JP2006336055A - マグネシウム合金多孔質体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】均一で微細な気孔を有するマグネシウム合金多孔質体を得る。
【解決手段】マグネシウムを主成分とし、15ppm以上の水素を含有したマグネシウム溶湯を溶解調整する工程と、前記マグネシウム溶湯中に、5〜40重量%のマグネシウムに対する水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素と6.2重量%以下の炭化物、硼化物、酸化物、窒化物の粒子の少なくとも1種からなる微粒子とからなる水素溶解度調整元素−微粒子複合材を添加し撹拌して、Mg−水素溶解度調整元素−微粒子合金溶湯を調整する工程と、前記Mg−水素溶解度調整元素−微粒子合金溶湯を冷却凝固させる過程で、溶湯中の水素を発泡させ、マグネシウム合金中に気泡を形成させる工程と、を有するマグネシウム合金多孔質体の製造方法である。
【選択図】図1
【解決手段】マグネシウムを主成分とし、15ppm以上の水素を含有したマグネシウム溶湯を溶解調整する工程と、前記マグネシウム溶湯中に、5〜40重量%のマグネシウムに対する水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素と6.2重量%以下の炭化物、硼化物、酸化物、窒化物の粒子の少なくとも1種からなる微粒子とからなる水素溶解度調整元素−微粒子複合材を添加し撹拌して、Mg−水素溶解度調整元素−微粒子合金溶湯を調整する工程と、前記Mg−水素溶解度調整元素−微粒子合金溶湯を冷却凝固させる過程で、溶湯中の水素を発泡させ、マグネシウム合金中に気泡を形成させる工程と、を有するマグネシウム合金多孔質体の製造方法である。
【選択図】図1
Description
本発明は、マグネシウム合金多孔質体およびその製造方法、特に、均一で微細な気孔を有するマグネシウム合金多孔質体およびその多孔質体を得る製造方法に関する。
マグネシウム(Mg)は、実用金属材料中で最も軽量であり比強度に優れると共に、資源が豊富で、リサイクル性にも優れる。一方、近年、軽量化や環境負荷の低減等の要請が高まっており、このような状況で、Mgは有望な金属材料であり、各種分野の各種製品に、MgまたはMg合金が使用されつつある。
例えば、自動車等の車両分野では、Mg合金は、カバー・ケース類やホイールなど軽量構造部材への使用が進められており、CO2削減などによる環境負荷低減、燃費向上による省エネルギー化や車両の運動性能の向上等が図られている。また、電気機器の分野でも、ノート型パソコンや携帯電話等の筐体にMgまたはMg合金が使用され、モバイル機器のさらなる軽量化やリサイクル化が図られている。
さらに最近では、各種構造部材の一層の軽量化や、高性能な衝撃吸収体、断熱材、消音材等の提供を可能とするMg合金の多孔質体が開発されつつある。
金属多孔質体の製造プロセスとして以下のものが提案されている。例えば、アルミニウムに関する手法としては、金属溶湯へ水素化物などの発泡剤と増粘剤を添加し、金属溶湯の状態で発泡させる手法や、炭酸カルシウム(CaCO3)等の炭酸塩系化合物の粉末をフッ化物でコーティングした発泡剤をアルミニウム溶湯に添加して発泡させてアルミニウムの多孔質体を製造する方法(特許文献1参照)などが提案されている。
しかしながら、上記手法をマグネシウム多孔質体製造に適用した場合、Mg溶湯へ水素化物を多量に添加し化学反応により水素を生成させる必要があるが、活性なMgは化学反応によりMg溶湯が燃焼、爆発するおそれがあり、さらに溶湯中にCaなどの増粘剤を添加し溶湯からの水素離脱を防ぐことは、溶湯の粘度を非常に高くすることであり、かかる場合、一般的な彫像による形状付与が困難になる。
また、特許文献2には、金属粉末と水素化物などの発泡剤とからなる混合粉末をプレス形成し、加熱温度の制御して発泡させる方法が提案されている。
しかしながら、上述の方法であっても、発泡状態を制御するための加熱温度制御は極めて難しく、近年多孔質体に要求される強度と軽量化を満たすのに十分な気泡の大きさおよび均一性を保つことは困難であった。
