しかし、従来の炊飯器では、蒸気排出口に異物が溜まるなどして、当該蒸気排出口が閉塞された場合、炊飯による容器への加熱に伴い、容器の内部圧力が上昇し、蓋体の強度や、本体に設けた保持手段と蓋体に設けた保持手段の結合力を超えてしまうと、鍋とシール体との密着が崩壊して、容器内の水やご飯粒等の被炊飯物が外へと飛び散る虞れがあった。また、そのときの容器内部が沸騰に近い状態であれば、当然水は熱湯であり、安全上問題となる。さらに、内部圧力が高ければ、その分本体の外部へ飛び散る勢いも強いので、壁や天井などの周辺部を汚す虞れもあった。
そこで本発明は蒸気問題点に鑑み、蒸気排出口がつまった状態等で容器の内部が加圧された場合でも、安全性の高い炊飯器を提供することを目的とする。
本発明の請求項1における炊飯器では、加熱手段により容器を加熱して、容器の内部を加圧すると、シール体が容器の凸部や凸量が異なる部分に押し当てられ、容器と蓋体との間をシール体によりシール保持することができる。このとき、容器の凸量が他よりも小さい部分では、容器内の異常加圧時に、シール体と容器との当接力よりも、シール体が容器を乗り越えて変形しようとする力がより大きく作用し、結果的にこの部分でのみシール体と容器との密着を容易に崩壊させることが可能になる。
本発明の請求項2における炊飯器では、容器を一定の位置でしか収納できないように位置決め手段を設けることで、容器内の異常加圧状態において、容器から蒸気などの被炊飯物が飛び出す方向を予め特定できる。
本発明の請求項3における炊飯器では、容器内部の異常加圧状態において、蒸気などの被炊飯物が飛び出す方向である容器の凸量の小さい部分を、位置決め手段により使用者が比較的その近傍にいることが少ない本体の後方に向けることができる。
本発明の請求項4における炊飯器では、容器の凸量の小さい部分から飛び出した蒸気などの被炊飯物を、ヒンジ部で受け止めることが可能になる。
本発明の請求項5における炊飯器では、容器に凹部を設けない構成とすることで、容器に対してゴミや汚れを溜まりにくくすることができる。
本発明の請求項6における炊飯器では、回り止め部材が容器の例えば上側側部で凹部に入り込むことがなく、回り止め部材の突出量を増やさずに、容器を十分に回り止めすることができる。
本発明の請求項7における炊飯器では、炊飯時に冷えやすい容器のフランジを加熱でき、容器全体を均一に加熱することができる。
本発明の請求項8における炊飯器では、加熱手段により容器を加熱して、容器の内部を加圧すると、シール体が容器の凹部や凹み量が異なる部分に押し当てられ、容器と蓋体との間をシール体によりシール保持することができる。このとき、容器の凹み量が他よりも小さい部分では、容器内の異常加圧時に、シール体と容器との当接力よりも、シール体が容器を乗り越えて変形しようとする力がより大きく作用し、結果的にこの部分でのみシール体と容器との密着を容易に崩壊させることが可能になる。
本発明の請求項9における炊飯器では、容器を一定の位置でしか収納できないように位置決め手段を設けることで、容器内の異常加圧状態において、容器から蒸気などの被炊飯物が飛び出す方向を予め特定できる。
本発明の請求項10における炊飯器では、容器内部の異常加圧状態において、蒸気などの被炊飯物が飛び出す方向である容器の凹み量の小さい部分を、位置決め手段により使用者が比較的その近傍にいることが少ない本体の後方に向けることができる。
本発明の請求項11における炊飯器では、容器の凹み量の小さい部分から飛び出した蒸気などの被炊飯物を、ヒンジ部で受け止めることが可能になる。
本発明の請求項12における炊飯器では、容器に凸部を設けない構成とすることで、容器に対してゴミや汚れを溜まりにくくすることができる。
本発明の請求項13における炊飯器では、回り止め部材が大きくなることを抑制しつつ、この回り止め部材により容器を十分に回り止めすることができる。
本発明の請求項14における炊飯器では、炊飯時に冷えやすい容器のフランジを加熱でき、容器全体を均一に加熱することができる。
本発明の請求項15における炊飯器では、炊飯時に冷えやすい容器の凹部周辺を加熱でき、容器全体を均一に加熱することができる。
本発明の請求項1によれば、蒸気排出口がつまった状態等で容器の内部が加圧された場合でも、特定の方向から蒸気などを含む被炊飯物を飛び出させることで、安全性の高い炊飯器を提供できる。
本発明の請求項2によれば、容器から蒸気などの被炊飯物が飛び出す方向を予め特定でき、炊飯器としての安全性をより高めることができる。
本発明の請求項3によれば、蒸気などの被炊飯物が飛び散って使用者に触れたり、他の電気製品などに当たることを抑制できる。
本発明の請求項4によれば、蒸気などの被炊飯物が飛び散って使用者に触れたり、他の電気製品などに当たることを確実に防止できる。
本発明の請求項5によれば、容器に対してゴミや汚れを溜まりにくくすることで、清掃性の向上を図ることができる。
本発明の請求項6によれば、コスト上昇を回避しつつ、使い勝手のよい炊飯器を提供できる。
本発明の請求項7によれば、容器全体を均一に加熱することで、炊飯性能や保温性能を向上させることができる。
本発明の請求項8によれば、蒸気排出口がつまった状態等で容器の内部が加圧された場合でも、特定の方向から蒸気などを含む被炊飯物を飛び出させることで、安全性の高い炊飯器を提供できる。
