JP2006524413A - 2次元の実質的四重極場を発生するための改善された幾何学的構成による軸方向射出 - Google Patents

2次元の実質的四重極場を発生するための改善された幾何学的構成による軸方向射出 Download PDF

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スダコフ,ミハイル
ジェイ ダグラス,ドナルド
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ザ ユニヴァーシティー オブ ブリティッシュ コロンビア
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Abstract

細長いロッドのセットを有する質量分析計及び質量分析計の動作方法。ロッドセットは入射端、射出端及び軸線を有する。イオンはロッドセットの入射端に入射される。ロッドセットの射出端に隣接する射出部材に障壁電場をつくり、ロッドセットの少なくとも射出端に隣接するロッドセットのロッド間にRF電場をつくることにより、イオンの内の少なくともいくつかがロッドセット内にトラップされる。ロッドセットの射出端に隣接する引出し領域においてRF電場と障壁電場が相互作用してフリンジ電場をつくる。引出し領域内のイオンがエネルギーを得て、選択された質量対電荷比をもつ少なくともいくつかのイオンが障壁電場を通過して、ロッドセットから軸方向に質量選択的に射出する。RF電場は、振幅がAの四重極高調波成分、振幅がAの八重極高調波成分、及び振幅がAの十六重極高調波成分を有する、2次元の実質的な四重極電場である。AはAより小さく、AはAの0.1%より大きい。

Description

関連出願の説明
本出願は、2002年8月5日に出願された米国特許出願第10/211238号の一部継続出願である。
本発明は全般的には四重極電場に関し、特に、質量分析器に使用するための改善された四重極電場を発生するための四重極電極系に関する。
質量分析計で四重極電極系を使用することは周知である。例えば、特許文献1には、4本のロッドが中心軸を囲み、中心軸に平行に延びる四重極電極系が記載されている。対向するロッドが結合され、2つの共通端子の内の一方に接続される。次いで、電位V(t)=+(U−VcosΩt)が一方の端子と接地の間に印加され、電位V(t)=−(U−VcosΩt)が他方の端子と接地の間に印加されるというのが最も一般的である。これらの式
中、Uは極と接地の間のDC電圧であり、Vは極と接地の間のゼロ−ピーク無線周波数(RF)電圧である。
線型四重極の構成において、電場は理想的四重極場ではないから歪む可能性がある。例えば、完全な四重極場を作るのに必要な理想的双曲線形ロッドを近似するために円形ロッドが多く用いられる。円形ロッドをもつ四重極電極系における電位の計算は等価電荷法によって行うことができる。例えば、非特許文献1を参照されたい。一連の高調波成分振幅をA,A,A,...,Aとして表せば、線型四重極の電位は式(1):
Figure 2006524413
と表すことができる。
X及びY方向での電位の変化を表す電場高調波成分φは、式(2):
Figure 2006524413
と表すことができ、ここでReal[(f(x+iy)]は複素関数f(x+iy)の実数部である。例えば、
式(3):
Figure 2006524413
式(4):
Figure 2006524413
式(5):
Figure 2006524413
式(5.1):
Figure 2006524413
式(5.2):
Figure 2006524413
である。上記の定義において、X方向は、V(t)が正の場合に、四重極電位Aがゼロから正方向に大きくなる、電極に向かう方向に対応する。
一連の高調波成分振幅において、振幅A,A,A,...を有する奇数次電場高調波成分のそれぞれが、印加電位及び電極の対称性によって(計装及び測定誤差による奇数次高調波成分からの極めて小さい寄与を除いて)ゼロである場合をここで考察する。したがって、振幅A,A,A,...を有する偶数次電場高調波成分が残る。上に示したように、Aは定(すなわちX及びYに関係しない)電位であり、Aは電場の四重極成分であり、Aは電場の八重極成分であって、さらに高次の電場成分がまだ存在するが、実際の四重極においてそのようなさらに高次の成分の振幅は一般に四重極項成分に比較して小さい。
四重極マスフィルタにおいて、イオンは四重極の軸に沿って電場内に注入される。一般に、電場はこれらのイオンに複雑な軌道を与え、軌道は安定または不安定と表すことができる。安定となる軌道に対し、四重極の軸に垂直な面内におけるイオン運動の振幅強度は軸からロッドまでの距離(r)より小さいままでなければならない。安定軌道をもつイオンは四重極電極系の軸に沿って進行することになり、四重極から別の処理段または検出装置に送られ得る。不安定軌道をもつイオンは四重極電極系のロッドと衝突し、四重極電極系を通過しない。
特定のイオンの運動は質量分析器のマシューパラメータa及びqによって制御される。正イオンに対し、これらのパラメータは接地に対して端子から印加される電位の特性に式(6):
Figure 2006524413
のように関係付けられ、ここで、eはイオンの電荷、mイオンはイオン質量、Ω=2πf、fはRF周波数、Uは極と接地の間のDC電圧、Vはそれぞれの極と接地の間のゼロ−ピークRF電圧である。電位が異なる極対−接地間電圧によって印加される場合、U及びVはそれぞれ、ロッド対間のDC電位及びゼロ−ピークAC電位の1/2である。x及びy方向のいずれにも安定なイオン運動を与えるa及びqの組合せは通常、安定図上に示される。
マスフィルタとしての動作では、四重極内の圧力は、バックグラウンドガスによる散乱によるイオンの損失を防止するため、比較的低く保たれる。一般に圧力は5×10−4Torr(6.666×10−2Pa)より低く、5×10−5Torr(6.666×10−3Pa)より低いことが好ましい。さらに一般的には、四重極マスフィルタは通常、1×10−6Torr(1.333×10−4Pa)から5×10−4Torrの圧力範囲で動作させる。さらに低い圧力を用いることができるが、1×10−6Torrより圧力を低くしても散乱損失は通常、極めて僅かしか低減されない。
同様に、線型四重極をマスフィルタとして動作させる場合、DC及びAC(U及びV)は特定の1つの質量対電荷比をもつイオンが、上述したように、ちょうど安定領域の頂点域内に入るように調節される。通常、イオンは連続して四重極の入射端に導入され、連続して射出端で検出される。通常、入射端及び射出端における阻止電位によってイオンが四重極内に閉じ込められることはない。これに対する例外が非特許文献2及び非特許文献3に示されている。これらの文献には、分解能を改善するために四重極内にマルチパスを与えるため、四重極の入射端及び射出端においてイオンが電極から反射される実験を記載している。やはり、四重極を低圧で動作させ、第1安定領域の頂点域に注目するイオンを入れるためにDC及びAC電圧が調節されているが、これらの文献にはその圧力が述べられていない。
対照的に、線型四重極をイオントラップとして動作させる場合、DC及びAC電圧は通常、広い質量対電荷比範囲のイオンが閉じ込められるように調節される。イオンは連続的に導入され、引き出されることはない。あるいは初めにイオンがトラップに注入される(あるいは、以下で説明されるように、別のイオンのフラグメント化または中生種のイオン化によって、トラップ内でつくられる)。イオンは次いでトラップ内で処理され、続いて質量選択スキャンによってトラップから取り出されるか、または、説明されるように、さらなる処理または質量分析のためにトラップから出される。イオントラップは四重極マスフィルタよりかなり高い圧力、例えば3×10−3Torr(0.4Pa)のヘリウム(非特許文献4)あるいは7×10−3Torr(0.933Pa)までの窒素(非特許文献5及び非特許文献6)で動作させることができる。一般に、イオントラップは、10−1Torr(13.33Pa)ないしさらに低い圧力、好ましくは10−5〜10−2Torr(1.333×10−3〜1.333Pa)の範囲で動作する。さらに好ましくは、イオントラップは10−4〜10−2Torr(1.333×10−2〜1.333Pa)の範囲で動作する。しかし、イオントラップは特殊用途のためにかなり低い圧力(例えば10−9ミリバール(10−7Pa)(非特許文献7))でも動作させることができる。高圧力における動作の場合は、ガスを高圧源領域からトラップに流し込むことができ、あるいは独立ガス源及び流入口によってトラップに加えることができる。
近年、2次元四重極イオントラップの安定境界におけるイオンの射出による質量選択スキャンの実施が注目されている(例えば、特許文献2及び非特許文献4を参照されたい)。2次元イオントラップにおいて、イオンは2次元四重極場によって径方向に閉じ込められ、トラップの端にある電極に印加される阻止電位によって軸方向に閉じ込められる。イオンは、イオンがそれぞれの安定限界に達し、射出されて質量スペクトルを生じるように、RF電圧を高めていくことによって、ロッドセットの1本または複数本のロッドの、1つまたは複数のアパーチャを通して外部検出器に射出される。
イオンは、以下で説明されるように、ロッドに補助または補足励起電圧を印加してイオンの運動周波数においてイオンを共鳴励起することによって、1本または複数本のロッドの、1つまたは複数のアパーチャを通して射出することもできる。これは、特定のq値、例えばq=0.8でイオンを射出するために用いることができる。トラップRF電圧を調節することにより、様々な質量対電荷比をもつイオンが励起電圧によって共鳴状態に入れられ、射出されて質量スペクトルを生じる。あるいは、様々な質量をもつイオンを射出するために励起周波数を変えることができる。最も一般的には、ロッドを通してイオンを射出して質量スペクトルを生じさせるために、励起及びトラップ電圧の周波数、振幅及び波形を制御することができる。
質量分析に用いられるマスフィルタの効率は、所望の質量対電荷比をもつイオンを保持することができ、残りのイオンを廃棄することができる能力にある程度依存する。このことは、続いて、(1)選択されたイオンに安定軌道を確実に与え、また(2)選択されないイオンに不安定軌道を確実に与える、四重極電極系に依存する。これらの要因はいずれも、質量スキャンにおいてイオンが安定限界に近づくときにイオンが射出される速度を制御することによって改善され得る。
