JP2006506966A - 血管新生において差次的に発現するesm−1遺伝子、そのアンタゴニスト、および、それらを使用する方法 - Google Patents

血管新生において差次的に発現するesm−1遺伝子、そのアンタゴニスト、および、それらを使用する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、血管形成および発癌において発現が調節される、核酸およびそのコードされるポリペプチドであるESM−1に関する。本発明はまた、前記ポリペプチドに対する特異性を有する抗体に関する。本発明はまた、アンチセンス分子に関する。本発明はさらに、このような生物学的効果を必要としている哺乳動物における血管形成を治療または調節するのに有用な方法に関する。

Description

本出願は、合衆国法典35巻119条のもとに、2002年7月1日に出願された米国仮出願 出願番号60/392,784に対して優先権を主張し、本明細書に記載されるかのようにそのすべてを参照によって援用する。
発明の属する技術分野
[001] 本発明は、概して、血管形成および発癌において発現が調節される、核酸およびそれにコードされるポリペプチドの同定に関するものである。本発明はまた、前記ポリペプチドに対する特異性を有する抗体に関するものでもある。本発明はまた、アンチセンス分子に関するものでもある。本発明はさらに、このような生物学的効果を必要としている哺乳動物における血管形成を治療または調節するのに有用な方法に関するものである。これには、創傷治癒および癌を非限定的に含む血管形成障害の診断および治療が含まれる。加えて、本発明はさらに、心血管、血管形成、癌および内皮の障害を含む広範囲の病理学的状態の治療に対して、本発明のポリペプチドに対する抗体を診断用プローブまたは治療剤として用いること、ならびに、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を診断用プローブまたは治療剤として用いることに関するものである。
発明の背景
[002] 血管形成とは、既存の血管および毛細血管から新しい毛細血管が成長することであり、そして、創傷修復、胚発生および固形腫瘍の増殖といった多くの過程において不可欠である。新血管新生において、内皮細胞は、管腔形成、基底膜の確立および最終的な他の血管との吻合へと導く、遊走、伸長、増殖、および、方向づけを受けるであろう(Patan、2000年)。
[003] 内皮細胞特異的分子1(ESM−1)は、喘息において役割を担う可能性のある55キロダルトンの自己抗原をコードする遺伝子を同定するために、HUVEC cDNAライブラリの免疫スクリーニングにおいて最初に単離された(Lassalleら、1993年)。ESM−1の全長cDNAは、pCDM8において構築されたライブラリにおいてクローニングされたが、しかし、逆方向に挿入されていることが見いだされた(Lassalleら、1996年)。
[004] ノーザンブロットにより、ESM−1のプローブが、HUVEC細胞、SV−40を導入されたHUVEC、ヒト肺およびヒト腎由来RNAとハイブリダイズすることが、示された。ヒト心臓、膵臓、胎盤、筋肉、脳または肝臓においては、ほとんどまたはまったく検出されなかった(Lassalleら、1996年)。ESM−1に対して産生された抗体は、ヒト肺、結腸および腎臓においてタンパク質発現を示す(Bechardら、2000年;Lassalleら、WO9945028)。肺において、ESM−1は、細静脈、細動脈および肺胞毛細血管に、ならびに、気管支および粘膜下腺の表皮細胞の近傍に、発現する。腎臓においては、主として腎臓の尿細管表皮細胞に発現する。結腸の固有層の毛細血管および細静脈もまた、ESM−1の発現を示す。150塩基対が欠失するがオープンリーディングフレームは維持されるESM−1のスプライスバリアントが、同定された(Aitkenheadら、2002年)。
[005] WO 99/45028では、ESM−1に対するモノクローナル抗体および、ESM−1を検出するための抗体の使用が開示されている。WO 02/39123では、ESM−1のN末端領域に特異的に結合する抗体およびESM−1のC末端領域に特異的に結合する二次抗体を含むキットが開示されている。WO 02/38178では、癌治療用のESMに対するアンタゴニスト性抗体が開示されている。
発明の概要
[006] ある側面において、本発明は、個体において血管形成障害の治療有効性を評価する方法を伴い、その方法は、1またはそれより多くの本発明の核酸配列を発現可能な試験細胞集団を提供し;1またはそれより多くのこれらの核酸配列の発現を検出し;その発現を、癌の段階が分かっている参照細胞集団における核酸配列の発現と比較し;そして、存在するのであれば、試験細胞集団と参照細胞集団との間の発現レベルの差を同定する工程を伴う。種々の態様において、個体は、哺乳動物、またはより好ましくはヒトであることが可能である。他の態様において、試験細胞集団を、哺乳動物個体よりin vitro、ex vivoで、あるいは哺乳動物個体においてin vivoで提供することが可能である。核酸配列の発現は、試験細胞集団において、参照細胞集団と比べて増加するかまたは減少するかのどちらかであってよい。
[007] さらなる側面において、本発明は、血管形成障害を診断する方法を伴い、その方法は、1またはそれより多くの本発明の核酸配列を発現可能な試験細胞集団を提供し;1またはそれより多くのこれらの核酸配列の発現を検出し;その発現を、血管形成の段階が分かっている参照細胞集団における核酸配列の発現と比較し;そして、存在するのであれば、試験細胞集団と参照細胞集団との間の発現レベルの差を同定する工程を伴う。種々の態様において、個体は、哺乳動物、またはより好ましくはヒトであることが可能である。他の態様において、試験細胞集団を、哺乳動物個体よりin vitro、ex vivoで、あるいは哺乳動物個体においてin vivoで提供することが可能である。核酸配列の発現は、試験細胞集団において、参照細胞集団と比べて増加するかまたは減少するかのどちらかであってよい。
[008] 別の側面において、本発明は、個体における血管形成障害を治療するための試験治療剤を同定する方法を伴い、その方法は、1またはそれより多くの本発明の核酸配列を発現可能な試験細胞集団を提供し;試験細胞集団を試験治療剤と接触させ;1またはそれより多くのこれらの核酸配列の発現を検出し;その発現を、血管形成の段階が分かっている参照細胞集団における核酸配列の発現と比較し;そして、存在するのであれば、試験細胞集団と参照細胞集団との間の発現レベルの差を同定する工程を伴う。異なる態様において、個体は、哺乳動物、またはより好ましくはヒトであってもよい。加えて、試験治療剤は、公知の血管形成障害剤または未知の血管形成障害剤のいずれであってもよい。アンタゴニストは、本発明のポリペプチドの少なくとも一つに対して選択性を有する抗体であってもよい。治療される血管形成障害を、以下の疾患または障害から選択することが可能である:乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、肝臓癌、卵巣癌、莢膜細胞腫、男性胚腫、子宮頸癌、子宮体癌、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛癌、頭頚部癌、上咽頭癌、喉頭癌、肝芽腫、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚癌、血管腫、空洞性血管腫、血管芽腫、膵臓癌、網膜芽細胞腫、星細胞腫、グリア芽腫、シュワン腫、乏突起細胞腫、髄芽腫、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、尿路癌、甲状腺癌、ウィルムス腫、腎細胞癌、前立腺癌、母斑症に関連する異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)およびメグス症候群。
[009] さらなる側面において、本発明は、個体における血管形成障害に対する感受性、素因、または存在を同定または測定する方法を伴う。この側面において、その方法は、1またはそれより多くの本発明の核酸配列を発現可能な試験細胞集団を提供し;1またはそれより多くのこれらの核酸配列の発現を検出し;その発現を、癌の段階が分かっている参照細胞集団における核酸配列の発現と比較し;そして、存在するのであれば、試験細胞集団と参照細胞集団との間の発現レベルの差を同定する工程を伴う。個体は、哺乳動物、またはより好ましくはヒトであってもよい。
[0010] 代替の側面において、本発明は、本発明の1またはそれより多くの核酸配列の発現または活性を調節する薬剤を、血管形成障害で苦しんでいるかまたは発症する危険性のある患者に投与することによって血管形成障害を治療する方法を伴う。この薬剤は、癌組織において亢進している1またはそれより多くの本発明の配列の発現を減少させるものであることが可能である。あるいは、それは、低下している1またはそれより多くの本発明の配列の発現を増加させるものであることが可能である。加えて、薬剤は、該核酸配列によってコードされるポリペプチドに対する抗体、アンチセンス核酸分子、ペプチド、ポリペプチドアゴニスト、ポリペプチドアンタゴニスト、ペプチド類似体、小分子または別の薬剤であることが可能である。
[0011] 本発明は、ESM−1をコードする核酸を標的としそしてESM−1の発現を調節する、アンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチドを対象とする。本発明のアンチセンス化合物を含む医薬組成物および他の組成物もまた提供される。さらに提供されるのは、細胞または組織においてESM−1の発現を調節する方法であり、該方法は、前記細胞または組織を1またはそれより多くの本発明のアンチセンス化合物または組成物と接触させることを含む。さらに提供されるのは、ESM−1の発現に関連した疾患または病態を有するかまたは傾向にあることが疑われる動物、特にヒトを、治療的または予防的な有効量の1またはそれより多くの本発明のアンチセンス化合物または組成物を投与することによって治療する方法である。
[0012] 本発明はまた、2またはそれより多くの本発明の核酸配列を検出するための、1またはそれより多くの試薬を含有するキットを含む。加えて、本発明は、2またはそれより多くの本発明の核酸を検出可能な核酸プローブのアレイを伴う。
[0013] 本発明のポリペプチド、核酸および抗体を、個体における血管形成障害を治療するのに用いることが可能である。血管形成障害の治療は、哺乳動物、好ましくはヒトにおいてであってよい。種々の態様において、本発明のポリペプチドおよび核酸を含有する治療用組成物を、血管形成障害を治療するのに用いることが可能である。これらの治療組成物は、薬学的に許容可能なキャリアおよび、加えて、抗血管形成剤または抗炎症剤などの活性成分を含むことが可能である。血管形成障害を治療するのに用いるための治療用組成物を薬学的に許容可能なキャリアとともに含有するキットもまた提供され、治療用組成物は、本発明のポリペプチド、本発明のポリペプチドのアゴニストまたは本発明のポリペプチドのアンタゴニストである。
[0014] 本発明のポリペプチドをコードする核酸と少なくとも80%同一である単離された核酸分子または該核酸配列の相補体、ならびにこの核酸配列を含有するベクターおよび宿主細胞もまた、本発明に含まれる。本明細書に記載される1またはそれより多くのベクターを用いて形質転換された宿主細胞を、ベクターによってコードされるタンパク質の発現に適した条件下で培養することによって、ポリペプチドを産生する方法もまた、提供される。
[0015] 別の側面において、本明細書に記載される単離された核酸配列またはオリゴヌクレオチドによってコードされる単離されたポリペプチドが提供される。いくつかの側面において、単離されたタンパク質、機能的なバリアントまたはその断片である。別の態様において、本発明のタンパク質のバリアントまたはその断片は、それぞれ活性を保持する。
[0016] 本発明のさらなる態様は、抗血管形成治療の有効性を、生体試料における本発明の核酸またはポリペプチドのレベルをモニターすることに基づいて評価するための、マーカーおよび方法である。
[0017] 本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
発明の詳細な説明
[0029] 血管形成とは、既存の毛細血管から新たな血管が発達することである。この過程は、いくらかのヒト疾患、ならびに固形腫瘍の増殖および転移に関与している。関節炎のいくつかの型において、新たな毛細血管が関節に形成され、関節を徐々に破壊へと導く。固形腫瘍もまた、その増殖に必要な栄養分および酸素を得るために新血管の形成を刺激しなければならず、したがって、腫瘍が離れた部位に転位可能となる道を提供する。
[0030] 実験上の証拠は、悪性腫瘍が、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF);血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子−α(TNF−α)、およびその他多数といった多様な因子の生成を介して血管形成を誘導可能であることを示唆した(Liottaら、1991年、Cell 64:327−336;Hanahanら、Cell 86:353−364)。
[0031] 本明細書では、「血管形成」の語は、新血管が組織または器官へと生成することを意味し、そして内皮細胞の増殖を伴う。正常な生理学的条件下では、ヒトまたは動物は、非常に特定の限られた状況においてのみ血管形成を受ける。例えば、血管形成は、創傷治癒、胎児および胚の発生、ならびに、黄体、子宮内膜および胎盤の形成において正常に認められる。「表皮」の語は、漿液腔、リンパ管および血管に沿う平たい表皮細胞の薄層を意味する。
[0032] 制御される血管形成と制御されない血管形成はともに、同様な様式で進行すると考えられる。基底膜に囲まれた内皮細胞および周皮細胞は、毛細血管を形成する。血管形成は、内皮細胞および白血球によって放出される酵素による基底膜の侵食から始まる。次いで、血管内腔に沿う内皮細胞が基底膜から突出する。血管形成刺激剤は、内皮細胞が侵食された基底膜から遊走することを誘導する。遊走細胞は、親血管から離れて「芽」を形成し、そこで内皮細胞が有糸分裂および増殖を受ける。内皮の芽は互いに融合して毛細血管ループを形成し、新血管を作り出す。
[0033] 持続性の制御されない血管形成は、多様な疾患状態、腫瘍転移および内皮細胞の異常増殖において生じ、そしてこのような条件において見られる病理学的損傷を支持する。制御されない血管形成が存在する多様な病理学的疾患状態は、血管形成依存性または血管形成関連疾患としてともに分類されている。
[0034] 腫瘍の増殖が血管形成依存性であるという仮説は、1971年に最初に提唱された(Folkman J.,N.Engl.Jour.Med.285:1182 1186,1971年)。その最も簡潔な語で、「ひとたび腫瘍の『生着』が起こると、腫瘍細胞集団のあらゆる増加は、腫瘍に集中する新たな毛細血管の増加に先行されなければならない。」と述べられている。腫瘍の「生着」は、現在のところ、数mmの体積を占め数百万細胞を超えない腫瘍細胞集団が、既存の宿主微小血管上に残ることが可能な、腫瘍増殖の前血管相を指すと理解されている。この相を越えて腫瘍体積が膨張するには、新たな毛細血管の導入が必要である。例えば、マウスの初期前血管相における肺の微少転移は、組織切片を高倍率で顕微鏡観察しない限り検出できないであろう。
[0035] この概念を支持する間接的な証拠の例には、以下が含まれる:
[0036] マウスの皮下透明窓内に移植された腫瘍の増殖速度は、新血管新生前は遅くそして直線的であるが、新血管新生後は急速でそして指数関数的である。(Algire G Hら、Vascular reactions of normal and malignant tumors in vivo. I.Vascular reactions of mice to wounds and to normal and neoplastic transplants. J.Natl.Cancer Inst.6:73−85,1945年)
[0037] 血管が増殖しない単離され灌流された器官において増殖する腫瘍は、1〜2mmに限られるが、しかしこれをマウスに移植しそして新血管新生が始まると、この体積の>1000倍に急速に膨張する。(Folkman Jら、Tumor behavior in isolated perfused organs: In vitro growth and metastasis of biopsy material in rabbit thyroid and canine intestinal segments. Annals of Surgery 164:491−502,1966年)
[0038] 無血管性の角膜における腫瘍の増殖は、ゆっくりとそして直線的な割合で進行するが、しかし新血管新生後には指数関数的な増殖へと切り替わる。(Gimbrone,M.A.,Jr.ら、Tumor growth and neovascularization: An experimental model using the rabbit cornea. J.Natl.Cancer Institute 52:41−427,1974年)
[0038] ウサギ眼の前房の眼房水に懸濁された腫瘍は、生存し無血管性でそして<1mmの大きさに限られたままである。ひとたびこれを虹彩血管床に移植すると、新血管新生が始まりそして急速に増殖し、2週間以内に元の体積の16,000倍へと達する(Gimbrone M A Jr.ら、Tumor dormancy in vivo by prevention of neovascularization. J.Exp.Med.136:261−276)。
[0040] ニワトリ胚の絨毛尿膜に腫瘍を移植すると、腫瘍は>72時間の前血管相の間にゆっくりと増殖するが、しかし平均直径は0.93〜0.29mmを超えない。新血管新生開始後24時間以内に急速な腫瘍の膨張が起こり、そして第7日までに、この血管が新生した腫瘍は平均直径が8.0+2.5mmに達する(Knighton D., Avascular and vascular phases of tumor growth in the chick embryo. British J.Cancer,35:347−356,1977年)
[0041] ウサギ肝臓における転移の血管鋳型は、転移の大きさが不均一であることを表すが、血管新生が存在する大きさに対するカットオフポイントは比較的均一であることを示す。腫瘍は、概して直径1mmまでは無血管性であるが、しかしその直径を超えると新血管新生が生ずる(Lien W.ら、The blood supply of experimental liver metastases. II.A microcirculatory study of normal and tumor vessels of the liver with the use of perfused silicone rubber. Surgery 68:334−340,1970年)。
[0042] 膵島ベータ細胞に癌を発症するトランスジェニックマウスにおいて、血管過形成前の島の大きさは<1mmに限られる。6〜7週齢時に、4〜10%の島で新血管新生が始まり、そしてこの島から、血管形成前の島の1000倍を超える体積の、血管が新生した大きな腫瘍が生じる。(Folkman Jら、Induction of angiogenesis during the transition from hyperplasia to neoplasia. Nature 339:58−61,1989年)
[0043] VEGF(血管内皮増殖因子)に対する特異抗体は、微少血管密度を低減しreduce、そして、(ヌードマウスにおいて)血管形成の唯一のメディエータとしてVEGFに依存する三つのヒト腫瘍で、「有意または劇的な」増殖阻害を引き起こす。抗体は、in vitroで腫瘍細胞の増殖を阻害しない。(Kim K Jら、Inhibition of vascular endothelial growth factor−induced angiogenesis suppresses tumor growth in vivo. Nature 362:841−844,1993年)
[0044] 抗bFGFモノクローナル抗体は、血管形成の唯一のメディエータとしてbFGFの分泌に依存するマウス腫瘍で、70%の増殖阻害を引き起こす。抗体は、in vitroで腫瘍細胞の増殖を阻害しない。(Hori Aら、Suppression of solid tumor growth by immunoneutralizing monoclonal antibody against human basic fibroblast growth factor. Cancer Research,51:6180−6184,1991年)
[0045] bFGFの腹腔内注入は、原発腫瘍の増殖およびその転移を、腫瘍における毛細血管内皮細胞の増殖を刺激することによって増進する。腫瘍細胞自体にはbFGFに対する受容体はなく、そしてbFGFは、in vitroにおいて腫瘍細胞に対するマイトジェンではない。(Gross J Lら、Modulation of solid tumor growth in vivo by bFGF. Proc.Amer.Assoc.Canc.Res.31:79,1990年)
[0046] 特異的な血管形成阻害剤(AGM−1470)は、in vivoで腫瘍の増殖および転移を阻害するが、しかしin vitroで腫瘍細胞の増殖を阻害する活性ははるかに少ない。該阻害剤は、血管内皮細胞の増殖を、腫瘍細胞の増殖を阻害するよりも4対数低い濃度で、最大限の半分阻害する。(Ingber Dら、Angioinhibins:Synthetic analogues of fumagillin which inhibit angiogenesis and suppress tumor growth, Nature 48:555−557,1990年)。腫瘍増殖が血管形成依存的であることの間接的な臨床上の証拠もある。
[0047] (除核された眼から取り出しin vitroで解析する場合に、)硝子体に転移性のヒト網膜芽細胞腫は、無血管性の球状体に発展するが、該球状体は、生存しそしてH−チミジンを取り込むという事実にもかかわらず、<1mmに限られる。
[0048] 卵巣癌は、無血管性の小さな白色の種状(1〜3mm)として、腹膜に転位する。この移植片は、1またはそれより多くの移植片が新血管新生を始めるまではめったに大きく増殖しない。
[0049] 乳癌(Weidner N.ら、Tumor angiogenesis correlates with metastasis in invasive breast carcinoma. N.Engl.J.Med.324:1−8,1991年、および、Weidner N.ら、Tumor angiogenesis:A new significant and independent prognostic indicator in early−stage breast carcinoma, J Natl.Cancer Inst.84:1875−1887,1992年)および前立腺癌(Weidner N,Carroll P R,Flax J,Blumenfeld W,Folkman J. Tumor angiogenesis correlates with metastasis in invasive prostate carcinoma. American Journal of Pathology,143(2):401−409,1993年)における新血管新生の度合は、将来的な転移の危険性と高く相関する。
[0050] ヒト皮膚黒色腫由来の転移は、めったに新血管新生に先行されない。新血管新生の開始は、病変部の肥厚の増加および転移の危険性の増加をもたらす。(Srivastava Aら、The prognostic significance of tumor vascularity in intermediate thickness (0.76−4.0 mm thick) skin melanoma. Amer.J.Pathol.113:419−423,1988年)
[0051] 膀胱癌において、血管形成ペプチドbFGFの尿中レベルは、細胞診断よりも高感度の、状態および疾患の程度の指標である。(Nguyen Mら、Elevated levels of an angiogenic peptide, basic fibroblast growth factor, in urine of bladder cancer patients. J.Natl.Cancer Inst.85:241−242,1993年)
[0052] このように、血管形成が癌転移において大きな役割を担うことは明らかである。この血管形成活性を抑制または除去、あるいは制御および調節することが可能ならば、腫瘍は、存在はしても増殖はしないであろう。病態において、血管形成の予防は、新たな微少血管系の浸潤によって引き起こされる損傷を防ぐ可能性がある。血管形成過程の制御を標的とした療法は、これらの疾患の抑止または緩和をもたらす可能性がある。
[0053] ESM−1の発現は、恒常的でも多様なサイトカインの制御下でもあるように思われる。TNFαまたはIL−1βで処理されたHUVEC細胞は、遺伝子の発現亢進を示す。IL−4またはIFNγで処理された場合、ESM−1レベルに変化はみられなかった。TNF およびIFNγの同時投与がIL−6、IL−8、RANTESおよびICAM−1といった炎症因子の相乗的な誘導をもたらす一方で、この二つのサイトカインの組み合わせは、TNFαに誘導されるESM−1の発現亢進を阻害する(Lassaleら、1996年)。
[0054] ESM−1をHDMECから増幅し、そして発現ベクターにクローン化した。次いで、遺伝子導入されたNIH3T3細胞のプールを選択し、そしてESM−1発現についてアッセイした。有意な遺伝子過剰発現をRNAレベルで確認した後、細胞をnu/nu雌マウスに皮下注入した。ベクターを遺伝子導入したNIH3T3線維芽細胞はこれらのマウスでは増殖できず、一方で、ESM−1を遺伝子導入したこれらの細胞は3週間以内に固形腫瘍を形成した。このデータは、ESM−1が、通常は腫瘍を形成できない細胞株に対してin vivoで増殖を増大させる潜在性を含有することを示す。
[0055] ESM−1遺伝子の発現は、細胞において種々の条件下で変化することが示された。この発見は拡大され、ESM−1の発現が、結腸癌において、正常な結腸組織と比較して亢進していることが示された。加えて、強制的なESM−1の過剰発現が、in vivoでNIH3T3線維芽細胞の増殖の増大をもたらすことが示されている。
[0056] 三つの独立したインサイト・マイクロアレイ実験におけるESM−1の過剰発現は、培養HUVEC細胞で、プールしたヒト組織に比較して選択的に発現することを示した(28.8および13.3倍)。別のインサイト・マイクロアレイ実験では、コラーゲン上で増殖させた培養HMVEC細胞は、オステオポンチン上で増殖させた培養HMVEC細胞と比較して、より高い発現(>10倍)を示した。ESM−1はまた、三次元コラーゲンゲル中で管を形成している内皮細胞において、二次元に増殖した細胞と比較して差次的に発現することが見いだされた(Aitkenheadら、2002年)。
[0057] 内皮での発現に加えて、有意な数の結腸腫瘍で、ESM−1は、正常な結腸組織プールと比較して過剰発現する。10個の腫瘍のうち9個が、リアルタイム定量性逆転写ポリメラーゼ連鎖反応実験により、RNAレベルで3倍またはそれより高いレベルの発現を示した。ESM−1はまた、腎細胞癌でも過剰発現することも示された(5/14)(Aitkenheadら、2002年)。
[0058] HMVECにおいて、血管形成を刺激するマトリックス上で増殖させる場合に発現が亢進する転写物を決定するために、マイクロアレイ解析を、およそ30,000遺伝子を表すcDNAを含有するインサイト・DNAチップで行った。コラーゲン上で増殖させたHMVECから単離したRNA試料を、オステオポンチン上で増殖させたHMVECから得たRNA試料と比較した。ESM−1は、コラーゲン上で増殖させた場合に、19倍を超えて発現が亢進すると判断された。追加のマイクロアレイ実験において、HUVECのRNA由来の遺伝子発現を、6個体から生じた正常ヒト組織プール(脂肪、脳、胸部、頚部、結腸、心臓、腎臓、肝臓、骨格筋、肺、リンパ節、膵臓、胎盤、前立腺、直腸、子宮、小腸、脾臓、胃、および精巣から単離した組織よりなる)由来の遺伝子発現と比較した。ESM−1は、内皮細胞でおよそ11倍高く発現していることが見いだされた。この二つの実験結果を併せると、ESM−1は内皮細胞に発現しそして血管形成の過程に関与すると結論付けることが可能である。
[0059] この情報に基づき、我々は、ESM−1 cDNAの全長オープンリーディングフレームを、PCRによって、ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)RNAからクローニングすることを決定した。次いで、増幅した産物をpCRII−Topoベクターに連結し、そして細菌クローンを単離した。次いで、クローンを配列決定し、予想された核酸配列を確認した(図1)。
[0060] PCRによって単離したヒトESM−1遺伝子のcDNAは2096塩基対で、ノーザン解析によって予想された大きさと十分一致した。cDNAは、77塩基対の5’UTR、555塩基対のコード領域(図1A)および632塩基対の3’UTRを含有する。推定される開始コドンであるaacATGは、コザックの法則によって判定されるように良好な開始配列である(Kozak,1999年)。標準的なポリアデニル化シグナルであるAATAAAは、ポリA付加部位の20塩基対上流に存在する。555塩基対のORFは、20096ダルトンの分子量の184アミノ酸タンパク質をコードする(図1A)。推定アミノ酸配列のSignalPによる解析は、タンパク質が、そのN末端に切断された19アミノ酸のシグナル配列を含有する可能性を>99.9%有すると予測されることを示す(図2、下)。シグナル配列のないタンパク質の予測分子は、18123ダルトンである。成熟タンパク質は、いずれの推定N結合型糖鎖付加部位も有さないが、しかしおそらく多くのジスルフィド結合に関与するであろう18残基を含有する高いシステイン含量を有し、そして、分泌タンパク質のさらなる証拠である。
[0061] 公知の機能ドメインおよびモチーフと比較することで、ESM−1前駆タンパク質のアミノ酸26〜90が、インスリン成長因子結合ドメインと有意な相同性を持つことが明らかとなった(図1B)。このドメイン(pfam00219およびsmart00121)は、インスリン様成長因子に高親和性を有するファミリータンパク質ホモログに特有のものである。このファミリーのメンバーには、IGFBP1〜6(Shimasakiら、1991年)、およびMAC25(Murphyら、1993年)が含まれる。前駆ヒトESM−1タンパク質の機能ドメインを、さらに図2(上)に図解する。成熟前タンパク質の19アミノ酸は切断可能なシグナルペプチドを含有し、残基29〜90はインスリン成長因子結合ドメイン(成熟タンパク質では残基7〜71)を含有する。ヒトESM−1タンパク質の他種由来タンパク質に対する比較は、ラットおよびマウスでオルソログがあることを示す(図3)。この比較により、前駆ESM−1タンパク質は3種すべてにおいて184アミノ酸であり、ヒトタンパク質は、ラットおよびマウスタンパク質とそれぞれ、74.1%および78.4%同一であり、そして、79.5%および83.8%類似であることが明らかとなる。
[0062] ヒトゲノム配列の解析は、ESM−1が5p13に位置し、上流DNA鎖(upper DNA strand)から転写されることを示す(図4)。一次転写産物は、それぞれが標準的なGT−AGスプライス部位を含有する、それぞれ378塩基対、150塩基対および1568塩基対の3エキソンとして処理される。第一エキソンは5’UTRを含有し、そしてシグナル配列およびインスリン成長因子結合ドメインを完全に包含する公知の機能ドメインをコードする。第二エキソンは、追加の50アミノ酸をコードし、そして第三の最後のエキソンは残りの35アミノ酸および大きな3’UTR(>1450塩基対)をコードする。
[0063] 癌におけるESM−1 mRNAの発現の倍数変化を、マイクロアレイ解析により測定した(図5)。それぞれが乳癌、結腸癌もしくは腎臓癌のいずれかに罹患している10名の患者または肺癌を有する11名の患者由来の腫瘍を、ESM−1 mRNAの発現を各組織型由来の正常組織と比較することによって解析した。いずれの乳癌患者も、有意なESM−1の差次的な調節を示さなかった。対照的に、3名の結腸腫瘍患者(図5、結腸患者2、4および9)および腎臓腫瘍患者(腎臓患者2、3および5)および8名の肺腫瘍患者(肺患者4〜11)は、ESM−1遺伝子発現の>2倍増加を示した。3名の結腸腫瘍患者での平均発現増加は2.28倍であり、そして3名の腎臓患者では2.38倍であったが、一方、8名の肺腫瘍患者では、平均ESM−1発現増加は3.10倍よりも大きかった。
[0064] 次いで、マイクロアレイ観測を、結腸癌の場合において、定量性リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−RT−PCR)によりさらに検証した。10個の結腸癌のうち9個が、正常結腸組織プールにみられるレベルと比較して、ヒトESM−1の有意な過剰発現を示した(図6)。これらの腫瘍での過剰発現のレベルは、3倍から50倍以上の範囲であった。
[0065] RT−RTPCRを、ヒトESM−1を発現する細胞を測定する目的で、結腸腫瘍細胞株のアレイについても行った(図7)。RNAレベルが最も低かった細胞株DLD−1と比較すると、結腸細胞株はばらついた発現の範囲を示した。SW480およびHCT116株では11〜26倍高く発現したが、一方で、VM46細胞はほぼ1000倍高いESM−1レベルを示した。このデータは、遺伝子を調節するための動物モデルの確立に有用であろう。
[0066] ESM−1が腫瘍の内皮に発現しているかどうかを測定するために、我々は、Tie2由来のプロモーター配列を緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子と組み合わせて含有する、C57/B6系バックグラウンドに戻し交配したトランスジェニックマウスを利用した(Schlaegerら、1997年)。このマウスのレポーター遺伝子は、すべての血管内皮細胞の至るところに独占的にそして一様に発現する。この導入遺伝子を含有するマウスに、ルイス肺腫瘍細胞株または黒色腫B16株のいずれかを注入し、そして腫瘍を確立するのに数週間を置く。腫瘍を取り出し、次いで腫瘍から内皮細胞をFACSによって選別し、そしてRNAを、内皮細胞と内皮細胞を含まない残りの腫瘍細胞集団の両方から単離する(参考文献、または材料および方法)。定量性リアルタイムRT−PCRにより、ESM−1遺伝子が、内皮細胞RNAにおいて、内皮細胞RNAを含まない対応する腫瘍細胞集団よりも、かなり高レベルに発現することが示される(図8)。ルイス肺腫瘍由来の内皮細胞は、腫瘍表皮細胞と比較して約68倍高いESM−1発現を示し、一方で、B16由来の内皮細胞は、内皮細胞を含まないB16腫瘍細胞集団と比較して45倍を超える過剰発現を示す。
[0067] ESM−1が腫瘍形成を誘導または促進する潜在性を評価するため、遺伝子をCMVプロモーターによって促進される発現コンストラクトに乗せ、そしてNIH3T3細胞に遺伝子導入した。安定なNIH3T3細胞プールを、ESM−1導入遺伝子発現についてアッセイした(図9A)。次いで、細胞をCD−1 nu/nu雌マウスに皮下注入し、そして増殖を経時的に評価した。ESM−1遺伝子を過剰発現するNIH3T3細胞は、ベクター対照を導入した同じ細胞と比較して有意な増殖の増大を示し(図9B)、このことは、ESM−1が線維芽細胞の増殖を増大させるよう作用可能であることを示す。
