JP2006505276A - 加水分解物原料からコハク酸を生産する方法 - Google Patents

加水分解物原料からコハク酸を生産する方法 Download PDF

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    • C12P7/46Dicarboxylic acids having four or less carbon atoms, e.g. fumaric acid, maleic acid

Abstract

ptsG、pflBおよびldhA遺伝子に突然変異を含む生物体を供給する工程、そのような生物体にバイオマスを蓄積させる工程、およびそのような生物体に加水分解物を代謝させる工程から成る、工業用グレードの加水分解物からコハク酸を生産する方法を提供する。また、0.6:1から1.3:1の間のコハク酸対基質の比で工業用グレードの加水分解物に含まれる基質からコハク酸を生産することを特徴とする細菌変異体も提供する。

Description

本発明はコハク酸を生産する発酵方法に関し、より詳細には、多数の糖を利用してコハク酸を主な発酵産物として生産することができる菌株を作成する方法に関する。
(発明の契約元)
米国政府は、米国エネルギー省とアルゴンヌ国立研究所の代表であるシカゴ大学との間の契約番号W−31−109−ENG−38に従い、本発明に関する権利を有する。
(発明の背景)
カルボン酸は、多くの化学物質の潜在的な前駆物質となる可能性を有している。例えば、コハク酸は、1,4−ブタンジオール(BDO)テトラヒドロフランやγ−ブチロラクトンのようなプラスチック前駆物質の原料としての役割を果たし得る。コハク酸に由来する新製品が開発中であり、その最も注目に値すべきものとして、コハク酸とBDOの結合により作成されるポリエステルがある。一般に、コハク酸のエステルは、より有害な溶媒に取って代わることが可能な新しい「環境にやさしい(green )」溶媒となる可能性を有している。合計で、コハク酸は、毎年10億ドル(約1000億円)を超える総市場価額で数百万ポンド(百万ポンドは約453.6トン)もの化学物質の前駆物質の役割を果たす可能性を有する。コハク酸に加えて、リンゴ酸やフマル酸のような他の4つの炭素から成るジカルボンも、原料となる可能性を有している。
再生可能な原料からの(この場合発酵プロセスによる)そのようなカルボン酸の生産は、再生不可能な供給源からそのような酸を得るよりエネルギー集約的な方法に取って代わる手段である。コハク酸はプロピオン酸生産菌による嫌気的発酵の中間体であるが、そのようなプロセスは収率および濃度が低い。
バクテロイデス・ルミニコラ(Bacteroides ruminicola)やバクテロイデス・アミロフィルス(Bacteroides amylophilus )のような嫌気性ルーメン細菌もココハク酸を生産するが、ルーメンの生物体は、発酵プロセスに不安定であるという特徴がある。
非特許文献1で詳細に調べられているように、大腸菌の発酵から酸の混合物が生産されることが長い間知られている。しかしながら発酵されたグルコース各1モルに対し、1.2モルのギ酸、0.1−0.2モルの乳酸、および0.3−0.4モルのコハク酸しか生産されない。そのため、発酵によってカルボン酸を生産する努力では、例えばグルコースのような比較的大量の成長基質が、所望の生成物に変換されない。
特許文献1に概説されている発酵プロセスに使用されているアネロビオスピリルム スクシニシプロデュセンス (A. succiniciproducens)のような一部の細菌は、約35−40グラム/リットル(g/L)までの適度なリットルで天然にコハク酸を生産する。アネロビオスピリルム スクシニシプロデュセンスホスト株は、高濃度の塩類には耐えられず、さらには適度な濃度の生成物によって阻害されるという点で、浸透圧に対する耐性が高くないことが示された。結局、アネロビオスピリルム スクシニシプロデュセンスは、そのような生物体を使用する処置が酸素不在で行われなければならないという点で、偏性嫌気性菌としての取扱いを提示する。また、接種原の培地調製にはトリプトファンの添加を要する。
コハク酸を生産する本発明者による以前の努力により、変異細菌を単離および利用する
