JP2006340306A - スピーカアレイ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】設置場所の自由度を高くし、音声の指向性設定をユーザが容易に行えるようにする。
【解決手段】聴取位置にマイクロフォン2を設置し、スピーカアレイ10から測定信号に応じた試験音声ビームを放射させ、試験音声ビームの角度を漸次変更する掃引を行い、マイクロフォン2で集音する。ビーム角度検出部5は、レベル測定部4に記憶された測定データを基にマルチチャンネルの音声の放射角度を求める。制御部6は、各チャンネルの音声の指向性を決定し、各チャンネルの音声の指向性を制御するビーム制御部8に対して指向性設定を行う。制御部6は、スピーカアレイ10からマイクロフォン2までのマイク距離を予め測定し、試験音声ビームの掃引時に試験音声ビームの焦点距離をマイク距離と同じ値に設定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、複数の音声ビームを出力してサラウンド音声を再生するスピーカアレイ装置に関し、特に設置場所の自由度が高く、音声の指向性設定を容易に行うことができるスピーカアレイ装置に関するものである。
従来、マトリクス状に配置された複数のスピーカからなるスピーカアレイを用いて複数の音声ビームを形成することにより、音声信号伝搬の指向性を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この技術を用いることで、従来のサラウンドシステムのように複数のスピーカをユーザ(聴取者)の周囲に設置しなくても良くなり、1枚のパネル状のスピーカアレイから複数の音声ビームを出力させてサラウンド音声を再生することができる。
図10は、特許文献1に開示されたスピーカアレイ装置を設置したリスニングルームの上面透視図であり、スピーカアレイ装置で5.1チャンネルのサラウンドシステムを実現する例を示している。ここで、以下の説明では、5.1チャンネルサラウンドシステムにおいて、フロントの左チャンネルをL(Left)ch、フロントの右チャンネルをR(Right )ch、センタチャンネルをC(Center)ch、リアの左チャンネルをSL(Surround Left )ch、リアの右チャンネルをSR(Surround Right)ch、サブウーハをLFE(Low Frequency Effects )chと称する。
図10に示すスピーカアレイ装置213は、バッフル板に所定の配列で配置された複数のスピーカユニットを備えており、各スピーカユニットからサラウンド音声を出力するタイミングをチャンネル毎に調整してビーム状に放射し、音声ビームが空間の任意の点で焦点を結ぶように遅延制御する。そして、各チャンネルの音声を天井や壁に反射させることで、壁方向に音源を作り出し、マルチチャンネルの音場を再生する。
図10に示すように、リスニングルーム220に配置されたスピーカアレイ装置213は、センタスピーカ(C)及び低音補強用のサブウーハ(LFE)と同様の音声を直接ユーザUに対して出力する。また、スピーカアレイ装置213は、リスニングルーム220の左右の壁221,222に音声ビームを反射させて、仮想Rchスピーカ214と仮想Lchスピーカ215を作り出す。さらに、スピーカアレイ装置213は、リスニングルーム220の左右の壁221,222及び後方の壁223に音声ビームを反射させて、ユーザUの後方の左右に仮想SRchスピーカ216と仮想SLchスピーカ217を作り出す。このように、スピーカアレイによるサラウンドシステムでは、各チャンネルの音声信号を遅延制御してビーム化し、このビーム化した音声を壁に反射させて複数の音源を作ることにより、ユーザUの周囲に複数のスピーカを設置したかのようなサラウンド感を得ることができる。
特表2003−510924号公報
従来、スピーカアレイ装置を設置する際には、ユーザの聴取位置の情報や、設置環境の形状情報としてリスニングルームの幅、奥行き及び高さをスピーカアレイ装置に与えることで、スピーカアレイ装置が各チャンネルの音声の指向性を自動的に計算し、設定するようにしていた。また、スピーカアレイ装置にこのような設定機能が設けられていない場合や、自動計算の前提条件と部屋環境が大きく異なる場合には、専門家が聴取位置においてスピーカアレイ装置の再生音を聞きながら、各チャンネルの音声の指向性を手動で変更しながら調整を行うようにしていた。
