JP2006342347A - 塩化ビニル系樹脂の処理方法及び前記処理方法により得られる塩化ビニル系樹脂 - Google Patents
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Abstract
【課題】廃塩化ビニル系樹脂製品を再生処理する場合において、異なる平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を含有する廃塩化ビニル系樹脂製品から別の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を回収するための方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂とを塩化ビニル系樹脂を溶解させうる溶媒に溶解して塩化ビニル系樹脂溶液を得る溶解工程と、前記塩化ビニル系樹脂溶液から第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を析出させる析出工程とを備えることを特徴とする塩化ビニル系樹脂の処理方法による。
【選択図】図2
【解決手段】 第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂とを塩化ビニル系樹脂を溶解させうる溶媒に溶解して塩化ビニル系樹脂溶液を得る溶解工程と、前記塩化ビニル系樹脂溶液から第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を析出させる析出工程とを備えることを特徴とする塩化ビニル系樹脂の処理方法による。
【選択図】図2
Description
本発明は塩化ビニル系樹脂溶液から塩化ビニル系樹脂を回収する方法及びその方法により得られる塩化ビニル系樹脂に関する。
塩化ビニル系樹脂は、塩ビ管や塩ビ継手等の管材、農業用塩化ビニルシートや防水シート等の塩化ビニルシート、壁紙基材、ワイヤーハーネス等の電線被覆、食品容器、包装、各種シーリング材などの幅広い製品に用いられている。これらの製品は、従来、使用後は埋立処理や焼却処理することにより処分していた。しかし、近年の環境問題意識の高まりから、使用済の製品をリサイクルして用いる方法が種々検討されている。
例えば、下記特許文献1には塩化ビニル樹脂を含む廃棄物から塩化ビニル樹脂を回収する方法であって、塩化ビニル樹脂を溶剤に溶解した後、不溶固形分を除去する工程、不溶固形分が除去された溶液を加熱水と接触させて溶剤を除去することにより、水中に塩化ビニル樹脂を析出させる工程、析出した塩化ビニル樹脂を水から分離する工程を含む塩化ビニル系樹脂の回収方法(以下、このように溶液中で塩化ビニル系樹脂を処理する方法を、単に、溶液処理ともいう)が開示されている。
前記のように塩化ビニル系樹脂を含有する廃棄物から溶液処理により塩化ビニル系樹脂を回収する場合、得られる塩化ビニル系樹脂の特性バラツキを小さくするためには、同じあるいは近似する性質の塩化ビニル系樹脂を含有する廃棄物を分別回収して処理することが好ましいと考えられている。
特開2002−284920号公報
しかしながら、前記溶液処理により塩化ビニル系樹脂を得る方法においては、分別回収される量の少ない種類の廃棄物は商業的に処理してもコスト的に不利になるために、処理対象になりにくいという問題がある。
また、分別回収された廃塩化ビニル系樹脂製品を溶液処理して得られる塩化ビニル系樹脂は、その平均重合度が廃塩化ビニル系樹脂製品中の塩化ビニル系樹脂の平均重合度とほぼ同一であるために、その用途が限定的になるという問題もあった。
具体的には、例えば、平均重合度800の塩化ビニル系樹脂を含有する塩化ビニル製壁紙を溶液処理して得られる塩化ビニル系樹脂の平均重合度は800程度であり、得られる塩化ビニル系樹脂は限られた用途でしか用いることができない。
また、塩化ビニル製壁紙は通常無機充填材やその他の添加剤等を含有し、このような無機充填材や添加剤等は溶液処理で完全に除去することは困難である。従って、溶液処理で分離できなかった微細な無機充填材や劣化した添加剤等が回収される塩化ビニル系樹脂に存在することがあるために、その用途はさらに限定され、例えばタイルカーペット等の床材のような高い品質特性が要求されない用途にしか有効に用いることができない。従って、前記溶液処理により、平均重合度800の塩化ビニル系樹脂を大量に回収しても、再利用の用途が非常に限定されるという問題があった。
また、このような特定の平均重合度を有する回収された塩化ビニル系樹脂を、異なる平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂とともに成形したり、溶融混練して混合して用いることも検討したが、この場合には、異なる平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂同士が均質に混合されないために多分散度の高い塩化ビニル系樹脂しか得られず、機械的強度が低かったり、成形性に乏しかったりするものしか得られなかった。
本発明は、前記問題点に鑑み、異なる平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を溶液中で均質に混合して前記平均重合度とは異なる新たな平均重合度を有し、且つ、多分散度の低い塩化ビニル系樹脂を得ることにより、廃棄物から回収される塩化ビニル系樹脂の用途を広げることを課題とする。
