本発明は、コバルト等のフィッシャー−トロプシュ金属触媒の活性強化方法に関する。
合成ガス(即ち一酸化炭素および水素)から高級炭化水素物質を製造することは、一般にフィッシャー−トロプシュ(「F−T」)プロセスとして知られ、多年に亘って商業的に用いられている。そのようなプロセスは、特定の触媒に依存する。フィッシャー−トロプシュ合成の最初の触媒は、ニッケルであった。ニッケルは依然として、脂肪および特殊化学物質を水素添加するための好ましい触媒である。何年かの間に、他の金属、特に鉄およびコバルトが、高級炭化水素のフィッシャー−トロプシュ合成において好ましいものとなった。一方、銅はアルコール合成用に選択される触媒となった。コバルトは、その高い生産性および比較的低いメタン選択性のため、フィッシャー−トロプシュ合成において特に好ましい。何年かの間にこれらの合成技術が開発されるにつれて、触媒はより高度になり、それらの触媒活性を促進するように機能する他の金属および/その金属酸化物によって強化された。助触媒金属または金属酸化物には、Ru、Os、Ir、Mo、W、Cu、Si、Cr、Ti、Mg、Mn、Zr、Hf、Al、Thなどが含まれるが、これらに限定されることを意図するものではない。一般に、フィッシャー−トロプシュ合成に用いる触媒を製作するための、特定の金属または合金の選択は、所望の生成物に大いに依存すると解される。
1924年、M.ラネー(M.Raney)は、ラネープロセスとして今日知られるプロセスによって、ニッケル水素添加触媒を調製した。本明細書においては、簡単のため、用語「ラネー」を、それによって得られるプロセス、合金および触媒を記載する総称として用いる。この特定の合成は、本質的には、少なくとも二元の金属合金を形成する工程であって、金属の少なくとも一種を抽出しうる工程;およびそれを抽出して、触媒活性を有する不溶性金属の多孔質残留物を残す工程を含む。残留(または抽出不可能な)触媒金属は、上記の当該分野で認められた金属の群である。抽出可能な金属(典型的にはアルミニウム)もまた、当該分野で認められた群である。一旦、これらの金属群それぞれの成分少なくとも一種から合金を形成してから、それらを細粉に粉砕し、水酸化ナトリウムなどの強アルカリで処理して、抽出可能な金属を、残留金属から浸出させる。
ラネー触媒の基本的な調製については、多くの変法が存在する。例えば、予め形成された担体上への、溶射による合金の沈積(特許文献1)、非浸出金属基質上へのアルミニウムの表面拡散による合金の形成(特許文献2)、粉末化合金からの、固定床反応槽で用いるためのペレットの形成(特許文献3、特許文献4および特許文献5)などである。これらの開発により、成形ラネー触媒の固定床反応槽での使用が可能になった。
フィッシャー−トロプシュ合成によって合成ガスから炭化水素を製造するのに特に適するのは、主として(即ち少なくとも約50重量%,好ましくは少なくとも80重量%)、上記のような金属の一種またはそれらの混合物からなり、更なる処理なしにフィッシャー−トロプシュ合成を触媒しうる分散活性金属(「DAM」)である。DAM触媒は、当該技術で認められた多くのプロセスのうち、いかなるものによって調製してもよい。DAM触媒形成プロセスについての広範な総説を、非特許文献1およびその引用文献に見出すことができる。そこに記載される方法には、レイク(Reike)法や、超音波、金属塩還元、コロイド、ナノスケールクラスターおよび粉体の使用が含まれる。他の関連する参考文献には、例えば、ペンタカルボニル鉄の高強度音波分解による非晶質鉄触媒の調製(非特許文献2)、およびコバルト塩のヒドラジン還元による単一ドメイン(single domain)コバルトクラスターの形成(非特許文献3)が含まれる。最後に、金属間合金、特に、金属水素化物を形成すると知られるもの(LaCo5など)は、水素の吸着/脱着サイクルを適用することによって、細粉状に成形できる。そのような触媒はまた、金属ホルメートまたはオキサレートの熱または化学分解によっても調製できる。