質量分析(MS)の多くはイオンのフラグメント化及びその後のフラグメントの質量分析を含むであろう(縦連質量分析法)。衝突ガスによる衝突誘起解離(CID)またはその他の手段(例えば、表面との衝突またはレーザによる光解離)によっておこるイオンフラグメント化の前に特定の1つまたは複数の質量対電荷比をもつイオンの選択が用いられることが多い。フラグメントイオンは特定の前駆体イオンのフラグメント化からつくられているから、これにより、得られたフラグメントイオンの同定が容易になる。3連四重極質量分析計システムにおいて、イオンは四重極マスフィルタによって質量選択され、イオンガイド内でガスと衝突し、得られたフラグメントイオンの質量分析が別の四重極マスフィルタにおいて行われる。イオンガイドは通常、広い範囲の質量対電荷比をもつイオンをイオンガイドの軸を通過する方向に閉じ込めて、下流の四重極質量分析器にイオンを送るために、無線周波数電圧だけを電極間に印加して動作させる。3次元イオントラップ質量分析計において、イオンは3次元四重極場によって閉じ込められ、前駆体イオンが他の全てのイオンを共鳴射出することによるかまたはその他の手段によって単離され、前駆体イオンが衝突ガスの存在の下で共鳴または別の手段によって励起され、トラップ内で形成されたフラグメントイオンは引き続いて射出されてフラグメントイオンの質量スペクトルを生じる。線型四重極イオントラップにイオンを閉じ込めることにより縦連質量分析法を実施することもできる。広い範囲の質量対電荷比のイオンを閉じ込めるために無線周波数電圧を電極間に印加して四重極を動作させる。次いで、不要なイオンの共鳴射出またはその他の手段によって前駆体イオンを単離することができる。次いで前駆体イオンが衝突ガスの存在の下で共鳴励起されるかまたはその他の手段によって励起され、次いでフラグメントイオンが質量分析される。質量分析は、イオンが線型イオントラップを出て飛行時間型質量分析器のような別の質量分析器に入ることを可能にする(非特許文献5及び非特許文献6)ことによって、またはイオンを1本または複数本のロッドの1つまたは複数のアパーチャを通して外部のイオン検出器に射出する(特許文献2及び非特許文献4)ことによって、行うことができる。あるいは、フラグメントイオンを質量選択態様で軸方向に射出(非特許文献8及び特許文献3)できる。MSは、質量選択段階にイオンフラグメント化段階が続き、さらにイオン選択、イオンフラグメント化及び質量分析段階が続く、合計してn段の質量分析段階を意味する。
質量分析と同様に、CIDは、イオンを2次元または3次元に閉じ込める、無線周波数電場を通してイオンを運動させることによって補助される。しかし、選択された質量対電荷比をもつイオンに安定軌道を与え、選択されない質量対電荷比をもつイオンに不安定軌道を与えるために電場を用いる線型四重極マスフィルタにおける通常の質量分析とは異なり、CIDとともに用いられる四重極電場は、広い範囲の質量対電荷比のイオンに安定であるが振動する軌道を与えるようにはたらく。2次元イオントラップにおいて、この運動の共鳴励起は振動するイオンをフラグメント化するために用いることができる。しかし、イオンに与えられる振動軌道にはトレードオフがある。振幅が非常に小さい運動がイオンに与えられる場合には、フラグメント化は僅かしかおこらないであろう。しかし、与えられる振動の振幅が大きくなるほど、おこるフラグメント化は多くなるが、振動振幅が十分に大きければ、イオンの内のいくつかは不安定軌道を有し、失われるであろう。イオンフラグメント化とイオン射出の間には競合関係がある。したがって、フラグメント化を誘起するに十分なエネルギーをイオンに与えるが、イオンを失うほど大きなエネルギーは与えないためには、トラップ電場及び励起電場の両方を慎重に選択する必要がある。
したがって、イオン選択及びイオンフラグメント化のいずれに関しても、マスフィルタ及びイオントラップに対して2次元四重極電場を改善することが継続的に必要とされている。特に、線型イオントラップにおけるイオンフラグメント化に対して、フラグメント化を誘起するに十分にエネルギーが高いがイオン射出を防止するに十分に安定な振動運動を与える電場を提供する四重極電極系が望ましい。マスフィルタまたはイオントラップにおいて安定境界における射出によるかまたは共鳴励起によるイオン選択に対しても、イオンをより迅速に射出させ、よってより高速なスキャン速度及びより高い質量分解能を可能にする電場を提供する、四重極電極系が望ましい。
米国特許第2939952号明細書 米国特許第5420425号明細書 米国特許第6177668号明細書 ダグラス(Douglas)等,Russian Journal of Technical Physics,1999年,第69巻,p.96〜101 マーン・エイチ・アマド(Ma'an H. Amad)及びアール・エス・ホウク(R. S. Houk),「マルチパス四重極質量分析器による高分解能質量分析法(High Resolution Mass Spectrometry With a Multiple Pass Quadrupole Mass Analyzer)」,Analytical Chemistry,1998年,第70巻,p.4885〜4889 マーン・エイチ・アマド及びアール・エス・ホウク,「マルチパス四重極質量分析器による11,000から22,000の質量分解能(Mass Resolution of 11,000 to 22,000 With a Multiple Pass Quadrupole Mass Analyzer)」,Journal of the American Society for Mass Spectrometry,2000年,第11巻,p.407〜415 ジェイ・シー・シュワルツ(J. C. Schwartz),エム・ダブリュー・センコ(M. W. Senko),ジェイ・イー・ピー・サイカ(J. E. P. Syka),「2次元四重極イオントラップ質量分析計(A Two-Dimensional Quadrupole Ion Trap Mass Spectrometer)」,Journal of the American Society for Mass Spectrometry,2002年,第13巻,p.659〜669;2002年4月26日,エルスビア・サイエンス社(Elsevier Science Inc.)よりオンライン出版 ジェニファー・キャンベル(Jennifer Campbell),ビー・エイ・コリングス(B. A. Collings)及びディー・ジェイ・ダグラス(D. J. Douglas),「縦連質量分析能力をもつ新しい線型イオントラップ飛行時間システム(A New Linear Ion Trap Time of Flight System With Tandem Mass Spectrometry Capabilities)」,Rapid Communications in Mass Spectrometry,1998年,第12巻,p.1463〜1474 ビー・エイ・コリングス,ジェイ・エム・キャンベル(J. M. Campbell),ダンミン・マオ(Dunmin Mao)及びディー・ジェイ・ダグラス,「改善された性能及びMSn能力をもつ結合線型イオントラップ飛行時間システム(A Combined Linear Ion Trap Time of Flight System With Improvrd Performance and MSn Capabilities)」,Rapid Communications in Mass Spectrometry,2001年,第15巻,p.1777〜1795 エム・エイ・エヌ・ラズヴィ(M. A. N. Razvi),エックス・ワイ・チュー(X. Y. Chu),アール・アルハイト(R. Alheit),ジー・ワース(G. Werth)及びアル・ブラメル(R. Blumel),「ポールトラップ内のイオン雲の分数周波数集団パラメトリック共鳴(Fractional Frequency Collective Parametric Resonances of an Ion Cloud in a Paul Trap)」,Physical Review A,1998年,第58巻,p.R34〜R37 ジェイ・ヘイガー(J. Hager),「新しい線型イオントラップ質量分析計(A New Linear Ion Trap Mass Spectrometer)」,Rapid Communications in Mass Spectrometry,2002年,第16巻,p.512
本発明の課題は、線型イオントラップにおけるイオンフラグメント化に対して、フラグメント化を誘起するに十分にエネルギーが高いがイオン射出を防止するに十分に安定な振動運動を与える電場を与え、マスフィルタまたはイオントラップにおいて安定境界における射出によるかまたは共鳴励起によるイオン選択に対しても、イオンをより迅速に射出させ、よってより高速なスキャン速度及びより高い質量分解能を可能にする電場を与えるための手段を提供することである。
本発明の第1の態様の目的は改善された質量分析計動作方法を提供することである。
本発明のこの第1の態様にしたがえば、細長いロッドのセットを有し、ロッドセットが入射端及び射出端及び軸線を有する質量分析計の動作方法が提供される。。本方法は、(a)イオンをロッドセットの入射端に通す工程、(b)ロッドセットの射出端に隣接する射出部材に障壁電場をつくることにより、及びロッドセットの少なくとも射出端に隣接するロッドセットのロッド間にRF電場をつくることにより、イオンの内の少なくともいくつかをロッドセット内にトラップする工程、(c)ロッドセットの射出端に隣接する引出し領域においてRF電場と障壁電場が相互作用してフリンジ電場をつくる工程及び(d)引出し領域においてイオンのエネルギーを高めて、選択された質量対電荷比をもつ少なくともいくつかのイオンをロッドセットから障壁電場を通して軸方向に質量選択的に射出する工程を含む。RF電場は、振幅がAの四重極高調波成分、振幅がAの八重極高調波成分及び振幅がAの十六重極高調波成分を有する2次元の実質的な四重極電場であり、AはAより小さく、AはAの0.1%より大きい。
本発明の第2の態様の目的は改善された質量分析計システムを提供することである。
本発明のこの第2の態様にしたがえば、(a)イオン源、(b)ロッドセットであって、イオン源からのイオンを入射させるための入射端及びロッドセットの軸線を通過するイオンを射出するための射出端を有する主ロッドセット、(c)主ロッドセットの射出端に隣接する射出部材、(d)使用時に、(i)主ロッドセットに通されたイオンの内の少なくともいくつかがロッドセット内にトラップされ、(ii)RF電場及び障壁電場の相互作用が射出端に隣接するフリンジ電場をつくるように、主ロッドセットのロッド間にRF電場をつくり、射出端に障壁電場をつくるために主ロッドセット及び射出部材に接続される電源手段、及び(e)AC電圧がフリンジ電場の近傍にトラップされているイオンを射出端から質量に依存して軸方向に射出するように、主ロッドセットのロッド及び射出部材の内の1つに接続されるAC電圧源を備える質量分析計システムが提供される。RF電場は、振幅がAの四重極高調波成分、振幅がAの八重極高調波成分及び振幅がAの十六重極高調波成分を有する2次元の実質的な四重極電場であり、AはAより小さく、AはAの0.1%より大きい。
ここで、添付図面を参照しながら、好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1を参照すれば、従来技術にしたがう四重極ロッドセット10が示されている。四重極ロッドセット10はロッド12,14,16及び18からなる。ロッド12,14,16及び18は、半径がrの円Cにロッドが内接するように、軸20の周りに対称に配置される。理想的四重極電場をつくるために、ロッド12,14,16及び18の断面は双曲線形であって、無限長を有することが理想的であるが、一般には円断面のロッドが用いられる。通常そうであるように、対向するロッド12及び14が結合されて端子22に接続され、対向するロッド16及び18が結合されて端子24に接続される。端子22と接地の間に電位V(t)=+(U−VcosΩt)が印加され、端子24と接地の間に電位V(t)=−(U−VcosΩt)が印加される。通常通りマスフィルタとして動作させる場合、以下で説明されるように、質量分解能のため、印加電場はDC成分及びAC成分のいずれをも有する。マスフィルタまたはイオントラップとしての動作に対し、印加電場は少なくともある程度はAC成分を有する。すなわち、AC電位は必ず印加されるであろうが、DC電位は印加されることが多いとはいえ、印加されるとは限らないであろう。AC成分は通常RF範囲にあり、一般には約1MHzであろう。周知の通り、RF電圧だけが印加される場合もある。正DC電位が印加されるロッドセットは正ロッドと称することができ、負DC電位が印加されるロッドセットは負ロッドと称することができる。
