JP2006336822A - ウォームホイール減速機及び電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 強化繊維配合の合成樹脂製ギヤ歯を備えたウォームホイールとウォームとの噛合面に生じる摩耗を防止し、ギア動作性能を良好に維持することができる車両用のウォームホイール減速機及び電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】 ウォームホイール減速機のウォーム3は金属製のギヤであり、前処理としてギヤ歯3aの表面をショットピーニング加工して微細なディンプルDを形成し、ディンプルが形成された表面に、ショットピーニング加工により錫粉末、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤を投射して被膜Lを形成する。ディンプルDによりギヤ歯3aに対する固体潤滑剤の被膜Lの結合力を高め、固体潤滑剤の被膜Lの耐久性を向上させることができる。
【選択図】 図2
【解決手段】 ウォームホイール減速機のウォーム3は金属製のギヤであり、前処理としてギヤ歯3aの表面をショットピーニング加工して微細なディンプルDを形成し、ディンプルが形成された表面に、ショットピーニング加工により錫粉末、二硫化モリブデンなどの固体潤滑剤を投射して被膜Lを形成する。ディンプルDによりギヤ歯3aに対する固体潤滑剤の被膜Lの結合力を高め、固体潤滑剤の被膜Lの耐久性を向上させることができる。
【選択図】 図2
Description
この発明は、ギア動作性能を良好に維持することができるウォームホイール減速機及び電動パワーステアリング装置に関する。
車両用の操舵系では、外部動力源を用いて操舵アシストを行なうパワーステアリング装置が広く採用されている。従来、パワーステアリング装置の動力源としては、油圧ポンプをエンジンで駆動するものが多かったが、この種のパワーステアリング装置は、油圧ポンプを常時駆動することによるエンジンの駆動損失が大きいため(最大負荷時において、数馬力〜十馬力程度)、小排気量の軽自動車への採用が難しく、比較的大排気量の自動車でも燃料消費率の増加は無視できないほどであった。
そこで、これらの問題を解決するものとして、電動モータを動力源とする電動パワーステアリング装置(以下、EPSという)が近年広く採用されるようになった。EPSは、電動モータの電源に車載バッテリを使用するため、直接的なエンジンの駆動損失がなく、電動モータが操舵アシスト時のみ起動されるために、燃料消費率を低く抑えることができるほか、電子制御が極めて容易に行なえる等の特徴がある。
EPSでは、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクに対応して電動モータから補助操舵トルクを発生させ、動力伝達機構(減速機)により減速して操舵機構の出力軸に伝達するようになっており、動力伝達機構(減速機)として、広く採用されているウォームホイール減速機を使用したEPSでは、電動モータの回転軸に装着されたウォームにウォームホイールが噛合し、ウォームホイールが操舵機構の出力軸(例えば、ピニオン軸、コラム軸など)に嵌合している。
ウォームホイール減速機の構成は、アルミ製ギヤケースの中に、金属製(焼入れ又は調質処理した鉄)のウォームと、少なくともギヤ歯が合成樹脂(6、66、46ナイロン又はMCナイロン(登録商標))であるウォームホイールとを噛合させ、潤滑剤としてグリースが使用されている。
しかしながら、ウォームホイールのギヤ歯に使用されるナイロン(登録商標)樹脂は吸湿性があり、吸湿により膨らみ、ウォームホイールとウォームとの噛合間隔が狭くなり、グリース潤滑から素材同士の接触面の滑り潤滑に変わるため、減速機としての動作性能が低下するという不都合があり、また、この問題はウォームホイール減速機を構成するそれぞれの素材の温度変化に基づく熱膨張によっても生じる課題でもある。
この対策として、上記した従来技術では、ウォームとウォームホイールのいずれか一方又は両方の歯面に低摩擦剤をコーティングしたり、歯面に低摩擦剤を含浸させるなどの表面処理を施している。低摩擦剤としては、例えば、ポリテトラフルエチレン(略称:PTEF、登録商標:テフロン)などのフッ素樹脂がある。これにより、ウォームの歯面とウォームホイールの歯面との間の滑り面の摩擦係数を所定値まで低減させ、動力伝達効率を高めることができる(特許文献1参照)。
特開2002−213576号公報。
しかしながら、少なくともギヤ歯部分が合成樹脂で構成されたウォームホイールは、ガラス繊維等の強化繊維が配合されているから、上記したウォームとウォームホイールのいずれか一方又は両方の歯面に形成された低摩擦剤は、少なくともギヤ歯部分を構成する合成樹脂に配合されているガラス繊維等の強化繊維に対しても十分な耐久性が要求されるのであるが、現在のところ十分に満足できるものではない。この発明は上記課題を解決することを目的とするものである。