水素添加反応の活性を高めたDAM触媒を製造する手段は、重要な価値を有すると認められる。特に、フィッシャー−トロプシュプロセス用触媒の価値に関する重要な点は、その活性に加えて、その選択性である。この特性は通常「メタン選択性」と呼ばれ、所望の高級炭化水素に転化された原料物質(%)/生成した短鎖炭化水素(特にメタン)(%)の比率である。本発明によれば、活性および選択性を高めたDAM触媒を、簡単かつ経済的なプロセスによって、微粒子金属(例えばフィッシャー−トロプシュコバルト触媒)から製造できることが見出された。
米国特許第4,089,812号明細書
米国特許第2,583,619号明細書
米国特許第4,826,799号明細書
米国特許第4,895,994号明細書
米国特許第5,536,694号明細書
米国特許第4,492,774号明細書
米国特許第4,399,234号明細書
米国特許第4,585,789号明細書
米国特許第4,670,414号明細書
アロイス ファーストナー(Alois Furstner)編「活性金属」(VCH出版有限責任会社、ワインハイムD−69451(ドイツ連邦共和国)、1996年)
サスリック(Suslick)ら著「ネイチャー」(第353巻、第414〜416頁、1991年)
ギブソン(Gibson)ら著「サイエンス」(第267巻、第1338〜1340頁、1998年)
「アプライドキャタリシス、A.一般 175(Applied Catalysis,A.General 175)」(第113〜120頁、1998年)
本発明によれば、まず触媒金属微粒子を、酸化剤含有雰囲気中、前記金属微粒子を部分的に酸化するのに十分な条件下で焼成する方法で、フィッシャー−トロプシュ合成に関して強化された活性およびメタン選択性を有する分散活性金属触媒を製造する。前記焼成した金属微粒子を、次には、前記焼成した金属微粒子の酸化することができ、かつ水素添加触媒金属の化合物を少なくとも一種含む溶液を用いて処理する。前記処理は、前記焼成した微粒子が、その計算された細孔容積の少なくとも約10%に等しい容積の前記溶液を吸収するのに十分な条件下で行う。溶液による処理の後、前記溶液処理した金属微粒子を、好ましくは乾燥し、その後高温下に水素含有ガスで処理して活性化し、活性触媒を形成する。好ましい実施形態においては、活性化工程前に、微粒子を再度酸化剤含有雰囲気中で焼成する。
フィッシャー−トロプシュ合成化学において、第VIII族金属の表面は、高温酸化−還元(O−R)サイクルに付すと、水素添加、メタネーション、フィッシャー−トロプシュ合成などの接触反応に対して、より高い活性を示すことは周知である。そのような「活性化」技術は、非特許文献4およびその引用文献に概説されている。一連の特許文献、例えば特許文献6、特許文献7、特許文献8および特許文献9には、還元/酸化/還元(R−O−R)サイクルによるコバルト触媒の活性化が開示される。本発明者らの知る限り、文献に記載されるそのような全ての酸化/還元および還元/酸化/還元サイクルは、担持金属触媒を、酸素含有ガスを用いて高温で処理することにより実施される。上記プロセスにおいて触媒として有用な金属は、一種超の酸化物を形成する能力によって特徴付けられる。そのような金属を、O−RまたはR−O−Rプロセスのいずれかによって処理することにより、最も安定な金属酸化物が形成される。例えば、コバルトの場合、Co3O4が形成される。この理由から、O−RおよびR−O−Rプロセスは、市販触媒を活性化し、その活性を高めるのに用いられる。