本発明の請求項9によれば、容器から蒸気などの被炊飯物が飛び出す方向を予め特定でき、炊飯器としての安全性をより高めることができる。
本発明の請求項10によれば、蒸気などの被炊飯物が飛び散って使用者に触れたり、他の電気製品などに当たることを抑制できる。
本発明の請求項11によれば、蒸気などの被炊飯物が飛び散って使用者に触れたり、他の電気製品などに当たることを確実に防止できる。
本発明の請求項12によれば、容器に対してゴミや汚れを溜まりにくくすることで、清掃性の向上を図ることができる。
本発明の請求項13によれば、コスト上昇を回避しつつ、使い勝手のよい炊飯器を提供できる。
本発明の請求項14によれば、容器全体を均一に加熱することで、炊飯性能や保温性能を向上させることができる。
本発明の請求項15によれば、容器全体を均一に加熱することで、炊飯性能や保温性能を向上させることができる。
まず、図15に基づき、本発明の一例である炊飯器の構成について説明する。この炊飯器の構成は、鍋の形状を除いて、以下に説明する各実施例に共通するものである。
同図において、1は炊飯器の外郭をなす本体で、この本体1は、その上面と上側面を構成する上枠2と、側面を構成するほぼ筒状の外枠3とにより形成され、外枠3の底部開口を覆う底板4が設けられている。そして、上枠2や底板4は、PP(ポリプロピレン)などの合成樹脂で形成される一方で、外枠3は清掃性や外観品位を向上させるために、例えばステンレスなどの金属部材で形成される。また、上枠2の上面内周部から一体に垂下させて形成されるほぼ筒状の鍋収容部6と、この鍋収容部6の下面開口を覆って設けられ、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂で形成される内枠8とにより、後述する鍋11を収納する有底筒状で非磁性材料からなる鍋収容体9が形成される。
前記鍋収容体9内には、米や水などの被炊飯物を収容する有底筒状の鍋11が着脱自在に収容される。この鍋11は、熱伝導性のよいアルミニウムを主材料とした鍋本体12と、この鍋本体12の外面の側面下部から底面部にかけて接合されたフェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体13とにより構成される。鍋11の側面中央から上部に発熱体13を設けないのは、鍋11の軽量化を図るためである。あるいは、アルミニウムやステンレスなどの異種金属を多層に接合させたクラッド材で、後述する形状の鍋11を形成してもよい。また、鍋11の上端周囲には、その外周側に延出する円環状のフランジ部14が形成されている。なお、鍋収容部6の外周には加熱手段を設けない構成となっている。
炊飯器の本体外観は、その上部と側部を一体化した外側枠と、当該外側枠の底部を覆う底板で構成してもよい。また本体外観を、上部を覆う上枠と、側部と低部を一体化した底側枠とにより構成したり、あるいは本実施例のように、上部を覆う上枠2と、側部を覆う側枠(外枠3)と、底部を覆う底板4とにより構成してもよい。その場合、外側枠,底板,上枠,底側枠は、いずれもPPなどの合成樹脂で形成されるが、側枠は上述したステンレスなどの金属板の他に、PPなどの合成樹脂でもよい。
前記内枠8は、鍋11の発熱体13に対向して位置しているが、この内枠8の外面の発熱体13に対向する側面下部および底面部には、鍋11の特に底部を電磁誘導加熱する加熱手段としての加熱コイル16が設けられている。そして、この加熱コイル16に高周波電流を供給すると、加熱コイル16から発生する交番磁界によって鍋11の発熱体13が発熱し、鍋11ひいては鍋11内の水や米などの被炊飯物が加熱されるようになっている。
また、内枠8の底部中央部には、鍋11の底部外面と弾発的に接触するように、鍋温度検出手段としての温度センサ21が配置され、鍋11の温度を検知し、加熱コイル16による鍋11の底部の加熱温度を主に温度管理するようになっている。
前記鍋収容体9の上端には、鍋11の側面上部、特にフランジ部14を加熱するためのコードヒータ26が、鍋11のフランジ部14の下側に位置して円環状に配置されている。このコードヒータ26は電熱式ヒータからなり、鍋収容体9の上端に載置するようにして取り付けられた熱放散抑止部材としてのヒータリング27上に保持されると共に、コードヒータ26を上から覆うようにしてヒータリング27に取り付けられ、かつ熱伝導性に優れた例えばアルミ板からなる固定金具と放熱部とを兼用する金属板29を備えて、フランジヒータ30を構成している。この金属板29は、炊飯器の本体1と蓋体31との隙間に対向して位置している。そして、前記金属板29の上面に鍋11のフランジ部14の下面が載置し、これにより、鍋11が本体1の上枠2に吊られた状態で、鍋収容体9内に収容されるようになっている。したがって、鍋11とこの鍋11が収容された鍋収容体9の上端との間における隙間がほとんどない構成になる。しかも、鍋11のフランジ部14は、外形がコードヒータ26と同等以上の大きさに形成されており、これにより、コードヒータ26が鍋11のフランジ部14で上から覆われるようになっている。但し、図示していないが、鍋11の持ち手部(フランジ部14)は非接触にし、部分的に隙間を形成することで、鍋11の外面に水が付着した状態で炊飯したときに、当該隙間から蒸気が排出されるようにしてある。