本発明の塩化ビニル系樹脂の処理方法は、第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂とを塩化ビニル系樹脂を溶解させうる溶媒に溶解して塩化ビニル系樹脂溶液を得る溶解工程と、前記塩化ビニル系樹脂溶液から第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を析出させる析出工程とを備えることを特徴とする。本発明によれば、第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂から、第1、第2の平均重合度とは異なる第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を回収することができる。そして、特に、塩化ビニル系樹脂として廃塩化ビニル系樹脂製品を用いる場合においては、平均重合度を調整することができるために廃塩化ビニル系樹脂製品から回収された塩化ビニル系樹脂の用途が広がるという利点がある。なお、本発明により得られる塩化ビニル系樹脂は、単に平均重合度の異なる2種の塩化ビニル系樹脂を溶融混練して得られる、それぞれの平均重合度に由来するピークを2つ有するような多分散度が高い重合度分布を有するようなものではなく、単分散または単分散に近い重合度分布を有する塩化ビニル系樹脂である。
また、前記処理方法においては、第1及び第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂として、それぞれ、廃塩化ビニル系樹脂製品中に含有される塩化ビニル系樹脂を用いることが、廃棄物を有効に利用できる点から好ましい。
また、前記処理方法においては、前記第2の平均重合度が前記第1の平均重合度の1.5〜3.5倍であることが、平均重合度の差が適度であるために、得られる塩化ビニル系樹脂の多分散度がより低くなる点から好ましい。
また、前記処理方法においては、前記第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と前記第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂の合計量中、前記第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を5〜95質量%、前記第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂95〜5質量%を含有するようにそれぞれの塩化ビニル系樹脂を溶媒に溶解することが、得られる塩化ビニル系樹脂の平均重合度の調整が容易である点から好ましい。
また、前記処理方法においては、前記析出工程が、前記塩化ビニル系樹脂溶液に塩化ビニル系樹脂に対する非溶媒を添加することにより前記第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を析出させる工程である場合には、加熱によって溶媒を除去し、塩化ビニル系樹脂を回収させる方法と比べ、析出後の塩化ビニル系樹脂中への溶媒の混入を抑制することができるために、析出後に塩化ビニル系樹脂から溶媒を除去するための処理、具体的には、得られた塩化ビニル系樹脂をさらに減圧中で加熱する処理等を必要としない点から好ましい。
また、前記処理方法においては、前記析出工程が、前記溶液にスチームを導入することにより前記第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を析出させる工程であることが、得られる塩化ビニル系樹脂の粒子径が細かくなり、ハンドリング性に優れた塩化ビニル系樹脂が得られる点から好ましい。
また、前記処理方法により得られる塩化ビニル系樹脂は、元の塩化ビニル系樹脂とは異なる平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂であり、塩化ビニル系樹脂として廃塩化ビニル系樹脂製品を用いる場合に、回収された塩化ビニル系樹脂を元の塩化ビニル系樹脂製品とは異なる性能が求められる用途に用いることができる。また、多分散性が比較的低いものが得られるために、成形加工性にも優れた塩化ビニル系樹脂である。
本発明によれば、第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂から、第1、第2の平均重合度とは異なる第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を回収することができる。そして、特に、塩化ビニル系樹脂として廃塩化ビニル系樹脂製品を用いる場合には、廃塩化ビニル系樹脂製品から回収された塩化ビニル系樹脂の用途が広がる。
本発明の塩化ビニル系樹脂の処理方法は、第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂とを塩化ビニル系樹脂を溶解させうる溶媒に溶解して塩化ビニル系樹脂溶液を得る溶解工程と、前記塩化ビニル系樹脂溶液から第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を析出させる析出工程とを備えることを特徴とするものである。
本発明における、第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂及び第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂とは、互いに平均重合度が異なる塩化ビニル系樹脂を意味し、第2の塩化ビニル系樹脂は第1の塩化ビニル系樹脂よりも平均重合度が高いものである。また、本発明においては、得られる塩化ビニル系樹脂の平均重合度を第3の平均重合度と呼ぶ。