上述したように、特定のイオンの運動は質量分析器のマシューパラメータa及びqによって制御される。これらのパラメータは接地に対して端子22及び24から印加される電位の特性に式(6):
Figure 2006524413
のように関係付けられ、ここで、eはイオンの電荷、mイオンはイオン質量、Ω=2πf、fはRF周波数、Uは極と接地の間のDC電圧、Vはそれぞれの極と接地の間のゼロ−ピークRF電圧である。X及びY方向のいずれにおいても安定なイオン運動を与えるaとqの組合せが図2の安定度図に示される。安定領域に対する図2の表示は、ピー・エイチ・ドーソン(P. H. Dawson)編,「四重極質量分析法及びその応用(Quadrupole Mass Spectrometry and its Application)」,American Vacuum Society Classics,(アムステルダム),エルスビア(Elsevier),1976年,p.19〜23及び70からとられた。「第1」安定領域は(a,q)=(0.2,0.7)近傍の領域を指し、「第2」安定領域は(a,q)=(0.02,7.55)近傍の領域を指し、「第3」安定領域は(a,q)=(3,3)近傍の領域を指す。多くの(実際には無限の数の)安定領域があることに注意することが重要である。所望の安定領域の選択及び選択される頂点域またはそれぞれの領域における動作点は目的とする用途に依存するであろう。
四重極電場における方向uのイオン運動は式(7):
Figure 2006524413
で表すことができ、ここで、ξ=Ωt/2であり、tは時間であって、C2nはa及びqの値に依存し、A及びBはイオンの初期の位置及び速度に依存する(例えば、アール・イー・マーチ(R. E. March)及びアール・ジェイ・ヒューズ(R. J. Hughes)著,「四重極蓄積質量分析法(Quadrupole Storage Mass Spectrometry)」,(トロント),ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons),1989年,p.41を参照されたい)。βの値がイオン振動の周波数を決定し、βはa及びqの関数である(ピー・エイチ・ドーソン編,「四重極質量分析法及びその応用」,American Vacuum Society Classics,(アムステルダム),エルスビア,1976年,p.70)。式(7)から、2次元四重極四電場におけるX方向のイオン運動の角周波数(ω)及びY方向のイオン運動の角周波数(ω)は式(8):
Figure 2006524413
及び式(9)
Figure 2006524413
で与えられ、ここで、n=0,±1,±2,±3,...,0≦β≦1,0≦β≦1であり、β及びβはそれぞれx方向及びy方向の運動に対するマシューパラメータa及びq(式(6))によって決定される。
線型四重極にさらに高次の電場高調波成分が存在する場合、いわゆる非線形共鳴がおこり得る。例えば、ドーソン及びウェットン(ピー・エイチ・ドーソン及びエヌ・アール・ウェットン(N. R. Whetton),「不完全電場による四重極質量分析計における非線形共鳴(Non-Linear Resonance in Quadrupole Mass Spectrometers Due to Imperfect Fields)」,International Journal of Mass Spectrometry and Ion Physics,1969年,第3巻,p.1〜12)によって示されるように、非線形共鳴は式(10):
Figure 2006524413
が成立するときにおこり、ここで、Nは電場高調波成分の次数であり、Kは整数であって値N,N−2,N−4,...をとることができる。非線形共鳴を生じるβとβの組合せは安定度図上で線で表される。非線形共鳴がおこる場合、そうでなければ安定運動を行うであろうイオンが不安定運動を行い、四重極電場から失われる場合がある。これらの効果は、線型四重極がマスフィルタとして用いられる場合に比較して線型四重極がイオントラップとして用いられる場合にさらに強くなると考えられる。線型四重極がイオントラップとして用いられる場合、非線形共鳴が強くなるにかかる時間が長くなる。したがって、以前は、2次元四重極電場に存在する八重極及びその他のさらに高次の多重極の成分のレベルは可能な限り小さくあるべきであると考えられていた。
発明者等は、以下に説明されるように、電場に八重極成分を付加することによって、イオン選択及びイオンフラグメント化のいずれに関しても、質量分析計に用いられる2次元四重極電場を改善できることを確認した。付加される八重極成分は計装または測定誤差から生じる八重極成分よりはるかに大きい。詳しくは、これらの誤差から生じる八重極成分は一般に0.1%よりかなり小さい。対照的に、本発明による八重極成分Aは一般にAの1から4%の範囲にあり、Aの6%もの大きさに、あるいはさらに大きくさえ、なり得る。したがって、主トラップ四重極電場への八重極成分の導入による利点を実現するためには、主トラップ四重極電場にあるレベルの八重極電場不完全性が意図的に導入されるが、他の電場不完全性の導入は制限される、電極系を構成することが望ましい。八重極電場は、X方向及びY方向で異なる、電極系を構成することによって付加することができる。
線型四重極に実質的な八重極成分を意図的に導入し、同時にその他のさらに高次の高調波成分からの寄与は最小限に抑える方法は示されたことがない。「四重極マスフィルタの光学特性(Optical Properties of Quadrupole Mass Filters)」,Advances in Electronics and Electron Physics,1980年,第53巻,p.153〜208のp.195で、ピー・エイチ・ドーソンは対向するロッドを互いに外向きに移動させると電場に八重極成分が付加されるであろうことを示した。しかし、発明者等はこれにより電位に八重極項と同様の大きさの十二重極項(A)及び十六重極(A)項も付加されることを計算で得た。発明者等は電位に八重極項を、他の高調波成分はかなり小さく保ちながら、付加するための方法を見いだした。本発明の様々な実施形態にしたがう四重極電極系が以下に説明される。図3を参照すれば、四重極ロッドセットが断面図で示されている。本四重極ロッドセットはXロッド112及び114,Yロッド116及び118、並びに四重極軸120を有する。図3には本発明の以下の実施形態のいずれの説明にも用いられる表記が導入されている。詳しくは、VはYロッド116及び118に与えられる電圧であり、RはこれらのYロッド116及び118の半径であって、rは四重極軸120からのYロッド116及び118の径方向距離である。
同様に、VはXロッド112及び114に与えられる電圧であり、RはこれらのXロッド112,114の半径であって、rは四重極軸120からのXロッド112及び114の径方向距離である。図3においてはRがRより小さいように示されているが、その必要はないことが当業者には明らかであろう。詳しくは、これらの項は四重極電極系に幾何学的変形をどのように導入すれば発生する電場に所望の効果を有し得るかを示すために導入されているに過ぎない。
発明者等は、Yロッドの直径をXロッドの直径と実質的に異ならせることによって四重極電場に八重極成分を付加し得ることを確認した。そのような系における電場を調べるため、r=R=rとする。次いでYロッド半径(R)を変えた。この場合の、計算された電場高調波成分振幅が図4に示される。この計算では、ロッドは半径R=8rの関係にある。
図4の電場高調波成分振幅で表される電位計算により、八重極成分が実質的に付加された四重極電場をつくるために本方法が有用であることが示される。Yロッド116及び118がXロッド112及び114より大きな直径を有するときに、八重極電場が存在し、その他のさらに高次の高調波成分は比較的小さな振幅を有する。四重極成分はほとんど変わらないままである(四重極成分に対するデータは示されていない)。
上述したように、Yロッドの直径をXロッドの直径に比較して大きくすることによるだけで実効的四重極電極系を構成することができる。しかし、本方法では実質的な定電位がつくられる。その値Aは八重極電場の振幅Aにほとんど等しい。実効的四重極電極系が電場に実質的な定電位を発生させ得る以上、好ましくは、定電位は可能な限り小さく保たれるべきである。この場合、大径ロッドは、小径ロッドと同じ距離に配置された場合に軸電位に影響を及ぼすため、定電位が生じる。軸電位は2つの異なる方法、(1)中心軸120から大径ロッドまでの距離を大きくする方法、及び(2)Xロッド及びYロッドの間に電圧不平衡を生じさせる方法(通常、Yロッドの電圧はXロッドの電圧に等しいが、符号は逆である)で除去できる。これらの2つの方法を以下で論じる。
1.中心軸120からYロッド116及び118までの距離を大きくする
計算においては先と同じくR=rとする。次いでrより大きないずれかのRの値をとり、ゼロ定電位を与える値rの値を見いだす。この値は、中心軸からの「ゼロ」Y距離ry0と呼ばれる。ry0対Rのグラフが図5に示される。これがなされると、さらに高次の高調波成分振幅が若干変化し、もはや図4では与えられない。ロッドが動かされた場合に対する、さらに高次の高調波成分振幅が図6に示される。A項は図5に示されている。
計算は、定電位がゼロであり、与えられた比率で八重極電場が四重極電場に対して存在し、その他のさらに高次の電場高調波成分は比較的小さな値を有する、幾何学的電極構造を構成することが可能であることを示す。A=0とするためにロッドが中心軸から不等の距離にある場合、この問題に対する最良の解はA=0となる点(図6参照)である。これは「最適」幾何学的電極構造と呼ばれる。この点でのRの値R,最適はほぼ1.43・rである。この場合について計算された高調波成分振幅が表1に示される。等電位線が図7に示される。
Figure 2006524413
2.XロッドとYロッドの間の電圧平衡ずれ
=R=rを維持し、電圧不平衡を加えることにより、ゼロの軸電位を達成することができる。通常は、Yロッド電圧がXロッド電圧に等しいが、符号は反対の、V=−Vであるように、電圧が印加される。これは4本の等直径ロッドからなる系でゼロの軸電位を与える。Yロッド116及び118がXロッド112及び114より大きい直径を有する場合、軸電位はYロッド電位の影響を受けるであろう。これは非ゼロ軸電位を与える。この効果は電圧不平衡によって除去することができる。Xロッド及びYロッド上の電圧の総和が主トラップ電圧の2倍に等しい、すなわち、式(11):
Figure 2006524413
とする。
ゼロ軸電位を達成するため、大径ロッド対の電圧が若干低められ、小径ロッド対の電圧が若干高められるであろう。大径ロッド対を第1ロッド対と呼び、小径ロッド対を第2ロッド対と呼ぶ。したがって、第1ロッド対の電圧が若干低められて、|V/V(t)|=(1―ε)とされ、第2ロッド対の電圧が高められて、|V/V(t)|=1+εとされるであろう。εの値は式(12):
Figure 2006524413
で与えられる。
ここでAは図4に与えられる数値である。自由空間内の4ロッド系については、これは正確な結果である。図4に示される計算に用いたような、半径R=8rの四重極の場合、これは真の値に極めて近い。電場計算の例が表2に示される。
Figure 2006524413
前述は、4本の平行な円柱の系においてある値の八重極高調波成分をもつ2次元四重極電場をどのようにつくるかを説明するものである。A及びAはゼロであるかまたは可能な限り0に近いことが好ましい。