前記上枠2の上面には、フランジヒータ30を組み込む際に、鍋11の回り止め部材として、弾性を有する回り止めゴム18が先に取り付けられる。これにより、鍋収容体9の上部において、回り止めゴム18が上枠2とフランジヒータ30との間に挟持される。回り止めゴム18をフランジヒータ30に装着してから、これらの構造体を上枠2の上面に組み込んでもよい。これにより、フランジヒータ30により鍋11のフランジ部14を直接加熱しつつ、回り止めゴム18が鍋収容体9内における鍋11の回転を規制することができる。
因みに、フランジヒータ30の代わりに、鍋11のフランジ部14を載置する載置部全体を回り止めゴム18で形成することも可能である。但し、その場合は鍋11のフランジ部14への加熱ができなくなるので、鍋11の側面を加熱する別な加熱手段(鍋側面加熱手段)を設けるのが好ましい。これにより、鍋11の上側半分を効率よく加熱することができる。
前記本体1と蓋体31は、その後部においてヒンジ部32(本体ヒンジ部と蓋体ヒンジ部)を設けている。ヒンジ部32は、より詳しくは本体1のヒンジ部である本体ヒンジ部と、蓋体31のヒンジ部である蓋体ヒンジ部とにより構成され、これらの本体1のヒンジ部と蓋体31のヒンジ部とを軸支する回転軸としてのシャフト33を備えており、このシャフト33に巻装され、蓋体31に引掛けられたヒンジばね(図示せず)の力により、シャフト33を支点として蓋体31を開く方向に付勢している。また、上枠2の前部上側に設けられたクランプ36に、蓋体31の前部に配置されたフック部37が係脱自在に係合することにより、前記ヒンジばねの力に抗して蓋体31が閉じた状態に保持される。
蓋体31は、本体1の上部、つまり鍋11の上部を開閉自在に覆うもので、その上面外殻を形成する例えばプラスチック製の外蓋41と、外蓋41の状面開口部を塞ぐ三次元形状の金属蓋42と、蓋体31の内面である下面を形成する蓋下面材としての放熱板43と、外蓋41および放熱板43を結合させて蓋体31の骨格を形成する蓋ベース材としての外蓋カバー44とを主たる構成要素としている。また、蓋体31の内面である下面には、この下面との間に所定の隙間を形成して、前記鍋11の上部開口部を直接覆う内蓋47が着脱自在に装着される。前記放熱板43および内蓋47はともに金属製であり、例えば、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした材料からなっている。また、前記内蓋47の外周部には、前記フック部37を形成したパッキンベース48が固定されており、パッキンベース48と内蓋47とにより挟まれて蓋パッキン49が固定されている。これにより、内蓋47と蓋パッキン49はシール保持部材であるパッキンベース48で一体化され、蓋パッキン49も内蓋47と共に蓋体31の内面に着脱可能に設けられる。シール部材としての蓋パッキン49は、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材により環状に形成され、前記鍋11の内側上面に当接してこの鍋11と内蓋47との間の隙間を塞ぎ、鍋11から発生する蒸気を密閉するものである。そして、蓋パッキン49における鍋11への当接部は、フランジ部14を挟んで前記コードヒータ26に対向している。
パッキンベース48は、容器である鍋11の上方に位置し、鍋11のフランジ部14の内径よりも外に広がる形状を有する。またパッキンベース48は、蓋パッキン49を取付けた状態で内蓋47に装着されるが、このときパッキンベース48と内蓋47はねじにより固定してもよいし、内蓋47に凸状の爪を設け、この爪を折り曲げてパッキンベース48を固定してもよい。いずれにせよ蓋パッキン49は、パッキンベース48と内蓋47との間で支持されることになる。また蓋パッキン48は、本体1に鍋11を収納した時に、フランジ部14の上面あるいは内側面のいずれか一方、または両方と密着シールする構成とし、鍋11の中心から見てフランジ部14の内側面より外方に配置させる。
また、前記蓋体31の内部にあって、放熱板43の上面には、蓋加熱手段としての蓋ヒータ51が設けられている。この蓋ヒータ51は、コードヒータなどの電熱式ヒータや、電磁誘導加熱式による加熱コイルでもよい。さらに前記放熱板43には、蓋体31の特に内蓋47の温度を検知する蓋温度検知手段として、蓋ヒータ51による内蓋47の温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋温度センサ52が設けられていている。前記蓋体31の上面中央部には、鍋11内で発生した蒸気を外部へ放出するための蒸気口53が、蓋体31の上面側から着脱可能に取り付けられている。また、前記放熱板43および内蓋47における蒸気口53の下方の位置には、蒸気通過用の開口孔(蒸気排出口:図示せず)がそれぞれ開口形成されており、蒸気口53の下端部には蒸気口パッキン54が設けられている。
