JP6003409B2 - 放音装置および音響ビームの放音方向の調整方法 - Google Patents

放音装置および音響ビームの放音方向の調整方法 Download PDF

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Description

本発明は、複数のスピーカを有するスピーカアレイにより複数の音響ビームを各々異なる方向に放音してマルチチャンネル音の再生を行なう放音装置に関する。
マトリックス状に配置された複数のスピーカを有するスピーカアレイを用いて、複数のチャンネルの音の各々を異なる方向に音響ビームとして放音することにより、1つのスピーカアレイによりマルチチャンネル音の再生を可能とする放音装置(以下、「スピーカアレイ装置」と呼ぶ)がある。
スピーカアレイ装置から放音される音響ビームの一部は、スピーカアレイ装置の配置されている空間の外縁を定めている壁面に1回以上反射した後、聴取者からみてスピーカアレイ装置の方角とは異なる方角から聴取者に到達する。図7は、スピーカアレイ装置から放音された音響ビームが聴取者に到達する経路を示した図である。図7に示される空間SPの形状は上から見て矩形であり、聴取者Uから見て正面側の壁面WF、左側の壁面WL、後側の壁面WB、右側の壁面WR、床(図示略)および天井(図示略)によりその外縁が定められている。空間SP内には、壁面WFに近い左右方向中央位置に、スピーカの放音面が壁面WFと平行となるように、スピーカアレイ装置である放音装置91が配置されている。
放音装置91は、水平面上において、放音装置91の正面方向に垂直な直線であるベースラインBの聴取者Uから見て左方向を基準方向(0度方向)として、角度θ1の方向、角度θ2の方向、角度θ3の方向、角度θ4の方向、角度θ5の方向(ただし、0度<θ1<θ2<θ3<θ4<θ5<180度)に、5.1チャンネルのマルチサラウンドチャンネル音を構成するフロント左チャンネル(以下、「Lch」と呼ぶ)の音、サラウンド左チャンネル(以下、「SLch」と呼ぶ)の音、センタチャンネル(以下、「Cch」と呼ぶ)、サラウンド右チャンネル(以下、「SRch」と呼ぶ)の音、フロント右チャンネル(以下、「Rch」と呼ぶ)の音を各々、音響ビームとして放音する。
なお、5.1チャンネルのマルチサラウンドチャンネル音を構成する低音増強用チャンネル(Low Frequency Effects Channel、以下、「LFEch」と呼ぶ)の音は放音装置91から音響ビーム化されずに放音される。そのため、本願においてLFEchの音信号に関する処理についてはその説明を省略する。
角度θ1および角度θ5の方向に放音されたLchおよびRchの音響ビームは壁面WLもしくは壁面WRに反射した後、各々、左前方および右前方から聴取者Uに到達する。従って、聴取者Uはあたかも左前方に配置された(実在しない)スピーカ90LからLchの音が、右前方に配置された(実在しない)スピーカ90RからRchの音が放音されたかのように知覚する。また、角度θ2および角度θ4の方向に放音されたSLchおよびRLchの音響ビームは壁面WLまたは壁面WRと、壁面WBに計2回反射した後、各々、左後方および右後方から聴取者Uに到達する。従って、聴取者Uはあたかも左後方に配置された(実在しない)スピーカ90SLからSLchの音が、右後方に配置された(実在しない)スピーカ90SRからSRchの音が放音されたかのように知覚する。また、角度θ3の方向に放音されたCchの音響ビームは直接、前方から聴取者Uに到達する。従って、聴取者Uは前方に配置されたスピーカ90CからCchの音が放音されたと知覚する。
上記のように、聴取者Uは各々異なる方角から到達する異なるチャンネルの音を聴くため、マルチサラウンドチャンネル音を聞くことができる。
図7に例示のように、放音装置91から壁面WLまでの距離と放音装置91から壁面WRまでの距離がほぼ等しい場合、Lchの音とRchの音は放音装置91の正面に位置する聴取者Uに対してほぼ左右対称の方向から到達する。また、聴取者Uに対しSLchの音とSRchの音もまた、正面に対しほぼ左右対称の方向から到達する。そのため、聴取者Uは左右の音の方向や音量、タイミングのバランスが取れた音を聴くことができる。これに対し、図8に示すように、放音装置91から壁面WLまでの距離と放音装置91から壁面WRまでの距離が大きく異なる場合、Lchの音とRchの音は放音装置91の正面に位置する聴取者に対して左右非対称の方向から到達する。また、SLchの音とSRchの音もまた、左右非対称の方向から到達する。そのため、聴取者Uにとって放音装置91から放音される音の方向や音量、タイミングが左右のバランスを欠いた音に聞こえてしまう。
上記のように、聴取者Uに到達する音の方向が左右でアンバランスな場合、聴取者Uに知覚される聴取者Uからみた音源の方向を調整する技術がある。例えば特許文献1に記載のスピーカアレイ装置は、Cchに設定した音声ビームが聴取者に到達する方向を基準とし、例えばRchに設定した音声ビームが聴取者に到達する角度がLchに設定した音声ビームが聴取者に到達する角度より大きい場合、Cch用の音声ビームとRch用の音声ビームとを用いて、Lch用の音声ビームが聴取者に到達する角度と左右対称な角度の方向にRch用のファントム音源を形成する。なお、ファントム音源とは、1つのチャンネルの音が複数の音源の各々から所定の増幅比率で放音された際、聴取者にとってそれらの音源とは異なる方向に知覚される実在しない音源のことをいう。その結果、特許文献1に記載のスピーカアレイ装置によれば、スピーカアレイ装置が部屋の左右方向の中央から左または右に偏った位置に配置された場合であっても、聴取者は左右のバランスの取れた音を聴くことができる。
特許第4127248号明細書
スピーカアレイ装置から放音された音響ビームが壁面ではない家具等の反射物に反射して聴取者に到達する場合がある。それらの反射物の反射面の角度は様々な角度を取り得る。従って、スピーカアレイ装置から放音される音響ビームのいずれかが家具等の反射物に反射して聴取者に到達するような場合、上述したようなファントム音源の形成が行われると、左右のバランスがむしろ悪化してしまう場合がある。
