JP2006505799A - Nmrを使用する配列決定のための新規方法 - Google Patents

Nmrを使用する配列決定のための新規方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、ポリサッカリドを分析するための方法に関する。特に、ポリサッカリドについての組成情報および配列情報が導かれる。いくつかの方法は、別の実験法(例えば、分析のためのキャピラリー電気泳動技術)とともにNMRを使用する。本発明は、オリゴ糖の組成を決定する方法を提供し、この方法は、NMR分光法を用いて該オリゴ糖の第1の特性の測定値を得る工程、および第2の実験法により該オリゴ糖の第2の特性の測定値を得る工程を包含し、ここで該第1の特性および該第2の特性は、該組成を決定する。

Description

(発明の分野)
本発明は、多糖の組成情報および配列情報を分析するための方法に関する。
(発明の背景)
ヘパリンおよび硫酸ヘパラングリコサミノグリカンは、種々の生理状態および病理学的状態に関する酸性多糖複合体である。生物学の種々の領域における進歩は、血栓症(Petitouら、1999)、新脈管形成(Sasisekharanら、1997)、ウイルス侵襲(Chenら、1997;Fryら、1999;Shuklaら、1999)および腫瘍増殖(Hulettら、1999;Vlodavskyら、1999;Liuら、2002)を含めた重要な生物学的プロセスにおけるHSGAGの強力な役割を解明した(CasuおよびLindahl、2001;Lindahl、2000;SasisekharanおよびVenkataraman、2000;Shriverら、2002)。HSGAGポリマーの繰り返し単位は、ウロン酸(U)を含む二糖であり、ウロン酸は、α−D−グルコサミン残基(A)に1→4に結合した二つの異なるエピ異性体形態−α−L−イズロン(I)またはβ−D−グルクロン(G)中に存在し得る。ウロン酸の2−O位置、グルコサミンの3−Oおよび6−O位置における硫酸化およびグルコサミンのN位置の硫酸化またはアセチル化の形態中の二糖単位内に変異がある(CasuおよびLindahl、2001)。
おそらく、HSGAGにおける最も研究されている構造−活性関係は、抗トロンビン−IIIに特異的に結合し、活性化し、それによって血液凝固カスケードにおいて阻害的な役割を果たすヘパリン中の五糖の配列である(BourinおよびLindahl、1993)。ヘパリンおよびその誘導体である低分子量ヘパリン(LMWH)は、手術後の深部静脈血栓の防止(Breddin、2000)および冠状動脈侵襲手順後の心筋梗塞の防止(Cohen、1999)に対して最も広く使用されている臨床的薬剤である。ヘパリンの抗血液凝固特性に基づいて、ヘパリンの新規の治療的用途が、予見されている(Rosenberg、2001)。五糖の合成版は、抗血栓剤として使用されてきた(Turpieら、2001)。
HSGAGの構造−活性関係を理解するために、ゲル電気泳動(Turnbullら、1999)、HPLC(Vivesら、1999)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALDI−MS)(Venkataramanら、1999)およびナノエレクトロスプレー質量分析法(Popeら、2001)を含むオリゴ糖配列決定のためのいくつかの分析手段が開発されてきた。これらの分析手段は、一組の解重合酵素および他の化学的方法を使用して、そして、より小さいフラグメントの特定の特性に基づいたオリゴ糖の配列を決定して、HSGAGオリゴ糖を小さいフラグメントに分割するために適用されてきた(Kreugerら、2001)。
(発明の要旨)
本発明は、一部は、オリゴ糖(例えば、HSGAG)を分析するための分析手段に関する。オリゴ糖の配列および/または組成の決定は、重要な生物学的プロセスにおけるオリゴ糖の構造−機能関係を解明するのに役立つ。
いくつかの局面では、オリゴ糖の組成を決定する方法が提供される。その方法は、NMR分光法を使用したオリゴ糖の第一の特性の測定値の獲得に関し、そして、第二の実験法によるオリゴ糖の第二の特性の測定値の獲得に関し、ここで、第一の特性および第二の特性は、組成を決定する。一つの実施形態において、オリゴ糖の第二の特性は、キャピラリー電気泳動により測定される。
オリゴ糖を分析する方法は、他の局面に従って提供される。その方法は、オリゴ糖を分析するための、第一の実験法によるオリゴ糖の第一型の二糖結合の測定値の獲得および第二の実験法によるオリゴ糖の第二型の二糖結合の測定値の獲得に関する。一つの実施形態において、第一型の二糖結合は、NMR分光法により測定される。別の実施形態において、第二型の二糖結合は、キャピラリー電気泳動により測定される。
別の局面に従うと、オリゴ糖を分析する方法は、オリゴ糖を分析するための、NMR分光法によるオリゴ糖の第一の特性を同定すること、およびキャピラリー電気泳動によってオリゴ糖の第二の特性を同定することによって提供される。
いくつかの実施形態におけるその方法は、NMR分光法および第二の実験法の測定値と一致したオリゴ糖の可能な配列の決定に関する。
他の実施形態において、その方法は、NMR分光法の測定値に基づいた可能な配列のリストの構築および第二の実験法の測定値と一致しない可能な配列のリストからの配列の除去に関する。
第二の実験法は、オリゴ糖またはそのフラグメントの還元末端および非還元末端を区別するために使用され得る。一つの実施形態において、第二の実験法は、化学的分解を含む。別の実施形態において、第二の実験法は、末端標識化を含む。
第二の実験法はまた、オリゴ糖またはそのフラグメントの末端の還元の形跡を決定するために使用され得る。一つの実施形態において、還元末端の形跡は、キャピラリー電気泳動を用いて決定される。第二の実験法は、第二型の二糖結合の硫酸化パターンの決定を可能にし得る。
いくつかの実施形態において、NMR分光法は、オリゴ糖またはそのフラグメントの硫酸化パターンの定量を含む。別の実施形態において、NMRは、還元末端および非還元末端両方を特定し、定量化するために実施される。
この方法は、第3の実験法から得られる測定値と一致しない配列をさらに除去するために、第3の実験法によるオリゴ糖の追加特性の特性の尺度を獲得する工程を必要に応じて包含し得る。
いくつかの実施形態において、NMR分光法は、1Dプロトンまたは2D COSY/TOCSYである。他の実施形態において、NMR分光法は、HSQC、DQF−COSY、NOESYまたはROESYである。NMR分光法はまた、上記の任意の組み合わせであり得る。
NMR分光法は、そのインタクトな形態のオリゴ糖上で実施され得る。あるいは、断片化された形態のオリゴ糖上で実施され得る。この断片化された形態は、酵素消化によって産生され得る。代替手段で、酵素分解は、完全であるかまたは部分的であり得る。