上記市販触媒の処理とは対照的に、本発明は、高度に活性な選択的触媒層を、水素添加反応を触媒する(特にフィッシャー−トロプシュ合成化学において)微粒子金属上に形成することをその目的とする。
本発明の方法に従って処理する触媒金属微粒子は、コバルト、ルテニウムおよびニッケルを含む(ただしこれらに限定されない)金属からなる群から選択され、コバルトおよびルテニウムが好ましい。前記金属群のうち一種超の微粒子を基質として用いることが可能であるが、一般には、本方法には単一の金属を用いる。本方法の金属基質微粒子の粒子サイズ範囲は、その有効寸法で、一般には約0.1μm〜5mm、好ましくは約1〜50μmである。触媒金属は、ガーゼ、繊維、ウールなど種々の形態でありうる。そのような形態は、微粒子基質に関して記載されるものであるが、本発明の範囲に含まれる。しかし、本方法によって触媒活性を高めるのに、より大きな表面を利用可能であるため、粒子が好ましい。また、比較的均一な粒子サイズを有するように粒子を処理することが好ましい。本明細書で用いられる用語「有効寸法」は、基質金属の形態によって異なる。金属がワイヤーまたは回転楕円体である場合には、有効寸法はその直径であり、楕円形、ひし形または不規則な形状の場合には、有効寸法は最小厚みである。
本発明によれば、まず触媒金属微粒子を酸化剤含有雰囲気中で焼成して部分酸化することにより、金属粒子の少なくとも一部の上に酸化物の層を形成し、その多孔性を顕著に増大させる。
焼成は、典型的には、従来の加熱炉で、酸化剤含有雰囲気中で行われる。雰囲気は空気でもよいが、好ましくは、制御された量の酸素を含む不活性雰囲気である。例えば、空気分離装置からの生成物ガスストリームまたは廃ガスストリームとして製造されうるものなどである。炉内雰囲気中の酸素濃度(体積比)は約10ppm〜約21%、好ましくは0.1〜10%、最も好ましくは約1〜5%であり、残りは窒素などの不活性ガスである。炉内の流量は、約100〜10,000GHSV、好ましくは1,000〜5,000GHSVである。この処理は高温、即ち約200〜約600℃、好ましくは約250〜450℃、最も好ましくは約300〜400℃で行う。処理の圧力を高めてもよいが、実際には大気圧が好ましい。この微粒子触媒金属基質の焼成は、部分的にしか酸化されない時間だけ行う。得られる酸化物は、必ずしも最高の酸化状態の触媒金属ではない。加えて、時間、温度および酸素濃度の三つの要因を制御することによって達成される部分酸化により、完全酸化が回避され、少なくとも識別可能な量の金属形態部分が、元の基質中に存在する。層中に、金属微粒子の酸化物が単独で存在することもありうるが、一般には、一種超の酸化状態で存在可能な金属については、両方の状態の酸化物が、焼成によって形成されうる。従って、本明細書で用いられる用語「酸化物」は特に、単一物を含むことを意図している。得られる酸化物の層は、被覆のように連続的でなく、高度の多孔性を有する。従って、それを還元して、活性が高められた一種以上の分散活性金属の多孔質層を形成することができる。焼成は一般に、所望程度の酸化を達成するのに約1〜8時間、好ましくは1〜約4時間を必要とする。金属微粒子の表面上における多孔性の存在は、多孔度測定装置などの認められた技術によって確認しうる。
次いで、部分酸化した金属微粒子を、前記微粒子の金属を酸化することが可能であり、かつ水素添加反応を触媒する金属の化合物を含む溶液を用いて処理する。溶液はまた、任意に助触媒金属の化合物を含んでいてもよい。同溶液は明らかに、最終触媒を被毒する、またはそれに悪影響を及ぼす物質を一切含んではならない。
