JP2006351401A - 燃料電池用電解質膜 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、燃料電池用電解質膜に関する。
燃料電池は、燃料と酸化剤を電気的に接続された2つの電極に供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。火力発電とは異なり、カルノーサイクルの制約を受けないので、高いエネルギー変換効率を示すものである。燃料電池は、通常、電解質膜を燃料極及び酸化剤極で挟持した基本構造を有する単セルを複数積層して構成されており、中でも、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いた固体高分子電解質型燃料電池は、小型化が容易であること、低い温度で作動すること、などの利点があることから、特に携帯用、移動体用電源として注目されている。
固体高分子電解質型燃料電池では、水素を燃料とした場合、燃料極では(2)式の反応が進行する。
H2 → 2H+ + 2e- ・・・(2)
(2)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、酸化剤極に到達する。そして、(2)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、固体高分子電解質膜内を燃料極側から酸化剤極側に移動する。
H2 → 2H+ + 2e- ・・・(2)
(2)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、酸化剤極に到達する。そして、(2)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、固体高分子電解質膜内を燃料極側から酸化剤極側に移動する。
一方、酸素を酸化剤とした場合、酸化剤極では(3)式の反応が進行する。
2H+ + (1/2)O2 + 2e- → H2O ・・・(3)
2H+ + (1/2)O2 + 2e- → H2O ・・・(3)
固体高分子電解質型燃料電池では、(2)式及び(3)式の主反応以外にも副反応が起こり、過酸化水素が生成する。過酸化水素(H2O2)は、主に燃料極及び酸化剤極で生成する。燃料極では高分子電解質膜を通過して燃料極側へ移動してきた酸素と燃料極に供給された水素が反応して、一方、酸化剤極では高分子電解質膜を通過したプロトンと酸化剤極に供給された酸素分子とが反応して、過酸化水素が生成すると考えられており、例えば、下記(4)式の反応が起こるとされている。
2H+ + O2 + 2e- → H2O2 ・・・(4)
2H+ + O2 + 2e- → H2O2 ・・・(4)
生成した過酸化水素は、ヒドロキシラジカル(・OH)や過酸化物ラジカル(・OOH)等の酸化力の強いラジカルを発生させる。これらのラジカルは、固体高分子電解質膜へと移動すると、固体高分子電解質膜に含まれるイオン交換樹脂から水素やフッ素等を引き抜いたり、高分子鎖を切断することにより、固体高分子電解質膜の劣化を引起こす。
最近、このような固体高分子電解質膜の劣化を防止するため、燃料電池内で発生したラジカル種を捕捉する作用を有する酸化防止剤を、固体高分子電解質膜に含有させることが試みられている。例えば、特許文献1には、主鎖及び/又は側鎖に芳香族基を有する重合体のスルホン化物と、複数のフェノール基を有する化合物からなる酸化防止剤とを含む高分子電解質膜が記載されている。また、特許文献2には3価のリン系酸化防止剤を含有する高分子電解質膜が記載され、特許文献3には硫黄系酸化防止剤を含有する高分子電解質膜が記載されている。
これらの特許文献に記載の酸化防止剤は、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂に代表されるフッ素系イオン交換樹脂を含む固体高分子電解質膜よりも、主に、該フッ素系イオン交換樹脂以外の、例えば、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリ(4−フェノキシベンゾイル−1,4−フェニレン)(S−PPBP)等を含む非フッ素系固体高分子電解質膜を対象としたものである。