第2の実験法はまた、オリゴ糖を断片化された形態(例えば、必要に応じて、酵素消化によって産生される)に消化する工程を包含し得る。一つの実施形態において、酵素消化は完全である。
別の局面において、オリゴ糖の可能な配列リストを作成する方法を提供する。この方法は、NMR分光法および第2の実験法を実施することによって、オリゴ糖の特性セットを定義する工程(ここで、NMR分光法は、第1のタイプの二糖類結合の測定値を提供し、そして第2の実験法は、第2のタイプの二糖類結合の測定値を提供する)、およびオリゴ糖の特性セットに基づく可能な配列リストを構築する工程を包含する。一つの実施形態において、NMR分光法は、オリゴ糖の単糖類組成の測定を含む。
この方法は、非文字値として、特性を表すデータ構造を含み得る。一つの実施形態において、このデータ構造は、各々のタイプの単糖についての値を含む。別の実施形態において、このデータ構造は、各々のタイプの二糖類結合についての値をコード化する。別の実施形態において、この値は二進法である。
この方法から生成されたオリゴ糖の可能な配列リストもまた、提供する。
上記の局面および実施形態において、「第1」および「第2」の実験法の表示は、この実験が実施されなければならない順位を示すことを意図しない。いくつかの実施形態において、NMR分光法は他の実験法の前に実施され得るが、他の実施形態において、NMR分光法は別の方法の後に実施され得る。さらに他の実施形態において、2つ以上の実験法が同時に実施され得る。
本発明の各々の実施形態は、本明細書でなされた種々の詳述を含み得る。従って、任意の一つのエレメントまたはエレメントの組み合わせを含む本発明の各々の詳述は、本発明の各々の局面において、必要に応じて含まれ得ることが理解される。
(詳細な説明)
ヘパリンおよびヘパラン硫酸グリコサミノグリカン(HSGAG)は、多数のシグナル伝達分子、酵素、病原体に結合し、かつ細胞増殖および発生から抗凝血およびウイルス侵入までにわたる重要な生物学的プロセスを調節する、細胞表面多糖類である。ヘパリンは、数十年間、種々の臨床応用において抗凝血剤として広く使用されている。HSGAGの異質性および複雑性は、それらの精製および構造機能関係の特徴付けに対する重要な課題を呈示する。
ゲル電気泳動、クロマトグラフィーおよび質量分析法を含むいくつかの分析技術は、少量のHSGAGオリゴ糖類の配列を決定するために首尾よく適用された。ほとんどのこれらの技術の成功のための前提条件は、酵素的および化学的分解方法の組み合わせを使用する、HSGAGオリゴ糖類のより小さな断片への予測可能でかつ制御された脱重合である。重要なことに、これらの配列決定戦略のいくつかのために、複数のエキソ型酵素の使用は、二糖類ユニットの異なる修飾を正確に決定するために必要とされる。
オリゴ糖類を特徴づける試験的方法を利用する方法論が、開発された。本発明は、いくつかの局面において、HSGAGのようなオリゴ糖類を分析するための方法に関連する。これらの方法は、ある実施形態の中で、オリゴ糖類の分析を通してサンプル中のオリゴ糖類の存在または同一性を決定することを包含する。他の実施形態では、サンプル中のオリゴ糖類の純度を評価するための方法が、提供される。用語「分析する」は、本明細書で使用されるように、オリゴ糖類の一つ以上の特性の識別を指す。いくつかの実施例では、その分析は、広範囲であり得、かつオリゴ糖類の組成に関するかなりの情報を提供し得る。用語、分析するは、オリゴ糖類の配列を決定するかまたはオリゴ糖類の組成を決定することを包含し得る。用語「組成を決定する」は、オリゴ糖類の、そのオリゴ糖類が他のオリゴ糖類から区別され得るために十分な特性の識別を指す。この特性に関する情報が、本発明者らにより生成された数的なPENフレームワークを使用して編成される場合、基礎的要素の順序と連結情報を含めて、オリゴ糖類の配列は、編成され得る。
オリゴ糖類の分析は、単量体の特性と連結情報との識別を含み得る。オリゴ糖類の単糖類と二糖類との間の連結の型を識別することの重要性は、例としてHSGAGを使用して例示され得る。HSGAGポリマーの繰り返しユニットは、ウロン酸(U)(それは2つの異なるエピマー型、β−D−グルクロン酸(G)のα−L−イズロン酸(I)で存在し得、1→4でα−グルコサミン残基(A)に連結される)を含む二糖類である。この二糖類ユニットの中の変化が、グルコサミンのN位の硫酸化またはアセチル化の形式で存在する。特徴的なプロトンおよび13C化学シフトは、共通に生じる単糖類およびヘパリンについて識別され、そして、これらの単糖類の相対存在量は、プロトンシグナルの積分により定量的に決定され得る。単糖類の特徴付けに加えて、グルコサミンのアノマープロトンシグナルは、近隣のウロン酸に関する連結情報(A−U連結)を、規定されたエピマー状態および硫酸化状態と同一視するためにさらに解析され得る。
オリゴ糖類の組成は、オリゴ糖類の特性を測定するための2つ以上の実験技術を使用する、本明細書に記載の方法により決定され得る。この実験技術のうちの一つは、核磁気共鳴(NMR)である。NMRの利用により、HSGAGオリゴ糖類の配列を決定するために必要な試験的束縛の数は減少され得る。NMRは、少なくとも一つの他の型の実験技術とともに利用され得る。NMRおよびキャピラリー電気泳動(CE)データセットと、PENフレームワークの支援との統合により、適切な感度のためのさらにより多くのサンプルおよびより精巧な機器が必要となり得るNOESY/ROESY実験についての必要性を縮小し得ることは、本明細書に呈示された。
それゆえ、オリゴ糖類の配列を決定するためのオリゴ糖類を分析する方法が、提供される。数的なPENフレームワークを使用して、成分分析に由来する情報、例えば、2つの別個の連結データセットは、迅速で、系統的でかつ不偏性の様式で配列を構築するように編成され得る。PENフレームワークの数的な性質は、単純な数学的演算を使用して単糖類、二糖類U−AおよびA−U連結情報の間で移動することを促進し、それゆえHSGAG配列に迅速に到達する系統的かつ不偏性の方法を促進する。
以下で考察される実施例は、本明細書中で記載される方法論および計算機アプローチの使用を実証する。実施例1および2は、I2SおよびGの両方を含む五糖類を記載する。これらの実施例は、本明細書中で記載される分析方法の適用のための還元末端(メチル化)の痕跡を測定するための有用性を実証する。一旦A−U結合およびU−A結合の全てが測定されると、還元末端および非還元末端の知識は、前後に移動させることによる配列決定を可能にする。十糖類H10は、分析手段の組み合わせを使用して特徴付けられ、かつ立証される最も複雑な十糖類の1つである。
