JP2006516141A - 抗高脂血症剤および抗高血圧剤としてのリポキシゲナーゼ阻害剤 - Google Patents

抗高脂血症剤および抗高血圧剤としてのリポキシゲナーゼ阻害剤 Download PDF

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Abstract

本発明は、高血清トリグリセリドまたは高血圧を有するヒト被験者に、高血清トリグリセリドまたは高血圧を低下させる上で十分な有効量の5−リポキシゲナーゼ阻害剤を含む製薬組成物の有効量を投与することによる、高血清トリグリセリドまたは高血圧を治療する方法であって、前記5−リポキシゲナーゼ阻害剤が、NDGAまたはクルクミンではない方法を提供する。

Description

発明の分野
本発明は、リポキシゲナーゼ(LO)阻害化合物を投与することにより、ヒトの高脂血、高血清トリグリセリド、および/または高血圧を低下させる薬学的方法を提供する。
関連技術
NDGA(ノルジヒドログアイアレチン酸またはCAS#500−38−9)は、リポキシゲナーゼ阻害およびチロシンキナーゼ阻害など、複数の生物学的特性を示す化合物である。この化合物は、インビボ動物モデルにおいて、脂質低下特性および抗高血圧特性を実証している(マヤ(Maya)ら、Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.、279:p.E593−600(2000);スクリブナー(Scribner)ら、Metabolism、49:9、p.1106−1110(2000))。脂質低下特性および抗高血圧特性は、NDGAのリポキシゲナーゼ特性に帰せられるものではない。実際、この研究の著者らは、これらの生物学的効果の原因は、幾つかの他の生物学的特性にあり得ることを示唆している。
NDGAは、以下の構造を有する。
クルクミン(CAS # 458−37−7)は、リポキシゲナーゼ阻害を含む複数の生物学的特性を示す化合物である。この化合物は、インビボ糖尿病ラットモデルにおいて、脂質低下特性を実証しているが、この生物活性の基礎は説明されていない(バブ(Babu)ら、Mol.Cell.Biochem.、166(1−2):p.169−175(1997))。
クルクミンは、以下の構造を有する。
NDGAとクルクミンは、双方とも、生物学的利用能が乏しく、したがって禁止的(場合によっては、毒性となり得る)濃度で投与されなければならない。
ナドラー(Nadler)ら(米国特許第6,191,169号明細書)は、アテローム硬化症、乳癌、自己免疫、炎症性疾患、糖尿病性血管疾患、および糖尿病性腎疾患およびインスリン抵抗性などの疾患の病因における12−LOの役割を記載している。本特許では、リポキシゲナーゼ阻害剤の脂質低下特性または抗高血圧特性は記載していない。
ダス(Das)(Exp.Biol.Med.、227(11):p.989−997(2002))は、代謝性症候群と慢性的低段階炎症との間の関連を仮説として挙げている。炎症性サイトカインTNFアルファを、肥満および糖尿病と関連づけている報告は多数ある。
ハン(Han)ら(Diabetes Care、25(11):p.2016−2021(2002))および他は、炎症性マーカーと糖尿病および/または糖尿病性合併症、および心血管性疾患との関連を実証している。
さらに、高フルクトース給餌により、脂質代謝の食物由来の変化および肝臓のピルビン酸デヒドロゲナーゼの変化(パーク(Park)ら、Biochem.J.、282:p.753−757(1992))と、肝臓のVLDL分泌の変化(ザバロニ(Zavaroni)ら、Metabolism、31:p.1077−1083(1982))を伴うインスリン感受性の低下が生じる。また、炎症性サイトカイン類は、肝臓分泌の増加および/またはVLDLのクリアランス遅延化を介して、脂質代謝、特に血清トリグリセリドの劇的変化も誘導する(フェインゴールド(Feingold)ら、Z.Ernhrungswiss 37:p.66−74(1998))。
1967年の高フルクトースのトウモロコシ甘味料導入以来、フルクトースの消費量は、着実に上昇を続け、現在米国における毎日のカロリー摂取量の約9%を占めている。全身にわたって、組織により広く利用されているグルコースとは異なり、フルクトースは主に肝臓で代謝される(ホールフリッシュ(Hallfrisch)ら、FASEB J.、4:p.2652−2660(1990);バントル(Bantle)ら、Am.J.Clin.Nutr.、72:p.1128−1134(2000))。
高フルクトース給餌(HFF)食は、十分に特性化された代謝機能不全を誘導し、典型的には、2週間以内に急速な血清トリグリセリドの上昇と、それに応じた血圧上昇をもたらす。長期、この食事を維持した動物は、遊離脂肪酸の上昇と、血糖コントロールを失う高インスリン血症を発現する。この代謝モデルにおいて、循環脂質濃度を低下させ、インスリン感受性を高めるか、またはTNFα産生を阻害する化合物は、血清トリグリセリドを減少させ、血圧を改善する(井上ら、Metabolism、44:p.1626−1630(1995);マンガログルー(Mangaloglu)ら、Metabolism、51:p.409−418(2000))。さらに、動物を運動療法に供すると、この食餌誘導効果を改善させることができる(ザバロニ(Zavaroni)ら、Metabolism、31:p.1077−1083(1982))。このように、この動物モデルは、身体的不活性と食事との組合わせによって心血管疾患および代謝性合併症が生じる代謝性症候群(すなわち「X症候群」)早期の多くの特徴を示している。
したがって、一定の抗炎症性化合物の使用により、代謝性症候群、糖尿病または関連する代謝性疾患の治療に有用であることが証明できると思われる。また、このような化合物は、疾病の悪化予防または合併症の発現予防にも有用であり得る。当業界には、多数の抗炎症性「標的」がある。当業界では、高脂血症または高血圧の治療に有用と考えられる抗炎症剤の1つの特定クラスとしての5−リポキシゲナーゼ阻害剤の使用が教示されていない。また、これら化合物の多くで経口的生物学的利用能が低いことから、5−リポキシゲナーゼ阻害剤のインビボ使用には、長年続いている問題がある(バタチェルジー(Bhattacherjee)ら、Ann.New York Acad.Sci.、p.307−320(1988))。脂質低下療法および高血圧療法の長期にわたる性質により、使用の容易さおよび患者のコンプライアンスを確保するために、前記化合物が簡便な経路、好ましくは経口で投与されることへの強い必要性が存在している。
したがって、経口的に利用できる抗炎症剤を用いて、血清脂質をコントロールし、血圧をコントロールする新規な手段に対する必要性が存在している。この必要性および他の必要性は、5−リポキシゲナーゼ阻害剤の治療的有効量投与を含んでなる、高脂血症を患っている被験者を治療する方法を記載している本発明において提供される。
発明の概要
本発明は、5−リポキシゲナーゼ阻害剤を含む製薬組成物の有効量を、高血清トリグリセリドまたは高血圧を有するヒト被験者に投与することを含む、高血清トリグリセリドまたは高血圧を治療する方法であって、前記量が、前記高血清トリグリセリドを減少させる上で十分であり、前記5−リポキシゲナーゼ阻害剤が、NDGAまたはクルクミンではない方法を提供する。
本発明は、アセトヒドロキサム酸誘導体、フェニルピラゾリン誘導体、2−(12−ヒドロキシドデカ−5,10−ジイニル)−3,5,6−トリメチル−1,4−ベンゾキノン誘導体、および3−[1−(4−クロロベンジル)−3−t−ブチル−チオ−5−イソプロピルインドール−2−イル]−2,2−ジメチルプロパン酸誘導体からなる群から選択される、5−リポキシゲナーゼ阻害剤を含む製薬組成物の有効量を、高血清トリグリセリドまたは高血圧を有するヒト被験者に投与することを含む、高血清トリグリセリドまたは高血圧を治療する方法を提供する。
また、本発明は、4,5−ジヒドロ−1−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−ピラゾール−3−アミン(BW 755c)を含む製薬組成物の有効量を、高血清トリグリセリドまたは高血圧を有するヒト被験者に投与することを含む、高血清トリグリセリドまたは高血圧を治療する方法であって、前記量が、前記高血清トリグリセリドを減少させる上で十分である方法を提供する。