この発明は上記課題を解決するもので、請求項1の発明は、金属製のウォームに、少なくともギヤ歯が合成樹脂製のウォームホイールが噛合しているウォームホイール減速機において、前記ウォームは、ギヤ歯面が固体潤滑剤で被覆されていることを特徴とするウォームホイール減速機である。
そして、前記ウォームホイールのギヤ歯は、繊維強化された合成樹脂で構成されていることを特徴とする。
そして、前記ウォームは、ギヤ歯面を固体潤滑剤で被覆する前処理として、ギヤ歯面に微細なディンプルが形成されていることを特徴とする。
そして、前記ウォームギヤ歯面の前処理として形成される微細なディンプルはショットピーニング加工により形成されることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のウォームホイール減速機を備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
以上詳細に説明したとおり、この発明の請求項1に係るウォームホイール減速機は、ウォームのギヤ歯面が固体潤滑剤で被覆されているから、ウォームの歯面とウォームホイールの歯面との間の滑り面の摩擦係数を所定値まで低減させることができ、動力伝達効率を高めることができる。
そして、ウォームのギヤ歯面を固体潤滑剤で被覆する前処理として、ギヤ歯面に微細なディンプルを形成するので、ギヤ歯面に対する固体潤滑剤の被膜の結合力を高め、固体潤滑剤の被膜の耐久性を向上させることができる。
また、ギヤ歯面に微細なディンプルの形成をショットピーニング加工により行なうときは、ギヤ歯面に表面硬化層が形成されて、繊維強化された合成樹脂で構成されたウォームホイールのギヤ歯との噛合面の摩耗を軽減し、耐久性を増加させることができる。
また、この発明の請求項5に係る電動パワーステアリング装置は、前記したウォームホイール減速機を使用するものであるから、前記したウォームホイール減速機と同様の効果を奏するものである。
以下、この発明の実施の形態に係るウォームホイール減速機及び電動パワーステアリング装置を説明する。
図1は、この発明の実施の形態の電動パワーステアリング装置の構成を説明する断面図である。また、図2は被膜処理前及び被膜処理を施した後の金属製ウォームの正面図で、図2(a)は被膜処理前を示し、図2(b)は被膜処理を施した後の金属製ウォームの正面図である。
図1を参照して電動パワーステアリング装置の構成を説明する。図示されていないステアリングホイールに連結された入力軸にトーションバーを介して出力軸1が連結されており、出力軸1にウォームホイール減速機のウォームホイール2が固定されている。
ウォームホイール2は、その中心部のハブ2bが金属製であり、その外側にガラス繊維等の強化繊維が配合されたナイロン(登録商標)樹脂などの合成樹脂製のギヤ歯2aが固定されている。ウォームホイール2には金属製のウォーム3が噛合しており、ウォーム3の両端は軸受7、8により回転自在に支持されている。
ウォームホイール減速機のハウジング4には、電動モータ5が取付けられており、電動モータ5の駆動軸6とウォーム3とはスプライン結合している。
ウォーム3は金属製のギヤであり、そのギヤ歯3aの表面は被膜処理されている。以下、ギヤ歯3aの被膜処理について説明する。まず、前処理として、ショットピーニング加工によりギヤ歯3aの表層に表面硬化層を形成する。
ショットピーニングは鋼球を圧縮空気又は遠心力により加速して被加工物の表面に吹き付け、圧縮残留応力による表面硬化層を形成する加工法である。ショットピーニング加工を行なうことにより、表面硬化層が形成されるほか、被加工物の表面には微細なディンプル(窪み)が形成される。従って、前記したギヤ歯3aの表面にショットピーニング加工を施すと、ギヤ歯3aの表面に微細なディンプルDが形成される。
次に、ギヤ歯3aの表面に固体潤滑剤の被膜Lを形成する。被膜の形成も、前記したショットピーニング加工において、鋼球に代えて後述する固体潤滑剤の粒子を圧縮空気又は遠心力により加速してギヤ歯3aの表面に投射する。ギヤ歯3aの表面はショットピーニング加工により微細なディンプルDが形成されているので、投射された固体潤滑剤はディンプルに捉えるられて結合力を高め、固体潤滑剤の被膜Lの耐久性を向上させることができる。図2(a)は固体潤滑剤の被膜Lを形成する前の金属製ウォーム状態を示しており、図2(b)は固体潤滑剤の被膜Lを形成した後の状態を示している。
図3は、金属製ウォームの組織を説明する図で、ギヤ歯3aの表面付近はショットピーニング加工により表面硬化層Pが形成され、表面硬化層Pの表面に形成された固体潤滑剤の被膜Lが微細なディンプルDに結合している様子が示されている。
ギヤ歯3aの表面に形成する固体潤滑剤の被膜の材料は、錫粉末、二硫化モリブデンなどが挙げられるが、潤滑効果が得られる材料であれば、特に限定されない。
以上説明したギヤ歯3aの表面の前処理によれば、ギヤ歯3aの表面に表面硬化層が形成されるので、ウォームホイール2のギヤ歯2aを構成する合成樹脂に配合された強化繊維による摩耗を軽減する効果も得られる。