に至った。ATCC受入番号202021として利用可能な変異体は、特許文献2の主題である。この特許文献2は、参照により本明細書に組み込まれるが、その前駆株から自発的に変異するコハク酸生産菌株(AFP 111)を教示している。このような変異体はグルコースを資源として発酵により成長しコハク酸を高収率で生産することができるが、その前駆株はコハク酸を高収率で生産することできない。しかしながら、このコハク酸生産法を利用する明らかな欠点は、一つの変異体に制限されていることである。
本発明者による他の努力(特許文献3)により、コハク酸生産が増加した菌株を構築する方法に至った。この方法は、大腸菌のホスホトランスフェラーゼ遺伝子の変化によって該細菌がより多くのコハク酸を生産することを教示している。この方法の欠点は、一つの変化にその方法が制限されていることである。
米国特許第5,143,834号 米国特許再発行出願第09/429,693号 米国特許第6,159,738号 Stokes, J.L. 1949,"Fermentation of glucose by suspensions of Escherichia coli" J.Bactoriol. 57:147-158
コハク酸を発酵により生産する、一つの変異体や遺伝子に制限されない方法が、当該技術分野において必要とされている。そのような方法は、特定の容易に決定される遺伝子型を有する任意の生物体によって実現されるべきである。そのような方法は、丈夫な生物体(すなわち高いフィードバック阻害閾値を有する生物体)を使用して比較的不活性な状態で行なわれることができるべきであり、精巧な環境制御手段の必要性も除去すべきである。そのような方法は、リグノセルロース材料の加水分解から得られた糖の混合物を利用すると優れた結果を生じさせるはずである。なぜなら、それらの基質はより安価な糖供給源を提供するので、それらの基質の使用によりコハク酸の生産コストを縮小できるからである。
本発明の目的は、先行技術の欠点の多くを克服するコハク酸の生産方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、高収率のコハク酸を生産する発酵プロセスを提供することにある。本発明の特徴は、そのような方法を可能にするために、複数の変異遺伝子を含むバクテリアのゲノムを利用することである。本発明の利点は、複数の変異体を生産するために容易に細菌を操作することができることである。 代わりに、複数の突然変異を既に含む細菌を、それ以上の操作なしで利用することもできる。
本発明のさらに別の目的は、大量のコハク酸を生産するために細菌を操作するプロセスを提供することにある。本発明の特徴は、細菌における糖代謝の正常な調節の破壊(disruption)である。本発明の利点は、コハク酸を生産する発酵プロセスにおいて比較的高い生成物対成長基質の比(すなわち1:1またはそれより高い比)を促進するために、様々な細菌を操作する能力である。本発明の別の利点は、グルコース代謝者および非グルコース代謝者になる細菌を利用する能力である。
本発明のさらに別の目的は、コハク酸を発酵で生産することにある。本発明の特徴は、変化されたホスホトランスフェラーゼ(pts)系、変化されたピルビン酸ギ酸リアーゼ(pfl)系、および変化された乳酸脱水素酵素(ldh)系を有する細菌の利用である。本発明の利点は、糖発酵のためにこのような酵素系を使用する多くの属から細菌を得ることができることである。
手短に説明すると、ptsG、pflBおよびldhA遺伝子に突然変異を含む生物体の供給する工程;該生物体にバイオマスを蓄積させる工程;および該生物体に加水分解物を代謝させる工程;から成る工業用グレードの加水分解物からコハク酸を生産する方法を提供する。
また、0.6:1から1.3:1の間(例えば消費された総糖1グラム当たり0.6から1.3グラムの間のコハク酸)のコハク酸対基質の比で工業用グレードの加水分解物に含まれる基質からコハク酸を生産することを特徴とする細菌変異体も提供する。
本発明は、上記のおよび他の目的および利点と共に、図面に例証された本発明の実施態様の以下の詳細な説明からより良く理解されよう。
本発明者は、高収率のコハク酸を発酵で生産する方法を開発した。この方法は、選択された生物体がグルコースと非グルコース原料の混合物を使用してコハク酸を生産するように、生物体の異化代謝抑制(catabolite repression )機構の変化を利用する。
得られる変異体およびプロトコルでは、1.3:1までのコハク酸対原料比、通常0.9:1のコハク酸対原料比となる。60g/Lから75g/Lの間のコハク酸の蓄積が達成される。典型的なプロトコルの持続時間は70時間より長く、通常、120から170時間の間である。例えば、160時間後に、70g/Lの収率が得られる。プロセスは約25℃から約45℃の間で実行可能であり、好ましい範囲は約30℃から約39℃である。5から9の間のpHが適切であり、より好ましい範囲は約6.1から約7.2の間である。