さらに、本発明は、N−(3−フェノキシシンナミル)アセトヒドロキサム酸(BW 4AC)を含む製薬組成物の有効量を、高血清トリグリセリドまたは高血圧を有するヒト被験者に投与することを含む、高血清トリグリセリドまたは高血圧を治療する方法であって、前記量が、前記高血清トリグリセリドを減少させる上で十分である方法を提供する。
さらにまた、本発明は、2−(12−ヒドロキシドデカ−5,10−ジイニル)−3,5,6−トリメチル−1,4−ベンゾキノン(AA861)を含む製薬組成物の有効量を、高血清トリグリセリドまたは高血圧を有するヒト被験者に投与することを含む、高血清トリグリセリドまたは高血圧を治療する方法であって、前記量が、前記高血清トリグリセリドを減少させる上で十分である方法を提供する。
またさらに、本発明は、3−[1−(4−クロロベンジル)−3−t−ブチル−チオ−5−イソプロピルインドール−2−イル]−2,2−ジメチルプロパン酸(MK886)を含む製薬組成物の有効量を、高血清トリグリセリドまたは高血圧を有するヒト被験者に投与することを含む、高血清トリグリセリドまたは高血圧を治療する方法であって、前記量が、前記高血清トリグリセリドを減少させる上で十分である方法を提供する。
定義
本明細書に用いる用語「5−リポキシゲナーゼ阻害剤」とは、アラキドン酸の代謝経路を妨害する化合物をいう。リポキシゲナーゼは、アラキドン酸の酸素化を触媒する酵素のファミリーである。酵素、5−リポキシゲナーゼは、アラキドン酸を5−ヒドロキシペルオキシエイコサテトラエン酸(5−HPETE)に変換する。これは、5−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(5−HETE)および重要な伝達物質のクラスであるロイコトリエン類(LT)を産生する代謝経路の第1段階である。このような化合物は、種々の機構によって、酵素活性を阻害し得る。たとえば、前記阻害剤は、酵素と膜との会合を遮断または反転できるか、または5−リポキシゲナーゼなどの特定の酵素の転位を、5−リポキシゲナーゼ活性化蛋白質(FLAP)などの蛋白質を介して阻害できる。あるいは、本明細書に記載された方法において使用される阻害剤は、酵素の基質として働くことにより、または必要な補因子の酵素を奪うことによって、酵素活性を直接妨害できる。
用語「高血清トリグリセリド」とは、正常範囲を超え、および個体の健康に危険を引き起し得る濃度の血清トリグリセリドをいう。ヒトにおいては、総血清トリグリセリド濃度が150mg/dL超の場合に、トリグリセリドが「高い」と考えられる。
本明細書に用いられる用語「同時に」とは、双方の有効成分を含む単独組成物の投与、または被験者が双方の有効剤の組合わせの利益を受ける時間枠内に投与される2種の有効剤を含む個別の組成物の投与のいずれかをいう。このように被験者は、5−リポキシゲナーゼ阻害剤を服用してから抗糖尿病化合物、脂質低下薬、または抗高血圧化合物を服用でき、あるいはその逆もあり得る。
用語「脂質低下薬」とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼ阻害剤である化合物のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤をいう。HMG−CoAレダクターゼに対して阻害活性を有する化合物は、当業界に周知のアッセイを用いて容易に確認できる。たとえば、米国特許第4,231,938号明細書およびPCT公開国際公開第84/02131号パンフレットに記載され、引用されているアッセイを参照されたい。使用し得るHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の例としては、限定はしないが、ロバスタチン(NIEVACORO;米国特許第4,231,938号明細書;米国特許第4,294,926号明細書;米国特許第4,319,039号明細書を参照)、シルンバスタチン(ZOCORO;米国特許第4,444,784号明細書;米国特許第4,820,850号明細書;米国特許第4,916,239号明細書を参照)、プラバスタチン(PRAVACHOLO;米国特許第4,346,227号明細書;米国特許第4,537,859号明細書;米国特許第4,410,629号明細書;米国特許第5,030,447号明細書;米国特許第5,180,589号明細書を参照)、フルバスタチン(LESCORO;米国特許第5,354,772号明細書;米国特許第4,911,165号明細書;米国特許第4,929,437号明細書;米国特許第5,189,164号明細書;米国特許第5,118,853号明細書;米国特許第5,290,946号明細書;米国特許第5,356,896号明細書を参照)、アトルバスタチン(LIPITORO;米国特許第5,273,995号明細書;米国特許第4,681,893号明細書;米国特許第5,489,691号明細書;米国特許第5,342,952号明細書を参照)およびセリバスタチン(ニバスタチンおよびBAYCHOLOとしても知られている;米国特許第5,177,080号明細書を参照)が挙げられる。本明細書に用いられる用語のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、HMG−CoAレダクターゼ阻害活性を有する化合物の全ての製薬上許容できるラクトンおよび開放酸形態(すなわち、ラクトン環が開放して遊離酸を形成している)、ならびに塩およびエステル形態を含む。したがって、そのような塩、エステル、開放酸およびラクトン形態の使用は本発明の範囲内に含まれる。
略号は以下のとおりである。HFF(高フルクトース給餌食);TG(トリグリセリド);NDGA(ノルジヒドログアイアレチン酸);BW 755c(4,5−ジヒドロ−1−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−ピラゾール−3−アミン);LO(リポキシゲナーゼ)。
本発明の方法は、高脂血または高血圧の予防および治療における5−リポキシゲナーゼ阻害剤またはその誘導体の使用に関する。当業界に周知の多数の5−リポキシゲナーゼ阻害剤があり、前記化合物を製造および試験する方法は周知である。
一の実施形態において、5−リポキシゲナーゼ阻害剤は、N−(3−フェノキシシンナミル)アセトヒドロキサム酸(米国特許第4,738,986号明細書を参照)などのアセトヒドロキサム酸誘導体である。この化合物はまた、BW 4ACまたはCAS# 106328−57−8としても公知である。
本明細書に用いられるBW 4ACは、構造:

を有する。
一の実施形態において、5−リポキシゲナーゼ阻害剤は、4,5−ジヒドロ−1−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−ピラゾール−3−アミン(ラドマーク(Radmark)ら、FEBS Lett.、110:p.213(1980))などのフェニルピラゾリン誘導体である。この化合物は、BW 755cまたはCAS#−66000−40−6としても公知である。
本明細書に用いられるBW 755cは、構造:

を有する。
一の実施形態において、5−リポキシゲナーゼ阻害剤は、2−(12−ヒドロキシドデカ−5,10−ジイニル)−3,5,6−トリメチル−1,4−ベンゾキノン(AA861)またはその誘導体(ヨシモト(Yoshimoto)ら、Biochemical Biophysica ACTA、713:p.470−473(1982);アシダ(Ashida)ら、Prostoglandins、26(6):p.955(1993))である。AA861は、米国特許第4,393,075号明細書に開示されている。