本方法に従って微粒子金属基質を処理するのに用いうる適切な化合物には、コバルト、ルテニウムおよびニッケルの化合物が含まれるが、これらに限定されることを意図するものではない。コバルトおよびルテニウムが好ましい。本方法の好ましい実施形態においては、本明細書に論じられる利点のために、稠密なコバルト金属微粒子の芯上に、コバルト含有多孔質層を形成する。微粒子金属基質を処理するのに用いうる助触媒金属には、マンガン、亜鉛、チタン、モリブデン、クロム、タングステン、レニウム、ルテニウム、パラジウムおよび白金が含まれるが、これらに限定されることを意図するものではない。活性化溶液中には、水素添加反応を触媒する金属および微粒子金属基質の助触媒金属のいずれかまたは両方が存在しうる。前記金属の適切な化合物の例には、硝酸塩、亜硝酸塩、ニトロシル化合物、過酸化物などが含まれるが、これらに限定されることを意図するものではない。本発明の方法では有機酸化剤を用いることもできるが、一般には硝酸塩などの無機酸化剤が好ましい。一般論として、活性化溶液中に存在する酸化剤や前記一種以上の金属化合物の量は、用いる溶剤中におけるそれぞれの溶解性によって決定される。活性化溶液の各カテゴリーの成分について一種超を用い、それぞれの相対的な溶解性または能力を利用することは、本発明の範囲内である。溶液の溶剤の選択は主として、添加する金属の選択した化合物(好ましくは塩)を溶解する能力による。好ましい溶剤は水であるが、これを、既知の触媒毒を一切導入せず、また処理条件で非反応性のものである限りにおいて、他の溶剤(例えばある種の有機溶剤)と組み合わせてもよい。水と水混和性有機溶剤の混合物を用いることも、水と水非混和性溶剤の混合物に、適切な分散剤または乳化剤(連続相、即ちエマルジョンを形成するために存在する)と組み合わせて用いることもできる。そのような他の適切な溶剤には、炭化水素(特に、フィッシャー−トロプシュ合成から誘導されるもの)、液相軽質炭化水素(即ち、C3〜5アルカン、シクロペンタンなど)などの超臨界流体が含まれる。好ましい混合溶剤には、水/低級アルカノール、水/フィッシャー−トロプシュ生成物および水/アルカノール/アルカンが含まれるが、これらに限定されることを意図するものではない。
活性化溶液中の金属化合物の濃度は、金属自体を基準として0.1〜20重量%でありうる。好ましくは、溶液は、水素添加反応を触媒する金属約1〜15重量%および助触媒金属約0.1〜5重量%を含む。用いる活性化溶液/触媒金属微粒子の重量比は、約0.01〜100、好ましくは約0.1〜5で変動しうる。上記のような、溶液中の添加した触媒金属が微粒子金属と同じ場合でも、上記のパーセンテージは溶液にのみ基づく。処理溶液は、典型的には、約10ppm〜20%(重量比)の酸化剤を提供するのに十分な量の溶解成分を含む。
本明細書に記載の部分酸化した金属基質微粒子の処理は、一般に、スラリー反応に適切ないかなる反応器において行ってもよい。これには固定床反応器、移動床反応器、流動床反応器、スラリー反応器、気泡床反応器などが含まれるが、これらに限定されることを意図するものではない。活性化溶液による処理は、例えば溶液の基質への滴下、溶液の基質上への噴霧、または、触媒金属微粒子の、前記微粒子の初期湿潤を達成するのに必要な量より多い量の前記溶液への添加によって実施しうる。典型的には、金属微粒子が焼成微粒子の計算された細孔容積の少なくとも約10%に等しい容積の溶液を吸収するまで、好ましくは、初期湿潤条件が達成されるまで処理を行う。初期湿潤とは、基質触媒が、その計算された細孔容積に概ね等しい量の溶液を吸収したことを意味する。細孔容積は、多孔度測定法などの既知の技術により直接または間接に測定しうる、識別可能な量である。企図される含浸溶液の容積は、触媒の計算された細孔容積の10〜1,000%で変動する。好ましくは、処理溶液の容積は、触媒微粒子の計算された細孔容積の30〜200%であり、最も好ましくはその約70〜100%である。