前記本体1の前部には操作パネル55が設けられている。この操作パネル55の内側には時間や選択したメニューを表示するLCD56や、他にいずれも図示しないが、現在の行程を表示するLEDや、炊飯を開始させたり、メニューを選択させるためのスイッチなどを表示基板57の表面に実装した表示部58が配設される。操作部に相当する操作パネル55はボタン名などを表示するもので、電子部品である制御手段にほこりや水が付着することも防止している。なお、操作パネル55を蓋体31の正面側に設けてもよい。
61は、本体1の内部後方に設けられた加熱制御手段である。この加熱制御手段61は、加熱手段である加熱コイル16を駆動させるための発熱素子(図示せず)を基板に備えて構成される。この加熱コイル16を駆動する素子は、加熱コイル16の発振と共に加熱されるが、動作状態を保証する使用条件温度を有するので、一定温度以下で使用する必要がある。そのために、加熱コイル16を駆動する素子は、例えばアルミニウムのような熱伝導性の良好な材料で構成されるフィン状の放熱器62に熱的に接続され、冷却手段である冷却ファン63から発する風を放熱器62に当てて熱を奪うことにより、使用条件温度内で素子を駆動するようにしている。
冷却ファン63は、加熱制御手段61に取り付けられた放熱器62の下方、若しくは側部に配置されている。また、本体1の底部若しくは側部には、冷却ファン63から発し、加熱制御手段61に取り付けられた放熱器62から熱を奪って温かくなった風を、本体1の外部へ排出するための孔64が複数設けられている。加熱制御手段61は製品内部すなわち本体1内に収納されるが、鍋11の外周囲のどの位置に配置してもよい。また、本体1の底部若しくは側部に設けた孔64も、どの位置に配置してもよい。しかし、近年は製品の小形化設計が求められている背景もあり、加熱制御手段61や冷却ファン63と、温かな風を排出する孔64は、鍋11をはさんで略反対位置に配置するのが好ましい。
本体1の内部には、電源プラグ(図示せず)を巻き取るためのコードリール66が設けられる。また67は、本体1の両側部を跨ぐように設けられた運搬用の回転可能なハンドルである。上枠2の後部にはハンドル掛け部68が一体的に形成されており、ハンドル67を後方に倒したときに、ハンドル掛け部68にハンドル67の下面が当接して、当該ハンドル67が略水平状態に保持されるようになっている。なお、本体1とハンドル67との取付け構造は、後ほど各実施例で詳しく説明する。
次に制御系統について、図16を参照しながら説明する。同図において、71は前述の加熱制御手段で、これは前記鍋温度センサ21および蓋温度センサ52からの各温度情報を受信して、炊飯時および保温時に鍋11の底部を加熱する加熱コイル16と、鍋11の側部を加熱するコードヒータ26と、蓋体31を加熱する蓋ヒータ51とを各々制御するものである。特に本実施例の加熱制御手段61は、鍋温度センサ21の検出温度に基づいて主に加熱コイル16が制御されて鍋11の底部を温度管理し、蓋温度センサ52の検出温度に基づいて主に蓋ヒータ51が制御されて放熱板43ひいては内蓋47を温度管理するようになっている。加熱制御手段61は、自身の記憶手段(図示せず)に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、被調理物の調理加熱を制御する調理制御手段を備えており、ここでは炊飯時に前記鍋11内の被調理物を炊飯加熱する炊飯制御手段70と、保温時に鍋11内のご飯を所定の保温温度に保温加熱する保温制御手段71とをそれぞれ備えている。
72は、加熱制御手段61からの制御信号を受けて、加熱コイル16に所定の高周波電流を供給する高周波インバータ回路などを内蔵した加熱コイル駆動手段である。またこれとは別に、加熱制御手段61の出力側には、加熱制御手段61からの制御信号を受けて、放熱板43や内蓋47を加熱するように蓋ヒータ51を駆動させる蓋ヒータ駆動手段73と、加熱制御手段61からの制御信号を受けてコードヒータ26をオンにするコードヒータ駆動手段74が各々設けられる。前記炊飯制御手段70による炊飯時、および保温制御手段71による保温時には、鍋温度センサ21と蓋温度センサ52からの各温度検出により、加熱コイル16による鍋11の底部への加熱と、コードヒータ26による鍋11の側面への加熱と、蓋ヒータ51による蓋体31への加熱が行なわれるように構成する。また、前記炊飯制御手段70による炊飯が終了し、鍋11内の被調理物がご飯として炊き上がった後は、保温制御手段71による保温に自動的に移行し、鍋温度センサ21の検知温度に基づき、加熱コイル11やコードヒータ26による鍋11への加熱を調節することで、ご飯を所定の保温温度(約70℃〜76℃)に保温するように構成している。
特に前記コードヒータ26による加熱について補足説明すると、炊飯後にご飯の温度が約100℃から約73℃の保温温度に低下するまでと、約73℃の保温安定時に、コードヒータ26を発熱させて、蓋体31と本体1との隙間の空間に金属板29から熱放射して、この隙間からの外気の侵入による冷えを抑制すると共に、鍋11のフランジ部14を加熱する。また、保温時にご飯を再加熱する期間にもコードヒータ26により鍋11のフランジ部14を加熱し、ご飯の加熱により発生する水分が鍋11の内面上部に結露することを防止するように構成している。