[0068] In situハイブリダイゼーション解析を、結腸癌、腎臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌および肺癌を含む、300以上もの種々の型の腫瘍試料ならびに非腫瘍組織について行った(図10)。ESM−1は、腎細胞癌の28.1%および乳癌の9.6%に発現することが見いだされた。正常組織には、ほとんどないし全く染色が見られなかった。腫瘍試料の連続切片を、各切片において血管を同定するために、ヒト第VIII因子抗体(DAKO抗体#M0616)を用いて免疫組織化学染色した。次いで、腫瘍を、ESM−1発現を示すものとESM−1を発現しないものとに分類した。ESM−1発現を示すこれらの腫瘍と第VIII因子によって測定される血管密度との間には、統計学的に有意な相関がある(図11)。このことは、ESM−1が血管形成の過程において役割を担っている可能性があることを示唆する。
[0069] 本発明のある態様は、ESM−1ポリペプチドをコードする核酸配列である。好ましくは、核酸配列は以下からなる群より選択される:
配列番号:1のDNA配列と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能な核酸配列、または遺伝子コードの縮重がなければ前記条件下でハイブリダイズ可能であろう核酸配列;
配列番号:1のDNA配列と少なくとも約80%の相同性を有する核酸配列;および、
配列番号:1の相補配列。
[0070] 本発明の別の態様は、配列番号:2のESM−1アミノ酸配列、および成熟した分泌型ESM−1である配列番号:2のアミノ酸20〜184(配列番号:19)である。アミノ酸配列は、以下からなる群より選択してもよい:
配列番号:2または配列番号:19のアミノ酸配列と少なくとも約70%の相同性を有するアミノ酸配列;
配列番号:2または配列番号:19のアミノ酸配列の、置換、欠失または挿入バリアント;および、
配列番号:2または配列番号:19の対立遺伝子バリアント。
配列バリアント
[0071] ESM−1のアミノ酸配列バリアントをコードするDNAを、当該技術分野において公知の種々の方法によって調製することが可能である。この方法には、限定されるわけではないが、自然源からの単離(自然発生アミノ酸配列バリアントの場合)、または初期に調製されたESM−1バリアント型または非バリアント型の、オリゴヌクレオチドを介した(または部位特異的な)突然変異誘発、PCR突然変異誘発およびカセット突然変異誘発による調製が含まれる。これらの技術に、ESM−1核酸(DNAもしくはRNA)、またはESM−1核酸に相補的な核酸を利用してもよい。
[0072] オリゴヌクレオチドを介した突然変異誘発は、ESM−1 DNAの置換、欠失および挿入バリアントを調製する好ましい方法である。この技術は、例えばAdelmanら、DNA,2:183(1983年)によって記載されるように、当該技術分野において周知である。簡潔に言えば、ESM−1 DNAを、所望の変異をコードするオリゴヌクレオチドをDNA鋳型とハイブリダイズさせることによって変え、該鋳型は、ESM−1の不変または天然DNA配列を含有するプラスミドまたはバクテリオファージの一本鎖型である。ハイブリダイゼーション後に、DNAポリメラーゼを、このようにオリゴヌクレオチドプライマーを組み入れそしてESM−1 DNAにおける選択された変化をコードするであろう鋳型の第二の相補鎖全体を合成するのに用いる。
[0073] 一般的には、少なくとも25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドを用いる。最適なオリゴヌクレオチドは、変異をコードするヌクレオチドのいずれの側についても鋳型に完全に相補的な12〜15ヌクレオチドを有するであろう。このことは、オリゴヌクレオチドが一本鎖DNA鋳型分子に適切にハイブリダイズするであろうことを確実にする。オリゴヌクレオチドは、Creaらによって記載されたもの(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75:5765,1978年)などの当該技術分野において公知の技術を用いて、容易に合成される。
[0074] 一本鎖DNA鋳型をまた、二本鎖プラスミド(または他の)DNAを標準的な技術を用いて変性させることによって、作製してもよい。
[0075] 天然DNA配列を変えるには(例えば、アミノ酸配列バリアントを作製するために)、オリゴヌクレオチドを、適切なハイブリダーゼーション条件下で一本鎖鋳型とハイブリダイズさせる。次いで、DNAを重合させる酵素、通常はDNAポリメラーゼIのクレノー断片を、合成用プライマーとしてオリゴヌクレオチドを用いて鋳型の相補鎖を合成するために加える。したがって、ヘテロ二重鎖分子は、一方のDNA鎖がESM−1の変異型をコードし、そしてもう一方の鎖(元の鋳型)が天然の不変ESM−1配列をコードするように形成される。次いで、このヘテロ二重鎖分子を、適当な宿主細胞、通常は大腸菌(E.coli)JM101などの原核生物に形質転換させる。この細胞をアガロースプレート上に播き、そして、変異DNAを含有する細菌コロニーを同定するために、32−リン酸で放射性標識したオリゴヌクレオチドプライマーを用いてスクリーニングする。次いで、変異領域を取り出し、そして、タンパク質産生に適したベクター、通常は、適切な宿主の形質転換に典型的に使用される型の発現ベクターに挿入する。
[0076] 直上に記載される方法を、プラスミドの両鎖が変異を含有するホモ二重鎖分子を作製するように修正してもよい。修正は次のとおりである:一本鎖オリゴヌクレオチドを、上記のように一本鎖鋳型とアニールする。三つのデオキシリボ核酸、すなわちデオキシリボアデノシン(dATP)、デオキシリボグアノシン(dGTP)およびデオキシリボチミジン(dTTP)を、dCTP−(α35S)と呼ばれる修飾チオデオキシリボシトシン(アマシャム・コーポレーションから入手可能である)と組み合わせる。この混合物を、鋳型オリゴヌクレオチド複合体に加える。この混合物にDNAポリメラーゼを加えると、変異塩基を除き鋳型と同一のDNA鎖が生成する。加えて、この新しいDNA鎖は、dCTPの代わりにdCTP−(α35S)を含有するであろうし、制限エンドヌクレアーゼ消化から保護する役割を果たす。二本鎖のヘテロ二重鎖の鋳型鎖を適切な制限酵素を用いて切れ目を入れた後に、鋳型鎖をExoIIIヌクレアーゼまたは別の適切なヌクレアーゼを用いて、突然変異誘発を起こす予定の部位を含有する領域を含めて消化することが可能である。次いで、反応を止めて、部分的にのみ一本鎖である分子が残る。次いで、完全な二本鎖DNAのホモ二重鎖を、すべての四つのデオキシリボ核酸三リン酸、ATPおよびDNAリガーゼの存在下で、DNAポリメラーゼを用いて形成する。次いで、上記のように、このホモ二重鎖分子を、大腸菌JM101などの適当な宿主細胞へ形質転換させることが可能である。
[0077] 1アミノ酸より多くが置換されたESM−1変異体をコードするDNAを、いくつかの方法のうちの一つによって生成してもよい。このアミノ酸がポリペプチド鎖において互いに近接して位置する場合、所望のアミノ酸置換すべてをコードする一つのオリゴヌクレオチドを用いて同時に変異させてもよい。しかしながら、このアミノ酸が互いにある程度離れて位置する場合は(約10アミノ酸より多く離れている)、所望の変化をすべてコードする一つのオリゴヌクレオチドを生成することはより難しい。代わりに、二つの代替方法のうちの一つを使用してもよい。
[0078] 最初の方法では、弛緩する各アミノ酸について別々のオリゴヌクレオチドを作製する。次いで、オリゴヌクレオチドを、一本鎖鋳型DNAと同時にアニールし、そして鋳型から合成される第二DNA鎖は、所望のアミノ酸置換のすべてをコードするであろう。
[0079] もう一つの方法は、所望の変異を作出するために、二巡またはそれより多くの突然変異誘発を伴う。最初の一巡は、一部位のみの変異体について記載したとおりであり:野生型DNAを鋳型として用い、最初の所望のアミノ酸置換(単数または複数)をコードするオリゴヌクレオチドをこの鋳型とアニールし、次いでヘテロ二重鎖DNA分子を作製する。二巡目の突然変異誘発には、一巡目の突然変異誘発で作出された変異DNAを鋳型として利用する。したがって、この鋳型はすでに1またはそれより多くの変異を含有する。次いで、さらなる所望のアミノ酸置換(単数または複数)をコードするオリゴヌクレオチドを、この鋳型とアニールし、そしてこのとき、結果として生じたDNA鎖は、一巡目と二巡目両方の突然変異誘発由来の変異をコードする。結果として得られたこのDNAを、三巡目の突然変異誘発などにおいて鋳型として用いることが可能である。
[0080] PCR突然変異誘発もまた、ESM−1のアミノ酸バリアントを作製するのに適している。以下の考察ではDNAについて言及するが、当然のことながら、この技術はRNAに関しても適用される。PCR技術は、概して以下の手順を参照する(”Erlich、同上、R.Higuchiによる章,61〜70ページ”を参照されたい):少量の鋳型DNAをPCRにおける出発原料として用いる場合、鋳型DNAにおける対応する領域と配列がわずかに異なるプライマーを、プライマーが鋳型と異なる位置のみにおいて鋳型配列と異なる特異DNA断片を比較的大量に作製するのに用いることが可能である。変異をプラスミドDNAに導入するため、プライマーの一方を、変異の位置がオーバーラップしそして変異を含有するように設計し;もう一方のプライマーの配列は、プラスミドの逆鎖の伸長配列と同一でなければならないが、しかしこの配列は、プラスミドDNAに沿ったいずれの場所に位置することも可能である。しかしながら、第二プライマーの配列は、最終的にはプライマーに結合したDNAの増幅領域全体を容易に配列決定できるよう、第一プライマーから200ヌクレオチド以内に位置することが好ましい。ここで述べたもののようなプライマー対を用いたPCR増幅により、鋳型の複製が若干誤りがちであることから、プライマーによって特定される変異の位置および、ことによると他の位置において異なるDNA断片集団が生じる結果となる。
[0081] 鋳型の生成物に対する割合が極めて低い場合、大部分の生成DNA断片は所望の変異を組み入れる。この生成物は、PCR鋳型として働くプラスミド中の対応する領域を、標準的なDNA技術を用いて置換するのに用いられる。離れた位置における変異を、第二の変異プライマーを用いるか、または別の変異プライマーを用いて第二のPCRを行いそして結果として生じた二つのPCR断片を同時に3(またはそれより多くの)部分の連結によってベクター断片に連結させるかのいずれかによって、同時に導入することが可能である。
[0082] バリアントを調製する別の方法であるカセット突然変異誘発は、Wellsら(Gene,34:315,1985年)によって記載された技術に基づいている。出発原料は、変異させるESM−1 DNAを含むプラスミド(または他のベクター)である。変異させるESM−1 DNAにおけるコドンは同定されている。同定された変異部位の各側には、特有の制限エンドヌクレアーゼ部位がなければならない。もしこういった制限部位が存在しなければ、上述のオリゴヌクレオチドを介した突然変異誘発法を用いて制限部位をESM−1 DNA中の適切な位置に導入して作製してもよい。制限部位をプラスミドに導入した後、プラスミドをこの部位で切断し線状にする。制限部位間のDNA配列をコードするがしかし所望の変異を含有する二本鎖オレゴヌクレオチドを、標準的な手順を用いて合成する。二つの鎖を別々に合成し、次いで標準的な技術を用いて互いにハイブリダイズさせる。この二本鎖オリゴヌクレオチドは、カセットと称される。このカセットは、直接プラスミドと連結可能なように、線状プラスミドの末端に適合する3’および5’末端を有するよう設計される。このプラスミドは、このとき、変異ESM−1 DNA配列を含む。
タンパク質の共有結合修飾
[0083] 本発明のタンパク質または抗体の共有結合修飾は、本発明の範囲に含まれる。ある型の共有結合修飾は、ポリペプチドの標的アミノ酸残基を、本発明のタンパク質の選択された側鎖またはNもしくはC末端残基と反応可能な有機誘導体化剤を用いて反応させることを含む。二官能性剤を用いた誘導体化は、例えば、抗体の精製方法で用いるために、タンパク質を非水溶性サポートマトリックスまたは表面と架橋するのに有用であり、逆もまた同様である。一般に用いられる架橋剤には、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタングルタルアルデヒド、例えば4−アジドサリチル酸エステル類などのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル類、3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)などのジスクシンイミジルエステル類、ビス−N−マレイミド−1,8−オクタンなどの二官能性マレイミド類を含むホモ二官能性イミドエステル類、およびメチル−3−[(パジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートなどの剤が含まれる。
[0084] 他の修飾には、グルタミン残基およびアスパラギン残基の対応するグルタミン酸残基およびアスパラギン酸残基それぞれへの脱アミド化、プロリンおよびリジンの水酸化、セリン残基またはスレオニン残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のアミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties, W.H.Freeman&Co.、サンフランシスコ、79〜86ページ(1983年)を参照されたい)、N末端アミンのアセチル化、ならびに、任意のC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
[0085] 本発明の範囲に含まれるポリペプチドの別の型の共有結合修飾は、ポリペプチドの天然グリコシル化パターンを変えることを含む。「天然グリコシル化パターンを変える」とは、本明細書において、天然配列にみられる1またはそれより多くの糖質部分を欠失させ(内在するグリコシル化部位を除去するか、あるいはグリコシル化を化学的および/または酵素的な手段で欠失させることによって)、かつ/あるいは、天然配列には存在しない1またはそれより多くのグリコシル化部位を付加することを、表す目的で意図される。加えて、このフレーズは、存在する種々の糖質部分の性質および比率の変化を伴う、天然タンパク質のグリコシル化の質的変化を含む。ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加を、アミノ酸配列を変えることによって達成することが可能である。この変化は、例えば、1またはそれより多くのセリンまたはスレオニン残基を、天然配列(O結合型グリコシル化部位に対して)に付加、あるいは置換することによって成し遂げることが可能である。アミノ酸配列を、特に、所望のアミノ酸となるであろうコドンを作出するように、ポリペプチドをコードするDNAを予め選択した塩基において変異させることによって、DNAレベルにおける変化を通じて所望により変えることが可能である。
[0086] ポリペプチドの糖質部分の数を増やす別の手段は、グリコシドのポリペプチドへの化学的または酵素的カップリングによる。このような方法は、当該技術分野において、例えば、1987年9月11日に刊行されたWO 87/05330、および、AplinおよびWriston、CRC Crit.Rev.Biochem.,259〜306ページ(1981年)に記載されている。
[0087] ポリペプチドに存在する糖質部分の除去は、化学的または酵素的に、あるいはグリコシル化の標的となるアミノ酸残基をコードするコドンを変異的に置換することによって成し遂げることが可能である。化学的な脱グリコシル化技術は当該技術分野において公知であり、そして例えば、Hakimuddinら、Arch.Biochem.Biophys,259:52(1987年)、および、Edgeら、Anal.Biochem.,118:131(1981年)によって記載されている。ポリペプチドの糖質部分の酵素的切断を、Thokakuraら、Meth.Enzymol.,138:350(1987年)によって記載されるように、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼを用いることによって成し遂げることが可能である。
[0088] 本発明のタンパク質または抗体の別の型の共有結合修飾は、米国特許第4,640,835;4,496,689;4,301,144;4,670,417;4,791,192または4,179,337において説明されるように、ポリペプチドまたは抗体を、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンといった種々の非タンパク質性ポリマーの一つに連結させることを含む。
[0089] ESM−1、アゴニスト、アンタゴニストまたは抗体にみられるアミノ酸末端のα−アミノ基またはリジンのε−アミノ基のいずれかと反応可能な官能基には、以下のものが含まれる:p−ニトロフェニルまたはスクシンイミジルなどのカルボネート;カルボニルイミダゾール;アズラクトン;環状イミドチオン;イソシアネートまたはイソチオシアネート;塩化トレシル(EP 714 402、EP 439 508);およびアルデヒド。ESM−1、アゴニスト、アンタゴニストまたは抗体のカルボキシル酸基、反応性カルボニル基および酸化糖質部分と反応可能な官能基には、以下のものが含まれる:第1級アミン;および、アシルヒドラジン、カルバゼート、セミカルバメート、チオカルバゼートなどのヒドラジンおよびヒドラジド官能基。ESM−1、アゴニスト、アンタゴニストまたは抗体において利用可能であるならば、メルカプト基もまた、チオール類;マレイミド類、スルホン類およびフェニルグリオキサール類などの反応基を有する適切に活性化されたポリマーへの結合部位として用いることが可能であり;例えば、米国特許第5,093,531を参照されたく、その開示は本明細書では参照によって援用する。求電子中心と反応可能な他の求核基には、限定されるわけではないが、例えば、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシル、チオール、活性メチレンなどが含まれる。
[0090] 本発明のある好ましい態様において、第2級アミンまたはアミド結合を、ESM−1、アゴニスト、アンタゴニストまたは抗体のN末端アミノ基またはリジンのε−アミノ基および活性化PEGを用いて形成する。本発明の別の好ましい側面において、第2級アミン結合を、Chamowら、Bioconjugate Chem.5:133−140(1994年)および米国特許第5,824,784に記載されるように、NaCNBH、NaBH、ピリジンボランなどの適当な還元剤を用いて還元することによって、ESM−1、アゴニスト、アンタゴニストまたは抗体のN末端第1級アミノ基と単鎖または分岐鎖PEGアルデヒドとの間に形成する。
[0091] 本発明の別の好ましい態様において、スクシンイミジルエステル類、環状イミドチオン類などのアミド形成リンカーで活性化したポリマーを、ESM−1、アゴニスト、アンタゴニストまたは抗体とポリマーとの間の結合をもたらすのに用い、例えば、米国特許第5,349,001;米国特許第5,405,877;および、Greenwaldら、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst. 17:101−161,2000年を参照されたく、本明細書においては参照によって援用する。ESM−1、アゴニスト、アンタゴニストまたは抗体の遊離アミノ基と結合してもよいある好ましい活性化ポリ(エチレングリコール)は、単鎖または分岐鎖N−ヒドロキシスクシンイミドポリ(エチレングリコール)を含み、ポリ(エチレングリコール)のコハク酸エステル類をN−ヒドロキシスクシンイミドで活性化させることによって調製してもよい。
[0092] 本発明の他の好ましい態様は、ポリマーとESM−1、アゴニスト、アンタゴニストまたは抗体とをε−アミノ基または他の基を介して共有結合を形成させるのに、他の活性化ポリマーを用いることを含む。例えば、末端が活性化されたポリマーのイソシアネートまたはイソチオシアネート型を、リジンのアミノ基と、尿素またはチオ尿素に基づいた結合を形成するのに用いることが可能である。
[0093] 本発明の別の好ましい側面において、米国特許第5,122,614、5,324,844および5,612,640に記載されるように、カルバメート(ウレタン)結合は、タンパク質アミノ基と形成され、本明細書においては参照によって援用する。例には、N−スクシンイミジルカルボネート、パラ−ニトロフェニルカルボネートおよびカルボニルイミダゾールにより活性化されたポリマーが含まれる。本発明の別の好ましい態様において、PEGのベンゾトリアゾールカルボネート誘導体は、ESM−1、アゴニスト、アンタゴニストまたは抗体のアミノ基と連結する。
DNAのクローニングビヒクルへの挿入
[0094] 天然またはバリアントESM−1をコードするcDNAまたはゲノムDNAを、さらなるクローニング(DNA増幅)または発現のために、複製可能であるベクターに挿入する。多くのベクターが利用可能であり、そして適切なベクターの選択は、1)DNA増幅とDNA発現のいずれに用いるのか、2)ベクターに挿入されるDNAの大きさ、そして、3)ベクターを用いて形質転換される宿主細胞によって決まるであろう。各ベクターは、その機能(DNAの増幅またはDNAの発現)および適合する宿主細胞によって決まる種々のコンポーネントを含有する。ベクターコンポーネントには、限定されるわけではないが、通常は、1またはそれより多くの次のものが含まれる:シグナル配列、複製起点、1またはそれより多くのマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終結配列。
複製起点コンポーネント
[0095] 発現ベクターおよびクローニングベクターはともに、1またはそれより多くの選択された宿主細胞において、ベクターに複製させることを可能にする核酸配列を含有する。通常は、クローニングベクターにおいて、この配列は、宿主染色体DNAとは独立にベクターに複製させることを可能にする配列であり、そして複製起点または自己複製配列を含む。このような配列は、種々の細菌、酵母およびウイルスについて周知である。プラスミドpBR322由来の複製起点はほとんどのグラム陰性菌に適し、2μプラスミドの起点は酵母に適し、そして種々のウイルスの起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は、哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。概して、複製起点コンポーネントは、哺乳動物の発現ベクターには必要でない(初期プロモーターを含有するという理由のみから、SV40の起点を典型的に用いてもよい)。
[0096] ほとんどの発現ベクターは「シャトル」ベクターであり、すなわち、該ベクターを、少なくとも1種類の生物体において複製可能であるが、しかし発現させるために別の生物体に導入することが可能である。例えば、ベクターを大腸菌でクローニングし、次いで、同じベクターを、宿主細胞染色体とは独立に複製可能でないにもかかわらず、発現させるために、酵母または哺乳動物細胞に導入する。
[0097] DNAを、宿主ゲノムに挿入することによっても増幅してよい。これは、例えば、桿菌ゲノムDNAに見つけられる配列に相補的なDNA配列をベクター中に含むことによって、桿菌(Bacillus)種を宿主として用いて容易に達せられる。このベクターを用いて桿菌に遺伝子導入する結果として、ゲノムとの相同組換えおよびESM−1 DNAの挿入が起こる。しかしながら、ESM−1をコードするゲノムDNAを回収するのは、制限酵素消化がESM−1 DNAを切断するのに必要とされるために、外因的に複製されたベクターよりも複雑である。
遺伝子コンポーネントの選択
[0098] 発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択マーカーとも称される選択遺伝子を含有すべきである。この遺伝子は、選択培地中で増殖させた形質転換された宿主細胞が生存するかあるいは増殖するのに必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含有するベクターで形質転換されなかった宿主細胞は、培地中で生存しないであろう。典型的な選択遺伝子は、(a)例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートまたはテトラサイクリンといった抗生物質または他の毒素に対する耐性を与える、(b)栄養要求性の欠損を補完する、あるいは、(c)例えば桿菌のD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子といった、複合培地からは得られない決定的な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
[0099] 選択スキームの一例は、宿主細胞の増殖を停止する薬物を利用する。異種遺伝子での形質転換に成功しているこの細胞は、薬物耐性を与えるタンパク質を発現し、それゆえに選択レジメンを残る。このような優性選択の例は、薬剤であるネオマイシン(Southernら、J.Molec.Appl.Appl.Genet.,1:327,1982年)、ミコフェノール酸(Mulliganら、Science,209:1422,1980年)またはハイグロマイシン(Sugdenら、Mol.Cell.Biol.,5:410−413,1985年)を用いる。上に与えられた3例は、適切な薬物であるG418もしくはネオマイシン(ジェネティシン)、xgpt(ミコフェノール酸)またはハイグロマイシンそれぞれに対する耐性を伝達するのに、真核生物の制御下で細菌遺伝子を使用する。
[00100] 哺乳動物細胞に対する適当な選択マーカーの別の例は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはチミジンキナーゼといった、ESM−1核酸を取り込む能力がある細胞を同定可能なものである。哺乳動物細胞の形質転換体を、取り込まれたマーカーを有することに基づいて、形質転換体のみが唯一生存するのに適した選択圧下に置く。選択圧は、培地中選択剤濃度が連続的に変化する条件下で形質転換体を培養することによって与えられ、その結果として選択遺伝子とESM−1をコードするDNAの双方の増幅をもたらす。増幅は、増殖に決定的なタンパク質の産生をさらに要求する遺伝子が、組換え細胞の連続した世代の染色体内でタンデムに繰り返される工程である。ESM−1の増加量は、増幅されたDNAから合成される。
[00101] 例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞を、まず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキセート(Mtr)を含有する培地中で、すべての形質転換体を培養することによって同定する。野生型DHFRを用いる場合、適切な宿主細胞はDHFR活性の欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株であり、UrlaubおよびChasinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216,1980年によって記載されるように調製および増殖される。次いで、形質転換された細胞を、増加させたメトトレキセート濃度に曝露する。このことは、DHFR遺伝子の複数のコピーの合成をもたらし、そして付随して、PF4A受容体をコードするDNAといった、発現ベクターを含む他のDNAの複数のコピーの合成をもたらす。この増幅技術は、例えばMtxに高度耐性の変異DHFR遺伝子を用いる場合に、内因性DHFRの存在にかかわらず、例えば、ATCC番号CCL61 CHO−K1などのいかなる他の適当な宿主を用いても、使用可能である(EP 117,060)。あるいは、PF4A受容体、野生型DHFRタンパク質および、アミノグリコシド3’リン酸トランスフェラーゼ(APH)などの別の選択マーカーをコードするDNA配列を用いて、形質転換または同時形質転換させた宿主細胞(特に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)を、アミノグリコシド系抗生物質、例えばカナマイシン、ネオマイシンまたはG418などの選択マーカーに対する選択剤を含有する培地中で細胞を増殖させることによって、選択することが可能である。米国特許第4,965,199を参照されたい。
[00102] 酵母における使用に適した選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcombら、Nature,282:39,1979年;Kingsmanら、Gene,7:141,1979年;または、Tschemperら、Gene,10:157,1980年)。trp1遺伝子は、選択マーカーを、トリプトファン中で増殖する能力を欠く酵母変異株、例えば、ATCC番号44076またはPEP4−1に提供する(Jones,Genetics,85:12,1977年)。次いで、酵母宿主細胞ゲノムにおけるtrp1損傷の存在は、トリプトファン非存在下での増殖によって形質転換を検出するのに効果的な環境を提供する。同様に、Leu2欠損酵母株(ATCC 20,622または38,626)を、Leu2遺伝子を有する公知のプラスミドによって補完する。
プロモーターコンポーネント
[00103] 発現ベクターおよびクローニングベクターは、宿主生物体によって認識されそしてESM−1核酸と機能可能に連結されたプロモーターを、通常は含有する。プロモーターは、構造遺伝子の開始コドンの上流(5’)(概して、約100〜1000塩基対以内)に位置する非翻訳領域であり、機能可能に連結されたESM−1などの特定の核酸配列の転写および翻訳を制御する。このようなプロモーターは、典型的には誘導的と構成的の2種類に分類される。誘導的プロモーターは、例えば栄養素の有無あるいは温度変化といった培養条件の変化に応答して、該プロモーター制御下でDNAからの転写レベルの増加を開始するプロモーターである。現段階では、種々の潜在的な宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。これらのプロモーターは、制限酵素消化によってプロモーターを元のDNAから取り出し、そして単離されたプロモーターをベクターに挿入することによって、ESM−1をコードするDNAと機能可能に連結させる。天然ESM−1プロモーター配列および多くの異種プロモーターはともに、ESM−1 DNAの増幅および/または発現を導くのに用いてもよい。しかしながら、異種プロモーターの方が、天然ESM−1プロモーターと比較して、多くの転写および発現したESM−1の高度産生を概して可能にするため、好ましい。
[00104] 原核生物宿主に用いられるのに適したプロモーターには、β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系(Changら、Nature,275:615,1978年;および、Goeddelら、Nature,281:544,1979年)、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel,Nucleic Acids Res.,8:4057,1980年、およびEP 36,776)およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーター(deBoerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,20:21−25,1983年)が含まれる。しかしながら、他の公知の細菌プロモーターは適している。そのヌクレオチド配列は公開されており、それによって、当業者が、任意の必要な制限部位を供給するリンカーまたはアダプターを用いて、該プロモーターをESM−1をコードするDNAに機能可能に連結させることが可能である(Siebenlistら、Cell,20:269,1980年)。細菌系で用いられるプロモーターはまた、通常は、ESM−1をコードするDNAと機能可能に連結されたシャイン−ダルガノ(S.D.)配列を含有するであろう。
[00105] 酵母宿主とともに用いられるのに適した促進配列には、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzemanら、J.Biol.Chem.,255:2073,1980年)または、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼなどの他の解糖酵素(Hessら、J.Adv.Enzyme Reg.,7:149,1968年;および、Holland,Biochemistry,17:4900,1978年)が含まれる。
[00106] 他の酵母プロモーターは、増殖条件によって制御される転写の利点をさらに有する誘導的プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼならびにマルトースおよびガラクトース利用に関与する酵素のプロモーター領域である。酵母発現で用いるのに適したベクターおよびプロモーターは、Hitzemanら、EP 73,657Aにさらに記載される。酵母エンハンサーもまた、酵母プロモーターとともに好都合に用いられる。
[00107] プロモーター配列は、真核生物について公知である。実質的には、すべての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位からおよそ25〜30塩基上流に位置する、ATに富む領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70〜80塩基上流に見つけられる別の配列は、CXCAAT領域であり、Xはいずれのヌクレオチドであってもよい。ほとんどの真核生物遺伝子の3’末端には、コード配列の3’末端にポリAテールを付加するためのシグナルであってもよいAATAAA配列がある。これらの配列をすべて、哺乳動物発現ベクターに適切に挿入する。
[00108] 哺乳動物宿主細胞におけるベクターからのESM−1転写は、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(1989年7月5日に刊行されたUK 2,211,504)、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよび最も好ましくはサルウイルス40(SV40)などのウイルスゲノムから得たプロモーターによって、例えばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターなどの異種哺乳動物プロモーターから、熱ショックプロモーターから、そして通常はESM−1配列に関連するプロモーターから、このようなプロモーターが宿主細胞系と適合するという条件で、制御される。