しかしながら、スピーカアレイ装置が各チャンネルの音声の指向性をユーザによって入力された部屋の形状やサイズ情報に基づいて自動的に設定する場合、スピーカアレイ装置を設置するリスニングルームの形状及びスピーカアレイ装置の設置場所が制限されるという問題点があった。つまり、スピーカアレイ装置を設置するリスニングルームが図10に示したような直方体や立方体といった理想的な形状で、かつ計算可能な位置と方向にスピーカアレイ装置を設置しないと、音声ビームの正しい放射角度を求めることができなかった。そのため、特殊な形状のリスニングルームや大型の家具が設置されているリスニングルームでは、スピーカアレイ装置の音声の指向性設定を自動で行うことができず、手動で調整を行わなければならないことがあった。
また、各チャンネルの音声の指向性を手動で設定する場合、音声ビームの調整は、設定者の感覚に依存する部分が多いため、視聴環境に個人差が発生しやすく、また設定操作に知識と慣れが必要である。そのため、音声ビームの調整は、前記のように専門家が実行しており、ユーザ自身が調整を行うことが難しいという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、スピーカアレイ装置の設置場所の自由度が高く、音声の指向性設定をユーザが容易に行うことのできるスピーカアレイ装置を提供することを目的とする。
本発明のスピーカアレイ装置は、マトリクス状又はライン状に配置した複数のスピーカユニットからなるスピーカアレイと、通常の聴取時に、外部から入力されたマルチチャンネルの音声信号の各々に遅延時間を付加して、これらマルチチャンネルの音声信号に応じた音声がそれぞれ別々の指向性で放射されるように前記スピーカアレイを駆動する指向性制御手段と、この指向性制御手段の設定時に、前記スピーカアレイから測定信号に応じた試験音声ビームを放射させると共に、この試験音声ビームの放射角度を漸次変更する掃引を行う音声ビーム掃引手段と、前記スピーカアレイが設置された部屋の聴取位置に設置され、前記試験音声ビームの直接音及び反射音を集音するマイクロフォンと、前記掃引時に前記試験音声ビームの焦点距離を前記スピーカアレイから前記マイクロフォンまでのマイク距離と同じ値に設定する焦点距離設定手段と、前記掃引時に前記マイクロフォンが集音した音声の信号レベルと前記試験音声ビームの放射角度との関係を測定データとして記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された測定データの信号ピークとこの信号ピークが得られたときの試験音声ビームの放射角度から、前記マルチチャンネルの音声を出力すべき放射角度をチャンネル毎に求める角度検出手段と、前記角度検出手段が求めた放射角度から前記マルチチャンネルの音声の指向性をチャンネル毎に決定して、この指向性に対応する前記遅延時間を前記指向性制御手段にチャンネル毎に設定する指向性設定手段とを有するものである。
また、本発明のスピーカアレイ装置の1構成例は、さらに、前記試験音声ビームの掃引を行う前に前記マイク距離を測定するマイク距離測定手段を有するものである。
また、本発明のスピーカアレイ装置の1構成例は、さらに、前記測定信号の周波数帯域を前記スピーカアレイによって指向性の制御が可能な最高周波数に設定する測定信号設定手段と、前記試験音声ビームの掃引を行う前に前記マイク距離が所定の制限距離より長いかどうかを判定し、前記マイク距離が制限距離以下の場合には、ユーザに前記マイクロフォンの位置を直すように促すマイク距離判定手段とを有するものである。