実施例3は、過去におけるH10の特徴付けのために使用されてきた他の分析手段と比較して、本明細書中で記載される方法の効力を強調する。この十糖類についての以前の配列決定アプローチは、数多くの工程を必要とした。本明細書中に記載される方法を使用して、本発明者らは、実験データの最小限のセットを使用して定量的に決定されたA−U結合情報およびU−A結合情報の2つの異なるセットを得ることにより付勢のない様式でH10の配列に到達した。この実施例は、NMRデータから得られる結合および単糖類組成物を満たす配列の全ての可能性のある組み合わせの列挙を構築し、そしてCEデータを満足しない配列を削除する、計算機方法の融通性を例示する。
従って、可能性のある配列の列挙は、同定される特性(例えば、電荷、オリゴ糖類単位の性質および数、単位の化学的置換基の性質および数、二糖類結合、還元末端および非還元末端、ならびにオリゴ糖類の立体特異性(これらは、実験的方法の測定から決定されるオリゴ糖類の基本構成ブロック(building block)についての情報を明らかにする)のような)に基いて構成され得る。
オリゴ糖類の構造的特性は、オリゴ糖類の機能についての有用な情報を提供し得る。例えば、オリゴ糖類の特性は、オリゴ糖類の単位の全体的な配列を解明し得、これは、オリゴ糖類の同定のために有用である。同様に、オリゴ糖類の配列が以前に未知であった場合、オリゴ糖類の構造的特性は、オリゴ糖類を、既知の機能を有する既知のオリゴ糖類に対して比較するために有用である。オリゴ糖類の特性はまた、オリゴ糖類が正味の電荷を有し、または荷電された領域を有することを解明し得る。この情報は、オリゴ糖類が相互作用し得る化合物を同定するのに、またはオリゴ糖類のどの領域が結合相互作用に関与し得、または特異的な機能を有し得るのかを予測するために有用である。
本発明は、オリゴ糖類の特性を同定するために有用である。本明細書中で使用される「特性」は、オリゴ糖類についての情報(例えば、構造的情報)を提供するオリゴ糖類の特徴(例えば、構造的特徴)である。オリゴ糖類のいくつかの特性の収集は、化学的単位またはオリゴ糖類全体さえ同定するのに十分な情報を提供し得、しかし、オリゴ糖類の特性自体は、化学的単位またはオリゴ糖類の化学的基礎を包含しない。オリゴ糖類の複雑性に起因して、特性は、オリゴ糖類の単量体の構成ブロックの型を同定し得る。オリゴ糖類の単位は、その基本的な化学的構造に加えて、より多くの変数を有する。例えば、オリゴ糖類は、基本構成ブロック上のいくつかの部位にてアセチル化または硫酸化され得、あるいはこれは電荷を有していても有していなくても良い。従って、オリゴ糖類の1つの特性は、オリゴ糖類の1つ以上の基本構成ブロックの固有性であり得る。
しかし、基本構成ブロックのみは、糖類または二糖類の置換基の電荷および性質についての情報を提供しないかもしれない。例えば、ウロン酸の構成ブロックは、イズロン酸またはグルクロン酸であり得る。これらの構成ブロックの各々は、構成ブロックの構造に複雑性を付加するさらなる置換基を有し得る。しかし、単一の特性は、オリゴ糖類の完全な構成ブロックの同定に加えて、このようなさらなる置換電荷を同定しないかも知れない。しかし、この情報は、いくつかの特性から集められ得る。従って、本明細書中で使用されるようなオリゴ糖類の特性は、オリゴ糖類の単糖類または二糖類の構成ブロックを包含する。本明細書中で記載されるNMR法は、基本的な単糖類構成ブロックについての情報を同定するために有用である。
上記オリゴ糖に関する構造情報を提供する特性の型は、電荷、分子量、硫酸化もしくはアセチル化の性質および程度、または糖の型のような、特性である。特性としては、電荷、キラリティー、置換基の性質、置換基の量、分子量、分子長、置換基もしくはユニットの組成比、またはオリゴ糖の基礎構成ブロックの型、疎水性、酵素感受性、親水性、二次構造および立体構造(すなわち、らせんの位置)、置換基の空間分布、ある改変セット対別の改変セットの比(すなわち、N−硫酸化に対する2−O硫酸化の相対量、またはグルコン酸に対するイズロン酸の比)、タンパク質結合部位、および結合情報が、挙げられるが、これらに限定されない。他の特性は、当業者によって容易に同定される。置換基とは、本明細書中で使用される場合、あるユニットを置換するがそれらのユニット自体ではない、原子または原子群である。
NMRの使用は、オリゴ糖の完全配列を同定するために充分な特性情報を誘導するために必要な実験的制約数を有意に減少し得ることが、発見されている。特定の結合および単糖組成に関する情報を提供することによって、NMRは、配列決定技術を劇的に改善する。
従って、上記の方法の一実施形態は、A−U結合を測定するためのNMRの強度と、オリゴ糖の配列を構築するためにCEから得られるU−A結合情報の直交セットを利用する。NMRは、インタクトなオリゴ糖の配列を規定する多数のパラメーター(単糖組成、硫酸化パターン、およびグルコサミンとウロン酸との間の結合(A−U)が挙げられる)を決定するために使用され得る強力なツールである。これらのパラメーターは、配列長および構成ブロックの変動性とは独立して、一連の単一1Dプロトン実験と2D COSY/TOCSY実験とを使用して、容易に決定され得る。従って、NMRから得られた隣接する単糖間の個別の結合情報(A−U結合情報)を、単一のキャピラリー電気泳動実験から得られるU−A結合情報と合わせることによって、HSGAGオリゴ糖の配列に容易に到達する。
過去に、HSGAGのNMRスペクトルの解釈は、プロトンシグナルの重複と、測定可能な結合定数がないこととに起因して、特定の制限を有していた。また、この技術の感度は、クロマトグラフィー溶出液の検出に基づく技術(Turnbullら、1999;lVivesら、1999;Kreugerら、2001)および質量分析に基づく技術(Popeら、2001;Venkataramanら、1999)の感度よりも低い。従って、少量でしか入手可能ではないサンプルを特徴付けることは、非常に困難であった。これらの制限にも関わらず、NMRは、配列決定において有用な強力な分析情報を提供し得ることが、発見されている。
NMR分光法は、分子構造の決定を可能にする分析ツールである。いくつかの核の磁気特性を利用して、その核の核スピンが、外部磁界を用いてランダムに方向付けられ得る。方向付けられた核は、その後、正確な周波数で照射され、その核は、エネルギーを吸収して、より高エネルギー状態に遷移する。弛緩の際に、このエネルギーは、放出され、そして種々のNMRシステムで検出される。この核の照射は、パルス状に生じる。基礎的一次元(1D)NMRにおいて、その励起は、1つのパルスから生じ、放出された放射線が、遊離誘導減衰(FID)として検出される。2次元(2D)NMR分光法において、その核は、2つのパルスを用いて照射され、そのFIDの獲得が、それらのパルス間で減衰しつつ、多時点で生じる。
COSY、TOSCY、NOESY、およびROESYを含む、多くの型の2D分光法が存在する。COSY(相関分光法)は、隣接するプロトンから生じるエネルギーを決定する際に役立つ。これは、重複または二次結合が存在する場合に、有用である。COSYにおけるスピン−スピンカップリングは、そのスペクトルが結合相互作用を介して生じることを可能にする。結合相互作用を介して測定可能な別の2D NMR技術は、TOSCY(総合(total)相関分光法)である。これは、スピン系内でシグナルを生じるプロトンを同定する。COSYおよびTOSCYは、より強力な構造分析のために合わされ得る。