そのため、特許文献1〜3に記載の酸化防止剤は、上記したようなフッ素系イオン交換樹脂以外のイオン交換樹脂との相溶性は良好であるが、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂に代表されるフッ素系イオン交換樹脂との相溶性は著しく低く、フッ素系イオン交換樹脂と混合しても相分離してしまう。これは、これら酸化防止剤とフッ素系イオン交換樹脂との分子間相互作用が非常に低く、また、これら酸化防止剤の多くが分子量の大きい化合物若しくはポリマーであるためにフッ素系イオン交換樹脂の分子間に入り込みにくいからである。このようにイオン交換樹脂と酸化防止剤が相分離してしまうと成膜性が低くなり、また、得られる電解質膜は膜形状を保持しにくいものとなる。さらには、充分な酸化防止効果が得られない場合がある。
また、上記ラジカルによる電解質膜の劣化は、フッ素系イオン交換樹脂を含む固体高分子電解質膜よりも非フッ素系固体高分子電解質膜の方が、その度合いが比較的大きいことから、現在電解質膜に添加する酸化防止剤として提案されているものは、非フッ素系固体高分子電解質膜用のものがほとんどである。
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、フッ素系イオン交換樹脂との相溶性に優れた酸化防止剤を含有させることによって、過酸化水素より発生するラジカルによるフッ素系イオン交換樹脂の劣化(分解)を防止し、且つ、十分な成膜性及び形状保持性を有する燃料電池用電解質膜を提供することを目的とする。
本発明により提供される燃料電池用電解質膜は、フッ素系イオン交換樹脂と、下記式(1)で表されるフェノール系低分子化合物を含有することを特徴とするものである。
(式中、X1は、それぞれ独立してH、CH3、OCH3、又はCH3-n(CH3)nのいずれかであり、X2は、H、CH3、OCH3、CH3-m(CH3)m、又はOHのいずれかである。X1は互いに異なっていても、同一であってもよい。n、mは、それぞれ1〜3の数である。)
本発明の燃料電池用電解質膜は、上記式(1)で表される酸化防止剤を含有するため、過酸化水素より発生するラジカルによってフッ素系イオン交換樹脂が劣化することを防止することができる。しかも、本発明において酸化防止剤として使用する上記式(1)のフェノール性低分子化合物は、フッ素系イオン交換樹脂との相溶性に優れるものであることから酸化防止効果が高い。さらに、酸化防止剤とフッ素系イオン交換樹脂の相溶性が高いことにより、本発明の燃料電池用電解質膜は、優れた成膜性と膜形状の保持性を有するものである。また、酸化防止剤であるフェノール系低分子化合物が電解質膜中に規則的に配列し、且つ、相互作用によって互いに引き合うために、電解質膜の膨潤が抑制されることも期待できる。
燃料電池用電解質膜の耐酸化性及び成膜性の観点から、前記フェノール系低分子化合物は、前記フッ素系イオン交換樹脂に対して0.05〜2重量%含有されていることが好ましい。
本発明の燃料電池用電解質膜は、良好な成膜性及び形状保持性を有すると同時に、耐酸化性に優れるものである。従って、酸化条件下に晒されても、膜形状を保持し、且つ、フッ素系イオン交換膜からのフッ素溶出等の電解質膜の劣化を抑制することができる。その結果、電解質膜の形状変化及び劣化による燃料電池の電池性能の低下を防止することが可能である。また、酸化反応が進行しやすく且つ膜形状を保持しにくい高温条件下においても、本発明の燃料電池用電解質膜は劣化しにくく、膜形状が変化しにくいことから、高温条件下における燃料電池の運転にも耐えられるものである。さらに、本発明の電解質膜は吸水時における膨潤が抑制されているため、燃料電池に組み込まれた際に電解質膜の膨潤に起因する発電性能の低下を防止することができ、安定した電力を供給することが可能である。
本発明により提供される燃料電池用電解質膜は、フッ素系イオン交換樹脂と、下記式(1)で表されるフェノール系低分子化合物を含有することを特徴とするものである。
(式中、X1は、それぞれ独立してH、CH3、OCH3、又はCH3-n(CH3)nのいずれかであり、X2は、H、CH3、OCH3、CH3-m(CH3)m、又はOHのいずれかである。X1は互いに異なっていても、同一であってもよい。n、mは、それぞれ1〜3の数である。)
従来固体高分子電解質膜に含有されてきた酸化防止剤は、フッ素系イオン交換樹脂との相溶性が低く、相分離を生じるため、十分な耐酸化防止効果が得られなかったり、成膜性や膜の形状保持性の低下を招くことがあった。そこで、本発明者は、低分子有機化合物がフッ素系イオン交換樹脂との相溶性が高いことに注目し、酸化防止機能を有する種々の低分子有機化合物とフッ素系イオン交換樹脂とを混合した複合膜を作製し、膜の成膜性、形状保持性、耐酸化性について評価を行った。その結果、上記式(1)で表される構造を有するフェノール系低分子化合物は、酸化防止機能を有すると同時にフッ素系イオン交換樹脂との相溶性が高く、式(1)で表されるフェノール系低分子化合物とフッ素系イオン交換樹脂とを複合化した複合膜が、成膜性及び充分な形状保持性を有し、且つ、耐酸化性にも優れることがわかった。