本発明によれば、スピーカアレイ装置を室内に設置する際に、ユーザの聴取位置にマイクロフォンを設置して、スピーカアレイから測定信号に応じた試験音声ビームを放射させると共に、この試験音声ビームの放射角度を漸次変更する掃引を行い、このときにマイクロフォンで音声を集音することで、スピーカアレイから直接マイクロフォンに向けて出力された音声や、部屋の壁からマイクロフォンに向けて反射した音声を、信号レベルのピークとして検出することができる。これにより、各音声をアレイスピーカからどのような放射角度で出力すると、マルチチャンネル音声を最適に再生できるかを短時間で容易に検出することが可能となる。その結果、本発明では、スピーカアレイ装置を設置する部屋の形状や家具の配置などにかかわらず、スピーカアレイ装置の指向性制御手段の設定をユーザでも簡単かつ適切に行うことができる。また、本発明では、試験音声ビームの焦点距離をスピーカアレイからマイクロフォンまでのマイク距離と同じ値に設定することにより、試験音声ビームの直接音と反射音の分離度を高めることができるので、反射音のS/N比を改善することができ、サラウンドチャンネルやフロントチャンネルに対応する反射音のピーク検出を容易にし、また反射音のピークを検出可能な角度範囲を広げることができる。その結果、本発明では、各チャンネルの音声を出力する最適な放射角度を容易かつ正確に求めることができる。
また、本発明では、試験音声ビームの掃引を行う前にマイク距離を測定することにより、ユーザがマイク距離を入力する必要がなくなる。
また、本発明では、測定信号の周波数帯域をスピーカアレイによって指向性の制御が可能な最高周波数に設定し、マイク距離が所定の制限距離より長いかどうかを判定し、マイク距離が制限距離以下の場合には、ユーザにマイクロフォンの位置を直すように促すことにより、反射音の角度分解能の悪化を回避することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係るスピーカアレイ装置の構成を示すブロック図、図2はスピーカアレイのバッフル板上のスピーカユニットの配置例を示す正面図である。
本実施の形態のスピーカアレイ装置1は、マイクロフォン2と、A/Dコンバータ3と、レベル測定部4と、ビーム角度検出部5と、制御部6と、測定信号生成部7と、ビーム制御部8と、増幅器9と、スピーカアレイ10と、操作部11と、表示部12とを備えている。レベル測定部4は記憶手段を構成し、ビーム角度検出部5は角度検出手段を構成し、制御部6は焦点距離設定手段と指向性設定手段と測定信号設定手段とマイク距離判定手段とを構成し、ビーム制御部8は指向性制御手段を構成し、さらに制御部6と測定信号生成部7とビーム制御部8は音声ビーム掃引手段を構成し、制御部6と測定信号生成部7とビーム制御部8と増幅器9とスピーカアレイ10とマイクロフォン2とA/Dコンバータ3とレベル測定部4はマイク距離測定手段を構成している。なお、図1に示すスピーカアレイ装置1のマイクロフォン2を除いた部分を本体1hと称する。
マイクロフォン2は、無指向性のマイクロフォンであり、A/Dコンバータ3に接続されている。
A/Dコンバータ3は、各チャンネルの音声の放射角度と経路距離を求めてビーム制御部8の設定を行う音声ビーム設定モード時に、マイクロフォン2が集音したアナログ音声信号をディジタル音声信号に変換して、レベル測定部4へ出力する。
レベル測定部4は、音声ビーム設定モード時にマイクロフォン2で集音された測定データを記憶する。
ビーム角度検出部5は、音声ビーム設定モード時の集音が終了した後に、レベル測定部4に記憶された測定データを読み出して測定データのピークを検出し、Cch、Lch、Rch、SLch、SRchの各チャンネルの音声を出力する放射角度を検出し、この検出結果を制御部6へ通知する。
測定信号生成部7は、音声ビーム設定モード時に、測定信号をビーム制御部8に出力する。
ビーム制御部8は、音声ビーム設定モード時には、測定信号生成部7からの測定信号に応じた試験音声ビームをその放射角度を変更しつつスピーカアレイ10から出力させ、設定終了後の通常の聴取時には、設定に応じた指向性を各チャンネルの音声に持たせてスピーカアレイ10から出力させる。
スピーカアレイ10は、前面のバッフル板100上に複数のスピーカユニット101をマトリクス状またはライン状に配置したものである。図2の例では、スピーカユニット101をマトリクス状に配置した例を示している。
ここで、スピーカアレイ装置1による指向性制御の原理を図3を使って説明する。多数のスピーカユニット101−1〜101−nをライン状に配置し、焦点Pからの距離がLである円弧をZとし、焦点Pと各スピーカユニット101−1〜101−nとを結ぶ直線を延長して、これら延長した直線が円弧Zと交わる交点上に図3の破線で示すような仮想のスピーカユニット102−1〜102−nを配置することを考える。これら仮想のスピーカユニット102−1〜102−nから焦点Pまでの距離は全てLであるから、各スピーカユニット102−1〜102−nから放射される音声は焦点Pに同時に到達する。