(ほぼ3%の)八重極電場が付加された四重極電場をつくるためには、表1に示される幾何学的寸法をもつ電極を構成することが有用である。さらに大きいかまたは小さい八重極電場については、図4〜6から幾何学的寸法を決定することができる。
イオンフラグメント化
2次元四重極電場に八重極成分を付加することにより、電場から射出せずにより長い時間にわたってイオンを励起することが可能になる。一般に、イオン射出とイオンフラグメント化の間の競合において、このことはイオンフラグメント化に有利である。
イオンが双極子場で励起される場合、励起電圧には式(8)または(9)で与えられる周波数が必要である。エム・シュダコフ(M. Sudakov),エヌ・コネンコフ(N. Konenkov),ディー・ジェイ・ダグラス及びティー・グレボヴァ(T. Glebova),「四重極電場に閉じ込められたイオンの四重極励起による励起周波数(Excitation Frequencies of Ions Confined in a Quadrupole Field With Quadrupole Excitation)」,Journal of the American Society for Mass Spectrometry,2000年,第11巻,p.10〜18に示されるように、イオンが四重極電場で励起される場合、励起角周波数は式(13):
Figure 2006524413
で与えられ、ここで、K=1,2,3,...及びm=0,±1,±2,±3,...である。四重極電場にさらに高次の電場高調波成分の小さな寄与が付加された場合、双極子または四重極の、励起電場もさらに高次の高調波成分からの小さな寄与を含み得ることはもちろんである。
図8Aを参照すれば、rの分率としてのイオンの計算された変位がRF周期単位の時間に対して示されている。総時間長は5000周期である。この場合、四重極ロッドに直流電圧は印加されず(U=0)、V=124.29ボルトの無線周波数電圧が印加されている。マシューパラメータa及びqはそれぞれ0.00000及び0.210300であり、これらは第1安定領域にある。イオン運動は線形減衰している(すなわち、イオン速度に一次比例する、ガスによるイオンへの抗力がある)。無線周波数は768kHzであり、rは4.0mmに等しい。イオンの質量及び電荷はそれぞれ612及び1である。衝突ガスの質量は28(窒素)であり、温度は300ケルビンである。イオンとガスの間の衝突断面積は200.0Åであり、ガスの圧力は1.75mTorr(0.233Pa)である。X方向でのイオンの初期変位は0.1rである。Y方向でのイオンの初期変位は0.1rである。X方向及びY方向のイオンの初期速度はゼロである。軌道計算は八重極成分が付加されていない理想的四重極電場について行っている。図8Aに示される軌道においてイオン運動の励起はない。
図8Aから、いかなる高次項もない、単純な四重極電場が電極系によってつくられ、イオン運動の励起がない場合に、イオンが一般に減退する運動エネルギー量を有することが明らかである。イオンは2次元四重極電場を通って運動し、例えば、ディー・ジェイ・ダグラス及びジェイ・ビー・フレンチ(J. B. French),「無線周波数四重極における衝突収束効果(Collisional Focusing Effects in Radio Frequency Quadrupoles)」,Journal of the American Society for Mass Spectrometry,1992年,第3巻,p.398〜408に論じられているように、径方向及び軸方向でエネルギーを失う。この結果、イオンは閉じ込められ、四重極の中心線に向かって動き、フラグメント化は最小である。図8Bを参照すれば、イオンの電子ボルト(eV)単位の運動エネルギーは極めて小さい。実際、運動エネルギーは極めて小さいため、図8Bではほとんどゼロであるように見える。イオンが電場内で振動すると、運動エネルギーはゼロと時間とともに小さくなる最大値の間で変化する。図8Cを参照すれば、X方向のイオンの変位に対するY方向のイオンの変位がグラフにプロットされている。図8Cから、イオンの運動が、この軌道については、X変位とY変位が実質的に等しい非常に小さな領域内に強く制限されることがわかる。これは、この単純な軌道に対する初期条件の結果である。
図9Aを参照すれば、rの分率としてのイオンの変位が、四重極RF電場の周期を単位とする時間に対してプロットされている。図9Aのイオンには第2の電場がかかっている。この第2の電場の発生において、Xロッド112と114の間に双極子励起電圧が印加されているが、Yロッド116及び118の間には双極子励起電圧が印加されていない。この双極子励起電圧の振幅は0.30Vであり、周波数は57.6kHzであって、これは式(8)においてn=0に対応する。その他のパラメータはすべて図8Aと同じままである。
図8Aの軌道とは異なり、X方向の変位の振幅はかなり大きくなっている。X方向のイオン変位振幅が大きくなるにつれて、イオンの運動エネルギーも大きくなる。しかし、振幅が大きくなりすぎ、イオンにあまりのも多くの運動エネルギーが与えられるので、イオンはXロッドに衝突し、210周期後に失われる。このことは、図9Aのイオンに与えられる電子ボルト(eV)単位の運動エネルギーが四重極RF電場の周期単位の時間に対してプロットされた、図9Bにも見ることができる。図示されるように、イオン運動のそれぞれの周期にわたって平均された運動エネルギーは、210周期まで、時間の経過に伴って大きくなり、210周期でイオンは失われる。図9Cを参照すれば、イオンの励起がX方向に強く局限されることがわかる。Y方向の振動の振幅は、X方向の運動だけが励起されるから、小さいままである。
図10Aを参照すれば、rの分率としてのイオンの変位が、四重極RF電場の周期を単位とする時間に対して同じくプロットされている。四重極電場に2%の八重極電場が付加されたことを除いて、パラメータの全てが図9Aと同じである。図10Aに示されるように、X方向のイオンの変位の振幅が初めに比較的高いr分率(約0.8)まで大きくなり、次いで小振幅(約0.4)まで減衰する。このパターンは、八重極成分またはN≧3のその他の多重極成分が存在するときの、変位の振幅に依存するイオンの共鳴周波数の結果である。イオンの変位振幅が大きくなるにつれて、イオンの共鳴周波数は励起周波数に比例してシフトする(非調和振動子について、このシフトは、エル・ランダウ(L. Landau)及びイー・エム・リフシッツ(E. M. Lifshitz)著,「力学(Mechanics)」,(オクスフォード),第3版,パーガモント・プレス(Pergamont Press),1966年,p.84〜87に説明されている)。イオン運動は励起周波数と位相がずれるようになり、したがって電場によりイオンに与えられるエネルギーが減少し、よってイオン運動の振幅が小さくなる。運動の振幅が小さくなると、イオンの共鳴周波数が再び励起電場の周波数と一致し、よってエネルギーが再びイオンに与えられ、イオン運動の振幅が再び大きくなる。図10Bを参照すれば、イオンに与えられる、イオン運動のそれぞれの周期にわたって平均された運動エネルギーが時間の経過に伴って、最終的に安定状態に達するまで、漸次増加し、減少していることに、上記の関係を見ることができる。図10Cを参照すれば、図9Cと同様に、双極子励起電圧がXロッド112及び114だけに印加されるので、イオン運動はX方向に強く局限されていることがわかる。図9Aと比較すると、図10Aの軌道で示されるように、八重極電場を付加することによって、イオンを電場から射出することなく、より長い時間にわたってイオンを励起することが可能になる。励起中、イオンはバックグラウンドガスとの強力な衝突によって内部エネルギーを蓄積し、最終的には、十分な内部エネルギーを得たときにフラグメント化する。すなわち、フラグメント化を誘起するためには、イオンを電場から射出することなく長時間にわたってイオンを励起できることが有利である。もちろん、八重極電場を電場の四重極成分に対して大きくしすぎてはならないことが当業者には理解されるであろう。
図11Aを参照すれば、四重極励起電場を受けるイオンの変位が四重極RF電場に周期を単位とする時間に対してプロットされている。Xロッド及びYロッドの両者に印加される励起電圧の振幅はいずれも0.5Vであり、励起周波数は115kHzであって、これは式(13)のm=0及びK=1に対応する。四重極電場に八重極成分は付加されていない。その他のパラメータは全て図8〜10についてのパラメータと同じである。
図11Aに示されるように、イオン振動の振幅は350周期まで時間の経過に伴って徐々に大きくなり、350周期でイオンはYロッドに衝突して失われる。図11Bを参照すれば、イオンが受け取る、イオン運動のそれぞれの周期にわたって平均された運動エネルギーは350周期が経過するまで漸次増加し、350周期でイオンは失われる。図11Cには、Y方向のイオンの変位に対するX方向のイオンの変位がプロットされている。図8〜10とは異なり、図11Cのイオンは、失われる前に、四重極のXY平面全体にわたって運動する。
図12Aを参照すれば、rの関数としてのイオンの変位が四重極RF電場の周期を単位とする時間に対してプロットされている。イオンは、八重極成分で補助されることを除き、全ての点において図11Aの電場と同様の電場を受ける。八重極成分は主四重極電場の2%である。その他の全てのパラメータは図11のパラメータと同じままである。
図10Aと同様に、図12Aに示されるイオンの変位は、ほぼ0.8rの最大値に達するまで、従四重極励起により時間の経過に伴って漸次大きくなる。この点でイオンの共鳴周波数がシフトし、イオン運動は四重極励起電場の周波数と位相がずれる。したがって、変位が小さくなって、イオン運動は再び四重極励起電場の周波数と徐々に位相が合いはじめ、位相が合うとイオン変位の振幅が再び大きくなる。図12Bを参照すれば、イオンの振動の一周期にわたって平均された運動エネルギーは約350周期に等しい時間まで増大し、約350周期で運動エネルギーは減少するが、イオン運動が再び四重極励起電場と位相が合うと、運動エネルギーは再び増大する。図12Cを参照すれば、Y方向のイオンの変位がX方向のイオンの変位に対してプロットされている。図11Cと同様に、やはり、イオンが四重極のXY平面全体にわたって運動することがわかる。すなわち、四重極励起では、双極子励起と同様に、電場への少量の八重極成分の付加により、イオンをかなり長い時間にわたって励起して、フラグメント化を誘起するためにイオンに与えることができる内部エネルギーを増大させることが可能になる。
四重極電場への八重極成分の付加により、トラップされたイオンの2次元四重極電場からの射出において可能なスキャン速度及び分解能を改善することもできる。射出は質量選択不安定性スキャンで、または共鳴射出により、行うことができ、これらはいずれも特許文献2に記載されている。これらの2つの場合を個別に考察する。
トラップされたイオンの安定境界における射出による質量分析