ここで、本発明において、フッ素系イオン交換樹脂とは、フルオロカーボン骨格又はヒドロフルオロカーボン骨格に置換基としてイオン交換基が導入されている樹脂であって、分子内にエーテル基や塩素や芳香族環を含んでいてもよいものである。イオン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、水酸基、ホウ酸基等の酸基が挙げられ、特に、高いプロトン伝導性を有することからスルホン酸基が好ましい。上記骨格に導入されるイオン交換基は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
なかでも、上記フッ素系イオン交換樹脂のうち、パーフルオロカーボンを主鎖骨格とし、パーフルオロエーテルや芳香族環等のスペーサーを介してスルホン酸基を有するパーフルオロカーボンスルホン酸系樹脂(式(5))は、プロトン伝導性など電解質膜に要求される特性に優れ、且つ、式(1)で表されるフェノール系低分子化合物との相溶性に特に優れることから、好適に用いることができる。
なかでも、上記フッ素系イオン交換樹脂のうち、パーフルオロカーボンを主鎖骨格とし、パーフルオロエーテルや芳香族環等のスペーサーを介してスルホン酸基を有するパーフルオロカーボンスルホン酸系樹脂(式(5))は、プロトン伝導性など電解質膜に要求される特性に優れ、且つ、式(1)で表されるフェノール系低分子化合物との相溶性に特に優れることから、好適に用いることができる。
式(5)中、a、b、x、yは、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を構成する各基の数であり、それぞれ特に限定されるものではない。例えば、プロトン伝導性電解質膜として一般的に使用されているナフィオン(商品名、デュポン製、a≧1、b=2、x=5〜13.5)、アシプレックス(商品名、旭化成製、a=0.3、b=2〜5、x=1.5〜14)、フレミオン(商品名、旭化成製、a=0.1、b=1〜5)等のパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂もこれに含まれる。
本発明において酸化防止剤として用いられる式(1)で表されるフェノール系低分子化合物は、低分子であるためにフッ素系イオン交換樹脂の分子間に入りやすく、フッ素系イオン交換樹脂との相溶性に優れる。そのため、フッ素系イオン交換樹脂と混合した際に相分離を生じない。その結果、充分な酸化防止効果を発現すると同時に成膜性に優れた燃料電池用電解質膜を得ることが可能となる。
さらに、上記式(1)で表される酸化防止剤は、電解質膜中において規則的に配列し、且つ相互作用によって互いに引き合うために、電解質膜の膨潤を防止することができる。燃料電池内における電解質膜の膨潤は、電解質膜のシワや割れの発生及び電解質膜と電極間の剥離を招き、電解質膜の低寿命化や燃料電池の発電性能低下の原因となる。従って、膨潤が抑制された本発明の燃料電池用電解質膜は、耐久性に優れ、また、本発明の電解質膜を用いた燃料電池によれは安定した電力を供給することが可能である。
さらに、上記式(1)で表される酸化防止剤は、電解質膜中において規則的に配列し、且つ相互作用によって互いに引き合うために、電解質膜の膨潤を防止することができる。燃料電池内における電解質膜の膨潤は、電解質膜のシワや割れの発生及び電解質膜と電極間の剥離を招き、電解質膜の低寿命化や燃料電池の発電性能低下の原因となる。従って、膨潤が抑制された本発明の燃料電池用電解質膜は、耐久性に優れ、また、本発明の電解質膜を用いた燃料電池によれは安定した電力を供給することが可能である。
式(1)において、X1は、それぞれ独立してH、CH3、OCH3、又はCH3-n(CH3)nのいずれかであり、2つのX1は互いに異なっていても、或いは同一であってもよいものである。中でも、フッ素系イオン交換樹脂との相溶性及び酸化防止効果の観点から、X1は2つとも、CH3、OCH3、又はC(CH3)3(t−ブチル)のいずれかであることが好ましい。これらのアルキル置換基を有することにより、アルキル置換基間のファンデルワールス力によってフッ素系イオン交換樹脂との相溶性が向上し、また、置換基効果によってラジカルを捕捉する機能が向上するからである。
