JP2006525100A - 抗頻脈ペーシングのための履歴依存ペーシング間隔の決定 - Google Patents

抗頻脈ペーシングのための履歴依存ペーシング間隔の決定 Download PDF

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Abstract

心房頻脈又は心室頻脈のエピソードを処置するのに使用することができる抗頻脈ペーシングパルスを送出する方法及びデバイス(10)が提供される。心房頻脈又は心室頻脈のエピソードは、心臓が正常調律か、又は、加速した調律にある間に起こり得る。本方法及びデバイス(10)は、頻脈をより有効に終了させることができる抗頻脈ペーシングパルス用のペーシング間隔を決定する時に使用するための、心房頻脈又は心室頻脈のエピソードを経験する心臓(12)の活動電位継続時間の推定値を決定することを対象とする。

Description

本発明は、埋め込み可能医療デバイスに関し、より詳細には、頻脈エピソードを処置するための埋め込み可能医療デバイスに関する。
不整脈は、心拍の正常なレート、正常な調律、又は正常な伝導における乱れである。心室不整脈は心室で発生する。心室不整脈の1つの形態である心室頻脈(VT)は、心室が、高いレートで、たとえば、1分当たり110以上の拍動で収縮する状況である。心室不整脈の別の形態である心室細動(VF)は、心室壁組織のカオス的で且つ乱れた活性化が特徴である。VF中の1分当たりの脱分極の数は400を超える場合がある。
VTはVFをもたらす場合があり、したがって生命にかかわる可能性がある。VTはまた、疲労等の他の低心拍出量症状に関連する。多くのVTは一過性であり、突然に開始するが、同様に突然に終了することによって特徴付けられるが、患者にかなりの苦痛を引き起こす。処置されない場合、VTは、血栓の発生等の、他の生命にかかわる危険な状態をもたらす場合があり、発作、及び、場合によっては死をもたらすことがある。
頻脈に対する処置は、抗頻脈ペーシング(ATP)又はカーディオバージョンを含み得るが、そこでは、より正常な調律を回復しようと試みて、1つ又は複数の高エネルギーパルスの高レートパルス列が心臓に送出される。ATPは、通常、安定した心房頻脈を正常調律に変換するのに有効であり、埋め込み式デバイスを介して送出されることが多い。多くの場合、徐々に攻撃的なATP治療のシーケンスが、VTエピソードが終了するまで印加される。埋め込み式デバイスは、VTがVFに悪化する場合、ATPを中止し、すぐにカーディオバージョンを印加するように構成されてもよい。
一般に、本発明は、ATPペーシングパルスのために、履歴に依存したペーシング間隔の決定を利用するATP技法を対象とする。本明細書で述べるATP技法は、VTの処置に使用されるATPパルスを送出するのに有益である。さらに、ATP技法は、心房頻脈(AT)の処置にとって有益であり得る。
患者は、心臓が正常レートで拍動する安静中、又は、心拍が正常レートから加速される運動中において等、いつでも頻脈を経験する場合がある。したがって、安静期間中に有効なATP治療は、心拍数が加速される活動期間中ほどには有効でない場合がある。
本発明に従って送出されるATP治療は、ATPペーシングパルスのためのより適切なペーシング間隔を決定するために、頻脈を検出する前の、及び、頻脈エピソードの最中の心拍数を考慮するように構成される。
説明されるように、ATP治療は、AT又はVTを検出する前の優勢な心拍数の結果としての活動電位継続時間(APD)の差を考慮する。たとえば、より高い心拍数が持続する場合、APDは通常減少する。他方、より低い心拍数の存在下では、APDは通常増加する。したがって、本発明は、状況に対してより適切なATPペーシング間隔を決定するのにこの現象を利用する。
一実施形態では、本発明は、心臓内の頻脈を検出するステップと、心臓に抗頻脈ペーシングパルスを印加するステップと、抗頻脈ペーシングパルスの印加時に、心臓内の活動電位継続時間の推定値に基づいて抗頻脈ペーシングパルスのペーシング間隔を設定するステップとを含む方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、頻脈に関連する電気活動を検出するための少なくとも1つの電極と、活動電位継続時間の推定値を決定し、抗頻脈ペーシングパルスの印加時に、心臓内の活動電位継続時間の推定値に基づいて抗頻脈ペーシングパルスのペーシング間隔を設定するプロセッサとを備えるデバイスを提供する。
さらに別の実施形態では、本発明は、上述した技法を実行する命令を含むコンピュータ読み取り可能媒体を対象とする。
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、添付図面及び以下の説明に述べられる。本発明の、他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに、特許請求の範囲から明らかになるであろう。
図1は、本発明の技法を実施するための、例示的な埋め込み可能医療デバイス(IMD)10を示す。IMD10は、ATPペーシングパルスのために履歴に依存したペーシング間隔決定を利用するATP治療を送出する。この方法において、IMD10は、頻脈を検出する前、及び、頻脈エピソードの最中の心拍数に応じた動的ATPペーシング間隔を提供する。この動的ペーシング間隔の決定は、異なる心拍数によって先行される頻脈エピソードを終了させる時のペーシング間隔の作用を考慮する。より詳細には、IMD10によって送出されるATP治療は、AT又はVTを検出する前の優勢な心拍数の結果としての活動電位継続時間(APD)の差を考慮する。結果として、IMD10は、所与の頻脈エピソードについて、より有効である異なるペーシング間隔を動的に送出することができる。
図1の例では、IMD10は、抗頻脈ペーシング(ATP)機能、カーディオバージョン機能及びディフィブリレーション機能を含む埋め込み可能多腔ペースメーカである。しかしながら、本発明は、図1に示す特定のIMD及び構成に限定されるのではなく、任意の数の埋め込み可能医療デバイスによって実施されてもよい。本発明の技法は、単一の心腔又はいくつかの腔をペーシングするデバイス、1つ又は複数の心房、或いは、1つ又は複数の心室をペーシングするデバイス、カーディオバージョン機能及びディフィブリレーション機能を含む或いは含まないデバイス、及び、いくつかのペーシングモードのうちの任意のモードでペーシングするデバイスによって実施されてもよい。一般に、本発明の技法は、ATを処置するために心房に対してであろうと、VTを処置するために心室に対してであろうと、ATP治療を供給する任意のデバイスによって実施されてもよい。