[00109] SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点も含有するSV40制限酵素断片として、好都合に得られる。Fiersら、Nature,273:113(1978年);MulliganおよびBerg、Science,209:1422−1427(1980年);Pavlakisら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:7398−7402(1981年)。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限酵素断片として、好都合に得られる。Greenawayら、Gene,18:355−360(1982年)。ウシパピローマウイルスをベクターとして用いた哺乳動物宿主におけるDNA発現系は、米国特許第4,419,446に開示されている。この系の修飾は、米国特許第4,601,978に記載されている。サル細胞における免疫インターフェロンをコードするcDNAの発現に関する、Grayら、Nature,295:503−508(1982年);マウス細胞における単純ヘルペスウイルス由来チミジンキナーゼプロモーターの制御下でのヒトβ−インターフェロンcDNAの発現に関する、Reyesら、Nature,297:598−601(1982年)、培養マウスおよびウサギ細胞におけるヒトインターフェロンβ1遺伝子の発現に関する、CanaaniおよびBerg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:5166−5170(1982年)、そして、CV−1サル腎細胞、ニワトリ胚性線維芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞およびマウスNIH3T3細胞における、ラウス肉腫ウイルスの末端反復配列をプロモーターとして用いた細菌CAT配列の発現に関する、Gormanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:6777−6781(1982年)も参照されたい。
エンハンサーエレメントコンポーネント
[00110] 高等な真核生物による本発明のESM−1をコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することによってたいていは増加する。エンハンサーは、DNAのシス作動性エレメントであり、通常は約10〜300塩基対であって、その転写を増加させるためにプロモーターに作用する。エンハンサーは比較的配向および位置に依存せず、転写単位の5’(Laiminsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:993,1981年)および3’(Luskyら、Mol.Cell Bio.,3:1108,1983年)、イントロン中(Banerjiら、Cell,33:729,1983年)、ならびにコード配列自体の中(Osborneら、Mol.Cell Bio.,4:1293,1984年)に見つけられている。現在のところ、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテインおよびインスリン)由来の多くのエンハンサー配列が公知である。しかしながら、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例には、複製起点の後側(100〜270塩基対)のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化を増大するエレメントに関する、Yaniv,Nature,297:17−18(1982年)も参照されたい。エンハンサーは、ESM−1 DNAの5’または3’位置においてベクターへスプライスされてもよいが、しかし好ましくはプロモーターから5’部位に位置する。
転写終結コンポーネント
[00111] 真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物由来有核細胞)において用いられる発現ベクターはまた、転写終結およびmRNAの安定化に必要な配列を含有するであろう。このような配列は、真核生物またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’および、時には3’非翻訳領域から一般に得られる。この領域は、ESM−1をコードするmRNAの非翻訳部分におけるポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。3’非翻訳領域もまた転写終結部位を含む。
[00112] 1またはそれより多くの上記のコンポーネント、所望のコード配列および制御配列を含有する適当なベクターの構築には、標準的な連結技術を使用する。単離したプラスミドまたはDNA断片を、切断し、仕立て、そして必要とするプラスミドを作製するのに望ましい形で再連結する。
[00113] 構築したプラスミド中の正確な配列を確認する解析のために、連結混合物を、大腸菌K12株294(ATCC 31,446)を形質転換させるのに用い、そして、必要に応じてアンピシリンまたはテトラサイクリン耐性により、成功した形質転換体を選択する。形質転換体由来のプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化によって解析し、かつ/または、Messingら、Nucleic Acids Res.,9:309(1981年)の方法もしくは、Maxamら、Methods in Enzymology,65:499(1980年)の方法によって配列決定する。
[00114] 本発明の実施に特に有用なのは、哺乳動物においてESM−1をコードするDNAの一過性発現を提供する発現ベクターである。一般に、一過性発現は、宿主細胞が発現ベクターの多くのコピーを蓄積し、そして次に発現ベクターによってコードされる所望のポリペプチドを高レベルに合成するような、宿主細胞において効率的に複製可能な発現ベクターの使用を伴う。一過性発現系は、適当な発現ベクターおよび宿主細胞を含み、クローニングしたDNAによってコードされるポリペプチドの好都合な陽性同定、ならびに、このようなポリペプチドを望ましい生物学的または生理学的性質について迅速にスクリーニングすることを可能にする。したがって、一過性発現系は、ESM−1様活性を持つESM−1のアナログおよびバリアントを同定するために、本発明において特に有用である。
[00115] 組換え脊椎動物細胞培養物におけるESM−1合成への適応に適した他の方法、ベクター、および、宿主細胞は、Gethingら、Nature,293:620−625,1981年;Manteiら、Nature,281:40−46,1979年;Levinsonら;EP 117,060;および、EP 117,058に記載されている。PF4A受容体の哺乳動物細胞培養物での発現に特に有用なプラスミドは、pRK5(欧州特許公開第307,247)またはpSVI6B(1989年11月22日に出願された米国特許出願第07/441,574、その開示を本明細書において参照によって援用する)である。
宿主細胞の選択および形質転換
[00116] 本明細書においてベクターをクローニングまたは発現させるのに適した宿主細胞は、原核生物、酵母、または上述の高等真核生物細胞である。適当な原核細胞には、例えば大腸菌、枯草菌(B.subtilis)などの桿菌、緑膿菌(P.aerupinosa)などのシュードモナス(Pseudomonas)種、サルモネラ・ティフィリウム(Salmonella typhimurium)またはセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)といった、グラム陰性またはグラム陽性生物体などの真正細菌が含まれる。ある好ましい大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC 31,446)であるが、大腸菌B、大腸菌chi−1776(ATCC 31,537)および大腸菌W3110(ATCC 27,325)といった他株も適している。これらの例は、非限定的に実例となる。好ましくは、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌するべきである。あるいは、例えばPCRまたは他の核酸ポリメラーゼ反応などのin vitroでのクローニング方法が適当である。
[00117] 原核細胞に加えて、糸状真菌または酵母などの真核微生物は、ESM−1 DNAを含有するベクターに適した宿主である。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)または一般的なパン酵母は、下等な真核宿主微生物体の中で最も一般的に用いられる。しかしながら、分裂酵母(S.pombe)(BeachおよびNurse、Nature,290:140(1981年))、クリベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)(Louvencourtら、J.Bacteriol.,737(1983年))、ヤロウィア属(yarrowia)(EP 402,226)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(EP 183,070)、トリコデルマ・リージア(Trichoderma reesia)(EP 244,234)、アカパンカビ(Neurospora crassa)(Caseら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:5259−5263(1979年))、ならびに、アスペルギルス・ニダランス(A.nidulans)(Ballanceら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,112:284−289(1983年);Tilburnら、Gene,26:205−221(1983年);Yeltonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:1470−1474(1984年))およびアスペルギルス・ニガー(A.niger)(KellyおよびHynes、EMBO J.,4:475−479(1985年))などのアスペルギルス属(Aspergillus)宿主といった、多くの他の属、種および系が、本明細書において一般的に利用可能でありそして有用である。
[00118] グリコシル化ESM−1ポリペプチドの発現に適した宿主細胞は、多細胞生物体由来である。このような宿主細胞は、複雑な処理およびグリコシル化作用が可能である。原理上は、脊椎動物培養物由来であろうと無脊椎動物培養物由来であろうと、あらゆる高等真核細胞培養物が有効である。無脊椎動物細胞の例には、植物および昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウイルス株およびバリアント、ならびに、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(毛虫)、アエデス・アエギプティ(Aedes aegypti)(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(Aedes albopictus)(蚊)、ドロソフィラ・メラノガステル(Drosophila melanogaster)(ショウジョウバエ)およびカイコ(Bombyx mori)宿主細胞といった宿主由来の、対応する許容昆虫宿主が同定されている。例えば、Luckowら、Bio Technology,6:47−55(1988年);Millerら、Genetic Engineering中、Setlow,J.K.ら編集、8巻(プレナム・パブリッシング、1986年)、277〜279ページ;および、Maedaら、Nature,315:592−594(1985年)を参照されたい。このような多様なウイルス株、例えば、アウトグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL−1バリアントおよびカイコ(Bombyx mori)NPVのBm−5株は公的に入手可能であり、そして、このようなウイルスを、本明細書において、本発明にしたがったウイルスとして、特にスポドプテラ・プルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞の遺伝子導入に用いてもよい。綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマトおよびタバコの植物細胞培養物を、宿主として利用可能である。典型的には、植物細胞を、予めESM−1 DNAを含有するように操作した細菌アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の特定株とインキュベートすることによって遺伝子導入する。植物細胞培養物をアグロバクテリウム・ツメファシエンスとともにインキュベーション中に、ESM−1をコードするDNAは、それが導入されるような植物細胞宿主に伝達され、そして、適切な条件下でESM−1 DNAを発現するであろう。加えて、ノパリン合成プロモーターおよびポリアデニル化シグナル配列などの、植物細胞と適合した制御配列およびシグナル配列が利用可能である。Depickerら、J.Mol.Appl.Gene,1:561(1982年)。加えて、T−DNA 780遺伝子の上流領域から単離されたDNAセグメントは、組換えDNA含有植物組織において、植物を発現可能な遺伝子の転写レベルを活性化または増加させることが可能である。1989年6月21日に刊行されたEP 321,196を参照されたい。
[00119] しかしながら、脊椎動物細胞において利点が最も大きく、そして培養(組織培養)における脊椎動物細胞の伝播が、近年ではルーチンの手順となってきている(Tissue Culture,アカデミック・プレス、KruseおよびPatterson、編集者(1973年))。有用な哺乳動物宿主株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓株(293または懸濁培養物中での増殖用にサブクローニングされた293細胞(Grahamら、J.Gen Virol.,36:59(1977年));ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、UrlaubおよびChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216,1980年);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.,23:243−251,1980年);サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44−68,1982年);MRC 5細胞;FS4細胞;および、ヒト肝癌細胞株(Hep G2)である。好ましい宿主細胞は、ヒト胚性腎293およびチャイニーズハムスター卵巣細胞である。
[00120] 宿主細胞に遺伝子導入し、そして好ましくは上記の本発明の発現ベクターまたはクローニングベクターを用いて形質転換し、そして、プロモーターを誘導するか形質転換体を選択するかまたは所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適切なように修飾された慣用の栄養培地中で培養する。
[00121] 遺伝子導入とは、任意のコード配列が実際に発現するか否かを問わず、宿主細胞が発現ベクターを取り込むことを指す。例えば、CaPO法および電気穿孔法といった多数の遺伝子導入法は、通常は当業者に公知である。このベクターが稼動する任意の徴候が宿主細胞内に生じる場合に、遺伝子導入が成功したと一般に認識される。
[00122] 形質転換は、染色体外エレメントとしてまたは染色体成分により、DNA複製が可能なように、生物体にDNAを導入することを意味する。用いる宿主細胞に応じて、このような細胞に適切な標準的技術を用い、形質転換を行う。塩化カルシウムを使用するカルシウム処理は、”Sambrookら、同上”の1.82節に記載されるように、一般には、原核生物または十分な細胞壁のバリヤーを含有する他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウム・ツメファシエンスを用いた感染は、Shawら、Gene,23:315(1983年)、および1989年6月29日に刊行されたWO 89/05859に記載されるように、特定の植物細胞の形質転換に用いられる。こういった細胞壁を持たない哺乳動物細胞に対しては、”Sambrookら、同上”の16.30〜16.37節に記載される、リン酸カルシウム沈澱法が好ましい。哺乳動物細胞宿主系の形質転換の一般的な側面は、1983年8月16日刊行の米国特許第4,399,216にAxelによって記載されている。酵母への形質転換は、典型的には、Van Solingenら、J.Bact.,130:946(1977年)、および、Hsiaoら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),76:3829(1979年)の方法にしたがって実行される。しかしながら、核注入、電気穿孔またはプロトプラスト融合などによる、DNAを細胞に導入する他の方法を用いてもよい。
宿主細胞の培養
[00123] 本発明のESM−1ポリペプチドを産生するのに用いる原核細胞を、Sambrookらに一般に記載される適当な培地中で培養する。
[00124] 本発明のESM−1を産生するのに用いる哺乳動物宿主細胞は、種々の培地中で培養してもよい。ハムF10(シグマ)、最小必須培地(MEM、シグマ)、RPMI−1640(シグマ)およびダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、シグマ)などの商業的に入手可能な培地は、宿主細胞を培養するのに適している。加えて、HamおよびWallace、Meth.Enz.,58:44(1979年)、BarnesおよびSato、Anal.Biochem.,102:255(1980年)、米国特許第4,767,704;4,657,866;4,927,762;または、4,560,655;WO 90/03430;WO 87/00195;米国特許第Re.30,985;あるいは、ともに1990年10月3日に出願された同時係属中の米国特許出願番号07/592,107または07/592,141に記載されたいずれの培地を、宿主細胞用の培地として用いてもよく、このすべての開示を本明細書では参照によって援用する。これらのどの培地にも、ホルモンおよび/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリンまたは上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩など)、バッファー(HEPESなど)、ヌクレオシド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質(ゲンタマイシンTMなど)、微量元素(μMの範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物として定義される)、ならびにグルコースまたは同等のエネルギー源を、必要に応じて添加してもよい。他のいずれの必要な添加物もまた、当業者に公知であろう適切な濃度にて含まれてもよい。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択した宿主細胞でこれまでに用いられたものであり、そして当業者には明らかであろう。
[00125] 本開示において指す宿主細胞は、in vitro培養細胞の他に、宿主動物内にある細胞を含む。
[00126] 本発明のESM−1を、相同組換えによって、またはESM−1をコードするDNAをすでに含有する細胞に導入された制御エレメントを利用するリコンビナント産生方法を用いて、産生してもよいことが、さらに構想される。例えば、強力なプロモーター/エンハンサーエレメント、サプレッサーまたは外因性転写モジュレーターエレメントを、所望のESM−1をコードするDNAの転写に影響を与えるのに十分な近接性および配向で、対象とする宿主細胞ゲノムに挿入する。制御エレメントは、本発明のESM−1をコードしないが、しかしDNAは宿主細胞ゲノム中に存在する。次に、所望に応じて、本発明のESM−1を作るかまたは発現レベルが増加もしくは減少している細胞をスクリーニングする。
ESM−1の治療組成物および投与
[00127] ESM−1の治療製剤は、所望の純度を有するESM−1を任意の生理学的に許容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤と混合することによって(Remington’s Pharmaceutical Sciences、同上)、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形で保管用に調製する。許容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、使用される用量および濃度ではレシピエントに無毒であり、そしてリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基よりも少ない)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;単糖、二糖、および、グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;マンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;および/または、トゥイーン、プルロニックまたはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性物質を含む。
[00128] 心血管、内皮、腫瘍および血管形成障害の治療において有用な組成物は、非限定的に、抗体、小さい有機分子または無機分子、ペプチド、リンペプチド、アンチセンスおよびリボザイム分子、三重らせん分子などを含み、標的遺伝子産物の発現および/または活性を阻害する。
[00129] 活性成分を未加工の化合物として単独で投与することは可能であるが、医薬処方物として表すほうが好ましい。本発明は、少なくとも一つの薬学的に許容可能なキャリア、アジュバントまたは希釈剤が付随した、本発明の化合物の治療有効量を含む医薬組成物を含む。本発明はまた、個体における炎症または炎症関連障害を治療する方法、すなわち、このような炎症または障害を有する個体に本発明の化合物の治療有効量を投与することを含む方法である。また、本発明の化合物ファミリーには、その薬学的に許容可能なその塩が含まれる。「薬学的に許容可能な塩」の語は、アルカリ金属塩を形成するのに、そして遊離酸または遊離塩基の付加塩を形成するのに一般に用いる塩を包含する。塩の性質は、薬学的に許容可能であるならば重大ではない。適当な本発明の化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩を、無機酸または有機酸から調製してもよい。このような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸およびリン酸である。適切な有機酸は、脂肪族酸(aliphatic)、脂環式酸、芳香族酸、脂肪族酸(araliphatic)、複素環式酸、有機酸のカルボン酸およびスルホン酸類から選択されてもよく、その例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、サリチル酸、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルギン酸(algenic)、β−ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、ガラクタル酸およびガラクツロン酸である。適当な本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩基付加塩には、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛から作られる金属塩、または、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチル−グルカミン)およびプロカインから作られる有機塩が含まれる。すべてのこれらの塩を、例えば、適切な酸または塩基を本発明の化合物と反応させることによって、本発明の対応する化合物から慣用の手段によって調製してもよい。
[00130] 本発明にまた包含されるのは、1またはそれより多くの無毒性の薬学的に許容可能なキャリアおよび/または希釈剤および/またはアジュバントおよび/または賦形剤(本明細書において「キャリア」物質と総称する)、および必要に応じて他の活性成分が付随した、1またはそれより多くの本発明の化合物を含む医薬組成物である。したがって、本発明の化合物を、薬剤の製造に用いてもよい。本明細書において先に記載したように調製した本発明の化合物の医薬組成物は、非経口投与用に溶液または凍結乾燥粉末として処方してもよい。粉末は、適当な希釈剤または他の薬学的に許容可能なキャリアを使用に先立ち添加することによって、再構成してもよい。液体処方物は、緩衝等張水溶液であってもよい。本発明の化合物を、いずれの適切な経路でも、好ましくは、このような経路に適した医薬組成物の形で、かつ目的とする治療に有効な用量で、投与してもよい。化合物および組成物を、例えば、血管内、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内、髄内、経口または局所投与してもよい。経口投与に関しては、医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、懸濁液または液体の形であってもよい。活性成分をまた、例えば、通常の等張生理食塩溶液、標準5%ブドウ糖水溶液、または緩衝酢酸ナトリウムもpしくはアンモニウム溶液を適当なキャリアとして用いてもよい組成物として注入投与してもよい。このような処方物は、特に非経口投与に適しているが、しかし経口投与に用いられてもよく、あるいは定量吸入器または吸入用噴霧器に含有されてもよい。ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカシア、ポリエチレングリコール、マンニトール、塩化ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムなどの賦形剤を加えることが望ましい場合もある。医薬組成物は、好ましくは、特定の活性成分量を含有する投薬単位の形で作られる。このような投薬単位の例は、錠剤またはカプセルである。投与する治療的に活性な化合物量、ならびに、本発明の化合物および/または組成物を用いて疾患状態を治療するための投与計画は、個体の年齢、体重、性別および病状、疾患の重症度、投与経路および投与回数、ならびに使用する特定の化合物を含む多様な因子によって決まり、したがって幅広く変わってもよい。医薬組成物は、活性成分を約0.1〜2000mgの範囲で、好ましくは約0.5〜500mgの範囲で、そして最も好ましくは約1〜100mgの間で含有してもよい。一日投与量は、約0.01〜100mg/kg体重、好ましくは約0.1〜約50mg/kg体重の間、そして最も好ましくは約1〜20mg/kg体重の間が適切である可能性がある。一日投与量は、1日につき1〜4投与量にて投与されることが可能である。治療目的で、本発明の化合物を、適応の投与経路に適した1またはそれより多くのアジュバントと、通常は併用する。経口投与する場合、化合物を、ラクトース、ショ糖、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル類、セルロースアルキルエステル類、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、ゼラチン、アカシア樹脂、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンおよび/またはポリビニルアルコールと混合してもよく、次いで、好都合な投与のために錠剤化またはカプセル化してもよい。このようなカプセルまたは錠剤は、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、単独またはワックス併用ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの徐放性物質中の活性化合物の分散によって供給可能なような、徐放性処方物を含有してもよい。非経口投与用処方物は、水溶性または非水溶性の等張無菌注入溶液または懸濁液の形であってもよい。この溶液および懸濁液は、経口投与用製剤の使用について記載された、1またはそれより多くのキャリアまたは希釈剤を有する無菌粉末または顆粒から調製してもよい。化合物を、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、綿実油、ピーナツ油、胡麻油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウムおよび/または種々のバッファー中に溶解してもよい。医薬の調製を、錠剤形については、必要の場合には、製粉、混合、造粒および圧縮;または、硬ゼラチンカプセル形については、製粉、混合および充填を伴う、慣用の調剤技術にしたがって行う。液体キャリアを用いる場合、調製物は、シロップ、エリキシル剤、乳剤、または水溶性もしくは非水溶性懸濁液の形となるであろう。このような液体製剤を、経口投与してもよく、あるいは軟ゼラチンカプセルに充填してもよい。直腸投与に関して、本発明の化合物を、ココアバター、グリセリン、ゼラチンまたはポリエチレングリコール類などの賦形剤と組み合わせてもよく、そして坐剤に成型してもよい。本発明の方法は、本発明の化合物の局所投与を含む。局所投与とは、非全身性投与を意味し、本発明の化合物の外部から皮膚、口腔への適用、ならびにこのような化合物の耳、目および鼻への滴下注入を含み、化合物はあまり血流へ入らない。全身性投与とは、経口、静脈内、腹腔内および筋肉内投与を意味する。局所投与において治療または予防効果に必要な本発明の化合物量(以下、活性成分を指す)は、当然ながら選択した化合物、治療される状態の性質および重症度、ならびに治療を行う動物によって変わるであろうし、そして究極的には医師の裁量による。
[00131] 脊椎動物用でもヒト医療用でも、本発明の局所用処方物は、1またはそれより多くの許容可能なキャリアとともに活性成分、ならびに所望により他のいかなる治療成分をも含む。キャリアは、処方物の他成分と適合しそしてそのレシピエントに有害でないという意味で、「許容可能」でなければならない。局所投与に適した処方物には、治療が必要とされる部位への皮膚を介した浸透に適した液体または半液体製剤:糊膏、ローション、クリーム、軟膏、泥膏など、ならびに、目、耳または鼻への投与に適した滴剤が含まれる。局所投与について、活性成分は、処方物の0.01〜5.0重量%を含んでもよい。
[00132] 本発明に記載の滴剤は、無菌の水溶液または油性溶液もしくは懸濁液を含んでもよく、そして、活性成分を、殺菌剤および/または殺カビ剤および/または他の任意の適当な保存剤の適当な水溶液中に溶解し、そして好ましくは界面活性剤を含むことによって調製してもよい。次いで、結果として生じる溶液をろ過によって清澄にし、適当な容器に移してもよく、それから、該容器を密封してオートクレーブまたは90〜100℃にて半時間維持することによって滅菌する。あるいは、溶液をろ過滅菌し、無菌技術によって容器に移してもよい。滴剤に含めるのに適した殺菌剤および殺カビ剤の例は、硝酸または酢酸フェニル水銀(0.00217c)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)および酢酸クロルヘキシジン(0.01%)である。油性溶液の調製に適した溶媒には、グリセロール、希釈アルコールおよびプロピレングリコールが含まれる。
[00133] 本発明に記載のローションは、皮膚または目への適用に適したものを含む。点眼剤は、所望により殺菌剤を含む無菌水溶液を含んでもよく、滴剤の調製と同様の方法によって調製してもよい。皮膚へ適用するためのローションまたは糊膏は、アルコールもしくはアセトンなどの乾燥を速めそして皮膚を冷ます薬剤、および/または、グリセロールなどの保湿剤、またはヒマシ油もしくはラッカセイ油などの油も含んでよい。本発明に記載のクリーム、軟膏または泥膏は、外用のための活性成分の半固形処方物である。これらを、微細に分離または粉末化した形の活性成分を、単独または水溶性もしくは非水溶性液の溶液もしくは懸濁液中で、適当な機械装置を活用して脂肪性または非脂肪性基剤と混合することによって、作ってもよい。基剤は、硬、軟または流動パラフィンなどのハイドロカーボン、グリセロール、蜜ろう、金属せっけん;ゴム糊;アーモンド、コーン、ラッカセイ、ヒマシまたはオリーブ油などの自然由来の油;羊毛脂またはその誘導体、あるいは、プロピレングリコールまたはマクロゴールなどのアルコールを伴うステアリン酸またはオレイン酸などの脂肪酸を含んでもよい。処方物は、ソルビタンエステル類またはそのポリオキシエチレン誘導体といった、アニオン性、カチオン性または非イオン性界面活性剤などの任意の適当な界面活性剤を組み入れてもよい。天然ゴム、セルロース誘導体、またはシリカゲル(silicaceous cilicas)などの無機物質といった懸濁化剤、およびラノリンなどの他成分も含まれてよい。他のアジュバントおよび投与方法は、当該製薬技術分野において幅広く周知である。本発明を、特定の態様に関して記載するが、この態様の詳細を限定的に解釈してはならない。
[00134] In vivo投与に用いるESM−1または断片は、無菌でなければならない。これを、凍結乾燥および再構成する前または後に、無菌ろ過膜を介したろ過によって容易になし遂げる。
[00135] ESM−1の治療組成物を、概して、無菌のアクセスポートを有する容器、例えば、静脈用溶液バッグまたは皮下注入針で穿刺可能な栓を有するバイアルに入れなければならない。
[00136] ESM−1またはESM−1抗体の投与経路は、公知の方法、例えば、静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内または病巣内経路による注入または点滴にしたがうか、または以下に記すような徐放性システムによる。ESM−1または断片は、点滴またはボーラス注入によって持続的に投与する。ESM−1抗体は、同じ方法で、あるいは、血流またはリンパ液への投与によって、投与する。
[00137] 徐放性調製物の適当な例には、例えばフイルムまたはマイクロカプセルなどの成型した物品の形の半透性ポリマーマトリックスが含まれる。徐放性マトリックスには、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド(米国特許第3,773,919、EP 58,481)、L−グルタミン酸およびガンマ L−グルタミン酸エチルのコポリマー(Sidmanら、Biopolymers,22:547−556,1983年)、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277,1981年、および、Langer,Chem.Tech.,12:98−105,1982年)、エチレン酢酸ビニル(Langerら、同上)またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が含まれる。徐放性ESM−1組成物には、リポソームに封入されたESM−1も含まれる。ESM−1を含有するリポソームは、それ自体が公知の方法によって調製される:DE 3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688−3692(1985年);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030−4034(1980年);EP 52,322;EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949;EP 142,641;日本特許出願83−118008;米国特許第4,485,045および4,544,545;および、EP 102 324。通常は、リポソームは小さな(約200〜800オングストローム)単層(unilamelar)型で、その脂質含量は約30%コレステロールよりも多く、選択された比率は最適なESM−1療法のために調整されたものである。