2次元イオントラップにおいて、イオンは2次元四重極場によって径方向に閉じ込められる。トラップされたイオンは、イオンが(第1安定領域に対してはq=0.908にある)安定領域の境界に達し、射出されるように、RF電圧を高めることによって1本または複数本のロッドの1つまたは複数のアパーチャを通して外部検出器に射出することができる。3次元トラップとは異なり、四重極RF電場によるz方向でのイオンの閉じ込めはない。エム・シュダコフ,「非線型イオントラップにおける第1安定領域の境界近傍の実効電位及びイオン軸方向ビート運動(Effective Potential and the Ion Axial Beat Motion Near the Boundary of the First Stable Region in a Non-Linear Ion Trap)」,International Journal of Mass Spectrometry,2001年,第206巻,p.27〜43に示されるように、イオン射出方向に電場の正八重極成分がある場合、イオンは安定境界においてより迅速に射出され、したがって、質量選択安定度スキャンにおいて八重極成分がない場合よりも高い分解能及びスキャン速度が可能である。ここで「正」八重極成分は、電位及び電場の強度が中心からの距離とともに、純四重極場に対する場合におこるであろうより、急速に増加することを意味する。
発生する電場は小径ロッドの方向に最も強くなるであろう。したがって、正八重極成分は小径ロッドの方向に発生するであろう。よって、検出器は小径ロッドの外側に配置するべきである。
トラップされたイオンの共鳴射出による質量分析
八重極成分が存在する場合にも、イオンを共鳴励起によって線型四重極トラップから射出することができるが、より高い励起電圧が必要である。双極子励起では、射出に対する明確な閾電圧が生じる。したがって、イオンが共鳴励起で射出される場合、イオンは、トラップRF電圧またはその他のパラメータが射出のためにイオンを共鳴させるように調節されると、安定状態から不安定状態に一層迅速に移行する。このことは、スキャン速度が高められ、共鳴励起によりスキャンの質量分解能が高められ得ることを意味する。
四重極励起では、2つの閾値を区別する必要がある。ビー・エイ・コリングス及びディー・ジェイ・ダグラス,「線型イオントラップにおける高次四重極励起周波数の観察(Observation of Higher Order Quadrupole Excitation Frequencies in a Linear Ion Trap)」,Journal of the American Society of Mass Spectrometry,2000年,第11巻,p.1016〜1022及びエル・ランダウ及びイー・エム・リフシッツ著,「力学(Mechanics)」,(オクスフォード),第3版,パーガモント・プレス(Pergamont Press),1966年,p.80〜87に論じられているように、イオンの運動が衝突によって減衰される場合、励起に対して閾電圧が存在する。これは本明細書で「減衰閾値」と称される。励起電圧が印加されている場合であっても、励起電圧が減衰閾値より低ければ、(図8Aの軌道とある程度同様に)イオン運動の振幅は時間とともに指数関数的に小さくなる。励起強度が減衰閾値より高ければ、図11Aに見られるように、イオン運動の振幅は時間とともに指数関数的に大きくなり、イオンは射出され得る。八重極成分が存在し、減衰閾値より高い強度で励起されると、イオンは励起されるが、図12Aに示されるように、まだ電場によって閉じ込められている。しかし、四重極励起強度が高められると、イオンは射出され得る。すなわち、第2の閾値−イオン射出閾値−が存在する。このことは、双極子励起と同様に、共鳴射出により質量分析のスキャン速度及び分解能を高め得ることを意味する。
発生する電場は小径ロッドの方向に最も強くなるであろう。したがって、正八重極成分は小径ロッドの方向に発生するであろう。よって、検出器は小径ロッドの外側に配置するべきである。
マスフィルタとしての動作
上述した有意の八重極成分を有する四重極電場は、四重極マスフィルタとして有用であり得る。本明細書において「四重極マスフィルタ」は、例えば、ピー・エイチ・ドーソン編,「四重極質量分析法及びその応用」,(アムステルダム),エルスビア,1976年,p.19〜22に述べられているような、質量スキャンを生じさせるように通常通りに動作させる線型四重極を意味して用いられる。電圧U及びVは、選択された質量対電荷比をもつイオンが図2に示される第1領域のような安定領域の頂点の頂点域内で頂点に接するように調節される。質量がより大きいイオンはより小さいa,q値を有し、安定領域の外側にある。質量がより小さいイオンはより大きいa,q値を有し、同じく安定領域の外側にある。したがって、選択された質量対電荷比をもつイオンは四重極を通して四重極の出口にある検出器に送られる。電圧U及びVは次いで、異なる質量対電荷比をもつイオンを入射させるために変えられる。次いで質量スペクトルを生じさせることができる。あるいは、よく周知の通り、異なる質量対電荷比の間で「ホップ」させるために四重極を用いることができる。ロッドに印加されるDC電圧対RF電圧比(U/V)を変えることによって分解能を調節することができる。
マスフィルタとしての動作に対しては、線型四重極内の電位を可能な限り純四重極電場に近づけるべきであると考えられていた。電位への高次多重極項の付加によって数学的に表される、電場歪は一般に望ましくないと考えられていた(例えば、ピー・エイチ・ドーソン及びエヌ・アール・ウェットン,「不完全電場による四重極質量分析計における非線形共鳴」,International Journal of Mass Spectrometry and Ion Physics,1969年,第3巻,p.1〜12、及びピー・エイチ・ドーソン,「四重極マスフィルタのイオン光学特性(Ion Optical Properties of Quadrupole Mass Filters)」,Advances in Electronics and Electron Optics,1980年,第53巻,p.153〜208を参照されたい)。経験的に、理想的な双曲線形ロッドを近似するために円形ロッドを用いる製造業者は、少量の十二重極及び二十重極電位を付加する幾何学的構成が、十二重極電位を最小化する幾何学的構成の四重極より、高い分解能を与え、テーリングが小さいピークを与えることに気付いていた。これは、最適化された幾何学的構成による十二重極項及び二十重極項からの不要な効果の偶然の相殺によることが示された。しかし、付加される高次多重極項の大きさはそれでも四重極項に比較して非常に小さい(約10−3)(ディー・ジェイ・ダグラス及びエヌ・ブイ・コネンコフ,「円形ロッドをもつ四重極マスフィルタのピーク形状への6次及び10次空間高調波成分の影響(Influence of the 6th and 10th Spatial Harmonics on the Peak Shape of a Quadrupole Mass Filter with Round Rods)」,Rapid Communications in Mass Spectrometry,2002年,第16巻,p.1425〜1431)。
発明者等は、実質的な(一般にAの2〜3%の)八重極成分をもつ、上述したような、ロッドセットを構成した。電場不完全性に関する従前の文献の全てからすれば、これらのロッドセットで従来態様での質量分析が可能ではあるとは考えられないであろう。しかし、発明者等は、四重極電源の極性が正しく設定され、四重極のロッドオフセットが正しく設定されれば、そのようなロッドセットが実際上通常のロッドセットと分解能が同等の質量分析を与え得ることを見いだした。逆に、極性が正しく設定されていなければ、分解能が極めて低くなる。
ロッド極性効果
図13〜16は八重極成分A=0.026(R=1.30R);(R=r=r)をもつ四重極電場を用いる質量分析計でつくられた質量スペクトルである。その他の高調波成分の振幅は図4のグラフから決定することができる。全ての場合において、四重極周波数は1.20MHz、四重極長は20cm、中心軸からのロッドの距離は4.5mmとした。スキャンは、質量対電荷比を示す、横軸に沿って個々の0.1mイオン/e区間について行った。それぞれの区間について、イオンを10ミリ秒間カウントし、0.05ミリ秒の休止後、次のmイオン/e値に移るスキャンを行った。全範囲を50回スキャンし、次いでそれぞれの区間についてカウントされたイオン数をこの50回のスキャン全部にわたって足し合せた。マルチチャネルスケーラとしてはたらくコンピュータ及びソフトウエアをスキャンに用いた。全てのグラフの縦軸は最高ピークを100%として規格化されたイオンカウント率を示す。
図13は、四重極電源の正DC電圧が大径ロッド対に接続され、負DC電圧が小径ロッド対に接続されたときの、質量対電荷比mイオン/e=609(プロトン化レセルピン)の正イオンで得られた分解能を示す。半値における分解能がR1/2=135の幅広いピークが形成された。ロッドオフセット、RF電圧対DC電圧のバランスすなわち比を変えて信号強度を変えることはできるが、分解能が実質的に高くなることはない。図14は、正出力が小径ロッド対に接続され、負出力が大径ロッド対に接続されたときの、同じイオンに対する分解能を示す。分解能は劇的にR1/2=1590まで改善され、RF電圧対DC電圧比を変えることによって調節することができる。このようにして、R1/2=5600までの分解能がこの質量対電荷比において得られた。
図15は、負DC電圧出力が大径ロッドに接続され、正DC電圧が小径ロッドに接続されたときに得られる、負レセルピンイオンの質量スペクトルを示す。半値における分解能はR1/2=135であり、ロッドオフセット、RF電圧対DC電圧のバランスすなわち比の設定を変えて信号強度を変えることはできるが、分解能を有意に改善することはできない。図16は、同じイオンによるが、正DC電圧出力が大径ロッドに接続され、負DC電圧出力が小径ロッドに接続されたときに得られる分解能を示す。半値における分解能はR1/2=1015まで改善され、ロッドに印加されるRF電圧対DC電圧比によって調節することができる。これらの結果は、高分解能を得るためには、正イオンに対しては四重極電源の正出力を小径ロッドに接続する必要があり、負イオンに対しては負出力を小径ロッドに接続する必要があることを示す。
簡単にいえば、高分解能を得るためには、質量分析されるべきイオンと同じ極性が小径ロッドに与えられるべきである。
正イオンが分析される場合、四重極電源の負出力が大径ロッドに接続されることが好ましい。平衡DC電位がロッドに印加される場合には、大径ロッドに印加されるDC電圧の内の少しが軸電位として現れるから、負のDC軸電位が存在するであろう。この電位の絶対値は(イオンの質量が大きくなるほど高いDC電位が必要であるから)四重極スキャンが大質量側に向かうにつれて大きくなるであろう。(良好な分解能を維持するために)四重極内で同じイオンエネルギーを維持するためには、マスフィルタスキャンが大質量側に向かうにつれてロッドオフセットを大きくすることが必要であろう。同様に、負イオンのスキャン中に質量に合せてロッドオフセットを調節することが必要であろう。この場合、平衡DCにより生じる軸電位は質量が大きくなるほどより正に(負で小さく)なり、四重極スキャンが大質量側に向かうにつれてロッドオフセットをより負にすることが必要であろう。したがって、一般に、直径の異なるロッド対をもつロッドセットに平衡DC電位Uが印加される場合、良好な性能を維持するためには、異なるmイオン/e値をもつイオンに対してロッドオフセット電位を調節する必要があるであろう。
軸電位をゼロにするために不平衡DCがロッドに印加される場合には、質量スキャンとともにロッドオフセットを調節する必要はないであろう。実験は、ロッド間RF/DC比が適切に調節されれば、平衡RFによる動作と不平衡RFによる動作の間で分解能は変わらないことを示す。
本発明の別の好ましい実施形態にしたがえば、2001年1月23日にエム・ディー・エス社(MDS Inc.)に発行された、本明細書に参照として含まれる、米国特許第6177668号の明細書に説明されるように、質量分析計に与えられる2次元の実質的四重極電場に八重極成分が含められる。すなわち、本発明の態様は軸方向射出を利用する質量分析計に有用に適用することができる。