図1に示すように、IMD10は、心臓12に1つ又は複数のATP治療を施行するためのペーシング刺激を生成する、ハウジング52内に収容された埋め込み可能パルス発生器(IPG)に対応する回路機構を含む。或る状況では、IPGは、ATP以外の目的のために、たとえば、抗徐脈ペーシングを実施するために、ペーシング刺激を生成する。図1に示す実施形態では、ペーシング刺激は、右心房14又は右心室16、或いはその両方に施される。IMD10はまた、心房頻脈(AT)又は心室頻脈(VT)のエピソード中に生成される活性化を含む、心房活性化及び心室活性化を検知する回路機構を含む。それぞれ、リード線18及び20の遠位端にある心房及び心室2極ペース/センス電極対は、ペーシング機能及び検知機能を実施する。
右心房14では、心房リード線18の遠位端は、伸張可能な螺旋ペース/センス先端電極22及びペース/センスリング電極24を含む。螺旋電極22は、電極ヘッド26から心耳内に延びる。ペース/センス電極22及び24は、心房ATP治療の送出を含む心房ペーシングのため、及び、心房活性化を示すP波を検知するために採用される。心房リード線18の遠位端はまた、右心房14にディフィブリレーションショックを送出することができる細長いコイル・ディフィブリレーション電極28を含む。電極28はまた、右心房14にカーディオバージョン治療を送出するのに使用されてもよい。
カーディオバージョン治療は、通常、心臓12に対するディフィブリレーション治療より低いエネルギーの送出を含むが、カーディオバージョン治療とディフィブリレーション治療は共に、患者にとって苦痛である。それに反して、ATP治療は、カーディオバージョン治療及びディフィブリレーション治療よりずっと低いエネルギーを必要とする。ATP治療は、患者が十分に耐えられることが多く、場合によっては、患者が治療に気づくことなく進行する。ATPとカーディオバージョンは共に、ATを終了させるのに有効である場合があるが、ATを終了させるのにATPがカーディオバージョンと同様に有効である時には、患者の過度の不快感を回避するために、カーディオバージョンよりATPが好ましい。
心房リード線18は、電極22、24、及び28をIMD10に電気的に結合する導体を含む。導体は、例えば同軸、同一放射状又は、平行等の任意の所望の構成で配列され、互いから、且つ、患者の組織から絶縁される。図1の例では、心房リード線18の近位端は、導体をIMD10上のコネクタブロック32に結合する分岐コネクタ30を含む。
右心室16において、心室リード線20の遠位端は、同様に、ペース/センス先端電極34及びペース/センスリング電極36を含む。ペース/センス先端電極34は、電極ヘッド38から心臓12の尖部の方に延びる螺旋電極であってよい。ペース/センス電極34及び36は、心室ATP治療の送出を含む心室ペーシングのため、及び、心室活性化を示すR波を検知するために採用される。心室リード線20の遠位端はまた、右心室16にディフィブリレーションショック又はカーディオバージョン治療を送出することができる細長いコイル・ディフィブリレーション電極40を含む。上述したように、カーディオバージョン治療及びディフィブリレーション治療は苦痛である。心室ATP治療は、患者にもたらす不快感がかなり小さく、所与のVTエピソードを終了させるのに、カーディオバージョンと同じ位有効である場合がある。
心房リード線18と同様に、心室リード線20は、電極34、36、及び40をIMD10に電気的に結合する1つ又は複数の絶縁された導体を含む。図1に示すように、心室リード線20の近位端は、導体をコネクタブロック32に結合する分岐コネクタ42を含む。
図1はさらに、冠状静脈洞リード線44の配置を示す。冠状静脈洞リード線44は、1つ又は複数の絶縁された導体を含む。冠状静脈洞リード線44の近位端は、ペース/センス電極46等の1つ又は複数の電極を含む。ペース/センス電極46は、心臓12の大静脈48内に配置され、心臓12の左側に対して、ATP治療を含むペーシング治療を送出するのに使用される。冠状静脈洞リード線44の近位端のコネクタ50は、リード線44内の導体をコネクタブロック32に結合させる。本発明の一部の実施形態では、冠状静脈洞リード線44は、細長い露出したコイルワイヤ・ディフィブリレーション電極(図示せず)を含む。
IMD10は、本発明の一部の実施形態では、「筐体(can)」電極の役を果たすハウジング52を含む。単極動作では、IMD100は、1つ又は複数のリード線18、20、又は44上に配設された電極を介して心臓12に電気刺激を送出し、ハウジング52は、リターン電流経路の一部となる。それに対して、2極動作では、IMD10は、先端電極を介して心臓12に電気刺激を送出し、リング電極は、主なリターン電流経路を提供する。
図1に示す実施形態では、IMD10は、それぞれ、電極22及び34を介して右心房14及び右心室16にペーシング刺激を送出し、同じ電極を介して活性化を検知する。電極は、AT又はVTに伴う電気的活性化を検知する。電極はまた、AT、VT、又はその両方を処置するために、1つ又は複数のATP治療を送出する。
IMD10は、2つ以上のATP治療を施行するようにプログラムすることができる。ATP治療は、AT又はVTを終了させるためにペーシングパルスが心臓12に印加される方法によって、互いに異なっていてもよい。たとえば、1つのATP治療は、一定のペーシング間隔により互いに分離されたペーシングパルスのシーケンスを送出し、一方、別のATP治療は、シーケンス内の各パルスについて短縮するペーシング間隔により互いに分離されたペーシングパルスのシーケンスを送出する。いずれの場合も、各シーケンスについてのペーシング間隔は、関連する頻脈を検出する前の心拍数すなわち周期長の関数として決定されるという意味で、履歴依存である。ATP治療におけるパルスの数は、治療ごとに変わり得る。IMD10はまた、2つ以上のエネルギーレベルでカーディオバージョン治療を施行するようにプログラムされ、階層構造に従ってカーディオバージョン治療を送出するようにプログラムされてもよい。
本発明は、ATPパルスのためのペーシング間隔をより正確に設定するために、心臓12の活動電位継続時間(APD)を推定する技法を提供する。以下でより詳細に述べるように、APDの推定値は、或る期間にわたる1つ又は複数の心臓の電気的特性の関数として得られる。心臓の電気的特性は、IMD10が、電極22、24、34、及び36を介して検出する、P波、R波、及びT波を含む。一部の実施形態では、IMD10は、T波、ひいてはAPDをより正確に検出するためのT波検出モジュール(図示せず)を含む。さらに、IMD10は、心臓の電気的特性を使用して頻脈周期長を検出することができ、周期長はさらに、ATPパルスについてペーシング間隔を正確に設定するのに役立つ。本発明はまた、万一、第1ペーシング間隔を使用した先のATP治療が、関連する頻脈を終了させるのに失敗した場合に、APDのさらなる推定値及び検出された頻脈の周期長に基づいて後続のATPシーケンスのためのペーシング間隔を設定する技法を提供する。