本発明の変異体は、それらの発酵産物に対する耐性が増大しているため、発酵のプロトコルの特に実行可能な要素である。例えば、フィードバック阻害を引き起こさずに、72g/Lのコハク酸濃度、22g/Lの酢酸濃度、14g/Lのエタノール、8g/Lの乳酸濃度を達成することが可能である。
(原料の詳細)
本発明の方法および変異体の顕著な特徴は、工業原料を直接利用することにある。軽度浸漬水(light steep water、原料を軽く浸漬させた後に残った水の意) 、様々な加水分解法により生産されたリグノセルロース加水分解物、トウモロコシ由来の糖液(例えばコーンスティープリカー)、乳清由来のラクトースおよび他の工業用グレードの糖を含むがそれらに限定されない多くの原料を利用することが可能である。例えば、濃酸加水分解または希酸加水分解、酵素加水分解によって生産されたリグノセルロース加水分解物またはそれらのプロセスの組み合わせによって生産された加水分解物は、すべて適している。また、トウモロコシ由来の糖液も適している。
工業原料は、一般にグルコースと他の糖の混合物であり、最も一般的な非グルコース糖はキシロースである。図2は、本発明の変異体のうちの1つによるグルコースとキシロースの利用を示している。
上記に照らせば、グルコースと非グルコース糖の少なくとも一方を含む原料であればいかなるものでも適している。そのようなものとして、グルコース、ソルビトール、キシロース、アラビノース、マンノース、ラクトース、グロクロン酸、ガラクトース、フルクトースおよびそれらの混合物を含む原料が適している。
(生物体の詳細)
本発明の方法は、生物体の異化代謝抑制機構に変化を含む生物体を利用する。すなわち
、本発明者は、細菌のホスホトランスフェラーゼ(pts)系、ピルビン酸ギ酸リアーゼ(pfl)系、および乳酸脱水素酵素(ldh)系に変化が存在する場合に、そのような細菌が本発明のコハク酸生産プロセスに使用するのに適していることを見出した。pflABおよびldhAは、ピルビン酸:ギ酸リアーゼおよび発酵の乳酸脱水素酵素をそれぞれコード化する遺伝子である。
したがって、本発明の発酵プロセスに利用される生物体のタイプに対する唯一の制限は、生物体が元々上記の系を備えていなければならないということである。それらの系に変化を本来的に含んでいる生物体(すなわち自発変異体)や、特異的に変化された生物体を、利用することができる。
細菌が変化される例では、コハク酸収率が全く無いか低い(すなわち供給された成長基質1モル当たり0.5モル未満)発酵菌が、コハク酸収率の高い(すなわち供給された成長基質1モル当たりコハク酸1モル以上)菌に変換される。
発酵でコハク酸を生産できるいかなる細菌も形質導入の候補として適しており、それにはグラム陰性およびグラム陽性の発酵菌が含まれるが、これらに限定されるわけではない。好ましくは、適切な菌株には、大腸菌属(E.coli)、クレブシェラ属(Klebsiella)、エルウィニア属(Erwinia )および乳酸桿菌属(Lactobacillus )属が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
3つのノックアウトを含むよう変化される生物体は、バクテリオファージP1を使用して、連続的な形質導入により改変される。標準的なP1形質導入プロトコルが利用されるが、代表的なプロトコルはJ.H.Miller, ed. Experiments in Molecular Genetics 1972(Cold Spring Harbor Laboraory, Cold Spring Harboor, N.Y. )に開示されている。この文献は参照により本明細書に組み込む。この方法を使用して、野生型または野生型に近い細菌株(例えば大腸菌のC600菌株;ATTC受入番号第23724)を使用して、pfl、ldh、ptsGから選択された1つ、2つまたは3つの機能遺伝子を欠く変異体亜株を作成することができる。
本発明で使用することができた3つの突然変異を含む大腸菌菌株の一例を、AFP 184(AFP=代替原料プログラム)と命名した。AFP 184は、野生型に近い大腸菌株に計画的に挿入されたpfl欠失、ldhノックアウト、および、ptsGの異なる変異型を有している。AFP 415と呼ばれる別の菌株も使用可能である。AFP 415は、ptsGのノックアウトを有している点でのみAFP 184と異なる。AFP