上記の事情に鑑み、本発明は、聴取者に左右から到達する音の方向を対称とするためのファントム音源の形成を行うスピーカアレイ装置において、スピーカアレイ装置が配置された空間内に家具等の想定外の反射物があっても、左右の音のバランスを悪化させない技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、複数のスピーカを有するスピーカアレイと、前記複数のスピーカのうちの1以上のスピーカに複数のチャンネルの音信号を出力し、当該音信号の出力のタイミングを制御して前記スピーカアレイから複数の方向に音響ビームを放音させる音信号出力手段と、聴取位置に配置されたマイクロフォンから出力される音信号を受け取る音信号入力手段と、複数のチャンネルの各々の放音方向を設定する方向設定手段と、前記スピーカアレイが前記方向設定手段により設定された放音方向に対して放音する計測用の音響ビームが前記スピーカアレイから放音されて前記マイクロフォンに到達するまでに要した時間を伝達時間として計測する時間計測手段と、前記計測用の音響ビームの放音方向と、前記時間計測手段により計測された伝達時間とに基づき、前記計測用の音響ビームが予め想定されている伝達経路を伝達したか否かを判定する判定手段と、前記複数のチャンネルのうち予め定められた2つのチャンネルの各々に関し前記判定手段により計測用の音響ビームが予め想定されている伝達経路を伝達したと判定され、かつ、当該2つのチャンネルに対し前記方向設定手段により設定された放音方向に放音された音響ビームの前記聴取位置に対する到達方向が許容誤差を超えて左右非対称である場合に、当該2つのチャンネルの音信号の少なくとも一方を前記複数のチャンネルの音信号のうち当該音信号とは異なるチャンネルの音信号に加算する方向調整手段とを備える放音装置を提供する。
また、上記の放音装置において、前記方向調整手段は、前記音信号の加算において互いに加算される2つの音信号に応じた2つのチャンネルに設定された放音方向に基づき、互いに加算される2つの音信号の振幅を決定する、という構成が採用されてもよい。
また、上記の放音装置において、前記方向設定手段は、前記スピーカアレイが放音の方向を変化させながら放音するテスト用の音響ビームの方向を示す方向データと、前記テスト用の音響ビームの放音時に前記音信号入力手段が前記マイクロフォンから受け取った集音信号とに基づいて、前記設定する放音方向を決定する、という構成が採用されてもよい。
また、本発明は、複数のスピーカを有するスピーカアレイと、前記複数のスピーカのうちの1以上のスピーカに複数のチャンネルの音信号を出力し、当該音信号の出力のタイミングを制御して前記スピーカアレイから複数の方向に音響ビームを放音させる音信号出力手段と、聴取位置に配置されたマイクロフォンが出力される音信号を受け取る音信号入力手段とを備える放音装置が、複数のチャンネルの各々の放音方向を設定するステップと、前記複数のチャンネルの各々に設定した放音方向に対し、前記スピーカアレイにより、計測用の音響ビームを放音するステップと、前記計測用の音響ビームの放音時に、前記音信号入力手段により、前記マイクロフォンから集音信号を受け取るステップと、前記計測用の音響ビームの放音時に前記音信号入力手段により受け取った集音信号に基づき、前記計測用の音響ビームが前記スピーカアレイから放音されて前記マイクロフォンに到達するまでに要した時間を伝達時間として計測するステップと、前記計測用の音響ビームの放音方向と、前記伝達時間とに基づき、前記計測用の音響ビームが予め想定されている伝達経路を伝達したか否かを判定するステップと、前記複数のチャンネルのうち予め定められた2つのチャンネルの各々に関し、計測用の音響ビームが予め想定されている伝達経路を伝達したと判定し、かつ、当該2つのチャンネルに対し設定した放音方向に放音された音響ビームの前記聴取位置に対する到達方向が許容誤差を超えて左右非対称である場合に、当該2つのチャンネルの音信号の少なくとも一方を前記複数のチャンネルの音信号うち当該音信号とは異なる音信号に加算するステップとを備える音響ビームの放音方向の調整方法を提供する。
このような放音装置もしくは音響ビームの放音方向の調整方法によれば、放音装置から放音される音響ビームが家具等の想定外の反射物により反射した後に聴取位置に到達する場合、当該音響ビームの伝達経路は予め想定されている伝達経路ではないと判定され、当該音響ビームが示すチャンネルの音に関しては、仮に左右一対となる2つのチャンネルの音信号が聴取位置に到達する方向がアンバランスであっても、ファントム音源の形成による方向調整が行われない。その結果、家具等の想定外の反射物がある場合に、ファントム音源の形成により左右の音のバランスが悪化することが回避される。
本発明の第1実施形態にかかる放音システムの概略構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態にかかるスピーカアレイにおけるスピーカの配置例を模式的に示した図である。 本発明の第1実施形態にかかる放音装置が音響ビームの放音方向を特定する仕組みを説明するための図である。 本発明の第1実施形態にかかる正常反射判定部による判定処理の動作を説明するための図である。 本発明の第1実施形態にかかる放音方向調整部によるファントム音源の形成のためのパラメータ算出の手順を説明するための図である。 本発明の第1実施形態にかかる正常反射判定部による判定結果に従わずにファントム音源の形成を行なった場合に生じる不都合を説明するための図である。 スピーカアレイ装置から放音された音響ビームが聴取者に到達する経路を示した図である。 スピーカアレイ装置から左右の壁面までの距離が大きく異なると聴取者に対し左右非対称の方向から音響ビームが到達することを示した図である。
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態にかかる放音装置11と、放音装置11が音響ビームの放音方向を設定するために用いるマイクロフォン12とを備える放音システム1の概略構成を示すブロック図である。
放音装置11はまず、マルチチャンネル音を構成する複数のチャンネルの音の各々を音響ビームとして互いに異なる方向に放音するスピーカアレイ110を備えている。スピーカアレイ110は放音方向が同じ方向に揃えられアレイ状に配置されたn個(nは任意の自然数)のスピーカ1101を有している。図2は、スピーカアレイ110におけるスピーカ1101の配置例を模式的に示した図である。