処理は、典型的には1分〜24時間、好ましくは約5〜60分を必要とする。処理に必要な時間は、処理される触媒金属微粒子、その量、処理溶液の組成、反応器の形態などの要因によって異なる。処理は、約100℃未満、好ましくは約50℃未満、最も好ましくは室温(即ち約20〜25℃)の温度で行う。本明細書で企図されるある種の反応、例えば硝酸塩を用いるものは、アンモニアの放出を伴う発熱性である。それらの場合には、添加速度を制御することによって得られる範囲内で、温度を制御する。或いは、溶液中の塩の濃度を、比較的低いレベルに維持することにより、温度制御を確実にする。
処理が完了すると、好ましくは、基質金属粒子を乾燥する。ある条件下、例えば、最小量の処理溶液を用いる、または先に論じたように反応が発熱性である場合には、粒子を乾燥する必要がないことがある。逆に、処理を確実にするのに十分な溶液中で処理を行う場合には、初めに粒子を、一般には物理的分離(例えばろ過または篩下)によって回収する。乾燥手順は、通常のオーブン中で、好ましくは約50〜150℃の温度で行う。ここでも不活性雰囲気を用いうるが、記載された反応を考慮すると、乾燥を空気中で行いうる。乾燥運転には、典型的には約1〜24時間を要する。乾燥運転中に、処理した金属粒子を連続的に混合することが好ましい。所望により、減圧乾燥を用いて本方法の速度を高めることは、本発明の範囲内である。
好ましい実施形態においては、処理した金属微粒子を再度焼成する。それにより、溶液から吸収された上記の金属の少なくとも一種の化合物から、更なる酸化物が層中に形成され、結果的にその多孔性が増大する。第二の焼成の条件は、触媒金属微粒子の初期の処理に関して上記した通りである。また大きすぎる凝集物が形成される場合、好ましくは、得られる微粒子を再度、上記のようにサイジングする。
金属微粒子の最初の焼成、引き続く記載した溶液によるその処理、また好ましい第二の焼成工程は、触媒金属粒子の凝集物を形成する傾向がある場合がある。従って、本発明によれば、そのような凝集物が大きくなりすぎないように、微粒子を焼成後にサイジングして、250μm超の凝集物があれば粉砕し、微粒子を、その最大寸法で少なくとも10μm、好ましくは約16〜100μmに維持することが好ましい。
次いで、本発明の含浸した金属微粒子基質の多孔質層を、水素含有ガスによる高温(即ち約200〜600℃、好ましくは約250〜400℃の温度)での還元によって、分散活性金属触媒の層に転化する。還元中の水素分圧は、約0.01〜100気圧、好ましくは約0.1〜40気圧の範囲である。本発明の方法は、元の触媒金属の活性を、生産性およびメタン選択性の両者に関して高める。
水素と一酸化炭素の混合物を含むシンガスを、シフトまたは非シフト条件(好ましくは水性ガスシフトが、殆どまたは全く生じない後者)で接触させることによって、液体およびガス状生成物を形成する、高級炭化水素を形成するための合成プロセスにおいて、本発明の方法に従って形成された触媒粒子は有用である。前記方法は、約160〜260℃の温度、約5〜約100気圧、好ましくは10〜40気圧の圧力、および約300〜約20,000V/Hr/V、好ましくは約1,000〜約15,000V/Hr/Vのガス空間速度で行う。高級炭化水素を製造するためには、水素/一酸化炭素の化学量論比は約2.1:1である。この比率は、約1:1〜4:1、好ましくは1.5:1〜2.5:1、より好ましくは1.8:1〜2.2:1で変動しうる。これらの反応条件は、工業的に周知であり、反応条件の特定の組は、本明細書に示されるパラメーターから容易に決定しうる。反応は、実質的にいかなるタイプの反応器で行ってもよい。例えば、固定床、移動床、スラリーバブルカラム、流動床などである。本方法で形成される炭化水素含有生成物は、実質的に硫黄および窒素を含まない。