次に、上記構成についてその作用を説明する。鍋11内に被炊飯物である米および水を入れて、炊飯制御手段70による炊飯を開始すると、鍋温度センサ21による鍋11の底部の温度検知に基づいて、加熱コイル16とコードヒータ26で鍋11の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋11内の水温を約45〜60℃に15〜20分間保持するひたし炊きが行なわれる。その後、加熱コイル16により鍋11を強加熱し、被調理物への沸騰加熱を行なう。この沸騰加熱時に鍋11の底部の温度が90℃以上になり、蓋体31の温度が90℃以上で安定したら、鍋11内が沸騰状態になったものとして、それまでよりも加熱量を低減した沸騰継続加熱に移行する。なお、蓋体31の温度が90℃以上で安定したことは、蓋温度センサ52からの検出温度の温度上昇率により検知される。また、この沸騰検知において、鍋温度センサ21と蓋温度センサ52とにより、鍋11の底部および蓋体31がいずれも90℃以上になったことを確認でき、完全に鍋11内が沸騰したことを精度よく検知できる。
また、前記鍋11の底部,鍋11の側面部または蓋体31のいずれかが120℃以上の通常ではあり得ない検知温度になったら、加熱制御手段61は何らかの異常があると判断して炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を停止する切状態にするか、後述するむらしに移行するか、保温を行ない、異常加熱を防止する。逆に、前記鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃以上になって所定時間(例えば5分)経過しているのに、それ以外の鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃未満で低い状態の場合、この温度の低い状態の鍋温度センサ21または蓋温度センサ52が、何らかの理由(汚れや傾きや接触不良など)で温度検知精度が悪化していると判断し、同様に炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を序止する切状態にするか、むらしに移行するか、保温を行ない、これに対処する。
沸騰継続に移行すると、炊飯制御手段70は蓋ヒータ51による蓋加熱を開始させる。ここでの蓋加熱は、内蓋47の温度が100〜110℃になるように、蓋温度センサ52の検知温度により管理される。そして、鍋11の底部が所定の温度上昇を生じたら、炊き上げを検知して、むらしに移行する。むらし中は蓋温度センサ52の検出温度による温度管理によって蓋ヒータ51を通断電し、内蓋47への露付きを防止すると共に、ご飯が焦げない程度に高温(98〜100℃)が保持されるように、鍋11の底部の温度を管理する。むらしは所定時間(15〜20分)続けられ、むらしが終了したら保温制御手段71による保温に移行する。
保温になると、加熱コイル16にて鍋11の底部と側面下部を加熱すると共に、鍋11内に収容するご飯の温度よりも僅かに高く、蓋ヒータ51により蓋体31の下面を加熱し、さらに鍋11の側面をコードヒータ26でご飯が乾燥せず、かつ露が多量に付着しないように温度管理する。鍋11内のご飯の温度は70〜76℃に温度保持されるが、この保温時においても、鍋温度センサ21や蓋温度センサ52が相互に異常に高かったり、あるいは異常に低かったりした場合には、異常を検知してこの異常加熱を防止する。
次に、本実施例の特徴部分における構成を、図1〜図7に基づき詳しく説明する。これらの各図において、鍋11の上内側部(内面側の上部)には、鍋11の中心方向すなわち内方に向かう凸部77を設けている。この凸部77は、鍋11のフランジ部14の下方に設けられる。一方、前記蓋パッキン49は、本体1の鍋11を収納した状態で、蓋体31の閉塞時にフランジ部14の上面に密着当接する耳部79と、前記凸部77の表面上側に密着当接する舌片80とを一体的に形成している。舌片80は、図1に示す鍋11の非加圧状態では、その下端部80Aが鍋11の内側から逃げるように内方に湾曲しているが、図2に示す通常時における鍋11の加圧状態では、鍋11内の圧力により弾性変形して、凸部77側に押し当てられるようになっている。これらの耳部79や舌片80は、蓋パッキン49の外周全体にわたって均一に形成される。
鍋11の上側側部(外面側の上部)には、前記凸部77に対応して凹部81が設けられれる。この凹部81は、例えばクラッド材のような母材をプレス成形して得た鍋11のように、鍋11の材厚が概ね一定となる加工法により形成されるものである。一方、鍋11を別なキャスト方式(溶湯鍛造なども含む)で製造した場合には、鍋11の材厚を任意に変えることができるので、鍋11の外側上部に凹部81を設けない構成とすることもできる。この変形例については、後ほど詳述する。
前記凸部77は、鍋11の外側上部全周にわたって環状に設けてよいが、好ましくは局部的に凸部77を設けない部分があったり、突出量(凸量)の異なる部分が形成される。図7に示すものは、鍋11の外側上部の一部に、凸部77と同じ高さに位置して、当該凸部77と凸量の異なる領域を凸量変化部82として設けている。ここに示す凸量変化部82は、凸部77よりも突出量が少ないが、逆に凸部77よりも突出量を多く形成しても構わない。いずれにせよ、凸部77とは別に、こうした凸量が異なる領域を鍋11の外側上部の一部に設けることが重要となる。