一の実施形態において、5−リポキシゲナーゼ阻害剤は、CAS 118414−82−7としても同定されている3−[1−(4−クロロベンジル)−3−t−ブチル−チオ−5−イソプロピルインドール−2−イル]−2,2−ジメチルプロパン酸(MK886)であり、またはその誘導体である(ジラード(Gillard)ら、Can.J.Physiol.Pharmacol.、67:p.456−464(1989);ルーザー(Rouzer)ら、Journal of Biological Chemistry、265:p.1436−1442(1990);米国特許第5,081,138号明細書)。MK886の誘導体もまた、本発明に包含されることが意図されている。本発明に包含されることが意図されているMK886の誘導体としては、限定はしないが、L−669,572(3−[1−(p−クロロベンジル)−5−イソプロピル−3−シクロ−プロピルメチルチオインドール−2−イル]−2,2−ジメチルプロパン酸);L−663,511(3−[1−(p−クロロベンジル)−5−イソプロピル−3−フェニルスルホニルインドール−2−イル)−2,2−ジメチルプロパン酸);L−665,210(3−[1−(p−クロロベンジル)−5−イソプロピル−3−フェニルスルホニルインドール−2−イル)−2,2−ジメチルプロパン酸);L−654−639(3−[1−(p−クロロベンジル)−5−メトキシ−3−メチルインドール−2−イル]−2,2−ジメチルプロパン酸);および参照として本明細書に組み入れているL−668,017(ルーザー(Rouzer)ら、Journal of Biological Chemistry、265;p.1436−1442(1990)参照)が挙げられる。好ましい実施形態において、MK886誘導体は、3−(1−(4−クロロベンジル)−3−(1−ブチル−チオ)−5−(キノリン−2−イル−メトキシ)−インドール−2−イル)−2,2−ジメチルプロパン酸)(MK−591)(タガリ(Tagari)ら、Agents Action、40:p.62−71(1993))である。
本明細書に用いられるMK886は構造:

を有する。
所望の場合、有効成分の1日の有効用量は、1日の間に適切な間隔で別個に、任意に単位用量形態で、1、2、3、4、5、6またはそれ以上のサブ用量として投与し得る。
併用療法
また、本発明は、5−リポキシゲナーゼ阻害剤および少なくとも第2の化合物の投与を含む、高脂血および高血圧を治療する方法を提供する。第2の化合物は、抗糖尿病薬、脂質低下薬または抗高血圧化合物である。抗糖尿病薬としては、メトホルミン、スルホニル尿素剤、PPARアゴニストなどが挙げられる。脂質低下化合物としては、HMG−CoA阻害剤およびベザフィブラート類が挙げられる。5−リポキシゲナーゼ阻害剤と第2の化合物とが同時用法で投与される前記併用療法を実施することが好ましい。
高フルクトース給餌(HFF)動物は、フルクトース代謝の負荷による肝臓ストレスによって脂質代謝の変化を示すと本発明者らは仮定した。さらに、フルクトースは、解糖の2つの調節段階、グルコキナーゼとホスホフルクトキナーゼを回避し、したがって、解糖中間体の調節されない蓄積を提供する可能性がある。したがって、長期にわたる高濃度フルクトース代謝がストレス経路の活性化に至るかどうかを決定するために、試験を実施した。
肥満と脂肪酸誘導インスリン抵抗性は、前記経路の活動を介して、糖尿病の進行に寄与すると考えられる(ユアン(Yuan)ら、サイエンス(Science)、293:p.673−1677(2001);ジョンカーズ(Jonkers)ら、Am.J.Med.、112:p.275−280(2002))。TNFαは長い間、リポリーシスおよびインスリン抵抗性を誘導することが認められていたが、これが生じる正確な機構は、十分解明されていなかった(ベントレ(Ventre)ら、Diabetes、46:p.1526−1531(1997);ユイサル(Uysal)ら、ネイチャー(Nature)、389:p.610−614(1997);メモン(Memon)ら、Endocrinology、132:p.2246−2253(1993))。最近、食餌に誘導された肥満とc−Jun−N−末端キナーゼ(JNK)活性との間の関連が証明された(ヒロスミ(Hirosumi)ら、ネイチャー(Nature)、420:p.333−336(2002))。JNKは、TNKαによるか、またはROSを生成するRac→シトゾルのホスホリパーゼA2→アラキドン酸(arachadonic acid)経路を介した高血糖誘導酸化的ストレスの結果、生成する反応性酸素中間体(ROS)によって活性化し得る(グーハ(Guha)ら、J.Biol.Chem.、275:p.17728−17739(2000))。アラキドン酸の代謝によって、ストレス経路シグナル伝達におけるリポキシゲナーゼの役割が示唆される。フルクトースを給餌された動物は、PPARα濃度の減少およびそれに応じたベータ酸化の減少を示す(ナガイ(Nagai)ら、Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.、282:p.E1180−E1190(2002))。このように、リポキシゲナーゼ産物を含む生体異物の代謝が損なわれる可能性が高く、そのことによって、生体異物の蓄積が生じ得る。
この仮定を扱うために、HFFラットの代謝状態および肝臓状態に及ぼすリポキシゲナーゼ阻害剤の効果を試験した。このモデルにおいて、以前効果を実証したNDGA(スクリブナー(Scribner)ら、Metabolism、49:p.1106−1110(2000))は、他の多数の生物学的効果も示すため、2種の構造的に異なるLO阻害剤を調べた。その効果が、そのLO阻害剤活性に関連していないかも知れないとする解釈を、それによってできるだけ小さくした。フルクトースは、TNFα急性段階応答の一部によく似た肝臓のストレス応答を誘導することが示される。この応答は、明白な高血糖、肥満または顕著な高脂肪酸なしで生じ、他の代謝的誘因が、代謝機能不全をもたらす炎症経路を誘導し得ることが示唆される。
高フルクトース食における脂質調節不全の機構が、ストレス応答経路によって誘導されるかどうかを決定するために試験を実施した。高トリグリセリド血症を確立するため、動物に高フルトース食を14日間与え、次いで食餌と同時にリポキシゲナーゼ阻害剤で4日間処置した。薬物処置終了時に動物を2つの群に分け、LPSまたは媒体で処置した。血清サンプルを、処置前と処置後に採取し、肝組織を試験終了時に得た。血清サンプルは、代謝パラメータに関して試験し、組織サンプルは、代謝応答およびストレス応答に関して試験した。本発明者らの結果により、フルクトース給餌ラットは、JNK経路に変化を有し、それに応じた高AP−1活性を有し、これは炎症応答に一致することが示される。リポキシゲナーゼ阻害剤による処置は、高トリグリセリド血症を逆転させ、AP−1活性も減少させるため、このモデルにおける脂質調節不全の基礎は、肝臓における炎症性経路の活性化によることが示唆される。
本発明の製薬剤形
これらの製薬組成物は、投与方法、投与スケジュール、および実践者に公知の他の因子を考慮し、良好な薬物治療実践に合致した様式で製剤化され、投薬される。本発明の目的のための各有効剤の「製薬的有効量」は、このような考慮の観点から決定される。当業者は、特定の哺乳動物患者に関する各有効剤の適切な「有効量」を経験的に容易に決定できる。
医療使用で治療効果を達成するために、ある化合物または製薬的に許容できるその塩(以下、有効成分と言う)の必要とされる量は、もちろん、具体的な化合物、投与経路ならびに治療する哺乳動物の双方によって変化する。1頭の哺乳動物に対するある化合物または製薬的に許容できるその塩の好適な用量は、体重1キログラム当たり、0.1μg〜500mgの基剤である。経口投与の場合、用量は体重1キログラム当たり0.5mgから500mgの範囲の基剤であり得、好ましくは体重1キログラム当たり約1mgから約250mgの基剤、最も好ましくは体重1キログラム当たり約5mgから約150mgの基剤であり得る。
本明細書に用いられる語句「製薬的に許容できる」とは、正しい医学的判断内で妥当な利益/危険性比に相応し、過度の毒性、刺激、アレルギー応答または他の問題または合併症のないヒトおよび動物の組織と接触する使用に好適な化合物、材料、組成物、および/または投与形態を言うことが意図されている。
本明細書に用いられる「製薬的に許容できる担体」は、本発明組成物の有効剤を、ある器官、または身体の一部から、他の器官または身体の部分へと運搬または輸送することに関与している液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材などの製薬的に許容できる材料、組成物または媒体である。各担体が、製剤の他の成分と適合性であり、患者に有害ではないという点で、「許容できる」ものでなければならない。