ここで、第1の平均重合度は、平均重合度が600〜1100の範囲であり、第2の平均重合度とは1100〜2800の範囲であることが好ましい。なお、本発明における平均重合度はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定されたポリスチレン換算の数平均分子量から算出された値である。
また、前記第2の平均重合度は前記第1の平均重合度の1.2倍以上であることが好ましく、更には1.5〜3.5倍であることが、平均重合度の差が適度であるために、得られる塩化ビニル系樹脂の平均重合度の調整が容易である点から好ましい。前記第2の平均重合度が前記第1の平均重合度よりも低すぎる場合には、得られる塩化ビニル系樹脂の特性が処理される塩化ビニル系樹脂の特性に近くなるために、本発明の効果である異なる平均重合度の塩化ビニル系樹脂を混合して新たな平均重合度の塩化ビニル樹脂を得ることによる効果が充分に発現されない傾向がある。
本発明においては、前記第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂及び第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂をそれぞれ含有する廃塩化ビニル系樹脂製品を溶媒中で溶解して、異なる平均重合度の塩化ビニル系樹脂を混合するために、比較的多分散度が低い第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂が得られるという利点がある。すなわち、前記第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂及び第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を溶媒中で溶解して、異なる平均重合度の塩化ビニル系樹脂を混合することにより、両者が分子レベルで混合されて混ざり合い、多分散度の低い塩化ビニル系樹脂が得られる。なお、多分散度はGPCで算出された重量平均分子量MWと数平均分子量MNの比MW/MNで算出される。
本発明に用いられる第1及び第2の塩化ビニル系樹脂の多分散度としては、1.5〜4、好ましくは2〜3程度であることが、単一ピークに近い重合度分布の第3の塩化ビニル系樹脂が得られる点から好ましい。多分散度が前記の範囲の場合には、成形加工性と物性のバランスに優れている点から好ましい。
前記塩化ビニル系樹脂としては塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体である塩化ビニル共重合体が挙げられる。
塩化ビニルと共重合可能な単量体としては、例えば、酢酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル;セチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体等が挙げられる。
本発明においては、塩化ビニル系樹脂として廃塩化ビニル系樹脂製品に含有される塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。前記廃塩化ビニル系樹脂製品としては、塩化ビニル系樹脂を含有する製品の廃棄物、又は、重合時、コンパウンド時及び成形時等に産出される廃材等が挙げられる。
前記塩化ビニル系樹脂を含有する製品の具体例としては、例えば、塩化ビニル系樹脂含有壁紙、配管、継ぎ手などのパイプ材や雨樋、波板等の硬質塩ビ製品、農業用塩化ビニルシートや防水シート等の塩化ビニルシート、塩ビ電線被覆材、食品用塩ビ製品、玩具用塩ビ製品、衣類・履物用塩ビ製品、床材用塩ビ製品、自動車用塩ビ製品、ターポリン等から選ばれる塩ビ製品等が挙げられる。
なお、前記各種製品に用いられている塩化ビニル系樹脂の平均重合度の具体例としては、通常、例えば、塩化ビニル系樹脂含有壁紙は800〜1100、配管、継ぎ手などのパイプ材や雨樋、波板等の硬質塩ビは600〜800、農業用塩化ビニルシートは1100〜1300、塩ビ電線被覆材は1100〜1300、特殊塩ビ電線被覆材は2000〜2600、ターポリンは1100〜1300程度ある。
また、前記各種廃塩化ビニル系樹脂製品には、樹脂成分である塩化ビニル系樹脂の他に、通常、可塑剤、安定剤、充填材、着色剤、滑剤等の添加剤が含まれている。また、塩化ビニル系樹脂含有壁紙における紙基材や、被覆電線における芯線等も含有される。
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸エステルトリメリット酸エステル、ポリエステル類、トリクレジルフォスフェート(TCP)、トリオクチルフォスフェート(TOP)等のリン酸エステル等が、安定剤としては、無機塩、金属せっけん、有機スズ化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等の各種熱安定剤や各種光安定剤が、充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、クレーその他の無機充填材等が、着色剤としては各種顔料、染料等が、滑剤としては、ステアリン酸系や低分子ポリエチレン系、あるいは多価アルコールの脂肪酸エステル類等が挙げられる。