実際のスピーカユニット101−i(i=1,2,・・・・n)から放射する音声を焦点Pに同時に到達させるためには、スピーカユニット101−iとこれに対応する仮想のスピーカユニット102−iとの間の距離に応じた遅延(時間差)をスピーカユニット101−iから出力する音声に付加すればよい。つまり、焦点Pから見ると、円弧Z上に仮想のスピーカユニット102−1〜102−nが配置されているかのように制御される。これにより、焦点Pでは、各スピーカユニット101−1〜101−nの出力の位相が揃い音圧の山ができる。その結果、あたかも焦点Pに向かって音声ビームを放出するような指向性を持った音圧分布が得られる。また、スピーカをライン状でなく、マトリクス状に配置することで、3次元的な指向性を持った音声ビームを出力できる。
図4は、音声信号に対するビーム制御部8の処理を模式的に表す図である。遅延部80−Lは、入力されたLch音声信号に対してそれぞれ遅延時間を付加したスピーカユニット数分(n個)のLch音声信号を生成し、遅延部80−Rは、入力されたRch音声信号に対してそれぞれ遅延時間を付加したn個のRch音声信号を生成し、遅延部80−Cは、入力されたCch音声信号に対してそれぞれ遅延時間を付加したn個のCch音声信号を生成し、遅延部80−SLは、入力されたSLch音声信号に対してそれぞれ遅延時間を付加したn個のSLch音声信号を生成し、遅延部80−SRは、入力されたSRch音声信号に対してそれぞれ遅延時間を付加したn個のSRch音声信号を生成する。遅延部80−L,80−R,80−C,80−SL,80−SRが付加する遅延時間は、制御部6によりそれぞれ別々に設定される。
そして、加算器81−1は、遅延部80−L,80−R,80−C,80−SL,80−SRから出力されたスピーカユニット101−1用のLch,Rch,Cch,SLch,SRchの各音声信号を加算して音声信号AO−1を生成し、加算器81−2は、スピーカユニット101−2用のLch,Rch,Cch,SLch,SRchの各音声信号を加算して音声信号AO−2を生成し、加算器81−nは、スピーカユニット101−n用のLch,Rch,Cch,SLch,SRchの各音声信号を加算して音声信号AO−nを生成する。
増幅器9−1〜9−nは、それぞれビーム制御部8から出力された音声信号AO−1〜AO−nを増幅してスピーカユニット101−1〜101−nを駆動する。
操作部11は、例えばスピーカアレイ装置1の設置時にユーザからの各種の設定入力を受け付け、入力された情報を制御部6へ渡す。
表示部12は、制御部6から出力された制御信号に基づいてユーザに伝達する内容を表示する。
制御部6は、スピーカアレイ装置全体を制御し、音声ビーム設定モード時には、測定信号生成部7とビーム制御部8に試験音声ビームの掃引を行わせると同時に、このときの測定データをレベル測定部4に記録させ、測定データに基づいてビーム制御部8の設定を行う。
次に、本実施の形態のスピーカアレイ装置1の動作について説明する。図5は、スピーカアレイ装置1の音声ビーム設定モード時の動作を示すフローチャートである。まず、ユーザUは、スピーカアレイ10をリスニングルームの所望の位置に設置すると共に、マイクロフォン2を聴取位置に設置する。
制御部6は、ユーザから音声ビーム設定モードの実行を指示されると、スピーカアレイ10からマイクロフォン2(聴取位置)までのマイク距離を測定する(ステップS1)。マイク距離を測定するには、制御部6から測定信号生成部7を制御して、マイク距離測定用のパルス信号やノイズを出力させ、このパルス信号やノイズに応じた音声をスピーカアレイ10から出力させる。このとき、ビーム制御部8ではパルス信号やノイズに遅延時間を付加する必要はない。スピーカアレイ10から出力された音声は、マイクロフォン2で集音され、A/Dコンバータ3を通じてディジタル信号としてレベル測定部4に記録される。
制御部6は、測定信号生成部7からビーム制御部8へパルス信号やノイズが出力されてから、レベル測定部4でパルス信号やノイズが得られるまでの経過時間を測定して、この経過時間に基づきマイク距離を算出する(ステップS2)。続いて、制御部6は、ステップS2で求めたマイク距離が予め定められた制限距離より長いかどうか判定する(ステップS3)。このような判定を行う理由については後述する。なお、本実施の形態では、マイク距離を測定しているが、ユーザが入力するようにしてもよい。