また、以上の説明では、ウォームのギヤ歯3aの表面の前処理をショットピーニング加工により行なう例で説明したが、ギヤ歯3aの表面の前処理は、その他の方法、例えばバレル加工、ショットブラスト加工などの方法でもよく、表面に微細なディンプルが形成される加工方法であれば限定されない。
また、ウォームのギヤ歯3aの表面に形成された微細なディンプルは、ウォームホイール減速機の長時間の使用によりギヤ歯3aの表面に形成された固体潤滑剤被膜が摩耗したときの、ウォームホイール2のギヤ歯2aとウォーム3のギヤ歯3aとの直接接触を軽減する油溜まりとしても機能させることができる。
強化繊維が配合された合成樹脂製のギヤ歯を備えたウォームホイールとウォームとの噛合面に生じる摩耗を防止し、ギア動作性能を良好に維持することができる車両用のウォームホイール減速機及び電動パワーステアリング装置である。
1 出力軸
2 ウォームホイール
2a ギヤ歯
2b ハブ
3 ウォーム
3a ギヤ歯
4 ハウジング
5 電動モータ
6 駆動軸
7、8 軸受
L 固体潤滑剤の被膜
D ディンプル
P 表面硬化層(ショットピーニング加工により表面硬化層)
2 ウォームホイール
2a ギヤ歯
2b ハブ
3 ウォーム
3a ギヤ歯
4 ハウジング
5 電動モータ
6 駆動軸
7、8 軸受
L 固体潤滑剤の被膜
D ディンプル
P 表面硬化層(ショットピーニング加工により表面硬化層)
Claims (5)
- 金属製のウォームに、少なくともギヤ歯が合成樹脂製のウォームホイールが噛合しているウォームホイール減速機において、
前記ウォームは、ギヤ歯面がショットピーニング加工により形成された固体潤滑剤で被覆されていること
を特徴とするウォームホイール減速機。 - 前記ウォームホイールのギヤ歯は、繊維強化された合成樹脂で構成されていること
を特徴とする請求項1に記載のウォームホイール減速機。 - 前記ウォームは、ギヤ歯面を固体潤滑剤で被覆する前処理として、ギヤ歯面に微細なディンプルが形成されていること
を特徴とする請求項1に記載のウォームホイール減速機。 - 前記ウォームギヤ歯面の前処理として形成される微細なディンプルはショットピーニング加工により形成されること
を特徴とする請求項3に記載のウォームホイール減速機。 - 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のウォームホイール減速機を備えたこと
を特徴とする電動パワーステアリング装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005165292A JP2006336822A (ja) | 2005-06-06 | 2005-06-06 | ウォームホイール減速機及び電動パワーステアリング装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005165292A JP2006336822A (ja) | 2005-06-06 | 2005-06-06 | ウォームホイール減速機及び電動パワーステアリング装置 |
Publications (1)
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JP2006336822A true JP2006336822A (ja) | 2006-12-14 |
Family
ID=37557545
Family Applications (1)
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JP2005165292A Pending JP2006336822A (ja) | 2005-06-06 | 2005-06-06 | ウォームホイール減速機及び電動パワーステアリング装置 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2006336822A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2021116916A (ja) * | 2020-01-29 | 2021-08-10 | 西部電機株式会社 | 可動体駆動装置及びその製造方法 |
-
2005
- 2005-06-06 JP JP2005165292A patent/JP2006336822A/ja active Pending
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JP2021116916A (ja) * | 2020-01-29 | 2021-08-10 | 西部電機株式会社 | 可動体駆動装置及びその製造方法 |
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