製薬的に許容できる担体として働き得る物質の例としては、限定はしないが、以下のものが挙げられる。(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;(2)トウモロコシ澱粉およびジャガイモ澱粉などの澱粉;(3)セルロース、およびナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロース誘導体;(4)粉末トラガカントゴム;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバターおよび支持ワックス類などの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油などの油類;(10)プロピレングリコールなどのグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール類;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル類;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質のない水;(17)等張性生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;および(21)製薬製剤に用いられる他の非毒性適合物質。
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤および潤滑剤ならびに着色剤、遊離剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤および香料、防腐剤および抗酸化剤もまた、本発明の製薬組成物中に存在できる。
本発明の製剤としては、経口、経鼻、局所(頬側、舌下など)、経直腸、経膣および/または非経口投与に好適なものが挙げられる。前記製剤は、単位用量形態において利便性よく提供でき、また、製薬業界において周知の任意の方法によって調製できる。単一用量形態を製造するために担体材料と組合わせできる有効成分量は、治療されている宿主および具体的な投与様式に依って変わる。単一用量形態を製造するために担体材料と組合わせできる有効成分量は、一般に、共に所望の治療効果を生み出す各有効成分量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、約0.01パーセントから約99パーセントの範囲の有効成分であり、好ましくは、約0.1パーセントから約90パーセント、最も好ましくは、約1パーセントから約90パーセントである。
一般に、前記製剤は、有効成分を均一に密に、液体担体または微細分割固体担体、または双方と会合させてから、必要ならば製品を形状化することによって調製される。
経口投与に好適な本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、舐剤(風味基剤、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントゴムを用いて)、散剤、顆粒剤の形態で、または水性もしくは非水性液体中の液剤または懸濁剤として、または水中油もしくは油中水の液体乳剤として、またはエリキシル剤またはシロップ剤として、または香錠(ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性基剤を用いて)および/または洗口剤などとしての形態であり得、各々が、各有効成分の予め決められた量を含有する。本発明の組成物の有効成分は、ボーラス、口内溶解薬またはペースト剤としても投与できる。
経口投与のための本発明の固体投与形態(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖剤、散剤、顆粒剤など)において、有効成分は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムの1つ以上の製薬的に許容できる担体など、および/または以下のうちのいずれかと混合する。(1)澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアラビアゴムなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ澱粉またはタピオカ澱粉、アルギン酸、一定のケイ酸塩および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物などの潤滑剤;および(10)着色剤。
カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、製薬組成物は、緩衝剤もまた含む。同様のタイプの固体組成物もまた、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、ソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル剤の充填剤として使用できる。
これらの組成物は、任意に乳白剤もまた含むことができ、また、胃腸管のある一定部分でのみ、またはそこに優先的に、任意に遅延様式で、有効成分を放出する組成物であり得る。使用できる埋め込み組成物の例としては、ポリマー物質およびワックス類が挙げられる。また、有効成分は、適切ならば、1種以上の上記賦形剤と共に、ミクロカプセル化形態においてもあり得る。
本発明の組成物の経口投与用液体投与形態としては、製薬的に許容できる乳剤、ミクロ乳剤、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。有効成分に加えて、液体投与形態は、たとえば、水または他の溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルおよびそれらの混合物などの溶解補助剤および乳化剤などの当業界で一般に用いられる不活性希釈剤も含み得る。
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、風味剤、着色剤、香料および防腐剤などのアジュバンドもまた含み得る。
懸濁剤は、有効成分に加えて、たとえば、エトキシル化イソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル類、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天−寒天およびトラガカントゴムおよびそれらの混合物などの懸濁化剤を含有し得る。
本発明の第2の製薬投与形態は、口腔前庭を経ての肺投与に適したものである。好ましくは、前記組成物は、有効成分を含有する0.5μから7μ、最も好ましくは1μから6μの直径を有する粒子であって、患者の肺内へ送達される。このような組成物は、投与用に便利よくパウダー吸入装置または、例えば、密封容器内の自己推進エアロゾル組成物として、自己推進パウダー分配容器からのドライパウダーの形態にあり、前記パウダーは、粒子の有効成分を含有し、少なくとも98重量%が、0.5μ超の直径を有し、少なくとも95%の数が7μ未満の直径を有する粒子を含むことが好ましい。最も好ましくは、少なくとも粒子の95重量%が1μ超の直径を有し、かつ少なくとも90%の数の粒子が、6μ未満の直径を有する。
ドライパウダーの形態の組成物は、砂糖などの固体微粉末希釈剤を含むことが好ましく、例えば、ゼラチンの突き刺し可能なカプセルにおいて便利よく提供される。
本発明の自己推進組成物は、パウダー分配組成物または、溶液もしくは懸濁液の小滴の形態において有効成分を分配する組成物のいずれかであり得る。自己推進パウダー分配組成物は、大気圧で65°F未満の沸点を有する液体推進剤を含む。一般に、前記推進剤は、前記組成物の50%w/wから99.9%w/wを占めることができ、有効成分は、前記組成物の0.1%w/wから20%w/w、たとえば、前記組成物の約2%w/wを占めることができる。そのような組成物における担体は、他の構成要素、特に、液体非イオン性もしくは固体アニオン性界面活性剤、または固体希釈剤(好ましくは、有効成分の粒子と同じ位数の粒子サイズを有する)あるいは双方を含み得る。前記界面活性剤は、前記組成物の0.01%w/wから20%w/wまでを占めることができるが、前記組成物の1%%w/w未満を占めることが好ましい。
溶液中に有効成分が存在する自己推進組成物は、有効成分、推進剤および共溶媒を含み、さらに抗酸化安定剤を含むことが有利である。共溶媒は、前記組成物の5%w/wから40%w/wを占めることができるが、前記組成物の20%w/w未満を占めることが好ましい。
以下の実施例は、本発明の方法および組成物を例示するものであって、限定するものではない。化学物質の酵素製造において通常遭遇し、当業者にとって明白である種々の条件およびパラメータの他の好適な変更および適合は、本発明の精神および範囲内にある。
実施例1
高トリグリセリド血症および高血圧の動物モデルにおける5−LO阻害剤のインビボ
有効性
動物および処置