鍋11のフランジ部14には、好ましくは左右一対の把手84が外方に突出して設けられる。この把手84は、本体1の鍋収容体9に対して鍋11を着脱しやすいように、使用者が手で掴むのに適した形状を有している。円筒状の胴部をもつ鍋11は、鍋収容体9のどの方向に対しても装着できるが、ここでの把手84は、本体1に対する鍋11の収納位置を規定する位置決め手段としても作用し、図7に示すように、ハンドル67の左右の基端67Aに臨んで把手84を配置することにより、前記凸量変化部82が本体1の後方にある蓋体31のヒンジ部32に対向するようになっている。なお、位置決め手段としては、たとえば把手84の代わりに本体1と鍋11にそれぞれ目印となる表示部を設け、双方の表示部を一致させる構成としてもよい。また、本体1に対する鍋11の回動を規制するために、把手84の形状に対応した凹部や、把手84に当接する突起などを設けてもよい。
次に、この蓋パッキン49の作用について、各図を参照しながら説明する。炊飯を行なう場合には、把手84を持ちながら、この把手84がハンドル67の基端67Aに対向するように、蓋体31の開いた状態にある鍋収容体9に対して、被炊飯物を投入した鍋11を収納する。また、内蓋47が蓋体31の下面より取り外されている場合は、予め内蓋47を蓋体31の下面に取付けておく。内蓋47を装着した状態で、ヒンジ部32を回転中心として蓋体31を手前側に回動すると、内蓋47の外周にあるフック部37がクランプ36を乗り越えて係合し、本体1に対し蓋体31が閉じた状態に保持される。このとき図1に示すように、フランジ部14の上面に蓋パッキン49の耳部79が密着当接すると共に、鍋11の上内側部にある凸部77の上側に、蓋パッキン49の舌片80が密着当接し、蓋パッキン49を備えた内蓋47が鍋11の上面開口部を直接塞ぐ。
こうして炊飯を行なう準備が完了したら、次に操作パネル55を操作して炊飯を開始する。加熱コイル16とコードヒータ26により鍋11内の被炊飯物を加熱すると、鍋11と内蓋47とにより閉塞された内部空間が加圧状態となり、鍋11の上面開口部に対向する内蓋47の表面は均一に力を受けて、蓋体31を上方へ浮かせようとする。このとき蓋パッキン49も上方に持ち上げられ、鍋11のフランジ部14から離れようとする動きが作用する。また、鍋11の上内側部に当接する蓋パッキン49のシール部たる舌片80は、前記内部空間の加圧により放射状の力が作用し、鍋11のフランジ部14に対して外側上部へと変形する。すなわち、図2に示すように、蓋パッキン49の舌片80は放射状に働く力が作用して、その下端部80Aが鍋11の凸部77側に押し当てられる。
ここで、前記内部空間の加圧状態が通常の範囲内であれば、図3に示すように蓋パッキン49と鍋11の凸部77との密着は崩壊しない。これは、蓋体31あるいは蓋パッキン49と一体となっている内蓋47が変形した時に、蓋パッキン49の舌片80が鍋11の凸部77を乗り越えようとする力が、蓋パッキン49と凸部77との当接力よりも弱いためである。同様に、別な鍋11の凸量変化部82においても、図5に示すように、蓋パッキン49の変形により、舌片80の下端部80Aが鍋11の凸量変化部82に押し当てられるが、蓋パッキン49の舌片80が鍋11の凸量変化部82を乗り越えようとする力が、蓋パッキン49と凸量変化部82との当接力よりも弱いので、蓋パッキン49と鍋11の凸量変化部82との密着は崩壊しない。したがって、通常の加圧状態において、鍋11内は蓋パッキン49により密着状態を保ったまま、蒸気排出口である蒸気口53から蓋体31の外部に蒸気が放出される。
これに対して、例えば炊飯時に発生したオネバが、内蓋47に形成した蒸気通過用の開口孔(蒸気排出口)に固着したり、或いは開口孔に異物が付着するなどして、当該開口孔が閉塞すると、鍋11の内部は異常に加圧された状態となる。その時、蓋パッキン49は前述のように外側上部へと変形して、舌片80の下端部80Aが鍋11の凸部77や凸量変化部82に押し当てられる。蓋体31、或いは蓋パッキン49と一体になっている内蓋47は、通常の加圧状態に比べて変形量が大きく、圧力は内蓋47をさらに放射状に加重するので、内蓋47や蓋体31はより一層上部へ持ち上がる。そして、蓋パッキン49も同じく上部へ持ち上げられ、鍋11とのシール領域が減少、或いはシールしなくなる。蓋パッキン49が鍋11をシールしなければ、そこで蓋パッキン49と鍋11との密着が容易に崩壊する。
図4は、鍋11内の異常加圧状態において、蓋パッキン49と鍋11の凸部77との接触状態を示している。前述のように、蓋パッキン49と鍋11とのシール領域が減少することは、蓋パッキン49と鍋11との接触面積が減少することを意味し、単位面積あたりの力が変わらない場合には、蓋パッキン49と鍋11との当接力を減少させることに繋がる。図4に示す蓋パッキン49の舌片80と鍋11の凸部77との接触面積S2は、通常の加圧状態における舌片80と凸部77との接触面積(図3のS1参照)よりも小さく、鍋11内の異常加圧状態において、凸部77に対する蓋パッキン49の当接力が弱まっている。