また、式(1)において、X2は、H、CH3、OCH3、C(H)3-m(CH3)m、又はOHのいずれかであり、中でも、H、CH3、OCH3、又はC(CH3)3のいずれかであることが好ましい。X2としてアルキル置換基を有さない、すなわち、X2がHの場合、式(1)のフェノール系低分子化合物がフッ素系イオン交換樹脂の分子間に入り込みやすくなり、フッ素系イオン交換樹脂との相溶性が高くなるからである。一方、上記アルキル置換基(CH3、OCH3、又はC(CH3)3)を有することにより、ファンデルワールス力によるフッ素系イオン交換樹脂との相溶性が向上し、また、置換基効果によるラジカル補足機能が向上するからである。
本発明の燃料電池用電解質膜には、式(1)で表されるフェノール系低分子化合物が、フッ素系イオン交換樹脂に対して、0.01〜10重量%、特に0.02〜5重量%、さらに0.05〜2重量%含有されることが好ましい。フッ素系イオン交換樹脂に対するフェノール性低分子化合物の含有量を0.01重量%以上とすることにより、燃料電池用電解質膜に充分な耐酸化性を付与することができる。一方、フッ素系イオン交換樹脂に対するフェノール性低分子化合物の含有量を10重量%以下とすることにより、フェノール性低分子化合物が結晶化することによる成膜性の低下を防止することができる。
式(1)で表されるフェノール系低分子化合物は、燃料電池用電解質膜中に1種のみ含有されてもよいし、或いは、2種以上を組み合わせて含有されてもよい。
式(1)で表されるフェノール系低分子化合物は、燃料電池用電解質膜中に1種のみ含有されてもよいし、或いは、2種以上を組み合わせて含有されてもよい。
本発明の燃料電池用電解質膜は、上記フッ素系イオン交換樹脂及びフェノール系低分子化合物の他、例えば、上記フッ素系イオン交換樹脂以外のイオン交換樹脂、その他の高分子材料、上記フェノール系低分子化合物以外の酸化防止剤、その他の添加剤等を必要に応じて適宜含有していてもよい。
ここで、本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法について説明する。まず、フッ素系イオン交換樹脂を、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類や水等を適宜組み合わせた溶媒中に溶解又は分散させて電解質溶液とする。次にこの電解質溶液に、フッ素系イオン交換樹脂に対して適量の、好ましくは0.01〜10重量%の式(1)で表されるフェノール系低分子化合物、及び必要に応じてその他の成分を溶解又は分散させる。そして、得られた溶液を基板等の表面に流延、乾燥することによって形成することができる。尚、本発明の燃料電池用電解質膜の製造方法は、これに限定されない。
本発明の燃料電池用電解質膜は、主成分であるフッ素系イオン交換樹脂と、酸化防止剤である式(1)で表されるフェノール系低分子化合物との相溶性が良好であることから、成膜性、形状保持性に優れ、且つ、充分な耐酸化性、特にフッ素系イオン交換樹脂からのフッ素溶出を防止する効果を有するものである。
従って、フッ素系イオン交換樹脂の劣化及び電解質膜の形状変化に起因するイオン交換機能の低下、すなわち燃料電池の電池性能の低下を防止することが可能である。また、本発明の燃料電池用電解質膜は、高温においても、膜の形状を保持することができると同時に耐酸化性を示すため、高温条件下(例えば、80〜100℃以上)で運転される燃料電池にも好適に使用される。
従って、フッ素系イオン交換樹脂の劣化及び電解質膜の形状変化に起因するイオン交換機能の低下、すなわち燃料電池の電池性能の低下を防止することが可能である。また、本発明の燃料電池用電解質膜は、高温においても、膜の形状を保持することができると同時に耐酸化性を示すため、高温条件下(例えば、80〜100℃以上)で運転される燃料電池にも好適に使用される。
本発明の燃料電池用電解質膜は、代表的には燃料電池を構成する電解質膜として用いられるが、その他の分野においても利用可能である。燃料電池用電解質膜として用いる場合には、一般的な固体高分子電解質膜のように、通常、その両面を触媒層とガス拡散層とからなる電極により挟持され、膜−電極接合体とすることができる。この膜−電極接合体は、さらにその外側にセパレータを設け、当該セパレータと膜−電極接合体とで燃料及び酸化剤流路を画成して燃料電池用セルとし、燃料電池を構成することができる。
[電解質膜の作製]