体重175〜200gのオスのSprague−Dawleyラットをこれらの試験に用いた。体重175〜200gのラットを用いた。ラットを先ず約1週間まで固形飼料食で維持してから、4群(各群に7〜8匹)に分けた。3群は、総カロリーの60%をフルクトースとして提供する高フルクトース食(ハーラン・テクラド(Harlan Teklad)、ウィスコンシン州マジソン(Madison,WI)所在)に切り換えた。4番目の群は、全体的対照群として供するために通常の固形飼料で維持した。高フルクトース食での14日後、総血漿TG濃度の測定によると、高トリグリセリド血症の程度が上昇した。処置0日目に血清TG、グルコース、インスリンおよびFFAのベースライン測定値のため、尾部静脈血を採取した。次に4群のラットを、媒体(0.5%カルボキシメチルセルロース)、250mg/k体重用量のNDGAまたは100mg/kg体重用量のBW 755cのいずれかで処置した。全ラットが、1日2回、5日間(1日目〜5日目)、経口胃管による送達で投与された。処置5日目(経口投与のおよそ3時間後)、血清TG、グルコース、インスリンおよびFFAを測定するため、静脈血を採取した。処置期間中、ラットをそれらの処方食にて維持した。体重を0日目と5日目に測定した。
シグマ(Sigma)診断キット(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO)所在)を用いる酵素的熱量測定法によって、TGおよびグルコース濃度を測定するために血清サンプルを用いた。血清インスリン濃度は、リンコラット・インスリン(Linco Rat Insulin)RIAキット(ミズーリ州セントチャールズ(St.Charles,MO)所在)を用いるRIAによるものであった。FFA濃度は、ACS−ACOD法により、非エステル化脂肪酸(NEFA)Cキットを用い、製造元の取り扱い説明書に従って測定した。
データは、対応のあるt検定を用いて統計解析し、有意性を決定した。
結果
予想どおり、高フルクトース食は、血清トリグリセリドの増加を誘導したが、これは、NDGA群(p=0.0004)およびBW 755c群(p=0.0002)において有意に減少した(図1)。処置の経過中、固形飼料群および媒体群は、血清遊離脂肪酸の有意な増加を示し(それぞれp=0.035、p=0.045)、その効果は、NDGA群とBW 755c群の双方において改善した。さらに、NDGA(p=0.003)は、インスリン感受性増大の徴候である血清グルコースを増加させることなく、血清インスリン濃度を有意に低下させた。BW 755cは、インスリンまたは血清グルコースに影響を及ぼすことなく、2つの化合物の相違を実証した。処置期間中、体重に有意な変化を示した群はなかったが、NDGA群のラットは、体重増加が少ない傾向があるか、または明らかに体重減少を示した。これらの群のデータは図2の散布グラフに示してある。
実施例2
動物および処置
処置プロトコルは、図3に要約してある。オスラットを先ず、HFF群または固形飼料群(対照)群に分け、処方食で14日間維持した。15日目にHFF群を3つの群、媒体、NDGAおよびBW 755cに分けた(NDGAとBW 755cの化学構造を説明のため挿入してある)。15〜19日目に全群を薬物または媒体で1日2回、経口胃管により処置した。15日目と19日目に分析用に血清を採取した。20日目に前記群をさらに分けて、LPSまたは媒体(生理食塩水)のいずれかを与えた。LPS処置後、ラットを殺処理し、それらの肝臓を分析のために分離した。
体重およそ180〜200gのオスSprague−Dawleyラットを先ず、ラット固形飼料食で維持してから、4群に分け、そのうち3群を、総カロリーの60%をフルクトースとして提供する高フルクトース食(ハーラン・テクラド(Harlan Teklad)、ウィスコンシン州マジソン所在)に切り換えた(1日目)。処置15日目に、ラットを4時間絶食させ、先に記載したとおり(ゴオーリ(Gowri)ら、Am.J.Hypertension、12:p.744−746(1999))、血清TG、グルコース、インスリンおよび遊離脂肪酸(FFA)のベースライン測定値のため、尾部静脈血を採取した。次にラットの3群を、経口胃管により送達された媒体(0.5%カルボキシメチルセルロース)、NDGA(250mg/kg体重)またはBW 755c(100mg/kg体重)のいずれかにより、4日間処置した。固形飼料食群(規定食対照)は媒体で処置した。処置療法の間、ラットは高フルクトース食で維持した。処置4日後、媒体、NDGA、またはBW 755cの最終投与3時間後に尾部静脈から採血し、血清サンプルを先に記載したとおり(ゴオーリ(Gowri)ら、12:p.744−746(1999);テルシアク(Tercyak)、J.Nutr.Biochem.、2:p.181−192(1991);クレーマー(Kraemer)ら、Endocrinology、143:p.801−806(2002))、TG、グルコース、インスリン、FFAおよび総コレステロールに関して分析した。20日目に、各群4匹に軽い麻酔下、0.5mg/kg体重のサルモネラエンテリフディス(Salmonella enterifdis)エンドトキシン(リポ多糖、LPS)または通常の生理食塩水を注射(静脈内)した。2時間後、先に記載された(クレーマー(Kraemer)ら、Endocrinology、143:p.801−806(2002))コルチコステロン測定のために血清を採取し、次いでラットを殺処理し、組織を取り、液体窒素下で瞬間冷凍し、分析するまで−80℃で保存した。動物管理についての地域委員会は全ての動物プロトコルを承認した。
TBARSアッセイによる脂質過酸化の測定
脂質に対する酸化的損傷の目安として、膜脂質の過酸化を、記載されたとおり(アズハー(Azhar)ら、J.Clin.Invest.、96:p.1414−1424(1995))、肝臓のミクロソームフラクションについてチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)の比色定量により評価した。TBARS形成は、基礎的条件(内因性)下、およびFee2+/ADP/NADPH(酵素的)および酸化促進剤としてFee2+/アスコルビン酸塩の存在下で決定した。結果は、形成されたTBARSのモル数(nmoles)(マロンジアルデヒド、MDA等量)/時間/mg蛋白質として表される。
肝臓の核抽出物調製および電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)
本研究室で先に記載した操作(メディチェリア(Medicherla)ら、Mech.Aging Dev.、122:p.1169−1186(2001))に従って、肝臓の核抽出物を調製した。EMSAに関しては、[γ−32P]ATPおよびTポリヌクレオチドキナーゼを用いて、二本鎖オリゴヌクレオチドプローブを末端標識化し、各調製物に組み込まれていない放射能をセファデックスG−50スピンカラムクロマトグラフィにより取り出した。AP−1およびSP−1認識配列(太字で示された共通塩基配列)を含有する合成オリゴヌクレオチドの二本鎖配列は以下のとおりである。
AP−1に関する各反応混合物(20μl)は、以下のものを含んだ。15mM HEPES−NaOH(pH7.9)、3mM トリス−HCI(pH7.9)、60mM KCI、0.5mM EDTA、1mM MgCl2、100μg/mlポリ(dI−dC).ポリ(dI−dC)、0.5mM DTT、1%NP−40、10%グリセロール32P−標識二本鎖オリゴヌクレオチドプローブ(約100,000DPM)および4.0〜8.0μg核蛋白抽出物;SP−1(20μl)に関しては、50mM トリス−HCI(pH7.9)、100mM KCI、12.5mM MgCl、1mM DTT、100μg/mlポリ(dI−dC).ポリ(dI−dC)、1mM DTT、1%NP−40、10%グリセロール、32P−標識二本鎖オリゴヌクレオチドプローブ(約100,000DPM)および4.0〜8.0μg核蛋白抽出物。形成された32P−オリゴヌクレオチド−核蛋白質複合体を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、遊離オリゴヌクレオチドから分離した。電気泳動後、前記ゲルを乾燥し、適切な時間(≦72時間)、コダックX−OMATフィルムに曝露してから走査し、適切なバンドをデンシトメトリーにより定量化した。結果は、任意の単位/10μg核蛋白抽出物として表されている。
ERK類、p38MAPKおよびJNK類の総計およびリン酸化体のウェスタンブロット分析
