JP2006348344A - 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

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【課題】本発明は、無酸化炉方式の溶融亜鉛めっきラインを用い、従来より「不めっき」を格段に低減し、製品歩留りの向上が可能な溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】鋼板を、無酸化加熱帯及び還元焼鈍帯を順次経由させた後、亜鉛めっき浴に浸漬し、溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法を改良した。具体的には、前記無酸化加熱帯の雰囲気がCO/CO2で0.35〜0.45に、且つ該無酸化加熱帯の出側で板温が700℃以下になるように、該無酸化加熱帯の雰囲気を調整することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。この場合、前記無酸化加熱帯よりスナウトまでのライン内に蓄積するスケール量を、通過鋼板量1トン当たり4g以下に抑えると一層好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に係わり、特に、素材鋼板に無酸化加熱、還元焼鈍を順次施してから、亜鉛めっき浴に浸漬する所謂「無酸化炉方式」の連続溶融亜鉛めっきラインを用い、不めっき欠陥の極めて少ない溶融亜鉛めっき鋼板を製造する技術に関する。
最近、自動車用部材については、車体重量の軽減及び安全性の向上の観点から、鋼板にSi,Mn,Cr等の元素を添加して、その高強度化が図られている。この傾向は、主として自動車の車体用鋼板として多用される溶融亜鉛めっき鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む)についても例外でない。
かかる溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法の一つに、所謂「無酸化炉方式」の連続溶融亜鉛めっきラインを用いるものがある。それは、図1に示すように、コイル状鋼帯を巻き戻した鋼板1を、前処理工程で脱脂した後、予熱帯(記号:PHF)2、無酸化加熱帯(記号:NOF)3、還元焼鈍帯(記号:RTH)4、第二加熱帯(記号:HS)5及び冷却帯(記号:JC)6を順次配置した炉(各帯の間はシール壁で仕切られている)を経由させて、鋼板表面の清浄化及び材質確保の処置を施してから、スナウト7を介して溶融亜鉛めっき浴8に浸漬してめっきし、引き上げ後に、付着した溶融亜鉛量をエアワイパー9で調整する方法である。なお、その後、必要に応じてメッキ層を合金化炉10で加熱して合金化したものが合金化溶融亜鉛めっき鋼板である。
ところで、従来、めっき前の前記還元焼鈍帯4での雰囲気は、Feには還元性であっても、Si,Mn,Cr等の易酸化性元素は選択的に酸化されて酸化物となり、鋼板表面で所謂「濃化皮膜」を形成する。そして、該酸化物は溶融亜鉛との濡れ性が著しく悪いだけでなく、形成されためっき層との密着性も悪いため、鋼板に溶融亜鉛が付着しない所謂「不めっき」を発生する。
そこで、従来は、前記無酸化加熱帯で素材鋼板を予め加熱して鉄系酸化物を生成させ、その後、還元することによって易酸化性元素の酸化物を減少させてからめっきを行う技術が採られていたのである(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、その技術では、素材鋼板の表面を、燃料にコークス炉ガス(Cガスという)を用いたガスバーナの火炎やその排気ガスで加熱し、無酸化加熱帯内へ導入する空気量を制御して雰囲気を調整する。従って、空気量の微妙な変化で鋼板表面の鉄系酸化物の存在量等が微妙に変化し、その後に還元しても鋼板表面の清浄化が不十分なためか、「不めっき」を満足できる状態まで低減できていないのが現状である。ちなみに、製品不良の原因のうち、「不めっき」が約3.5%を占め、技術的に改良の余地が十分に残されていた。「不めっき」の低減で製品歩留りの向上が期待される。
特開昭55−122865号公報
本発明は、かかる事情に鑑み、無酸化炉方式の溶融亜鉛めっきラインを用い、従来より「不めっき」を格段に低減し、製品歩留りの向上が可能な溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することを目的としている。
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
