JP2006335591A - 炭素材料の処理方法 - Google Patents

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【課題】 より微細な構造の形成を行うことの出来る、熱化学加工法による炭素材料の処理方法を提供すること。
【解決手段】
炭素材料1の処理面に単結晶金属薄膜2を成膜する第1の工程と、該炭素材料1に対して熱処理を行って熱化学加工を行う第2の工程とを有する炭素材料1の処理方法において、当該第1の工程がスパッタリングの工程により行われ、当該スパッタリングの工程は、0.01Pa〜10Paの圧力下で該炭素材料1を600〜1800℃に加熱しながら、200〜1000Wのスパッタ電力を印加して該炭素材料1上に単結晶金属薄膜2を成膜させる工程であることを特徴とする炭素材料1の処理方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、金属からなる薄膜の成膜工程に特徴を有する炭素材料の処理方法に関する。
ダイヤモンドなどのように炭素単体からできている炭素材料の加工処理方法としては、研磨等の機械的な処理方法、ドライエッチング等の化学的な処理方法、集束イオンビームを用いた処理方法等が従来知られている。
これら炭素材料の様々な処理方法に加え、ナノメートルからミリメートルまでのサイズの構造体を一度に作成することのできるユニークな処理方法として、熱化学加工法が知られている。この熱化学加工法は、高温で炭化物を作り得る金属(鉄、ニッケル、コバルト、クロム、白金またはそれらの合金から作られている金属)と、ダイヤモンド等の炭素材料とを高温で反応させる処理方法であり(特許文献1)、当該金属と接触する炭素材料の炭素原子は、例えば水素を含有する雰囲気中で加熱処理を行った場合には、下記(1)〜(3)の化学反応ステップを経由して、炭化水素ガスとして排出されると考えられている。
(1) 炭素材料の処理面において金属と接している炭素原子が金属と反応し、金属表面において炭化物を形成する反応。
(2) 炭素原子が金属中を拡散する反応。
(3) 炭素原子が炭素材料と接している側と反対の表面に出てきた時に、金属中を拡散している炭素が水素と反応して炭化水素ガスとなる反応。
また、酸素を含有する雰囲気中で加熱処理を行った場合には、(3)と同様の化学反応ステップによって、一酸化炭素若しくは二酸化炭素として排出されると考えられている。さらに不活性ガス又は真空中で行った場合にも、(1)と(2)の反応のみによって炭素材料を処理することが可能である。この熱化学加工法を利用して、金属膜を炭素材料上に任意のパターンで成膜し、熱処理することで自由な構造体を炭素材料上に作成することができる。
特公平01−039966号公報
しかしながら、一般に準備される型の金属は多結晶体である。そのため、特許文献1に係るダイヤモンドの処理方法では、当該多結晶内での結晶方位の不均一性、及び当該多結晶内に生じた結晶粒界によって炭素の拡散が不均一となる。これによって、ダイヤモンドに対する加工処理量が不均一になり、特に微細な構造を熱化学加工法により炭素材料に形成することができないという問題点があった。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、より微細な構造の形成を行うことの出来る、熱化学加工法による炭素材料の処理方法を提供することである。
本発明者は、熱化学加工法により微細な処理を行うには、炭素材料の処理面に金属単結晶膜を形成させることが重要であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、請求項1記載の発明は、炭素材料の処理面に単結晶金属薄膜を成膜する第1の工程と、該炭素材料に対して熱処理を行って熱化学加工を行う第2の工程とを有する炭素材料の処理方法において、当該第1の工程がスパッタリングの工程により行われ、当該スパッタリングの工程は、0.01Pa〜10Paの圧力下で該炭素材料を600〜1800℃に加熱しながら、200〜1000Wのスパッタ電力を印加して該炭素材料上に単結晶金属薄膜を成膜させる工程であることを特徴とする炭素材料の処理方法である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成に加えて、該炭素材料が、ダイヤモンドであることを特徴とする、炭素材料の処理方法である。