さらに、上記添加剤の他に、使用時の必要性から様々な物性改良剤が配合されている場合がある。このような物性改良剤としては塩化ビニル系樹脂に相溶する高分子材料が採用されている。物性改良剤としては、例えば、ポリメチルメタアクリル酸エステル類及びそれらの共重合体類、MBS樹脂、ABS樹脂、塩素化ポリオレフィン類、エチレン酢酸ビニル共重合体類、NBR、ポリウレタン類などが挙げられる。
本発明の方法においては、第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂とを塩化ビニル系樹脂を溶解しうる溶媒に溶解して塩化ビニル系樹脂溶液を得る溶解工程を備える。
そして、第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂との比率を適宜調整することにより、第1の平均重合度と第2の平均重合度との範囲内に含まれる第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂が得られる。
前記第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂との配合割合としては、前記第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂の合計量中、第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を5〜95質量%、第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂95〜5質量%を含有するように塩化ビニル系樹脂を配合することが好ましく、さらに得られた第3の塩化ビニル系樹脂の機械的強度等を考慮すると第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を25〜75質量%、第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂75〜25質量%を含有するように塩化ビニル系樹脂を配合することがより好ましい。前記範囲の場合には、第1及び第2の平均重合度の塩化ビニル系樹脂とは、明確に異なる性質を有する第3の平均重合度の塩化ビニル系樹脂が得られる点から好ましい。なお、塩化ビニル系樹脂として、廃塩化ビニル系樹脂製品に含有される塩化ビニル系樹脂を用いる場合には、塩化ビニル系樹脂の割合が前記割合になるように、処理する廃塩化ビニル系樹脂の配合量を調整する。
なお、前記第2の平均重合度が前記第1の平均重合度よりも高すぎる場合には、多分散度が大きくなる傾向がある。この場合には、前記第1の平均重合度と第2の平均重合度の範囲内に平均重合度を有する他の塩化ビニル系樹脂を配合して多分散度を調整してもよい。
また、第1の平均重合度と第2の平均重合度の範囲外であっても、本発明の効果を損なわない範囲で任意成分を添加してもよい。このような任意成分は第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂の合計量100質量部に対して、20質量部以下、さらには10質量部以下であることが好ましい。
一方、本発明で用いられる溶媒としては塩化ビニル系樹脂を溶解させる有機溶媒であれば特に限定なく使用することができる。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサノン等の環状ケトン類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、γブチロラクトン等の環状エステル類、N―メチルピロリドン等の環状アミド類等を単独、又は2種以上を組合わせて用いることができる。
なお、前記塩化ビニル系樹脂溶液中の塩化ビニル系樹脂の濃度としては、5〜25質量%、更には10〜20質量%程度であることが好ましい。前記割合が高すぎる場合には溶液粘度が高くなりすぎ、溶解が不均一になるおそれがあり、前記割合が低すぎる場合には処理工程の経済性がわるくなる。
前記溶液の温度は、塩化ビニル系樹脂が溶解する温度であれば特に限定されないが、不必要な熱履歴を避けるために150℃以下であり、また、溶解効率を高めるために100℃以上であることが好ましい。また、溶解工程としては予め加熱された前記溶媒中に2種以上の塩化ビニル系樹脂を投入してもよく、また、加熱前の前記溶媒中に2種以上の塩化ビニル系樹脂を投入した後、前記溶媒を加熱してもよい。
溶解工程は、溶媒及び塩化ビニル系樹脂の投入口、攪拌機、温度制御装置等を備えた溶解槽で行なわれる。
溶解工程は、第1及び第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂が溶解するまで進められる。
溶解工程により得られる溶液中には、塩化ビニル系樹脂の他、塩化ビニル系樹脂として廃塩化ビニル系樹脂製品を用いる場合には、その製品中に含まれている溶媒に溶解する成分、例えば可塑剤等の成分が含まれている場合がある。さらに、前記製品が充填材等の溶媒不溶分を含有する場合には溶液中で前記不溶分が分散している場合がある。
また、本発明の処理方法においては、溶解工程又は析出工程において塩化ビニル系樹脂用の添加剤等を添加してもよい。このように、前記添加剤等を添加することにより、析出する塩化ビニル系樹脂中に添加剤等を均質に分散させた塩化ビニル系樹脂組成物を得ることができる。
廃塩化ビニル系樹脂製品中に前記溶媒に対する不溶成分を含む場合には、溶解工程の後、不溶分を分離除去する工程が設けられる。