ATP治療の目標は、検出された頻脈を終了させることであり、それによって、心臓が、正常調律を再開することが可能になる。検出された頻脈を終了させるための適切な時間間隔は、APDの直後であって頻脈パルスの前である。ATPパルスが、適切な時間間隔以外の時に起こると、ATPが頻脈を終了させるのに失敗する。たとえば、APD中に施されるATP治療は、頻脈パルス近くで施されるATP治療と同様に失敗するであろう。実際、頻脈パルスのあまりに近くで施されるATP治療は、頻脈を細動へと加速し得る点で所望と反対の作用を有する場合がある。APDの推定値は、適切な時間間隔の開始点を決定するのに使用され、検出された頻脈周期長は、適切な時間間隔の終了点を決定するのに使用される。IMD10は、APDの推定値及び検出された頻脈周期長を使用して、適切な時間間隔を規定することにより、ATPパルスが適切な時間間隔中に印加されるように、IMD10がペーシング間隔を設定することを可能にする。ATPパルスのペーシング間隔を、この時間間隔に一致するように設定することによって、検出された頻脈を終了させるIMD10の能力が増加し、頻脈が細動へと悪化することになる可能性が減り、心臓12に対して送出されるパルス数が減り、IMD10の電池寿命が増加する。
APDは、頻脈を検出する前、及び、頻脈エピソード中の、優勢な心拍数の関数として変わることが確認されている。たとえば、より高い心拍数が持続する時、APDは通常減少する。他方、より低い心拍数の存在下では、APDは通常増加する。したがって、本発明は、一定の状況下で有効である可能性が高いATPペーシング間隔を決定するために、最新の心拍数履歴とAPDの間の相関を知ることを利用する。より有効なATP治療は、VT又はATが、それぞれ、VF又はAFへと加速する確率を減らすことになり、このことは、こうした細動事象がより危険である点で利益がある。APDを推定し、APDの推定値及び検出された頻脈周期長に基づいてATPパルスのペーシング間隔を決定する技法が、以下でより詳細に述べられるであろう。
図2は、IMD10の一実施形態の機能概略図であり、IMD10が、頻脈エピソードを検出し、エピソードに対処するために、ATP及びカーディオバージョン等の治療を送出する方法を示す。図2のIMD10は、本発明の種々の実施形態を具体化することができる種別のデバイスの例示であり、本発明は、示された特定の概略図に限定されない。逆に、本発明は、単腔デバイス及び多腔デバイス、並びに、カーディオバージョンペーシング機能又はディフィブリレーションペーシング機能を含まない埋め込み可能なデバイスを含む、様々なデバイスにおいて実施されてよい。
図2に示すように、IMD10は、図1に示す電極に対応する電極端子22、24、28、34、36、40及び46を含む。電極60は、IMD10のハウジング52の非絶縁部分に対応する。電極28、40、及び46は、高電圧出力回路62に結合され、高電圧出力回路62は、制御バス66を介してカーディオバージョン/ディフィブリレーション(CV/defib)制御ロジック64によって制御される高電圧スイッチを含む。回路62内に配設されたスイッチは、ディフィブリレーションショック又はカーディオバージョンショックの送出中に、どの電極が採用されるか、及び、コンデンサバンク68の正端子及び負端子にどの電極が結合されるかを判定する。
右心房14上又は右心房14内に位置する電極22及び24は、P波増幅器70に結合される。増幅器70は、測定されたP波振幅の関数として調整可能検知閾値を提供する自動利得制御式増幅器を含む。増幅器70は、電極22と24の間で検知された信号が検知閾値を超える時は常に、P−outライン72上に信号を生成する。P−outライン72上の信号間の時間間隔は、心房活性化の周期長を反映し、患者がATエピソードを経験しているかどうかを示すことができる。特に、短い周期長は、ATを示す場合がある。
右心室16内に位置する電極34及び36は、R波増幅器74に結合される。増幅器74は、測定されたR波振幅の関数として調整可能検知閾値を提供する自動利得制御式増幅器を含む。増幅器74は、電極34と36の間で検知された信号が増幅器74の検知閾値を超える時はいつも、R−outライン76上に信号を生成する。R−outライン76上の信号間の時間間隔は、心室活性化の周期長を反映し、患者がVTエピソードを経験しているかどうかを示すことができる。
上述したように、周期長は、治療又は治療の階層構造に関連する頻脈特性のうちの1つであり得る。一部の患者では、周期長によって或るタイプの頻脈と別のタイプの頻脈を区別することが可能である場合がある。これらの患者では、IMD10が電力節約モードを実施することが可能である。IMD10は、電池等の内臓式電力源(図1及び図2には示さず)によって駆動される。ATPペーシング間隔を決定することによって頻脈特性を求めることは、一般に、形態等の他の頻脈特性を求めることより電力消費が少ない。その結果、周期長によって或る頻脈と別の頻脈を区別する能力は、IMD10の電池寿命を維持することができる。
スイッチマトリクス78は、デジタル信号解析で使用するために広帯域増幅器80に結合する電極を選択する。電極の選択は、データ/アドレスバス84を介してマイクロプロセッサ82によって制御される。選択された電極からの信号は、マルチプレクサ86に提供され、その後、A/D変換器88によってマルチビットデジタル信号に変換される。信号は、ダイレクトメモリアクセス(DMA)回路92の制御下でランダムアクセスメモリ(RAM)90に記憶される。
デジタル信号解析は、選択された電極によって検知された波形の形態解析を含むが、それに限定されない。形態解析は、ウェーブレット解析技法、フーリエ解析技法、又は同様のスペクトル解析技法を含むが、本発明は、これらの解析技法に限定されない。マイクロプロセッサ82は、デジタル信号解析技法を採用して、RAM90に記憶されたデジタル化信号を特徴付けし、いくつかの信号処理方法の任意の方法を使用して、患者の心調律を認識し分類するか、又は、信号の形態を求める。特に、マイクロプロセッサ82は、T波の発生を決定するのに形態解析を使用することができる。