図17を参照すれば、軸方向射出を可能にするように構成された、質量分析計システム210が示されている。システム210は試料をイオン源214に供給する試料源212(通常は液体クロマトグラフィのような液体試料源)を備える。イオン源214は、エレクトロスプレイ、イオンスプレイ、またはコロナ放電装置、またはその他のいずれかのイオン源とすることができる。1989年8月29日にコーネル・リサーチ・ファウンデーション社(Cornell Research Foundation Inc.)に発行された米国特許第4861988号の明細書に示される種類のイオンスプレイ装置が適している。
イオン源214からのイオンはアパーチャプレート218のアパーチャ216を通して誘導される。プレート218は、カーテンガス源220からカーテンガスが供給されるガスカーテンチャンバ219の壁の1つを形成する。カーテンガスは、アルゴン、窒素、またはその他の不活性ガスとすることができる。イオンは次いでオリフィスプレート224のオリフィス222を通過して、ポンプ228によって圧力約1Torr(1.333×10Pa)まで排気される第1段真空チャンバ226に入る。
イオンは次いで、スキマープレート232にとりつけられた、スキマーのスキマーオリフィス230を通過して、ポンプ236によって圧力約2mTorr(0.2666Pa)まで排気される主真空チャンバ234に入る。
主真空チャンバ234は4本の線型四重極ロッド238のセットを収める(もちろん、四重極ロッド及び四重極ロッドセットの中心軸が湾曲していてもさしつかえないことが当業者には理解されるであろう)。上述したように、ロッド238は2本のXロッド及び2本のYロッドからなる。四重極軸からのYロッドの径方向距離はrであり、Yロッドの半径はRである。同様に、四重極軸からのXロッドの径方向距離はrであり、Xロッドの半径はRである。上述したように、Rは一般にRとは等しくないであろう。これらの寸法は、四重極電場に所望の八重極成分を付与するように選ばれる。
ロッド238の射出端240を過ぎて約2mmに射出レンズ242が配置される。レンズ242はアパーチャ244をもつ単なるプレートであり、(例えば、質量分析計で通常使用される種類のチャネル型電子増倍管とすることができる)通常の検出器246に向かってイオンにアパーチャ244を通過させることができる。
ロッド238はロッド間にRF電圧を印加する主電源250に接続される。電源250及びイオン源214のための電源、アパーチャプレート218及びオリフィスプレート224,スキマープレート232,及び射出レンズ218は、共通の基準接地に接続される(接続は図示されていない)。
例として、正イオンに対し、イオン源214は一般に+5000Vにあり、アパーチャプレート218は+1000Vとすることができ、オリフィスプレート224は+250Vにすることができ、スキマープレート232は接地(0V)とすることができる。ロッド238に印加されるDCオフセットは−5Vとすることができる。装置の軸は参照数字252で示される。
すなわち、イオン源214からデバイスに通された、注目するイオンは電位井戸を下り、ロッド238に通される。ロッド238に印加された印加主RF電場内で安定なイオンはバックグラウンドガスとの数多くの運動量散逸衝突を受けながらデバイス長を進行する。しかし、一般には−2VDCのトラップDC電圧が射出レンズ242に印加されている。通常、スキマー232と射出レンズ242の間のイオン通過効率は非常に高く、100%達し得る。主真空チャンバ234に入り、射出レンズ242に向かって進行するイオンは、バックグラウンドガスとの数多くの衝突によって熱化され、軸252の方向での正味の速度はほとんどもたない。イオンは、イオンを径方向に閉じ込める、主RF電場からの力も受ける。印加されるRF電圧は一般に、(質量スキャンされていなければ)ロッド対間ピーク−ピーク値で、約450V程度であり、周波数は約816kHz程度である。ロッド238には分解電場は印加されない。
ロッド238に印加されるDC電圧より高いDCオフセットを印加することによって射出レンズ242にDCトラップ電場がつくられると、ロッド238に印加されるRF電場内で安定なイオンは有効にトラップされる。
しかし、射出レンズ242近傍の領域254にあるイオンは、射出レンズ近くにおける主RF電場及びDC電場の終端の性質によりかなり歪められた電場を受けるであろう。フリンジ電場と通常称される、そのような電場は、トラップされたイオンの径方向及び軸方向の自由度を結合する傾向を有するであろう。このことは、相互に独立ではないイオン運動の軸方向成分及び径方向成分があるであろうことを意味する。これは、イオン運動の軸方向及び径方向の成分が結合されていないかまたは最小限度に結合されている、射出レンズ及びフリンジ電場から離れたロッド構造238の中心における状況と異なっている。
トラップされたイオンの径方向と軸方向の自由度をフリンジ電場が結合するから、適切な周波数の低電圧補助AC電場の射出レンズ242への印加によって、ロッド238を含むイオントラップからイオンを質量依存スキャンして軸方向に外に出すことができる。補助AC電場は、説明の目的のため主電源250の一部を形成するとして示される補助AC電源256によって与えることができる。
補助AC電場は射出レンズ242に与えられるトラップDC電圧に追加され、径方向及び軸方向のイオン運動のいずれをも励起する。補助AC電場は、イオンが矢印258の方向にほぼ軸方向に出て行くことができるように、射出レンズ242における軸方向DC電位障壁を乗り越えるに十分にイオンを励起するために確立される。射出レンズ242近傍における電場の歪により、軸方向及び径方向のイオン運動の上述した結合がおこり、よって軸方向射出が可能になる。これは、上述した状況と異なる、径方向永年運動の励起が一般に径方向射出をおこさせ、軸方向永年運動の励起が一般に軸方向射出をおこさせるであろう、従来のイオントラップに存在する状況と対照的である。
したがって、低電圧補助AC電場の周波数をスキャンすることによって、逐次質量依存態様でのイオン射出を達成することができる。補助AC電場の周波数が射出レンズ242の近傍にあるイオンの径方向永年周波数と一致すると、イオンはエネルギーを吸収し、径方向/軸方向運動結合によって、射出レンズに存在する電位障壁を通過することができるようになるであろう。イオンが軸方向に出ると、イオンは検出器246によって検出されるであろう。イオンが射出された後、射出レンズの近傍の領域254の上流にある他のイオンがエネルギーを得て領域254に入り、次のAC周波数スキャンによって励起されることができる。
ロッドに印加されるRF電場が付加八重極電場を有しない実質的四重極電場である場合は、射出レンズに印加される補助AC電圧の周波数をスキャンすることによるイオン射出が細長いロッド構造238の全体のトラップ空間を空にしないから望ましい。ロッド238に対する従来の質量選択不安定性スキャンモードにおいては、ロッドにかかるRF電圧が徐々に高められ、それぞれのイオンに対するq値が0.907に達したときに、イオンがロッドの全長に沿って小質量から大質量まで射出されるであろう。それぞれの質量選択不安定性スキャンの後、別の分析を実施できるようになるまでには、トラップ空間を再充填するための時間が必要である。対照的に、上述したように補助AC電圧が射出レンズに印加される場合、射出レンズの近傍が軸方向と径方向のイオン運動の結合が生じ、補助AC電圧が印加される場所であるから、イオン射出は通常、射出レンズの近傍でしかおこらないであろう。ロッドの上流部260は次の分析のために他のイオンを蓄えておく働きをする。射出レンズ近傍の空間254をイオンで再充填するに必要な時間はトラップ空間全体を再充填するに必要な時間より常に短いであろう。したがって浪費されるイオンが少なくなるであろう。
別形態として、射出レンズ242に印加される補助AC電圧をスキャンする代りに、説明するように、射出レンズ242にかかる補助AC電圧を固定し、ロッド238に印加される主RF電圧の振幅をスキャンすることができる。これはトラップ条件を変えるが、軸方向射出には約0.2〜0.3のqしか必要ではなく、一方径方向射出には約0.907のqが必要である。したがって、RF電圧が適切な振幅範囲にわたってスキャンされる場合には、おそらくは質量が非常に小さいイオンを除いて、ロッドセット内の領域260における径方向射出で失われるイオンがあるとしても、そのようなイオンは少ない。
さらなる別形態として、ロッド238に印加されるDF電圧または射出レンズ242に印加される補助AC電圧をスキャンする代りに、説明した態様でイオンを軸方向に射出するであろう変化フリンジ電場をつくるため、ロッド238に(図17に破線接続257で示されるように)補足または補助のAC双極子電圧または四重極電圧を印加してスキャンすることができる。あるいはXロッド対間に双極子励起を与えることができ、同時にYロッド対間に別の双極子励起を与えることができる。これは、ロッドに印加されるRF電圧によって与えられるトラップ電場が付加八重極成分を有するときに特に有利である。すなわち、従来のロッドセットでは、線型トラップに閉じ込められたイオンの内の約20%しか軸方向に射出することができず、残りの80%はロッドに打ち当たることによって失われると思われる(非特許文献8)。しかし、上述したように、付加八重極電場を有する線型四重極では、イオンをロッドに打ち当たらせるにはより大きな励起電圧が必要であり、図10及び12に示されるように、イオンをロッドに打ち当てることなく連続的に励起することができる。すなわち、八重極場を付加し、よってロッドに打ち当たるイオンのパーセンテージを低めることで軸方向に射出されるイオンのパーセンテージを高めることにより、システムの感度を改善することができる。
あるいは、上記の3つの手法(すなわち、射出レンズ242に印加される補助AC電場のスキャン、射出レンズ242に固定補助AC電場を印加しながらのロッドセット238に印加されるRF電圧のスキャン、並びに、射出レンズ242への補助AC電圧印加及びロッド238へのRF電圧印加に加えてロッドセット238への補助AC電圧の印加)の内のいくつかまたは全ての組合せを、イオンを軸方向に射出し、射出レンズ242に存在するDV電位障壁を質量に依存して通過させるために用いることができる。
状況に応じて、ロッド間に不平衡RF電圧を印加した方がよいことがある。別の状況においては、一般に0.5V〜50VのDC電圧がロッド間にあることも有利である(ジェイ・ヘイガー,「24mm長RF限定四重極質量分析計の性能最適化及びフリンジ電場改変(Performance Optimization and Fringing Field Modification of a Twenty-Four Millimeter Long RF Only Quadrupole Mass Spectrometer)」,Rapid Communications In Mass Spectrometry,1999年,第13巻,p.740を参照されたい。また特許文献3も参照されたい)。これは状況による。したがって、異なる状況では異なる動作モードが好ましくなり得るから、可能な限り多くの異なる動作モードを有することが有利である。上述したように、四重極軸の周りの90°回転の下で対称ではないロッド間にDC電圧が印加される場合には、所望の軸DC電位を得るためにロッドオフセットを調節する必要があり得る。