分離除去工程の方法は特に限られず、ろ過法、遠心分離法、沈殿法等、所望に応じて適宜選ばれる。なお、不溶成分が存在しない場合には本工程は省略できる。
次に、前記塩化ビニル系樹脂溶液から、第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を析出させる。
溶解工程で得られた溶液は、分離除去工程の後、そのまま溶解槽において析出工程を実施しても、また、別に設けられた析出槽に搬送して析出工程を実施してもよい。
析出工程における析出方法は、特に限定されず、前記溶液を加熱することにより溶媒を揮発して析出させる方法、撹拌下で前記溶液中に塩化ビニル系樹脂に対する非溶媒(例えば水)を添加することにより溶解度を低下させて析出させる方法等が適宜選ばれる。
前記撹拌下で非溶媒を添加する方法を用いる場合は、析出する塩化ビニル系樹脂が塊状で析出せずに、比較的細かい粒状で析出するために好ましい。
なお、非溶媒として水を添加する方法においては、特に、スチームや熱水として水を添加する方法が析出する塩化ビニル系樹脂の形状が細かく均一な粒状になるため好ましい。特に、溶媒の沸点が水よりも低い場合は、スチームの添加により、塩化ビニル系樹脂を析出させつつ溶媒を除去できる。
スチームで水を添加する方法は、具体的には、以下のように行なわれる。
まず、溶液中にスチームを導入して溶液とスチームを接触させることにより、溶媒に対する塩化ビニル系樹脂の溶解度が部分的に急激に低下し、また、スチームの温度により溶液中の溶媒が揮発する。本方法によれば導入されたスチームは、溶媒を揮発させるとともに、容器中で液体の水に転化され、徐々にその量が増してくることにより、塩化ビニル系樹脂を徐々に水中で析出させ、最終的に水に分散したスラリー状態の塩化ビニル系樹脂又はその組成物が得られる。なお、この場合には、スチームの温度を制御することにより析出速度を調整することができる。
また、溶媒を揮発させる際には攪拌しながら行なうことが好ましい。攪拌しながらスチームを導入することにより塩化ビニル系樹脂を微粒子状に析出させることができ、また攪拌の回転数を制御することにより粒子径を制御することができるためである。
なお、本析出工程においても析出前の溶液に、予め、前記溶解工程と同様に各種添加剤を添加してもよい。
このようにして得られる塩化ビニル系樹脂は水中に分散したスラリー状で存在する。
スラリー状の塩化ビニル系樹脂は、次の分離・乾燥工程で水から分離され、乾燥されて第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂が得られる。
前記塩化ビニル系樹脂の水からの分離の方法は特に限られない。具体的には、例えば、ろ過により分離したり、静沈して塩化ビニル系樹脂を沈降させてから水のみをポンプ等を用いて吸引除去したり、遠心脱水等の方法、あるいはそれらを組み合わせた方法等、工程上、適宜好ましいものが用いられる。
そして、水から分離された塩化ビニル系樹脂は、更に脱水・乾燥工程を経ることにより第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂が得られる。
脱水・乾燥工程の方法は、特に限られることなく、例えば遠心脱水等が用いられる。しそして連続式又はバッチ式の、熱風式乾燥機、オーブン式乾燥機、流動乾燥機、気流乾燥機、ロータリーキルン乾燥機、スプレードライヤー等により乾燥される。
このようにして得られる塩化ビニル系樹脂は平均粒子径が200〜400μm程度であるので成形加工する際のハンドリング性が良いため好ましい。
本発明の方法により得られる第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂は溶液処理により得られるために、異なる平均重合度を有する2種以上の塩化ビニル系樹脂がミクロレベルの均質さで混合されている。従って、多分散度が2〜3程度の多分散度が低い塩化ビニル系樹脂が得られる。多分散度が前記の範囲の場合には、成形加工性と物性のバランスに優れている点から好ましい。
従って、特に、本発明の処理方法を廃塩化ビニル系樹脂製品から塩化ビニル系樹脂を回収して再利用することを目的に使用すると、例えば平均重合度が異なる塩化ビニル系樹脂を含有する廃塩化ビニル系樹脂製品から、2種の廃塩化ビニル系樹脂製品に由来する塩化ビニル系樹脂が均質に混合された第3の平均重合度を有する多分散度の低い塩化ビニル系樹脂を得ることができる。
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。
本実施例においては、塩化ビニル系樹脂として、塩化ビニル樹脂含有壁紙(以下、塩ビ壁紙ともいう)、農業用塩化ビニル樹脂シート(以下、農ビシートともいう)、塩化ビニル系電線被覆材(以下、塩ビ電線被覆材ともいう)に含有される塩化ビニル系樹脂を用いた。
なお、塩ビ壁紙は、平均重合度800で多分散度2.4の塩化ビニル系樹脂37質量%、DOP20質量%、炭酸カルシウムと酸化チタンの合計43質量%からなる組成物に微量の安定剤を添加した塩化ビニル系樹脂組成物(以下、塩ビ壁紙樹脂組成物ともいう)を紙基材に被着したものである。
また、農ビシートは、平均重合度1300で多分散度2.9の塩化ビニル系樹脂60質量%、DINP40質量%からなる組成物に微量の安定剤を添加した塩化ビニル系樹脂組成物(以下、農ビ樹脂組成物ともいう)からなるものである。