そこで、特許文献3には、金属固体の水素溶解量は液体状態より少ないことを利用して、溶湯へ溶解した水素を金属要用が凝固するときに発泡させる方法が提案されている。この方法によれば、鋳造性を損なわずにさらに発泡率を向上させことができる。
上記特許文献3に提案されている多孔質体の製造方法では、凝固過程で固相が晶出した後、水素ガスは固相から水素溶解度が高い液相へ溶解することを繰り返し、最終的に液相の水素溶解度を上回ったときに水素ガスが発泡する。このとき、溶湯の固相率は非常に高い状態となり溶湯の粘度は高い。したがって、発泡した水素ガスは溶湯から放出されることなくマグネシウム溶湯が凝固することによって多孔質体が形成される。
しかしながら、上記特許文献3に記載の多孔質体の製造方法では、凝固の過程において粘度の低い溶湯から水素の離脱のおそれがあり、溶湯に溶解した水素すべてを気泡として生成させるのは困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、溶湯に溶解した水素をより多く気泡として発生させ、緻密で均一性の高い気孔を有するマグネシウム合金多孔質体およびその製造方法を提供する。
本発明のマグネシウム合金多孔質体およびその製造方法は、以下の特徴を有する。
(1)マグネシウムを主成分として、5〜40重量%のマグネシウムに対する水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素と6.2重量%以下の炭化物、硼化物、酸化物、窒化物の粒子の少なくとも1種からなる微粒子とを含み、合金全体を100体積%としたときの空隙率が5〜85体積%の多孔質体からなるマグネシウム合金多孔質体である。
添加された微粒子は、Mg溶湯中に気泡の核として数多く分散される。さらに、アルミニウム(Al)等のマグネシウムに対する水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素は、Mgと微粒子との親和性(濡れ性)を向上させるため、微粒子はMg溶湯中に均一に分散される。したがって、気泡の核となる微粒子がMg溶湯中に均一に分散され、その結果、溶湯中に均一に数多くの気泡が生成し、一方発泡時のMg溶湯中の水素含有量はほぼ一定であるため、それぞれ個々の気泡の成長は抑制され浮力の小さな気泡が生成することになる。これにより、微細で均一な気孔を有する多孔質体が形成され、さらに、微粒子による複合強化の効果もあり、多孔質体の強度向上につながる。
(2)マグネシウムを主成分とし、15ppm以上の水素を含有したマグネシウム溶湯を溶解調整する工程と、前記マグネシウム溶湯中に、5〜40重量%のマグネシウムに対する水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素と6.2重量%以下の炭化物、硼化物、酸化物、窒化物の粒子の少なくとも1種からなる微粒子とからなる水素溶解度調整元素−微粒子複合材を添加し撹拌して、Mg−水素溶解度調整元素−微粒子合金溶湯を調整する工程と、前記Mg−水素溶解度調整元素−微粒子合金溶湯を冷却凝固させる過程で、溶湯中の水素を発泡させ、マグネシウム合金中に気泡を形成させる工程と、を有するマグネシウム合金多孔質体の製造方法である。
水素溶解度調整元素−微粒子複合材として溶湯中に添加することによって、アルミニウム(Al)などの水素溶解度調整元素は、Mgと微粒子との親和性(濡れ性)を向上させるため、気泡の核となる微粒子はMg溶湯中に均一に分散される。したがって、溶湯中に均一に数多くの気泡が生成し、一方発泡時のMg溶湯中の水素含有量はほぼ一定であるため、それぞれ個々の気泡の成長は抑制され浮力の小さな気泡が成長することになり、その結果、微細で均一な気孔を有する多孔質体が形成される。さらに、微粒子による複合強化の効果もあり、多孔質体の強度向上につながる。
(3)上記(1)に記載のマグネシウム合金多孔質体において、前記微粒子の粒径は、0.1〜3.0μmである。
微粒子の粒径を上述の範囲にすることによって、気泡の核として溶湯中に均一に分散し、所望の発泡率を有する多孔質体を得ることができる。