T波検出モジュール(図示せず)が含まれ、これは、T波の発生を検出するために連携する種々の構成要素によって形成されることができる。T波検出モジュールを形成する種々の構成要素は、たとえば、マイクロプロセッサ82、RAM90、A/D変換器88、及びDMA回路92を含んでもよい。これらの構成要素は、APDの正確な推定値を提供するT波信号を検出するように連携する。
電極22、24、34、及び36を介して検知された信号は、心臓ペーシング、ATP、カーディオバージョン治療、又はディフィブリレーション治療を施行するかどうかを判定するのに使用することができる。ペーサタイミング/制御回路機構94は、P−outライン72及びR−outライン76から信号を受け取り、受け取った信号のタイミングの関数として種々のタイミング間隔を計算する。ペーサタイミング/制御回路機構94はまた、いくつかのペーシングモードの任意のモードに従ってペーシングを制御するプログラム可能デジタルカウンタを含むことができる。
電極22、24、34、及び36に結合するペーサ出力回路機構96及び98は、ペーサタイミング/制御回路機構94の制御下でペーシング及びATP刺激を生成する。IMD10のIPGは、ペーサタイミング/制御回路機構94及びペーサ出力回路機構96及び98と連携するマイクロプロセッサ82を含む。
ペーサタイミング/制御回路機構94はまた、R−R間隔、P−P間隔、P−R間隔、及びR−P間隔等の間隔を計算する。これらの間隔は、高速心拍数の存在を検出するのに使用され、頻脈のインジケータである場合がある。高速心拍数はまた、洞性頻脈、すなわち、運動等の生理的刺激に応答した高速心拍数を示すことができる。
マイクロプロセッサ82及びペーサタイミング/制御回路機構94は、複数のアルゴリズムのうちの任意のアルゴリズムを適用するように連携し、抗頻脈治療が指示されるVT又はAT等の頻脈を、治療が指示されない洞性頻脈と区別する。マイクロプロセッサ82及びペーサタイミング/制御回路機構94はさらに、複数のアルゴリズムのうちの任意のアルゴリズムを適用するように連携し、抗頻脈治療に応答して終了するVT又はAT等の頻脈を、抗頻脈治療に一般に応答しない、心房細動及び心室細動等の他の頻脈性不整脈と区別する。本発明は、心房頻脈又は心室頻脈を検出する任意の1つ又は複数のアルゴリズムによって実施されてもよい。
IMD10が心房頻脈又は心室頻脈を検出すると、マイクロプロセッサ82は、本発明に従って、頻脈周期長を決定し、活動電位継続時間(APD)の推定値及び頻脈周期長に基づいてATPパルスのペーシング間隔を設定することによって、ATP治療を構成する。前に述べたR−R間隔、P−P間隔、又はT波信号は、APD推定値の基礎として役立つ。一部の実施形態では、マイクロプロセッサ82は、時間が進むにつれて前方へ移動する時間窓にわたってAPDの推定値を連続して計算することができる。計算結果は、APDの推定値をさらに計算する時に使用するために、RAM90に記憶される。RAM90はまた、心拍数、拡張間隔等を記憶する。最初のATP治療が頻脈を終了させるのに失敗する場合、第2のATP治療が施され、以下続く。連続する治療は、時間の移動窓内で収集された、さらなる、より最近のAPD推定値に基づいてペーシング間隔を適用することができる。こうして、IMD10は、更新されたAPD推定値に基づいて後続のATPペーシングシーケンスにおけるATPペーシング間隔を更新する。頻脈周期長の規則性又は頻脈波形形態等の、ATP治療に関連する他のパラメータは変わる場合がある。
施される各ATP治療について、マイクロプロセッサ82は、ペーシング間隔等のパラメータを、RAM90から、ATP治療の送出を制御するペーサタイミング/制御回路機構94内にロードする。マイクロプロセッサ82は、ATP治療の結果を評価し、ATP治療が中止されるべきか、又は、別の治療が施されるべきかを判定する。
状況によっては、頻脈は、全てのATP治療に反応しないかもしれない。こうした状況の一部において、カーディオバージョンが指示されてもよい。ATP治療と同様に、カーディオバージョン治療は、互いに異なり、階層構造に配列されてもよく、階層構造内の第1カーディオバージョン治療が最初に施され、第1カーディオバージョン治療が失敗する場合、階層構造内の第2カーディオバージョン治療が施され、以下続く。
カーディオバージョン又はディフィブリレーションパルスが必要とされる時に、マイクロプロセッサ82は、カーディオバージョンパルス及びディフィブリレーションパルスのタイミング、強度、及び継続時間を制御する。カーディオバージョンパルスを必要とする、心房又は心室の細動又は頻脈の検出に応答して、マイクロプロセッサ82は、CV/defib制御回路機構64を起動し、CV/defib制御回路機構64は、高電圧充電制御ライン102の制御下で、充電回路100を介してコンデンサバンク68の充電を始動する。高電圧コンデンサ上の電圧は、VCAPライン104を介して監視され、マルチプレクサ86を通過し、マイクロプロセッサ82によって設定された所定値に達することに応答して、充電を終了するための論理信号をコンデンサフル(Cap Full)(CF)ライン106上に生成する。出力回路62は、その後、ディフィブリレーションパルス又はカーディオバージョンパルスを送出する。
図3は、ATP治療を施す例示的なプロセスを示すフロー図であり、抗頻脈ペーシング(ATP)パルスのペーシング間隔は、心臓の活動電位継続時間(APD)の推定値及び心臓内の頻脈周期長の関数である。プロセスは、図1のIMD10等のデバイスが、たとえば増大した心拍数に基づいて心臓12内の頻脈を検出する(110)と始まる。頻脈は、心房又は心室のいずれかで起こり、IMD10は、電極22、24、34、及び36等の電極を介して、心房と心室の両方で起こる頻脈を検出することができる。
頻脈を検出すると、マイクロプロセッサ82(図2)は、検出された頻脈周期長を決定する。マイクロプロセッサ82は、その後、APDの推定値が記憶されるRAM90内のメモリアドレスにアクセスする。マイクロプロセッサ82は、APD及び検出された頻脈周期長の関数としてATP治療のペーシング間隔を計算する。マイクロプロセッサ82はさらに、ペーシング間隔を、ペーサタイミング及び制御回路機構94内にロードする。ペーシング間隔をペーサタイミング及び制御回路機構94内にロードすることにより、心臓12に送出されるATPパルスのペーシング間隔が設定される(112)。
IMD10は、心臓12に対して、目下のATPシーケンスについてのATPパルスを印加する(114)。パルスは、心臓12のAPDの推定値の関数として決定されたペーシング間隔を反映するペーシング間隔を有するように計時される。APDの推定値に基づいてペーシング間隔を設定することが、以下でより詳細に述べられる。