[00138] 治療に使用されるESM−1の有効量は、例えば、治療目的、投与経路および患者の状態によって決まるであろう。したがって、治療専門家は、最適な治療効果を得るために、必要に応じて用量を滴定しそして投与経路を修正する必要があるであろう。典型的には、臨床家は、用量が所望の効果を達成する用量に達するまで、ESM−1または断片を投与するであろう。この療法の経過は、慣用のアッセイによって容易にモニターされる。
[00139] ESM−1またはその抗体についての分析法には、すべて、1またはそれより多くの次の試薬を用いる:標識検体アナログ、固定化検体アナログ、標識結合パートナー、固定化結合パートナーおよび立体結合体。標識試薬はまた、「トレーサー」として公知である。用いる標識(そして、これは、プローブとして用いるためにESM−1核酸を標識するのにも有用である)は、検体とその結合パートナーとの結合を妨げない任意の検出可能な官能性である。多数の標識が、イムノアッセイにおける使用について公知であり、例には、蛍光色素、化学発光および放射性標識などの直接検出可能な部分、ならびに、検出されるように反応または誘導体化しなければならない酵素などの部分が含まれる。このような標識の例には、放射性同位元素である32P、14C、125I、Hおよび131I、希土類キレートまたはフルオレセインおよびその誘導体などのフルオロフォア、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、例えばホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456)などのルセリフェラーゼ、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタルアジンジオン、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクト−スオキシダ−ゼおよびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼなどの糖酸化酵素、色素前駆体を酸化するのに過酸化水素を使用するHRP、ラクトペルオキシダーゼまたはミクロペルオキシダーゼなどの酵素とカップリングした、ウリカーゼおよびキサンチン酸化酵素などの複素環酸化酵素、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカルなどが含まれる。
[00140] 慣用の方法を、これらの標識をタンパク質またはポリペプチドと共有結合させるのに利用可能である。例えば、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、ビス−イミデート、ビス−ジアゾ化ベンジジンなどのカップリング試薬を、上記の蛍光、化学発光および酵素標識で抗体を標識するのに用いてもよい。例えば、米国特許第3,940,475(蛍光法)および第3,645,090(酵素);Hunterら、Nature,144:945(1962年);Davidら、Biochemistry,13:1014−1021(1974年);Painら、J.Immunol.Methods,40:219−230(1981年);および、Nygren,J.Histochem.Cytochem.,30:407−412(1982年)を参照されたい。本明細書において好ましい標識は、セイヨウワサビペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼなどの酵素である。酵素を含むこういった標識の抗体への結合は、イムノアッセイ技術の当業者にとっては標準的な操作手順である。例えば、J.J.LangoneおよびH.Van Vunakis編集「Methods in Enzymology」第73巻(アカデミック・プレス、ニューヨーク、ニューヨーク州、1981年)の147〜166ページである、O’Sullivanら「Methods for the Preparation of Enzyme−antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay」を参照されたい。このような結合方法は、ESM−1またはその抗体との使用に適しており、そのすべてはタンパク質性である。
[00141] 特定のアッセイ方法には、試薬の固定化が必要である。固定化は、溶液中で遊離したままの任意の検体から結合パートナーを分離することを伴う。慣用的には、これは、水不溶性マトリックスまたは表面への吸着(Bennichら、米国特許第3,720,760)によって、共有結合によるカップリング(例えば、グルタルアルデヒド架橋結合を用いた)によって、結合パートナーまたは検体アナログをアッセイ手順の前に不溶化することによって、あるいは、例えば免疫沈降など、パートナーまたはアナログを後で不溶化することによって、達せられる。
[00142] 競合またはサンドイッチアッセイとして公知の他のアッセイ方法は、十分に確立されており、そして商業的診断産業において幅広く用いられている。
[00143] 競合アッセイは、トレーサーアナログが、試験試料検体と、共通の結合パートナー上の限られた数の結合部位について競合する能力に依存する。通常は、結合パートナーを競合の前または後に不溶化し、次いで、結合パートナーに結合したトレーサーおよび検体を、結合していないトレーサーおよび検体から分離する。この分離を、デカント(結合パートナーをあらかじめ不溶化する場合)または遠心分離(結合パートナーを競合反応後に沈降させる場合)によって遂行する。試験試料検体の量は、マーカー物質量によって測定されるように、結合トレーサー量と反比例する。試験試料中に存在する検体量を定量的に測定するため、既知の量の検体を用いて用量反応曲線を作成し、そして試験結果と比較する。このアッセイは、酵素を検出可能なマーカーとして用いる場合に、ELISAシステムと呼ばれる。
[00144] 「ホモジニアス」アッセイと呼ばれる別の種類の競合アッセイは、相分離を必要としない。ここで、酵素と検体の結合体を調製し、そして抗検体が検体と結合する場合に抗検体の存在が酵素活性を修飾するように用いる。この場合、ESM−1またはその免疫学的活性断片を、二官能性有機架橋で、ペルオキシダーゼなどの酵素と結合させる。結合体を、抗ESM−1の結合が標識の酵素活性を阻害または増強するように、抗ESM−1とともに使用するために選択する。この方法自体は、EMITの名の下に幅広く実行されている。
[00145] 立体結合体を、立体障害のホモジニアスアッセイ法で用いる。これらの結合体は、ハプテンに対する抗体が実質的に抗検体と同時に結合体に結合できないように、低分子量ハプテンを小さな検体と共有結合することによって、合成する。このアッセイ手順の下で、試験試料中に存在する検体は抗検体と結合するであろうし、それについて抗ハプテンを結合体と結合させ、例えば、ハプテンがフルオロフォアである場合の蛍光変化など、結合ハプテンの性質が変化する結果となる。
[00146] サンドイッチアッセイは、ESM−1またはESM−1抗体の測定に特に有用である。連続サンドイッチアッセイにおいては、固定化した結合パートナーを試験検体を吸着させるのに用い、試験試料を洗浄することによって除去し、結合した検体を標識した結合パートナーを吸着させるのに用い、次いで、結合した物質を残余のトレーサーから分離する。結合したトレーサー量は、試験試料検体に正比例する。「同時」サンドイッチアッセイでは、標識した結合パートナーを加える前に、試験試料を分離しない。抗ESM−1モノクローナル抗体を一方の抗体とし、そして抗ESM−1ポリクローナル抗体を他方の抗体として用いる連続サンドイッチアッセイは、ESM−1活性について試料を試験するのに有用である。
[00147] 前述のものは、単に、ESM−1および抗体の典型的な診断アッセイである。このような検体を測定するために現在または今後に開発される他の方法は、本明細書の範囲内に含まれ、上記のバイオアッセイを含む。
細胞遊走アッセイ
[00148] 細胞遊走のin vitroモデルは、細胞(遊走するであろう細胞)を含有する第一細胞外マトリックス、および第一細胞外マトリックスと物理的に接触する第二細胞外マトリックスを含む。細胞は、線維芽細胞(例えば、真皮線維芽細胞または皮下皮膚線維芽細胞)、内皮細胞、単球/マクロファージ、または腫瘍細胞などの、任意の適当な細胞であることが可能である。
[00149] 第一細胞外マトリックスは、細胞が自然に存在する第一自然環境を刺激し、そして第二細胞外マトリックスは、細胞が第一自然環境から自然に遊走していく第二自然環境を刺激する。例えば、創傷修復において、遊走細胞は皮膚線維芽細胞であってもよく、そしてその第一自然環境は膠原性基質である。皮膚線維芽細胞は、創傷修復中に、膠原性基質から創傷を埋めるフィブリン塊へと自然に遊走する。このように、皮膚線維芽細胞の第一自然環境は膠原性基質であり、そして皮膚線維芽細胞の第二自然環境はフィブリン塊である。In vitroモデルの第一細胞外マトリックスは、膠原性基質をその中の皮膚線維芽細胞で刺激するように選択する。In vitroモデルの第二細胞外マトリックスは、フィブリン塊を刺激するように選択する。例えば、第二細胞外マトリックスは、フィブリンゲルまたは人工細胞外マトリックスであることが可能である。第一および/または第二細胞外マトリックス中に、フィブロネクチンまたはヒアルロン酸などの他のコンポーネントを与えることがまた有用な場合もある。
[00150] In vitroモデルは、表面(マイクロタイタープレート、ペトリ皿などの)を覆う第二細胞外マトリックスを、第二細胞外マトリックスの上に物理的に配置される細胞を含む第一細胞外マトリックスに与えることによって、二次元であることが可能である。第一細胞外マトリックス由来細胞は、第二細胞外マトリックスの表面を「外遊走」するであろう。あるいは、モデルは、第一細胞外マトリックスを第二細胞外マトリックスで取り囲むことによって、三次元であることが可能である(コラーゲンゲル細胞外マトリックスの周囲に、フィブリン細胞外マトリックスをゲルとして成型する、図1を参照されたい)。第一細胞外マトリックス由来細胞は、第二細胞外マトリックスに「転遊走」するであろう。
[00151] 細胞の輸送を、in vitroモデルを用いてモニターするかまたは検討することが可能である。当業者には、細胞を検出可能な場合にのみ細胞の遊走をモニターおよび検討することが可能であることが、容易に明らかであるはずである。これは、いくつかの方法で達成可能である。細胞が遊走していくフィブリンゲルを含むある態様では、フィブリンゲルは透明であり、そして細胞を光学顕微鏡で可視化することが可能である。あるいは、第一細胞外マトリックスに提供される細胞を、検出可能なマーカーで標識することが可能である。このような検出可能なマーカーは、当該技術分野において公知であり、そして、例えば、放射性標識、蛍光標識、生体染色色素(この無毒性色素が生細胞を着色する)、および分子操作によって加えた標識(βgal遺伝子など)を含む。したがって、標識細胞の第一細胞外マトリックスから第二細胞外マトリックスへの移動を、モニターすることが可能である。
[00152] In vivoモデルは、細胞を含む自然発生的な第一細胞外マトリックス、および第一細胞外マトリックスと物理的に接触する第二細胞外マトリックスを有する動物モデルを含む。細胞ならびに第一および第二細胞外マトリックスは、第一細胞外マトリックスが動物モデルの一部であることを除けば、概してin vitroモデルに関して上述したとおりである。例えば、全層皮膚創傷を動物(ヨークシャーまたはミニブタなど)に作る。動物の膠原性基質はin vivoモデルの第一細胞外マトリックスであり、第二細胞外マトリックスを、フィブリンゲルまたはある人工細胞外マトリックスとして供する。In vivoモデルでは、第一細胞外マトリックスと第二細胞マトリックスとの間に、追加の細胞(動物の第一細胞外マトリックスに存在する細胞、または動物に自然に存在する細胞とは本質的に異なる細胞のような)を供することがまた望ましい場合もある。次いで、この追加の細胞の遊走を、第二細胞外マトリックスへの細胞遊走を測定するためにモニターすることもまた可能である。
[00153] モデルの使用は、多数である。主な使用は、細胞遊走へのその効果について物質をスクリーニングするため、そして細胞遊走に対するその効果について細胞外マトリックスをスクリーニングするためである。方法は:上記のようなin vitro細胞遊走モデルを提供し;第一細胞外マトリックスから第二細胞外マトリックスへの第一細胞遊走速度を測定し;in vitroモデルに物質を添加し;そして、物質を添加後、第一細胞外マトリックスから第二細胞外マトリックスへの第二細胞遊走速度を測定することを含み、第一遊走速度 対 第二遊走速度の増加は、物質が細胞遊走を増加させることを示唆し、そして、第一遊走速度 対 第二遊走速度の減少は、物質が細胞遊走を減少させることを示唆する。前述のとおり、モニターする細胞遊走は、外遊走(第二細胞外マトリックスが表面を覆う二次元フォーマットで)または転遊走(第二細胞外マトリックスを、例えば第一細胞外マトリックスの周囲にゲルとして成型する三次元フォーマットで)であることが可能である。最初に、In vitroモデルを用いて、細胞遊走への効果について物質をスクーニングし、次いで、上記のようなin vivo細胞遊走モデルを提供し、in vivoモデルにおいて、第一細胞外マトリックスから第二細胞外マトリックスへの第一細胞遊走速度を測定し;in vivoモデルに物質を添加し;そして、in vivoモデルに物質を添加後、第一細胞外マトリックスから第二細胞外マトリックスへの第二細胞遊走速度を測定することによって、さらにスクリーニングすることが可能であり、前記in vivoモデルにおいて、第一遊走速度 対 第二遊走速度の増加は、物質が細胞遊走を増加させることを示唆し、そして、第一遊走速度 対 第二遊走速度の減少は、物質が細胞遊走を減少させることを示唆する。物質をスクリーニングするのに、in vitroモデルおよびin vivoモデルを一緒に用いることはそうして2つのレベルのスクリーニングを提供する。前述のとおり、in vivoモデルを用いる場合、多数の細胞を、in vivoモデルの第一細胞外マトリックスと第二細胞外マトリックスとの間に配置するよう供することが望ましい場合もある。次いで、該方法は、in vivoモデルにおいて、第一細胞外マトリックスと第二細胞外マトリックスとの間由来の多数の細胞の、第二細胞外マトリックスへの別の第一遊走速度を測定し;そして、in vivoモデルに物質を添加した後に、第一細胞外マトリックスと第二細胞外マトリックスとの間由来の多数の細胞の、別の第二遊走速度を測定することをさらに含み、前記in vivoモデルにおいて、別の第一遊走速度 対 第二遊走速度の増加は、物質が細胞遊走を増加させることを示唆し、そして、別の第一遊走速度 対 第二遊走速度の減少は、物質が細胞遊走を減少させることを示唆する。これらの追加の細胞は、細胞の第二細胞外マトリックスへの遊走を測定する追加の手段を提供し、自然発生的な第一細胞外マトリックス中に存在する細胞量が限られるかまたは容易に検出されない場合に、特に有用である。追加の細胞を、第一と第二細胞外マトリックスとの間に配置する前に、容易に標識することが可能であり、したがって容易に検出することが可能である。あるいは、動物において自然に存在する細胞とは本質的に異なる追加の細胞を加え、そしてその相違に基づいて検出することが、可能である。
[00154] 上記のようなin vivoモデルを、細胞遊走に影響を与える物質をスクリーニングすること自体のために、in vitroモデルなしで用いることも可能である。このような方法は、上記のようなin vivo細胞遊走モデルを提供し、in vivoモデルにおいて、第一細胞外マトリックスから第二細胞外マトリックスへの第一細胞遊走速度を測定し;in vivoモデルに物質を添加し;そして、in vivoモデルに物質を添加後、第一細胞外マトリックスから第二細胞外マトリックスへの第二細胞遊走速度を測定することを含み、in vivoモデルにおいて、第一遊走速度 対 第二遊走速度の増加は、物質が細胞遊走を増加させることを示唆し、そして、第一遊走速度 対 第二遊走速度の減少は、物質が細胞遊走を減少させることを示唆する。
[00155] 別の可能性は予備スクリーニングにあり、細胞ならびに第一および第二細胞外マトリックスを提供し、そして細胞が第一細胞外マトリックスおよび第二細胞外マトリックス上を移動可能であることを測定することを含む。この予備スクリーニングは、問題の細胞が選択した細胞外マトリックス上を移動可能であることを測定する手段として、in vitroまたはin vivoモデルでの物質および/または細胞外マトリックスのスクリーニングに先行することが可能である。もし細胞が選択した細胞外マトリックス上を移動できないならば、細胞遊走は起こらないであろうし、そして細胞遊走に影響を与える物質または細胞外マトリックスをスクリーニングする方法は無意味であろう。
[00156] 遊走アッセイにおける別の可能性は、このような細胞外マトリックスが細胞遊走に与える効果について、細胞外マトリックスをスクリーニングする方法である。該方法は、上記のようなin vitro細胞遊走モデルを提供し;第一細胞外マトリックスから第二細胞外マトリックスへの第一細胞遊走速度を測定し;in vitroモデルにおいて、第二細胞外マトリックスの代わりに人工細胞外マトリックスを用い;そして、第一細胞外マトリックスから人工細胞外マトリックスへの第二細胞遊走速度を測定することを含み、第一遊走速度 対 第二遊走速度の増加は、人工細胞外マトリックスが細胞遊走を増加させることを示唆し、そして、第一遊走速度 対 第二遊走速度の減少は、人工細胞外マトリックスが細胞遊走を減少させることを示唆する。モデルを創傷修復の検討に用いる場合、好ましくは、第二細胞外マトリックスはフィブリンゲルである。
[00157] 物質をスクリーニングする方法と同様に、細胞外マトリックスをスクリーニングする方法もまた、in vivoモデルを利用することが可能である。このような方法は、上記のようなin vivo細胞遊走モデルを提供し(この場合もまた、モデルを創傷修復の検討に用いる場合、好ましくはフィブリンゲルである第二細胞外マトリックスを用いて);第一細胞外マトリックスから第二細胞外マトリックスへの第一細胞遊走速度を測定し;in vivoモデルにおいて、第二細胞外マトリックスの代わりに人工細胞外マトリックスを用い;そして、第一細胞外マトリックスから人工細胞外マトリックスへの第二細胞遊走速度を測定することを含み、第一遊走速度 対 第二遊走速度の増加は、人工細胞外マトリックスが細胞遊走を増加させることを示唆し、そして、第一遊走速度 対 第二遊走速度の減少は、人工細胞外マトリックスが細胞遊走を減少させることを示唆する。
抗体
[00158] ESM−1ポリペプチドを、標準的なポリクローナルおよびモノクローナル抗体調製技術を用いて抗体を産生するために、免疫原として用いることが可能である。全長ポリペプチドまたはタンパク質を用いることが可能であるか、あるいは、本発明は、抗原性ペプチド断片を免疫原として用いるために提供する。本発明のタンパク質の抗原性ペプチドは、アミノ酸配列の少なくとも8(好ましくは、10、15、20または30)アミノ酸残基を含み、そして、ペプチドに対する抗体がタンパク質と特異的な免疫複合体を形成するような、タンパク質のエピトープを包含する。
[00159] 抗原性ペプチドに包含される好ましいエピトープは、タンパク質表面に位置する領域、例えば親水性領域である。ハイドロパシープロットまたは同様の解析を、親水性領域を同定するのに用いることが可能である。
[00160] 典型的には、免疫原を、適当な個体(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物)を免疫することによって抗体を調製するのに用いる。適切な免疫原性調製物は、例えば、組換え発現化学合成ペプチドを含有することが可能である。調製物は、フロイント完全または不完全アジュバントなどのアジュバントまたは同様な免疫活性化剤をさらに含むことが可能である。
[00161] 本明細書では、「抗体」の語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、本発明のポリペプチドなどの抗原と特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。本発明の所与のポリペプチドと特異的に結合する分子は、該ポリペプチドと結合するが、しかし例えば自然にポリペプチドを含有する生体試料などの試料中の他の分子とは実質的に結合しない分子である。免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分の例には、ペプシンなどの酵素で抗体を処理することによって生成するF(ab)およびF(ab’)断片が含まれる。本発明は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。本明細書では、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」の語は、特定のエピトープと免疫反応することが可能な抗原結合部位を一種類のみ含有する抗体分子集団を指す。
[00162] ポリクローナル抗体を、上記のように、免疫原として本発明のポリペプチドを用いて適当な個体を免疫することによって、調製することが可能である。免疫した個体での抗体力価を、固定化したポリペプチドを用いた酵素結合免疫吸着法(ELISA)などの標準的な技術によって、経時的にモニターすることが可能である。必要に応じて、抗体分子を哺乳動物から(例えば、血液から)単離し、そして、IgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィなどの周知の技術によってさらに精製することが可能である。免疫後の適切な時間、例えば、特異抗体力価が最も高くなったときに、抗体産生細胞を個体から得て、そして、KohlerおよびMilstein(1975年)Nature 256:495−497によって最初に記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら(1983年)Immunol.Today 4:72)、EBV−ハイブリドーマ技術(Coleら(1985年)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、アランR.リス・インク、77〜96ページ)またはトリオーマ技術などの標準的な技術によって、モノクローナル抗体を調製するのに用いることが可能である。ハイブリドーマを作出する技術は、周知である(”Current Protocols in Immunology(1994年)Coliganら(編集)ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インク、ニューヨーク、ニューヨーク州”を、概して参照されたい)。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を、例えば標準ELISAアッセイを用いて、目的とするポリペプチドを結合する抗体についてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることによって、検出する。
[00163] モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するのに変わるものとして、ESM−1ポリペプチドに対するモノクローナル抗体を同定し、そして、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリ(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリ)を目的とするポリペプチドを用いてスクリーニングすることによって単離することが、可能である。ファージディスプレイライブラリを作製しそしてスクリーニングするキットが、商業的に利用可能である(例えば、ファルマシア・組換えファージ抗体システム、カタログ番号27−9400−01;および、ストラタジーン・SurfZAPJファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。加えて、抗体ディスプレイライブラリの作製およびスクリーニングにおける使用に関して特にしたがった方法および試薬の例は、例えば、米国特許第5,223,409;PCT公報第WO 92/18619;PCT公報第WO 91/17271;PCT公報第WO 92/20791;PCT公報第WO 92/15679;PCT公報第WO 93/01288;PCT公報第WO 92/01047;PCT公報第WO 92/09690;PCT公報第WO 90/02809;Fuchsら(1991年)Bio Technology 9:1370−1372;Hayら(1992年)Hum.Antibody Hybridomas 3:81−85;Huseら(1989年)Science 246:1275−1281;Griffithsら(1993年)EMBO J.12:725−734に見つけることが可能である。
ESM−1抗体の調製
[00164] ESM−1に対するポリクローナル抗体は、概して、ESM−1およびアジュバントを皮下(sc)または腹腔内(ip)に複数回注入することによって、動物において産生する。ESM−1または標的アミノ酸配列を含有する断片を、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介して結合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、コハク酸無水物、SOClまたは、RおよびRが異なるアルキル基であるRN=C=NRなどの、二官能性剤または誘導体化剤を用いて、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリンまたはダイズトリプシン阻害剤などの、免疫を受ける種において免疫原性であるタンパク質と結合させることが、有用である場合もある。
[00165] 通常は、1mgまたは1μgの結合体(それぞれ、ウサギまたはマウスについて)を3倍量のフロイント完全アジュバントと組み合わせ、そして溶液を複数部位に皮内注入することによって、動物を、免疫原性結合体または誘導体に対して免疫する。1ヶ月後に、動物を、フロイント不完全アジュバント中の元の結合体量の5分の1〜10分の1量で、複数部位に皮下注入することによって、追加免疫する。7〜14日後に、動物を採血し、そして血清を抗ESM−1力価についてアッセイする。力価がプラトーに達するまで、動物を追加免疫する。好ましくは、動物を、同じESM−1の結合体ではあるが、しかし異なるタンパク質と、かつ/または異なる架橋剤を介して結合したものを用いて、追加免疫する。結合体はまた、タンパク質融合体として組換え細胞培養物中で作ることも可能である。また、ミョウバンなどの凝集剤を、免疫反応を増強するのに用いる。動物を、別の種の標的受容体を発現するように形質転換した類似の宿主細胞を用いて免疫することが、好都合な場合もある。
[00166] モノクローナル抗体を、免疫した動物から脾臓細胞から回収し、そして細胞を、例えばミエローマ細胞との融合またはエプスタイン・バー(EB)ウイルス形質転換によるなどの、慣用の方法によって不死化し、そして所望の抗体を発現するクローンをスクリーニングすることによって、調製する。好ましくは、モノクローナル抗体は、他の公知のESM−1ポリペプチドと交差反応しない。
[00167] 加えて、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、例えば、PTC公報第WO 87/02671;欧州特許出願184,187;欧州特許出願171,496;欧州特許出願173,494;PTV公報第WO 86/01533;米国特許第4,816,567;欧州特許出願125,023;Betterら(1988年)Science 240:1041−1043;Liuら(1987年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liuら(1987年)J.Immunol.139:3521−3526;Sunら(1987年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimuraら(1987年)Canc.Res.47:999−1005;Woodら(1985年)Nature 314:446−449;および、Shawら(1988年)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559);Morrison(1985年)Science 229:1202−1207;Oiら(1986年)Bio/Techniques 4:214;米国特許第5,225,539;Jonesら(1986年)Nature 321:552−525;Verhoeyanら(1988年)Science 239:1534;および、Beidlerら(1988年)J.Immunol.141:4053−4060に記載された方法を用いて、当該技術分野において公知の組換えDNA技術によって、作出することが可能である。
[00168] 完全ヒト抗体は、ヒト患者の治療に特に望ましい。このような抗体を、内因性免疫グロブリンの重鎖および軽鎖遺伝子を発現できないが、しかしヒトの重鎖および軽鎖遺伝子を発現可能なトランスジェンックマウスを用いて、産生することが可能である。トランスジェニックマウスを、通常の方法で、選択した抗原、例えばESM−1ポリペプチドの全部または一部を用いて、免疫する。抗原に対するモノクローナル抗体を、慣用のハイブリドーマ技術を用いて得ることが可能である。トランスジェニックマウスが保有するするヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化中に再構成し、続いて、クラススイッチおよび体細胞変異を起こす。このように、こういった技術を用いて、治療的に有用なIgG、IgAおよびIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体の産生に関するこの技術の概要については、LonbergおよびHuszar(1995年、Int.Rev.Immunol.13:65−93)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体の産生に関するこの技術ならびにこのような抗体の産生に関するプロトコールについての詳細な考察については、例えば、米国特許第5,625,126;米国特許第5,633,425;米国特許第5,569,825;米国特許第5,661,016;および、米国特許第5,545,806を参照されたい。加えて、アブジェニックス・インク(フリーモント、カリフォルニア州)などの会社が、上記の技術と同様な技術を用いて、選択された抗体に対するヒト抗体の提供に従事することが可能である。
[00169] ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリを含む当該分野において公知の種々の技術を用いて、産生することが可能である(HomogenousおよびWinter、J.Mol.Biol.,227:381(1991年);Marksら、J.Mol.Biol.,222:581(1991年))。ColeらおよびBoernerらの技術はまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、アランR.リス、77ページ(1985年)、および、Boernerら、J.Immunol.,147(1):86−95(1991年))。同様に、ヒト抗体を、例えば内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活化されたマウスなどのトランスジェニック動物に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって、作ることが可能である。曝露によって、ヒト抗体産生が認められ、これは、遺伝子の再構成、構築および抗体レパートリーを含むあらゆる点でヒトにおいて見られるものと極めて類似する。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,661,016、および以下の科学刊行物:Marksら、Bio Technology 10,779783(1992年);Lonbergら、Nature 368 856−859(1994年);Morrison,Nature 368,812−13(1994年);Fishwildら、Nature Biotechnology 14,845−51(1996年);Neuberger,Nature Biotechnology 14,826(1996年);LonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.13 65−93(1995年)に記載されている。
二重特異性抗体
[00170] 二重特異性抗体は、少なくとも二つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体であり、好ましくはヒトまたはヒト化抗体である。この場合では、結合特異性の一方はPAに対するものであり;他方は任意の他の抗原、そして好ましくは細胞表面タンパク質または受容体または受容体サブユニットに対するものである。
[00171] 二重特異性抗体を作る方法は、当該技術分野において公知である。もともとは、二重特異性抗体の組換え産生は、二つの重鎖が異なる特異性を有する二つの免疫グロブリンの重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく(MilsteinおよびCuello,Nature,305:537−539(1983年))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな組み合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は10の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生し、その一つだけが適当な二重特異構造を有する。適当な分子の精製を、通常はアフィニティクロマトグラフィ工程によって行う。同様な手順は、1993年5月13日に刊行されたWO 93/08829、および、Trauneckerら、EMBO J.,10:3655−3659(1991年)に開示されている。
[00172] 所望の結合特異性を有する抗体の可変領域(抗体−抗原結合部位)は、免疫グロブリンの不変領域配列と融合させることが可能である。好ましくは、融合は、少なくともヒンジ部の一部、CH2およびCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖の不変領域とである。少なくとも融合体の一つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含有する、第一重鎖不変領域(CHI)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖の融合体および、必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別々の発現ベクターに挿入し、そして適当な宿主生物体に同時遺伝子導入する。二重特異性抗体の作製についてのさらなる詳細は、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology,121:210(1986年)を参照されたい。