付加八重極電場を有する本発明にしたがうロッドセットはX方向とY方向で異なっているから、軸方向射出に対して、4回対称性を有する従来のロッドセットより多くの動作モードがある。励起は、射出アパーチャへの電圧として、小径ロッド対間または大径ロッド対間の双極子励起として、四重極励起として、あるいは、双極子励起が小径ロッド対間に印加されると同時に、大径ロッド対間に印加される双極子励起として、与えることができる。さらに、トラップ電場は、RF電場が平衡または不平衡のRF限定とすることができ、あるいは、小径ロッドに印加される正DC電圧によるかまたは大径ロッドに印加される正DC電圧によるDC成分を含むことができる。正イオンに対するいくつかの動作モードを下表:
Figure 2006524413
に示す。
原理的には、3種のトラップ電圧のいずれかを、ロッド間への3種のDC電圧印加方法のいずれかと組み合わせることができ、いずれかの組合せを9種の励起モードのいずれかとともに用いることができるであろう。すなわち、正イオンに対して3×3×9=81通りの動作モードがある。これらのモードのそれぞれで、イオンを順次にAC励起電場と共鳴させるためにRF振幅がスキャンされるか、あるいは変調周波数が、やはり、そのような周波数が射出レンズ近傍のフリンジ電場にあるイオンの径方向永年周波数に一致するときに、イオンがエネルギーを吸収して検出のために軸方向に射出されるであろうように、スキャンされる。すなわち、質量選択的にイオンを軸方向射出するには81×2=162通りのスキャン方法がある。
前述のデバイスは、ロッド238に印加される主RF閉込電場に入るイオンがイオン自体の残留運動量により射出レンズ242に向かって輸送され、最終的に軸方向に射出される、連続態様で動作させることができる。すなわち、射出レンズ近傍の引出し空間に到達したイオンは、バックグラウンドガスとの数多くの衝突によって既に状態調整されており、従来のイオントラップのほとんどで必要とされるような顕在的冷却時間(及びそれにともなう遅延)の必要がない。イオンが領域260に入っていくと同時に、イオンは上述した質量イオン依存態様で領域254から軸方向に射出されていく。
さらなる別形態として、4本のロッド238の全てに印加される(与えられる例では−5Vの)DCオフセットを、射出レンズ242に印加されているであろうAC電圧と同じ周波数で変調することができる。この場合、DCオフセットの変調は、フリンジ領域にAC電場をつくるという点において、射出レンズへのAC電圧の印加と等価であるから、射出レンズ242にAC電圧を印加する必要はない。この場合にもDC電位障壁が射出レンズ242に印加されていることは当然である。DCオフセットの変調振幅は、DCオフセット変調を行わなければ射出レンズ242に印加されたであろうAC電圧の振幅と同じであろう。すなわち、DCオフセットの変調振幅は軸方向射出イオン信号を最適化するように設定される。次いで、イオンをDC変調でつくられるAC電場と順次に共鳴させるためにRF振幅がスキャンされるか、やはり、変調周波数が射出レンズ近傍のフリンジ電場にあるイオンの径方向永年周波数と一致するときに、そのイオンがエネルギーを吸収して検出のために軸方向に射出されるように、変調周波数がスキャンされる。ロッドオフセットはイオンが注入されてロッド内にトラップされるまでは変調されないことが、トラップ前に変調されると変調がイオン注入を妨害し、よってこのプロセスがバッチプロセスとなるであろうから好ましい。このようなバッチプロセスは、AC電圧が射出レンズに印加されるときに可能な、(射出レンズ242にかかるAC電場はイオン注入に影響しないから)イオンが領域260に入っていくと同時にイオンが引出し領域254から射出されていくことができる連続プロセスと対照的である。
軸方向射出に用いられる本発明の別の変形及び改変が可能である。例えば、特許文献3の図2に示されるように、デューティサイクルを改善するために別のイオントラップと組み合わされる質量選択軸方向射出のためのイオントラップとして本発明のロッドセットを用いることができる。軸方向射出をともなう本ロッドセットは、特許文献3の図4に示されるように、2×10−5Torr(2.666×10−3Pa)のような、さらに低い圧力で動作させることもできる。さらに、軸方向射出をともなう本ロッドセットは、フラグメントイオンを生成し、続いて、質量分析のためにフラグメントイオンを軸方向に射出するための衝突セルとして用いることができる。フラグメントイオンは比較的高エネルギーでイオンを注入してバックグラウンドガスによってフラグメント化をおこさせるか、またはロッドセット内のイオンの共鳴励起によって、形成することができる。軸方向射出のために用いられるロッドセットと同じロッドセットを安定性図の頂点域におけるイオンの質量選択をともなうマスフィルタとして動作させることが望ましい場合もある(非特許文献8)。八重極電場が付加されたロッドセットは上述したようにマスフィルタとして動作させることができる。
本発明のその他の変形例及び変更例が可能である。例えば、高軸電位をもつ四重極ロッドセットを用いることができる。さらに、上述の議論は円柱ロッドを扱っているが、他のロッド形状を用いても本発明を実施できることが当業者には理解されるであろう。例えば双曲線形状を用いることもできる。あるいは、例えば、米国特許第4328420号明細書に説明されるように、ロッドを線材で構成することができるであろう。また、直線中心軸を有する四重極システムに関して上に説明したが、湾曲中心軸を有する四重極システムを用いても本発明を実施できることが当業者には理解されるであろう。そのような変更例または変形例は、本明細書に添付される特許請求の範囲によって定められる本発明の領域及び範囲内にあると考えられる。
四重極ロッドセットを簡略な斜視図で示す 四重極質量分析計の異なる安定領域を示す通常の安定度図である XロッドとYロッドが異なる直径を有する四重極ロッドセットの断面図である 四重極軸からのXロッドの間隔に対するYロッドの半径の関数としての電場高調波成分振幅のグラフである Yロッドの半径に対して、ゼロ軸電位を得るために計算される、四重極軸からのYロッドの間隔をプロットしたグラフである Yロッドの間隔がゼロ定電位をつくるように選ばれているときの、四重極及びさらに高次の高調波成分振幅をYロッドの直径に対してプロットしたグラフである Yロッドの直径が最適化されている場合の等電位線を、簡略な断面図で示す イオンに作用する選択された電場による、ロッドの四重極軸からの距離の分率で表されたイオンの変位をRF周期単位の時間の関数としてプロットしたグラフである RF周期単位の時間の経過に伴って図8Aのイオンに与えられる運動エネルギーを、電子ボルト単位で、プロットしたグラフである Y方向における図8Aのイオンの変位をX方向における変位に対してプロットしたグラフである イオンに作用する第2の選択された電場による、ロッドの四重極軸からの距離の分率で表されたイオンの変位をRF周期単位の時間の関数としてプロットしたグラフである 図9Aのイオンに与えられる運動エネルギーを、電子ボルト単位で、RF周期単位の時間に対してプロットしたグラフである Y方向における図9Aのイオンの変位をX方向における変位に対してプロットしたグラフである イオンに作用する第3の選択された電場による、ロッドの四重極軸からの距離の分率で表されたイオンの変位をRF期間単位の時間の関数としてプロットしたグラフである RF周期単位の時間の経過に伴って図10Aのイオンに与えられる運動エネルギーを、電子ボルト単位で、プロットしたグラフである Y方向における図10Aのイオンの変位をX方向における変位に対してプロットしたグラフである イオンに作用する第4の選択された電場による、ロッドの四重極軸からの距離の分率で表されたイオンの変位をRF周期単位の時間の関数としてプロットしたグラフである RF周期単位の時間の経過に伴って図11Aのイオンに与えられる運動エネルギーを、電子ボルト単位で、プロットしたグラフである Y方向における図11Aのイオンの変位をX方向における変位に対してプロットしたグラフである イオンに作用する第5の選択された電場による、ロッドの四重極軸からの距離の分率で表されたイオン変位をRF周期単位の時間の関数としてプロットしたグラフである RF周期単位の時間の経過に伴って図12Aのイオンに与えられる運動エネルギーを、電子ボルト単位で、プロットしたグラフである Y方向における図12Aのイオンの変位をX方向における変位に対してプロットしたグラフである プロトン化レセルピンイオンに作用する第6の選択された電場によりつくられたプロトン化レセルピンイオンの質量スペクトルを示すグラフである イオンに作用する第7の選択された電場によりつくられたプロトン化レセルピンイオンの質量スペクトルを示すグラフである 第8の選択された電場によりつくられた負レセルピンイオンの質量スペクトルを示すグラフである イオンに作用する第9の選択された電場によりつくられた負レセルピンイオンの質量スペクトルを示すグラフである 軸方向射出をともなう本発明の態様を実施することができる質量分析計システムの概略図である
符号の説明
10 四重極ロッドセット
12,14,16,18 ロッド
20,120 四重極軸
22,24 端子
112,114 Xロッド
116,118 Yロッド

Claims (20)

  1. 細長いロッドのセットを有し、前記ロッドセットが入射端及び射出端及び軸線を有する質量分析計の動作方法において、
    (a)前記ロッドセットの前記入射端にイオンを入射させる工程、
    (b)前記ロッドセットの前記射出端に隣接する射出部材に障壁電場をつくり、前記ロッドセットの少なくとも前記射出端に隣接する前記ロッドセットの前記ロッドの間にRF電場をつくることにより、前記イオンの内の少なくともいくつかを前記ロッドセット内にトラップする工程、
    (c)前記ロッドセットの前記射出端に隣接する引出し領域において前記RF電場と前記障壁電場が相互作用してフリンジ電場をつくる工程、及び
    (d)前記引出し領域においてイオンにエネルギーを与えて、選択された質量対電荷比をもつ少なくともいくつかのイオンを前記障壁電場を通過させて前記ロッドセットから軸方向に質量選択的に射出する工程、
    を有してなり、
    前記RF電場が、振幅がAの四重極高調波成分、振幅がAの八重極高調波成分及び振幅がAの十六重極高調波成分を有する、2次元の実質的な四重極電場であり、AはAより小さく、AはAの0.1%より大きいことを特徴とする方法。
  2. がAの1%より大きく、AがAの6%より小さいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記軸方向に射出されたイオンの内の少なくともいくつかを検出する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 前記ロッドセットが、
    (i)中心軸、
    (ii)各ロッドが前記中心軸から間隔をあけて配置され、前記中心軸に沿って延びている、第1のロッド対、及び
    (iii)各ロッドが前記中心軸から間隔をあけて配置され、前記中心軸に沿って延びている、第2のロッド対、
    を有し、前記第1のロッド対及び前記第2のロッド対が、前記中心線に沿ういかなる点においても、
    前記中心線に直交する関係平面が前記中心軸と交差し、対応する第1の断面対において前記第1のロッド対と交差し対応する第2の断面対において前記第2のロッド対と交差し、
    前記対応する第1の断面対が、前記中心軸についてほぼ対称に配置され、前記中心軸に直交して前記第1のロッド対の各ロッドの中心を通る第1の軸によって二等分され、
    前記対応する第2の断面対が、前記中心軸についてほぼ対称に配置され、前記中心軸に直交して前記第2のロッド対の各ロッドの中心を通る第2の軸によって二等分され、