(4)上記(2)に記載のマグネシウム合金多孔質体の製造方法において、前記水素溶解度調整元素−微粒子複合材は、水素溶解度調整元素のマトリックス中に粒子状態で微粒子が内包された複合材であり、前記微粒子の粒径は、0.1〜3.0μmである。
水素溶解度調整元素−微粒子複合材は、水素溶解度調整元素のマトリックス中に粒子状態で微粒子が内包された複合材であるため、Mg溶湯中に水素溶解度調整元素−微粒子複合材を添加した場合、Mg溶湯内への水素溶解度調整元素の溶解に伴い、微粒子もMg溶湯内に均一に分散されていくことになる。
(5)上記(1)または(3)に記載のマグネシウム合金多孔質体において、前記微粒子は、TiC粒子である。
(6)上記(2)または(4)に記載のマグネシウム合金多孔質体の製造方法において、前記微粒子は、TiC粒子であり、前記水素溶解度調整元素−微粒子複合材は、Al−TiC粒子複合材であり、前記Mg−水素溶解度調整元素−微粒子合金溶湯は、Mg−Al−TiC粒子合金溶湯である。
微粒子をTiC粒子にすることによって、発泡性を向上させることができる。
(7)上記(1),(3),(5)のいずれか1つに記載のマグネシウム合金多孔質体において、前記マグネシウムに対して水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素は、Al、Ni、Mn、Ca、Sr、Zn、Si、Li、希土類元素、Sn、Cu、Sb、Zrの少なくとも1種である。
(8)上記(2),(4)に記載のマグネシウム合金多孔質体の製造方法において、前記マグネシウムに対して水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素は、Al、Ni、Mn、Ca、Sr、Zn、Si、Li、希土類元素、Sn、Cu、Sb、Zrの少なくとも1種である。
上述した元素は、マグネシウムに対して水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素であり、これらの元素がMg合金溶湯内に存在することによって、マグネシウム合金多孔質体の空隙率を向上させることができる。
本発明によれば、微細で均一な気孔を有するマグネシウム合金多孔質体を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
[マグネシウム合金多孔質体の製造方法]
本発明の好適な実施の形態のマグネシウム合金多孔質体の製造方法に関し、図1を用いてその一例を説明する。
本発明の好適な実施の形態のマグネシウム合金多孔質体の製造方法に関し、図1を用いてその一例を説明する。
図1に示すように、本実施の形態のマグネシウム合金多孔質体の製造方法は、まず、マグネシウム(Mg)を主成分とし、15ppm以上の水素(H)を含有したマグネシウム溶湯を溶解調整する。
ここで、15ppm以上の水素(H)は予めMgインゴット中に含まれていてもよいし、または予め水素を含有するMgインゴットを溶解する際にさらに外部からの水素例えば大気中の水素がMg溶湯中に溶けて15ppm以上の水素含有となってもよい。なお、例えば、純Mgインゴット中には、最大50ppm程度のHが含有されており、Mg合金インゴット中には、合金元素の種類と合金量にもよるが、最大100ppm程度のHが含有されている。また、溶湯中では、水素(H)は、水素原子として存在し、(Mg液相中のH含有量)≫(Mg固相中のH含有量)という水素溶解度差の関係により、後に説明する凝固の過程で固相に溶解しきれなくなったHが、液相中でH2となり発泡して気孔を生成させることになる。
Mg溶湯中のH含有量は、15ppm以上であることが望ましく、15ppmよりも少ない場合には、後のMg−水素溶解度調整元素合金溶湯中のH2発泡が十分になされないからである。このH含有量は、20ppm以上、25ppm以上、30ppm以上、40ppm以上、50ppm以上さらには60ppm以上であることが好ましい。本発明では、H含有量の上限は特に問題とならず、Alの含有量にもよるが、H含有量が多いほど、高空隙率の多孔質が得られる。なお、後述する凝固の過程の最終段階でMg合金の水素溶解度を調整するために、後述するAl添加量を考慮して、Hが過飽和状態になり、凝固の最終段階でH2発泡が十分になされるようにすることが望ましい。