また、放音装置11は、外部の装置からエンコードされたマルチチャンネル音信号を受け取るソース音信号入力部111と、ソース音信号入力部111が受け取ったマルチチャンネル音信号をデコードするデコーダ112と、デコーダ112により生成される複数のチャンネル毎の音信号を用いて音響ビームを形成するための音信号を生成し出力する音信号出力部113と、音信号出力部113から出力される音信号をデジタル信号からアナログ音信号に変換してスピーカアレイ110が有するn個のスピーカ1101の各々に出力するDAコンバータ114を備えている。なお、以下の説明において、ソース音信号入力部111が外部の装置から受け取るマルチチャンネル音信号は、例として、5.1チャンネルのマルチチャンネルサラウンド音信号であるものとする。なお、5.1チャンネルのマルチチャンネルサラウンド音信号に含まれるLFEchの音信号に関する処理については、既述のとおりその説明を省略するため、図1においてもLFEchの音信号の処理に関する構成部はその記載が省略されている。
放音装置11は、DAコンバータ114によりアナログ信号に変換された5つのチャンネルの音信号を処理した後、スピーカアレイ110が有するn個のスピーカ1101の各々に音信号を出力する音信号出力部113を備えている。音信号出力部113はまず、5つのチャンネルの音信号のうち、互いに隣接するチャンネルの音信号を後述する制御部115の放音方向調整部1155(方向調整手段)により算出されたミキシングレベルでミキシングする。この場合、互いに隣接するチャンネルとは、CchとLch、CchとRch、LchとSLch、RchとSRchである。また、音信号出力部113はSLchおよびSRchの音信号を放音方向調整部1155により算出された増幅率で増減幅する。
このミキシング処理および増減幅処理は、スピーカアレイ110から放音される音響ビームが聴取位置に到達した際に、音響ビーム間の全体的なレベル差を補正するためのレベル調整処理と、音響ビームが聴取位置に左右非対称な方向から到達する場合、聴取者に左右の位置(方向)のバランスの取れた音を提供するためのファントム音源の形成処理とを併せて行なう処理である。
このミキシング処理および増減幅処理において、音信号出力部113は以下の5つの音信号(以下、これらを「調整済み音信号」と呼ぶ)を生成する。
C’chの音信号:Cchの音信号にレベル調整を行ったLchの音信号およびレベル調整を行ったRchの音信号をミキシングした音信号。
L’chの音信号:レベル調整を行ったLchの音信号にレベル調整を行ったSLchの音信号をミキシングした音信号。
R’chの音信号:レベル調整を行ったRchの音信号にレベル調整を行ったLRchの音信号をミキシングした音信号。
SL’chの音信号:レベル調整を行ったSLchの音信号。
SR’chの音信号:レベル調整を行ったSRchの音信号。
続いて、音信号出力部113は5つの調整済み音信号を各々、n個に分岐させる。音信号出力部113はn個のスピーカ1101の各々に対応するn個の処理ブロック1131を備えている。n個に分岐された調整済み音信号はn個の処理ブロック1131の各々に入力される。
各々の処理ブロック1131は5つの調整済み音信号に応じた5つの遅延器および5つの増幅器と、増幅器により増幅された後の5つの音信号を加算する1つの加算器を備えており、入力された5つの調整済み音信号を各々、遅延器により遅延し、増幅器により増幅した後、それらを加算器により加算し、対応するスピーカ1101に出力する。
各処理ブロック1131が備える5つの遅延器の各々が行なう遅延処理のディレイタイムは、スピーカアレイ110から放音されるべき音響ビームの方向およびその音響ビームの焦点距離に応じて定まる。また、各処理ブロック1131が備える5つの増幅器の各々が行なう増減幅における増幅率は、形成したい音響ビームの形状や放射特性に応じて定まる。放音装置11はそれらのディレイタイムおよび増幅率と、上述した調整済み音信号の生成のためのミキシングレベルおよび増幅率(以下、これらのパラメータを「音響ビーム形成パラメータ」と呼ぶ)を算出し音信号出力部113に設定する制御部115を備えている。
本実施形態にかかる放音装置11は、従来技術にかかる放音装置と比べ、音響ビームの放音方向の決定の仕組みが異なる。従って、以下に放音装置11が行う処理のうち、音響ビームの放音方向の決定に関する処理を中心に説明する。
図3は、放音装置11が音響ビームの放音方向を決定する仕組みを説明するための図である。放音装置11は、図3(A)の矢印Dに示すように、スピーカアレイ110からテスト音の音響ビーム(以下、「テスト用音響ビーム」と呼ぶ)を旋回するように放音し、聴取位置に配置されたマイクロフォン12により集音される音信号(以下、マイクロフォン12が生成する音信号を「集音信号」と呼ぶ)をマイクロフォン12から受け取る。その結果、放音装置11は図3(B)に示すような、テスト用音響ビームの放音方向と集音信号が示す音圧レベルとの関係(以下、「音圧プロファイル」と呼ぶ)を示すデータを得る。放音装置11は音圧プロファイルにおいて音圧レベルがピーク値を示す方向(以下、「ピーク方向」と呼ぶ)の中から、所定の規則に従い各チャンネルの音響ビームの放音方向に適するものを選択する。これにより、放音装置11は各チャンネルの音響ビームの放音方向を決定する。
具体的には、まず、制御部115はテスト音を示すテスト音信号を順次、音信号出力部113に出力するとともに、時間の経過に伴い音響ビームの放音方向が水平面上で変化するように時々刻々と異なる音響ビーム形成パラメータを生成し、そのように生成した音響ビーム形成パラメータを順次、音信号出力部113に出力する。なお、テスト音信号としては、音響ビームの形成が可能な音信号であり、直接音と反射音が重なり合っても互いに干渉し合うことがない波形信号が望ましい。例えば、4kHzを中心とする周期性のない波形信号や雑音信号などがテスト音信号として好適である。放音装置11は各種データを記憶する記憶部118を備えており、テスト音信号を示すデータも記憶部118に記憶されている。