さらに、塩ビ電線被覆材は、平均重合度2600で多分散度2.5の塩化ビニル系樹脂98質量%、その他の安定剤等の添加剤を2%含有する塩化ビニル系樹脂組成物(以下、塩ビ電線被覆材組成物ともいう)からなるものである。
〈実施例1〉
図1に本実施例で用いた工程図を示す。
図1に本実施例で用いた工程図を示す。
図1中、1は樹脂成分供給ホッパー、2は溶解槽、3はろ過装置、4は析出装置、5はスラリー受槽、6は乾燥機である。
塩化ビニル樹脂成分が75質量部になるように農ビ樹脂組成物 202.7質量部を含有する農ビシート、塩化ビニル樹脂成分が25質量部になるように塩ビ壁紙樹脂組成物 67.5質量部を含有する塩ビ壁紙を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ。そして、溶解槽2に前記農ビシート及び塩ビ壁紙がほぼ浸漬するように溶媒供給ライン(図示せず)からメチルエチルケトン(MEK)3000質量部を仕込んだ。
次に、溶解槽2に備えられた攪拌機7で溶解槽2内の混合物を攪拌しながら、加熱装置(図示せず)により0.5MPa下で100℃まで加熱し、そのまま10分間攪拌し続けて農ビシート及び塩ビ壁紙の塩化ビニル樹脂成分を溶解させた。
そして、前記溶解槽2を大気圧まで減圧したのち、溶解後の混合物をラインAを介して析出装置4に移した。なお、このとき、ラインAの途中に設けられたろ過装置3により、100メッシュ以上のMEK不溶成分は分離除去した。
次に、析出装置4に、110℃のスチームを60分間で2000質量部導入し、前記溶液からMEKを徐々に揮発させながらほぼ全てのMEKを除去し、塩化ビニル樹脂を析出させた。
析出装置4内の塩化ビニル樹脂は水中に分散したスラリー状態で存在していた。
次に、スラリー状態の塩化ビニル樹脂の分散液をラインBを介してスラリー受槽5へ移し、塩化ビニル系樹脂を水から分離した後、更に遠心脱水機で処理することにより更に水を脱水した。
そして、脱水後の塩化ビニル系樹脂を流動床式乾燥機に適度な厚みになるように順次載置し、90℃で180分間乾燥することにより、平均粒子径350μm(光数乱法粒度分布計で測定)の白色の塩化ビニル樹脂が得られた。なお、ガスクロマトグラフィーにより測定した樹脂中に残存するMEK量は1.0ppm以下であり、可塑剤量は31%であった。
そして、回収された塩化ビニル樹脂の平均重合度、多分散度及び熱安定性を以下の方法により測定した。
そして、回収された塩化ビニル樹脂の平均重合度、多分散度及び熱安定性を以下の方法により測定した。
(GPCによる平均重合度及び多分散度)
得られた塩化ビニル樹脂10mgをテトラヒドロフラン(THF)1mlに溶解し、0.2μmフィルターでろ過処理した溶液を用いて、GPCにより数平均分子量及び多分散度を測定し、数平均重合度を算出した。なお、GPCの測定条件を以下に示す。また、このとき得られたクロマトグラムのうち、代表例として、後述の実施例5と比較例2及び比較例3のクロマトグラムを図1に示す。
装置 :ウォーターズ製600型高圧ポンプ
カラム :Polymer Labo社製Plgel 5μガードカラム100000A+500A
移動相 :THF
流速 :1.0ml/min
検出器 :示差屈折率計及びUV−VIS検出器、検出波長240nm
カラム温度:40℃
試料溶液 :10mg/ml
注入量 :50μL
標準試料 :ポリスチレン
得られた塩化ビニル樹脂10mgをテトラヒドロフラン(THF)1mlに溶解し、0.2μmフィルターでろ過処理した溶液を用いて、GPCにより数平均分子量及び多分散度を測定し、数平均重合度を算出した。なお、GPCの測定条件を以下に示す。また、このとき得られたクロマトグラムのうち、代表例として、後述の実施例5と比較例2及び比較例3のクロマトグラムを図1に示す。
装置 :ウォーターズ製600型高圧ポンプ
カラム :Polymer Labo社製Plgel 5μガードカラム100000A+500A
移動相 :THF
流速 :1.0ml/min
検出器 :示差屈折率計及びUV−VIS検出器、検出波長240nm
カラム温度:40℃
試料溶液 :10mg/ml
注入量 :50μL
標準試料 :ポリスチレン
(熱安定性)
ガラス容器中に得られた塩化ビニル樹脂を入れて内温を180℃に制御した。前記ガラス容器はコンゴーレッド試験紙を入れたガラストラップに連結されており、加熱後変色するまでの時間を測定した。
ガラス容器中に得られた塩化ビニル樹脂を入れて内温を180℃に制御した。前記ガラス容器はコンゴーレッド試験紙を入れたガラストラップに連結されており、加熱後変色するまでの時間を測定した。
次に、得られた塩化ビニル樹脂を、混練した後、プレス成形し、引張特性を以下の評価方法により測定した。
(引張特性)
JIS K6723に準じて、破断引張強度及び破断引張伸びを測定した。
(引張特性)
JIS K6723に準じて、破断引張強度及び破断引張伸びを測定した。
以上の結果を表1に示す。
〈実施例2〉
塩化ビニル樹脂成分が50質量部になるように農ビ樹脂組成物83.3質量部を含有する農ビシート、塩化ビニル樹脂成分が50質量部になるように塩ビ壁紙樹脂組成物135.1質量部を含有する塩ビ壁紙を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
塩化ビニル樹脂成分が50質量部になるように農ビ樹脂組成物83.3質量部を含有する農ビシート、塩化ビニル樹脂成分が50質量部になるように塩ビ壁紙樹脂組成物135.1質量部を含有する塩ビ壁紙を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