すなわち、本発明は、鋼板を、無酸化加熱帯及び還元焼鈍帯を順次経由させた後、亜鉛めっき浴に浸漬し、溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに際し、前記無酸化加熱帯の雰囲気がCO/CO2で0.35〜0.45に、且つ該無酸化加熱帯の出側で板温が700℃以下になるように、該無酸化加熱帯の雰囲気を調整することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。この場合、前記無酸化加熱帯よりスナウトまでのライン内に蓄積するスケール量を、通過鋼板量1トン当たり4g以下に抑えるのが一層好ましい。
本発明によれば、無酸化加熱帯の雰囲気を調整するだけで、「不めっき」の発生を従来より格段に低減できる。その結果、製品歩留りが約1%向上できた。
まず、本発明の対象とする鋼板としては、成分組成を特に限定することなく、所謂「低炭素鋼板」、「極低炭素鋼板」、「Mn添加高張力鋼板」及び「Si−Mn添加高張力鋼板」等の従来より公知のものである。特に、好適には、強度向上のために、比較的多量のMnを添加したMn系高張力鋼板及びSiやMnを添加した高Si−Mn系高張力鋼板である。なお、その他にも、必要に応じて、Ti,Nb,B,Mo,Sb,P,S,C,N,Cu,Ni,CR,V及びZr等を適宜含有させても良い。また、これらの鋼板は、熱間圧延されただけの所謂「熱延鋼板」でも、その後に冷間圧延された「冷延鋼板」のいずれでも良い。
これら鋼板の製造方法について述べると、鋼鋳片としては、連続鋳造法で製造したものが経済的に有利であるが、造塊―分塊法で製造したものでも良い。また、熱間圧延の方法も特に限定するものではなく、従来から行われている方法で十分である。代表的な熱間圧延条件を挙げると、圧下率:80〜99%、圧延終了時の板温:600〜950℃、鋼帯巻取り温度:300〜750℃である。さらに、鋼板が、熱延鋼板である場合には、そのまま図1に示していない前処理工程で脱脂に供せられる。一方、鋼板が冷延鋼板である場合には、熱間圧延後に、冷間圧延を施してから脱脂に供せられる。この冷間圧延の条件も、特に限定するものではなく、常法に従って行えば良い。ただし、鋼板の集合組織[111]を有利に発達させるためには、圧下率を50〜95%とするのが好ましい。
前記脱脂は、鋼板の表面に圧延工程以前で生成した酸化物等が残存していると、その後の加熱での鉄系酸化物の生成が抑制され、不均一な酸化物の分布になるので、これを防止するために行われる。この脱脂処理は、NaOH水溶液によるアルカリ洗浄が一般的で、その濃度は、通常1〜3質量%程度であるが、不めっきの発生防止の観点からは2質量%以上とすることが好ましい。
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の最良の実施形態を説明する。
発明者は、「不めっき」の発生原因について調査を重ねた。そして、所謂「テンパーカラー(青汚れ)」が、前記NOF〜JC間で鋼板エッジ部の表裏いずれにも発生する場合に、特に「不めっき」が多いことに着眼した(全不めっきの60%がテンパーカラーと一致する)。その発生を防止できれば、かなりの低減効果が期待できるからである。
そこで、該テンパーカラーの低減対策について鋭意研究を重ねたところ、その発生原因は、無酸化加熱帯(NOF)3で生成したスケールがその後の還元焼鈍帯(RTH)4で還元しきれないためと考えられたので、該NOF3の雰囲気をもっと強還元性に調整するのが良いと考えた。
具体的には、その雰囲気がCO/CO2で従来は0.12〜0.16程度で、NOF3の出側の板温度が700℃超えになる程の高温であったが、これらの値を0.35〜0.45、且つ700℃以下にするとテンパーカラーの発生が著しく減少することを見出した。つまり、前記無酸化加熱帯3の雰囲気がCO/CO2で0.35〜0.45に、且つ該無酸化加熱帯3の出側で板温(放射温度計で測定)が700℃以下になるように、無酸化加熱帯(NOF)3の雰囲気を調整することを要件に本発明を完成したのである。この雰囲気の調整は、ガスバーナー(図示せず)の燃焼を、空気比を変更することにより調整するものである。なお、実際のラインでの操業においては、無酸化加熱帯3の出側の板温を数分〜数十分間隔で測定した同一操業条件での平均値とする。
ここで、CO/CO2が0.35〜0.45としたのは、0.35未満では、テンパーカラーの低減効果が小さく、0.45超えでは、低減効果が飽和するからである。また、板温を700℃以下としたのは、700℃を超えると酸化し易くなるため、テンパーカラーの低減に不都合だからである。なお、本発明では、還元焼鈍帯(RTH)4から冷却帯(JC)6まで及びスナウト7内の雰囲気は、特に限定するものではなく、従来通りにH2−N2又はN2の雰囲気で良い。