音信号出力部113は制御部115から順次受け取るテスト音信号を、同じく制御部115から順次受け取る音響ビーム形成パラメータに従い処理し、スピーカ1101の各々に対し出力する。その結果、スピーカアレイ110から、テスト用音響ビームが水平面上を旋回するように移動しながら放音されることになる。
上記のようにスピーカアレイ110から放音されたテスト用音響ビームは、直接、または何度か壁面に反射した後、聴取位置に配置されたマイクロフォン12に到達し集音され、集音信号に変換されて放音装置11に入力される。
放音装置11はマイクロフォン12から出力される集音信号を受け取る集音信号入力部116(音信号入力手段)と、集音信号入力部116が受け取った集音信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するADコンバータ117を備えている。ADコンバータ117はデジタル信号に変換した集音信号を制御部115に引き渡す。
制御部115は音信号出力部113に対し音響ビーム形成パラメータにより指示を行なったテスト用音響ビームの放音方向を示す方向データと、その音響ビーム形成パラメータの出力を行った後、ADコンバータ117から受け取った集音信号とを互いに関連付けて記憶部118に記憶させる。
テスト用音響ビームの旋回が完了すると、制御部115は記憶部118に互いに関連付けて記憶されている多数の方向データと集音信号の組を読み出し、ノイズ除去のための平滑化を行なって、図3(B)に示した音圧プロファイルを生成する。図3(B)のグラフにおいては、テスト用音響ビームの放音の方向が横軸に、集音信号の音圧レベルが縦軸に示されている。なお、音圧プロファイルにおいて、放音の方向はベースラインBの左側方向を基準とし、水平面上において反時計回りに増加する角度により特定される。
続いて、制御部115は音圧プロファイルに示される音圧レベルがピーク値を示す点(以下、「ピーク点」と呼ぶ)を特定し、特定したピーク点のピーク方向の中から各チャンネルの音響ビームの放音方向に適するものを選択する。そのための機能構成部として、制御部115はピーク特定部1151と、方向設定部1152を備えている(図1参照)。
ピーク特定部1151は、音圧プロファイルのグラフの形状を解析し、方向の変化に伴い音圧レベルが所定の閾値以上に増加した後、所定の閾値以下に減少するカーブを描く領域をピーク領域として特定する。図3(C)において、A1〜A5で示される領域がピーク特定部1151により特定されたピーク領域である。続いて、ピーク特定部1151は特定したピーク領域の各々に関し、音圧レベルが最大値を示す点をピーク点として特定する。図3(C)に示すP1〜P5がピーク特定部1151により特定されたピーク点である。
方向設定部1152は、以下に述べる規則に従い、ピーク特定部1151により特定されたピーク点の中から各ピーク点に割り当てるチャンネルを決定する。
(Cchに割り当てるピーク方向)
ピーク値が最大を示すピーク方向で、90度を中心とする所定の範囲(例えば60度〜120度)内に含まれるピーク方向。
(Lchに割り当てるピーク方向)
ピーク方向が0度側に近い所定の範囲(例えば30度〜50度)内に含まれ、ピーク値がCchに割り当てたピーク方向のピーク値の所定比率(例えば40%)以上であるピーク方向。(それらが複数ある場合、ピーク方向が0度に近いもの)
(Rchに割り当てるピーク方向)
ピーク方向が180度側に近い所定の範囲(例えば130度〜150度)内に含まれ、ピーク値がCchに割り当てたピーク方向のピーク値の所定比率(例えば40%)以上であるピーク方向。(それらが複数ある場合、ピーク方向が180度に近いもの)
(SLchに割り当てるピーク方向)
ピーク方向が所定の範囲(Lchのピーク方向の特定に用いる範囲よりも90度側に設定された範囲であり、例えば40度〜60度)内に含まれ、ピーク値がCchに割り当てたピーク方向のピーク値の所定比率(例えば、20%)以上であるピーク方向。(それらが複数ある場合、ピーク値が最大のもの)
(SRchに割り当てるピーク方向)
ピーク方向が所定の範囲(Rchのピーク方向の特定に用いる範囲よりも90度側に設定された範囲であり、例えば120度〜140度)内に含まれ、ピーク値がCchに割り当てたピーク方向のピーク値の所定比率(例えば、20%)以上であるピーク方向。(それらが複数ある場合、ピーク値が最大のもの)
方向設定部1152は上記の規則に従い、以下のピーク方向を各チャンネルの音響ビームの放音方向として割り当てる。
(Cch)ピーク点P3のピーク方向(角度θ3
(Lch)ピーク点P1のピーク方向(角度θ1
(Rch)ピーク点P5のピーク方向(角度θ5
(SLch)ピーク点P2のピーク方向(角度θ2
(SRch)ピーク点P4のピーク方向(角度θ4
以上により、図3(D)に示すように、5つのチャンネルに応じた音響ビームの放音方向が特定される。続いて、制御部115は、音響ビームが聴取位置に到達する際の方向が聴取者から見て左右非対称である場合にファントム音源の形成を行なうための処理を行なう。そのための機能構成部として、制御部115は時間計測部1153、正常反射判定部1154(判定手段)および放音方向調整部1155を備えている。また、放音装置11は、時間計測部1153が以下に述べる伝達時間を計測するために要する時刻を示す時刻データを生成する計時部119を備えている。計時部119は、基準時刻からの経過時間を継続的に計測しており、時間計測部1153の要求に応じて時刻を示す時刻データを生成し、時間計測部1153に引き渡す。
時間計測部1153は各チャンネルの音響ビームがスピーカアレイ110から放音され聴取位置に到達するまでの伝達時間を計測する機能構成部である。伝達時間の計測のために、制御部115はTSP(Time Stretched Pulse)波形信号を音響ビームとしてSLchの放音方向に放音させるための音響ビーム形成パラメータを音信号出力部113に出力するとともに、TSP波形信号を順次、音信号出力部113に出力する。時間計測部1153は制御部115から音信号出力部113に対し出力されたTSP波形信号とその出力の時刻を示すデータを記憶部118に記憶させる。音信号出力部113は制御部115から受け取るTSP波形信号を音響ビーム形成パラメータに従い処理した後、スピーカ1101に出力する。その結果、スピーカアレイ110からSLchの放音方向にTSP波形信号の音響ビーム(以下、「計測用音響ビーム」と呼ぶ)が放音されることになる。