〈実施例3〉
塩化ビニル樹脂成分が25質量部になるように塩ビ壁紙樹脂組成物67.5質量部を含有する塩ビ壁紙、塩化ビニル樹脂成分が75質量部になるように塩ビ電線被覆材組成物76.5質量部を含有する塩ビ電線被覆材を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
塩化ビニル樹脂成分が25質量部になるように塩ビ壁紙樹脂組成物67.5質量部を含有する塩ビ壁紙、塩化ビニル樹脂成分が75質量部になるように塩ビ電線被覆材組成物76.5質量部を含有する塩ビ電線被覆材を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
〈実施例4〉
塩化ビニル樹脂成分が50質量部になるように塩ビ壁紙樹脂組成物135.1質量部を含有する塩ビ壁紙、塩化ビニル樹脂成分が50質量部になるように塩ビ電線被覆材組成物51.0質量部を含有する塩ビ電線被覆材を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
塩化ビニル樹脂成分が50質量部になるように塩ビ壁紙樹脂組成物135.1質量部を含有する塩ビ壁紙、塩化ビニル樹脂成分が50質量部になるように塩ビ電線被覆材組成物51.0質量部を含有する塩ビ電線被覆材を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
〈実施例5〉
塩化ビニル樹脂成分が75質量部になるように塩ビ壁紙樹脂組成物202.7質量部を含有する塩ビ壁紙、塩化ビニル樹脂成分が25質量部になるように塩ビ電線被覆材組成物25.5質量部を含有する塩ビ電線被覆材を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
塩化ビニル樹脂成分が75質量部になるように塩ビ壁紙樹脂組成物202.7質量部を含有する塩ビ壁紙、塩化ビニル樹脂成分が25質量部になるように塩ビ電線被覆材組成物25.5質量部を含有する塩ビ電線被覆材を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
〈比較例1〉
塩化ビニル樹脂成分が100質量部になるように農ビシート用樹脂166.6質量部を含有する農ビシートを樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
塩化ビニル樹脂成分が100質量部になるように農ビシート用樹脂166.6質量部を含有する農ビシートを樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
〈比較例2〉
塩化ビニル樹脂成分が100質量部になるように塩ビ壁紙樹脂組成物270.2質量部を含有する塩ビ壁紙を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
塩化ビニル樹脂成分が100質量部になるように塩ビ壁紙樹脂組成物270.2質量部を含有する塩ビ壁紙を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
〈比較例3〉
塩化ビニル樹脂成分が100質量部になるように塩ビ電線被覆材組成物102質量部を含有する塩ビ電線被覆材を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
塩化ビニル樹脂成分が100質量部になるように塩ビ電線被覆材組成物102質量部を含有する塩ビ電線被覆材を樹脂成分供給ホッパー1から溶解槽2に仕込んだ以外は実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
〈比較例4〉
比較例1及び比較例2で得られた塩化ビニル系樹脂を1:1で配合し二軸押出機により溶融混練し、得られた塩化ビニル系樹脂を実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
比較例1及び比較例2で得られた塩化ビニル系樹脂を1:1で配合し二軸押出機により溶融混練し、得られた塩化ビニル系樹脂を実施例1と同様にして塩化ビニル樹脂を得、評価した。結果を表1に示す。
実施例1では平均重合度1300の塩化ビニル樹脂75質量部、平均重合度800の塩化ビニル樹脂25質量部を含有する製品を本発明の方法で処理したときに、平均重合度1200で多分散度が2.5の塩化ビニル樹脂が得られた。
また、実施例2では平均重合度1300の塩化ビニル樹脂50質量部、平均重合度800の塩化ビニル樹脂50質量部を含有する製品を本発明の方法で処理したときに、平均重合度1100で多分散度が2.4の塩化ビニル樹脂が得られた。
このように、実施例1で得られた塩化ビニル樹脂の多分散度及び実施例2で得られた塩化ビニル樹脂の多分散度は低いものであり、GPCによる平均重合度分布を示すクロマトグラフにおいても、単一のピークが得られた。
一方、実施例3〜5の結果から、平均重合度800の塩化ビニル樹脂を含有する塩ビ壁紙と平均重合度2600の塩化ビニル樹脂を含有する塩ビ電線被覆とを溶媒中で同時に処理することによっても、実施例1及び2と同様の結果が得られた。
すなわち、実施例3では平均重合度800の塩化ビニル樹脂25質量部、平均重合度2600の塩化ビニル樹脂75質量部を含有する製品を本発明の方法で処理したときに、平均重合度2100の塩化ビニル樹脂が得られた。