制御部6は、ステップS3においてマイク距離が制限距離より長いと判定した場合、試験音声ビームの掃引を行うが、この掃引を行う前に、試験音声ビームの焦点距離を設定する(ステップS4)。ここで、試験音声ビームの掃引について説明する。図6は、スピーカアレイ装置1を設置したリスニングルーム20の上面透視図であり、本実施の形態の試験音声ビームの掃引動作を説明するための図である。図6(a)に示すようにスピーカアレイ10を、リスニングルーム20の前壁21の中央部における壁際に、スピーカアレイ10のバッフル板が前壁21と平行となり、後壁23と対向するように設置する。また、マイクロフォン2をユーザの聴取位置に設置する。このとき、マイクロフォン2の高さは、ユーザの耳の位置に合わせると良い。
スピーカアレイ装置1の制御部6は、測定信号生成部7からビーム制御部8に測定信号を出力させ、この測定信号に応じた試験音声ビーム30をスピーカアレイ10から出力させる。このとき、制御部6の指示により、ビーム制御部8は、図6(a)に示すようにスピーカアレイ10のバッフル板と平行な一方の方向(以下、0度方向と称する)からバッフル板と平行な他方の方向(以下、180度方向と称する)まで試験音声ビーム30の放射角度を漸次変更する掃引を行う。この掃引は、測定信号が入力されるビーム制御部8の遅延部の遅延時間を制御部6から設定して、試験音声ビーム30の焦点の位置を漸次変更することで実現できる。なお、ここでは1チャンネルの測定信号のみがビーム制御部8に入力されるので、遅延部80−L,80−R,80−C,80−SL,80−SRのうちいずれか1つに測定信号を入力すればよい。
このように、試験音声ビームの掃引を行うと、スピーカアレイ10から出力された試験音声ビームの放射角度θに応じて、リスニングルーム20の左壁22、後壁23、右壁24に試験音声ビームが反射する。このとき、マイクロフォン2で試験音声ビームの直接音や各壁で反射した間接音を集音する。A/Dコンバータ3は、マイクロフォン2が集音したアナログ音声信号をディジタル音声信号に変換し、レベル測定部4は、このディジタル音声信号を放射角度θと共に測定データとして記憶する。
例えば、図6(b)に示すように、放射角度θ=θ1の場合、試験音声ビーム30aは左壁22及び右壁24で反射してからマイクロフォン2に到達するので、θ1はLchの音声ビームを出力する角度としては不適である。また、放射角度θ=θ2の場合、試験音声ビーム30bは左壁22で反射してからマイクロフォン2に到達するので、θ2はLchの音声ビームを出力する角度としては適当な角度である。また、放射角度θ=θ3の場合、試験音声ビーム30cは左壁22及び後壁23で反射してからマイクロフォン2に到達するので、θ3はSLchの音声ビームを出力する角度としては適当な角度である。さらに、放射角度θ=θ4の場合、試験音声ビーム30dは直接マイクロフォン2に到達するので、θ4はCchの音声ビームを出力する角度としては適当な角度である。
このように、試験音声ビームの掃引とこの掃引によって得られた測定データの分析により各チャンネルの音声を出力する最適な放射角度を求めることができる。
ステップS4の処理は、ステップS2で求めたマイク距離を試験音声ビームの焦点距離として設定する処理である。制御部6は、図6(a)で説明した試験音声ビームの掃引を測定信号生成部7とビーム制御部8に実施させるが(ステップS5)、ステップS4の設定により、スピーカアレイ10から焦点までの焦点距離は常に一定のマイク距離で固定されることになる。焦点距離をマイク距離と同じにする理由については後述する。
なお、試験音声ビームの掃引のときに用いる測定信号は、相関性がなく、かつスピーカアレイ装置1によって指向性の制御が可能な周波数帯域に制限された音声信号であることが好ましい。
試験音声ビームの掃引終了後、制御部6は、放射角度の検出処理をビーム角度検出部5に実施させる(ステップS6)。図7は、放射角度検出処理を説明するための図であり、図7(a)は試験音声ビームの掃引動作を示す上面透視図、図7(b)は試験音声ビームの掃引動作によりレベル測定部4に記憶された測定データを示す図である。図7(b)では、横軸を試験音声ビームの放射角度、縦幅をマイクロフォン2で集音した音声データのゲインとしている。