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の10wt%アルコール溶液(商品名:Nafion、Aldrich製)33mlに、下記の表1に示す種々の低分子有機化合物を各量(3.3mmol)添加し、テフロン(登録商標)容器中で30分間攪拌して、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂と低分子有機化合物とを複合化させた。得られた低分子有機化合物/パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の複合材10mlを5cm角のテフロン(登録商標)舟形容器に静かにキャスト(流延)した。これを50℃の恒温槽内に3日間放置し、溶媒が完全に除去されたことを確認した後、50℃で24時間真空乾燥を行い、低分子有機化合物/パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂複合膜(実施例1〜4、比較例1〜4)を得た。
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の10wt%アルコール溶液(商品名:Nafion、Aldrich製)33mlに、下記の表1に示す種々の低分子有機化合物を各量(3.3mmol)添加し、テフロン(登録商標)容器中で30分間攪拌して、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂と低分子有機化合物とを複合化させた。得られた低分子有機化合物/パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂の複合材10mlを5cm角のテフロン(登録商標)舟形容器に静かにキャスト(流延)した。これを50℃の恒温槽内に3日間放置し、溶媒が完全に除去されたことを確認した後、50℃で24時間真空乾燥を行い、低分子有機化合物/パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂複合膜(実施例1〜4、比較例1〜4)を得た。
また、上記と同じパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂のアルコール溶液そのものを、5cm角のテフロン(登録商標)舟形容器にキャストし、上記と同様にしてパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜(比較例5)を作製した。
また、実施例の膜と同様の方法にて、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂と1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンとを複合化し、得られた複合材を船形容器にキャスト、乾燥して、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン/パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂複合膜(比較例6)の作製を試みた。
得られた複合膜、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜(以下、まとめて電解質膜という)をテフロン(登録商標)舟形容器から慎重に剥がし、重量W1を測定した。
得られた複合膜、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜(以下、まとめて電解質膜という)をテフロン(登録商標)舟形容器から慎重に剥がし、重量W1を測定した。
[フェントン試験(耐ラジカル試験)]
テフロン(登録商標)内筒型密閉容器(以下、単に密閉容器という)に1重量%の過酸化水素水溶液30ml、1×10−3重量%のFe+2水溶液10mlを入れ、この中に上記にて作製した各電解質膜を浸漬した。続いて、密閉容器内に入れた電解質膜を80℃で4時間煮沸した。煮沸終了後、密閉容器内の溶液を採取し、サンプル瓶に入れた。また、密閉容器内の電解質膜はピンセットで取り出し、サンプル袋に入れ、50℃で24時間かけて真空乾燥を行った。真空乾燥後、重量W2を測定した。
テフロン(登録商標)内筒型密閉容器(以下、単に密閉容器という)に1重量%の過酸化水素水溶液30ml、1×10−3重量%のFe+2水溶液10mlを入れ、この中に上記にて作製した各電解質膜を浸漬した。続いて、密閉容器内に入れた電解質膜を80℃で4時間煮沸した。煮沸終了後、密閉容器内の溶液を採取し、サンプル瓶に入れた。また、密閉容器内の電解質膜はピンセットで取り出し、サンプル袋に入れ、50℃で24時間かけて真空乾燥を行った。真空乾燥後、重量W2を測定した。