請求項3記載の発明は、請求項1及び2記載の構成に加えて、該単結晶金属薄膜が、ニッケル,ロジウム,パラジウム,白金,イリジウム,またはそれらの合金の単結晶膜からなることを特徴とする、炭素材料の処理方法である。
請求項4記載の発明は、請求項1及び2記載の構成に加えて、該熱処理の工程が、水素を含む雰囲気中で行われることを特徴とする、炭素材料の処理方法である。
請求項5記載の発明は、請求項1及び2記載の構成に加えて、該熱処理の工程が、酸素,二酸化炭素,空気,または水蒸気の雰囲気中で行われることを特徴とする、炭素材料の処理方法である。
本発明に係る炭素材料の処理方法によれば、0.01Pa〜10Paの圧力下で600〜1800℃に加熱を行い、200〜1000Wのスパッタ電力を印加するという特殊な条件下でのスパッタリングの工程によって炭素材料の処理面に金属単結晶膜を形成させることにより、金属膜内の結晶粒子の結晶方位を単一化し、さらに金属膜内の結晶粒界を無くすことが出来る。そのため、当該処理における炭素の拡散速度が不均一になることを抑えて処理量を均一にすることで、特に微細な構造を熱化学加工法により形成することが可能になるという効果を奏する。
また、本発明の請求項2に係る炭素材料の処理方法によれば、炭素材料をダイヤモンドとすることにより、従来加工を行うことが困難であったダイヤモンドに対して、容易に加工処理を行うことが出来るという効果を奏する。
また、本発明の請求項3に係る炭素材料の処理方法によれば、該単結晶金属薄膜が、ニッケル,ロジウム,パラジウム,白金,イリジウム,またはそれらの合金の単結晶膜からなることにより、単結晶金属薄膜を容易に形成することが出来るという効果を奏する。
さらに、本発明の請求項4及び5に係る炭素材料の処理方法によれば、単結晶金属薄膜の形成された炭素材料を水素を含む雰囲気中、又は酸素,二酸化炭素,空気,若しくは水蒸気の雰囲気中で加熱することにより、当該雰囲気中に含まれる水素又は酸素が単結晶金属薄膜中に浸出した炭素を排出することが可能となるため、炭素材料の処理効率を高めることが出来るという効果を奏する。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。本実施形態は、処理面に単結晶金属薄膜2を形成した、炭素材料1の処理方法である。
本実施形態に用いる炭素材料1としては、ダイヤモンドの単結晶,多結晶,焼結体、さらにはDLC(ダイヤモンドライクカーボン),グラファイト,フラーレン結晶体,グラッシーカーボン(登録商標)などの炭素単体を用いることが可能である(図1(a))。その中でも、従来加工が困難とされていたダイヤモンドの単結晶,多結晶,焼結体、特に金属単結晶膜を容易に得ることが出来る単結晶ダイヤモンドは、本実施形態の炭素材料1として好適である。
この炭素材料1は、処理面を鏡面研磨加工などの手段によってRa=1nm以下に平坦化した後、十分に洗浄を施す。そして、炭素材料1の処理面上に単結晶金属薄膜2を均一に成膜する(図1(b))。単結晶金属薄膜2を形成する金属としては、炭素を溶解し、かつ炭素材料1の表面上で単結晶化しうる金属からなる必要があり、具体的にはニッケル,ロジウム,パラジウム,白金,イリジウム,またはそれらの合金を用いることが可能である。
単結晶金属薄膜2の成膜方法としては、スパッタリング法,分子線ビームエピタキシー(MBE)法,真空蒸着法,イオンプレーティング法などを用いることが出来る。特に、スパッタリング法により単結晶金属薄膜2を形成すると、当該単結晶金属薄膜2をより効率的に成膜することが可能となるため好ましい。その一方で、分子線ビームエピタキシー(MBE)法により単結晶金属薄膜2を形成した場合には、当該単結晶金属薄膜2の結晶性をより高めることが可能となる。