図7(b)に示す測定データから複数のピークを容易に検出するために、壁に反射した回数が2回までの音声ビームのみを検出可能なレベルに、閾値Thaが予め設定されている。ステップS6において、ビーム角度検出部5は、レベル測定部4の測定データを分析し、閾値Tha以上で、かつ最もレベルの高いピークPa3が得られたときの放射角度θa3(図7(a)の試験音声ビーム47の角度)をCchの音声を出力する放射角度とする。角度θa3をCchの音声の放射角度とする理由は、Cchの音声をユーザの聴取位置に直接放射するからである。なお、ビーム角度検出部5は、レベルが最大であっても、パルス幅が所定値以下のピークについてはノイズと見なして除外する。
続いて、ビーム角度検出部5は、図7(b)の横軸上でピークPa3の両側に存在する、閾値Tha以上のピークをPa3に近い方から順にサラウンドチャンネル、フロントチャンネルというように割り当てて、その放射角度を割り出す。すなわち、ビーム角度検出部5は、ピークPa1が得られたときの角度θa1(図7(a)の試験音声ビーム45の角度)をLchの音声ビームを出力する放射角度とし、ピークPa2が得られたときの角度θa2(試験音声ビーム46の角度)をSLchの音声ビームを出力する放射角度とし、ピークPa4が得られたときの角度θa4(試験音声ビーム48の角度)をSRchの音声ビームを出力する放射角度とし、ピークPa5が得られたときの角度θa5(試験音声ビーム49の角度)をRchの音声ビームを出力する放射角度とする。こうして、各チャンネルの音声を出力する最適な放射角度を求めることができ、ビーム角度検出部5は求めた放射角度を制御部6に通知する。
放射角度検出処理の終了後、制御部6は、ビーム制御部8の指向性設定を行う(ステップS7)。まず、制御部6は、Cchの音声ビームの放射角度θa3の方向に焦点を設定して、この焦点に各スピーカユニット101から放射されるCchの音声が同時に到達するよう遅延部80−Cの遅延時間をスピーカユニット毎に計算して、計算した遅延時間を遅延部80−Cに設定する。スピーカユニット毎の遅延時間は、各スピーカユニット101−1〜101−nの空間座標と焦点の空間座標を基に一義的に計算できる。
同様に、制御部6は、Lchの音声ビームの放射角度θa1の方向に焦点を設定して、この焦点に各スピーカユニット101から放射されるLchの音声が同時に到達するよう遅延部80−Lの遅延時間を計算して、遅延時間を遅延部80−Lに設定する。また、制御部6は、Rchの音声ビームの放射角度θa5の方向に焦点を設定して、この焦点に各スピーカユニット101から放射されるRchの音声が同時に到達するよう遅延部80−Rの遅延時間を計算して、遅延時間を遅延部80−Rに設定する。また、制御部6は、SLchの音声ビームの放射角度θa2の方向に焦点を設定して、この焦点に各スピーカユニット101から放射されるSLchの音声が同時に到達するよう遅延部80−SLの遅延時間を計算して、遅延時間を遅延部80−SLに設定する。さらに、制御部6は、SRchの音声ビームの放射角度θa4の方向に焦点を設定して、この焦点に各スピーカユニット101から放射されるSRchの音声が同時に到達するよう遅延部80−SRの遅延時間を計算して、遅延時間を遅延部80−SRに設定する。これで、ステップS7の指向性設定が終了する。
以上の設定により、通常の聴取時において、Lch,Rch,Cch,SLch,SRchの各音声信号がスピーカアレイ装置1に入力されると、図8に示すように、Cchの音声はユーザUの聴取位置に直接到達し、Lchの音声はリスニングルーム20の左壁22で反射した後に聴取位置に到達し、Rchの音声は右壁24で反射した後に聴取位置に到達し、SLchの音声は左壁22で反射し、更に後壁23で反射した後に聴取位置に到達し、SRchの音声は右壁24で反射し、更に後壁23で反射した後に聴取位置に到達する。こうして、ユーザUは、聴取位置において5.1チャンネルのサラウンド音場を楽しむことができる。