図4は、図3のプロセスをより詳細に示すフロー図である。特に、図4はさらに、ペーシング間隔が、心臓のAPDの推定値及び心臓内の検出された頻脈周期長の関数であるような、ATPパルスのペーシング間隔の決定を示す。ATP治療が有効であるために、ATPパルスは、APD及び頻脈周期長に対して特定の時間間隔内で起こるべきである。ペーシング間隔は、ATPパルスがいつ起こるか、及び、パルスが特定の時間間隔中に起こるかどうかを決める。
ペーシング間隔を設定するプロセスは、IMD10が心臓12の心拍数を監視する(120)ことで始まる。IMD10は種々の方法で心拍数を決定してもよい。一般に、心拍数は、P波信号又はR波信号等の心臓電気特性、及び、P−P間隔、R−R間隔等のようなそれぞれの間隔を使用して決定されることができる。IMD10は、上述したように、これらの間隔を決定することができる。マイクロプロセッサ82(図2)は、間隔のうちの1つを使用して、心臓12のAPDの推定値を計算する(122)ことができる。APDは、ペーシング間隔を設定するのに役立つ1つの要素である。
ペーシング間隔は、頻脈の特性に応じて設定される。頻脈が検出されない場合(124)、IMD10は、或る期間にわたって、心拍数を監視し、APDを推定し続ける。IMD10は、時間が進むにつれて前方へ移動する或る期間にわたってAPDを推定する。マイクロプロセッサ82は、推定されたAPDが変化するか、又は、APDの推定値が計算されたときに、APDの推定値をRAM90に記憶する。IMD10は、時間の移動窓にわたって連続的にAPDを推定し、頻脈を検出するまでAPDの推定値を記憶する。
IMD10が頻脈を検出すると、ペーサタイミング及び制御回路94は、頻脈周期長を測定する。頻脈周期長は、ATPパルスのペーシング間隔を設定するのに役立つ別の要素である。IMD10は、上述した方法で、たとえば、P−P間隔又はR−R間隔を参照することによって頻脈周期長を決定することができる(126)。
一般に、ATPパルスは、APDの終了の直後であるが、次の頻脈パルスの前に施されると最も有効である。この期間は、ATPパルスが、心臓内で検出された頻脈を終了させる可能性が最も高い時である。頻脈を終了させることは、心臓を正常調律に戻すことにとって必須である。そのため、IMD10は、APDが終了する直後であるが、次の頻脈パルスの前であるこの期間の間にATPパルスが起こるように、ATPパルスのペーシング間隔を設定する。IMD10は、APDの推定値を使用して、APDが終了する可能性のある時を決定する。IMD10はさらに、頻脈周期長を使用して、次の頻脈パルスが起こる可能性がある時を決定する。これらの2つのパラメータを使用して、APD直後であるが、頻脈パルス前にATPパルスが起こるようにATPペーシング間隔を設定する(128)。
ATP治療のペーシング間隔が設定された後、IMD10は、ATP治療を施す(130)。治療は、種々の形態であるが、推定されたAPDの観点から決定されたペーシング間隔によって印加される任意の数のATPペーシングパルスを含むシーケンスであってよい。たとえば、パルスレートは、パルスレートが開始から終了まで増加するように単調増加することができる。同様に、IMD10は、三角形パルス形態、正方形パルス形態、又は、本発明と整合性のある任意の他のパルス形態を送出することができる。
心臓12は、上述したように、ATP治療にすぐには応答しないかもしれない。頻脈は、ATP治療が施された後に終了しない場合がある(132)。頻脈が終了しない場合、IMD10は、心臓12のAPDの別の推定値を計算し、周期長が変わっていないことを保証するために、検出された頻脈周期長をさらに求めることができる。新しい推定値は、新しく決定された頻脈周期長と共に使用されて、次のATP治療シーケンスのための別のペーシング間隔を決定する。
新しいペーシング間隔が設定され、ATP治療が施される。再び、IMD10は、検出された頻脈が治療により終了したかどうかを判定する。頻脈が持続し、プロセスが、頻脈が終了するまで繰り返される場合がある。または、IMD10は、カーディオバージョン等の別の治療が必要であると判定し得る。頻脈が終了すると、IMD10は、心拍数を監視し、APDを推定することに戻る。APDを推定するのに使用されるプロセスは、以下で詳細に述べられる。
図5は、心臓のAPDについての推定値を計算する例示的なプロセスを示すフローチャートである。心臓は、2つの相、すなわち収縮相と拡張相を通って進む。APDは、収縮相の時間間隔のことを言う時に使用される用語であるが、拡張間隔は、拡張相の時間間隔のことを言う。そのため、APD及び拡張間隔は互いに関連し、合計すると、単一心拍の周期長を形成する。図2のマイクロプロセッサ82は、この関係及び本発明の原理に整合する他の関係を使用して、心臓12(図1)等の心臓のAPDについての推定値を決定することができる。
APDは、或る期間にわたってさらに推定される。本発明の一実施形態では、期間は、時間が進むにつれて前方に移動する移動窓である。移動窓が前方に進むにつれて、マイクロプロセッサ82は、APDを連続して推定し、APD推定値が変わる時にペーシング間隔を再設定する。IMD10等の埋め込み可能デバイスにとって、効率が重要であるため、APDの推定は、A/D変換器88を使用して信号をサンプリングすることによって、離散的に行われる。サンプリングされた信号は、R波信号、P波信号、又は、T波検出モジュールによって検出されるT波信号を含み得る。電極22及び24等の心房内の電極、並びに、電極34及び36等の心室内の電極は、上述したプロセスによってこれらの信号を検出する。ペーサタイミング及び制御回路94は、単一心拍の間隔を反映する、R−R間隔、P−P間隔、及びT−T間隔を決定する(140)。
IMD10がT波検出モジュールを含む場合、目下の拡張間隔の近似は必要とされない。拡張間隔は、T波信号の終了とR波信号の開始と間の時間間隔によって規定される。したがって、T波検出モジュールを用いて、IMD10は拡張間隔を直接決定することができる。しかしながら、T波検出モジュールがない場合、IMD10は目下の心拍の拡張間隔を推定する(142)。マイクロプロセッサ82は、過去の拡張間隔を外挿して、目下の心拍の拡張間隔を近似する。近似の精度を上げるために、外挿は、過去のAPDと過去の拡張間隔の両方を含む。