他の2D NMR技術は、空間相互作用を介する測定を可能にする。これらの方法は、NOESY(核オーバーハウザー効果分光法)およびROESY(回転(rotational)核オーバーハウザー効果分光法)と呼ばれる。NOESYは、結合によって直接には結合していない空間的に近接するプロトンから放出されるシグナルを同定する。NOESYスペクトルは、効果的に測定され得る照射時の隣接する核からの多重項強度の変化として、空間的相関を介して生じる。NOESYシグナルが弱い場合、ROESYが使用され得る。ROESYは、同様な技術であるが、但し、負である交差ピークを有する。他の技術が使用され得、それは、当業者にとって明らかである。
本明細書中で記載される方法において有用なNMR分光法は、いくつかの実施形態において、1Dプロトンまたは2D COSY/TOCSYであり得る。1DプロトンNMRおよび2D COSY/TOCSY NMRスペクトルは、オリゴ糖配列を規定する複数のパラメーター(単糖組成、硫酸化状態およびA−U結合情報を含む)に関する量的情報を提供する。さらに、NMRは、配列中のイズロン酸およびグルクロン酸の含量の直接定量のための正確な方法を提供する。
キャピラリーゲル電気泳動の方法において、反応サンプルは、小さい直径のゲル充填されたキャピラリーによって分析され得る。小さい直径のキャピラリー(50μm)は、電気泳動の間に発生した熱の効率的な放散を可能にする。従って、高い電界強度が、過剰なジュール加熱(400V/m)を伴うことなく使用され得、分離時間を約20分/反応ランまで下げ、従って、従来のゲル電気泳動を超えて分解能を上げる。さらに、多くのキャピラリーが、並行して分析され得、生成したオリゴ糖の情報の拡充を可能にする。
現在、糖フラグメントは、232nm(ヘパリナーゼ切断の際に生成するΔ4,5二重結合が吸収する波長)でモニタリングすることによって、キャピラリー電気泳動において検出される。しかし、他の検出方法が可能である。第1に、ヘパリンフラグメントの亜硝酸切断、続くH−ホウ化水素ナトリウムでの還元により、H放射性タグを有する分解フラグメントを生じる。このことは共に、キャピラリー電気泳動(放射能をカウント)または質量分析法(質量の増加によって)により追跡され得るタグをあらわす。放射能を使用する別の方法は、S35でヘパリンフラグメントを標識することである。H標識フラグメントを検出可能なタイプと同様に、S35標識フラグメントは、放射能検出(CE)または質量差(MS)の測定に有用であり得る。
特にS35の場合、この検出は強力である。この場合、ヒトスルホトランスフェラーゼが、特定の残基を特異的に標識するために使用され得る。これは、さらなる構造情報を与える。
亜硝酸分解フラグメントは、ヘパリン由来のフラグメントとは異なり、UV吸収発色団を有さない。CEについて、適切な発色団を欠くフラグメントをモニタリングするために、2つの方法が使用され得る。第1は、フラグメントの間接的検出である。本発明者らは、適切なバックグラウンド吸収体(例えば、1,5−ナフタレンジスルホン酸)を用いる本発明者らのCE法を用いて、ヘパリンフラグメントを検出し得る。検出のための第2の方法は、糖による金属イオンのキレート化を包含する。糖−金属錯体は、不飽和二重結合をモニタリングするのと同様に、UV−Visを使用して検出され得る。
還元末端または非還元末端を決定するために、種々の実験法が使用され得、この方法としては、化学分解、末端標識化およびキャピラリー電気泳動が挙げられる。いくつかの実施形態において、これらの末端は、還元末端または非還元末端の特徴を測定することによって決定され得る。いくつかのオリゴ糖について、還元末端の特徴は、メチル化であり、この特徴はまた、キャピラリー電気泳動および当該分野で公知の他の方法によって決定され得る。
オリゴ糖の還元末端は、例えば、質量タグを使用して、非還元末端から区別され得る。これらのタグのすべては、アノマーOH(オリゴ糖の還元末端に存在する)との選択的化学的性質を含み、従ってこの鎖の還元末端で標識化が生じる。1つの一般的なタグは、2−アミノ安息香酸であり、これは蛍光性である。一般に、タグは、以下のタイプの化学的性質を含む:(1)イミン(すなわち、2−アミノ安息香酸)を形成するアノマー位とアミンの反応、ヒドラゾンを形成するヒドラジン反応、およびセミカルバジドを形成するアノマーOHとセミカルバゾンとの反応。一般に使用されるタグ(2−アミノ安息香酸以外)としては、以下の化合物が挙げられる:
1.セミカルバジド
2.ジラールP試薬
3.ジラールT試薬
4.p−アミノ安息香酸エチルエステル
5.ビオチン−x−ヒドラジド
6.2−アミノベンズアミド
7.2−アミノピリジン
8.アントラニル酸
9.5−[(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノ]−フルオレセイン
10.8−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸
11.2−アミノアクリドン。
本発明のいくつかの局面において、その特性は、インタクトな形態またはフラグメント化形態のオリゴ糖について決定され得る。本発明のいくつかの実施形態において、オリゴ糖のフラグメントは、酵素分解によって生成され得る。いくつかの実施形態において、消化は、完全消化であるかまたは部分消化であり得る。
オリゴ糖フラグメントは、へパリン溶解酵素のような酵素または亜硝酸を使用して分解され得、そしてそれらはまた、スルフェート基を先に述べた位置に移動させるか、またはスルフェート基をその位置から移動させる異なる酵素を使用して改変され得る。改変酵素は、外部溶解性(exolytic)および非プロセッシブ(non−processive)であり、これは、これらが、非還元末端で一度だけ作用し、鎖の残りを連続的に改変することなく、へパリン鎖を放すことを意味する。二糖単位の改変可能位置の各々について、改変酵素が存在する。スルフェート基を追加する酵素は、スルホトランスフェラーゼと呼ばれ、スルフェート基を除去する酵素は、スルファターゼと呼ばれる。改変酵素としては、2−Oスルファターゼ/スルホトランスフェラーゼ、3−Oスルファターゼ/スルホトランスフェラーゼ、6−Oスルファターゼ/スルホトランスフェラーゼ、およびN−デアセチラーゼ−N−スルホトランスフェラーゼが挙げられる。これらの酵素の機能は、それらの名前から明らかであり、例えば、2−Oスルホトランスフェラーゼは、スルフェート基をイズロン酸の2−O位置に移動させ(2−Oスルフェート化グルクロン酸は、HSGAG鎖のまれな存在である)、2−Oスルファターゼは、スルフェート基を、イズロン酸の2−O位から除去する。