上記の方法で製造される炭化水素は、典型的には、C5+炭化水素の全てまたは一部を分留および/または転化に付すことによって、より高価な生成物に品質向上される。「転化」とは、炭化水素の少なくとも一部の分子構造を変化させる一種以上の操作を意味し、これには、非接触プロセス(例えばスチーム分解)、および部分または留分が適切な触媒と接触する接触プロセス(例えば接触分解)が含まれる。水素が反応体として存在する場合には、これらのプロセス工程は、典型的には水素転化、種々には水素異性化、水素化分解、水素化脱ロウ、水素化精製などと呼ばれる。より過酷な水素化精製は、典型的には水素化と呼ばれる。これらの反応は、炭化水素原料(パラフィンリッチの炭化水素原料を含む)の水素転化に関する文献に詳しく示される条件下で行われる。そのような原料からの、これらのプロセスによるより高価な生成物についての、例証であるが限定しない例には、合成原油、液体燃料、エマルジョン、精製オレフィン、溶剤、モノマーまたはポリマー、潤滑油、医薬油、ワックス質炭化水素、種々の窒素または酸素含有生成物などが含まれる。液体燃料の例には、ガソリン、ディーゼル燃料およびジェット燃料が含まれ、潤滑油には、自動車油、ジェット油、タービン油などが含まれる。工業油には、削井流体、農業油、伝熱油などが含まれる。
本発明を実施するに際して、種々の他の実施形態および変更形態は、上記された本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に自明であり、また当業者によって容易に実施されると解される。従って、本明細書に添付された特許請求の範囲は、上記された正確な記載に限定されるものではなく、同請求はむしろ、本発明に関する当業者によってそれらの等価物として扱われる全ての特徴および実施形態を含めて、本発明に帰属する特許性のある新規性の特徴を全て包含するものとみなされる。本発明は、更に、次の実験作業を引用して記載される。
・実施例1〜11
触媒活性試験のために、次の物質を、以下に記載されるように調製した。
実施例1a:未変性の市販コバルト粉末、粒子サイズ2μm。
実施例1b:未変性の市販コバルト粉末、粒子サイズ40μm。
実施例2a:2μmのコバルト粉末を、水で初期湿潤まで処理し、60℃で乾燥した。
実施例2b:40μmのコバルト粉末を、実施例2aと同様に処理した。
実施例3a:2μmのコバルト粉末10gを、酸素1%を含む窒素中、ガス流速2,400GHSVで焼成した。温度は、2℃/分で300℃に昇温し、1時間保持した。
実施例3b:40μmのコバルト粉末10gを、実施例3aと同様に処理した。
実施例4:2μmのコバルト粉末25gを、酸素1%を含む窒素中で、ガス流速1,000GHSVで焼成した。温度は、2℃/分で250℃に昇温し、8時間保持した。
実施例5:実施例4からの試料11.01gを、溶液(過レニウム酸(54%Re)0.35g/蒸留水7.66ml)5.07gを消費して初期湿潤点まで処理した。試料を60℃で空気乾燥した。
実施例6:実施例5の粉末7gを、酸素1%を含む窒素中、ガス流速3,000GHSVで焼成した。温度は、2℃/分で300℃に昇温し、1時間保持した。
実施例7:実施例4からの試料11.01gを、溶液(過レニウム酸(54%Re)1.17g/蒸留水6.88ml)4.54gを消費して初期湿潤点まで処理した。試料を60℃で空気乾燥した。
実施例8:実施例7の粉末7gを、酸素1%を含む窒素中、ガス流速3,000GHSVで焼成した。温度は、2℃/分で300℃に昇温し、1時間保持した。