[00173] WO 96/27011に記載された別のアプローチにしたがって、抗体分子対間のインターフェイスを、組換え細胞培養物から回収するヘテロダイマーの割合を最大限にするために操作することが可能である。好ましいインターフェイスは、少なくとも抗体不変ドメインのCH3領域の一部を含む。この方法では、第一抗体分子のインターフェイス由来の1またはそれより多くの小さなアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)に置換する。大きな側鎖と同一または同様な大きさの代償性「空洞」を、大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例えば、アラニンまたはスレオニン)に置換することによって、第二抗体分子のインターフェイス上に作り出す。このことは、ホモダイマーなどの他の不要な最終産物よりもヘテロダイマーの収量を増加させることに関するメカニズムを、提供する。
[00174] 二重特異性抗体を、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製することが可能である。二重特異性抗体を抗体断片から作製する技術は、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体を、化学結合を用いて調製することが可能である。Brennanら、Science 229:81(1985年)は、無傷抗体をタンパク質分解により切断して、F(ab’)2断片を生成する手順について、記載している。これらの断片は、近接するジチオールを安定化しそして分子間のジスルフィド形成を妨げるためにジチオール錯化剤である亜砒酸ナトリウム存在下で、還元する。次いで、生成したFab’断片をチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。次いで、Fab’−TNB誘導体の一つを、メルカプトエチルアミンで還元することによってFab’チオールに再変換し、そして等モル量のもう一方のFab’−TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成する。作出した二重特異性抗体を、選択的な酵素固定化剤として用いることが可能である。
[00175] Fab’断片を、大腸菌から直接回収し、そして二重特異性抗体を形成するように化学的にカップリングさせることが可能である。Shalabyら、J.Exp.Med.175:217−225(1992年)に、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)2分子の作出について記載されている。各Fab’断片は、別々に大腸菌から分泌され、そしてin vitroにおいて指定された化学的カップリングを受けて二重特異性抗体を形成する。このように形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞および正常ヒトT細胞と結合することが可能な他に、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を誘発することが可能である。
[00176] 二重特異性抗体断片を直接組換え細胞培養物から作りそして単離する種々の技術についても、記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて作出されている。Kostelnyら、J.Immunol.148(5):1547−1553(1992年)。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドは、二つの異なる抗体のFab’部分と遺伝子融合によって連結した。抗体ホモダイマーを、ヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、次いで再酸化して抗体ヘテロダイマーを形成した。この方法を、抗体ホモダイマーの作出にも利用することが可能である。Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993年)によって記載された「ダイアボディ(diabody)」技術は、二重特異性抗体断片の作製に関する別のメカニズムを提供している。断片は、同じ鎖上で二つの領域間を対合させるには短すぎるリンカーによって、軽鎖可変領域(V)と連結した重鎖可変領域(V)を含む。したがって、一方の断片のVおよびVドメインは、別の断片の相補的なVおよびVドメインと強制的に対合させて、それによって二つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用による二重特異性抗体断片の作製についての別のストラテジーについてもまた、報告されている。Gruberら、J.Immunol.152:5368(1994年)を参照されたい。
[00177] 2より多くの結合価を持つ抗体について、熟慮される。例えば、三重特異性抗体を調製することが可能である(Tuttら、J.Immunol.147:60(1991年))。典型的な二重特異性抗体は、本明細書における所与のポリペプチド上の二つの異なるエピトープと結合することが可能である。あるいは、本発明の特定のタンパク質を発現する細胞に対する細胞防御メカニズムに焦点に合わせるように、アームを、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28またはB7)、または、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)などの、IgGに対するFc受容体(FcγR)といった、白血球上の誘発分子と結合するアームと組み合わせることが可能である。二重特異性抗体はまた、細胞毒性剤を、本発明の特定のタンパク質を発現する細胞に局在化させるのに用いることも可能である。これらの抗体は、本発明のタンパク質との結合アーム、および、細胞毒性剤またはEOTUBE、DPTA、DOTAまたはTETAなどの放射性核種キレート剤を結合するアームを保有する。目的とする別の二重特異性抗体は、ポリペプチドと結合し、そしてさらに組織因子(TF)と結合する。
抗体の医薬組成物
[00178] 本明細書において同定されたポリペプチドと特異的に結合する抗体、ならびに、本明細書において開示されたスクリーニングアッセイによって同定された他の分子を、医薬組成物の形で、種々の疾患の治療のために投与することが可能である。
[00179] ポリペプチドが細胞内にありそして抗体全体を阻害剤として用いるならば、抗体を内在化することが好ましい。しかしながら、リポフェクションまたはリポソームもまた、抗体または抗体断片を細胞に送達するのに用いることが可能である。抗体断片を用いるには、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最も小さな阻害断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、ペプチド分子を、標的タンパク質配列と結合する能力を保持するように設計することが可能である。このようなペプチドは、化学合成することが可能であり、かつ/または組換えDNA技術によって産生することが可能である。例えば、Marascoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7889−7893(1993年)を参照されたい。本明細書における処方物はまた、治療される特定の適応症に必要な1より多くの活性化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的な活性を有する化合物、を含有することが可能である。あるいは、または加えて、組成物は、例えば、細胞毒性剤、サイトカイン、化学療法剤または増殖阻害剤などの、その機能を増強する薬剤を含むことが可能である。このような分子は、意図する目的に対して効果的な量にて組み合わせることで、適切に存在する。
[00180] 活性成分をまた、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョンそれぞれにおいて、例えばコアセルベーション技術または界面重合によって調製したマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、封入することが可能である。このような技術は、”Remington’s Pharmaceutical Sciences、同上”に開示されている。
[00181] In vivoでの投与に用いる処方物は、無菌でなければならない。これは、滅菌ろ過膜を介したろ過によって容易に達せられる。
[00182] 徐放性調製物を、調製することが可能である。徐放性調製物の適当な例には、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、該マトリックスは、例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの成型物の形である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919)、L−グルタミン酸およびL−グルタミン酸エチルのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LLTRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーが、100日間以上にわたって分子の放出を可能にする一方で、特定のヒドロゲルは、タンパク質をより短期間に放出する。封入された抗体が長時間体内に留まる場合、37℃の水分に曝露される結果として変性または凝集する可能性があり、結果として、生物学的活性が消失し、そして免疫原性が変化する可能性がある。合理的な戦略を、伴うメカニズムに依存して安定化させるために、考案することが可能である。例えば、凝集メカニズムが、チオ−ジスルフィド交換を介した分子間S−S結合形成であることが発見されるならば、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、含水率を調整し、適切な添加物を用い、そして特異的ポリマーマトリックス組成物を開発することによって、安定化を実現することが可能である。
ESM−1およびその抗体の使用
[00183] ESM−1をコードする核酸を、組織特異型を決定する診断的なものとして用いてもよい。例えば、in situハイブリダイゼーションならびにノーザンおよびサザンブロッティングならびにPCR解析などの手順を、ESM−1をコードするDNAおよび/またはRNAが評価する細胞型に存在するかどうかを判断するのに用いてもよい。
[00184] ESM−1受容体抗体は、特定の細胞または組織におけるESM−1発現についての診断アッセイに有用である。抗体を、上述のESM−1と同じ方法で標識し、かつ/または不溶性マトリックス上に固定化する。
[00185] ESM−1抗体はまた、組換え細胞培養物または自然源からESM−1をアフィニティ精製するのに有用である。
[00186] ESM−1およびその抗体についての適当な診断アッセイは、それ自体周知である。このようなアッセイには、競合およびサンドイッチアッセイ、そして立体阻害アッセイが含まれる。競合およびサンドイッチ法は、方法の不可欠な部分として相分離工程を使用するが、立体阻害アッセイは、単一の反応混合物中で行われる。基本的には、同じ手順を、ESM−1のアッセイおよびESM−1と結合する物質に用いるが、アッセイされる物質の分子量に応じて、特定の方法が好ましいであろう。したがって、試験される物質は、その状態に関係なく本明細書において検体を指すが、そうでなければ抗原または抗体を指し、そして、検体と結合するタンパク質を、それが抗体、細胞表面受容体または抗原であろうと、結合パートナーと命名する。
[00187] ESM−1に対する抗体を、ポリペプチドの存在量および発現パターンを評価するために、タンパク質(例えば、細胞溶解物中または細胞上清中で)を検出するのに用いることが可能である。抗体はまた、例えば、所与の治療レジメンの有効性を判断するなどのために、臨床検査手順の一部として組織中タンパク質レベルをモニターするのに、診断的に用いてもよい。抗体を検出可能な物質にカップリングさせることによって、検出を容易に行うことが可能である。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光性物質、生物発光性物質および放射性物質が含まれる。適当な酵素の例には、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、a−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが含まれ;適当な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれ;適当な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンが含まれ;発光性物質の例には、ルミノールが含まれ;生物発光性物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが含まれ、そして、適当な放射性物質の例には、125I、131I、35SまたはHが含まれる。
心血管、内皮および血管形成活性についてのアッセイ
[00188] 種々のアッセイを、心血管、内皮および血管形成活性について本明細書におけるESM−1を試験するのに用いることが可能である。このようなアッセイには、以下の実施例にて提供するものが含まれる。
[00189] エンドセリンアンタゴニスト活性を試験するアッセイは、米国特許第5,773,414に開示されており、受容体アッセイにおいてESM−1がヨウ化エンドセリン−1の結合を阻害する能力について試験するラット心室結合アッセイ、ウサギ腎動脈血管平滑筋細胞を用いた、無傷細胞の放射性標識エンドセリン−1との結合について試験するエンドセリン受容体結合アッセイ、セカンドメッセンジャーの細胞内レベルを測定することによってラット−I細胞において機能活性を測定する、イノシトールリン酸蓄積アッセイ、添加した化合物が培養血管平滑筋においてエンドセリンに刺激されるアラキドン酸放出を低減する能力を測定する、アラキドン酸放出アッセイ、雄ニュージーランドウサギ由来内皮細胞を用いたin vitro試験、および雄SD(Sprague−Dawley)ラットを用いたin vivo試験、が含まれる。
[00190] 組織発生活性についてのアッセイには、非限定的に、WO 95/16035(骨、軟骨、腱)、WO 95/05846(神経、ニューロン)およびWO 91/07491(皮膚、内皮細胞)において記載されたものが含まれる。
[00191] 創傷治癒活性についてのアッセイには、例えば、EaglsteinおよびMertz、J.Invest.Dermatol.,71:382−384(1978年)の記事によって修正された、”Winter,Epidermal Wound Healing,Maibach,HIおよびRovee,DT編集(イヤー・ブック・メディカル・パブリッシャーズ・インク、シカゴ)、71〜112ページ”に記載されたものが含まれる。
[00192] いくつかの心肥大アッセイがある。In vitroアッセイには、成熟ラット心臓心筋細胞の肥大誘導が含まれる。このアッセイでは、心室心筋細胞を単一(雄Sprague−Dawley)ラットから単離し、基本的には、Piperらによる「Adult ventricular rat heart muscle cells」Cell Culture Techniques in Heart and Vessel Research,H.M.Piper編集(ベルリン:シュプリンガー−フェアラーク、1990年)、36〜60ページに詳細が記載された手順を修正したものにしたがう。この手順は、成熟心室心筋細胞の単離、および棒状の表現型であるこの細胞を長期間培養することを可能とする。フェニレフリンおよびプロスタグランジンF2(PGF)は、この成熟細胞において肥大反応を誘導することが示されている。次いで、種々の潜在的な心肥大阻害剤による、PGFまたはPGFアナログ(例えば、フルプロステノール)およびフェニレフリンによって誘導される心筋細胞肥大の阻害について、試験する。
腫瘍学的活性についてのアッセイ
[00193] 癌に関しては、多様な周知の動物モデルを、腫瘍の発達および病因におけるESM−1の役割をさらに理解し、そして、ESM−1抗体、および小分子アンタゴニストなどの他のESM−1アンタゴニストを含む候補治療剤の有効性を試験するのに、用いることが可能である。
[00194] このようなモデルのin vivo性質は、特にヒト患者における反応を予測することを可能とする。腫瘍および癌(例えば、乳癌、結腸癌、前立腺癌、肺癌など)の動物モデルには、非組換え動物と組換え(トランスジェニック)動物の双方が含まれる。非組換え動物モデルには、例えば、げっ歯類、例えばネズミモデルが含まれる。このようなモデルは、例えば皮下注入、尾静脈注入、脾臓移植、腹腔内移植、腎被膜下移植または、例えば結腸組織に結腸癌細胞を移植するなどの同所移植といった標準的な技術を用いて、腫瘍細胞をシンジェニックマウスに導入することによって、作出することが可能である。例えば、1997年9月18日に刊行されたPCT公報第WO 97/33551を参照されたい。おそらく、腫瘍学の研究において最も頻繁に使用される動物種は、免疫不全マウスおよび特にヌードマウスである。胸腺形成不全/無形成のヌードマウスが、ヒト腫瘍の異種移植用宿主としてうまく作用可能であるとの知見は、この目的のための広範囲なその使用をもたらしている。常染色体劣性のnu遺伝子は、非常に多数の異なったコンジェニック系ヌードマウスに導入されており、該マウスには、例えば、ASW、A/He、AKR、BALB/c、B I O.LP、C17、CM、C57BL、C57、CBA、DBA、DDD、I/st、NC、NFR、NFS、NFS1N、NZB、NZC、NZW、P、RIIIおよびSJLが含まれる。加えて、ヌードマウスの他に遺伝的な免疫不全を有する多様な他動物が育種されており、そして腫瘍異種移植のレシピエントとして用いられている。さらなる詳細については、例えば、The Nude Mouse in Oncology,Rese E.BovenおよびB.Winograd編集(CRCプレス・インク、1991年)を参照されたい。
[00195] このような動物に導入された細胞は、上記の任意の腫瘍細胞株などの公知の腫瘍/癌細胞株由来であることが可能であり、そして、例えば、B104−1−1細胞株(neu癌原遺伝子を導入した安定なNIH−3T3細胞株);ras導入NIH−3T3細胞;Caco−2(ATCC HTB−37);または中等度に分化したグレードIIヒト結腸腺癌細胞株、H−29(ATCC HTB−38);または腫瘍および癌由来であることが可能である。
[00196] 腫瘍または癌細胞試料は、液体窒素中で冷凍しそして保存することを伴う標準的な条件を用いて、外科手術を受けている患者から得ることが可能である。Kannaliら、Br.J.Cancer,48:689−696(1983年)。
[00197] 腫瘍細胞は、多様な手順によって、ヌードマウスなどの動物に導入することが可能である。マウスの皮下(s.c.)腔は、腫瘍移植に非常に適している。腫瘍は、固形塊として、トロッカールの使用による針生検として、または細胞懸濁液として、皮下移植することが可能である。固形塊またはトロッカール移植に関しては、適当な大きさの腫瘍組織断片を皮下腔に導入する。細胞懸濁液を、原発腫瘍または安定な腫瘍細胞株から新たに調製し、そして皮下注入する。腫瘍細胞を、皮下インプラントとして注入することも可能である。この位置では、接種材料を、皮膚結合組織下部と皮下組織の間に配置する。
[00198] 乳癌の動物モデルは、本質的にはDrebinら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA,83:9129−9133(1986年)に記載されるように、例えば、ラット神経芽細胞腫細胞(i7eu腫瘍遺伝子が最初に単離された)またはneuで形質転換したNIH−3T3細胞をヌードマウスに移植することによって、作製することが可能である。
[00199] 同様に、結腸癌の動物モデルは、例えばヌードマウスなどの動物において結腸癌細胞を継代し、この動物において腫瘍の発現をもたらすことによって、作製することが可能である。ヌードマウスにおけるヒト結腸癌の同所移植モデルは、例えば、Wangら、Cancer Research,54:4726−4728(1994年)、および、Tooら、Cancer Research,55:681−684(1995年)に記載されている。このモデルは、アンチキャンサー・インク(サンディエゴ、カリフォルニア州)によって販売されている、いわゆる「METAMOUS5」に基づいている。
[00200] 動物に生じる腫瘍を、取り出しそしてin vitroで培養することが可能である。次いで、in vitro培養物由来細胞を、動物に継代することが可能である。このような腫瘍は、さらなる試験または薬剤スクリーニングの標的となることが可能である。あるいは、継代によって生じる腫瘍を単離し、継代前の細胞および一巡またはそれより多くの継代後に単離した細胞から得たRNAを、目的とする遺伝子の差次的発現について解析することが可能である。このような継代技術は、いずれの公知の腫瘍または癌細胞株でも実行可能である。例えば、Meth A、CMS4、CMS5、CMS2 1およびWEHI−164は、BALB/c雌マウスの化学的誘発された線維肉腫であり(DeLeoら、J.Exp.Med.,146:720(1977年))、種々の薬剤の抗腫瘍活性を検討するための高度に制御可能なモデル系を提供する。Palladinoら、J.Immunol.,138:4023−4032(1987年)。簡単に言えば、腫瘍細胞は、in vitro細胞培養において増殖させる。動物への注入前に、細胞株を洗浄しそしてバッファー中に約10X10〜10X10細胞/mlの細胞密度にて懸濁する。次いで、動物を、細胞懸濁液を用いて皮下感染させ、腫瘍を発現させるために1〜3週間を与える。
[00201] 加えて、最も徹底的に検討されている実験的腫瘍の一つであるマウスのルイス肺(3LL)癌を、研究用腫瘍モデルとして用いることが可能である。この腫瘍モデルにおける有効性は、小細胞肺癌(SCCL)と診断されたヒト患者の治療における有益な効果と相関している。この腫瘍は、発症マウスから得た腫瘍断片または培養維持した細胞を注入することによって、正常マウスに導入することが可能である。Zupiら、Br.J.Cancer,41:suppl.4,30(1980年)。証拠は、腫瘍がたった一つの細胞の注入からでも出発可能であり、そして非常に高比率の感染腫瘍細胞が残ることを示唆している。この腫瘍モデルについてのさらなる情報に関しては、Zacharski,Haemostasis,16:300−320(1986年)を参照されたい。
[00202] 試験化合物の有効性を移植腫瘍を有する動物モデルで評価する一つの方法は、治療の前および後に腫瘍の大きさを測定することである。従来より、移植腫瘍の大きさは、ノギスを用いて二次元または三次元に測定されている。二次元に限定される測定は、正確に腫瘍の大きさを反映せず;したがって、数式を用いることによって相当する体積に通常は変換する。しかしながら、腫瘍の大きさの測定は、非常に不正確である。薬剤候補の治療効果は、治療に誘導される増殖遅滞および特異的な増殖遅滞として、さらに説明することが可能である。腫瘍増殖についての説明において重要な別の変数は、腫瘍体積倍増時間である。”RygaardおよびSpang−Thomsen、Proc.6th Int. Workshop on Immune−Deficient Animals、WuおよびSheng編集(バーセル、1989年)、301ページ”に報告されたプログラムなどの、腫瘍増殖を計算および説明するためのコンピュータープログラムもまた、利用可能である。
[00203] しかしながら、治療後の壊死および炎症反応の結果として、少なくとも最初は、腫瘍の大きさの増加が実際に生じてもよい。したがって、この変化を、形態測定法およびフローサイトメトリー解析を併用することによって、注意深くモニターする必要がある。
[00204] さらに、組換え(トランスジェニック)動物モデルを、トランスジェニック動物を作出するための標準的な技術を用いて、本明細書において同定されたESM−1のコード部分を目的とする動物のゲノムに導入することによって、操作することが可能である。トランスジェニック操作の標的となり得る動物には、非限定的に、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、そして例えばヒヒ、チンパンジーおよびサルなどの非ヒト霊長類が含まれる。このような動物に導入遺伝子を導入するための当該技術分野において公知の技術には、前核マイクロインジェクション(米国特許第4,873,191);レトロウイルスを介した生殖系列への遺伝子移入(例えば、Van der Puttenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:6148−615(1985年));胚性幹細胞における遺伝子ターゲッティング(Thompsonら、Cell,56:313−321(1989年));胚の電気穿孔(Lo,Mol.Cell.Biol.,3:1803−1814(1983年));および、精子を介した遺伝子移入が含まれる。Lavitranoら、Cell,57:717−73(1989年)。総説に関しては、例えば、米国特許第4,736,866を参照されたい。
[002005] 本発明の目的に関して、トランスジェニック動物には、その一部の細胞のみに導入遺伝子を保有するもの(「モザイク動物」)が含まれる。導入遺伝子は、単一導入遺伝子としてか、または、例えば、頭部−頭部もしくは頭部−尾部タンデム型などのコンカテマーに組込むことが可能である。例えば、Laskoら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA,89:6232 636(1992年)の技術にしたがって、導入遺伝子を特定の細胞型へ選択的に導入することも可能である。トランスジェニック動物における導入遺伝子の発現を、標準的な技術によってモニターすることが可能である。例えば、サザンブロット解析またはPCR増幅を、導入遺伝子の組込みを確認するのに用いることが可能である。次いで、mRNA発現レベルを、in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロット解析、PCRまたは免疫細胞化学などの技術を用いて、解析することが可能である。動物を、腫瘍または癌発達の徴候についてさらに検討する。
[00206] あるいは、本明細書において同定されたESM−1をコードする遺伝子を欠損または変化させた「ノックアウト」動物を、ESM−1をコードする内因性遺伝子と、動物の胚細胞に導入した、同じポリペプチドをコードする改変ゲノムDNAとの間の相同組換えの結果として、構築することが可能である。ESM−1をコードするゲノムDNAの一部を欠失させるかまたは、組込みをモニターするのに用いることが可能な選択マーカーをコードする遺伝子などの別の遺伝子に置換することが可能である。典型的には、数キロベースの不変フランキングDNA(5’および3’末端の双方において)を、ベクターに含める。例えば、相同組換えベクターの記載については、ThomasおよびCapecchi、Cell,51:503(1987年)を参照されたい。ベクターを胚性幹細胞株に導入し(例えば、電気穿孔によって)、そして導入されたDNAが内因性DNAと相同組換された細胞を選択する。Liら、Cell,69:915(1992年)を参照されたい。次いで、選択した細胞を、動物(例えば、マウスまたはラット)の胚盤胞に注入して、凝集キメラを形成させる。例えば、”Bradley,in Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E.I Robertson編集(IRL:オックスフォード、1987年)、113〜152ページ”を参照されたい。次いで、キメラ胚を適当な偽妊娠雌里親動物に移植することが可能であり、そして胚を「ノックアウト」動物を作出するための期間に導く。生殖系列細胞中に相同組換えDNAを保有する子を、標準的な技術によって同定することが可能であり、そして、すべての細胞が相同組換えDNAを含有する動物を育種するのに用いることが可能である。ノックアウト動物は、例えば、特定の病態を防御するその能力により、そして、ESM−1がないことのために病態が発達することにより、特徴付けられる。
[00207] 特異的にESM−1に結合する抗体および他の薬物候補の有効性もまた、自然発生動物腫瘍の治療において試験することが可能である。データは、対照群と比較した場合の、生存、反応および毒性における違いについて評価する。正の反応は、好ましくは、クオリティ・オブ・ライフの向上および/または寿命の増加を伴う、腫瘍緩解の証拠を必要としてもよい。
[00208] 加えて、イヌ、ネコおよびヒヒの線維肉腫、腺癌、リンパ腫、軟骨腫および平滑筋肉腫などの自然発生動物腫瘍についても、試験することが可能である。このうち、イヌおよびネコの乳腺腺癌は、その発現および挙動がヒトにおけるものと非常に類似しているため、好ましいモデルである。しかしながら、このモデルの使用は、動物におけるこの型の腫瘍発生率が希であることから制限される。
[00209] 大動脈輪アッセイもまた、血管形成におけるESM−1の役割を試験するのに用いてもよい。大動脈輪組織を、コラーゲン、フィブリンまたは他のマトリックスタンパク質のゲル中に埋め込んだ後に、続いて、枝分れする微小血管が伸長する(NicosiaおよびOttinetti、Lab.Invest.63:115,1990年)。精製タンパク質または抽出物、条件培地、抗体、アンチセンス阻害剤、小分子および遺伝子導入ウイルスベクターを含む、標的の発現または機能を調節する外因性薬剤の存在下および非存在下で、微少血管の成長を定量化することが可能である。
[00210] 角膜マイクロポケットアッセイをまた、血管形成におけるESM−1の役割を試験するのに用いてもよい。血管形成を誘導する因子または試験分子を、ヒドロン(または類似の物質)ペレットに導入し、そして、縁から少し離れたところにある無血管性の角膜ポケットに外科的に移植する。モデルは、マウス、ラットおよびウサギを含む数種のいずれに適用してもよい。角膜を取り出し、そして多くの変数を定量するため顕微鏡スライドガラスに乗せるとすぐに、新たな血管が、縁の脈管構造から誘導原に向けて成長する。精製タンパク質または抽出物、条件培地、抗体、アンチセンス阻害剤、小分子および遺伝子導入ウイルスベクターを含む、標的の発現または機能を調節する外因性薬剤の存在下および非存在下で、血管の成長を解析することが可能である。このような薬剤を、経口、全身的または局所的に投与することが可能である。
[00211] マトリゲルプラグアッセイもまた、血管形成におけるESM−1の役割を試験するのに利用することが可能である。血管形成誘導因子または試験分子を、4℃の液体マトリゲルに導入し、次いで、マトリゲルが新たな血管が成長していく細胞透過性プラグを形成するとすぐに、試験動物に皮下注入する。血管の内部への成長を、組織学的方法によって直接的に、あるいはヘモグロビン含量の測定または内皮特異的マーカーの測定によって間接的に測定してもよい。結果を、精製タンパク質または抽出物、条件培地、抗体、アンチセンス阻害剤、小分子および遺伝子導入ウイルスベクターを含む、標的の発現または機能を調節する外因性薬剤の存在下および非存在下で、解析する。このような薬剤を、マトリゲル移植物中に懸濁することによって、経口、全身的または局所的に投与することが可能である。
[00212] In ovoニワトリ絨毛尿膜(CAM)アッセイもまた、血管形成におけるESM−1の役割を試験するのに利用することが可能である。10日齢の孵化ニワトリ卵の殻および殻膜に、穴を作る。血管形成誘導因子または試験物質を含有するスポンジ、組織移植片またはフィルターディスクをCAM上に置き、そして窓を接着テープで封鎖する。数日後に新血管の成長を、実験位置において視覚的に観察し、そして、血管分岐点を含む多くのパラメータによって定量化することが可能である。結果を、遺伝子導入した細胞株またはそのような株由来の組織、精製タンパク質または抽出物、条件培地、抗体、アンチセンス阻害剤、小分子および遺伝子導入ウイルスベクターを含む、標的の発現または機能を調節する薬剤の存在下および非存在下で、解析する。このような薬剤を、全身的または局所的に投与することが可能である。
[00213] さらなる腫瘍増殖および血管形成アッセイもまた、血管形成におけるESM−1の役割を同定するのに用いることが可能である。一つのアプローチには、野生型、変異またはアンチセンス遺伝子を過剰発現する遺伝子導入細胞株を、腫瘍の形成または増殖に影響を及ぼすその能力について解析する。このような細胞は、内皮の機能に影響を及ぼす因子を分泌してもよく、あるいはそうでなければ、すでに示されたように(Imら、Brit.J.Can.84:1252,2001年)、新血管新生に直接的または間接的に影響を及ぼす改変された表現型を提示してもよい。腫瘍における血管形成活性の程度を、微少血管密度の直接的な組織学的定量によって、腫瘍関連内皮細胞の定量によって、あるいは、内皮発現または血管機能に関連するmRNAまたはタンパク質を定量することによって、推定することが可能である。陽電子放射断層撮影法(PET)などの非侵襲的な技術もまた、腫瘍における血流、血液容量または血管透過性の変化を検出するのに用いられている。第二のアプローチには、野生型、変異またはアンチセンス型の遺伝子を保有するウイルスベクターを、静脈内投与または直接的腫瘍内注入あるいはその組み合わせで、腫瘍を有する動物に導入し、それによって腫瘍および血管要素双方の形質導入を可能とする。このアプローチは、いくつかの遺伝子で成功的に示されている(Regulierら、Can.Gene Ther.8:45,2001年;Kuoら、PNAS 98:4605,2001年)。
[00214] 当該技術分野において公知の、他のin vitroおよびin vivo心血管、内皮および血管形成試験もまた、本明細書において適当である。
[00215] 心血管、内皮および血管形成試験の結果を、抗体結合試験によってさらに証明することが可能であり、該試験では、抗ESM−1抗体が、内皮細胞または心血管、内皮および血管形成アッセイに用いる他細胞に対するESM−1の効果を阻害する能力を、試験する。典型的な抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、二重特異およびヘテロ結合が含まれる。
細胞に基づいた(Cell−based)腫瘍アッセイ
[00216] Cell−basedアッセイ、ならびに、心血管、内皮および、腫瘍などの血管形成障害に対する動物モデルを、本明細書における心血管、内皮および血管形成アッセイの結果を証明し、そしてさらに、本明細書において同定した遺伝子と、望ましくない心血管、内皮および血管形成細胞増殖の発達および病因との関係をさらに理解するのに用いることが可能である。望ましくない心血管、内皮、および例えば腫瘍細胞などの血管形成細胞増殖の発達および病因におけるESM−1の役割を、ESM−1によって刺激または阻害されると同定されている細胞または細胞株を用いることによって、試験することが可能である。
[00217] 異なるアプローチでは、特定の心血管、内皮および血管形成障害への関与が公知である細胞型の細胞を、ESM−1で遺伝子導入し、そして、過剰な増殖を誘発するかまたは増殖を阻害するESM−1の能力を解析する。心血管、内皮および血管形成障害が癌であるならば、適当な腫瘍細胞には、例えば、B 104−1−1細胞株(neu癌原遺伝子を導入した安定なNIH−3T3細胞株)およびras導入NIH−3T3細胞などの安定な腫瘍細胞株が含まれ、該腫瘍細胞株は、所望の遺伝子を導入可能でありそして腫瘍化増殖についてモニターすることが可能である。次いで、このような遺伝子導入細胞株を、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体または抗体組成物が、形質転換細胞の増殖に対して細胞増殖抑制または細胞傷害性活性を及ぼすことによって、あるいは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介することによって、腫瘍化細胞の増殖を阻害する能力を試験するのに、用いることが可能である。本明細書において同定された遺伝子のコード配列を用いて遺伝子導入した細胞を、心血管、内皮、および癌などの血管形成傷害の治療に対する薬剤候補を同定するのにさらに用いることが可能である。