415はAFP 184と同様に機能する。
驚いたことに、また、思いがけず、本発明者は、AFP 184およびAFP 415の代謝速度および力価(titer )が、米国特許第5,770,435号(現再発行出願第09/429,693号)および米国特許第6,159,738号に開示されているW1485派生体よりも優れていることを見出した。
表1は、AFP 184とW1485派生体(AFP 111)によるコハク酸生産の比較を提供する。W1485派生体はかなり精製された原料を利用したが、それでもAFP 184の方が工業用グレードの加水分解物を用いてより高い値を与えたことに注目すべきである。
3つのノックアウトをすべて含む突然変異は、遺伝子異常のうちの1つまたは2つを既に含む細菌を利用し、次に残りのノックアウトを引き起こすことによっても生成可能である。この例では、実行可能な開始生物体はW1485(ATCC受入番号第12435)
である。AFP 400は計画的に作成された3重ノックアウトである。AFP400はAugust Bock によるpfl欠失を含み、これはイリノイ大学のDavid Clark によりW1485に挿入され、FMJ 123を生成する。FMJ 123はP.K.Bunch et al.(1997)Microbiology 143, 187-195 で見出されたプロトコルに従って作製される。この文献は参照により本明細書に組み込む。AFP 400は、やはりClark により作成されたldhAノックアウトを含み、これはFMJ123に挿入され、DC1327を生成する。DC1327はChatterjee et al, Appl. Environ.Microbiol.67, pp148-154 で見出されたプロトコルに従って作製される。この文献は参照により本明細書に組み込む。Chatterjeeの文献で説明されているように、AFP 400はptsGノックアウトを含んでいる。
Figure 2006505276
菌株C600に3つのノックアウトを導入することにより、3重ノックアウトAFP404も構築された。AFP404は、ptsG遺伝子の点変異ではなくptsGノックアウトを有する点を除いて、AFP184に類似している。AFP404も、約1mol/molのグルコースの収率でコハク酸を生産する。
野生株からの3重突然変異の開発のためのプロトコルは、R.Chatterjeeらの文献に同様に見出される。各ノックアウトの存在を示す典型的な抗生物質マーカとしては、Cam、Tet、およびKanが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ノックアウトおよび抗生物質マーカを含む新たな大腸菌株であるAFP 400およびAFP 404は、このように生成した。そのプロトコルは以下の通りである。
(挿入による不活性化ptsG遺伝子の構築および導入)
大腸菌の天然のptsG遺伝子を、該ptsG遺伝子のタンパク質のN末端とC末端をターゲットとするプライマーを使用して、W1485から調製したゲノムDNAからPCRによりクローニングした。追加のゲノム配列は増幅しないようにした。ptsG遺伝子をpJJ118EHベクトルに入れてクローニングし、pJFptsGを生じた。EcoRIで切除したpUC−4K(Pharmacia 社)のカナマイシン抵抗カセットを、pJFptsG中のptsG遺伝子のMfeI部位に挿入することにより、該遺伝子を分断し、プラスミドpTSGKを生じた。NZN 111は既にカナマイシン抵抗マーカを含んでいるため、SE1752菌株からのTn10不活性化ldhA遺伝子をFMJ123に形質導入することにより、等価な菌株を構築した。得られた菌株であるDC1327は、その生理学的特性がNZN 111と判別不能であった。分断されたptsG遺伝子は、pTSGKで細胞を形質転換することによりDC1327に移入された。細胞を、カナマイシンの存在下かつアンピシリンの不在下で約30世代増殖し、次に、グルコースを含むLBプレート上に培養物を播き、嫌気的にインキュベートした。発酵で成長できたコロニーを精製し、2つの抗生物質に対するその感度をスクリーニングした。
AFP400菌株は、グルコースをコハク酸、酢酸およびエタノールに発酵させる、安定なカナマイシン耐性かつアンピシリン感受性の菌株として単離された。分断されたpt