実施例9:2μmのコバルト粉末25gを、酸素5%を含む窒素中、ガス流速1,000GHSVで焼成した。温度は、1℃/分で400℃に昇温し、8時間保持した。
実施例10:実施例9からの試料11.02gを、溶液(過レニウム酸(54%Re)0.35g/蒸留水7.64ml)3.55gを消費して初期湿潤点まで処理した。試料を60℃で空気乾燥した。
実施例11:実施例9からの試料11.05gを、溶液(過レニウム酸(54%Re)1.17g/蒸留水6.82ml)4.01gを消費して初期湿潤点まで処理した。試料を60℃で空気乾燥した。
実施例12:先行する実施例で調製した試料を、次の手順により、触媒活性に関し試験した。試験は、ステンレススチール製固定床反応器中、標準条件(200℃および285psig)で行った。反応器への触媒充填量は、1.0〜1.8gであった。フィッシャー−トロプシュ反応が発熱性のため、各試料を、酸洗浄石英希釈材と、希釈材/触媒の重量比少なくとも8:1で混合した。反応器への原料は、一酸化炭素31%、水素64%および窒素5%のモル濃度を有する予混合合成ガスであった。反応器の流出物を、先ず脱圧し、次いで液体生成物を凝縮するように設計された二つのトラップを通して流した。第一トラップを125℃、第二トラップを1℃に保持した。第二トラップから流出するガス状生成物をガスクロマトグラフィによって分析して、CO転化率およびメタン選択性を決定した。CO転化率は、原料中の窒素を内部標準として用いて計算した。CO転化率の値から、炭化水素の生産性を導くことができ、これを、製造された生成物の重量/触媒の単位重量/単位時間として表す。
全ての触媒について、合成ガスを流し始める前に、純水素流中で活性化工程を行った。温度350℃を、活性化工程の標準温度として用いた。活性化中に高い水素空間速度(40,000h−1)を用いて、高分圧のスチーム(酸化コバルト前駆体が金属コバルトに転化される際に生じる)による予想される有害効果を除去した。1℃/分で100℃にゆっくり昇温することによって、活性化の手順を開始し、次いでこれを2時間保持して、試料を乾燥した。同じ速度で温度を350℃に再度昇温し、3時間保持した。
活性化後、水素を流しながら反応器を180℃に冷却した。温度が180℃で安定化したら、圧力を反応圧に昇圧し、原料を合成ガスに切り替えた。触媒物質の合成ガスへの初期暴露を、低温で、少なくとも6,000h−1の高い空間速度を用いて行って、初期の水素リッチ環境における触媒に対する有害効果を防止した。180℃で約30分後(これによりいくらかのワックスを触媒の細孔内に形成させ、合成ガス原料のそれに類似の定常適な水素/一酸化炭素比を達成する)に、温度を1℃/3分で190℃に昇温し、次いで75分間保持した。この間、200℃における予想転化率約50〜60%を達成するように、シンガスの流量を調整した。次いで、温度を1℃/3分で200℃に昇温し、実験の残りの間保持した。この温度が達成されたら、流速を、必要に応じて所望のCO転化率約50〜60%を達成するように調整した。シンガスを最初に系中に入れた後、標準通油時間5時間に、触媒の生産性(製造された炭化水素g/触媒kg/時間(ghc/kgcat/h)で測定される)およびメタン選択性が報告された。結果を表1に示す。n.m.と示される値は、いずれも測定不可であった。