スピーカアレイ110から放音された計測用音響ビームはマイクロフォン12に到達し集音され、集音信号に変換されて放音装置11に入力される。時間計測部1153はADコンバータ117から受け取る集音信号とその受信の時刻を示すデータを記憶部118に記憶させる。
続いて、時間計測部1153は上記のように記憶部118に記憶させたTSP波形信号およびその出力の時刻を示すデータと、計測用音響ビームに応じた取得位置音信号およびその受信の時刻を示すデータに基づき、例えば相互相関処理によりそれらのデータが示す波形の対応関係を特定した後、TSP波形信号が出力された時刻と、計測用音響ビームに応じた取得位置音信号が制御部115により受け取られた時刻との差を算出する。時間計測部1153はそのように算出した時刻の差から所定時間を差し引いた時間を、計測用音響ビームがスピーカアレイ110からSLchの放音方向に放音されて聴取位置に到達するまでに要した伝達時間として特定する。
ここで所定時間とは、制御部115がTSP波形信号を音信号出力部113に出力したタイミングから、計測用音響ビームがスピーカアレイ110から放音されるまでに要する放音装置11における処理時間と、聴取位置に配置されたマイクロフォン12に計測用音響ビームが到達してから、その音を示す集音信号が制御部115に入力されるまでに要するマイクロフォン12および放音装置11における処理時間の合計である。
時間計測部1153は、SLchに関し上述した伝達時間の特定の処理を他のチャンネルに関しても行なう。その結果、5つのチャンネルの各々に関し、伝達時間が特定されることになる。
時間計測部1153により特定される伝達時間は各々、各音響ビームの伝達経路の距離に比例する。正常反射判定部1154は5つの放音方向に放音される音響ビームの伝達時間から算出される伝達経路の距離と、それらの音響ビームの放音方向に基づき、各チャンネルの音響ビームの伝達経路が予め想定された理想伝達経路であるか否かの判定を行なう。ここで「理想伝達経路」とは、放音装置11から放音され、放音装置11の正面方向に平行もしくは垂直に配置された壁面等の反射面に1回もしくは2回反射して聴取位置に到達する伝達経路のことをいう。
図4は正常反射判定部1154による判定処理の動作を説明するために、音響ビームの伝達経路と、それらの伝達経路の距離(時間計測部1153により計測された伝達時間に基づき算出される距離)の例を示した図である。図4(A)は、放音装置11およびマイクロフォン12が空間SPの左右方向のほぼ中央に配置された例における音響ビームの伝達経路を示し、図4(B)はその例における音響ビームの放音方向(横軸)と伝達経路の距離(縦軸)を示している。
なお、以下の説明において、各チャンネルの音響ビームの放音方向を示す角度を各々、θL、θSL、θC、θSR、θR(ただし、下付文字はチャンネルを示す)とし、各チャンネルの伝達経路の距離を各々、dL、dSL、dC、dSR、dR(ただし、下付文字はチャンネルを示す)とする。また、各チャンネルの理想伝達経路の距離を各々、DL、DSL、DC、DSR、DR(ただし、下付文字はチャンネルを示す)とする。ただし、Cchに関しては伝達時間に基づき算出された伝達経路の距離を理想伝達経路の距離と見なすので、dC=DCである。
図4(A)および(B)に示される例の場合、正常反射判定部1154は距離DL、DSL、DSR、DRを以下のように算出する。
Figure 0006003409
正常反射判定部1154は距離dL、dSL、dSR、dRを、上記のように算出した距離DL、DSL、DSR、DRと各々比較して、それらが十分に近いか否かに基づき、各チャンネルの伝達経路が理想伝達経路であるか否かを判定する。具体的には、正常反射判定部1154は、例えば許容誤差を±0.2とし、0.8≦dL/DL≦1.2であればLchの伝達経路は理想伝達経路であると判定し、それ以外は理想伝達経路でないと判定する。他のチャンネルに関しても同様である。この場合、いずれのチャンネルに関しても、それらの伝達経路は理想伝達経路であると判定される。
図4(C)は、放音装置11およびマイクロフォン12が空間SPの左右方向の左側に偏った位置に配置された例における音響ビームの伝達経路を示し、図4(D)はその例における音響ビームの放音方向と伝達経路の距離を示している。
図4(C)および(D)に示される例の場合、正常反射判定部1154は距離DL、DSL、DSR、DRを以下のように算出する。
Figure 0006003409
正常反射判定部1154は距離dL、dSL、dSR、dRを、上記のように算出した距離DL、DSL、DSR、DRと各々比較して、それらが十分に近いか否かに基づき、各チャンネルの伝達経路が理想伝達経路であるか否かを判定する。この場合、いずれのチャンネルに関しても、それらの伝達経路は理想伝達経路であると判定される。
図4(E)は、図4(F)と同様に放音装置11およびマイクロフォン12が空間SPの左右方向の左側に偏った位置に配置されており、Rchの音響ビームが空間SPの右前方の家具Kに反射してマイクロフォン12に到達する例を示し、図4(F)はその例における音響ビームの放音方向と伝達経路の距離を示している。
図4(E)および(F)に示される例の場合、正常反射判定部1154は距離DL、DSL、DSR、DRを以下のように算出する。
Figure 0006003409
正常反射判定部1154は距離dL、dSL、dSR、dRを、上記のように算出した距離DL、DSL、DSR、DRと各々比較して、それらが十分に近いか否かに基づき、各チャンネルの伝達経路が理想伝達経路であるか否かを判定する。この場合、Lch、SLch、SRchの伝達経路は理想伝達経路であると判定されるが、Rchに関しては理想伝達経路ではないと判定される。
正常反射判定部1154は上記にて例示したような判定処理を行なうと、その判定結果を放音方向調整部1155(図1参照)に引き渡す。