一方、図6は、同じ鍋11内の異常加圧状態において、蓋パッキン49と鍋11の凸量変化部82との接触状態を示している。ここでは、凸部77よりも凸量の小さい凸量変化部82によって、蓋パッキン49の舌片80が凸量変化部82を乗り越えようとする力が、舌片80と凸量変化部82との当接面積を上回っており、蓋パッキン49と鍋11との密着がすでに崩壊している。すなわち、蓋パッキン49に当接する鍋11の凸量の小さい領域(この場合は、凸量変化部82)で、蓋パッキン49と鍋11との密着崩壊がより如実に起こることになる。勿論、凸部77よりも凸量の大きい凸量変化部82を形成すれば、鍋11の凸部77と蓋パッキン49との間から密着の崩壊が発生する。そして、この蓋パッキン49と鍋11との密着が崩壊した部位から、鍋11内の蒸気を含む被炊飯物を外に飛び出させる一方で、それ以外の蓋パッキン49と鍋11との密着が保たれている部位では、被炊飯物の飛び出しを防止できる。
またこの実施例では、ハンドル67の左右の基端67Aに把手84を合せるようにして、鍋11を鍋収容体9に装着することで、本体1の後方にある蓋体31のヒンジ部32に、鍋11の凸量変化部82が対向して配置される。そのため、把手84をハンドル67の基端67Aに向けて鍋11を収納すれば、鍋11内の異常加圧状態に、被炊飯物を本体1の後方に限定して飛び出させることができ、安全性が高まる。また、特に本体1の後方には壁状に形成されたヒンジ部32があって、このヒンジ部32が鍋11から外に飛び出した被炊飯物の飛び散り防止部として作用するので、本体1外への被炊飯物の飛び散りを確実に防止できる。
以上のように本実施例では、有底状の容器としての鍋11と、鍋11を収納する本体1と、鍋11の開口部を覆う内蓋47を含めた蓋体31と、鍋11を加熱する加熱手段としての加熱コイル16やコードヒータ26を備え、蓋体31には鍋11をシールするシール体たる蓋パッキン49を備えた炊飯器において、鍋11の内側部に蓋パッキン49をシールさせるように舌片80を形成すると共に、鍋11の例えば上内側部に、この鍋11の内方中心に向かう突出した凸部77を設け、前記舌片80が当接する凸部77に、凸量が異なる部分として凸量変化部82を形成している。
この場合、加熱コイル16やコードヒータ26により鍋11を加熱して、鍋11の内部を加圧すると、蓋パッキン49の舌片80が鍋11の凸部77や凸量変化部82に押し当てられ、鍋11と蓋体31との間を蓋パッキン49によりシール保持することが可能になる。このとき、鍋11の凸量が他よりも小さい部分(凸量変化部82)では、鍋11内の異常加圧時に、蓋パッキン49と鍋11との当接力よりも、蓋パッキン49が鍋11を乗り越えて変形しようとする力がより大きく作用し、結果的にこの部分でのみ蓋パッキン49と鍋11との密着が容易に崩壊する。そのため、内蓋47に設けた蒸気排出口がつまるなどして、鍋11の内部が異常に加圧された状態に陥っても、鍋11内の蒸気などを含む被炊飯物の外部への飛び出し方向を指定でき、安全性の高い炊飯器を提供できる。
ところで、有底筒状の鍋11は、本体1に対して360°のどの位置でも着脱できる。そのため、無造作に鍋11を本体1に入れられると、上述した被炊飯物の外部への飛び出し方向がどこになるのかが特定されず、好ましくない方向から被炊飯物が飛び出す虞れもある。
そのため本実施例では、例えば本体1に対する鍋11の収納位置を規定する位置決め手段として、鍋11に把手84を設けている。この場合、鍋11を本体1に対してある一定の位置でしか収納できないように、目印となる把手84を設けることで、鍋11内の異常加圧状態において、鍋11から蒸気などの被炊飯物が飛び出す方向を予め特定でき、炊飯器としての安全性をより高めることができる。
さらに、本実施例の把手84は、鍋11の凸量の小さい部分(凸量変化部82)を本体1の後方に位置させるように設けられている。こうすれば、鍋11内の異常加圧状態において、鍋11から蒸気などの被炊飯物が飛び出す方向である鍋11の凸量の小さい部分を、把手84により使用者が比較的その近傍にいることが少ない本体1の後方に向けることができる。そのため、蒸気などの被炊飯物が飛び散って使用者に触れたり、他の電気製品などに当たることを抑制できる。
また、本体1と蓋体31とを軸支して開閉自在にするヒンジ部32を設け、凸量の小さい部分(凸量変化部82)をヒンジ部32に位置させるように、位置決め手段としての把手84を設けることで、鍋11の凸量の小さい部分から飛び出した蒸気などの被炊飯物を、ヒンジ部32で受け止めることが可能になる。そのため、蒸気などの被炊飯物が飛び散って使用者に触れたり、他の電気製品などに当たることを確実に防止できる。
次に、本発明の第3実施例を図9〜図13に基づき説明する。これらの各図において、本実施例では鍋11の上内側部に外方に向かう凹部91が、フランジ部14の下方に位置して設けられると共に、この凹部91に対応して、鍋11の上側側部に凸部96が設けられる。凸部96は第1実施例と同じく、例えばクラッド材のような母材をプレス成形して得た鍋11のように、鍋11の材厚が概ね一定となる加工法により形成される。