sG遺伝子の適切な統合はPCRにより確認された。分断された遺伝子は、該遺伝子のコード領域の外側の約110塩基対のフランキング配列に一致するプライマーを使用して、AFP400 DNAから増幅した。それらの配列は、組み込みベクター中には存在しなかった。得られた産物の大きさは3.0kbであり、これは既知のptsG配列、そのフランキング領域、およびカナマイシン挿入断片から予測された通りであった。産物をClaI(カナマイシンカセット中の部位)およびAgeI(ptsGの中の部位)で消化し、ptsGのMfeI部位にカセットを挿入するために期待された断片を生成した(ClaIに対し1.95および1.05kb、AgeIに対し2.3および0.7kb)。
3つのノックアウトを含むさらに別の菌株であるAFP404も、上記の同じプロトコルを使用して、野生型大腸菌K12に近い菌株であるC600から得られる。
ノックアウトの位置は、前掲の文献で既に論じた本発明者の以前の研究(米国特許第6,159,738号およびChatterjeeら)から既に分かっている。ノックアウトは、抵抗マーカを有するノックアウト遺伝子のコピーを細胞に挿入することにより導入される。相同組換えの発生が許容され、これは宿主酵素により促進される。次に、マーカを含む染色体が選択される。ptsGノックアウトはこのように導入された。PCRによるその挿入の証拠は、先に参照によって組込んだChatterjeeらの文献に詳述されている。
(成長の詳細)
本発明者によって作られた3重変異生物体は、偏性嫌気性菌ではない。従って、バイオマスの最初の蓄積は好気的に起こり、その後発酵条件が確立される。この2段階(すなわち、好気性の後に嫌気性)プロセスのプロトコルの利点は図2に示してあり、図2において、コハク酸の生産速度は図1の1段階の嫌気性プロトコルの成長曲線と比較して、はるかに大きくなっている。
一般に、バイオマスが細胞約108 〜1011個/mL(または約2〜5g乾燥細胞重量/L)の等価点に達すると、発酵槽は嫌気性になる。研究室では、約6時間後にこの濃度の点に到達した。
工業用のプロトコルでは、発酵槽には、軽度浸漬水とリグノセルロース加水分解物とが装填される。抗生物質は必要な場合には以下の濃度で含めた:カルベニシリン 100μg/ml、カナマイシン 30μg/ml、テトラサイクリン 10μg/ml、クロラムフェニコール 30μg/ml。濃縮ブロス(rich broth)は(1リットル当たり)以下を含んでいた:トリプトン 10g、NaCl 5g、および酵母エキス 1g。プレート用の固体培地は1.5パーセント(wt/vol)Difco Bacto-Agarを含んでいた。最少培地EをVogel, H.J.1956 Acetylornithinase in E.coli, J. Biol, Chem. 218:97-103に記述されるように調製した。この文献は参照により本明細書に組み込む。
発酵のための実験条件は以下の通りとした:
発酵による成長を、0.5gのMgCO3 (発酵中に培地のpHを維持するために添加)、抗生物質、および約10g/Lのグルコースを補足した10mlのLB培地を含む密封した血清チューブ中で行なった。多くの成長基質が利用可能であり、それには糖、糖アルコール、糖酸およびそれらの組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。以下の糖を嫌気性成長について5g/L濃度のグルコースの代わりに試験した:トレハロース、マンノース、フルクトース、ソルビトールおよびグロクロン酸。
嫌気性液体培養用の接種原を、抗生物質を補足したLB培地中で菌株を一晩好気的に成長させることにより準備した。一晩培養物のサンプルを新しい培地に100倍に希釈し、約1のA600になるまで好気的に成長させた。好気性成長培地には1mlの接種原を接種した。
サンプルを、残っているグルコース(または代わりの糖基質)と生成した発酵産物のレベルの分析のために、適時に密封チューブから無酸素下で除去した。固体培地での嫌気的成長のために、寒天プレートをGas-Pak の使用によって生成したH2 −CO2 雰囲気下で嫌気瓶中で37℃でインキュベートした。