次に、Mg溶湯中に、5〜40重量%のマグネシウムに対する水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素(以下「水素溶解度調整元素」と略す)と6.2重量%以下の炭化物、硼化物、酸化物、窒化物の粒子の少なくとも1種からなる微粒子とからなる『水素溶解度調整元素−微粒子複合材』を添加し撹拌して、Mg−水素溶解度調整元素−微粒子合金溶湯を調整する。
ここで、『水素溶解度調整元素−微粒子複合材』は、水素溶解度調整元素のマトリックス中に粒子状態で微粒子が内包された複合材である。図1では、水素溶解度調整元素としてアルミニウム(Al)、微粒子としてTiC粒子を例に取って説明することとし、Al−TiC複合材をMg溶湯に添加している。図1のAl−TiC粒子複合材は、図2に示すように、アルミニウムマトリックス中に粒子状態でTiC粒子が内包された複合材である。これにより、Mg溶湯中にAl−TiC粒子複合材を添加した場合、Mg溶湯内へのAlの溶解に伴い、微粒子であるTiC粒子もMg溶湯内に均一に分散されていくことになる。すなわち、Al−TiC粒子複合材として溶湯中に添加することによって、アルミニウム(Al)は、Mgと微粒子との親和性(濡れ性)を向上させるため、気泡の核となる微粒子であるTiCは、Mg溶湯中に均一に分散される。したがって、溶湯中に均一に数多くの気泡が生成し、一方発泡時のMg溶湯中の水素含有量はほぼ一定であるため、それぞれ個々の気泡の成長は抑制され浮力の小さな気泡が生成することになり、その結果、図3に示すような微細で均一な気孔10を有するMg合金多孔質体が形成される。さらに、TiC粒子などの微粒子による複合強化の効果もあり、多孔質体の強度向上につながる。なお、図4に示すMg合金多孔質体は、微粒子を添加せずに製造したものであり、巨大な気孔20が散在している。
ここで、マグネシウムに対する水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素は、Mg溶湯中に5〜40重量%含有されるように、上記複合材を溶湯内に添加する。水素溶解度調整元素が5重量%未満の場合には、Mg原料と溶製したMg−水素溶解度調整元素合金との水素溶解度の差が小さく、水素溶解度差を利用してH2を十分に発泡させることができず、図5に示すように、発泡性が乏しく、軽量化したマグネシウム合金多孔質体を得ることが難しい。一方、水素溶解度調整元素が40重量%を超えると、逆にH含有したMg原料が少なくなり、合金溶湯中のH量も少なくなり、やはり水素溶解度差を利用してH2を十分に発泡させることは困難となる。これに加え水素溶解度調整元素量が40重量%を超えると、脆弱なMg−水素溶解度調整元素化合物の晶出量が増し、多孔質体の機械的特性の低下を招くおそれがある。さらに、水素溶解調整元素はMgに比べて密度が大きいため40重量%を超えると、多孔質体の軽量化効率が大きく低減する。
上記マグネシウムに対して水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素としては、Al、Ni、Mn、Ca、Sr、Zn、Sn、Cu、Sb、Zrの少なくとも1種であり、これらの元素を1種または1種以上を混合して、微粒子を内包する複合材を形成してもよい。上記マグネシウムに対して水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素としては、より好ましくは、アルミニウム(Al)である。
また、微粒子は、図6に示すように、Mg溶湯中に6.2重量%以下、好ましくは0.01〜6.2重量%、より好ましくは0.5〜4.0重量%含有される。微粒子の含有量が6.2重量%を超えても、これ以上の発泡量と発泡の均一性は望めないからである。一方、微粒子の含有量が0.01%未満の場合には、均一な気孔を生成させることが難しく、多孔質体の機械的特性が低下するおそれがある。
また、上記微粒子の粒径は、0.1〜3.0μmであり、好ましくは0.5〜2.0μm、より好ましくは0.5〜1.5μmである。図7に示すように、微粒子の粒径を上記範囲にすることによって、気泡の核として溶湯中に均一に分散し、所望の発泡率を有する多孔質体を得ることができる。