以上のように、本実施の形態では、従来のスピーカアレイ装置において困難であった指向性の設定を容易かつ素早く行うことができる。また、試験音声ビームを掃引して、その測定結果から各音声の放射角度を決定するようにしたので、スピーカアレイ装置を設置するリスニングルームの形状や家具の配置などにかかわらず、ユーザでも簡単かつ適切に設定を行うことができる。
また、本実施の形態では、試験音声ビームの焦点距離をマイク距離と同じ値にすることにより、以下のような効果が得られる。図9は、本実施の形態の効果を説明するための図であり、図9(a)は試験音声ビームの焦点距離の違いがレベル測定に与える影響を説明するための上面透視図、図9(b)は試験音声ビームの掃引動作によりレベル測定部4に記憶された測定データを示す図である。図9(b)において、Da1は試験音声ビームの焦点距離がマイク距離より長い場合の測定データ、Da2は焦点距離がマイク距離と等しい場合の測定データである。
図9(a)に示す試験音声ビーム31と32は、いずれも放射角度θ5で出力されるが、焦点距離が異なる。スピーカアレイ10から試験音声ビーム31の焦点F1までの距離はマイク距離より長く、スピーカアレイ10から試験音声ビーム32の焦点F2までの距離はマイク距離と同じである。図9(a)における角度θ4はスピーカアレイ10からマイクロフォン2を見たときの角度である。
焦点距離とマイク距離が等しい場合、放射角度がθ4の近傍にあるときに、試験音声ビームの直接音がマイクロフォン2に届く。
一方、放射角度θ5で出力される試験音声ビーム32がマイクロフォン2から逸れているのに対して、同じ角度で出力される試験音声ビーム31の一部がマイクロフォン2に掛かっていることから分かるように、焦点距離がマイク距離より長い場合、試験音声ビームの直接音がマイクロフォン2に届く放射角度範囲は、焦点距離とマイク距離が等しい場合に比べて広くなる。
前述の放射角度検出処理において、各チャンネルの音声を出力する放射角度を容易かつ正確に求めるためには、試験音声ビームの放射角度がθ4のときのみ試験音声ビームの直接音がマイクロフォン2に届き、その他の放射角度では試験音声ビームの反射音がマイクロフォン2に届くことが好ましい。しかし、試験音声ビームの直接音がマイクロフォン2に届く放射角度範囲が広がることは、試験音声ビームの直接音が広い角度範囲にわたって測定データに影響を与えることを意味する。
このような直接音の影響のために、測定データは、図9(b)のDa1のようにピークP1の裾幅が広い波形となる。前述のように、ビーム角度検出部5は測定データのピークを検出して、各チャンネルの音声を出力する放射角度を検出するが、測定データDa1のような波形では、試験音声ビームの反射音のS/N比が直接音のためにθ4近傍の角度範囲で著しく悪化しているので、Cchに対応する直接音のピークP1を検出することはできても、このピークP1の両側にある、サラウンドチャンネルやフロントチャンネルに対応する反射音のピークを検出できない可能性がある。特に、反射音のピークが直接音のピークP1に接近しているほど、反射音のピークの検出はより困難になる。
これに対して、本実施の形態では、試験音声ビームの焦点距離をマイク距離と同じにすることにより、試験音声ビームの直接音がマイクロフォン2に届く放射角度範囲を狭めることができ、直接音が測定データに与える影響を抑えることができる。これにより、レベル測定部4に記憶される測定データは、図9(b)のDa2のようにピークP2が先鋭化し、裾幅が狭い波形となるので、θ4近傍の角度範囲における反射音のS/N比を改善することができる。結果として、本実施の形態では、サラウンドチャンネルやフロントチャンネルに対応する反射音のピークを検出し易くなり、また反射音のピークを検出可能な角度範囲を広げることができる。
なお、試験音声ビームの焦点距離を短くすると、マイクロフォン2の位置でビームの広がりが大きくなるので、反射音の角度分解能の悪化が懸念されるが、測定に使用する信号帯域をスピーカアレイ装置1によって単一ビームとして指向性の制御が可能な最高周波数近辺に設定し、試験音声ビームの焦点距離が反射音の経路距離に対して著しく短くならないようにマイクロフォン2の位置(聴取位置)を制限すれば、焦点距離を短くすることによる影響を抑えることができる。
