JP2006514712A - ニッケル−チタン合金製歯科器具の電解研磨方法 - Google Patents

Abstract

本器具は、硫酸及びメタノールを含む電解質を使用したニッケル-チタン合金製の歯科用器具の電解研磨方法に関する。電力供給が、電流密度が一定になるように調整された電流を適用することによって提供される。

Description

発明の詳細な説明

本発明は、硫酸及びメタノールを含む電解質を使用したニッケル-チタン合金歯科用器具の電解研磨方法に関する。
歯根治療に使用される歯科用器具は、一般的にステンレス鋼から製造されるが、ニッケル-チタン合金からも製造され得る。そのような合金は、可撓性及び管ファロウィング(canal fallowing)に関して興味深い特性を有する。しかし、そのような合金を使用して製造された器具の表面品質は、研磨による機械加工のためかなり粗い。そのような表面特性は、微視的なひびを作るために必要な条件の組み合わせを提供し、微視的なひびは、繰り返しのサイクル運動の作用の下、管曲線の動作の間、ひびの増殖を引き起こし、上記器具を破壊させ得る。このリスクは、歯医者及び器具製造者に対してそのような歯科用器具の主要な不利益を構成する。凹凸を滑らかにすることによる表面の処理は、ひび割れ促進速度を減少させることによって歯科用器具の寿命を延長し得る。歯根管の処理器具は、複雑な幾何学をしばしば有し、例えば、少なくともその長さの一部をわたって螺旋状の切断端を有し、その活性部分を構成するテーパーしたシャンク(shank)を含む。従って、表面処理の異なる可能性における選択は、そのような形状へのその適応性によって制限される。
電気化学研磨は、好適な解決策であり、特にスチール、チタン、及びそれらの合金に対して前記表面処理を実施する有効な方法であると知られている。しかし、最適な結果を生じさせるため、例えば槽の組成、電気供給システム、又は他の重要な要素を決定するために使用されるアプローチは、相対的に経験的である。処理されるべき新規な材料に対するパラメータ又はこの器具の新規な方法に対するパラメータを最適化することは、先述の現在の方法の欠点を克服し、また実施されるべきそのような方法を、処理されるべき部品の調製工程なしで経済的な値段で可能にし、これによって本方法の製造速度を増加させながら、全ての特有のリスクを減少させる。

本発明の方法は、一定となるように調整された単位密度あたりの電流を適用することによって電気が提供されることを特徴とする。
他の利点は、独立請求項で記載された特徴から、更には、以下に説明される本発明の詳細な説明から明らかとなる。
本発明の方法において電気分解の電気を供給するための系を逆転することによって、すなわち、通常の場合と対照的に、電圧を変化させ、かつ適用される電流密度定数を保つことによって、驚くべき結果が、達成され、これにより、処理されるべき部品の表面の全ての前処理をなしで済ませ得る。
これらの方法によって、通常の方法に照らして重要な調製工程が、この新規な方法では必要とされず、また追加の費用がなしで済み、結果として従来よりかなり経済的な価格となった。有利なことには、製造時間も、短縮され、部品の損傷のリスク又はそれらの混合のリスクが減少した。
さらに、一定密度での電流の適用によって、電解質槽中の部品に適用される攪拌速度を顕著に減少させることが可能となる。毎秒200ミリメートル(mm/s)の従来の攪拌速度の代わりに、新規な方法においては、それは1mm/s〜10mm/sであり、処理されるべき部品の操作を促進し、電気分解の実施に使用される自動機械での摩耗を減少させる。
さらに、一定の電流密度を運ぶ電気供給を使用するこの新規な方法を適用する表面処理により、槽温度に関して顕著な独立性が示された。従って、この新規な方法は、この独立性が公知技術の方法では生じないので、ニッケル-チタン合金の表面処理を促進し、かつ改良する。
このように、かかる構成によって、ニッケル-チタン合金歯科用器具を電気分解すると有意な利点が享受でき、この分野の技術的進歩に寄与する。
本発明について、実施例により、本発明の方法の実施を参照しながら以下に詳細に説明する。