P−P間隔又はR−R間隔によって決定される、目下の心拍の間隔は、時定数、即ち、系内の変化に対する所定期間にわたる反応を決定する時に使用される。APDの推定値が生成される本明細書に示す事例では、時定数は、拡張間隔の変化(Δ)と目下の心拍の周期長(T)とに対する所定期間にわたる反応のことを言う。
時定数(α)は、以下の関係に従って計算することができる。即ち、
α=γ Δ+γ (1)
Δ=|di−din−1|/din−1 (2)
である。
式(2)は、最後の拡張間隔(din−1)と目下の拡張間隔(di)の間の拡張間隔の変化を表す。これはまた、微分係数を離散的に定量化する方法である。式(1)に関連する2つの定数が存在し、一方の定数γは、式(2)の結果と乗算され、他方の定数γはTと乗算される。これらの定数は、系を通してどれだけ多くの変化が伝播するかを決定する。γがγに対して大きい場合、拡張間隔間の変化が強調される。γがγに対して大きい場合、変化は中程度であるが、目下の心拍の間隔が強調される。
マイクロプロセッサ82は、式(2)を使用して、近似の拡張間隔の微分係数を推定する(144)。式(2)の結果は、マイクロプロセッサ82によって式(1)への入力として使用される。式(1)の結果は、その後、有効拡張間隔(di )が決定される以下の式、すなわち式(3)への入力として使用される。
di =di n−1 (1−α)+αn−1 di (3)
式(3)は、所与の期間内の全ての過去の近似拡張間隔を有効に累算する積分項である。マイクロプロセッサ82は、有効拡張間隔を計算し、それぞれの計算後に、RAM90内の状態変数を更新する。式(3)は、式(1)を利用して、実際に、以前の拡張間隔の近似によってどれだけの推定されたAPDが決定されるか、及び、どれだけが目下の拡張間隔によって決定されるかを判定する。この例では、有効拡張間隔は、近似拡張間隔の微分係数(Δ)、近似拡張間隔(di及びdin−1)、並びに、目下の心拍についてのR−R間隔(T)に基づく(146)。
式(3)の結果を使用して、APDの推定値が決定される。マイクロプロセッサ82は、先の3つの式それぞれの結果を計算する。マイクロプロセッサ82はさらに、すぐには利用できない、過去の拡張間隔din−1等の、必要とされる任意のデータを求めてRAM90にアクセスすることができる。以下の式(4)は、有効拡張間隔di の関数としてAPDの推定値を決定する。即ち、
APD(di )=APDmax−σ(DImax−di ) (4)
である。
上記式(4)は、拡張間隔di がDImaxに達した後に定数値APDmaxを有する区分的線形系を表す。di がDImaxに達する前に、APDは、APDmaxから、DImaxからdi を差し引いたものを一定勾配(σ)倍したものを差し引いた値を有する。DImaxは、最大拡張間隔を表す定数である。式(1)〜(4)の定数は、結果を修正して、より正確なAPDの推定値をもたらし得る。
定数γ、γ、σ、APDmax、及びDImaxは、式(4)の結果を調節するために調整され得る。たとえば、γ及びγは、APDを推定するのに使用される系内に伝播する変化量を決定する。勾配係数σは、予想されるデータに合うように系の初期反応を修正し得る。APDmax及びDImaxは、系の上限を変え、より大きなAPD及び拡張間隔(DI)を可能にする。さらに、上記定数は、患者依存の構成を考慮し、患者の事例において最もうまく働く特定の治療を決定し得る。
IMD10がより有効なATP治療を送出することができるように、APDの正確な推定が望まれる。上記関係、すなわち式(1)〜(4)は、電気的心臓特性の傾向を連続して評価することによって、APDを推定するシステムを規定する。たとえば、R−R間隔等の電気的心臓特性は、運動等の自然な要因によって減少する場合がある。これは、洞性頻脈として知られ、生理的刺激に応答する高速心拍数である。洞性頻脈中のAPD推定値は、R−R間隔の変化を反映する場合がある。APD推定値が変わるレートは、系が洞性頻脈にどれほど迅速に反応するかを生じさせる時定数(α)に依存する。大きな時定数によって、系は迅速に反応するが、小さな時定数によって、系はゆっくりと反応することになる。
上記患者が運動している間、頻脈が起こる場合がある。この場合、IMD10は、洞性頻脈を反映するAPD推定値に依存するペーシング間隔を設定するであろう。APDの推定値が無い場合、ほとんどのデバイスは、頻脈周期長を測定し、この値を或る定数で乗算して、ATPパルスのペーシング間隔を設定する。APDの推定値が無い場合、ペーシング間隔を設定する他の手法は、目下の心臓状況を反映せず、ATPパルスが最も有効に頻脈を終了させる可能性がある時間間隔を逃し得る。本発明の原理を具体化するデバイスは、ATPパルスが頻脈を終了させる可能性がある時間間隔をより正確に決定する。図6はさらに、ATPパルスを正確に印加して検出された頻脈をより有効に終了させるためのAPDの推定を示す。
図6は、2つのライン、即ち、所定期間にわたるAPDの推定値を表す実線と、本発明の原理を具体化するデバイスがATPパルスを印加し得る時点を示す点線と、を示すグラフである。グラフ160のy軸は、ミリ秒で測定したAPDの推定値を表し、グラフ160のx軸は、秒で測定した時間を表す。グラフ160は、実線162と点線164を含み、APDの推定値を測定するために系内の変化に対する反応を示す。系は、心臓、心臓電気的特性、及び図1のIMD10等のデバイスを含む。
IMD10は、監視されたP波及びR波を使用して心臓の電気的特性を監視して、心臓のAPDを推定する。図5に示した一実施形態は、IMD10が心臓12のAPDを推定する方法を示す。APDの推定値は、グラフ160において、実線162として示される。実線162の下方傾向は、運動中に起こり得る心拍数の急上昇に応答してAPD推定値が短縮する反応を示す。実線162の上方傾向はさらに、運動の終了を示し得る、心拍数の減少を示す。式(1)〜(4)の定数を設定することによって、ライン162の種々の局面を修正することができる。たとえば、式(1)のγを増加することによって、APDの推定値は、より迅速に変化に反応することができる。そのため、上方と下方の両方の傾向の勾配は、大きさが増大し、急峻になる場合がある。γに対するこの変化によって、頻脈を処置する時に系がより攻撃的になるであろう。