各電解質膜のフェントン試験前後の重量から、フェントン試験後の電解質膜の重量維持率%(W2/W1×100)を算出した。重量維持率(%)は、高いほどフェントン試験におけるラジカルによる電解質膜の劣化(高分子鎖、側鎖の分解や、フッ素溶出等)の度合いが低いことを示す。表3には、3回行った重量維持率の各測定結果及びその平均値を示した。
また、フェントン試験後の密閉容器内から採取した溶液より、電解質膜からのフッ素溶出量を測定した。表3には、低分子化合物を含有していないパーフルオロカーボン酸スルホン樹脂膜(比較例5)のフッ素溶出量を100とした相対比を示している。
また、フェントン試験前及びフェントン試験後の電解質膜について、外観及び/又は触感を調べ、成膜性、耐酸化性、形状保持性を評価した。結果を表3に示す。
尚、電解質膜の外観・触感は表2に示すような基準で評価した。外観の評価が「断片化」「成膜性悪い」「粉々」であったものについては、触感を調べることができなかった。
また、フェントン試験前及びフェントン試験後の電解質膜について、外観及び/又は触感を調べ、成膜性、耐酸化性、形状保持性を評価した。結果を表3に示す。
尚、電解質膜の外観・触感は表2に示すような基準で評価した。外観の評価が「断片化」「成膜性悪い」「粉々」であったものについては、触感を調べることができなかった。
表3に示すように、低分子有機化合物として、上記式(1)で表されるフェノール系低分子化合物を含有する本発明の複合膜(実施例1〜4)は、低分子有機化合物を添加していないパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜(比較例5)と比較して、フッ素溶出量が少なく、且つ、フェントン試験前後の膜の外観及び/又は触感を同等のレベル以上に保持することができた。特に、2,6−ジメチルフェノールを添加した複合膜(実施例3)及び2,6−ジメトキシフェノールを添加した複合膜(実施例4)は、フェントン試験後においても試験前と同様の膜形状と優れた強度及び弾性を保持することができ、優れた耐酸化性と成膜性を示した。
一方、低分子有機化合物としてアニリンを含有する複合膜(比較例1)は、フッ素溶出量は少ないものの重量維持率が低かった。また、成膜性が悪く、フェントン試験前に既に部分的に小片化、粉末化しており、フェントン試験後には粉々になった。
尿素を含有する複合膜(比較例2)は、比較例5とフッ素溶出量が同じであり、また、フェントン試験前において既に脆く、フェントン試験後には断片化した。
ジエチルサルファイトを含有する複合膜(比較例3)は、比較例5よりもフッ素溶出量が少なく、また、重量維持率が高かったが、フェントン試験前において既に脆く、フェントン試験後には断片化した。
尿素を含有する複合膜(比較例2)は、比較例5とフッ素溶出量が同じであり、また、フェントン試験前において既に脆く、フェントン試験後には断片化した。
ジエチルサルファイトを含有する複合膜(比較例3)は、比較例5よりもフッ素溶出量が少なく、また、重量維持率が高かったが、フェントン試験前において既に脆く、フェントン試験後には断片化した。
イミダゾールを含む複合膜(比較例4)は、比較例5よりも重量維持率が20%以上低く、フッ素溶出量も同じであった。また、フェントン試験前において既に脆く、フェントン試験後には粉々になってしまった。
また、高分子フェノール系酸化防止剤である1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンを含む複合膜(比較例6)は、成膜時点で既に粉々の状態であり、成膜性がほとんどなく、フェントン試験を行うことができなかった。
また、高分子フェノール系酸化防止剤である1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンを含む複合膜(比較例6)は、成膜時点で既に粉々の状態であり、成膜性がほとんどなく、フェントン試験を行うことができなかった。
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2005
- 2005-06-17 JP JP2005177374A patent/JP2006351401A/ja active Pending
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