また、上記微粒子としては、例えば、TiC、ZrC、TaC、NbC、HfC、WC、B4Cなどの炭化物粒子、TiB2、ZrB2、TaB2、HfB2などの硼化物粒子、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、Y2O3などの酸化物粒子、AlN、BN、TiNなどの窒化物粒子等を用いることができる。好ましくは、TiC粒子である。TiC粒子を気泡の核として用いることにより、図8,図9に示すように、他の粒子に比べ、発泡性も高く均一な微細な気孔の形成することができる。
本実施の形態では、『水素溶解度調整元素−微粒子複合材』として、発泡性および均一な微細気孔生成の点から、図1に例示したAl−TiC複合材が最も好ましい。
次に、Mg−水素溶解度調整元素−微粒子合金溶湯を冷却凝固させる過程で、溶湯中の水素を発泡させ、マグネシウム合金中に気泡を形成させる。
上述したように、(Mg液相中のH含有量)≫(Mg固相中のH含有量)という水素溶解度差の関係により、凝固の過程で固相に溶解しきれなくなったHが、Mg−水素溶解度調整元素合金中に均一に分散された微粒子を核としてH2となり、発泡して気孔を生成させるので、均一な微細な気孔を有するマグネシウム合金多孔質体を製造することができる。
[マグネシウム合金多孔質体]
本実施の形態のマグネシウム合金多孔質体であって、マグネシウムを主成分として、5〜40重量%のマグネシウムに対する水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素と6.2重量%以下の炭化物、硼化物、酸化物、窒化物の粒子の少なくとも1種からなる微粒子とを含み、合金全体を100体積%としたときの空隙率が5〜85体積%の多孔質体からなるマグネシウム合金多孔質体である。
本実施の形態のマグネシウム合金多孔質体であって、マグネシウムを主成分として、5〜40重量%のマグネシウムに対する水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素と6.2重量%以下の炭化物、硼化物、酸化物、窒化物の粒子の少なくとも1種からなる微粒子とを含み、合金全体を100体積%としたときの空隙率が5〜85体積%の多孔質体からなるマグネシウム合金多孔質体である。
ここで、マグネシウム合金多孔質体の空隙率は、上述したように5〜85体積%であり、強度の点を考慮すると好ましくは5〜60体積%であり、車両用の部品に用いる場合には、40〜60体積%であることが好ましい。
また、マグネシウムに対する水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素は、Mg溶湯中に5〜40重量%含有される。水素溶解度調整元素が5重量%未満の場合には、Mg原料と溶製したMg−水素溶解度調整元素合金との水素溶解度の差が小さく、共晶の晶出量も少なくなるため、水素溶解度差を利用してH2を十分に発泡させることができず、図6に示すように、発泡性が乏しく、軽量化したマグネシウム合金多孔質体を得ることが難しい。一方、水素溶解度調整元素が40重量%を超えると、逆にH含有したMg原料が少なくなり、合金溶湯中のH量も少なくなり、やはり水素溶解度差を利用してH2を十分に発泡させることは困難となる。これに加え水素溶解度調整元素量が40重量%を超えると、脆弱なMg−水素溶解度調整元素化合物の晶出量が増し、多孔質体の機械的特性の低下を招くおそれがある。
上記マグネシウムに対して水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素としては、Al、Ni、Mn、Ca、Sr、Zn、Sn、Cu、Sb、Zrの少なくとも1種であり、これらの元素を1種または1種以上を混合して、微粒子を内包する複合材を形成してもよい。上記マグネシウムに対して水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素としては、より好ましくは、アルミニウム(Al)である。