[00218] 加えて、安定な細胞株が好ましくはあるが、(上記のような)トランスジェニック動物の腫瘍由来の初代培養物を、本明細書におけるCell−basedアッセイにて用いることが可能である。トランスジェニック動物由来の連続継代細胞株を得る技術は、当該技術分野において周知である。例えば、Smallら、Mol.Cell.Biol.,5:642−648(1985年)を参照されたい。
薬剤候補のスクリーニングアッセイ
[00219] この発明は、ESM−1を模倣する(アゴニスト)かまたはESM−1の効果を妨げるもの(アンタゴニスト)を同定するための、化合物のスクリーニング方法を包含する。アンタゴニスト候補についてのスクリーニングアッセイを、ESM−1と結合するかまたは複合体を形成するか、そうでなければ他の細胞タンパク質とESM−1との相互作用を妨げる化合物を同定するように設計する。このようなスクリーニングアッセイには、小分子薬物候補を同定するのに特に適した、化合物ライブラリのハイスループット・スクリーニングにしたがったアッセイが含まれるであろう。
[00220] アッセイは、タンパク質−タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、イムノアッセイおよびCell−basedアッセイを含む多様な形式にて実施可能であり、当該技術分野において十分に特徴付けられている。
[00221] アンタゴニストについてのすべてのアッセイは、本明細書において同定された核酸によってコードされるESM−1と候補を、この二つのコンポーネントの相互作用を可能とするのに十分な条件および時間で接触させることを必要とする点で、共通している。
[00222] 結合アッセイにおいて、相互作用は結合であり、そして形成された複合体を、反応混合物中で単離または検出することが可能である。特定の態様において、ESM−1または薬物候補を、例えばマイクロタイタープレートなどの固相上で、共有または非共有結合によって固定する。
[00223] 非共有結合は、一般に、固体表面をESM−1溶液で覆いそして乾燥させることによって達せられる。あるいは、固定化抗体、例えば固定化されるESM−1に特異的なモノクローナル抗体を、それを固体表面に固着させるのに用いることが可能である。例えば、固着したコンポーネントを含有する被覆表面などの固定化コンポーネントに、検出可能な標識によって標識してもよい非固定化コンポーネントを加えることによって、アッセイを行う。反応完了時に、例えば洗浄によって、非反応コンポーネントを除去し、そして固体表面に固着した複合体を検出する。
[00224] 非固定化コンポーネントが、検出可能な標識を元々保有する場合、表面に固定化された標識を検出することで、複合体形成が起こったことが示される。非固定化コンポーネントが標識を元々保有しない場合、複合体形成を、例えば固定化複合体に特異的に結合する標識抗体を用いることによって、検出することが可能である。
[00225] 候補化合物がESM−1と相互作用するがしかし結合しないならば、そのポリペプチドとのその相互作用を、タンパク質−タンパク質相互作用を検出するための周知の方法によってアッセイすることが可能である。このようなアッセイには、例えば、クロスリンク、免疫共沈降、および、勾配またはクロマトグラフィーカラムを介した同時精製などの従来のアプローチが含まれる。加えて、ChevrayおよびNathans、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5789−5793(1991年)に開示されたように、Fieldsおよび共同研究者によって記載された酵母に基づく遺伝系(FieldsおよびSong、Nature(ロンドン)、340:245−246(1989年);Chienら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA,88:9578−9582(1991年))を用いることによって、タンパク質相互作用をモニターすることが可能である。酵母GAL4などの多くの転写活性化因子は、二つの物理的に分離したモジュールドメインからなり、一方はDNA結合ドメインとして作用し、そしてもう一方は転写活性化ドメインとして機能する。前述の出版物に記載された酵母発現系(一般的に、「ツーハイブリッドシステム」を指す)は、この特性を利用し、そして二つのハイブリッドタンパク質を使用するが、その一方は標的タンパク質をGAL4のDNA結合ドメインと融合させたものであり、そしてもう一方は活性化タンパク質候補を活性化ドメインと融合させたものである。GAL4により活性化されるプロモーターの制御下でのGAL I−lacZレポーター遺伝子の発現は、タンパク質−タンパク質相互作用を介したGAL4活性の再構成に依存する。相互作用するポリペプチドを含有するコロニーを、P−ガラクトシダーゼの色素生産性基質を用いて検出する。ツーハイブリッド技術を用いた、二つの特異的なタンパク質間のタンパク質−タンパク質相互作用を同定するための完全なキット(MATCHMAKER)は、クロンテックから商業的に入手可能である。
[00226] このシステムをまた、特異的なタンパク質相互作用に関与するタンパク質ドメインをマッピングする他に、この相互作用に決定的なアミノ酸残基を特定するのに、拡大することが可能である。
[00227] ESM−1および他の細胞内または細胞外コンポーネントの相互作用を妨げる化合物は、次のように試験することが可能である:通常は、反応混合物を、2つの産物の相互作用および結合を可能とする条件および時間で、遺伝子産物および細胞内または細胞外コンポーネントを含有するように調製する。候補化合物が結合を阻害する能力を試験するため、試験化合物非存在下または存在下で、反応を行う。加えて、プラセボを、陽性対照とするために、第三の反応混合物に加えてもよい。混合物に存在する試験化合物と細胞内または細胞外コンポーネントとの結合(複合体形成)を、上記のようにモニターする。対照反応物中では複合体を形成するが、しかし試験化合物を含有する反応混合物中では複合体を形成しないということは、試験化合物が、試験化合物およびその反応パートナーの相互作用を妨げることを示す。
[00228] ESM−1が、コマイトジェンであるConA(コンカナバリンA)の存在下で内皮細胞の増殖を刺激する能力を有するならば、スクリーニング方法の一例は、この能力を利用する。特に、増殖アッセイにおいて、ヒト臍静脈内皮細胞を得て、そして96ウェル平底培養プレート(コースター、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)にて培養し、そして細胞の増殖促進に適切な反応混合物である、Con−A(カルバイオケム、ラホヤ、カリフォルニア州)含有混合物を補足する。Con−Aおよびスクリーニングする化合物を加え、そして37℃にてインキュベートした後に、培養物を3−H−チミジンでパルスし、そしてガラス繊維フィルター(ケンブリッジ・テクノロジー、ウォータータウン、マサチューセッツ州)上に回収する。三つ組の培養物の3−(H)チミジン平均取り込み(cpm)を、液体シンチレーションカウンター(ベックマン・インスツルメンツ、アーバイン、カリフォルニア州)を用いて、測定する。有意な3−(H)チミジン取り込みは、内皮細胞の増殖刺激を示唆する。
[00229] アンタゴニストについてアッセイするために、上記のアッセイを行う;しかし、このアッセイでは、ESM−1を、スクリーニングする化合物とともに加え、そして、ESM−1存在下で3−(H)チミジン取込みを阻害する化合物の能力は、その化合物がESM−1のアンタゴニストであることを示す。あるいは、アンタゴニストを、ESM−1および潜在的なアンタゴニストを膜結合型ESM−1受容体または組換え受容体と組み合わせることによって、競合阻害アッセイの適切な条件下で検出してもよい。ESM−1を、潜在的なアンタゴニストの有効性を判断するのに、受容体に結合したESM−1分子数を用いることが可能なように、放射能などによって標識することが可能である。
[00230] 潜在的なアンタゴニストのさらに具体的な例には、イムノグロブリンとESM−1との融合体に結合するオリゴヌクレオチドおよび、特に、非限定的にポリクローナルおよびモノクローナル抗体および抗体断片、一本鎖抗体、抗イデオタイプ抗体、および、このような抗体または断片のキメラまたはヒト化型を含む抗体、ならびにヒト抗体および抗体断片を含む抗体が含まれる。
[00231] あるいは、潜在的なアンタゴニストは、例えば、受容体を認識するがしかし影響を与えず、それによって競合的にESM−1の作用を阻害するESM−1の変異型などの、密接に関連したタンパク質であってもよい。
[00232] アンタゴニストについての別のアッセイにおいて、受容体を発現する哺乳動物細胞または膜調製物を、候補化合物の存在下で標識ESM−1とともにインキュベートするであろう。次いで、化合物がこの相互作用を増強または遮断する能力を、測定することが可能であろう。
[00233] 別の潜在的なポリペプチドアンタゴニストは、アンチセンス技術を用いて調製されたアンチセンスコンストラクトであり、例えば、アンチセンス分子は、標的mRNA(またはゲノムDNA)とハイブリダイズし、そして本発明のタンパク質のタンパク質翻訳(またはmRNA転写)を妨げることによって、mRNAの翻訳(または転写)を直接遮断するように作用する。アンチセンス技術は、三重らせん形成またはアンチセンスDNAもしくはRNAを介した遺伝子発現を制御するのに用いることが可能であり、該方法はともにポリヌクレオチドのDNAまたはRNAへの結合に基づいている。例えば、ポリヌクレオチド配列の5’コード部分は、本明細書における成熟ポリペプチドをコードするが、約10〜100塩基対長のアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを設計するのに用いられる。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に関与する遺伝子領域と相補的となるように設計され(三重らせん−−Leeら、Nucl.Acids Res.,6:3073(1979年);Cooneyら、Science,241:456(1988年);Dervanら、Science,251:1360(1991年)を参照されたい)、それによって転写およびポリペプチドの産生を妨げる。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは、in vivoにおいてmRNAとハイブリダイズし、そしてmRNA分子のポリペプチドへの翻訳を遮断する(アンチセンス−−Okano,Neurochem.,56:560(1991年);Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression(CRCプレス:ボカ・ラトン、フロリダ州、1988年))。上記のオリゴヌクレオチドを、アンチセンスRNAまたはDNAが、ポリペプチドの産生を阻害するためにin vivoにて発現可能なように、細胞に送達することもまた可能である。アンチセンスDNAを用いる場合、例えば標的遺伝子ヌクレオチド配列の−10〜+10に位置する、翻訳開始部位由来のオリゴデオキシリボ核酸が好ましい。
[00234] アンチセンスRNAまたはDNA分子は、一般に、少なくとも約5塩基長、約10塩基長、約15塩基長、約20塩基長、約25塩基長、約30塩基長、約35塩基長、約40塩基長、約45塩基長、約50塩基長、約55塩基長、約60塩基長、約65塩基長、約70塩基長、約75塩基長、約80塩基長、約85塩基長、約90塩基長、約95塩基長、約100塩基長、またはそれよりも長い。
[00235] 好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50ヌクレオチド長であることが可能である。アンチセンス核酸を、当該技術分野において公知の手順を用いた化学合成および酵素的連結反応を用いて、構築することが可能である。例えば、アンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)を、自然発生ヌクレオチドまたは、分子の生物学的安定性を増加させるかまたはアンチセンスとセンス核酸との間に形成された二重鎖の物理的安定性を増加させるように設計した、様々に修飾されたヌクレオチドを用いて化学合成することが可能であり、例としてホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを用いることが可能である。アンチセンス核酸を作製するのに用いることが可能な修飾ヌクレオチドの例には、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、クエオシン(queosine)、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6−ジアミノプリンが含まれる。あるいは、アンチセンス核酸を、核酸がアンチセンス方向にサブクローニングされた発現ベクターを用いて、生物学的に産生することが可能である(すなわち、挿入した核酸より転写されるRNAは、目的とする標的核酸に対してアンチセンス方向であろうし、さらに次の小節に記載する)。
[00236] 本発明のアンチセンス核酸分子は、典型的に個体に投与するか、または、該分子が本発明の選択したポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズまたは結合するように、in situにて作製し、それによって例えば転写および/または翻訳を阻害することにより、発現を阻害する。ハイブリダイゼーションは、安定な二重鎖を形成する慣用のヌクレオチド相補性によって、あるいは、例えば、DNA二重鎖と結合するアンチセンス核酸分子の場合、二重らせんのメジャーグルーブにおける特異的な相互作用を介して、行うことが可能である。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例には、組織部位への直接注入が含まれる。あるいは、アンチセンス核酸分子を、選択した細胞を標的とするように修飾し、次いで全身投与することが可能である。例えば、全身投与に関しては、例えば、アンチセンス核酸分子を細胞表面受容体または抗原と結合するペプチドまたは抗体と連結させることによって、アンチセンス分子を、選択した細胞表面上に発現する受容体または抗原と特異的に結合するように修飾することが可能である。アンチセンス核酸分子はまた、本明細書において記載されるベクターを用いて、細胞に送達することも可能である。十分なアンチセンス分子細胞内濃度に到達させるには、アンチセンス核酸分子を強力なpol IIまたはpol IIIプロモーターの制御下に配置するベクターコンストラクトが望ましい。
[00237] 本発明のアンチセンス核酸分子は、a−アノマー核酸分子であることが可能である。a−アノマー核酸分子は、通常のa−ユニットに反して、鎖が互いに平行に走る相補的RNAと、特異的な二本鎖ハイブリッドを形成する(Gaultierら(1987年)、Nucleic Acids Res.15:6625−6641)。アンチセンス核酸分子はまた、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoueら(1987年)Nucleic Acids Res.15:6131−6148)またはキメラRNA−DNAアナログ(Inoueら(1987年)FEBS Lett.215:327−330)を含むことが可能である。
[00238] 受容体をコードする遺伝子を、例えばリガンドパニング、FACS選別などの、当業者に公知の多数の方法によって同定することが可能である。Coliganら、Current Protocols in Immun.,1(2):第5章(1991年)。好ましくは、ポリアデニル化RNAをESM−1に反応性の細胞から調製し、そしてこのRNAより作製したcDNAライブラリをプールに分割し、そしてCOS細胞またはESM−1に反応性でない他の細胞に遺伝子導入する、発現クローニングを使用する。スライドガラス上で増殖させた遺伝子導入細胞を、標識ESM−1に曝露する。ESM−1を、ヨウ素化、または部位特異性プロテインキナーゼ認識部位を含めることを含む多様な手段によって、標識することが可能である。固定化およびインキュベーション後に、スライドはオートラジオグラフ解析にかける。陽性プールを同定し、そして、相互作用的なサブプーリングおよび再スクリーニング工程を用いて、サブプールを調製しそして再遺伝子導入し、最終的には、推定される受容体をコードする単一クローンを産生させる。
[00239] 受容体の同定に関するもう一つのアプローチとして、ESM−1を、受容体分子を発現する細胞膜または抽出調製物と光親和性連結することが可能である。架橋した物質をPAGEによって分離し、そしてX線フイルムに曝露する。受容体を含有する標識複合体を切除し、ペプチド断片に分解し、そしてタンパク質のミクロ配列決定を受けることが可能である。ミクロ配列決定から得たアミノ酸配列を、推定される受容体をコードする遺伝子を同定するために、cDNAライブラリをスクリーニングするための変性オリゴヌクレオチドプローブセットの設計に用いられるであろう。
治療される心血管、内皮および血管形成傷害の型
[00240] 本明細書に記載される心血管、血管形成および内皮アッセイにおいて活性を有し、かつ/またはその遺伝子産物が心血管系に局在することがみられるESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストは、糖尿病などの血管に影響を及ぼす全身性障害を含む、多様な心血管、内皮および血管形成障害において治療的用途を有する見込みがある。その治療的な利用には、動脈、毛細血管、静脈および/またはリンパ管の疾患が含まれるであろう。本明細書に基づいた治療の例には、筋肉消耗性疾患の治療、骨粗鬆症の治療、移植片周囲の細胞増殖を刺激し、その結果、目的とする部位へのその接着を促進する、移植片の固定促進、該当する場合には組織中または血清中におけるIGFの安定性増加、および、IGF受容体への結合増加(IGFが、ヒト骨髄赤血球および顆粒球前駆細胞の増殖を増強することが、in vitroにおいて示されたため)が含まれる。
[00241] ESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストを、赤血球生成または顆粒球生成を刺激し、創傷治癒または組織再生、ならびに、結合組織、皮膚、骨、軟骨、筋肉、肺または腎臓などの組織の再増殖に関係する、関連した治療を刺激し、血管形成を促進し、内皮細胞の遊走を刺激または阻害し、そして血管平滑筋の増殖および内皮細胞産生を促進するのにも、使用してもよい。ESM−1またはアゴニストを介した血管形成の増加は、虚血性組織および、冠動脈狭窄後の心臓における冠側副血行の発達に有益であろう。
[00242] 例えば、創傷治癒または肺線維症の間における過剰な結合組織産生を、ESM−1がこういった産生を促進するならば制限するために、アンタゴニストをこのようなポリペプチドの作用を阻害するのに用いる。
[00243] これには、急性心筋梗塞および心不全の治療が含まれるであろう。
[00244] さらに、本発明は、根本にある原因にかかわらず、治療有効用量のESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストを投与することによって、心肥大の治療を提供する。
[00245] 目的がヒト患者の治療であるならば、ESM−1は、好ましくは組換えヒトESM−1ポリペプチド(rhESM−1ポリペプチド)である。心肥大の治療は、その様々な段階のいずれにおいても行うことが可能であり、該段階は、心筋梗塞、高血圧、肥大性心筋症および弁閉鎖不全を含む多様な種々の病態に起因するものであってよい。治療は、心筋の構造的損傷があろうとなかろうと、根本にある心臓障害に関係なく、すべての心肥大の進行段階に拡大する。
[00246] いずれの特定の適応症についても、分子自体またはそのアゴニストを用いるかどうかの決定は、分子のアンタゴニストとは反対であり、主として、本明細書における分子が心臓の血管新生化、内皮細胞発生または血管形成を促進するか、あるいはこれらの状態を阻害するかどうかによって決まるであろう。例えば、分子が血管形成を促進するならば、そのアンタゴニストは、血管形成を制限するかまたは妨げることが望ましい障害の治療に有用であろう。このような疾患の例には、血管腫、腫瘍血管形成、糖尿病性網膜症または未熟児網膜症または黄斑変性症および増殖性硝子体網膜症に関連した、網膜、脈絡膜または角膜における新血管新生、関節リウマチ、クローン病、アテローム動脈硬化症、卵巣過剰刺激症、乾癬、新血管新生に関連した子宮内膜症、血管形成術後の再狭窄、例えば外科手術後に形成されるケロイドにみられる創傷痕組織の過剰産生、心筋梗塞後の線維症、または肺線維症に関連した線維性病変が含まれる。
[00247] しかしながら、分子が血管形成を阻害するならば、上記適応症の治療に直接用いることが期待されるであろう。
[00248] 他方では、分子が血管形成を刺激するならば、それ自体(またはそのアゴニスト)は、末梢血管疾患、高血圧、炎症性血管炎、レイノー病およびレイノー現象、動脈瘤、動脈再狭窄、血管静脈炎、リンパ管炎、リンパ浮腫、創傷治癒および組織修復、虚血性再灌流傷害、狭心症、急性心筋梗塞などの心筋梗塞、慢性心臓病、うっ血性心不全などの心不全、および骨粗鬆症などの、血管形成が望まれる適応症に用いられるであろう。
[00249] しかしながら、分子が血管形成を阻害するならば、そのアンタゴニストは、血管形成が望まれるこれらの状態の治療に用いられるであろう。
[00250] ESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストが、血管に関連した薬物ターゲティングに有用に、または障害の治療もしくは予防の治療標的として働く可能性のある、特定の型の疾患について、以下に記載する。
[00251] アテローム動脈硬化症は、動脈壁内における脂質の蓄積、平滑筋細胞の増殖および線維組織の形成により、動脈に内膜が肥厚したプラークが蓄積することによって特徴付けられる疾患である。この疾患は、任意の器官の大、中および小動脈を冒すことが可能である。内皮および血管平滑筋細胞機能の変化が、このプラークの蓄積および退縮の調節に重要な役割を果たすことは公知である。
[00252] 高血圧は、全身動脈、肺動脈または門脈静脈系における血圧上昇によって特徴付けられる。圧上昇は、損なわれた内膜機能および/または血管疾患に起因するか、またはその結果として生じる可能性がある。
[00253] 炎症性血管炎には、巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、結節性多発性動脈炎(微小血管障害型を含む)、川崎病、顕微鏡的(microscopic)polyarightis、ヴェグナー肉芽腫症、および多様な感染関連血管障害(シェーンライン・ヘノッホ紫斑病を含む)が含まれる。内膜細胞機能の変化は、これらの疾患において重要であることが示されている。レイノー病およびレイノー現象は、寒冷に曝露した四肢の循環の間欠的な異常障害によって特徴付けられる。内膜細胞機能の変化は、この疾患において重要であることが示されている。
[00254] 動脈瘤は、動脈または静脈樹の嚢状または紡錘状の拡張であり、内皮細胞および/または血管平滑筋細胞の変化に関連する。
[00255] 動脈再狭窄(動脈壁の再狭窄)は、内皮および血管平滑筋細胞の機能および増殖が変化する結果として、血管形成術後に起こる可能性がある。
[00256] 血栓性静脈炎およびリンパ管炎は、内皮細胞機能の変化に起因するか、またはその結果として生じる可能性のある、それぞれ静脈およびリンパ管の炎症性障害である。同様に、リンパ浮腫は、内皮細胞機能に起因するリンパ管障害を伴った状態である。
[00257] 良性または悪性血管腫瘍ファミリーは、血管系の細胞エレメントの異常増殖および成長によって特徴付けられる。例えば、リンパ管腫は、リンパ系の良性腫瘍であり、先天性で、多くは嚢胞性の、通常は新生児に生じるリンパ管奇形である。
[00258] 嚢胞性腫瘍は、隣接組織へと増殖する傾向にある。嚢胞性腫瘍は、通常は、頚部および腋窩部に生じる。これはまた、四肢の軟組織にも生じることが可能である。主な症状は、結合組織に囲まれた、膨張型、ときには網状構造のリンパ管およびリンパ嚢胞である。
[00259] リンパ管腫は、胎性リンパ管が不適切に結合するかまたは欠損することによって引き起こされると考えられている。結果として、局所のリンパドレナージが障害される。
[00260] ESM−1のアンタゴニストの別の使用は、腫瘍の血管新生を伴いその増殖および/または転移を可能とする、腫瘍血管形成を予防することにある。この過程は、新たな血管の成長に依存する。腫瘍血管形成を伴う新生物および関連した状態には、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、肝臓癌、卵巣癌、莢膜細胞腫、男性胚腫、子宮頸癌、子宮体癌、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛癌、頭頚部癌、上咽頭癌、喉頭癌、肝芽腫、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚癌、血管腫、空洞性血管腫、血管芽腫、膵臓癌、網膜芽細胞腫、星細胞腫、グリア芽腫、シュワン腫、乏突起細胞腫、髄芽腫、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、尿路癌、甲状腺癌、ウィルムス腫、腎細胞癌、前立腺癌、母斑症に関連する異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)およびメグス症候群が含まれる。
[00261] 加齢性黄斑変性症(AMD)は、高齢者集団における重度の視力喪失の主要な原因である。浸出型AMDは、脈絡膜の新血管新生および網膜色素上皮細胞の剥離によって特徴付けられる。脈絡膜の新血管新生は、予後の劇的な悪化に関連するため、ESM−1のアゴニストは、AMDの重症度の低減に有用であることが期待される。
[00262] 創傷治癒および組織修復などの外傷治癒もまた、ESM−1またはそのアゴニストの使用の対象である。新たな血管の形成および退縮は、組織の治癒および修復に不可欠である。このカテゴリーには、骨、軟骨、腱、靭帯および/または神経組織の成長もしくは再生、そして、創傷治癒ならびに組織修復および置換、そして、火傷、切創および潰瘍の治療が含まれる。
[00263] 骨が正常に形成されない状況において軟骨および/または骨の成長を誘導する、ESM−1のアゴニストまたはアンタゴニストは、ヒトおよび他の動物での骨折および軟骨損傷または欠損の治癒において適用を有する。ESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストを使用するこのような調製物を、皮下骨折および開放骨折を低減するために、そして人工関節の固定を向上するために、予防的に用いてもよい。骨形成剤によって誘導される新たな骨形成は、先天的な、外傷に誘導される、または腫瘍学的な、切除に誘導される頭蓋顔面欠損の修復に寄与し、そして美容形成外科手術においても有用である。
[00264] ESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストはまた、非限定的に、褥瘡、血管不全に関連した潰瘍、外科および外傷性創傷などを含む非治癒創傷を、より良好にまたは早く閉じることを促進するのに有用であってもよい。
[00265] ESM−1のアゴニストまたはアンタゴニストはまた、器官(例えば、膵臓、肝臓、小腸、腎臓、皮膚または内皮を含む)、筋肉(平滑筋、骨格筋または心筋)および血管(血管内皮を含む)組織などの他の組織の発生または再生について、あるいは、このような組織を含む細胞の増殖促進について、活性を示すことが期待される。所望の効果の一部は、正常組織の再生を可能とする、線維性瘢痕の阻害または調節によるものであってもよい。
[00266] ESM−1のアゴニストまたはアンタゴニストはまた、腸の保護または再生に、ならびに、肺または肝線維症、種々の組織における再灌流傷害、そして全身性サイトカイン損傷に起因する状態の治療に、有用であってもよい。また、ESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストは、前駆組織または細胞由来の上記組織の分化を促進または阻害するか、あるいは上記組織の増殖を阻害するのに、有用であってもよい。
[00267] ESM−1のアゴニストまたはアンタゴニストを、歯周病の治療および他の歯修復過程においても用いてよい。このような薬剤は、骨形成細胞を誘引するか、骨形成細胞の増殖を刺激するかまたは骨形成細胞の前駆体の分化を誘導する環境を、提供してもよい。ESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストは、骨および/または軟骨修復の刺激を介するか、あるいは、炎症過程を介した炎症または組織破壊の過程(コラーゲナーゼ活性、破骨細胞活性など)を遮断することによるなどの、骨粗鬆症または変形性関節炎の治療において有用であってもよいが、これは、血管が、骨代謝回転および増殖の調節に重要な役割を果たすためである。
[00268] ESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストに起因する可能性がある組織再生活性の別のカテゴリーは、腱/靭帯の形成である。腱/靭帯様組織または他の組織の形成を、このような組織が正常に形成されていない状況において誘導するタンパク質は、ヒトまたは他の動物における、腱または靭帯裂傷、変形、および腱または靭帯欠損の治癒に適用を有する。このような調製物は、腱または靭帯組織への損傷を予防するのに、ならびに、腱または靭帯の骨または他組織への固定を改善するのに、そして、腱または靭帯組織の欠損を修復するのに、予防的に用いてもよい。ESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストの組成物によって誘導される新たな腱/靭帯様組織の形成は、先天的な、外傷に誘導される、あるいは、他の原因による他の腱または靭帯の欠損の修復に寄与し、そして、腱または靭帯の接着または修復のための美容形成外科手術にも有用である。本明細書における組成物は、ex vivoにおいて、腱もしくは靭帯形成細胞を誘引するか、腱もしくは靭帯形成細胞の増殖を刺激するか、腱もしくは靭帯形成細胞の前駆体の分化を誘導するか、または腱/靭帯細胞もしくは前駆体の増殖を誘導する環境を、in vivoに戻して組織修復を生じるために、与えてもよい。本明細書における組成物はまた、腱炎、手根管症候群、および他の腱または靭帯欠損の治療において有用であってもよい。組成物はまた、当該技術分野において周知のような、適切なマトリックスおよび/または金属イオン封鎖剤をキャリアとして含んでもよい。
[00269] ESM−1またはそのアゴニストは、神経細胞の増殖ならびに神経および脳組織の再生、すなわち、中枢および末梢神経系疾患および神経障害、ならびに、神経細胞または神経組織の変性、死または外傷を伴う、機械的および外傷性障害に有用であってもよい。さらに具体的には、ESM−1またはそのアゴニストは、末梢神経損傷、末梢神経障害および局所神経障害などの末梢神経系疾患、ならびに、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症およびシャイ・ドレーガー症候群などの中枢神経系疾患の治療に用いてもよい。本発明にしたがって治療してもよいさらなる状態には、脊髄障害などの機械的および外傷性障害、頭部外傷、ならびに、脳卒中などの脳血管性疾患が含まれる。化学療法または他の医学療法に起因する末梢神経障害もまた、ESM−1のアゴニストまたはアンタゴニストを用いて治療可能であってもよい。
[00270] 虚血再灌流傷害は、別の適応症である。内皮細胞機能障害は、虚血性再灌流傷害に続いて起こる現象の後遺症の開始および調節の双方に、重要であってもよい。
[00271] 関節リウマチは、さらなる適応症である。血管の成長、および、脈管構造を介して炎症細胞を標的にすることは、リウマチおよび血清陰性型関節炎の病因における重要なコンポーネントである。
[00272] ESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストをまた、状態の進行を妨げそして無症候性患者の死を含む突然死を避けるために、心肥大を有する患者に予防的に投与してもよい。このような予防治療は、高度の左室心肥大(最大壁厚は、成人において35mmまたはそれよりも厚く、あるいは、子供においては同等の値)と診断された患者の場合、あるいは、心臓への血行動態負荷が特に強い場合に、特に正当である。
[00273] ESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストはまた、肥大型心筋症と診断された患者の大部分に発生する心房細動の管理に有用であってもよい。さらなる適応症には、狭心症、急性心筋梗塞などの心筋梗塞、およびうっ血性心不全などの心不全が含まれる。さらなる非新生物状態には、乾癬、糖尿病性網膜症、および未熟児網膜症を含む他の増殖性網膜症、水晶体後線維増殖症、血管新生緑内障、甲状腺過形成(グレーブス病を含む)、角膜および他の組織移植、慢性炎症、肺炎症、ネフローゼ症候群、子癇前症、腹水、心嚢貯留液(心外膜炎に関連するものを含む)、および胸水が含まれる。
[00274] 上記を考慮して、本明細書に記載されたESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストは、内皮細胞の機能、増殖および/または形成を変化させるかまたは影響を与えることが示され、多くのまたはすべての上記障害の病因および原因に重要な役割を果たす傾向にあり、そして、それ自体は、この過程を増大させるかまたは阻害するか、あるいは、これらの障害における血管関連薬物ターゲティングに対する治療標的となることが可能である。
診断アッセイ
[00275] 生体試料中に本発明のポリペプチドまたは核酸の有無を検出するための典型的な方法は、生体試料を試験個体から得て、そして、本発明のポリペプチドまたは核酸の存在が生体試料中に検出されるように、本発明のポリペプチドまたは核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA)を検出可能な化合物または薬剤と生体試料を接触させることを伴う。ESM−1ポリペプチドをコードするmRNAまたはゲノムDNAを検出するのに好ましい薬剤は、ESM−1ポリペプチドをコードするmRNAまたはゲノムDNAをハイブリダイズ可能な標識核酸プローブである。核酸プローブは、例えば、配列番号:1の核酸などの全長cDNA、あるいは、少なくとも15、30、50、100、250または500ヌクレオチド長でそしてESM−1ポリペプチドをコードするmRNAまたはゲノムDNAとストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドなどの、該cDNAの一部であることが可能である。本発明の診断アッセイに用いるための他の適当なプローブについては、本明細書に記載される。