単結晶金属薄膜2の成膜方法として、例えばスパッタリング法を用いた場合には、図2に示すような、真空チャンバ21、スパッタ電力が印加されるターゲット23と、ターゲット23を保持する受け皿24と、受け皿24の下面側に設けられていてスパッタリング効率の向上を図るマグネット25とが具備されたスパッタ装置20が使用される。ここで、図2ではDCスパッタ方式のスパッタ装置20を示しているが、本実施形態では、RFスパッタ方式も同様に用いることが可能である。
このように構成されたスパッタ装置20において、基板22を載置した真空チャンバ21の内部に不活性ガスを導入する。それとともに、基板22に成膜する薄膜と同一の材料からなるターゲット23にスパッタ電力を印加する。当該スパッタ電力及びマグネット25の磁力によって、イオン化させた当該不活性ガスのイオンを、ターゲット23に吸引させて衝突させることが出来る。当該衝突時には、ターゲット23を構成している当該材料の粒子がターゲット23から飛出し、当該粒子を基板22の処理面上に被着させることで、基板22に薄膜を成膜するようになっている。
ここで、本実施形態に係る、炭素材料1に単結晶金属薄膜2を成膜するスパッタリングの工程では、基板22として炭素材料1を用い、ターゲット23として単結晶金属薄膜2と同一の金属材料を用いる。そして、当該工程は、上記金属材料が成膜時に単結晶となる温度以上に当該炭素材料1を加熱した状態で行う必要がある。このときの炭素材料1の加熱条件は、金属材料の種類によって異なるものであるが、例えば上記スパッタ装置20において、単結晶ニッケル薄膜を炭素材料1の処理面上に成膜する時は、炭素材料1を600〜1800℃、好ましくは600℃近傍の温度に加熱することが好ましい。ここで、600℃近傍の温度が好ましいのは、より幅広いスパッタ装置で適用することの出来る温度であるためである。その一方で、加熱温度が1800℃を超えると、例えばダイヤモンドのグラファイト化のような、炭素材料1の構造変化が発生しやすくなり、好ましくない。また、本実施形態では、真空チャンバ21を0.01Pa〜10Paの圧力に保ち、ターゲット22に印加するスパッタ電力の値を200〜1000Wとすることが好適である。
また、単結晶金属薄膜2の厚さは0.1μm以上である必要がある。単結晶金属薄膜2の厚さが0.1μm未満となると、成膜後の熱処理工程において単結晶金属薄膜2が凝集してしまい、所望の形状に処理することが出来なくなるため好ましくない。
炭素材料1の処理面上に形成された単結晶金属薄膜2に対して、機械加工、レーザ加工、フォトリソグラフィ、収束イオンビーム(FIB)等の手段によって、その一部を除去して該炭素材料1を露出させる(図1(c))。そして、炭素材料1の処理パターンに対するネガとなるパターンを、単結晶金属薄膜2によって炭素材料1の処理面に形成する。
処理パターンのネガを形成した炭素材料1は加熱して熱処理を行う。熱処理の温度は600〜1800℃であることが好ましい。熱処理の温度が600℃未満であると下記に示す化学反応が進まなくなる。一方で、特にダイヤモンドの処理においては、熱処理の温度が1800℃を超えると炭素材料1がグラファイト化してしまうため、いずれも好ましくない。
単結晶金属薄膜2と接触する炭素材料1の炭素原子は、熱処理を行うことによって単結晶金属薄膜2と反応し、金属表面で金属炭化物を形成する。そして金属炭化物を形成した炭素原子は、金属の内部に拡散していくことで、炭素材料1の外形を変化させる処理を行うことが出来る。
ここで、当該熱処理工程を水素を含む雰囲気中、又は酸素,二酸化炭素,空気,若しくは水蒸気の雰囲気中で行うと、単結晶金属薄膜2と当該雰囲気との界面において、金属中に拡散する炭素と当該雰囲気中の水素又は酸素とが反応して、炭化水素ガス又は一酸化炭素,二酸化炭素となって排出することが可能となるために好ましい。