また、微粒子は、Mg溶湯中に6.2重量%以下、好ましくは0.01〜6.2重量%、より好ましくは0.5〜4.0重量%含有される。微粒子の含有量が6.2重量%を超えても、これ以上の発泡量と発泡の均一性は望めないからである。一方、微粒子の含有量が0.01%未満の場合には、均一な気孔を生成させることが難しく、多孔質体の機械的特性が低下するおそれがある。
また、上記微粒子の粒径は、0.1〜3.0μmであり、好ましくは0.5〜2.0μm、より好ましくは0.5〜1.5μmである。図7に示すように、微粒子の粒径を上記範囲にすることによって、気泡の核として溶湯中に均一に分散し、所望の発泡率を有する多孔質体を得ることができる。
また、上記微粒子としては、例えば、TiC、ZrC、TaC、NbC、HfC、WC、B4Cなどの炭化物粒子、TiB2、ZrB2、TaB2、HfB2などの硼化物粒子、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、Y2O3などの酸化物粒子、AlN、BN、TiNなどの窒化物粒子等を用いることができる。好ましくは、TiC粒子である。TiC粒子を気泡の核として用いることにより、図8,図9に示すように、他の粒子に比べ、発泡性も高く均一な微細な気孔の形成することができる。
以下に、本発明のマグネシウム合金多孔質体について、実施例を用いて説明する。
[使用原料]
<Al−TiC複合材>
Al粉:東洋アルミニウム(株)製、純度が99.9%、粒径が〜45μm
Ti粉:住友シチックス(株)製、純度が99.9%、粒径が〜45μm
C粉:日本黒鉛工業(株)製、純度が99.9%、粒径が6μm
<Al−TiC複合材>
Al粉:東洋アルミニウム(株)製、純度が99.9%、粒径が〜45μm
Ti粉:住友シチックス(株)製、純度が99.9%、粒径が〜45μm
C粉:日本黒鉛工業(株)製、純度が99.9%、粒径が6μm
<マグネシウムインゴット>
宇部興産(株)製、純度が99.9%、水素含有量20ppm
宇部興産(株)製、純度が99.9%、水素含有量20ppm
[実験条件]
<Al−TiC複合材の作製>
Al粉、Ti粉、C粉を乾式混合し、特にTi粉、C粉のモル比は1:1となるように混合し、所定量のAl粉をこれらに混合し、φ30金型を用い7トン/cm2で成形した。成形体をアルゴン雰囲気中、1200℃で1時間熱処理を施し、TiとCを反応させてAl−TiC複合材を作製した。
<Al−TiC複合材の作製>
Al粉、Ti粉、C粉を乾式混合し、特にTi粉、C粉のモル比は1:1となるように混合し、所定量のAl粉をこれらに混合し、φ30金型を用い7トン/cm2で成形した。成形体をアルゴン雰囲気中、1200℃で1時間熱処理を施し、TiとCを反応させてAl−TiC複合材を作製した。
<マグネシウム合金多孔質体の作製>
Mgインゴットを六フッ化硫黄を吹き付け700℃で溶解し、Al量を全体の20重量%または図5に示すように添加量を適宜変えてAlとTiCの重量比の異なるAl−TiC複合材をMg溶湯内に添加した。溶湯を5分間撹拌し、φ40×150mmの砂型へ鋳造しマグネシウム合金多孔質体を作製した。
Mgインゴットを六フッ化硫黄を吹き付け700℃で溶解し、Al量を全体の20重量%または図5に示すように添加量を適宜変えてAlとTiCの重量比の異なるAl−TiC複合材をMg溶湯内に添加した。溶湯を5分間撹拌し、φ40×150mmの砂型へ鋳造しマグネシウム合金多孔質体を作製した。
実施例1.
マグネシウムに対して、Al量が20重量%、TiC粒子量が4.1重量%のAl−TiC複合材を、Mg溶湯内に添加した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。このときのマグネシウム合金多孔質体の断面の実態写真を図3に示す。均一で微細な気孔10を有するマグネシウム合金多孔質体が得られている。
マグネシウムに対して、Al量が20重量%、TiC粒子量が4.1重量%のAl−TiC複合材を、Mg溶湯内に添加した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。このときのマグネシウム合金多孔質体の断面の実態写真を図3に示す。均一で微細な気孔10を有するマグネシウム合金多孔質体が得られている。
比較例1.