ステップS3の判定は、試験音声ビームの焦点距離が反射音の経路距離に対して著しく短くならないようにするための処理である。制御部6は、ステップS2で求めたマイク距離が所定の制限距離以下の場合(ステップS3においてNO)、表示部12にエラー表示画面を表示させ、マイク距離を長くするようにユーザに促す(ステップS8)。制御部6は、ユーザがマイクロフォン2の位置を直した後に、ステップS1に戻ってマイク距離を再度測定する。
また、本実施の形態では、試験音声ビームの焦点距離を短くすることにより、マイクロフォン2に向かう反射音の広がりが大きくなるので、リスニングルーム内に局在する家具等の障害物が測定精度に与える影響を緩和することができ、実際の聴感に近い放射角度を検出することができる。
本発明は、スピーカアレイ装置に適用することができる。
本発明の実施の形態に係るスピーカアレイ装置の構成を示すブロック図である。 図1のスピーカアレイのスピーカユニットの配置例を示す正面図である。 スピーカアレイ装置による指向性制御の原理を説明するための図である。 図1のスピーカアレイ装置におけるビーム制御部の処理を模式的に表す図である。 図1のスピーカアレイ装置の音声ビーム設定モード時の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態における試験音声ビームの掃引動作を説明するための図である。 本発明の実施の形態における放射角度検出処理を説明するための図である。 本発明の実施の形態においてスピーカアレイにより実現されるサラウンドシステムを示す上面透視図である。 図1のスピーカアレイ装置の効果を説明するための図である。 スピーカアレイ装置単体でサラウンドシステムを実現する例を示す上面透視図である。
符号の説明
1…スピーカアレイ装置、2…マイクロフォン、3…A/Dコンバータ、4…レベル測定部、5…ビーム角度検出部、6…制御部、7…測定信号生成部、8…ビーム制御部、9…増幅器、10…スピーカアレイ、11…操作部、12…表示部。

Claims (3)

  1. マトリクス状又はライン状に配置した複数のスピーカユニットからなるスピーカアレイと、
    通常の聴取時に、外部から入力されたマルチチャンネルの音声信号の各々に遅延時間を付加して、これらマルチチャンネルの音声信号に応じた音声がそれぞれ別々の指向性で放射されるように前記スピーカアレイを駆動する指向性制御手段と、
    この指向性制御手段の設定時に、前記スピーカアレイから測定信号に応じた試験音声ビームを放射させると共に、この試験音声ビームの放射角度を漸次変更する掃引を行う音声ビーム掃引手段と、
    前記スピーカアレイが設置された部屋の聴取位置に設置され、前記試験音声ビームの直接音及び反射音を集音するマイクロフォンと、
    前記掃引時に前記試験音声ビームの焦点距離を前記スピーカアレイから前記マイクロフォンまでのマイク距離と同じ値に設定する焦点距離設定手段と、
    前記掃引時に前記マイクロフォンが集音した音声の信号レベルと前記試験音声ビームの放射角度との関係を測定データとして記憶する記憶手段と、
    前記記憶手段に記憶された測定データの信号ピークとこの信号ピークが得られたときの試験音声ビームの放射角度から、前記マルチチャンネルの音声を出力すべき放射角度をチャンネル毎に求める角度検出手段と、
    前記角度検出手段が求めた放射角度から前記マルチチャンネルの音声の指向性をチャンネル毎に決定して、この指向性に対応する前記遅延時間を前記指向性制御手段にチャンネル毎に設定する指向性設定手段とを有することを特徴とするスピーカアレイ装置。
  2. 請求項1記載のスピーカアレイ装置において、
    さらに、前記試験音声ビームの掃引を行う前に前記マイク距離を測定するマイク距離測定手段を有することを特徴とするスピーカアレイ装置。
  3. 請求項1記載のスピーカアレイ装置において、
    さらに、前記測定信号の周波数帯域を前記スピーカアレイによって指向性の制御が可能な最高周波数に設定する測定信号設定手段と、
    前記試験音声ビームの掃引を行う前に前記マイク距離が所定の制限距離より長いかどうかを判定し、前記マイク距離が制限距離以下の場合には、ユーザに前記マイクロフォンの位置を直すように促すマイク距離判定手段とを有することを特徴とするスピーカアレイ装置。
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