HSGAG分解酵素としては、ヘパリナーゼ−I、ヘパリナーゼ−II、ヘパリナーゼ−III、D−グルクロニダーゼおよびL−イズロニダーゼが挙げられる。ヘパリナーゼは、ウロン酸の前に、グリコシド結合で切断する。ヘパリナーゼIは、2−Oスルフェート化イズロン酸の前に、グリコシド連結で切り取る。ヘパリナーゼ−IIIは、非スルフェート化グルクロン酸の前にグリコシド連結で切断する。ヘパリナーゼ−IIは、Hep−I切断可能部位およびHep−III切断可能部位の両方で切断する。ヘパリナーゼによる切断後、切断が生じる前に、ウロン酸は、イズロン酸対グルクロン酸の情報を失う。なぜなら、二重結合は、ウロン酸のC4原子とC5原子との間で作られるからである。
グルクロニダーゼおよびイズロニダーゼは、それらの名前が示唆するように、グルクロン酸およびイズロン酸のそれぞれの後に、グリコシド連結で切断する。亜硝酸は、N−スルフェート化ヘキソサミンの後のグリコシド連結でランダムに切り取り、そして6員ヘキソサミン環を5員無水マンニトール環に変換する。
本明細書中において使用されるように、用語「オリゴ糖(オリゴサッカリド)」は、用語「多糖(ポロサッカリド)」と交換可能に使用される。「オリゴ糖」は、連結される糖(saccharide)単位または糖(sugar)単位から構成されるバイオポリマーである。オリゴ糖の連結された単位に関して本明細書中に記載されるように、「連結される」または「連結」は、2つの実体が、任意の物理化学手段によって互いに結合されることを意味する。当業者に公知の任意の連結(共有または非共有)を、包含する。このような連結は、当業者に周知である。天然の連結(特定のオリゴ糖の化学単位を接続する天然に通常見出される連結である)は、最も一般的である。天然の連結としては、例えば、アミド連結、エステル連結およびチオエステル連結が挙げられる。しかし、本発明の方法によって分析されるオリゴ糖単位は、合成連結または改変連結によって連結され得る。この単位が共有結合によって連結されるオリゴ糖が、最も一般的であるが、水素結合などをまた含む。
オリゴ糖は、複数の化学単位から構成される。本明細書中において使用される「化学単位」は、他の構築ブロックまたはモノマーに直接的または間接的に連結してオリゴ糖を形成し得る構築ブロックまたはモノマーである。オリゴ糖は、好ましくは、少なくとも2つの異なる連結単位のオリゴ糖である。オリゴ糖は、互いに連結される単糖から構成されるバイオポリマーである。多くのオリゴ糖において、オリゴ糖の基礎的な構築ブロックは、実際には、反復または非反復であり得る二糖単位である。従って、オリゴ糖に関して使用される場合の単位は、オリゴ糖の基礎的な構築ブロックをいい、これには、モノマー構築ブロック(単糖)またはダイマー構築ブロック(二糖)が挙げられ得る。
「複数の化学単位」は、互いに連結される少なくとも2つの単位である。オリゴ糖は、ネイティブまたは天然(naturally−occurring)オリゴ糖(天然に存在する)あるいは非天然(non−naturally occurring)オリゴ糖(天然に存在しない)であり得る。オリゴ糖は、代表的に、天然オリゴ糖の少なくとも1部を含む。オリゴ糖は、単離または新たに合成され得る。例えば、オリゴ糖は、天然の供給源から単離され得る(例えば、切断またはゲル分離によって精製される)か、または例えば、化学合成によって合成され得る。
オリゴ糖の特性を表すためのデータ構造もまた、提供される。いくつかの実施形態において、データ構造は、非特徴的な値として特性を表す。これらの値は、いくつかの実施形態において、バイナリ値であり得る。いくつかの実施形態において、構築ブロックは、オリゴ糖の単糖および二糖の連結の型である。
化学的および酵素ツール、続いて、数値分析を使用する多糖のための迅速配列決定方法は、以下に詳細に記載される:Venkataraman,G.ら、Science,286,537−542(1999)、および米国特許出願番号09/557,997および09/558,137(両方が、2000年4月24日に出願され、共通の発明者の要件を有する)(これらの全てが、具体的に本明細書中で参考として援用される)。
(材料および方法)
合成ペンタサッカリドP1およびP2(AT−III結合のための、ヘパリンの活性配列に対応する)は、M.Petitou,Sanofi−Synthelabo,Toulouse,Franceから寄贈された。デカサッカリドH10(親切にも、R.J.Linhardt(University of Iowa)により寄贈された)を、ブタ粘膜ヘパリンのヘパリナーゼ消化物を、以前に記載されるように(Toidaら,1996)、AT−IIIカラムで分画することにより得た。
(NMR分光法:)
オリゴ糖サンプルを、2mgのペンタサッカリドおよび150μgのH10を0.5mlのDO 99.99%に溶解することによって調製した。H10中の常磁性イオンによって引き起こされたシグナルの拡がりに起因して、重水素化EDTAをサンプルに添加して、これらのイオンを除去した(Nevilleら,1989)。H−NMRスペクトルを、残りの水シグナルの予備飽和および12秒のリサイクル遅延を伴うBruker AMX 500分光光度計で、500MHzにおいて60℃で記録した;45°パルスを使用した。2D DQF−COSY(二重量子フィルタ(Double Quantum Filtered)−COSY)およびTOCSYを、TPPI(時間比例相増加(Time Proportional Phase Incrementation))を使用して相敏感モードで測定し、シフトした平方正弦ベル関数(shifted square sine− bell function)を、フーリエ変換の前に適用した。各FIDについて32回および512回の走査を、それぞれ、ペンタサッカリドおよびデカサッカリドに使用した。
(キャピラリー電気泳動(CE)を用いた組成分析:)
オリゴ糖の組成分析を、以前に記載されるように(Venkataramanら,1999)、30μMサンプルの徹底的な酵素消化、続いて、キャピラリー電気泳動(CE)によって完了した。簡潔には、1nmolのオリゴ糖に、25mM 酢酸ナトリウム、100mM NaCl、5mM 酢酸カルシウム緩衝液(pH7.0)中で、200nMのヘパリナーゼI、II、およびIIIを添加した。反応を、30℃で一晩進め、次いで、泳動緩衝液(50mM Tris/リン酸塩/10μM硫酸デキストラン、pH2.5)を用いて逆極性でCEにより分析した。
(CEデータおよびNMRデータの、PENフレームワークを使用する制約としての組み込み:)