放音方向調整部1155は、正常反射判定部1154から、いずれのチャンネルの伝達経路も理想伝達経路である、という判定結果を受け取った場合、方向設定部1152により特定されたLchとRchの音響ビームの聴取位置に対する到達方向が概ね左右対称であるか、またSLchとSRchの音響ビームの聴取位置に対する到達方向が概ね左右対称であるか、の判定を行なう。具体的には、放音方向調整部1155は、例えば許容誤差を±10°とし、-10°≦(90°-θL)−(θR−90°)≦10°であればLchとRchの音響ビームの到達方向が概ね左右対称であると判定し、それ以外は左右非対称であると判定する。同様に、放音方向調整部1155は、-10°≦(90°+θSL)−(270°−θSR)≦10°であればSLchとSRchの音響ビームの到達方向が概ね左右対称であると判定し、それ以外は左右非対称であると判定する。
例えば図4に示した3つの例のうち、図4(A)および(B)に示した例と、図4(C)および(D)に示した例において、放音方向調整部1155は正常反射判定部1154からいずれのチャンネルの伝達経路も理想伝達経路である、という判定結果を受け取るため、音響ビームの聴取位置に対する到達方向が概ね左右対称であるか否かの判定を行なう。図4(A)および(B)に示した例の場合、LchとRch、SLchとSRchの両方に関し概ね左右対称であると判定され、図4(C)および(D)に示した例の場合、それらの両方に関し左右非対称であると判定される。
放音方向調整部1155は、音響ビームの聴取位置に対する到達方向がいずれのチャンネルの組に関しても概ね左右対称であると判定した場合(例えば、図4(A)および(B)に示した例の場合)、ファントム音源の形成は不要と判断し、以下に説明するファントム音源の形成のためのミキシングレベルおよび増幅率の算出は行わない。
一方、放音方向調整部1155は、音響ビームの聴取位置に対する到達方向がいずれかのチャンネルの組に関し左右非対称であると判定した場合(例えば、図4(C)および(D)に示した例の場合)、ファントム音源の形成のためのミキシングレベルおよび増幅率を算出する。
図5は図4(C)および(D)の例において、放音方向調整部1155が行なうファントム音源の形成のためのミキシングレベルおよび増幅率の算出の手順を説明するための図である。図5(A)に示すように、この例の場合、ファントム音源が形成されない状態において、聴取位置にいる聴取者Uに対しては、壁面WL上に配置された(実在しない)スピーカ90Lの方向からLchの音響ビームが到達し、壁面WR上に配置された(実在しない)スピーカ90RからRchの音響ビームが到達することになる。
放音方向調整部1155は聴取者Uから放音装置11に向かう方向を基準方向(0度方向)とし、聴取者Uからみたスピーカ90Lの方向を示す角度(絶対値)である(90°−θL)と、聴取者Uからみたスピーカ90Rの方向を示す角度(絶対値)である(θR−90°)のうち、小さい方の角度と左右対称な位置にファントム音源を形成するためのミキシングレベルおよび増幅率の算出を行なう。
この場合、(90°−θL)<(θR−90°)であるため、放音方向調整部1155は聴取者Uからみて放音装置11の方向から右側に(90°−θL)の方向に、スピーカ90Rの代わりを務めるファントム音源90’Rを形成するように、Rchの音信号をCchの音信号にミキシングしてC’chの音信号を生成する際のミキシングレベルと、Rchの音信号を増幅(減幅)してR’chの音信号を生成する際の増幅率を算出する。
この場合、Rchの音信号全体のレベルに対する、C’chの音信号にミキシングされるRchの音信号のレベルの比率であるミキシング比率MR(%)は、聴取者Uからみてスピーカ90Cの方向とファントム音源90’Rの方向とがなす角度である(90°−θL)と、聴取者Uからみてスピーカ90Rの方向とファントム音源90’Rの方向とがなす角度である(θR+θL)との比率に基づき、Pair-Wise法等の既知の方法に従い決定される。その際、例えば(90°−θL):(θR+θL)=1:0であれば、ミキシング比率MRは0%(Rchの音信号は全てR’chの音信号に含まれ、C’chの音信号には含まれない)、(90°−θL):(θR+θL)=1:1であれば、ミキシング比率MRは50%(Rchの音信号はC’chの音信号とR’chの音信号に同レベルで含まれる)、(90°−θL):(θR+θL)=0:1であれば、ミキシング比率MRは100%(Rchの音信号は全てC’chの音信号に含まれ、R’chの音信号には含まれない)となる。
一方、(90°−θL)>(θR−90°)の場合、放音方向調整部1155は聴取者Uからみて放音装置11の方向から左側に(θR−90°)の方向に、スピーカ90Lの代わりを務めるファントム音源90’L(図示略)を形成するように、Lchの音信号をCchの音信号にミキシングしてC’chの音信号を生成する際のミキシングレベルと、Lchの音信号を増幅(減幅)してL’chの音信号を生成する際の増幅率を算出する。
この場合、Lchの音信号全体のレベルに対する、C’chの音信号にミキシングされるLchの音信号のレベルの比率であるミキシング比率ML(%)は、聴取者Uからみてスピーカ90Cの方向とファントム音源90’Lの方向とがなす角度である(θR−90°)と、聴取者Uからみてスピーカ90Lの方向とファントム音源90’Lの方向とがなす角度である(180°−θR−θL)との比率に基づき、Pair-Wise法等の既知の方法に従い決定される。その際、例えば(θR−90°):(180°−θR−θL)=1:0であれば、ミキシング比率MLは0%(Lchの音信号は全てL’chの音信号に含まれ、C’chの音信号には含まれない)、(θR−90°):(180°−θR−θL)=1:1であれば、ミキシング比率MLは50%(Lchの音信号はC’chの音信号とL’chの音信号に同レベルで含まれる)、(θR−90°):(180°−θR−θL)=0:1であれば、ミキシング比率MLは100%(Lchの音信号は全てC’chの音信号に含まれ、L’chの音信号には含まれない)となる。