[00276] ESM−1ポリペプチドを検出するための好ましい薬剤は、ESM−1ポリペプチドと結合可能な抗体、好ましくは検出可能な標識を伴う抗体である。抗体は、ポリクローナル、またはより好ましくはモノクローナルであることが可能である。無傷抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’))を用いることが可能である。「標識」の語は、プローブまたは抗体に関しては、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリング(すなわち、物理的連結)させることによって、プローブまたは抗体を直接的に標識すること、ならびに、直接標識された別の試薬と反応することによって、プローブまたは抗体を間接的に標識することを、包含することを意図する。間接標識の例には、蛍光標識二次抗体を用いた一次抗体の検出、および、蛍光標識ストレプトアビジンで検出可能なようにDNAプローブをビオチンで末端標識することが含まれる。「生体試料」の語は、個体から単離した組織、細胞および生体液、ならびに、個体内に存在する組織、細胞および液を含むことを意図する。すなわち、本発明の検出方法を、in vitroおよびin vivoにおいて、生体試料中のmRNA、タンパク質またはゲノムDNAを検出するのに用いることが可能である。例えば、mRNAを検出するためのin vitro技術には、ノーザン・ハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイゼーションが含まれる。ESM−1ポリペプチドを検出するためのin vitro技術には、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光が含まれる。ゲノムDNAを検出するためのin vitro技術には、サザンハイブリダイゼーションが含まれる。さらに、ESM−1ポリペプチドを検出するためのin vivo技術には、ポリペプチドに対する標識抗体を個体へ導入することが含まれる。例えば、抗体は、個体における存在および位置を標準的な画像処理技術によって検出することが可能な、放射性マーカーで標識することが可能である。
[00277] ある態様において、生体試料は、試験個体由来のタンパク質分子を含有する。あるいは、生体試料は、試験個体由来のmRNA分子または試験個体由来のゲノムDNA分子を含有することが可能である。好ましい生体試料は、慣用の手段によって個体から単離した末梢血白血球試料である。
[00278] 別の態様において、方法はさらに、対照個体から対照生体試料を得て、ポリペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAもしくはゲノムDNAの存在が生体試料中に検出されるように、ESM−1ポリペプチドまたはESM−1ポリペプチドをコードするmRNAもしくはゲノムDNAを検出可能な化合物または薬剤と対照試料を接触させ、そして、対照試料中のポリペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAもしくはゲノムDNAの存在を、試験試料中のポリペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAもしくはゲノムDNAの存在と比較することを、伴う。
[00279] 本発明はまた、生体試料(試験試料)中の本発明のポリペプチドまたは核酸の存在を検出するためのキットを包含する。このようなキットを、個体がESM−1ポリペプチドの異常発現に関連した障害(例えば、アンドロゲン非依存性前立腺癌)を患っているか、または発症する危険性が増加しているかを判断するのに用いることが可能である。例えば、キットは、生体試料中のポリペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAを検出可能な標識化合物または薬剤、および、試料中のポリペプチドまたはmRNA量を測定する手段(例えば、ポリペプチドと結合する抗体、またはポリペプチドをコードするDNAもしくはmRNAと結合するオリゴヌクレオチドプローブと結合する抗体)を含むことが可能である。キットはまた、ポリペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAの量が正常レベルよりも上または下であるならば、試験個体がポリペプチドの異常発現に関連した障害を患っているかまたは発症する危険性があることを観察するための取扱説明書を、含んでもよい。
[00280] 抗体に基づいたキットに関して、キットは、例えば:(1)ESM−1ポリペプチドと結合する、(例えば、固相担体に結合させた)第一抗体;および、所望により、(2)ポリペプチドかまたは第一抗体のいずれかと結合し、そして検出可能な薬剤を結合させた、別の第二抗体を含んでもよい。
[00281] オリゴヌクレオチドに基づいたキットに関して、キットは、例えば:(1)ESM−1ポリペプチドをコードする核酸配列とハイブリダイズする、例えば検出可能に標識したオリゴヌクレオチドなどの、オリゴヌクレオチド、または、(2)ESM−1ポリペプチドをコードする核酸分子を増幅させるのに有用なプライマー対を含んでもよい。
[00282] キットはまた、例えば、緩衝剤、保存剤またはタンパク質安定化剤を含んでもよい。キットはまた、検出可能な薬剤を検出するのに必要なコンポーネント(例えば、酵素または基質)を含んでもよい。キットはまた、アッセイしそして含有される試験試料と比較することが可能な、対照試料または一連の対照試料を含有してもよい。キットの各コンポーネントは、通常は、個々の容器中に封入されており、そしてすべての種々の容器は、試験個体がポリペプチドの異常発現に関連した障害を患っているかまたは発症する危険性があるかを観測するための取扱説明書とともに、単一パッケージ中にある。
予後アッセイ
[00283] 本明細書に記載される方法を、ESM−1ポリペプチドの異常発現または活性に関連した疾患または障害を有しているかまたは発症する危険性がある個体を同定するための、診断または予後アッセイとして、さらに利用することが可能である。例えば、先行する診断アッセイまたは後続のアッセイなどの、本明細書に記載されるアッセイは、ESM−1ポリペプチドの異常発現または活性に関連した障害を有しているかまたは発症する危険性がある個体を同定するのに利用することが可能である。あるいは、予後アッセイは、このような疾患または障害を有しているかまたは発症する危険性がある個体を同定するのに利用することが可能である。このように、本発明は、試験試料を個体から得て、そして本発明のポリペプチドまたは核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA)を検出する方法を提供し、該方法では、ポリペプチドまたは核酸の存在は、ポリペプチドの異常発現または活性に関連した疾患または障害を有しているかまたは発症する危険性がある個体について診断的である。本明細書では、「試験試料」の語は、目的とする個体から得た生体試料を指す。例えば、試験試料は、生体液(例えば、血清)、細胞試料または組織であることが可能である。
[00284] さらに、本明細書に記載される予後アッセイを、ESM−1ポリペプチドの異常発現または活性に関連した疾患または障害を治療するのに、薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド類似体、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子または他の薬剤候補)を個体に投与可能であるかどうかを判断するのに用いることが可能である。例えば、このような方法を、特定の薬剤または薬剤の部類(例えば、ポリペプチドの活性を減少させる型の薬剤)を用いて、個体を効果的に治療可能であるかどうかを判断するのに用いることが可能である。このように、本発明は、ESM−1ポリペプチドの異常発現または活性に関連した障害のための薬剤を用いて、個体を効果的に治療可能であるかどうかを判断するための方法を提供し、該方法では、試験試料を得て、そしてポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸を検出する(例えば、ポリペプチドまたは核酸の存在は、ポリペプチドの異常発現または活性に関連した障害を治療する薬剤を投与可能な個体について診断的である。
[00285] 本発明の方法は、本発明の遺伝子中の遺伝子損傷または変異を検出し、それによって、損傷遺伝子を有する個体に、ESM−1ポリペプチドの異常発現または活性に特徴付けられる障害の危険性があるかどうかを判断するのにも用いることも可能である。好ましい態様において、方法には、個体由来の細胞試料中に、ESM−1ポリペプチドをコードする遺伝子の完全性またはESM−1ポリペプチドをコードする遺伝子の異所性発現に影響を及ぼす少なくとも一つの変化によって特徴付けられる、遺伝子損傷または変異の有無を検出することが含まれる。例えば、このような遺伝子損傷または変異を、以下のうちの少なくとも一つの存在を確かめることによって、検出することが可能である:1)1またはそれより多くのヌクレオチドの、該遺伝子からの欠失;2)1またはそれより多くのヌクレオチドの、該遺伝子への付加;3)該遺伝子の1またはそれより多くのヌクレオチドの置換;4)該遺伝子の染色体再編成;5)該遺伝子のメッセンジャーRNA転写物レベルの変化;6)ゲノムDNAのメチル化パターンなどの、該遺伝子の異常修飾;7)該遺伝子のメッセンジャーRNA転写物の非野生型スプライシングパターンの存在;8)該遺伝子によってコードされるタンパク質の非野生型レベル;9)該遺伝子のアリル欠失;および、10)該遺伝子によってコードされるタンパク質の不適切な翻訳後修飾。本明細書に記載されるように、当該技術分野において公知の多数のアッセイ技術があり、遺伝子における損傷を検出するのに用いることが可能である。
[00286] 特定の態様において、損傷の検出は、アンカーPCRまたはRACE PCRなどのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,195および4,683,202を参照されたい)、あるいは、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば、Landegranら(1988年)Science 241:1077−1080;および、Nakazawaら(1994年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:360−364を参照されたい)においてプローブ/プライマーの使用を伴い、後者は、遺伝子における点変異の検出に特に有用である可能性がある(例えば、Abravayaら(1995年)、Nucleic Acids Res.23:675−682)。この方法は、患者から細胞試料を採取し、試料の細胞から核酸(例えば、ゲノム、mRNAまたは双方)を単離し、核酸試料を、遺伝子(もし存在するなら)のハイブリダイゼーションおよび増幅が起こるような条件下で、選択した遺伝子を特異的にハイブリダイズする1またはそれより多くのプライマーと接触させ、そして増幅産物の有無を検出するか、または増幅産物の大きさを検出し、そして長さを対照試料と比較する工程を含むことが可能である。PCRおよび/またはLCRは、本明細書に記載される変異を検出するのに用いられる任意の技術と併せて、予備増幅工程として用いるのに望ましいことが期待される。
[00287] 別の増幅法には、次のものが含まれる:自己持続性配列複製(Guatelliら(1990年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、転写増幅システム(Kwohら(1989年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、Q−ベータ レプリカーゼ(Lizardiら(1988年)Bio Technology 6:1197)、または他の任意の核酸増幅法、に続いて、当業者に周知の技術を用いて増幅した分子を検出する。このような分子が極めて少数存在するならば、これらの検出スキームは、核酸分子の検出に特に有用である。
[00288] 別の態様において、試料細胞由来の選択した遺伝子中の変異を、制限酵素切断パターンを変えることによって同定することが可能である。例えば、試料および対照DNAを、単離し、増幅し(所望により)、1またはそれより多くの制限エンドヌクレアーゼで消化し、そして断片長の大きさをゲル電気泳動によって決定しそして比較する。試料と対照DNA間の断片長の大きさの違いは、試料DNA中の変異を示す。さらに、配列特異的リボザイムの使用(例えば、米国特許第5,498,531を参照されたい)を、リボザイム切断部位を作製または欠失させことによって特異的な変異の存在を評価するのに用いることが可能である。
[00289] 他の態様において、遺伝子変異を、例えばDNAまたはRNAなどの試料および対照核酸を、数百または数千ものオリゴヌクレオチドプローブを含有する高密度アレイにハイブリダイズさせることによって(Croninら(1996年)Human Mutation 7:244−255;Kozalら(1996年)Nature Medicine 2:753−759)、同定することが可能である。例えば、遺伝子変異を、”Croninら、同上”に記載されるような発光DNAプローブを含有する二次元アレイにおいて、同定することが可能である。簡単に言えば、プローブの最初のハイブリダイゼーションアレイを、連続したオーバーラップするプローブの直線状アレイを作製することによって配列間の塩基変化を同定するために、試料および対照中のDNAの長い範囲を読み取るのに用いることが可能である。この工程は、点変異の同定を可能にする。この工程の後に、検出されるすべてのバリアントまたは変異体に相補的な、より小さく、特化されたプローブアレイを用いることによって特定の変異の特徴付けを可能とする、第二のハイブリダイゼーションアレイが続く。各変異アレイは、一方は野生型遺伝子に相補的でそして他方は変異遺伝子に相補的な、パラレルプローブセットで構成される。
[00290] さらに別の態様において、当該技術分野において公知のいずれの多様な配列決定反応も、選択した遺伝子を直接配列決定し、そして、試料核酸の配列を対応する野生型(対照)配列と比較することによって変異を検出するのに用いることが可能である。配列決定反応の例には、MaximおよびGilbert((1977年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:560)またはSanger((1977年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463)によって開発された技術に基づいたものが含まれる。多様な自動化配列決定の手順はいずれも、診断アッセイを行う場合に利用可能であると考えられ((1995年)Bio Techniques 19:448)、質量分析による配列決定(例えば、PTC公報第WO 94/16101;Cohenら(1996年)Adv.Chromatogr.36:127−162;および、Griffinら(1993年)Appl.Biochem.Biotechnol.38:147−159)が含まれる。
[00291] 選択した遺伝子中の変異を検出するための他の方法には、切断剤からの保護を、RNA/RNAまたはRNA/DNAヘテロ二重鎖中のミスマッチ塩基を検出するのに用いる方法(Myersら(1985年)Science 230:1242)が含まれる。一般に、ミスマッチ切断技術は、野生型配列を含有する(標識)RNAまたはDNAを、組織試料から得た潜在的な変異RNAまたはDNAとハイブリダイズさせることによって形成されたヘテロ二重鎖を提供することを、伴う。二本鎖の二重鎖を、例えば対照と試料鎖間の塩基対のミスマッチによって存在するであろう、二重鎖の一本鎖領域を切断する薬剤で処理する。RNA/DNA二重鎖を、ミスマッチ領域を消化するためにRNA分解酵素で処理することが可能であり、そしてDNA/DNAハイブリッドを、ミスマッチ領域を消化するためにS1ヌクレアーゼで処理することが可能である。他の態様において、DNA/DNAかまたはRNA/DNAのいずれかの二重鎖を、ミスマッチ領域を消化するために、ヒドロキシルアミンまたは四酸化オスミウム、およびピペリジンを用いて処理することが可能である。ミスマッチ領域を消化した後、次いで、結果として生じた物質を、変異部位を決定するため、変性ポリアクリルアミドゲル上で大きさによって分離する。例えば、Cottonら(1988年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4397;Saleebaら(1992年)Methods Enzymol.217:286−295を参照されたい。好ましい態様において、対照DNAまたはRNAを、検出のために標識することが可能である。
[00292] さらに別の態様において、ミスマッチ切断反応は、細胞試料から得たcDNA中の点変異を検出しそしてマッピングするために定められたシステムにおいて、二本鎖DNAにおけるミスマッチ塩基対を認識する1またはそれより多くのタンパク質(いわゆるADNAミスマッチ修復酵素)を使用する。例えば、大腸菌のmutY酵素は、G/AミスマッチにおけるAを切断し、そしてHeLa細胞由来チミジンDNAグリコシラーゼは、G/TミスマッチにおけるTを切断する(Hsuら、(1994年)Carcinogenesis 15:1657−1662)。典型的な態様にしたがって例えば野生型配列などの選択した配列に基づいたプローブを、cDNAまたは試験細胞由来の他のDNA産物とハイブリダイズさせる。二重鎖をDNAミスマッチ修復酵素で処理し、そして、もしあるならば、切断産物を電気泳動プロトコールなどから検出することが可能である。例えば、米国特許第5,459,039を参照されたい。
[00293] 他の態様において、電気泳動移動度の変化を、遺伝子中の変異を同定するのに用いるであろう。例えば、一本鎖立体構造多型(SSCP)を、変異型と野生型の核酸間の電気泳動移動度の違いを検出するのに用いてもよい(Oritaら(1989年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2766;また、Cotton(1993年)Mutat.Res.285:125−144;Hayashi(1992年)Genet.Anal.Tech.Appl.9:73−79も参照されたい)。試料および対照核酸の一本鎖DNA断片を、変性させそして再生させるであろう。一本鎖核酸の二次構造は、配列にしたがって変わり、そして、結果として生じる電気泳動移動度の変化は、一塩基の変化でさえ検出を可能とする。DNA断片は、標識プローブを用いて標識または検出してもよい。アッセイの感度を、二次構造が配列中の変化に対してより感受性であるRNA(DNAよりもむしろ)を用いることによって、増強してもよい。好ましい態様において、対象となる方法は、ヘテロ二重鎖解析を利用して、電気泳動移動度の変化に基づいて二本鎖のヘテロ二重鎖分子を分離する(Keenら(1991年)Trends Genet.7:5)。
[00294] さらに別の態様において、変性剤の勾配を含有するポリアクリルアミドゲルにおける変異型または野生型断片の移動を、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)を用いてアッセイする(Myersら(1985年)Nature 313:495)。DGGEを分析方法として用いる場合、例えば、PCRによって、約40塩基対の高融点のGCの豊富なDNAであるGCクランプを加えることによって、DNAを、完全に変性しないことを確実にするために修飾するであろう。さらなる態様において、対照および試料DNAの移動度の違いを同定するために、温度勾配を、変性勾配の代わりに用いる(RosenbaumおよびReissner(1987年)Biophys.Chem.265:12753)。
[00295] 点変異を検出するための他の技術の例には、限定されるわけではないが、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長が含まれる。例えば、公知の変異が中心に配置されるオリゴヌクレオチドプライマーを、調製してもよく、次いで、完全な一致がみられた場合にのみハイブリダイゼーションが可能となる条件下で、標的DNAとハイブリダイズさせてもよい(Saikiら(1986年)Nature 324:163);Saikiら(1989年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6230)。オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせる膜に結合させ、そして標識した標的DNAとハイブリダイズさせる場合に、このようなアリル特異的オリゴヌクレオチドを、PCR増幅した標的DNAまたはいくつかの異なった変異とハイブリダイズさせる。
[00296] あるいは、選択的PCR増幅に依存するアリル特異的増幅技術を、本発明と併せて用いてもよい。プライマーとして特異的増幅用に用いるオリゴヌクレオチドは、分子の中心(増幅がディファレンシャルハイブリダイゼーションに依存するように)(Gibbsら(1989年)Nucleic Acids Res.17:2437−2448)、または、適切な条件下でミスマッチがポリメラーゼ伸長を妨げるかまたは低減することが可能な、あるプライマーの最も3’末端に(Prossner(1993年)Tibtech 11:238)、目的とする変異を保有してもよい。加えて、切断に基づいた検出を引き起こすために、新規の制限酵素認識部位を変異領域中に導入することが望ましい場合もある(Gaspariniら(1992年)Mol.Cell Probes 6:1)。特定の態様において、増幅を、増幅用Taqリガーゼを用いて行うことが期待される(Barany(1991年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189)。このような場合、増幅の有無を探すことによって特定部位における公知の変異の存在を検出することを可能にする、5’配列の3’末端に完全なスナッチがある場合にのみ、連結を生じるであろう。
[00297] 本明細書に記載される方法を、例えば、本明細書に記載される少なくとも一つのプローブ核酸または抗体試薬を含有する包装前の診断用キットを利用することによって、遂行してもよく、例えば、臨床現場において、ESM−1ポリペプチドをコードする遺伝子に関係する疾患または病気の徴候または家族歴を示す患者を診断するのに、好都合に用いてもよい。
[00298] さらに、ESM−1ポリペプチドが発現しているいずれの細胞型または組織、好ましくは血液白血球を、本明細書に記載される予後アッセイに使用してもよい。
薬理ゲノム学
[00299] 本明細書に記載されるスクリーニングアッセイによって同定されるような、ESM−1ポリペプチドの活性または発現への刺激または阻害効果を有する薬剤またはモジュレーターを、該ポリペプチドの異常活性に関連した障害を(予防的または治療的に)治療するために、個体に投与することが可能である。このような治療と併せて、個体の薬理ゲノム学(すなわち、個体の遺伝子型と、その個体の外来の化合物または薬物に対する反応との間の関連性についての研究)を考慮してもよい。治療の代謝における違いは、薬理学的に活性な薬物の用量と血中濃度との間の関係を変えることによって、重度の毒性または治療の失敗をもたらすことがある。このように、個人の薬理ゲノム学は、個人の遺伝子型の考慮に基づいた予防的または治療的な治療のために、有効な薬剤(例えば、薬物)の選択を可能にする。このような薬理ゲノム学を、適切な用量および治療レジメンを決定するのに、さらに用いることが可能である。したがって、ESM−1ポリペプチドの活性、本発明の核酸の発現、または個体における本発明の遺伝子の変異内容を、これによって個体の治療的または予防的治療に適切な薬剤を選択するために、測定することが可能である。
[00300] 薬理ゲノム学は、薬物の性質の変化および病気に冒された個人における異常作用による、薬物の反応において臨床的に有意な遺伝的差異を扱う。例えば、Linder(1997年)Clin.Chem.43(2):254−266を参照されたい。一般に、二つの型の薬理遺伝的素因に区別することが可能である。薬物が身体に作用する様式を変える一要因として遺伝する遺伝的素因は、「薬物作用の変化」という。身体が薬物に作用する様式を変える一要因として遺伝する遺伝的素因は、「薬物代謝の変化」という。このような薬理遺伝的素因は、希な欠損としてかまたは遺伝子多型として生じることが可能である。
[00301] このように、ESM−1ポリペプチドの活性、該ポリペプチドをコードする核酸の発現、または個体における該ポリペプチドをコードする遺伝子の変異内容を、これによって個体の治療的または予防的治療に適切な薬剤を選択するために、測定することが可能である。加えて、薬物代謝酵素をコードする多型アリルの遺伝子型同定を、個体の薬物反応表現型の同定に応用するのに、薬理遺伝的研究を用いることが可能である。用量決定または薬剤選択に適用する場合に、この知見によって、副作用または治療の失敗を避けることが可能であり、したがって、本明細書に記載される典型的なスクリーニングアッセイの一つによって同定されるモジュレーターのような、ポリペプチドの活性または発現のモジュレーターを用いて個体を治療する場合に、治療的または予防的有効性を増大させることが可能である。
臨床試験中の効果のモニタリング
[00302] 薬剤(例えば、薬物、化合物)がESM−1ポリペプチドの発現または活性に及ぼす影響(例えば、異常細胞増殖および/または分化を調節する能力)をモニターすることを、基本的な薬物スクリーニングにおいてのみならず、臨床試験においても適用することが可能である。例えば、遺伝子発現、タンパク質レベルまたはタンパク質活性を増加させる、本明細書に記載されるようなスクリーニングアッセイによって測定されるような薬剤の効力を、遺伝子発現、タンパク質レベルまたはタンパク質活性の減少を示している個体に対する臨床試験において、モニターすることが可能である。あるいは、遺伝子発現、タンパク質レベルまたはタンパク質活性を減少させる、スクリーニングアッセイによって測定されるような薬剤の効力を、遺伝子発現、タンパク質レベルまたはタンパク質活性の増加を示している個体に対する臨床試験において、モニターすることが可能である。このような臨床試験において、ESM−1ポリペプチドの発現または活性、および好ましくは、前立腺癌に関わっている他のポリペプチドの発現または活性を、マーカーとして用いることが可能である。
[00303] 例えば、そして限定されるわけではないが、(例えば、本明細書に記載されるスクリーニングアッセイにおいて同定されるような)ESM−1ポリペプチドの活性または発現を調節する薬剤(例えば、化合物、薬物または小分子)を用いて処理することによって細胞内で調節される、本発明のものを含む遺伝子を、同定することが可能である。このように、例えばアンドロゲン非依存性前立腺癌などの前立腺癌に対する薬剤の効果を、例えば臨床試験において検討するために、細胞を単離しそしてRNAを調製し、そして本発明の遺伝子および疾患に関わる他の遺伝子の発現レベルについて解析することが可能である。遺伝子発現レベル(すなわち、遺伝子発現パターン)を、本明細書に記載されるようなノーザンブロット解析またはRT−PCRによって、あるいは、本明細書に記載されるような方法の一つにより産生タンパク質量を測定することによって、または、本発明の遺伝子もしくは他の遺伝子の活性レベルを測定することによって、定量化することが可能である。このように、遺伝子発現パターンは、薬剤に対する細胞の生理学的反応を示すマーカーとなることが可能である。したがって、この反応状態を、薬剤で個体を治療する前、および治療中の様々な時点において、測定してもよい。
[00304] 好ましい態様において、本発明は、薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド類似体、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、または、本明細書に記載されるスクリーニングアッセイによって同定された他の薬剤候補)を用いた個体の治療効果をモニタリングする方法を提供し、該方法は、(i)薬剤投与前の個体から投与前試料を得て;(ii)投与前試料中の本発明のポリペプチドまたは核酸レベルを検出し(所望により、アンドロゲンの存在下および非存在下で);(iii)1またはそれより多くの投与後試料を個体から得て;(iv)投与後試料中の本発明のポリペプチドまたは核酸レベルを検出し(所望により、アンドロゲンの存在下および非存在下で);(v)投与前試料中の本発明のポリペプチドまたは核酸レベル(またはアンドロゲン誘導能)を、1または複数の投与後試料中の本発明のポリペプチドまたは核酸レベルと比較し;そして、(vi)それに応じて、薬剤の個体への投与を変えるという工程を含む。例えば、薬剤投与の増加は、ポリペプチドの発現または活性を低減する、すなわち、薬剤の効果を増加させるのに望ましい場合もある。
核酸の移入
[00305] 現在のところ好ましいin vivo核酸移入技術には、ウイルス性(アデノウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスIウイルスまたはアデノ関連ウイルス(AAV)など)または非ウイルス性ベクター、および脂質に基づいたシステム(脂質を介した遺伝子の移入に有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPEおよびDC−Cholであり;例えば、Tonkinsonら、Cancer Investigation、11M:54−65(1996年)を参照されたい)を用いた遺伝子導入が含まれる。遺伝子治療に用いるための最も好ましいベクターはウイルスであり、最も好ましくはアデノウイルス、AAV、レンチウイルスまたはレトロウイルスである。レトロウイルスベクターなどのウイルスベクターは、少なくとも一つの転写プロモーター/エンハンサーまたは座位規定エレメント、あるいは、選択的スプライシング、RNA核外輸送またはメッセンジャーの翻訳後修飾などの他の手段によって遺伝子発現を制御する、他のエレメントを含む。加えて、レトロウイルスベクターなどのウイルスベクターは、ESM−1をコードする遺伝子の存在下で転写する場合に、機能可能に連結されそして転写開始配列として作用する核酸分子を含む。このようなベクターコンストラクトはまた、パッケージングシグナル、末端反復配列(LTR)またはその一部、ならびに用いるウイルスに適したプラスおよびマイナス鎖プライマー結合部位(これらがまだウイルスベクターに存在しないならば)を含む。加えて、このようなベクターは典型的に、該ベクターを入れる宿主細胞からESM−1を分泌するためのシグナル配列を含む。好ましくは、この目的のためのシグナル配列は、哺乳動物のシグナル配列、最も好ましくはESM−1に対する天然シグナル配列である。所望により、ベクターコンストラクトはまた、ポリアデニル化を指示するシグナル、ならびに、1またはそれより多くの制限部位および転写終結配列を含む。一例として、このようなベクターは、典型的に、5’LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第二鎖DNA合成の起点、およびYLTRまたはその一部を含むであろう。カチオン性脂質、ポリリシンおよびデンドリマーなどの非ウイルス性である他のベクターを用いてもよい。
[00306] 場合によっては、核酸原料を、細胞表面膜タンパク質または標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上の受容体のリガンドなどの、標的細胞を標的とする薬剤とともに提供することが望ましい。リポソームを使用する場合、エンドサイトーシスに関連した細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質を、ターゲティングのために、かつ/または取込みを促進するために用いてもよく、例えば、特定の細胞型指向性のキャプシドタンパク質またはその断片、サイクル中に内部移行を受けるタンパク質に対する抗体、および、細胞内局在化を標的としそして細胞内半減期を増大させるタンパク質である。受容体を介したエンドサイトーシス技術は、例えば、Wuら、J.Biol.Chem.,262:4429−4432(1987年);および、Wagnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:3410−3414(1990年)によって記載されている。現在のところ公知の遺伝子マーキングおよび遺伝子治療プロトコールの総説に関しては、Andersonら、Science,256:808−813(1992年)を参照されたい。また、WO 93/25673およびその中に引用された参考文献も参照されたい。
[00307] 適当な遺伝子治療ならびにレトロウイルス粒子および構造タンパク質を作る方法は、例えば、米国特許第5,681,746に見つけることが可能である。
治療投与
[00308] ESM−1またはそのアンタゴニストの治療有効用量は、もちろん、治療(予防を含む)される状態、投与方法、治療に用いる化合物の種類、伴う任意の同時治療、患者の年齢、体重、一般的な病状、病歴などの要因に依存して変わるであろうし、そして、その決定は、十分に、実践している医師の技量の範囲内である。したがって、治療専門家は、最大限の治療効果を得るために、必要に応じて用量を滴定しそして投与経路を修正する必要があろう。ESM−1が、ヒトESM−1を含む処方物でのヒト患者の治療に対して狭い宿主域を有する場合は、天然配列ヒトESM−1が好ましい。臨床家は、用量が、問題の状態の治療に対して所望の効果を達成する用量に達するまで、ESM−1を投与するであろう。例えば、目的がCHFの治療であるならば、量は、この病態に関連した進行性心肥大を阻害する量であろう。この療法の進行は、心エコー検査によって容易にモニターされる。同様に、肥大性心筋症の患者に、ESM−1を経験に基づいて投与することが可能である。
併用療法
[00309] ESM−1またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストの、問題の障害を予防または治療する際の効力を、活性薬剤を連続的に投与するかまたは、このような目的に効果的な別の薬剤を、同じ組成物中かまたは別々の組成物として併用投与することによって、向上させてもよい。例えば、心肥大の治療について、ESM−1療法を、公知の心臓心筋細胞肥大因子の阻害剤の投与と併用することが可能であり、該阻害剤とは、例えば、フェニレフリンなどのcc−アドレナリンアゴニストの阻害剤;BOSENTANTMおよびMOXONODINTMなどのエンドセリン−1阻害剤;CT−1阻害剤(米国特許第5,679,545);LIF阻害剤;ACE阻害剤;脱アスパラギン酸アンギオテンシンI阻害剤(米国特許第5,773,415)、およびアンギオテンシンII阻害剤である。
[00310] 高血圧に関連した心肥大の治療について、ESM−1を、例えば、プロプラノロール、チモロール、テルタロロール、カルテオロール、ナドロール、ベタキソロール、ペンブトロール、アセトブトロール、アテノロール、メトプロロールまたはカルベジロールなどのP−アドレナリン受容体遮断剤;例えば、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ラミプリル、ベナゼプリル、フォシノプリルまたはリシノプリルなどのACE阻害剤;例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチルクロチアジド、ベンズチアジド、ジクロルフェナミド、アセタゾラミドまたはインダパミドなどの利尿薬;および/または、ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミルまたはニカルジピンなどのカルシウムチャネル遮断薬と併用投与することが可能である。本明細書においてその一般名によって同定される治療剤を含む医薬組成物は、商業的に利用可能であり、そして、用量、投与、副作用、禁忌などについての製造元の使用説明書にしたがって投与されるべきである。例えば、「Physicians’ Desk Reference(メディカル・エコノミクス・データ・プロダクション・Co:モントベール、ニュージャージー州、1997年)、第51版」を参照されたい。肥大性心筋症の治療における併用療法に好ましい候補は、P−アドレナリン遮断薬(例えば、プロプラノロール、チモロール、テルタロロール、カルテオロール、ナドロール、ベタキソロール、ペンブトロール、アセトブトロール、アテノロール、メトプロロールまたはカルベジロール)、ベラパミル、ジフェジピンまたはジルチアゼムである。高血圧に関連した肥大の治療には、例えば、ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミルまたはニカルジピンなどのカルシウムチャネル遮断薬;P−アドレナリン遮断剤;例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、メチルクロチアジド、ベンズチアジド、ジクロルフェナミド、アセタゾラミドまたはインダパミドなどの利尿薬;および/または、例えば、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ラミプリル、ベナゼプリル、フォシノプリルまたはリシノプリルなどのACE阻害剤を用いた、降圧薬療法の使用を必要とする可能性がある。
