図である。
図2は、βアクチンの分子指標を示す。
図3は、ビオチニル化されたセンサ表面の調製の手順を示す。
図4A〜4Bは、分極ルーチンを示す。図4Aは、正の電荷を帯びたセンサ表面へと移動する負の電荷を帯びたオリゴヌクレオチドを示す。図4Bは、被分析物の未成熟分離を防ぐための波形の利用と、検出試薬(すなわち、単一の正電荷を含有するよう設計された蛍光PNA)を示す。
図5A〜5Bは、実施例2のセンサ動作の原理を示す。図5Aは合成物の形成を示す。図5Bは分離段階中に蛍光性合成物が該合成物が観察される陽極へと移動し、蛍光性非結合PNAが陰極へと移動することを示す。
図6A〜6Bは、複数目的のためのTIRF発光体を示す。図6Aは、光源の位置および目的を示す側面図を示す。図6Bは、発光体を顕微鏡上に配置する態様を示す。
図7A〜7Bは、加熱用に使用可能なセンサの修正を示す。図7Aは、センサの端面図である。
図7A〜7Bは、加熱用に使用可能なセンサの修正を示す。図7Bは、センサの側面図である。
図8は、マイクロタイターウェルプレート設計を示す。
図9A〜9Fは、高分子系センサ装置を示す。図9Aは高分子系装置の全体設計を示し、拡大概略図の形態で表されている。
図9A〜9Fは、高分子系センサ装置を示す。図9Bは組み立てられた状態での該装置を示す。
図9A〜9Fは、高分子系センサ装置を示す。図9Cは電気泳動中に使用されている該装置を示す。
図9A〜9Fは、高分子系センサ装置を示す。図9Dは陽極(構成要素#1および構成要素#2)および陰極(構成要素#8および構成要素#9)を示す。
図9A〜9Fは、高分子系センサ装置を示す。図9Eは、陽極アセンブリおよび陰極アセンブリの構造を示す。
図9A〜9Fは、高分子系センサ装置を示す。図9Fは「露光した」センササンドイッチのカメラ上への搭載を示す。
図10A〜10Bは、蛍光プローブ(PNA*)で標識したPNAの移動を示す。図10Aは、蛍光プローブ(PNA*)で標識したPNAがセンサ装置中で遊離し、RNAと結合したPNAの移動を示す。
図10A〜10Bは、蛍光プローブ(PNA*)で標識したPNAの移動を示す。図10Bは、酵素または組織切片中または組織切片から放出された物質との反応によって電荷が除去される前および後の、蛍光性の電荷を帯びた検出試薬の移動を示す。
図11は、構成要素#3の設計考慮事項を示す。
図12A〜12Dは、装置の照射を示す。図12Aは、構成要素#3(または構成要素#7が使用される場合は構成要素#7)を照射するために使用される配置を示す。
図12A〜12Dは、装置の照射を示す。図12Bは、色を識別するために使用される照射を示す。
図12A〜12Dは、装置の照射を示す。図12Cは、散乱光の量を減少させる必要がある場合に、色の付いた蛍光プローブを識別することが可能な装置に使用可能なフィルタの好適な種類を示す。
図12A〜12Dは、装置の照射を示す。図12Dは、被分析物を照射するための好適なモードを示す。