溶解緩衝液[20mM HEPES、pH7.4、1%トリトンX−100(v/v)、150mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、20mM NaF、20mM β−グリセロホスフェート、10mMピロリン酸ナトリウム、1mMバナジン酸ナトリウム、10nMオカダ酸、1mMジチオトレイトール、10μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイぺプチン、10μg/mlペプスタチンA、0.5mM 4−(2−アミノエチル)ベンジルスルホニルフルオリド(AEBSF、ロッシュ・モレキュラーバイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals))、10μM E−64および50μMベスタチン]を含有する界面活性剤3容量中に、肝臓サンプル(約200mg)を、ポッターエルベージェムホモジナイザーを用いて均一化し、完全に溶解させるため、オービタルシェーカ上に、4℃で30分間温置した。15,000 x gで10分間の遠心分離により、前記溶解物を澄明にし、各々の溶解ライセートの蛋白質濃度を測定し、サンプルを分析するまで凍結保存した。
等量の蛋白質(80μg)を含有するサンプルをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(4%のスタッキングゲルを有する10%ポリアクリルアミドゲル)によって分画し、ポリビニリデンジフルオリド膜(インモビロン(Immobilon)(商標)、ミリポア(Millipore)社、マサチューセッツ州ベドフォード(Bedford,MA)所在)に移した。移した後、前記膜を0.1%ツウィーン−20(TTBS)を含有するTBS中で洗浄し、ブロッキング緩衝液(5%無脂肪ドライミルクを含有するTTBS)中、室温で90分温置し、次いでブロッキング緩衝液中に希釈した一次抗体と共に、4℃で一晩温置した。引き続き、前記膜をTTBS中で洗浄し、ブロッキング緩衝液中、二次抗体と共役させたセイヨウワサビペルオキシダーゼと共に2時間温置した。次にルミグロー(LumiGLO)化学発光検出システム(KPLラボラトリーズ(KPL Laboratories))を用いて、免疫反応性バンドを可視化してから、X線フィルムに曝露し(15〜35分)、フルオル(Fluor)−S多画像走査デンシトメトリーシステム(バイオ−ラッド(Bio−Rad))により定量化した。総計的ERK類、JNK類/SAPK類およびp38MAPKに対するポリクローナル抗体は、セル・シグナリング・テクノロジー(Cell Signaling Technology)(マサチューセッツ州ビバリー(Beverly,MA)所在)から購入した。p38 MAPK((Thr180/Tyr182)およびERKS(Thr202/Tyr204)のリン酸化に対するリン特異的抗体もまたセル・シグナリング・テクノロジー(Cell Signaling Technology)から供給された。ホスホ−JNK類/ホスホ−SAPK類(Thr183/Tyr185)抗体は、サンタクルーズ・バイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology)社(カリフォルニア州サンタクルーズ(Santa Cruz,CA)所在)から入手した。
統計解析
統計解析は、米国カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA)所在、ウィンドウズ、グラフパッドソフトウェア(Windows、GraphPad Software)に対するグラフパッド・プリズム(GraphPad Prism)バージョン3.00を用いて対応のあるt検定または対応のないt検定のいずれかにより実施した。Pが0.05未満の場合、群間の差異は有意であると考えられた。標準化ウェスタンブロットデータは、リン酸化蛋白質に関して測定された単位を総蛋白質に関して測定された単位で割った比として得られた。この標準化データについて、統計解析を行った。
結果
リポキシゲナーゼ阻害剤は高トリグリセリド血症を減少させる
表1に示されるように、高フルクトース食は、劇的な高トリグリセリド血症および血清グルコースと総コレステロールの有意な増加を誘導した。この処置段階で、これらのラットは肥満ではなく、FFAの上昇も示さず、また彼らの血中グルコース濃度は、危険な高さではないことは重要である。処置4日後、双方のLO阻害剤が、血清TGを固形飼料食給餌対照の濃度へ減少させ、HFF食の効果を完全に反転させた(表2)。処置段階の間、固形飼料群は、血清TGの少ないが有意な減少と血清FFAの統計的に有意な増加を示した。対応する媒体HFF群もまた、FFAの少ないが有意な増加を示した。血清TGの低下とFFAの増加の効果は、1日2回の経口胃管処置の結果としての動物の全身的ストレスのためであったと思われ、食餌処置の特定の効果とは考えられなかった。LO阻害剤を受けている群はいずれも、血清FFAのこの増加を示さなかった。NDGAは、空腹時血糖を有意に変化させることなく、空腹時血清インスリンを有意に減少させ、また、血清総コレステロールを有意に減少させた。これらの効果のいずれもが、BW 755cでは認められず、それらがNDGA特異的であって、恐らくLO活性には関連していないことが示唆された。
肝臓の脂質代謝に及ぼすフルクトース給餌の効果
処置プロトコル後、肝臓の脂質代謝に及ぼすLO阻害剤の効果を決定するために、生理食塩水処置ラットにおける肝臓の脂質組成物を調べた。図4A〜4Eは、これらの結果を示している。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。全てのデータは、平均±SEとして示されており、一群当たりn=4である。図4Aに見られるとおり、HFFラットの総コレステロール含量は、固形飼料対照に比して上昇した。固形飼料ラットおよびHFFラットの総肝臓コレステロールは、組織100ミリグラム当たりのコレステロールのマイクログラムとして表されている。LO阻害剤は、総コレステロールを減少させ、その効果は、正常な肝VLDL代謝の回復と一致する。血清脂質とは対照的に、肝TG含量および肝FFAは、HFFラットにおいて有意に上昇しなかった(図4B、C)。図4Bにおいて固形飼料ラットおよびHFFラットの肝遊離脂肪酸含量は、組織100ミリグラム当たりのナノ当量単位で表されている。図4Cは、組織100ミリグラム当たりのマイクログラムで表された固形飼料ラットおよびHFFラットの肝トリグリセリド含量を示している。このことから、これらのHFFラットは、処置期間中、肝臓のTG分泌またはFFA分泌に障害を示さなかったことが示唆される。最後に本発明者らは、酸化的ストレス条件下で増加し、その産物がJNKを、したがってAP−1を活性化することが知られている(ウチダ(Uchida)ら、J.Biol,Chem.、274:p.2234−2242(1999))膜脂質の過酸化の程度を測定した。HFFラットの肝ミクロソームフラクションは、酵素的酸化促進剤に応答して、脂質酸化に対する同様の感受性(susceptibility)および非酵素的酸化促進剤に対する感受性の低下を実証した(図4D、E)。図4Dは、非酵素的TBARSアッセイによる固形飼料およびHFFの肝ミクロソームの脂質過酸化を示している。図4Eは、酵素的TBARSアッセイによる固形飼料およびHFFの肝ミクロソームの脂質過酸化を示している。LPSで処置された全ての群のラットが、HFF食の非特異的抗酸化効果の無効化を含むミクロソームの脂質過酸化に対する同様の感受性(sensitivity)を示した。
フルクトース給餌は、肝臓のストレス応答を誘導する
高フルクトース食の代謝的効果と血清脂質に対する炎症性急性応答との間の類似性により、本発明者らは、インスリン抵抗性に関連してきたストレス経路のある一定要素に及ぼすHFF食の効果を調べた。図5に示されるように、HFFラットは、JNK p54およびp46、特にp46の総蛋白質における有意な減少を示した。図5A〜5Cは、キナーゼ活性のウェスタンブロット解析を示している。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー。この棒グラフは、平均±SE、一群当たりn=4として表された個々のサンプルの総キナーゼ蛋白質に対するリン酸化キナーゼの比率を示している。図5Aは、固形飼料ラットおよびHFFラットに関する総ERKI、およびリン酸化ERKIならびにERKIのウェスタンブロットを示している。図5Bは、固形飼料ラットおよびHFFラットに関する総p38MAPキナーゼおよびリン酸化p38MAPキナーゼのウェスタンブロットを示している。図5Cは、固形飼料ラットおよびHFFラットに関する総JNK−46と総JNK−54ならびにリン酸化JNK−46とリン酸化JNK−54のウェスタンブロットを示している。総蛋白質の減少にもかかわらず、JNKの双方のイソ体が有意なリン酸化を示し、これらの経路が、長期的なフルクトース代謝で活性化されることを示している。HFFラットは、p38 MAPKに対しては、総蛋白質においても、リン酸化状態においても、有意な変化を示さなかった。ERKI/2総蛋白質濃度は、群間で同等であったが、これらのキナーゼのリン酸化は、HFFラットにおいて、およそ50%減少した。