点線164は、ADPの推定値、すなわち実線162を定数で乗算した結果である。マイクロプロセッサ82(図2)は、定数を、1より大きい任意の数として指定することができる。定数が1より小さい場合、ATPパルスは、APDの終了前に到来し、治療は失敗することになる。そのため、マイクロプロセッサ82は、好ましくは、1より大きい定数を指定すべきである。定数はまた、系の攻撃性を増加させる場合がある。定数が1に近い場合、IMD10は、APDの終了の近くでペーシングパルスを印加することになる。定数が大きい場合、IMD10は、APDパルスが完全に終了した後にペーシングパルスを印加することになる。本発明の技法はさらに、ATPパルスが、頻脈パルスの前に起こらなければならないことを指定する。そのため、マイクロプロセッサ82は、ATPパルスが頻脈パルス後に到来するように定数を設定すべきでない。APD直後であるが頻脈パルスの前のこの時間間隔は、心臓を捕捉するのに望ましい。本発明の技法は、APDを推定し、頻脈周期長を測定して、ATPパルスがこの時間間隔中に起こるようにATPパルスのペーシング間隔を決定し、且つ設定する。
図7は、APD推定値に関連する時点までに起こる複数のR−R間隔によって生成された、計算されたR−R間隔、及び、結果として得られる推定されたAPDの例示的なグラフである。図7に示すように、三角形で示すATPパルスが、四角形で示す推定されたAPDと、円で示すRR間隔との間に留まるように設定されるようにATP周期長が設定され、その結果、上述したように、推定されたAPDから所定の距離にあり、且つ、R−R間隔より小さいATPパルスが、推定されたAPDに追随する。グラフの端では、R−R間隔が一定のままであるが、ATPパルスは、推定されたAPDに追随し、したがって、ペーシングパルスがR−R間隔のパーセンテージとして設定されただけの場合にそうであるように一定のままであるのではなく、減少することに留意されたい。
心臓のAPDを推定することにより、心臓に対するより正確なATPパルス送出を可能にすることができる。より正確な送出は、パルスが心臓をより容易に捕捉することができる時間間隔中でのATPパルスのより正確な送出によって規定される。この時間間隔は、APDパルス直後に始まり、頻脈パルスの検出が起こる時に終了する。APDを推定することによって、心臓を捕捉するATPパルスが発生し得る、より正確な時間間隔が決定される。
さらに、APDを推定することによって、本発明の原理と整合性のあるデバイスが、ATPパルスのペーシング間隔を目下の心拍数に基づかせることを可能にする。そのため、心拍数が増加する場合、APDの推定値が減少し、心拍数の変化を反映するATPパルスのペーシング間隔もまた減少する。一般に、これは、運動等の、心臓が正常安静レートで拍動していない状況において、施されたATP治療の成果を向上させるであろう。
本発明はさらに、本発明の技法を利用して、ATPパルスをより正確に送出することにより、ATP治療をあまり施さなくすることができ、これによりデバイスの電力消費が少なくなり、電池寿命が長くなる。電池を交換するのに外科手術を必要とするため、埋め込み可能デバイスを考慮する時に、電池寿命は重要な要素である。ATPパルスをより正確に送出することにより、より正確なATP治療も生じ、頻脈をより危険な細動へと加速する可能性が減る。さらに、より正確なATP治療は、治療が有効になる前に患者が意識を失う場合がある、長く、うまくいかないATP治療を施すことを防止するのに役立つことができる。
上述した技法の一部は、図2に示す、マイクロプロセッサ82又はペーサタイミング/制御回路機構94等の、プログラム可能なプロセッサ用の命令を含むコンピュータ読み取り可能媒体として具体化されてもよい。プログラム可能なプロセッサは、独立して、又は連携して動作することができる、1つ又は複数の個々のプロセッサを含んでもよい。「コンピュータ読み取り可能媒体」は、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ、及び、磁気記憶媒体又は光記憶媒体を含むが、それらに限定されない。媒体は、プロセッサが、心臓内の頻脈を検出し、頻脈を検出する前の或る期間にわたる心拍数に基づいてAPDを推定し、APDの推定値に基づいてATPパルスのペーシング間隔を設定するようにさせる命令を含む。媒体はまた、プログラム可能なプロセッサが、P波信号間の間隔、R波信号間の間隔、及びT波信号を使用して、APDを推定するようにさせる命令を含んでもよい。媒体はさらに、プログラム可能なプロセッサが、第2のAPDを推定するようにさせる命令を含んでもよく、それによって、ATPパルスのペーシング間隔が、APDの第2の推定値に基づく。
これらの、及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。
リード線が人の心臓に延びた状態の、埋め込み可能ペースメーカ/カーディオバータ/ディフィブリレータの概略図である。 図1に示す埋め込み可能医療デバイスの構成要素のブロック図である。 履歴依存ペーシング間隔決定によってATP治療を施す例示的な方法を示すフロー図である。 図3の方法をより詳細に示すフロー図である。 心臓内のAPDを推定する例示的な方法を示すフロー図である。 所定期間にわたるAPDの変化を示すグラフである。 APDの推定値に関連する時点までに起こる複数のR−R間隔によって生成された、計算されたR−R間隔、及び、結果として得られる推定されたAPDの例示的なグラフである。

Claims (29)

  1. 心臓内の頻脈を検出するステップと、
    前記心臓に抗頻脈ペーシングパルスを印加するステップと、
    該抗頻脈ペーシングパルスの印加時に、前記心臓内の活動電位継続時間の推定値に基づいて前記抗頻脈ペーシングパルスのペーシング間隔を設定するステップと、
    を含む方法。
  2. 前記心臓の心房内のP波を検出するステップをさらに含み、活動電位継続時間の推定値に基づいて前記抗頻脈ペーシングパルスのペーシング間隔を設定するステップが、検出されたP波間の時間間隔に基づいて前記活動電位継続時間を推定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記心臓の心室内のR波を検出するステップをさらに含み、活動電位継続時間の推定値に基づいて前記抗頻脈ペーシングパルスのペーシング間隔を設定するステップが、検出されたR波間の時間間隔に基づいて前記活動電位継続時間を推定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記心臓内のT波を検出するステップをさらに含み、活動電位継続時間の推定値に基づいて前記抗頻脈ペーシングパルスのペーシング間隔を設定するステップが、前記検出されたT波に基づいて前記活動電位継続時間を推定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  5. 活動電位継続時間の推定値に基づいて前記抗頻脈ペーシングパルスのペーシング間隔を設定するステップが、前記頻脈の前記検出の前の或る期間にわたる心拍数に基づいて前記活動電位継続時間を推定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  6. 前記期間は、時間が進むにつれて前方へ移動する移動窓であり、前記方法は、該移動窓内の前記心拍数に基づいて、時間が進行するにつれて前記ペーシング間隔を再設定するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