引き続いて、発明者は、「不めっき」の他の原因である鋼板に対するスケールの付着防止についても検討した。スケール付着に起因する不めっき(全不めっきの14%)が低減できれば、低減効果が一層向上するからである。
そこで、この不めっきの原因は、鋼板がラインを走行中に何らかの原因で炉内に堆積したスケールが該鋼板に付着することであるから、ライン内に堆積されるスケールの量の管理が必要と考えられる。発明者の調査によれば、スケール付着に起因する不めっきを低減するには、ライン内に蓄積するスケールの全量を通過鋼板量1トン当たり4g以下に抑えるのが必要であることを見出した。具体的には、スケール量の蓄積を予防するため、定期的な(例えば、1ケ月毎とか、走行鋼板量に応じた)ラインの清掃をすれば良い。清掃の手段は、現在のところ作業者の手作業が中心であるが、本発明では、機械化した自動清掃手段による場合も含める。将来の機器開発が期待されるからである。
質量%で、C:0.0020%、Si:0.02%、Mn:0.15%、P:0.02%、S:0.005%、Al:0.05%、Nb:0.003%、B:0.0004%及びTi:0.038%を含有し、残部実質的にFeの組成になる一般的な軟鋼鋳片を、1150℃に加熱後、熱間圧延により3.5mm厚の熱延鋼板とした。そして、該熱延鋼板を素材に、図1に示す連続溶融亜鉛めっきラインを用いて鋼板の走行速度60m/minとしてめっきを行い、溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。操業条件を表1に一括して示す。なお、無酸化加熱帯及び還元焼鈍帯の出側の板温は、15分間隔で放射温度計で測定した値の平均値とした。また、かくして得た溶融亜鉛めっき鋼板について、溶融めっき性、めっき密着性及び製品歩留りを調査し、その結果を表2に一括して示す。
Figure 2006348344
Figure 2006348344
なお、前記溶融めっき性は、めっき後の鋼板より任意の1試料を採取し、その外観を画像処理して、不めっき面積率を求め、以下の基準に従い評価した。評価が5、4であれば製品として合格である。
5:不めっき面積率0%
4:不めっき面積率0.1%以下
3:不めっき面積率0.1%超え〜0.3%以下
2:不めっき面積率0.3%超え〜0.5%以下
1:不めっき面積率0.5%超え
また、めっき密着性は、デュポン衝撃試験(直径:6.35mm、重量:1kgの錘を500mmの高さから鋼板上に落下させる衝撃試験)を行った溶融亜鉛めっき鋼板に、市販のセロハン粘着テープを貼り、剥がした時のめっき剥離の有無を目視によって評価した。評価基準は、以下の通りである。○:めっき剥離なし、 ×:めっき剥離あり
さらに、製品歩留りは、(めっき鋼板の製品としての合格量/製造量)×100(%)である。
表2より明らかなように、本発明で製造した溶融亜鉛めっき鋼板は、いずれも不めっきの発生が少なく、外観も美麗であった。これに対して、従来の製造条件で製造した溶融めっき鋼板は、不めっきが多量に発生したばかりでなく、めっき密着性においても劣っていた。つまり、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、従来の製造方法に比べて非常に優れており、製品歩留りの向上で、製造コストのダウンも達成できる。
なお、上記実施例は、素材鋼板を熱延鋼板とした場合であるが、それをさらに冷間圧延した場合や得られた溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層を合金化する場合にも、本発明が適用できることは言うまでもない。
溶融亜鉛めっきラインの一例を示すフロー図である。
符号の説明
1 鋼板
2 予熱帯
3 無酸化加熱帯
4 還元焼鈍帯
5 第二加熱帯
6 冷却帯
7 スナウト
8 溶融亜鉛めっき浴
9 エアワイパー
10 合金化炉

Claims (2)

  1. 鋼板を、無酸化加熱帯及び還元焼鈍帯を順次経由させた後、亜鉛めっき浴に浸漬し、溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに際し、
    前記無酸化加熱帯の雰囲気がCO/CO2で0.35〜0.45に、且つ該無酸化加熱帯の出側で板温が700℃以下になるように、該無酸化加熱帯の雰囲気を調整することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  2. 前記無酸化加熱帯よりスナウトまでのライン内に蓄積するスケール量を、通過鋼板量1トン当たり4g以下に抑えることを特徴とする請求項1記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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