HFFラットにおけるJNK経路活性化の所見を裏付けるために、AP−1のDNA結合活性を調べた。図6A〜6Cは、肝臓のAP−1およびSP−1の定量化EMSA解析を示している。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。全てのデータは、平均±SEとして表されており、1群当たりn=4である。図6Bは、生理食塩水処置群に関するSP−1の3日曝露のデンシトメトリー強度を示している。図6Cは、LPS処置群に関するAP−1の一晩曝露のデンシトメトリー強度を示している。図6Aに見られるように、HFF食は、固形飼料食に比して、AP−I EMSAバンドの強度を86%増加させた。生理食塩水処置群に関しては、AP−1の3日暴露。各群のデンシトメトリー強度は、任意の単位/10Rg核蛋白抽出物として表され、図の右側のグラフ上にプロットされている。双方の化合物による処置によって、HFF食に較べ、AP−Iバンド強度は、固形飼料群にほぼ等しいレベルまで有意に減少した。対照としてAP−I活性の食餌誘導変化を、他の転写因子、SP−Iのそれ(図6B)と比較した。フルクトース食もLO阻害剤も、固形飼料食に相対的なSP−I活性に影響を及ぼさなかった。LO阻害剤群におけるAP−I活性の減少は、肝臓の全体的状態によるものであって、急性の薬物効果によるものではなかった。なぜならば、肝臓は最後の薬物処置から丸1日後に得ているので、AP−I測定前に薬物クリアランスができているからである。LPSによって誘発を受けた全ての群がAP−1に対し、活発な応答を示したという所見(図6C)により、この結論は支持される。
HFFモデルにおける肝脂質代謝調節不全はコルチコステロンによるものではない
ラットにおいて、フルクトース給餌は、肝臓のホスホヒドロラーゼ活性をある程度調節し、したがって肝臓のTG合成に影響を与えるグルココルチコイドの一種であるコルチコステロン(クノックス(Knox)ら、Biochem.J.、180:p.441−443(1979);マッキントッシュ(McIntosh)ら、Proc,Soc.Exp.Med.、221:p.198−206(1999);ブリンドレー(Brindley)ら、Biochem.J.、180:p.195−199(1979))の血清濃度を上昇させる。したがって、LO阻害剤の効果の1つとして、内因性コルチコステロン産生を抑制し、それにより、間接的に肝臓のリポゲネシスに影響を及ぼすという可能性が考えられる。この問題を扱うために、薬物処置後、群における血清コルチコステロンを測定した。図7A〜7Bは、血清コルチコステロン測定を示している。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。全てのデータは、平均±SEとして示されており、1群当たりn=4である。
全ラットが、血清コルチコステロンの高濃度を示したが、これは、繰り返しのラット操作により引き起されたラットの全身的なストレスによる可能性が高い。図7Aは、生理食塩水処置群に関する20日目の血清を示している。NDGAおよびBW 755cを与えられているラットは、コルチコステロンの僅かに高い血清濃度を示したが、これらの濃度は、フルクトースラットのそれよりも有意に高くはなかった。図7Bは、LPS処置群に関する20日目の血清を示している。LPS処置は、全群に活発なコルチコステロン応答を生じさせ、BW 755c群では、僅かに上昇したが、統計的に有意ではない応答であった。まとめると、肝臓のTG産生に及ぼすフルクトース誘導効果は、ラットの副腎ストレス応答または全身性ストレスに関連していないと思われる。
これらの試験は、高フルクトース食が、炎症性サイトカインTNFαに関して認められるものと類似のJNK/AP−1経路による肝臓の応答を誘導することを証明している。JNK経路の活性化に加えて、ERKI/2経路が抑制されているようであり、上昇したストレスキナーゼ活性の存在下でのマイトジェンのキナーゼ活性の低下を示唆している。双方ともリポキシゲナーゼ阻害剤である2つの化合物が、AP−1の活性化を減少させ、このモデルの代謝の目印である血清高トリグリセリド血症を減少させたことを本発明者らは証明した。これらの結果は、肝臓の炎症性状態と脂質調節不全との間の関連を示唆している。
LO阻害剤が、ストレス応答を反転させる機構は解明されていない。これらの薬物が働き得る1つの機構として、高血糖ストレス応答時に見られるものと同様に、ROS生成の阻害により直接的にJNK経路を撹乱する(グーハ(Guha)ら、J.Biol.Chem.、275:p.17728−17739(2000))ものがあるが、HFFのTBARS値(脂質の過酸化および膜への酸化的損傷の大まかな目安の1つ)が、固形飼料対照に対して顕著ではなかったことから、この可能性は低いと思われる。さらに、フルクトースの形での十分なエネルギー供給によりβ酸化がダウンレギュレートされているように思われる。したがって、このことから、HFFモデルにおけるAP−1活性化の主要原因としての脂質過酸化は除外される。あるいは、フルクトースの肝代謝によりストレス活性化分子が直接生成されることが考えられる。フルクトースは肝臓で代謝されて、ジヒドロキシアセトンホスフェート(DHAP)およびD−グリセルアルデヒドが生じ、これはグリセルアルデヒド−3−ホスフェート(G3P)へとリン酸化され得る。DHAPとG3Pは、解糖中間体であり、TG合成における中間体である。フルクトース代謝は、グルコースのように調節されていないため、この糖の過剰な消費は、それらが利用されなかった場合(例えば、安静ラットの場合)、高濃度のDHAPとG3Pへと導き得ることは、理論上可能である。図8に示されるようにメチルグリオキサールおよび/またはD−グリセルアルデヒドの蓄積が、基質にグリセルアルデヒド誘導の高グリコシル化最終産物(グリセル−AGE)を提供し得るという理論を、本発明者らは提案する。フルクトースの肝代謝がこの図に描かれている。F=フルクトース;FIP=フルクトース−1−ホスフェート;DHAP=ジヒドロキシアセトンホスフェート;TG=トリグリセリド;G3P=グリセルアルデヒド−3−ホスフェート;MG=メチルグリオキサール;AGE=高グリコシル化最終産物。フルクトースは、肝臓内でフルクトキナーゼとアルドラーゼによってF1Pへと代謝され、DHAPとD−グリセルアルデヒドを生じる。D−グリセルアルデヒドは、リン酸化されて解糖中間体G3Pを生じ得る。G3Pは代謝されるか、または異性化してDHAPを生じ得る。あるいは、G3Pは、高フルクトース食の細分化中間体の肝臓効果としてのMGによりAGE類を形成し得る。理論上、D−グリセルアルデヒドは、細胞の蛋白質と直接共役してAGE類を生じ得る。
メチルグリオキサールは、NF−kBの活性化および糖尿病合併症に関連してきた(ハンメス(Hammes)ら、Nature Medicine、9:p.294−299(2003))が、D−グリセルアルデヒドは、内皮細胞におけるAP−1の転写活性化の増加を示していた(オカモト(Okamoto)ら、FASEB J.、16:p.1928−1930(2002))。このように、LO阻害剤は、これらのアルデヒド中間体のJNK経路活性化(ウー(Woo)ら、J.Biol.Chem.、275:p.32357−32362(2000))を阻害し得る。この機構は、運動と組合わせてHFF食を給餌されたラットが、高トリグリセリド血症を発現しないという所見の理由となり得る。なぜならば、これらの解糖中間体は、蓄積せずに解糖により往復移動でき、および/または代替の代謝経路または化学的経路に利用され得るからである。