  7. 活動電位継続時間の推定値に基づいて前記抗頻脈ペーシングパルスのペーシング間隔を設定するステップが、前記活動電位継続時間の前記推定値が減少するにつれて前記抗頻脈ペーシングの前記ペーシング間隔が減少し、前記活動電位継続時間の前記推定値が増加するにつれて前記抗頻脈ペーシングの前記ペーシング間隔が増加するように、前記抗頻脈ペーシングパルスの前記ペーシング間隔を設定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  8. 前記心臓内の前記頻脈を検出するステップが、前記心臓の前記心房内の前記頻脈を検出するステップを含む、請求項2に記載の方法。
  9. 前記心臓内の前記頻脈を検出するステップは、前記心臓の前記心室内の前記頻脈を検出することを含む、請求項3に記載の方法。
  10. 前記心臓に抗頻脈ペーシングパルスを印加するステップは、前記心臓の前記心房に抗頻脈ペーシングパルスを印加するステップを含む、請求項8に記載の方法。
  11. 前記心臓に抗頻脈ペーシングパルスを印加するステップは、前記心臓の前記心室に抗頻脈ペーシングパルスを印加するステップを含む、請求項9に記載の方法。
  12. 頻脈に関連する電気活動を検出するための少なくとも1つの電極と、
    活動電位継続時間の推定値を決定し、前記抗頻脈ペーシングパルスの印加時に、心臓内の活動電位継続時間の前記推定値に基づいて抗頻脈ペーシングパルスのペーシング間隔を設定するプロセッサと、
    を備えるデバイス。
  13. 頻脈に関連する電気活動を検出するための少なくとも1つの電極は、前記心臓の心房内の頻脈を検出するための電極を含む、請求項12に記載のデバイス。
  14. 頻脈に関連する電気活動を検出するための少なくとも1つの電極は、前記心臓の心室内の頻脈を検出するための電極を含む、請求項12に記載のデバイス。
  15. 前記プロセッサは、前記心臓の前記心房内の前記電極によって検出されたP波信号間の前記間隔の関数として活動電位継続時間の前記推定値を計算するように構成される、請求項13に記載のデバイス。
  16. 前記プロセッサは、前記心臓の前記心室内の前記電極によって検出されたR波信号間の前記間隔の関数として活動電位継続時間の前記推定値を計算するように構成される、請求項14に記載のデバイス。
  17. 前記心臓内のT波を検出するためのT波検出モジュールをさらに備え、前記プロセッサは、前記T波検出モジュールから受け取った前記T波信号の関数として活動電位継続時間の前記推定値を計算するように構成される、請求項12に記載のデバイス。
  18. 活動電位継続時間の前記推定値に基づいて抗頻脈ペーシングパルスのペーシング間隔を設定するプロセッサは、前記頻脈の前記検出の前の或る期間にわたる心拍数に基づいて前記活動電位継続時間を推定するプロセッサを含む、請求項12に記載のデバイス。
  19. 前記期間にわたる心拍数を記憶するためのメモリをさらに備える、請求項18に記載のデバイス。
  20. 前記期間にわたる心拍数を記憶するためのメモリは、前記頻脈の検出前の心拍数及び前記頻脈の前記検出に続く心拍数を含む、請求項19に記載のデバイス。
  21. 前記プロセッサは、さらに、或る期間にわたる前記心拍数に基づいて有効拡張間隔を決定し、前記メモリは、さらに、状態変数として該拡張間隔を記憶する、請求項19に記載のデバイス。
  22. 活動電位継続時間の推定値を決定するプロセッサは、第1推定値を決定し、活動電位継続時間の第2推定値をさらに決定し、活動電位継続時間の該第2推定値に基づいて抗頻脈ペーシングの前記ペーシング間隔を設定する、請求項12に記載のデバイス。
  23. 前記メモリは、APD、拡張間隔、ATP治療パラメータ等の推定値をさらに記憶する、請求項19に記載のデバイス。
  24. 少なくとも1つの電極を介して前記心臓に抗頻脈ペーシングパルスを印加するパルス発生器をさらに備え、前記電極の少なくとも1つは、該パルス発生器に電気的に結合する、請求項12に記載のデバイス。
  25. プログラム可能なプロセッサが、
    心臓内の頻脈を検出し、
    該頻脈の該検出前の或る期間にわたる心拍数に基づいて活動電位継続時間を推定し、
    抗頻脈ペーシングパルスの印加時に、前記心臓内の活動電位の前記推定値に基づいて前記抗頻脈ペーシングパルスのペーシング間隔を設定するようにさせる命令を含む、コンピュータ読み取り可能媒体。
  26. 前記プロセッサが活動電位継続時間を推定するようにさせる前記命令は、前記プロセッサがP波信号間の間隔の関数として活動電位継続時間の前記推定値を計算するようにさせる命令を含む、請求項25に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
  27. 前記プロセッサが活動電位継続時間を推定するようにさせる前記命令は、前記プロセッサがR波信号間の間隔の関数として活動電位継続時間の前記推定値を計算するようにさせる命令を含む、請求項25に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
  28. 前記プロセッサが活動電位継続時間を推定するようにさせる前記命令は、前記プロセッサがT波信号の関数として活動電位継続時間の前記推定値を計算するようにさせる命令を含む、請求項25に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
  29. プロセッサが活動電位継続時間を推定するようにさせる前記命令は、前記プロセッサが第1活動電位継続時間を推定するようにさせる命令を含み、該命令は、前記プロセッサが、第2活動電位継続時間を推定し、抗頻脈ペーシングパルスの印加時に、前記心臓内の前記第2活動電位継続時間の前記推定値に基づいて前記抗頻脈ペーシングパルスの前記ペーシング間隔を設定するようにさせる、請求項25に記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
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