マグネシウムに対して20重量%AlをMg溶湯内に添加した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。このときのマグネシウム合金多孔質体の断面の実態写真を図4に示す。巨大な気孔20が散在するマグネシウム合金多孔質体であることがわかる。
マグネシウムに対して20重量%AlをMg溶湯内に添加した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。このときのマグネシウム合金多孔質体の断面の実態写真を図4に示す。巨大な気孔20が散在するマグネシウム合金多孔質体であることがわかる。
実施例2.
マグネシウムに対して、TiC粒子量を4.1重量%とし、Al量を5.0〜40重量%まで変えてAl−TiC複合材をそれぞれ作製し、これらAl−TiC複合材をMg溶湯内にそれぞれ添加して多孔質体を作製した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。図5に示すように、Al量の含有量が増すに連れて発泡率の高いマグネシウム合金多孔質体が得られることがわかる。
マグネシウムに対して、TiC粒子量を4.1重量%とし、Al量を5.0〜40重量%まで変えてAl−TiC複合材をそれぞれ作製し、これらAl−TiC複合材をMg溶湯内にそれぞれ添加して多孔質体を作製した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。図5に示すように、Al量の含有量が増すに連れて発泡率の高いマグネシウム合金多孔質体が得られることがわかる。
実施例3.
マグネシウムに対して、Al量を20重量%とし、TiC粒子量を0.01〜6.2重量%まで変えてAl−TiC複合材をそれぞれ作製し、これらAl−TiC複合材をMg溶湯内にそれぞれ添加して多孔質体を作製した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。図6に示すように、TiC粒子の含有量が増すに連れて発泡率の高いマグネシウム合金多孔質体が得られることがわかる。
マグネシウムに対して、Al量を20重量%とし、TiC粒子量を0.01〜6.2重量%まで変えてAl−TiC複合材をそれぞれ作製し、これらAl−TiC複合材をMg溶湯内にそれぞれ添加して多孔質体を作製した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。図6に示すように、TiC粒子の含有量が増すに連れて発泡率の高いマグネシウム合金多孔質体が得られることがわかる。
実施例4.
マグネシウムに対して、Al量が20重量%、TiC粒子量が4.1重量%のAl−TiC複合材であって、TiC粒子の粒径を変えてAl−TiC複合材をそれぞれ作製し、これらAl−TiC複合材をMg溶湯内にそれぞれ添加して多孔質体を作製した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。図7に示すように、TiC粒子の粒径は、発泡率の点から、3.0μm以下であり、より好ましくは0.5〜1.5μmであることがわかる。
マグネシウムに対して、Al量が20重量%、TiC粒子量が4.1重量%のAl−TiC複合材であって、TiC粒子の粒径を変えてAl−TiC複合材をそれぞれ作製し、これらAl−TiC複合材をMg溶湯内にそれぞれ添加して多孔質体を作製した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。図7に示すように、TiC粒子の粒径は、発泡率の点から、3.0μm以下であり、より好ましくは0.5〜1.5μmであることがわかる。
実施例5.
マグネシウムに対して、Al量が20重量%、TiC粒子の代わりにZrC粒子を用い、ZrC粒子量が4.1重量%(2体積%)のAl−ZrC複合材をMg溶湯内に添加して多孔質体を作製した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。図8に示すように、Al−ZrC複合材を用いた実施例5のMg合金多孔質体は、Al−TiC複合材を用いて作製された実施例1のMg合金多孔質体に対してやや発泡率は低いものの良好な多孔性を有することがわかった。
マグネシウムに対して、Al量が20重量%、TiC粒子の代わりにZrC粒子を用い、ZrC粒子量が4.1重量%(2体積%)のAl−ZrC複合材をMg溶湯内に添加して多孔質体を作製した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。図8に示すように、Al−ZrC複合材を用いた実施例5のMg合金多孔質体は、Al−TiC複合材を用いて作製された実施例1のMg合金多孔質体に対してやや発泡率は低いものの良好な多孔性を有することがわかった。
実施例6.