PENは、一連の、+または−サインビットとしてウロン酸の二進法オン/オフ状態およびエピマー化として二糖構成ブロックの硫酸化パターンをコードする数値表記法である。これは、サイン付き16進法符号化スキーム(signed hexadecimal coding scheme)(Venkataramanら,1999)をもたらす。PENフレームワークは、本来、U−A二糖構築ブロック(Di)をコードするために開発されたが、このフレームワークを、ウロン酸単糖(U)を表すための基数(base)コードおよびグルコサミン単糖(A)を表すための基数コードに数学的に分解した(図1)。ΔU−A連結について、G/I位置において使用される*は、ウロン酸のエピマー状態が未確認であることを示すことに注意のこと。A−U連結を示すサイン付き16進法コードが、本来のPENフレームワークから、Aをコードする3つの二進法ディジットおよびUをコードする2つの二進法ディジットの再配列(rearrangement)を含むことに注意することもまた重要である。再配列の結果として、+および−サインは、ウロン酸のエピマー状態の代わりに、グルコサミンの6−O硫酸化(ここで+は、硫酸化されていないことを示し、−は、硫酸化されていることを示す)を表すために使用される。なぜなら、6−O硫酸化は、A−U二糖コードの最も左の位置にあるからである。従って、A−U二糖を表すために追加された「余分の」二進法ディジットはなく、本発明者らは、サイン付きの基数1616進法コードをなお使用する。さらに、PENフレームワークもまた、ウロン酸のエピマーおよび硫酸化状態をコードする2ビットで、グルコサミンの硫酸化状態をコードする3ビットを移項することにより、A−U二糖単位(Di’)をコードするために使用した(表1)。NMRデータおよびCEデータから得た情報を、Aに示す。列1〜3は、グルコサミン残基の間の連結の数を示す(灰色で着色)。列4のウロン酸は、NMRデータから得た。列5〜7は、CEデータから得た、ウロン酸とグルコサミンとの間の連結を示す。単糖組成を満足する配列およびA−U連結情報(Di’)を、Bに示す。CEデータからのU−A連結の適用は、LNMRを最後の正しい配列にする。
Figure 2006505799
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2D COSYを伴う1−DプロトンNMRスペクトル、HSQC(異種核単一量子コヒーレンス)およびTOCSYスペクトルは、構成単糖の大部分の環プロトンの化学シフトおよびカップリング定数についてのデータを提供する。このデータは、単糖(UiおよびAi)を特有に同定し、配列の所定の長さに対する単糖の数を得るために使用される。グルコサミン単糖の正体に加えて、それらの特徴的なアノマー化学シフトを、隣接するウロン酸へのそれらの連結(Di’二糖を規定するAi−Ui連結)を同定するためにさらに分解した。Ui、AiおよびDi’情報を使用して、このデータ(LNMR)を満足するあり得る配列全てのリストを構築した。LNMRにおける配列は、一般に存在する配列に何ら偏ることなく、包括的なサンプル空間を表す。
CEを使用する二糖組成分析は、ΔU−A二糖の硫酸化パターンについての正確な情報を提供し、従って、U−A連結(±Di)の全てを同定し、この連結のサインビットは、Δ4〜5不飽和結合に起因して既知でない。CEデータから得た二糖連結±Diを組み込むことは、LNMRから大部分の配列を排除して、単一の配列に収束させる。
(結果)
(実施例1:五糖類P1)
単糖類のアノマープロトンのいくつかの特徴的な化学シフトが、五糖類の1DプロトンNMRスペクトルにおいて観察された(図2A)。1Dプロトンシグナルを、2D COSYスペクトルおよびTOCSYスペクトルと共に使用して、単糖類を帰属した。5.648ppm、5.438ppmおよび5.041ppmにおけるシグナルパターンを、N−硫酸化グルコサミン(ANS,6X)のアノマープロトンに帰属した。さらに、これらの全てのグルコサミンの6−O硫酸化を、TOCSYによって確認した。3.43/57.5ppmにおけるシグナルは、還元末端に結合したO−メチル基の存在を示す。さらに、還元末端におけるメチル基の存在もまた、代表的な還元末端の炭素の化学シフト(92〜93ppm)の非存在を説明する。5.251および4.635における化学シフトは、それぞれI2SおよびGと一致する。5.648および5.438におけるアノマープロトンのシグナルは、それぞれANS,6S−I2SおよびANS,6S−Gから生じるとして、さらに区別される。
これらのピークの積分(Guerriniら、2001)は、グルコサミンの相対モル存在比を、ANS,6S−I2S:ANS,6S−G:ANS,6S=1:1:1として、およびウロン酸の相対モル存在比を、I2S:G=1:1として与えた。従って、1D NMRデータおよび2D NMRデータから、この配列を含む単糖類の同一性A=[5;5;5(ANS,6S)]、U=[1(I2S):2(G)]、および相対存在比(m5=3、n
1=n2=1)を決定した。さらに、結合Di’=[−516(ANS,6S−I2S);−616(ANS,6S−G)]もまた、NMRデータから得られた。NMRデータからのこの情報に基づいて、2つの可能な(LNMR)五糖類配列が存在し得る:5(ANS,6S−I2S−ANS,6S−G−ANS,6S,OMe)および5(ANS,6S−G−ANS,6S−I2S−ANS,6S,OMe)。
五糖類のヘパリナーゼでの完全な消化によって形成されるフラグメントのキャピラリー電気泳動は、三硫酸化ΔU2SNS,6Sおよび二硫酸化二糖類ΔUANS,6Sに対応する2つのピークを生じ、±Di=[±D16;±516]を規定した。これらの2つの二糖類の相対モル存在比を、CEシグナルの積分および内部較正を使用するピーク面積の標準化によって、1:1と計算した。±D16二糖類の移動時間は、標準とわずかに異なった。このことは、メチル化グルコサミンが、三硫化±D16二糖類の一部であることを示す。従って、CEからのデータは、メチル化された還元末端二糖類の硫酸化状態を決定する。CEデータからの制約を組み込むことによって、LNMRから配列の1つを排除し、これによって、5(ANS,6S−G−ANS,6S−I2S−ANS,6S,OMe)に収束させた。
(実施例2:五糖類(P2))
1Dプロトンスペクトル(図2B)から、シグナルパターン(5.64/99.6ppm、5.50/98.1ppmにおけるアノマーピーク)は、N−硫酸化,6−O−硫酸化グルコサミン(ANS,6S)および余分の3−Oスルフェート基を有するAと一致する。実施例1と同様に、3.43/57.5ppmにおけるシグナルパターンは、メチル化された還元末端を有するグルコサミンに対応する。また、5.64ppmにおけるアノマー化学シフトは、実施例1に示されるように、Gに結合したANS,6Sから生じる。5.20/101.7ppmおよび4.78/72.4ppmにおけるシグナルは、I2S残基のH1およびH5と一致し、そして4.6/103.3ppmにおけるアノマーシグナルは、Gと一致する(MulloyおよびJohnson,1987;Yatesら、1996)。従って、Ui=[1(I2S);2(G)]およびAi=[5;5(ANS,6S);7(A)]である。この場合において、本発明者らは、Di’の2つの要素のうちの一方のみを、[−616(ANS,6S−G)]と規定した。NMRデータからの妨害を制約として組み込むことによって、本発明者らは、LNMR=2の配列を得た:5(ANS,6S−G−A−I2S−ANS,6S,OMe)および7(A−I2S−ANS,6S−G−ANS,6S,OMe)。