    前記対応する第1の断面対と前記対応する第2の断面対が前記中心軸に関する90°回転の下で実質的に非対称であり、及び
    前記第1の軸と前記第2の軸が実質的に直交し前記中心軸において交差する、
    ように配位されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 前記第1のロッド対の各ロッドが前記中心軸に実質的に平行であり、横断寸法Dを有し、
    前記第2のロッド対の各ロッドが前記中心軸に実質的に平行であり、Dより小さい横断寸法Dを有し、
    /Dは、AがAの0.1%より大きくなるように選ばれる、
    ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 複数の動作モードを有し、各動作モードが、複数のトラップ電圧サブモードから選ばれるトラップ電圧サブモード、複数のDC電圧サブモードから選ばれるDC電圧サブモード、及び複数の励起サブモードから選ばれる励起サブモードを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
  7. 工程(b)が、前記第1のロッド対に第1のRF電圧を印加し、前記第2のロッド対に第2のRF電圧を印加することにより、前記ロッドセットの前記ロッド間にRF電場をつくる工程を含み、
    前記複数のトラップ電圧サブモードが、(i)前記第1のRF電圧の振幅が前記第2のRF電圧の振幅に等しい平衡RFサブモード、(ii)前記第1のRF電圧の前記振幅が前記第2のRF電圧の前記振幅より大きい第1の不平衡RFサブモード、及び(iii)前記第1のRF電圧の前記振幅が前記第2のRF電圧の前記振幅より小さい第2の不平衡RFサブモードからなる群から選ばれる、
    ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 前記複数のDC電圧サブモードが、(i)前記第2のロッド対に対して正の第1のDC電圧が前記第1のロッド対に印加される第1のDC電圧サブモード、(ii)前記第1のロッド対に対して正の第2のDC電圧が前記第2のロッド対に印加される第2のDC電圧サブモード、及び(iii)前記第1のロッド対と前記第2のロッド対の間にゼロDC電圧が印加されるゼロDC電圧サブモードからなる群から選ばれることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  9. 前記複数の励起サブモードが、(i)前記射出部材への射出補助AC電圧の供給を含む第1の励起サブモード、(ii)前記第1のロッド対間への第1の双極子励起AC電圧の供給を含む第2の励起サブモード、(iii)前記第2のロッド対間への第2の双極子励起AC電圧の供給を含む第3の励起サブモード、(iv)前記第1のロッド対と前記第2のロッド対の間への四重極励起電圧の供給を含む第4の励起サブモード、(v)前記射出部材への射出補助AC電圧の供給及び前記第1のロッド対間への前記第1の双極子励起AC電圧の供給を含む第5の励起サブモード、(vi)前記射出部材への前記射出補助AC電圧の供給及び前記第2のロッド対間への前記第2の双極子励起AC電圧の供給を含む第6の励起サブモード、(vii)前記射出部材への前記射出補助AC電圧の供給及び前記第1のロッド対と前記第2のロッド対の間への補助四重極励起AC電圧の供給を含む第7の励起サブモード、(viii)前記第1のロッド対間への前記第1の双極子励起AC電圧の供給及び前記第2のロッド対間への前記第2の双極子励起AC電圧の供給を含む第8の励起サブモード、及び(ix)前記射出部材への前記射出補助AC電圧の供給、前記第1のロッド対間への前記第1の双極子励起AC電圧の供給及び前記第2のロッド対間への前記第2の双極子励起AC電圧の供給を含む第9の励起サブモードからなる群の内の1つまたはそれより多くであるように選ばれることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  10. 工程(d)が、前記少なくともいくつかのイオンを前記複数の励起サブモードから選ばれた前記励起サブモードによってつくられる少なくとも1つの励起電場と共鳴させるように前記RF電場の前記振幅をスキャンする工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
  11. 質量分析計システムにおいて、
    (a)イオン源、
    (b)ロッドセットであって、前記イオン源からのイオンを入射させるための入射端及び前記ロッドセットの軸線を進行するイオンを射出するための射出端を有する、主ロッドセット、
    (c)前記主ロッドセットの前記射出端に隣接する射出部材、
    (d)前記主ロッドセットのロッド間にRF電場をつくり、前記射出端に障壁電場をつくるために、前記主ロッドセット及び前記射出部材に接続され、使用において、(i)前記主ロッドセットに通された前記イオンの内の少なくともいくつかが前記ロッド間にトラップされ、(ii)前記RF電場と前記障壁電場の相互作用が前記射出端に隣接するフリンジ電場をつくる、電源手段、及び
    (e)AC電源であって、前記主ロッドセットの前記ロッド及び前記射出部材の内の1つに接続され、前記AC電源及び前記電源手段の内の少なくとも1つが前記射出端から前記フリンジ電場の近傍にトラップされたイオンを質量に依存して軸方向に射出する、AC電源、
    を備え、
    前記RF電場が、振幅がAの四重極高調波成分、振幅がAの八重極高調波成分及び振幅がAの十六重極高調波成分を有する、2次元の実質的な四重極電場であり、AはAより小さく、AはAの0.1%より大きい、
    ことを特徴とする質量分析計システム。
  12. がAの1%より大きく、AがAの6%より小さいことを特徴とする請求項11に記載の質量分析計システム。
  13. 前記軸方向に射出されるイオンの内の少なくともいくつかを検出するための検出器をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の質量分析計システム。
  14. 前記ロッドセットが、
    (a)中心軸、
    (b)各ロッドが前記中心軸から間隔をあけて配置され、前記中心軸に沿って延びている、第1のロッド対、及び
    (c)各ロッドが前記中心軸から間隔をあけて配置され、前記中心軸に沿って延びている第2のロッド対、
    を有し、前記第1のロッド対及び前記第2のロッド対が、前記中心線に沿ういかなる点においても、
    前記中心線に直交する関係平面が前記中心軸と交差し、対応する第1の断面対において前記第1のロッド対と交差し、対応する第2の断面対において前記第2のロッド対と交差する、
    前記対応する第1の断面対が、前記中心軸についてほぼ対称に配置され、前記中心軸に直交して前記第1のロッド対のそれぞれの中心を通る第1の軸によって二等分される、
    前記対応する第2の断面対が、前記中心軸についてほぼ対称に配置され、前記中心軸に直交して前記第2のロッド対のそれぞれの中心を通る第2の軸によって二等分される、
    前記対応する第1の断面対と前記対応する第2の断面対が前記中心軸に関する90°回転の下で実質的に非対称である、及び
    前記第1の軸と前記第2の軸が実質的に直交し前記中心軸において交差する、
    ように配位されることを特徴とする請求項11に記載の質量分析計システム。
  15. 前記第1のロッド対の各ロッドが前記中心軸に実質的に平行であり、横断寸法Dを有し、
    前記第2のロッド対の各ロッドが前記中心軸に実質的に平行であり、Dより小さい横断寸法Dを有し、
    /Dは、AがAの0.1%より大きくなるように選ばれる、
    ことを特徴とする請求項14に記載の質量分析計システム。
  16. 前記ロッド間に前記RF電場をつくるための前記電源手段が、前記第1のロッド対に第1のRF電圧を供給するための第1のRF電源手段及び前記第2のロッド対に第2のRF電圧を供給するための第2のRF電源手段を含むことを特徴とする請求項14に記載の質量分析計システム。
  17. 複数の動作モードから選択された動作モードを選択するためのモード選択手段をさらに備え、各動作モードが、複数のトラップ電圧サブモードから選ばれる選択されたトラップ電圧サブモード、複数のDC電圧サブモードから選ばれる選択されたDC電圧サブモード、及び複数の励起サブモードから選ばれる選択された励起サブモードを含むことを特徴とする請求項14に記載の質量分析計システム。
  18. 前記モード選択手段が、前記複数のトラップ電圧サブモードから前記選択されたトラップ電圧サブモードを選択するためのトラップ電圧サブモード選択手段を含み、
    前記複数のトラップ電圧サブモードが、(i)前記第1のRF電圧の振幅が前記第2のRF電圧の振幅に等しい平衡RFサブモード、(ii)前記第1のRF電圧の前記振幅が前記第2のRF電圧の前記振幅より大きい第1の不平衡RFサブモード、及び(iii)前記第1のRF電圧の前記振幅が前記第2のRF電圧の前記振幅より小さい第2の不平衡RFサブモードからなる群から選ばれる、
    ことを特徴とする請求項17に記載の質量分析計システム。
  19. 前記モード選択手段が、前記複数のDC電圧サブモードから前記選択されたDC電圧サブモードを選択するためのDC電圧サブモード選択手段を含み、
    前記複数のDC電圧サブモードが、(i)前記第2のロッド対に対して正の第1のDC電圧が前記第1のロッド対に印加される第1のDC電圧サブモード、(ii)前記第1のロッド対に対して正の第2のDC電圧が前記第2のロッド対に印加される第2のDC電圧サブモード、及び(iii)前記第1のロッド対と前記第2のロッド対の間にゼロDC電圧が印加されるゼロDC電圧サブモードからなる群から選ばれることを特徴とする請求項17に記載の質量分析計システム。
  20. 前記モード選択手段が、前記複数の励起サブモードから前記選択された励起サブモードを選択するための励起サブモード選択手段を含み、
    前記複数の励起サブモードが、(i)前記射出部材への射出補助AC電圧の供給を含む第1の励起サブモード、(ii)前記第1のロッド対間への第1の双極子励起AC電圧の供給を含む第2の励起サブモード、(iii)前記第2のロッド対間への第2の双極子励起AC電圧の供給を含む第3の励起サブモード、(iv)前記第1のロッド対と前記第2のロッド対の間への四重極励起電圧の供給を含む第4の励起サブモード、(v)前記射出部材への射出補助AC電圧の供給及び前記第1のロッド対間への前記第1の双極子励起AC電圧の供給を含む第5の励起サブモード、(vi)前記射出部材への前記射出補助AC電圧の供給及び前記第2のロッド対間への前記第2の双極子励起AC電圧の供給を含む第6の励起サブモード、(vii)前記射出部材への前記射出補助AC電圧の供給及び前記第1のロッド対と前記第2のロッド対の間への補助四重極励起AC電圧の供給を含む第7の励起サブモード、(viii)前記第1のロッド対間への前記第1の双極子励起AC電圧の供給及び前記第2のロッド対間への前記第2の双極子励起AC電圧の供給を含む第8の励起サブモード、及び(ix)前記射出部材への前記射出補助AC電圧の供給、前記第1のロッド対間への前記第1の双極子励起AC電圧の供給及び前記第2のロッド対間への前記第2の双極子励起AC電圧の供給を含む第9の励起サブモードからなる群の内の1つまたはそれより多くであるように選ばれることを特徴とする請求項17に記載の質量分析計システム。
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