放音方向調整部1155は上記のようにLchとRchに関するファントム音源の形成のためのパラメータ算出を完了すると、引き続きSLchとSRchに関するファントム音源の形成のためのパラメータ算出を行なう。図5(B)に示すように、この例の場合、SLchとSRchに関するファントム音源が形成されない状態において、聴取位置にいる聴取者Uに対しては、壁面WB上の左側に配置された(実在しない)スピーカ90SLの方向からSLchの音響ビームが到達し、壁面WB上の右側に配置された(実在しない)スピーカ90SRからSRchの音響ビームが到達することになる。
放音方向調整部1155は聴取者Uから放音装置11に向かう方向を基準方向(0度方向)とし、聴取者Uからみたスピーカ90SLの方向を示す角度(絶対値)である(90°+θSL)と、聴取者Uからみたスピーカ90SRの方向を示す角度(絶対値)である(270°−θSR)のうち、小さい方の角度と左右対称な位置にファントム音源を形成するためのミキシングレベルおよび増幅率の算出を行なう。この場合、(270°−θSR)<(90°+θSL)であるため、放音方向調整部1155は聴取者Uからみて放音装置11の方向から左側に(270°−θSR)の方向に、スピーカ90SLの代わりを務めるファントム音源90’SLを形成するように、SLchの音信号をLchの音信号にミキシングしてL’chの音信号を生成する際のミキシングレベルと、SLchの音信号を減幅してSL’chの音信号を生成する際の増幅率を算出する。
その際のSLchの音信号全体のレベルに対する、L’chの音信号にミキシングされるSLchの音信号のレベルの比率であるミキシング比率MSLは、上述したミキシング比率MRおよびMLと同様の考え方により決定されるため、その説明を省略する。また、(270°−θSR)>(90°+θSL)の場合も同様である。
以上により、放音方向調整部1155によるファントム音源の形成のためのパラメータ算出が完了する。
図4(E)および(F)に示した例においては、放音方向調整部1155は正常反射判定部1154からRchおよびSRchの伝達経路が理想伝達経路ではない、という判定結果を受け取る。この場合、放音方向調整部1155は聴取位置に対する音響ビームの到達方向の左右対称性の判定およびファントム音源の形成のためのパラメータ算出は行なわない。
放音方向調整部1155により上記のようにミキシングレベルおよび増幅率が算出されると、制御部115は方向設定部1152により特定された音響ビームの放音方向に向けて音響ビームを放音させるためのディレイタイム等のパラメータと、放音方向調整部1155により算出されたチャンネル間のレベル調整およびファントム音源の形成のためのパラメータとを含む音響ビーム形成パラメータを生成し、音信号出力部113に出力する。
その後、音信号出力部113は外部の装置からソース音信号入力部111およびデコーダ112を経由して音信号を受け取ると、制御部115から受け取った音響ビーム形成パラメータに従いそれらの音信号を処理した後、DAコンバータ114を介してスピーカアレイ110に出力する。その結果、スピーカアレイ110からC’chの音響ビームが角度θ3の方向に、L’chの音響ビームが角度θ1の方向に、R’chの音響ビームが角度θ5の方向に、SL’chの音響ビームが角度θ2の方向に、SR’chの音響ビームが角度θ4の方向に、各々放音されることになる。
いずれかのチャンネルの伝達経路が理想伝達経路でない場合に本実施形態にかかる放音装置11がファントム音源の形成を行なわない理由を以下に説明する。図6は図4(E)および(F)に示した例において従来の放音装置がファントム音源の形成を行なった状態を示している。この場合、Rchの音響ビームは家具Kに反射して、聴取者Uに対し角度xKの方向から到達するが、放音装置はRchの音響ビームの放音方向に基づき、聴取者Uに対し角度(θR−90°)の方向から到達すると判断する。
そのため、放音装置は図6に示す(実在しない)スピーカ90Rを聴取者Uから見て正面方向に近付けるように、ファントム音源90’Rの形成を行なおうとする。すなわち、Rchの音信号がCchにミキシングされてC’chの音信号が生成され、Rchの音信号が減幅されてR’chの音信号が生成される。それらの音信号がCchの放音方向、Rchの放音方向に各々音響ビームとして放音される結果、実際には聴取者Uからみて正面方向と家具Kの方向とを内分する方向にファントム音源90’’Rが形成されてしまう。その結果、ファントム音源の形成を行なわない場合よりもLchとRchの音の左右のバランスが悪化してしまう。
本実施形態にかかる放音装置11によれば、音響ビームの伝達時間を用いて算出した伝達経路の距離に基づき音響ビームの伝達経路が理想伝達経路であるか否かの判定が行なわれ、理想伝達経路であると判定された場合に限り、音響ビームの聴取者Uに対する到達方向の左右非対称を解消するためのファントム音源の形成処理が行なわれる。従って、家具等の想定外の反射物における音響ビームの反射があったとしても、上記のようにファントム音源の形成により音の左右のバランスが悪化することはない。
[変形例]
上述した実施形態は本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。
上述した実施形態の説明において、聴取位置(マイクロフォン12の配置位置)が放音装置11の正面方向である場合につき説明したが、聴取位置が放音装置11の正面方向からずれている場合においても、本発明は適用可能である。すなわち、θC≠90°の場合、理想伝達経路の距離DL、DSL、DSR、DRは、例えば以下の算出式により算出される。
Figure 0006003409
また、上述した実施形態において、放音装置11はいずれかのチャンネルの伝達経路が理想伝達経路でないと判定された場合、ファントム音源の形成を全く行わない。この構成に代えて、いずれかのチャンネルの伝達経路が理想伝達経路でない場合であっても、理想伝達経路であると判定された伝達経路のチャンネルを用いてファントム音源の形成が可能であり、またそれが望ましい場合に、放音装置11がファントム音源の形成を行う構成が採用されてもよい。
また、上述した実施形態において、伝達時間の計測のために放音装置11はTSP波形信号の音響ビームを計測用音響ビームとして放音する構成が採用されている。計測用音響ビームとして利用可能な信号はTSP波形信号に限られず、例えばインパルス信号や反復性のない他の波形信号などの他の信号が計測用音響ビームとして利用されてもよい。