CEを使用する二糖類組成分析は、シフトした移動時間を有する三硫酸化二糖類に対応する単一のピークを生じた。このことは、メチル化グルコサミンの存在を示す(±Di=[±D16])。CEからのデータを使用して、LNMRからの配列の1つを排除して、正しい配列5(ANS,6S−G−A−I2S−ANS,6S,OMe)を得た。この配列は、ANS,6S−G結合が、3−O硫酸化Aの存在に起因して、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼIIおよびヘパリナーゼIIIによる切断に対して耐性であるという概念と一致する(Shriver,Zら、2000)。従って、単一の二糖類のみが、CEを使用して観察された。
(実施例3:十糖類(H10))
最初の2つの合成五糖類の例は、本発明者らのアプローチの方法論を明らかに概説するが、この方法は、より長く、より複雑なヘパリン由来のオリゴ糖類(H10)によって、よりよく説明される。この配列は、現在、ヘパリン由来のオリゴ糖類配列のうちで、これまでの最も複雑なものである。大きな努力が、H10の単離および配列決定につぎ込まれたことを指摘することが、重要である(Toidaら、1996)。その複雑さに起因して、過去において、その構造決定における不正確さが存在し、そしてほんの最近、分析ツールの組み合わせを使用して、この配列が確立された(Venkataramanら、1999;Shriverら、2000)。NMR分光法が、過去において、その配列を確証するために使用された(Shriverら、2000)が、単糖類の組成のみが確立され、そして決定された配列に基づくNMRデータの解析に、偏りが存在した。これらの例を使用して、本発明者らは、複雑なヘパリン由来のオリゴ糖類の構造の、偏りのない帰属を提供する際の本発明者らのアプローチの融通性を強調する。
H10のプロトンスペクトルのシグナルラインの広がり(図3A)は、常磁性のイオンと負に帯電した基との複合体形成によって起きる。EDTAの添加によって、これらの常磁性イオンが除去されることにより、より良い解像度のスペクトル(図3B)が提供される(Nevilleら,1989)。
アノマー性シグナル(図3C)およびそのそれぞれのプロトンパターン(表2)の帰属は、COSY実験およびTOCSY実験によって実行した。
(表2:H10サンプルの構成単糖のH化学シフト)
化学シフトは、標準としてのプロピオン酸トリメチルシリル(TSP)よりも下のppmとして与える。
Figure 2006505799
a−2つの単糖残基
b−非還元性ΔUユニットによる後のANS,6S残基のH4化学シフト。
4.2ppmと4.4ppmとの間で検出されるシグナルは、6−O硫酸化グルコサミン由来のH−6プロトンに一致する。しかし、この化学シフトは、スペクトルの混み合った領域にあるので、かつサンプル中の微量な不純物の存在に起因して、6−O硫酸基を含むグルコサミンのモル存在量を正確に決定することは、可能ではなかった。しかし、CEを使用したH10の二糖組成分析は、3:1:1の比で、3つの主要な二糖成分(ΔU−ANS,6S、ΔU−ANc,6S、ΔU−A)の存在を示した(それぞれ,±Di=[±D;±4;±7]を与えた)。従って、CEからのデータは、すべてのグルコサミンの6−O硫酸化を定めた。
シグナル積分によって計算したグルコサミン単糖の相対存在量は、5(ANS,6S):7(A):4(ANc,6S)=3:1:1であり、従って、Ai=[5;5;5;7;4]であった。5.20ppmおよび5.019ppmでの2つのαアノマー性シグナルは、化学シフトパターンによって実証されるように、それぞれ2−O硫酸化イズロン酸および非硫酸化イズロン酸から生じる。このスペクトルの唯一のβプロトンシグナル(4.669ppm)は、グルクロン酸残基に属する。6ppmおよび5.521ppmでのプロトンは、ΔU残基のH4およびH1に属する。4.635ppmのH2は、不飽和ウロン酸残基が、2−O硫酸化されていることを示す。I2S:I:G:ΔU2Sとして計算したウロン酸単糖の相対存在量は、それぞれ2:1:1:1の比で同定され、それによって、Ui=[1;1;0;2;(1)]を規定した(ここで、このビットは、規定されていないので、は、ΔUを表す)。
5.369ppmのシグナルの化学シフトは、Iと結合したANS,6Sと一致する。ANAc,6SHアノマー性化学シフトは、ANAc,6S−I(5.14〜5.18ppm)結合およびANAc,6S−G(5.30〜5.36ppm)結合とは異なっている(Cohen,1999;Chuangら,2001)。5.368ppmのアノマー性プロトンは、配列中でのANAc,6X−G結合の存在を確認する。5.42での化学シフトは、ANS,6Sと結合したANS,6Sおよび還元末端のI2Sの両方と一致する。ΔU残基は、ANS,6Sユニットと結合しており、第2のANS,6Sは、Iと結合しているので、還元末端について2つの可能性が残る。一方は、ANS,6Sを有する還元末端、他方は、Aを有する還元末端である。しかし、Aに関する化学シフトパターン(H1,5.464ppm;H2,3,480ppm;H3,4.564ppm,H4,4.041ppm)は、還元末端にこの残基を有するヘパリンテトラサッカリドについて、Yamadaら(1993)によって見出されたものと同じである(Yamadaらの論文中の化学シフトは、本発明者らの値に対して、組織的に約−0.03ppmシフトしている)。従って、Aのシグナルパターンは、還元末端でのその位置に一致する。これらのシグナルの相対存在量に基づいて、Di’のすべての要素を、[−516;−516;−416;−216]として規定した。PENフレームワークLNMR=12配列を使用して、Ai、UiおよびDi’を約数へと変換した(表1)。
±Diに対応する二糖結合を含まないLNMRから配列を取り除くことによって、1つの配列DDD4−7が生じた。この配列は、以前に得られたH10配列に一致する(Shriverら,2001)。
これまでに記載した明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするために十分であると考えられる。実施例は、本発明の1つの局面の一例示として意図され、他の機能的に等価な実施形態は、本発明の範囲内であるので、本発明は、提供した実施例によってその範囲が制限されるべきではない。本明細書において示したものおよび記載したものに加えて、本発明の種々の改変が、これまでの記載から当業者に明らかとなり、添付した特許請求の範囲の範囲内にある。本発明の利点および目的は、必ずしも、本発明の各実施形態によって包含されるわけではない。