マグネシウムに対して、Al量が20重量%、TiC粒子の代わりにTiB2粒子を用い、TiB2粒子量が4.1重量%(2体積%)のAl−TiB2複合材をMg溶湯内に添加して多孔質体を作製した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。図9に示すように、Al−TiB2複合材を用いた実施例6のMg合金多孔質体は、Al−TiC複合材を用いて作製された実施例1のMg合金多孔質体とほぼ同じ多孔性を有することがわかった。
マグネシウムに対して、Al量が20重量%、TiC粒子の代わりにTiB2粒子を用い、TiB2粒子量が4.1重量%(2体積%)のAl−TiB2複合材をMg溶湯内に添加して多孔質体を作製した以外は、上記マグネシウム合金多孔質体の作製に準じてマグネシウム合金多孔質体を製造した。図9に示すように、Al−TiB2複合材を用いた実施例6のMg合金多孔質体は、Al−TiC複合材を用いて作製された実施例1のMg合金多孔質体とほぼ同じ多孔性を有することがわかった。
本発明のマグネシウム合金多孔質体およびその製造方法は、軽量化や環境負荷の低減の要請の高い用途であれば、いかなる用途にも有効であるが、本発明のマグネシウム合金多孔質体は、例えば、車両用部品であるカバー・ケース類やホイールなど軽量構造部材に適用することができ、また、電気機器の分野におけるノート型パソコンや携帯電話等の筐体にも適用することができる。
10,20 気孔。
Claims (8)
- マグネシウムを主成分として、5〜40重量%のマグネシウムに対する水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素と6.2重量%以下の炭化物、硼化物、酸化物、窒化物の粒子の少なくとも1種からなる微粒子とを含み、合金全体を100体積%としたときの空隙率が5〜85体積%の多孔質体からなるマグネシウム合金多孔質体。
- マグネシウムを主成分とし、15ppm以上の水素を含有したマグネシウム溶湯を溶解調整する工程と、
前記マグネシウム溶湯中に、5〜40重量%のマグネシウムに対する水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素と6.2重量%以下の炭化物、硼化物、酸化物、窒化物の粒子の少なくとも1種からなる微粒子とからなる水素溶解度調整元素−微粒子複合材を添加し撹拌して、Mg−水素溶解度調整元素−微粒子合金溶湯を調整する工程と、
前記Mg−水素溶解度調整元素−微粒子合金溶湯を冷却凝固させる過程で、溶湯中の水素を発泡させ、マグネシウム合金中に気泡を形成させる工程と、
を有するマグネシウム合金多孔質体の製造方法。 - 請求項1に記載のマグネシウム合金多孔質体において、
前記微粒子の粒径は、0.1〜3.0μmであるマグネシウム合金多孔質体。 - 請求項2に記載のマグネシウム合金多孔質体の製造方法において、
前記水素溶解度調整元素−微粒子複合材は、水素溶解度調整元素のマトリックス中に粒子状態で微粒子が内包された複合材であり、
前記微粒子の粒径は、0.1〜3.0μmであるマグネシウム合金多孔質体の製造方法。 - 請求項1または請求項3に記載のマグネシウム合金多孔質体において、
前記微粒子は、TiC粒子であるマグネシウム合金多孔質体。 - 請求項2または請求項4に記載のマグネシウム合金多孔質体の製造方法において、
前記微粒子は、TiC粒子であり、
前記水素溶解度調整元素−微粒子複合材は、Al−TiC粒子複合材であり、
前記Mg−水素溶解度調整元素−微粒子合金溶湯は、Mg−Al−TiC粒子合金溶湯であるマグネシウム合金多孔質体の製造方法。 - 請求項1,3,5のいずれか1項に記載のマグネシウム合金多孔質体において、
前記マグネシウムに対して水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素は、Al、Ni、Mn、Ca、Sr、Zn、Si、Li、希土類元素、Sn、Cu、Sb、Zrの少なくとも1種であるマグネシウム合金多孔質体。 - 請求項2または請求項4に記載のマグネシウム合金多孔質体の製造方法において、
前記マグネシウムに対して水素溶解度を調整して発泡ガス量を増加させる元素は、Al、Ni、Mn、Ca、Sr、Zn、Si、Li、希土類元素、Sn、Cu、Sb、Zrの少なくとも1種であるマグネシウム合金多孔質体の製造方法。
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