表1に報告された結果から、より細かな未処理コバルト粉末のみでも測定可能な応答を示すが、生産性が低く、メタン選択性も高いことが分かる。水で含浸された粉末は、より小さな粒子がより大きなものより優れるものの、低い生産性を有した。より小さな焼成コバルト粒子は、より高い生産性を有したが、より大きな粒子は、測定可能な活性を全く示さなかった。実施例4は、より小さな粒子を、実施例3aより低い温度で焼成することにより、触媒の生産性が低下することを示す。一方実施例9は、より高い温度で焼成することにより、生産性の中度の増大がもたらされることを示す。2μmのコバルト粒子を先ず焼成し、続いて実施例5と同様に助触媒溶液で含浸することにより、実施例4で形成されたもの(助触媒を含浸させていない)に比較して、活性が上昇し、メタン選択性が低下した。実施例7の粒子(実施例5より高濃度のレニウムを含浸)は、それを超える実質的な向上を示し、また実施例4を超える向上を示した。レニウム助触媒濃度および焼成温度の上昇により、より高い生産性およびメタン選択性が得られた。実施例10および11で形成された物質は、他の点では同じ条件下で、助触媒の濃度を増大することの好都合な効果を示す。種々の実施例で調製された試料の活性を表1に示す。
実施例1aおよび1bによって証拠付けられるように、未処理のコバルト粉末は、フィッシャー−トロプシュ反応に対して、非常に低い活性を有する。微粒子表面を更に活性化することが必要であることが明らかである。粒子サイズの差の効果は、数組の触媒を比較することによって示される。実施例1aと1b、2aと2bおよび3aと3bである。いずれの場合も、より小さな粒子サイズを有する触媒は、より大きな粒子サイズを有するものより、大きな触媒活性/単位重量を示す。
コバルト粒子を純水で含浸することは、認めうるほどには、触媒活性に影響を及ぼさない。これは、実施例2a(水で含浸)と実施例1a(水で含浸せず)の触媒性能が類似していることから分かる。同様の比較は、より大きな粒子の実施例2bと1bの間でもなしうる。コバルト粉末を焼成することにより、未処理のコバルト粉末と比較して、触媒活性が高められる。この向上は、実施例3a(300℃で焼成した2μmのコバルト粒子)を実施例1a(同じサイズの未焼成粒子)と比較することにより容易に理解しうる。
金属微粒子を焼成することによる活性化効果は、比較的温和な条件でも見られる。温和な条件で焼成した粉末(酸素1%の雰囲気中、それぞれ300℃および250℃で焼成された実施例3aおよび4など)は、類似の触媒活性を有する。これは、未処理の粉末のそれより明らかに高い。実施例9で用いたより苛酷な処理(400℃、酸素5%)では、より多大な酸化にも係わらず、ごく僅かに高い活性を有する触媒粒子が得られた。これは、大多数の触媒点が粒子の表面上に位置すること、また粒子を活性化し、その性能を向上するには、温和な焼成で十分であることを示す。
試験したコバルト粉末の触媒活性の更なる向上は、焼成による初めの活性化の後に、レニウムなどの助触媒を組み込むことによって達成される。助触媒の好都合な効果は、実施例4(助触媒なし)、実施例5(低レベルのRe)および実施例7(高レベルのRe)を比較することによって分かる。初めにコバルト粉末を、温和な条件での制御された酸化によって活性化したか、より苛酷な条件で活性化したかによらず、助触媒の添加から得られる強化が観察される。実施例9、10および11は、全て初めに400℃で焼成したが、これは、レニウムのレベルを増大することにより、触媒活性のかなりの増大が得られたことを示す。
触媒活性の更なる向上は、触媒を単に乾燥するよりむしろ、それをレニウム助触媒で含浸した後焼成することによって実現される。従って、コバルト粉末の活性化のための最適化された予備処理シーケンスには、初めの焼成、それに続くレニウム含浸および第二の焼成が含まれる。次いで上記のように、触媒を水素中で還元する。助触媒を組み込んだ後の第二の焼成工程の利点は、実施例6および8(第二の焼成を経た)を、実施例5および7(単に乾燥した)と比較することによって分かる。表1に報告された結果は明らかに、本発明の方法、およびそれにより製造した、優れた触媒の利点を示す。