本出願に引用されるすべての参考文献、特許および特許公開が、本明細書に参考として援用される。
Figure 2006505799
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図1は、硫酸化の位置がXとして示されるヘパリンおよびヘパラン硫酸多糖(左)の二糖類構築ブロックの説明である(Y位置は、硫酸化され得るかアセチル化され得る)(A)。PENフレームワークにおける二糖類繰返し単位を表す16進コード(中央)は、本発明者らの以前の研究(Venkataramanら,1999)に記載した。ウロン酸についての基数コードおよびグルコサミンについての基数(8進)コードに対する二糖類16進コードの分解は、(i)ウロン酸について基数コード、(ii)グルコサミンについての8進コード、(iii)A−U結合についてサインされた16進コードならびに(iv)本研究で使用されるオリゴ糖で観察されたΔU−A結合(B)に示す。 図2は、(A)合成五糖類P1のH 500MHzスペクトル、(B)合成五糖類P2のH 500MHzスペクトルを示す。従って、構成する単糖の特徴的なプロトン化学シフトをマークする。 図3は、H10十糖類のH 500MHzスペクトルを例示する(A)。線の広がりは、常磁性不純物の存在のためである;重水素化EDTAの添加は、より良い分解スペクトルを提供する(B)。信号指定を用いたアノマー領域の拡大を(C)に示す。

Claims (28)

  1. オリゴ糖の組成を決定する方法であって、該方法は、NMR分光法を用いて該オリゴ糖の第1の特性の測定値を得る工程、および第2の実験法により該オリゴ糖の第2の特性の測定値を得る工程を包含し、ここで該第1の特性および該第2の特性は、該組成を決定する、方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、前記オリゴ糖の第2の特性は、キャピラリー電気泳動によって測定される、方法。
  3. オリゴ糖を分析する方法であって、該方法は、第1の実験法によって該オリゴ糖の二糖連結の第1の型の測定値を得る工程、および第2の実験法により該オリゴ糖の二糖の第2の型の測定値を得て、該オリゴ糖を分析する工程を包含する、方法。
  4. 請求項3に記載の方法であって、前記二糖連結の第1の型は、NMR分光法によって測定される、方法。
  5. 請求項3に記載の方法であって、前記二糖連結の第2の型は、キャピラリー電気泳動によって測定される、方法。
  6. オリゴ糖を分析する方法であって、該方法は、NMR分光法により該オリゴ糖の第1の特性を同定する工程、およびキャピラリー電気泳動により該オリゴ糖の第2の特性を同定して、該オリゴ糖を分析する工程、を包含する、方法。
  7. 請求項1または4に記載の方法であって、該方法は、前記NMR分光法および前記第2の実験法からの前記測定値と一致する前記オリゴ糖のあり得る配列を決定する工程をさらに包含する、方法。
  8. 請求項1または4に記載の方法であって、該方法は、前記NMR分光法からの前記測定値に基づいて、あり得る配列のリストを構成する工程、および前記第2の実験法の前記測定値と一致しない、該あり得る配列のリストから配列を排除する工程をさらに包含する、方法。
  9. 請求項1、3、4、7または8に記載の方法であって、前記第2の実験法は、前記オリゴ糖またはそのフラグメントの還元末端または非還元末端を区別する、方法。
  10. 請求項9に記載の方法であって、前記第2の実験法は、化学的分解を含む、方法。
  11. 請求項9に記載の方法であって、前記第2の実験法は、末端標識を含む、方法。
  12. 請求項1、3、4、7または8に記載の方法であって、前記第2の実験法は、前記オリゴ糖またはそのフラグメントの還元末端のサインを決定する、方法。
  13. 請求項12に記載の方法であって、前記還元末端のサインは、キャピラリー電気泳動によって決定される、方法。
  14. 請求項1、2、4、6、7または8に記載の方法であって、前記NMR分光法は、前記オリゴ糖またはそのフラグメントの硫酸化パターンの決定を含む、方法。
  15. 請求項1、3、4、7または8に記載の方法であって、前記第2の実験法は、前記二糖連結の第2の型の前記硫酸化パターンの決定を可能にする、方法。
  16. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法であって、該方法は、前記オリゴ糖のさらなる特性の尺度を、第3の実験法によって得て、該第3の実験法から得た測定値と一致しない配列をさらに排除する工程をさらに包含する、方法。
  17. 請求項1、2、4、6、7または8に記載の方法であって、前記NMR分光法は、1Dプロトンまたは2D COSY/TOCSYである、方法。
  18. 請求項1、2、4、6、7または8に記載の方法であって、前記NMR分光法は、そのインタクトな形態で前記オリゴ糖に対して行われる、方法。
  19. 請求項1、3、4、7または8に記載の方法であって、前記第2の実験法は、前記オリゴ糖をフラグメント化形態に消化する工程を包含する、方法。
  20. 請求項19に記載の方法であって、前記フラグメント化形態は、酵素的消化により生成される、方法。
  21. 請求項20に記載の方法であって、前記酵素的消化は、完全である、方法。
  22. 請求項1に記載の方法であって、前記NMRは、還元末端および非還元末端の両方を同定および定量するために行われる、方法。
  23. オリゴ糖のあり得る配列のリストを生成する方法であって、該方法は、該オリゴ糖の特性のセットを、NMR分光法および第2の実験法を行うことにより規定する工程であって、ここで該NMR分光法は、二糖連結の第1の型の測定値を提供し、該第2の実験法は、二糖連結の第2の型の測定値を提供する、工程、および該オリゴ糖の特性の該セットに基づいて、あり得る配列のリストを構築する工程、を包含する、方法。
  24. 請求項23に記載の方法であって、前記NMR分光法は、前記オリゴ糖の単糖組成の尺度を含む、方法。
  25. 請求項23に記載の方法であって、該方法は、非文字値として前記特性を表すデータ構造をさらに含む、方法。
  26. 請求項25に記載の方法であって、前記データ構造は、単糖の各型についての値を含む、方法。
  27. 請求項25に記載の方法であって、前記データ構造は、二糖連結の各型についての値をコードする、方法。
  28. 請求項25に記載の方法であって、前記値は、二進法である、方法。
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