β−ガラクトシダーゼ活性のプレート分析を使用して、菌株中に正常な異化代謝抑制が存在するか否かをテストした。LBまたはE−アガー培地は、利用可能ないくつかの培地のうちの2つである。E−アガー培地はよく使用される最少栄養培地であり、Vogel, H.J.1956 Acetylornithinase in E.coli, J. Biol, Chem. 218:97-103に記述されている。この文献は参照により本明細書に組み込む。典型的なプロトコルでは、LBまたはE−アガー培地は、グルコース 4g/L、ラクトース 4g/L、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド(X−gal) 3mg/L、および抗生物質で補足される。これらの培地を以下、X−gal/グルコースアガーと称する。青いコロニーの形成は、正常な異化代謝抑制が欠如するためにグルコースの存在下でβ−ガラクトシダーゼが発現していることを示した。反対に、白いコロニーの形成は、正常な異化代謝抑制が存在し、したがって二糖類であるラクトースを開裂させるβ−ガラクトシダーゼが存在しないことを示した。
本発明者は、連続プロセスで変異体を利用する方法についても考案した。培養物が約50g/Lのコハク酸を生産した後で、1mLの混合物をLB培地、グルコースおよびMgCO3 を含む新鮮な封入物(enclosure )に加えるという、反復実験を行なった。この新しい接種原はコハク酸を効果的に生産し続けた。このプロセスを3−4回繰り返し、各回でコハク酸を効率的に生産した。
(実施例1−工業用加水分解物を用いたコハク酸の生産)
AFP 184を、稲わら由来の実際の加水分解物を備えた発酵槽に入れた。典型的な加水分解物は、商業的に調製されたものであり、濃酸加水分解プロセスによりカリフォルニア州ミッションヴィエホ(Mission Viejo )のArkenol Inc.社より入手可能なものである。稲わら培地は2つの主な糖成分として約600g/Lのグルコースと169g/Lのキシロースを含み、それに追加して他の糖を少量含んでいた。実験データを表2および図2に示す。
以下はAFP 184に基づく発酵プロセスのプロトコルである:発酵培地は以下の成分を含んでいた:Difco 酵母エキス 5g/L、トリプトン 10g/L、(NH4 2 SO4 2g/L、MgSO4 ・7H2 O 0.2g/L、NaCl 10g/L、K2 HPO4 7g/L、KH2 PO4 3g/L、Arkenol の加水分解物 16.5mg/Lおよびカナマイシン 30mg/L。工業用の加水分解物は、2つの主な糖成分として約600g/Lのグルコースと169g/Lのキシロースを含み、それに追加して他の糖を少量含んでいた。抗生物質以外の成分をすべてを備えた培地を20分間、121°Cでオートクレーブした。その後、冷却後にカナマイシンを加えた。この発酵培地を、接種原フラスコおよび1リットルの発酵槽の両方のために使用した。
接種原については、50mgの培地を250mgのフラスコに入れ、30%のグリセリン中で−70°Cで維持しておいた0.2mgのAFP 184保存培養物で接種した。フラスコは37℃、250rpmでインキュベータ振とう機で一晩(約16時間)インキュベートした。その後、フラスコ内容物全体を、37°Cで維持した発酵槽に接種するために使用した。発酵槽中の培地は生物体の速い成長を許容するために空気に曝した。6時間後、必要な細胞量に達成したら、以下の処置を取った:1.嫌気条件を働かせるために空気を遮断した。これによりコハク酸の生産が開始したと思われる。2.0.03mg/分の割合で培地に炭酸ガスを散布した。3.キシロースとグルコースで合計500g/Lの濃度となるよう脱イオン水で希釈したArkenol加水分解物を含む原料溶液を、発
酵槽に加え、発酵培地中、50g/Lの糖の合計濃度を達成した。実験の間に、発酵槽中の糖度が低くなると、コハク酸生産に十分な基質を供給するために、より多くの材料を添加した。細胞がコハク酸を生産するにつれてpHは低下した。pHは、自動pH調整機の作用により、1.5M Na2 CO3 溶液を添加することによりpH 6.5に維持した。サンプルを一定間隔で採取し、光学濃度、グルコース、キシロース、コハク酸、酢酸、乳酸およびエタノールについて分析した。
Figure 2006505276
(実施例2−合成糖混合物からのコハク酸の生産)
AFP 184を合成糖原料と組み合わせて利用して、発酵プロトコルを進行させた。図3に表されるように、コハク酸の生産は80時間までは迅速であるが、約140時間後に60g/Lの最終高さに達する前までは幾分平坦であった。
発酵培地は以下の成分を含んでいた:Difco 酵母エキス 5g/L、トリプトン 10g/L、(NH4 2 SO4 2g/L、MgSO4 ・7H2 O 0.2g/L、NaCl 10g/L、K2 HPO4 7g/L、KH2 PO4 3g/L、グルコース 7.