また、当該熱処理工程を真空中もしくは不活性ガス中で行えば、当該炭素材料1に接触している単結晶金属薄膜2は、当該薄膜の炭素固溶量以上の炭素を取り込まない。そのため、炭素材料の処理が過剰に進むことを防ぐことが出来るため好ましい。
当該熱処理によって炭素材料1の外形を変化させていくと、処理パターンのネガの形状を有した単結晶金属薄膜2が炭素材料1の中に埋没していき(図1(d))、処理パターンが処理されずに残ることになる。熱処理後に当該単結晶金属薄膜2は酸処理等の手段により除去することが出来る(図1(e))。以上の工程により、所望のパターンを有する炭素材料1を、高精度に作製させることが可能となる。
本発明を、以下の実施例を用いて詳細に説明する。
[実施例1]
本実施例は、本発明の実施形態における、炭素材料の処理方法に関するものである。
炭素材料として鏡面研磨された単結晶ダイヤモンド基板を用い、これをアセトン超音波洗浄で10分間洗浄した。当該単結晶ダイヤモンド基板を600℃に加熱した状態で、スパッタリングの工程により単結晶ニッケル薄膜を1.0μm成膜した。このときのスパッタ装置の圧力は0.1Pa、ターゲットにかける電力は200Wである。ニッケル薄膜を成膜した単結晶ダイヤモンド基板を、処理パターンを形成することなく大気圧水素フロー中で800℃にて熱処理した。その結果、図3に示すように、単結晶ダイヤモンド基板の表面に未処理部分を発生させることなく、均一に処理を行うことが出来た。このときの平均表面粗さRaは0.26μmである。
[比較例1]
比較例として、上記手順で準備された単結晶ダイヤモンド基板に対して、当該ダイヤモンド基板を加熱することなく、スパッタリングの工程によりニッケル薄膜を1.0μm成膜した。ニッケル薄膜を成膜した単結晶ダイヤモンド基板を水素雰囲気中において800℃で熱処理した。その結果、単結晶ダイヤモンド基板の表面に多結晶化したニッケル薄膜が成膜された。そのため、当該多結晶内での結晶方位の不均一性、及び当該多結晶内に生じた結晶粒界によって炭素の拡散が不均一となり、処理後の単結晶ダイヤモンド基板には図4に示すような針状の凸部が多数発生し、均一に処理することが出来なかった。
本実施形態に係る、炭素材料の処理方法を説明する図である。 本実施形態におけるスパッタ装置を示す概略図である。 実施例1に係る炭素材料の処理後の表面状態を、斜め上方から撮影した電子顕微鏡像である。 比較例1に係る炭素材料の処理後の表面状態を、斜め上方から撮影した電子顕微鏡像である。
符号の説明
1 炭素材料
2 単結晶金属薄膜

Claims (5)

  1. 炭素材料の処理面に単結晶金属薄膜を成膜する第1の工程と、該炭素材料に対して熱処理を行って熱化学加工を行う第2の工程とを有する炭素材料の処理方法において、
    当該第1の工程がスパッタリングの工程により行われ、
    当該スパッタリングの工程は、0.01Pa〜10Paの圧力下で該炭素材料を600〜1800℃に加熱しながら、200〜1000Wのスパッタ電力を印加して該炭素材料上に単結晶金属薄膜を成膜させる工程であることを特徴とする炭素材料の処理方法。
  2. 該炭素材料が、ダイヤモンドであることを特徴とする、請求項1記載の炭素材料の処理方法。
  3. 該単結晶金属薄膜が、ニッケル,ロジウム,パラジウム,白金,イリジウム,またはそれらの合金の単結晶膜からなることを特徴とする、請求項1及び2に記載の炭素材料の処理方法。
  4. 該熱処理の工程が、水素を含む雰囲気中で行われることを特徴とする、請求項1〜3に記載の炭素材料の処理方法。
  5. 該熱処理の工程が、酸素,二酸化炭素,空気,若しくは水蒸気を含む雰囲気中で行われることを特徴とする、請求項1〜3に記載の炭素材料の処理方法。
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