文献のデータの多くは、高トリグリセリド血症、肥満または高遊離脂肪酸により生じる、または悪化する炎症性効果に焦点を当てている。仮定を進めると、代謝性疾患と炎症が、進行的回路を作り出し、それが疾患の進行と代謝的合併症および心血管合併症へ導くということである(ユアン(Yuan)ら、サイエンス(Science)、293:p.673−1677(2001);ジョンカーズ(Jonkers)ら、Am.J.Med.、112:p.275−280(2002))。本発明者らのデータは、この仮説に合うものであり、本発明者らが提案するのは、明らかな代謝性疾患の発現前に、低レベルの炎症が生じ得、前記回路への1つの潜在的侵入点を可能にするというものである。これが真実であるとするならば、これらのデータは、代謝性疾患を有するある一定の個人を治療するために、ロイコトリエン阻害剤が、有用な薬物であり得ることを示唆している。さらに、これらのデータは、糖尿病患者およびその危険性にある他の集団は、脂質障害の可能性という観点で、高濃度のフルクトース食の消費を評価すべきであるというコンセプトを支持している。
本発明を十分に説明したので、通常の当業者は、本発明の方法が、本発明またはその実施形態の範囲を逸脱することなく、広くまた等価な範囲の条件、製剤および他のパラメータによって実施できることを理解されるであろう。本明細書に引用した全ての特許および刊行物は、本明細書に参照として、その全体が完全に組み込まれている。
図面の簡単な説明
高トリグリセリド血症および高血圧の食餌誘導モデルにおいて、血清トリグリセリドに及ぼす2種の5−LO阻害化合物の効果を示す図である。 高トリグリセリド血症および高血圧の食餌誘導モデルにおいて、5−リポキシゲナーゼ阻害剤の経口投与前後における動物体重を示す散布グラフである。 高トリグリセリド血症および高血圧の食餌誘導モデルにおいて、5−リポキシゲナーゼ阻害剤の経口投与前後における遊離脂肪酸(FFA)および血清トリグリセリド(TG)を示す散布グラフである。 高トリグリセリド血症および高血圧の食餌誘導モデルにおいて、5−リポキシゲナーゼ阻害剤の経口投与前後における血清グルコースおよびインスリンを示す散布グラフである。 実施例2の動物処置系列を示す図である。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物における肝臓の脂質組成を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物における肝臓の脂質組成を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物における肝臓の脂質組成を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物における肝臓の脂質組成を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物における肝臓の脂質組成を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物におけるキナーゼ活性のウェスタンブロット解析を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物におけるキナーゼ活性のウェスタンブロット解析を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物におけるキナーゼ活性のウェスタンブロット解析を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物における肝臓のAP−1およびSP−1の定量化EMSA解析を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物における肝臓のAP−1およびSP−1の定量化EMSA解析を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物における肝臓のAP−1およびSP−1の定量化EMSA解析を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物における血清コルチコステロン測定値を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。 固形飼料食およびHFF食を給餌した動物における血清コルチコステロン測定値を示す図である。固形飼料食=白色バー;HFF食=点状バー;HFF食+NDGA処置=縞バー;HFF+BW 755c処置=ハッチバー。 フルクトースの肝臓代謝を示す略図である。F=フルクトース;FIP=フルクトース−1−ホスフェート;DHAP=ジヒドロキシアセトンホスフェート;TG=トリグリセリド;G3P=グリセルアルデヒド−3−ホスフェート;MG=メチルグリオキサール;AGE=進行グリコシル化最終産物中間体。

Claims (17)

  1. 5−リポキシゲナーゼ阻害剤を含む製薬組成物の有効量を、高血清トリグリセリドまたは高血圧を有するヒト被験者に投与することを含む高血清トリグリセリドまたは高血圧を治療する方法であって、前記有効量は、前記高血清トリグリセリドまたは高血圧を減少させるのに十分であり、前記5−リポキシゲナーゼ阻害剤が、NDGAまたはクルクミンではない方法。
  2. 高血清トリグリセリドを治療する、請求項1に記載の方法。
  3. 高血圧を治療する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記製薬組成物は、経口投与形態である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記5−リポキシゲナーゼ阻害剤が、アセトヒドロキサム酸誘導体、フェニルピラゾリン誘導体、2−(12−ヒドロキシドデカ−5,10−ジイニル)−3,5,6−トリメチル−1,4−ベンゾキノン誘導体および3−[1−(4−クロロベンジル)−3−t−ブチル−チオ−5−イソプロピルインドール−2−イル]−2,2−ジメチルプロパン酸誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記5−リポキシゲナーゼ阻害剤は、アセトヒドロキサム酸誘導体である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記アセトヒドロキサム酸誘導体は、N−(3−フェノキシシンナミル)アセトヒドロキサム酸(BW 4AC)である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記5−リポキシゲナーゼ阻害剤は、フェニルピラゾリン誘導体である、請求項5に記載の方法。
  9. 前記フェニルピラゾリン誘導体は、4,5−ジヒドロ−1−(3−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−ピラゾール−3−アミン(BW 755c)である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記5−リポキシゲナーゼ阻害剤は、2−(12−ヒドロキシドデカ−5,10−ジイニル)−3,5,6−トリメチル−1,4−ベンゾキノン誘導体である、請求項5に記載の方法。
  11. 前記誘導体は、2−(12−ヒドロキシドデカ−5,10−ジイニル)−3,5,6−トリメチル−1,4−ベンゾキノン(AA861)である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記5−リポキシゲナーゼ阻害剤は、3−[1−(4−クロロベンジル)−3−t−ブチル−チオ−5−イソプロピルインドール−2−イル]−2,2−ジメチルプロパン酸誘導体である、請求項5に記載の方法。
  13. 前記誘導体は、3−[1−(4−クロロベンジル)−3−t−ブチル−チオ−5−イソプロピルインドール−2−イル]−2,2−ジメチルプロパン酸(MK886)である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記5−リポキシゲナーゼ阻害剤の前記有効量は、体重1キログラム当たり0.1μg〜500mgの間である、請求項1に記載の方法。
  15. 前記5−リポキシゲナーゼ阻害剤の前記有効量は、体重1キログラム当たり0.5mg〜500mgの間である、請求項14に記載の方法。
  16. 抗糖尿病化合物、脂質低下薬物および抗高血圧性化合物からなる群から選択される第2の化合物を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  17. 前記5−リポキシゲナーゼ阻害剤および前記第2の化合物は、同時に投与される、請求項14に記載の方法。
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