また、実施例4では平均重合度800の塩化ビニル樹脂50質量部、平均重合度2600の塩化ビニル樹脂50質量部を含有する製品を本発明の方法で処理したときに、平均重合度1700の塩化ビニル樹脂が得られた。
さらに、実施例5では平均重合度800の塩化ビニル樹脂75質量部、平均重合度2600の塩化ビニル樹脂25質量部を含有する製品を本発明の方法で処理したときに、平均重合度1200の塩化ビニル樹脂が得られた。
そして、実施例3で得られた塩化ビニル樹脂の多分散度は2.7、実施例4で得られた塩化ビニル樹脂の多分散度は2.7、実施例5で得られた塩化ビニル樹脂の多分散度は2.4であり、多分散度は低いものであり、GPCによる平均重合度分布を示すクロマトグラムにおいても、単一のピークが得られた。
また、農ビシート用樹脂/塩ビシート用樹脂=50/50(質量部)を本発明の処理方法により処理して得られた実施例2の塩化ビニル樹脂の成形品の特性は、引張強度14MPa、破断伸び220%、熱安定性38分間を示した。
一方、溶融混練により得られた農ビシート用樹脂/塩ビシート用樹脂50/50(質量%)の比較例4では、引張強度10MPa、破断伸び180%及び熱安定性30分間となり、各種特性が大幅に低下していることがわかる。これは、2種の重合度を有する塩化ビニル系樹脂が充分に均質に混ざることがなく、不均質に混合されているためと考えられる。
なお、密度を比較すると農ビシート用樹脂100%の比較例1の1.30に比べて、25%塩ビ壁紙を添加した実施例1では1.37、50%添加した実施例2では1.42と塩ビ壁紙の割合が高くなるにつれて密度が高くなっている。これは、塩ビ壁紙用樹脂に含有されている充填材が残存しているためである。
1 樹脂成分供給ホッパー
2 溶解槽
3 ろ過装置
4 析出装置
5 スラリー受槽
6 流動床乾燥機
7、8 攪拌機
A、B 搬送ライン
2 溶解槽
3 ろ過装置
4 析出装置
5 スラリー受槽
6 流動床乾燥機
7、8 攪拌機
A、B 搬送ライン
Claims (7)
- 第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂とを塩化ビニル系樹脂を溶解させうる溶媒に溶解して塩化ビニル系樹脂溶液を得る溶解工程と、前記塩化ビニル系樹脂溶液から第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を析出させる析出工程とを備えることを特徴とする塩化ビニル系樹脂の処理方法。
- 前記溶解工程が、第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を含有する廃塩化ビニル系樹脂製品と第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を含有する廃塩化ビニル系樹脂製品とを塩化ビニル系樹脂を溶解させうる溶媒に溶解して塩化ビニル系樹脂溶液を得る溶解工程である請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂の処理方法。
- 前記第2の平均重合度が前記第1の平均重合度の1.5〜3.5倍である請求項1又は請求項2に記載の塩化ビニル系樹脂の処理方法。
- 前記第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂と前記第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂の合計量中、前記第1の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を5〜95質量%、前記第2の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂95〜5質量%を含有するようにそれぞれの塩化ビニル系樹脂を溶媒に溶解する請求項1〜3の何れか1項に記載の塩化ビニル系樹脂の処理方法。
- 前記析出工程が、前記塩化ビニル系樹脂溶液に塩化ビニル系樹脂に対する非溶媒を添加することにより前記第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を析出させる工程である請求項1〜4の何れか1項に記載の塩化ビニル系樹脂の処理方法。
- 前記析出工程が、前記塩化ビニル系樹脂溶液にスチームを導入することにより前記第3の平均重合度を有する塩化ビニル系樹脂を析出させる工程である請求項5に記載の塩化ビニル系樹脂の処理方法。
- 請求項1〜5の何れか1項に記載の塩化ビニル系樹脂の処理方法により析出されて回収された塩化ビニル系樹脂。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006134109A JP2006342347A (ja) | 2005-05-13 | 2006-05-12 | 塩化ビニル系樹脂の処理方法及び前記処理方法により得られる塩化ビニル系樹脂 |
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JP2005140799 | 2005-05-13 | ||
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- 2006-05-12 JP JP2006134109A patent/JP2006342347A/ja active Pending
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