[00311] 他の適応症に対して、ESM−1またはそのアンタゴニストを、骨および/または軟骨欠損、創傷または問題の組織の治療に有益な他の剤と併用してもよい。これらの薬剤には、EGF、PDGF、TGF−またはTGF−、IGF、FGFおよびCTGFなどの種々の成長因子が含まれる。
[00312] 加えて、癌を治療するために用いたESM−1またはそのアンタゴニストを、上記に示したような細胞毒性剤、化学療法剤または増殖阻害剤と併用してもよい。また、癌治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、連続的に、あるいは、放射線照射または放射性物質投与のいずれかを伴う放射線治療と併用して、適切に投与する。
[00313] ESM−1またはそのアンタゴニストと併用して投与する治療剤の有効量は、医師または獣医師の指示によるであろう。用量の投与および調整を、治療される状態の最大限の管理に到達するように行う。例えば、高血圧の治療については、この量は、理想的には、利尿薬またはジギタリスの使用、および、高血圧または低血圧、腎機能障害などの状態を考慮する。用量は、さらに、用いられる治療剤の種類および治療される特定の患者などの要因によって決まるであろう。典型的には、使用する量は、所与の治療剤をPAポリペプチドなしに投与する場合に用いる用量と同じ用量であろう。
[00314] 乳癌の治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、限定されるわけではないが、化学療法を伴うトラスツズマブ(ハーセプチン)、パクリタキセル、ドセタキセル、エピルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、カペシタビン、ビノレルビン、チオテパ、ビンクリスチン、ビンブラスチン、カルボプラチンもしくはシスプラチン、プリカマイシン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、トレミフィンまたはプロゲスチン類と併用して投与することが可能である。
[00315] 急性リンパ性白血病の治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、限定されるわけではないが、ドキソルビシン、シタラビン、シクロホスファミド、エトポシド、テニポシド、アロプリノールまたは自家骨髄移植と併用して投与することが可能である。
[00316] 急性骨髄性および骨髄単球性白血病の治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、限定されるわけではないが、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(マイロターグ)、ミトキサントロン、イダルビシン、エトポシド、メルカプトプリン、チオグアニン、アザシチジン、アムサクリン、メトトレキセート、ドキソルビシン、トレチノイン、アロプリノール、白血球分離、プレドニゾン、または、急性前骨髄球性白血病については三酸化ヒ素と併用して投与することが可能である。
[00317] 慢性骨髄性白血病の治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、限定されるわけではないが、ブスルファン、メルカプトプリン、チオグアニン、シタラビン、プリカマイシン、メルファラン、自家骨髄移植またはアロプリノールと併用して投与することが可能である。
[00318] 慢性リンパ性白血球の治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、限定されるわけではないが、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、クラドリビン(2−クロロデオキシアデノシン;CdA)、自家骨髄移植、アンドロゲンまたはアロプリノールと併用して投与することが可能である。
[00319] 多発性骨髄腫の治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、限定されるわけではないが、エトポシド、シタラビン、アルファ・インターフェロン、デキサメタゾンまたは自家骨髄移植と併用して投与することが可能である。
[00320] 肺癌(小細胞および非小細胞)の治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、限定されるわけではないが、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、エトポシド、マイトマイシン、イホスファミド、パクリタキセル、イリノテカンまたは放射線療法と併用して投与することが可能である。
[00321] 結腸および直腸癌の治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、限定されるわけではないが、カペシタビン、メトトレキサート、マイトマイシン、カルムスチン、シスプラチン、イリノテカンまたはフロクスウリジンと併用して投与することが可能である。
[00322] 腎臓癌の治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、限定されるわけではないが、アルファ・インターフェロン、プロゲスチン類、FUDR静注またはフルオロウラシルと併用して投与することが可能である。
[00323] 前立腺癌の治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、限定されるわけではないが、ケトコナゾール、ドキソルビシン、アミノグルテチミド、プロゲスチン類、シクロホスファミド、シスプラチン、ビンブラスチン、エトポシド、スラミン、PC−SPESまたはリン酸エストラムスチンと併用して投与することが可能である。
[00324] 黒色腫の治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、限定されるわけではないが、カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、チオテパ、シスプラチン、パクリタキセル、タモキシフェンまたはビンクリスチンと併用して投与することが可能である。
[00325] 卵巣癌の治療については、ESM−1またはそのアンタゴニストを、限定されるわけではないが、ドセタキセル、ドキソルビシン、トポテカン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシドまたはリポソーム型ドキソルビシンと併用して投与することが可能である。
[00326] 本明細書において引用するすべての参考文献、特許または出願は、そのすべてを本明細書に記載されるように参照によって援用する。
[00327] 本発明を、以下の実施例に言及することによってさらに例示していくが、しかし、本発明の範囲を限定すると解釈されるものではない。
(実施例1)
マイクロアレイ解析
[00328] 蛍光標識(Cy3、Cy5)cDNAプローブを、RNA試料(インサイトゲノミクス)から生成した。インサイト・HGマイクロアレイチップを、癌性腫瘍(胸部、結腸、肺または腎臓)に苦しむ10個体4セットのそれぞれへの競合的ハイブリダイゼーションによって解析し(”Yueら、2001年”によって記載されるように)、そして、突然死した6個体から構築された正常組織プールと比較した。誤差修正および正規化後に、腫瘍組織発現/正常組織の倍増加または倍減少を算出した。
(実施例2)
シグナル配列解析
[00329] シグナル配列の予測を、SignalP 2.0解析プログラムを用いて行った。シグナルPは、異なった原核および真核生物体由来のアミノ酸配列中のシグナルペプチド切断部位の存在および位置を予測する。この方法は、切断部位の予測、および、いくつかの人工神経回路網および隠れマルコフモデルの併用に基づいたシグナルペプチド/非シグナルペプチド予測を組み入れる(Nielsonら、1997年)。
(実施例3)
配列解析
[00330] ESTの遺伝子アセンブリを、CrossmatchおよびPhrapプログラムを利用して行った(Gordonら、1998年)。配列比較および分子量予測を、GCGウィスコンシン配列解析パッケージから決定した(Womble、2000年)。ゲノム配列の解析を、Repeatmaskerプログラムを用いて、すべての公知の反復エレメントをマスキングすることによって行った(Smit、1999年)。ESM−1のヒトゲノム構造を、セレラ・ヒトゲノムアセンブリリリースR26から得た配列データを利用して決定した。このリリースは、セレラおよび公開されている(public)配列データをともに含み、そして、総ゲノムの推定98%をカバーしそしておよそ4.7Xゲノム配列深度を示す(Venterら、2001年)。タンパク質データベースのマルコフモデルは、SAM 3.2を利用して構築された(Kroghら、1994年)。
(実施例4)
ESM−1 cDNAの単離
[00331] 555塩基対の全長ヒトESM−1を、スーパースクリプトII試薬(インビトロジェン、カタログ#11904−018)を用いて製造元のプロトコールにしたがい作製したcDNAから、クローン化した。HDMECをRNA源とし、該RNAを、キアゲン・RNeasy・ミニプレップカラム(キアゲン、カタログ#74104)を用いて製造元の取扱説明書にしたがい、培養物中で増殖している細胞から単離した。用いたフォワードプライマーであるesm1f1は、ATGAAGAGCGTCTTGCTGCTG(配列番号:7)であった。二つのリバースプライマーを用いたが、一方はインフレーム・ストップコドンを含有し、そしてもう一方はストップコドンを含まないものであった。プライマーesm1r1は、TCAGCGTGGATTTAACCA(配列番号:8)であり、ストップコドンを含有するが、一方、プライマーesm1r2は、GCGTGGATTTAACCA(配列番号:9)であり、ストップコドンを含有せずそしてmyc/HISタグとインフレームで融合するように設計された。ポリメラーゼ連鎖反応を、cDNA 1.0μlを用いて、以下の条件で行った:25μM濃度のフォワードプライマー1μl、25μMのリバースプライマーesm1r1または25μMのリバースプライマーesm1r2のいずれかを1μl、Taq 0.5μl、50mM MgCl 5μl、10X PCRバッファー(インビトロジェン、カタログ#10342−053)5μl、10mM dNTPミックス(インビトロジェン、カタログ#18427−013)1μl、および50μlまでの水。サイクルパラメータは:ホットスタートに94℃3分間、続いて、94℃1分間、54℃1分間および72℃3分間を35サイクル、加えて最終伸長に72℃10分間であった。増幅を、1.5%アガロースゲル上でPCR反応物10μlを流すことによって、判断した。
[00332] ヒトESM−1を、PCR産物1μlおよびベクター1μlを用いて、製造元の取扱説明書にしたがい、pCRII−Topoベクターに連結させた(インビトロジェン、カタログ#K4600−40)。潜在的なクローンを、挿入の存在を判断するために制限酵素EcoRIで消化し、そして候補を配列決定した。
(実施例5)
発現コンストラクトの作製generation
[00333] ヒトESM−1を、ストップコドンを持つものと持たないものの両方について、ともにpcDNA3.1(インビトロジェン、カタログ#V800−20)内に移入した。pCRII−Topo内にクローン化されたESM−1コンストラクトを、EcoRIで消化し、そして、キアゲン・ゲル抽出カラム(キアゲン、カタログ#28704)を製造元の取扱説明書にしたがって用い、挿入断片をゲル精製した。ベクターpcDNA3.1もまた、EcoRIで消化し、そしてウシ腸アルカリホスファターゼ(CIAP)(プロメガ、カタログ#M182A)で脱リン酸化した。ベクターおよび挿入断片を、20℃にて連結し、そしてコンピテントDH5α細胞(インビトロジェン、カタログ#44−0098)に形質転換させた。細菌を、アンピシリン(シグマ、カタログ#A9393)添加LBプレート上で37℃にて一晩増殖させた。次いで、クローンを拾い、そしてアンピシリン添加LB中で、37℃にて一晩増殖させた。クローンから得たDNAを、キアゲン・DNAミニプレップキット(キアゲン、カタログ#27106)を用いて単離し、そして挿入断片の存在を判断するために制限酵素EcoRIで消化した。
(実施例6)
NIH3T3細胞の遺伝子導入および選択
[00334] NIH3T3細胞を、CalPhos遺伝子導入キット(クロンテック・ラボラトリーズ・インク、カタログ#K2051)を製造元の取扱説明書にしたがって用い、そして、myc/HISタグを伴った発現ベクターpcDNA3.1内にクローン化されたESM−1かまたは発現ベクターのみのいずれか4μgを利用して、遺伝子導入した。細胞を、10%熱不活化FBS(ギブコBRL、カタログ#26140−079)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ギブコBRL、カタログ#15140−122)を添加したDMEM(ギブコBRL、カタログ#11995−040)中に、37℃および5%COにて維持した。細胞を、800μg/ml G418(ギブコBRL、カタログ#11811−031)を添加した同じ培地中で、およそ2週間かけて選択した。次いで、クローン細胞をプールし、そして遺伝子導入された細胞は安定であると考えられた。
(実施例7)
In vivo腫瘍形成アッセイ
[00335] 細胞を、0.05%トリプシン/EDTAを用いて回収し、PBS中で洗浄し、そしてPBS中60%冷マトリゲル中に1X10細胞/mlとなるよう再懸濁する。次いで、細胞を、1注入につき1X10細胞の濃度で、CD−1 nu/nu雌マウスの側腹部に27ゲージ針で皮下注入する。皮下腫瘍の直径を、ノギスを用いて週3回測定した。
(実施例8)
リアルタイム定量性逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
[00336] 遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマー対、および、5’末端をレポーター蛍光色素で、そして3’末端をクエンチャー蛍光色素で標識したオリゴヌクレオチドプローブを、プライマー・エクスプレス・ソフトウエアを用いて設計し、そしてパーキン−エルマー・アプライド・バイオシステムズ(フォスター、カリフォルニア州)から購入した。プライマーおよびプローブの配列は:ATCTGCAAAGACTGTCCCTATGG 配列番号:10(マウス・フォワードプライマー)、TGCCCGACTGGCAATTG 配列番号:11(マウス・リバースプライマー)、AAGTCTCTTTGCATTCCATCCCGAAGGT 配列番号:12(マウス・プローブ)、GTGGACTGCCCTCAACACTGT 配列番号:13(ヒト・フォワードプライマー)、TCGAGCACTGTCCTCTTGCA 配列番号:14(ヒト・リバースプライマー)、および、CAGTGAGTGCAAAAGCAGCCCGC 配列番号:15(ヒト・プローブ)である。RNA試料を、バイオチェイン・インスティチュート(サンレアンドロ、カリフォルニア州)から購入したか、あるいは、トータルRNAアイソレーションキット(アンビオン、オースチン、テキサス州)またはRNeasyミニキット(キアゲン)を用いて単離した。次いで、RNAを、増幅させるか(アンビオン)、またはcDNAに転写した(アプライド・バイオシステムズ)。次いで、反応混合物25μl中のRNA(200ng)またはcDNA(10ng)を、製造元のプロトコール(アプライド・バイオシステムズ)にしたがって逆転写PCRにかけた。RNA 200ngの温度サイクル条件は、48℃30分間1サイクル、95℃10分間1サイクルに続いて、95℃15秒間および60℃1分間のアニーリング40サイクルを含む。cDNA 10ngの温度サイクル条件は、95℃10分間1サイクルに続いて、95℃15秒間および60℃1分間のアニーリング40サイクルを含む。すべての反応を、ABIプリズム7700シーケンス検出システム(パーキン−エルマー・アプライド・バイオシステムズ)にて行った。反応に対する蛍光シグナルを集めそしてサイクル閾値(C)として特徴付けた。
(実施例9)
Tie2/GFP内皮細胞の組織調製物蛍光活性化細胞分離
[00337] 器官または腫瘍をマウスから取り出し、そして直ちに氷上のCa/Mgを含まないPBS中に懸濁した。器官には、肺、心臓、腎臓および肝臓が含まれ;用いた他の組織は、筋肉、腫瘍、胎盤および胚であった。組織をPBSから取り出し、スライドガラス上に置き、二つのメスを用いておよそ1ミリメートル片に細かく刻み、そしてコラゲナーゼ(2型、ウォーシントン・バイオケミカル・コーポレーション)(25mg/10ml)中に再懸濁した。組織懸濁液を4ml/ウェルの6ウェルプレート中のウェルに入れ、1%DNA分解酵素(IV型、シグマ)25μlを各ウェルに加え、そしてプレートを37℃にてインキュベートした。プレートを、低速度にセットした振盪機上に置き、組織懸濁液を混合し続けた。30分間のインキュベーション後に、懸濁液を5mlピペットで約5回粉砕した。組織が均一に細胞懸濁液へと分離するまで、粉砕を10〜15分毎に繰り返した。総インキュベーション時間は、組織に依存して1〜1.5時間であった。細胞懸濁液を、70ミクロンメッシュを介してろ過し、PBSで2〜3倍に希釈し、そして300gで7分間遠心分離した。胚、心臓または腎臓由来の調製物では赤血球を溶解したが、筋肉、腫瘍、胎盤または胚由来の調製物では溶解しなかった。溶解については、細胞を、溶解バッファー(ステム・セル・テクノロジーズ)1ml中に再懸濁し、50mlチューブ中のウシ胎仔血清5mlの上面に直ちに層状に重ね、そして前述のように遠心分離した。細胞を、1%BSA(シグマ)および0.5mM EDTA(ライフ・テクノロジーズ)を添加したPBS中に、約7x10細胞/mlの濃度で再懸濁した。細胞を、分離直前に、40ミクロンフィルターに通した。gfpを発現している細胞を、バンテージSE(ベクトン・ディッキンソン)蛍光活性化細胞分離器上で、非発現細胞から分離した。ゲートを、非gfp形質転換マウス組織から作成した細胞調製物を用いてセットした。緑蛍光(Fl−1検出器によって測定)を有するTie−2−gfpマウス由来の細胞を一方の方向に分離し、同じ調製物中の非蛍光細胞をもう一方の方向に分離した。分離されなかった細胞の試料もまた回収し、各検討組織由来の、三つの異なった比較用集団(非分離、gfp+およびgfp−)を得た。選別された細胞をペレット状にし、<5x10細胞/350μlの割合でRLTバッファー(キアゲン)中に再懸濁し、そしてRNA調製に先立って−80℃にて冷凍した。
(実施例10)
In situハイブリダイゼーション
[00338] 三つのESM−1由来オリゴヌクレオチド配列(CCATCCATGCCTGAGACTGTGCGGTAGCAAGTTTCTCCCC、配列番号:16;GCCATCTCCAGATGCCATGTCATGCTCCGTGAGAGAAACA、配列番号:17;および、CACCAAAAGGATCCTCCCCATTAGAAGGCTGACACCTCAG 配列番号:18)を、P33で標識しそしてmRNA in situハイブリダイゼーション用プローブとして用いた。ハイブリダイズしたプローブをPhosphorImager(サイクロン、パッカード)を用いて検出し、そして、シグナル発光をOptiQuantソフトウエア(パッカード)を用いて測定した。次いで、詳細な解析を、イメージング・リサーチのArrayVisionソフトウエアを用いて行った。第VIII因子の免疫組織化学を、DAKOクローンF8/86抗体(コードM0616)を用いて行った。スライドを、アセトン中で簡易に後固定し、そして水に薄めた過酸化水素中でインキュベートすることによってブロックした。第一抗体を1:50に希釈し、スライド上で4℃にて一晩インキュベートし、そして標準的なABC技術(ベクター・エリート、ベクター)を用いて可視化した。
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ヒトESM−1ヌクレオチドおよびアミノ酸配列。A.ヒトESM−1 cDNAのコード領域のヌクレオチド配列である配列番号:1、および、推定されるタンパク質配列である配列番号:2。B.ヒトESM−1タンパク質のアミノ酸26〜90である配列番号:3と、共通したインスリン成長因子結合ドメインである配列番号:4との配列比較。ヒトESM−1タンパク質と当該ドメインとの間で同一のアミノ酸を黒い囲みで示し、一方、同義のアミノ酸を灰色で示す。最大限の相同性を得るために配列中に挿入されたギャップを、ダッシュとして示す。 ヒトESM−1タンパク質の機能ドメイン。ヒトESM−1タンパク質を、白で示したシグナル配列および灰色で示したインスリン成長因子結合ドメインの相対的な位置を伴った、線状のバー(上)として表す。アミノ酸番号を、バーの下に表示する。SignalP解析におけるヒトESM−1の最初の70アミノ酸の結果もまた示す(下)。 ESM−1オルソログの比較。ヒト(配列番号:2)、マウス(配列番号:6)およびラット(配列番号5)ESM−1タンパク質の複数配列比較を示す。2またはそれより多くのタンパク質における同一残基を黒い囲みで示し、そして保存的なアミノ酸変化を灰色で示す。最良の複数配列比較を得るために配列中に導入されたギャップを、ダッシュとして示す。 ESM−1遺伝子のヒトのゲノム位置およびゲノム構造。染色体5p13はESM−1遺伝子を含有し、該遺伝子は、三つのエキソンによってコードされ、約8キロベースにおよび、テロメアからセントロメアへの方向に転写される。 マイクロアレイ解析によって測定した、種々の患者由来の腫瘍におけるESM−1発現レベルの変化。発現における倍変化を、乳癌、結腸癌、腎臓癌または肺癌を有する患者由来腫瘍と、同じ器官由来の正常組織とを比較することによって、測定した。>2倍の変化は、続いて行うより定量的な測定によって、>2倍の変化であると確認される可能性が高い(>95%)ことから、有意であると考えられる。 結腸腫瘍におけるヒトESM−1の相対発現。定量性リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を、腫瘍および無関係の組織について行う。ESM−1の発現を測定し、そしてハウスキーピング遺伝子GUSの発現に対して正規化する。次いで、正常な結腸組織#1におけるESM−1発現レベルを、1の相対的発現値を有すると指定する。 培養ヒト結腸癌細胞におけるESM−1の発現。定量性リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を、培養ヒト結腸癌細胞について行う。ESM−1の発現をすべての試料で測定し、そしてハウスキーピング遺伝子サイクロフィリンの発現に対して正規化する。最も低く発現している細胞株であるDLD−1におけるESM−1のレベル値を、1の相対的発現を有すると指定する。 ネズミin vivo腫瘍モデル由来の、腫瘍の豊富な内皮細胞および腫瘍を含まない内皮細胞における、ESM−1の発現。定量性リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を、腫瘍内皮細胞および内皮細胞を含まない表皮腫瘍細胞から得たRNAについて行った。ESM−1の発現をすべての試料において測定し、そしてハウスキーピング遺伝子GUSの発現に対して正規化する。ルイス肺内皮を含まない集団におけるESM−1発現レベル値を1と指定し、次いでルイス肺内皮細胞におけるESM−1発現レベル値を、内皮細胞を含まない集団の値と比較する。同様に、B16黒色腫内皮を含まない集団におけるESM−1発現レベル値を、B16黒色腫内皮細胞集団におけるESM−1レベルと比較するために、1と指定する。 NIH3T3細胞でのESM−1発現およびnu/nu雌マウスにおける形質転換。ベクターまたはCMVプロモーター制御下にあるESM−1遺伝子を導入したNIH3T3細胞を、定量性リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応により、ESM−1 RNAレベルについてアッセイした。ESM−1の発現を、ハウスキーピング遺伝子サイクロフィリンの発現に対して正規化した。ベクター導入細胞におけるESM−1発現レベル値を1と指定し、次いでESM−1導入細胞におけるESM−1発現レベル値をそれと比較した。相対発現レベルを、バーの上に記す。腫瘍体積を、各動物において3週間にわたって測定した。 ESM−1に関するin situハイブリダイゼーション(ISH)の多様な腫瘍試料についての結果。33P標識オリゴプローブカクテルは、ESM−1が腎細胞癌の28.1%、乳癌の9.6%、および肺癌の7.7%に発現していることを示す。 ESM−1発現と血管密度との相関。317の腫瘍試料について第VIII因子抗体を用いて免疫組織化学的染色を行い(結腸、前立腺、肺、胸部、腎臓および卵巣)、そしてISHによって測定されたESM−1発現と比較した。ESM−1陽性腫瘍は、ESM−1陰性腫瘍よりも有意に高い平均血管数を示した。
【配列表】
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Claims (41)

  1. 以下:
    (a)配列番号:2の配列を含むアミノ酸配列;
    (b)配列番号:2の配列を含むアミノ酸配列のバリアントであって、前記バリアントが前記アミノ酸配列とアミノ酸残基の約30%以下で異なるという条件で、前記バリアントにおける1またはそれより多くのアミノ酸残基が、前記成熟型アミノ酸配列と異なるバリアント;
    (c)配列番号:19のアミノ酸配列の分泌成熟型;
    (d)配列番号:19のアミノ酸配列の成熟型のバリアントであって、前記バリアントが前記成熟型のアミノ酸配列とアミノ酸残基の約30%以下で異なるという条件で、前記バリアントにおける1またはそれより多くのアミノ酸残基が、前記成熟型アミノ酸配列と異なるバリアント;および、
    (e)配列番号:2または配列番号:19のアミノ酸配列の断片;
    からなる群より選択したアミノ酸配列を含む、単離ESM−1ポリペプチド。
  2. 前記ポリペプチドが、配列番号:2および配列番号:3からなる群より選択されたアミノ酸配列の自然発生アリルのバリアントのアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のESM−1ポリペプチド。
  3. 前記バリアントのアミノ酸配列が保存性アミノ酸置換を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
  4. 配列番号:2または配列番号:3からなる群より選択されたアミノ酸配列を含む、単離ESM−1ポリペプチド。
  5. 請求項1のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、単離核酸分子。
  6. 核酸配列が以下:
    (a)ストリンジェントな条件下で配列番号:1のDNA配列とハイブリダイズ可能な核酸配列、または、遺伝子コードの縮重がなければ前記条件下でハイブリダイズ可能であろう核酸配列;
    (b)配列番号:1のDNA配列と少なくとも80%相同性を有する、核酸配列;および、
    (c)配列番号:1の相補体;
    からなる群より選択された配列を含む、請求項1に記載の単離核酸分子。
  7. 核酸分子が配列番号:1である、請求項6に記載の核酸分子。
  8. 前記核酸分子が、ストリンジェントな条件下で配列番号:1のヌクレオチド配列または前記ヌクレオチド配列の相補体とハイブリダイズする請求項6に記載の核酸分子。
  9. 請求項5、6、7または8の核酸分子を含むベクター。
  10. 前記核酸分子と機能可能に連結したプロモーターをさらに含む、請求項9に記載のベクター。
  11. 請求項10のベクターを含む宿主細胞。
  12. ESM−1ポリペプチドを産生する方法であって:前記ESM−1ポリペプチドの発現を生じる条件下で、請求項11の宿主細胞を適切な栄養条件下にて増殖させることを含む、前記方法。
  13. 請求項1の核酸配列を含むマイクロアレイ。
  14. 前記核酸配列が配列番号:1の核酸配列を含む、請求項13に記載のマイクロアレイ。
  15. 免疫特異的に請求項1のESM−1ポリペプチドと結合する抗体。
  16. 前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項15に記載の抗体。
  17. 前記抗体が抗体断片である、請求項16に記載の抗体。
  18. 前記抗体断片が、Fv断片、Fab断片、(Fab)断片および一本鎖抗体からなる群より選択される、請求項17に記載の抗体。
  19. 前記抗体がアンタゴニストである、請求項15、16、17または18に記載の抗体。
  20. 抗体がヒト化抗体である、請求項19に記載の抗体。
  21. 抗体が完全ヒト抗体である、請求項19に記載の抗体。
  22. 請求項1のESM−1ポリペプチドと結合する薬剤を同定する方法であって、以下:
    (a)前記ポリペプチドを前記薬剤と接触させること;および、
    (b)前記薬剤が前記ポリペプチドと結合するかどうかを判断すること;
    を含む、前記方法。
  23. 請求項1のESM−1ポリペプチドの発現または活性を調節する薬剤を同定する方法であって、以下:
    (a)実行可能な方法にて、前記ポリペプチドを発現している細胞を提供すること;
    (b)細胞を前記薬剤と接触させること;および、
    (c)前記ペプチドの発現または活性の変化が、前記薬剤が前記ポリペプチドの発現または活性を調節することを示すことによって、薬剤が前記ポリペプチドの発現または活性を調節するかどうかを判断すること;
    を含む、前記方法。
  24. 請求項1のESM−1ポリペプチドの活性を調節する方法であって:、請求項1のESM−1ポリペプチドを発現している細胞試料を、前記ポリペプチドと結合する化合物と、ポリペプチド活性を調節するのに十分な量で接触させることを含む、前記方法。
  25. 血管形成関連障害を治療または予防する方法であって、このような治療または予防が望ましい個体に、請求項1のESM−1ポリペプチドを、前記個体において前記血管形成関連障害を治療または予防するのに十分な量で投与することを含む、前記方法。
  26. 血管形成関連障害を治療または予防する方法であって、このような治療または予防が望ましい個体に、請求項19の抗体を、前記個体において前記血管形成関連障害を治療または予防するのに十分な量で投与することを含む、前記方法。
  27. 請求項1のESM−1ポリペプチドおよび薬学的に許容可能なキャリアを含む、医薬組成物。
  28. 請求項19の抗体および薬学的に許容可能なキャリアを含む、医薬組成物。
  29. 請求項28の医薬組成物を含むキット。
  30. 哺乳動物細胞の癌状態と相互に関連した、差次的に発現する遺伝子を検出する方法であって、遺伝子産物が配列番号:1の核酸配列によってコードされる、少なくとも一つの差次的に発現する遺伝子産物を、癌であることが疑われる細胞に由来する試験試料中に検出する工程を含み、ここで、差次的に発現する産物の検出が、試験試料が由来する細胞の癌状態と関連する、前記方法。
  31. 請求項6の核酸分子の存在を試料中に検出するための方法であって、以下:
    a)試料を、選択的に核酸分子とハイブリダイズする核酸プローブまたはプライマーと接触させること;および、
    b)核酸プローブまたはプライマーが試料中の核酸分子と結合するかどうかを判断し、それによって請求項Iの核酸分子の存在を試料中に検出すること;
    を含む、前記方法。
  32. 患者における血管形成障害の進行をモニターする方法であって、以下:
    a)最初の時点で、マーカーが請求項1のESM−1ポリペプチドである、マーカーの発現を患者試料中に検出すること;
    b)a)の工程を、それに続く時点で繰り返すこと;および、
    c)a)およびb)の工程で検出された発現レベルを比較し、そしてそれから血管形成障害の進行をモニターすること;
    を含む、前記方法。
  33. 血管形成を阻害することに対する試験化合物の有効性を評価する方法であって、以下:
    a)試験化合物に曝露した患者から得た第一試料におけるマーカーの発現、ここでマーカーは請求項1のESM−1ポリペプチドである;および
    b)試料を試験化合物に曝露していない、患者から得た第二試料におけるマーカーの発現;
    を比較することを含み、ここで、第二試料と比較して第一試料におけるマーカーの発現が有意に低レベルであることが、該試験化合物が患者における癌を阻害するのに有効であることを示す、前記方法。
  34. 患者において血管形成を阻害する療法の有効性を評価する方法であって、以下:
    a)少なくとも療法の一部を患者に提供する前に患者から得た第一試料におけるマーカーの発現、ここで、マーカーは請求項1のESM−1ポリペプチドである;および
    b)療法の一部を提供した後に患者から得た第二試料におけるマーカーの発現;
    を比較することを含み、ここで、第一試料と比較して第二試料におけるマーカーの発現が有意に低レベルであることが、該療法が患者における癌を阻害するのに有効であることを示す、前記方法。
  35. 患者における血管形成を阻害するための組成物を選択する方法であって、以下:
    (a)患者由来の癌細胞を含む試料を得ること;
    (b)複数の試験組成物の存在下で試料のアリコットを別々に曝露すること;
    (c)各アリコットにおけるマーカーの発現を比較すること、ここで、マーカーは配列番号:2および配列番号:3のマーカーからなる群より選択される;および、
    (d)試験組成物を含有するアリコットにおけるマーカーの発現レベルが、他の試験組成物と比較して変わる、試験組成物の一つを選択すること;
    を含む、前記方法。
  36. ESM−1ポリペプチドアンタゴニスト。
  37. 前記アンタゴニストがアンチセンス分子である、請求項36に記載のアンタゴニスト。
  38. 請求項1のESM−1ポリペプチドを含むキメラ分子。
  39. 制御エレメントと機能可能に連結されたESM−1をコードする核酸配列がそのゲノム中に組込まれているトランスジェニック非ヒト哺乳動物であって、コード配列が請求項6の核酸である、前記コード配列の発現が、同じ種の非トランスジェニック哺乳動物と比較してESM−1レベルを増加させる、前記トランスジェニック動物。
  40. マウスである、請求項39に記載の哺乳動物。
  41. 内因性ESM−1遺伝子中にホモ接合性の破壊を含む、トランスジェニックノックアウト非ヒト哺乳動物であって、前記破壊が機能的ESM−1タンパク質の発現を妨げる、トランスジェニックノックアウト非ヒト哺乳動物。
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