本発明のニッケル-チタン合金歯科用器具の電解研磨方法は、電解質として硫酸及びメタノールを使用する。好ましくは、上記電解質は、0.1モル〜10モルの硫酸を含むメタノール(CH₄O)と硫酸(H₂SO₄)の混合物である。このメタノールは、純粋なCH₄Oであり、使用される硫酸は96%純度のものである。電解質は、硫酸をメタノールへ添加することによって製造され、硫酸の濃度は、上記の範囲である。電解質溶液の良好な化学均質性が、混合物を約３日間静置することによって得られる。
電気は、電流を電極に適用することによって提供される。電流密度は、それが一定となるように調整される。陰極は、例えば白金からなる少なくとも１種の電極によって形成され、陽極は、処理されるべき部品によって形成され、従って電気分解は、陰極の原理に従って機能する。電流制御システムによって、電流密度がモニターされ、一定に保つことができる。特にこれは、電解質中に参照電極を置くことによって可能となり、参照電極は、電流計に連結され、この電流計は継続的に電極を通る電流を測定できる。その後、電流制御システムは、これらのデータを使用し、例えば、前記電流計と協同するコンピューターを使用し、電気を供給する要素を経由して適切な電流の適用を確保することによって、電流密度を予め決められた値に保つ。この値は、好ましくは、10A/dm²〜30A/dm²の範囲である。槽の組成物も処理されるべき部品の組成物も静的ではないので、電流密度が、一定に保たれながら、電気分解の間、電解質の電気抵抗が変化するので、電極間のポテンシャルは、変化する。安全上の理由で、より高い値はヒトに対して危険であると思われるので、60Vの制限電圧を超えないように電圧を観測し、確保できる。ポテンシャルでなくて電流密度が、一定に保たれることが、従って、本発明の電解研磨と従来方法との主な差を構成する。

安全上の理由で、全体の電解研磨方法は、槽温度を20℃より低く保った条件下で実施される。例えば、温度は、クリオスタットを使用して所望の温度、好ましくは、5℃で保つことができる。
一旦、槽が準備され、電気が上記のように供給されると、処理されるべき部品が電解研磨できるようになる。部品、すなわちニッケル-チタン合金歯科用器具又はその特定の部分は、調製工程の間、又は電解研磨の前の前処理の間、ストリッピングタンク内で任意選択的に脱脂することを除いて、いかなる特別な処理も受けない。その後、処理される部品を、電解質中に浸漬する。この浸漬を10秒(s)〜120s続ける。電解質において、部品を、選択された攪拌速度で攪拌（移動）し、この動きは、好ましくは陰極間で平行である。一定の電流密度の使用のため、部品の攪拌速度が、約1mm/s及び10mm/sの間で低くなり得る。電解槽での電気分解によるこの研磨工程は、この部品のすすぎ及び乾燥の後に続き、これらの工程は、通常の方法に対応する。通常は、治療のための問題の歯科用部品は、少なくとも40質量%のチタンを含むチタン合金から製造され、本発明の方法を適用可能にする。
従って、ニッケル-チタン合金を電解研磨させる方法において、電気の供給に対するシステムを逆にすることによって、すなわち、通常の場合と対照的に、適用される電流密度を一定にし、その電圧を変化させることによって、驚くべき効果が、達成され、それによって、処理されるべき部品の表面のすべての前処理が不要となり得る。

Claims (6)

1. 硫酸及びメタノールを含む電解質を使用したニッケル-チタン合金歯科用器具の電解研磨方法であって、一定となるように調整された単位密度あたりの電流を適用することによって電気が供給されることを特徴とする方法。
2. 電流密度が、10A/dm²〜30A/dm²の範囲の値である請求項１に記載の方法。
3. 前記電解質が、硫酸を0.1モル〜10モルの範囲で含む、メタノール及び硫酸の混合物である請求項１又は２に記載の方法。
4. 陰極が、少なくとも１種の白金電極によって形成され、かつ陽極が、処理されるべき部品によって形成されている請求項１〜３のいずれか１項に記載の方法。
5. 前記部品の攪拌速度が、低く、約1mm/s〜10mm/sである請求項１〜４のいずれか１項に記載の方法。
6. 前記処理されるべき部品が、少なくとも40質量%のチタンを有するチタン合金から製造される請求項１〜５のいずれか１項に記載の方法。