6g/L、キシロース 1.85g/Lおよびカナマイシン 30mg/L。抗生物質以外の成分をすべてを備えた培地を20分間、121℃でオートクレーブした。その後、冷却後にカナマイシンを加えた。この発酵培地を、接種原フラスコおよび1リットルの発酵槽の両方のために使用した。接種原については、50mgの培地を250mgのフラスコに入れ、30%のグリセリン中で−70°Cで維持しておいた0.2mgのAFP184保存培養物で接種した。フラスコは37℃、250rpmでインキュベータ振とう機で一晩(約16時間)インキュベートした。その後、フラスコ内容物全体を、37℃で維持した発酵槽に接種するために使用した。
発酵槽中の培地は生物体の速い成長を許容するために空気に曝した。6時間後、必要な細胞量に達成したら、以下の処置を取った:1.嫌気条件を働かせるために空気を遮断した。これによりコハク酸の生産が開始したと思われる。2.0.03mg/分の割合で培地に炭酸ガスを散布した。3.400g/Lのグルコースと84g/Lのキシロースを含む原料溶液を発酵槽に加え、発酵培地中、50g/Lの糖の合計濃度を達成した。
実験の間に、発酵槽中の糖度が低くなると、コハク酸生産に十分な基質を供給するために、より多くの材料を添加した。細胞がコハク酸を生産するにつれてpHは低下した。pHは、自動pH調整機の作用により、1.5M Na2 CO3 溶液を添加することによりpH 6.5に維持した。サンプルは一定間隔で採取し、光学濃度、グルコース、キシロース、コハク酸、酢酸、乳酸およびエタノールについて分析した。
以下の表3および図3は、合成糖混合物の利用により生じたコハク酸生産を示す。
実施例1と実施例2を比較すれば留意されるように、工業用加水分解物が使用された時と合成原料が使用された時とでは、変異体によるコハク酸生産は等価であった(表2および3の120および122の時点をそれぞれ参照のこと)。この結果は、工業用加水分解物にいかなる有毒物質が内在してもそれがコハク酸収率を低下させないという点で、本発明のプロトコルの丈夫な特徴を示している。
Figure 2006505276
本発明を、例証した実施態様の詳細を参照しながら説明してきたが、これらの詳細は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を限定するものではない。
本発明の特徴による、突然変異遺伝子による細菌の形質転換後のコハク酸の生産の増強を示すグラフ。 本発明の特徴による、3重変異生物体による工業的加水分解物の発酵を示すグラフ。 本発明の特徴による、3重変異生物体による合成糖の発酵を示すグラフ。

Claims (17)

  1. 工業用グレードの加水分解物からコハク酸を生産する方法であって、
    a)ptsG、pflBおよびldhA遺伝子に突然変異を含む生物体を供給する工程;
    b)前記生物体にバイオマスを蓄積させる工程;および
    c)前記生物体に加水分解物を代謝させる工程;
    から成る方法。
  2. 生物体は、大腸菌属、クレブシェラ属、エルウィニア属および乳酸桿菌属から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. バイオマスは細胞約108 〜1011個/mLの間で蓄積する、請求項1に記載の方法。
  4. 工業用グレードの加水分解物は、リグノセルロース加水分解物またはトウモロコシ由来の糖液である、請求項1に記載の方法。
  5. 温度は約25℃から約45°Cの間で選択される、請求項1に記載の方法。
  6. バイオマスは好気性雰囲気で蓄積する、請求項1に記載の方法。
  7. pHは約5から約9の間で選択される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記加水分解物は第1の原料量で含まれており、前記方法は第2の原料量を添加して連続的に行われる、請求項1に記載の方法。
  9. 前記第2の原料量は、コハク酸濃度が約50g/Lの時に添加される、請求項9に記載の方法。
  10. 0.6:1から1.3:1の間のコハク酸対基質の比で工業用グレードの加水分解物に含まれる基質からコハク酸を生産することを特徴とする細菌変異体。
  11. 基質は、グルコース、ラクトース、ソルビトール、キシロース、アラビノース、マンノース、グロクロン酸、ガラクトース、フルクトースまたはそれらの組み合わせから選択された糖である、請求項10に記載の変異体。
  12. 変異体が、無効なホスホトランスフェラーゼ系、無効なピルビン酸ギ酸リアーゼ系、および無効な乳酸脱水素酵素系を有する、請求項10に記載の変異体。
  13. 無効なホスホトランスフェラーゼ系は点変異の結果である、請求項12に記載の変異体。
  14. 変異体はコハク酸を同時に生産するために、1よりも多くの基質を利用することができる、請求項10に記載の変異体。
  15. ptsG、pflBおよびldhA遺伝子に突然変異を含む、請求項10に記載の変異体。
  16. 前記変異体は、大腸菌属、クレブシェラ属、エルウィニア属および乳酸桿菌属から選択される、請求項10に記載の変異体。
  17. 前記変異したptsG遺伝子はその正常状態には戻らない、請求項15に記載の変異体。
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