また、上述した実施形態において、スピーカアレイ110は水平方向にのみ音響ビームを放音する構成が採用されている。本発明はこれに限られず、上下方向にも音響ビームの放音が可能なスピーカアレイにより、床や天井における反射を利用して、3次元的なマルチチャンネル音の再生を行う放音装置に適用されてもよい。
また、上述した実施形態においては、放音装置11が5.1チャンネルのマルチチャンネルサラウンド音を再生する場合を例として説明したが、本発明にかかる放音装置が再生するマルチチャンネル音のチャンネル数やその構成は5.1チャンネルに限られず、他の様々なマルチチャンネル音の再生において本発明は適用され得る。
また、上述した実施形態においては、放音装置11がテスト用音響ビームの旋回放音により音圧プロファイルを生成し、音圧プロファイルが示すピーク方向の中から各チャンネルの音響ビームの放音方向を選択し割り当てる構成が採用されているが、各チャンネルの音響ビームの放音方向はどのように決定されてもよい。例えばユーザ等により手動調整により設定されてもよい。すなわち、放音方向がいずれの方法により決定されたものであっても、本発明にかかる放音装置は、設定された放音方向の各々に計測用音響ビームを放音し、伝達時間を計測し、伝達時間が示す伝達経路の距離と計測用音響ビームの放音の方向とに基づき、ファントム音源の形成の可否を決定することにより、ファントム音源の形成による音の左右のバランスの悪化を回避することができる。
なお、上述した実施形態の説明において示した具体的な数値、条件、処理の順序、算出式等はあくまで例示であって、他の数値、条件、処理の順序、等価の算出式等が採用され得る。
1…放音システム、11…放音装置、12…マイクロフォン、90…スピーカ、91…放音装置、110…スピーカアレイ、111…ソース音信号入力部、112…デコーダ、113…音信号出力部、114…DAコンバータ、115…制御部、116…集音信号入力部、117…ADコンバータ、118…記憶部、119…計時部、1101…スピーカ、1131…処理ブロック、1151…ピーク特定部、1152…方向設定部、1153…時間計測部、1154…正常反射判定部、1155…放音方向調整部

Claims (4)

  1. 複数のスピーカを有するスピーカアレイと、
    前記複数のスピーカのうちの1以上のスピーカに複数のチャンネルの音信号を出力し、当該音信号の出力のタイミングを制御して前記スピーカアレイから複数の方向に音響ビームを放音させる音信号出力手段と、
    聴取位置に配置されたマイクロフォンから出力される音信号を受け取る音信号入力手段と、
    複数のチャンネルの各々の放音方向を設定する方向設定手段と、
    前記スピーカアレイが前記方向設定手段により設定された放音方向に対して放音する計測用の音響ビームが前記スピーカアレイから放音されて前記マイクロフォンに到達するまでに要した時間を伝達時間として計測する時間計測手段と、
    前記計測用の音響ビームの放音方向と、前記時間計測手段により計測された伝達時間とに基づき、前記計測用の音響ビームが予め想定されている伝達経路を伝達したか否かを判定する判定手段と、
    前記複数のチャンネルのうち予め定められた2つのチャンネルの各々に関し前記判定手段により計測用の音響ビームが予め想定されている伝達経路を伝達したと判定され、かつ、当該2つのチャンネルに対し前記方向設定手段により設定された放音方向に放音された音響ビームの前記聴取位置に対する到達方向が許容誤差を超えて左右非対称である場合に、当該2つのチャンネルの音信号の少なくとも一方を前記複数のチャンネルの音信号のうち当該音信号とは異なるチャンネルの音信号に加算する方向調整手段と
    を備える放音装置。
  2. 前記方向調整手段は、前記音信号の加算において互いに加算される2つの音信号に応じた2つのチャンネルに設定された放音方向に基づき、互いに加算される2つの音信号の振幅を決定する
    請求項1に記載の放音装置。
  3. 前記方向設定手段は、前記スピーカアレイが放音の方向を変化させながら放音するテスト用の音響ビームの方向を示す方向データと、前記テスト用の音響ビームの放音時に前記音信号入力手段が前記マイクロフォンから受け取った集音信号とに基づいて、前記設定する放音方向を決定する
    請求項1または2に記載の放音装置。
  4. 複数のスピーカを有するスピーカアレイと、
    前記複数のスピーカのうちの1以上のスピーカに複数のチャンネルの音信号を出力し、当該音信号の出力のタイミングを制御して前記スピーカアレイから複数の方向に音響ビームを放音させる音信号出力手段と、
    聴取位置に配置されたマイクロフォンが出力される音信号を受け取る音信号入力手段と
    を備える放音装置が、
    複数のチャンネルの各々の放音方向を設定するステップと、
    前記複数のチャンネルの各々に設定した放音方向に対し、前記スピーカアレイにより、計測用の音響ビームを放音するステップと、
    前記計測用の音響ビームの放音時に、前記音信号入力手段により、前記マイクロフォンから集音信号を受け取るステップと、
    前記計測用の音響ビームの放音時に前記音信号入力手段により受け取った集音信号に基づき、前記計測用の音響ビームが前記スピーカアレイから放音されて前記マイクロフォンに到達するまでに要した時間を伝達時間として計測するステップと、
    前記計測用の音響ビームの放音方向と、前記伝達時間とに基づき、前記計測用の音響ビームが予め想定されている伝達経路を伝達したか否かを判定するステップと、
    前記複数のチャンネルのうち予め定められた2つのチャンネルの各々に関し、計測用の音響ビームが予め想定されている伝達経路を伝達したと判定し、かつ、当該2つのチャンネルに対し設定した放音方向に放音された音響ビームの前記聴取位置に対する到達方向が許容誤差を超えて左右非対称である場合に、当該2つのチャンネルの音信号の少なくとも一方を前記複数のチャンネルの音信号うち当該音信号とは異なる音信号に加算するステップと
    を備える音響ビームの放音方向の調整方法。
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