前記凹部91は、鍋11の外側上部全周にわたって環状に設けてよいが、好ましくは局部的に凹部91を設けない部分があったり、凹み量の異なる部分が形成される。ここでは図12に示すように、鍋11の外側上部の一部に、凹部91と同じ高さに位置して、当該凹部91と凹み量の異なる領域を凹み量変化部92として設けている。ここに示す凹み量変化部92は、凹部91よりも凹み量が少ないが、逆に凹部91よりも凹み量を多く形成しても構わない。いずれにせよ、凹部91とは別に、こうした凹み量が異なる領域を鍋11の外側上部の一部に設けることが重要となる。
また、円筒状の胴部をもつ鍋11は、鍋収容体9のどの方向に対しても装着できるが、ここでの把手84は、本体1に対する鍋11の収納位置を規定する位置決め手段としても作用し、図13に示すように、ハンドル67の左右の基端67Aに臨んで把手84を配置することにより、前記凹み量変化部92が本体1の後方にある蓋体31のヒンジ部32に対向するようになっている。
そして本実施例では、内蓋47の外周にあるフック部37とクランプ36との係合により、本体1に対し蓋体31が閉じた状態に保持されると、図9に示すように、フランジ部14の上面に蓋パッキン49の耳部79が密着当接すると共に、鍋11の上内側部にある凹部91の内方に、蓋パッキン49の舌片80が対向配置され、蓋パッキン49を備えた内蓋47が鍋11の上面開口部を直接塞ぐ。
次に、炊飯開始に伴い、加熱コイル16とコードヒータ26により鍋11内の被炊飯物を加熱すると、鍋11と内蓋47とにより閉塞された内部空間が加圧状態となる。ここでは図10に示すように、蓋パッキン49の舌片80に放射状に働く力が作用して、その下端部80Aが鍋11の凹部91側に押し当てられる。ここで、前記内部空間の加圧状態が通常の範囲内であれば、図11に示すように蓋パッキン49と鍋11の凹部91との密着は崩壊しない。これは、蓋体31あるいは内蓋47が変形した時に、蓋パッキン49の舌片80が鍋11の凹部91を乗り越えようとする力が、蓋パッキン49と凹部91との当接力よりも弱いためである。同様に、別な鍋11の凹み量変化部92においても、蓋パッキン49の変形により、舌片80の下端部80Aが鍋11の凹み量変化部92に押し当てられるが(図5参照)、蓋パッキン49の舌片80が鍋11の凹み量変化部92を乗り越えようとする力が、蓋パッキン49と凹み量変化部92との当接力よりも弱いので、蓋パッキン49と鍋11の凹み量変化部92との密着は崩壊しない。したがって、通常の加圧状態において、鍋11内は蓋パッキン49により密着状態を保ったまま、蒸気排出口である蒸気口53から蓋体31の外部に蒸気が放出される。
一方、内蓋47に形成した蒸気通過用の開口孔が閉塞して、鍋11の内部が異常加圧状態に陥ると、蓋パッキン49は前述のように外側上部へと変形して、舌片80の下端部80Aが鍋11の凹部91や凹み量変化部92に押し当てられる。このとき、蓋体31或いは内蓋47は、通常の加圧状態に比べて変形量が大きくなり、内蓋47や蓋体31はより一層上部へ持ち上がる。そして、蓋パッキン49も同じく上部へ持ち上げられ、鍋11とのシール領域が減少、或いはシールしなくなる。蓋パッキン49が鍋11をシールしなければ、そこで蓋パッキン49と鍋11との密着が容易に崩壊する。
図12は、鍋11内の異常加圧状態において、蓋パッキン49と鍋11の凹部91との接触状態を示しているが、蓋パッキン49と鍋11とのシール領域が減少することは、蓋パッキン49と鍋11との接触面積が減少することを意味し、単位面積あたりの力が変わらない場合には、蓋パッキン49と鍋11との当接力を減少させることに繋がる。図12に示す蓋パッキン49の舌片80と鍋11の凹部91との接触面積S2は、通常の加圧状態における舌片80と凹部91との接触面積(図11のS1参照)よりも小さく、鍋11内の異常加圧状態において、凹部91に対する蓋パッキン49の当接力が弱まっている。
これに対して、凹部91よりも凹み量の小さい凹み量変化部92では、蓋パッキン49の舌片80が凹み量変化部92を乗り越えようとする力が、舌片80と凹み量変化部92との当接面積を上回っており、蓋パッキン49と鍋11との密着がすでに崩壊している。すなわち、蓋パッキン49に当接する鍋11の凹み量の小さい領域(この場合は、凹み量変化部92)で、蓋パッキン49と鍋11との密着崩壊がより如実に起こることになる。勿論、凹部91よりも凹み量の大きい凹み量変化部92を形成すれば、鍋11の凹部91と蓋パッキン49との間から密着の崩壊が発生する。そして、この蓋パッキン49と鍋11との密着が崩壊した部位から、鍋11内の蒸気を含む被炊飯物を外に飛び出させる一方で、それ以外の蓋パッキン49と鍋11との密着が保たれている部位では、被炊飯物の飛び出しを防止できる。
またこの実施例では、ハンドル67の基端67Aに把手84を合せるようにして、鍋11を鍋収容体9に装着することで、本体1の後方にある蓋体31のヒンジ部32に、鍋11の凹み量変化部92が対向して配置される。そのため、把手84をハンドル67の基端67Aに向けて鍋11を収納すれば、鍋11内の異常加圧状態に、被炊飯物を本体1の後方に限定して飛び出させることができ、安全性が高まる。また、本体1の後方には壁状に形成されたヒンジ部32があって、このヒンジ部32が鍋11から外に飛び出した被炊飯物の飛び散り防止部として作用するので、本体1外への被炊飯物の飛び散りを確実に防止できる。
以上のように本実施例でも、鍋11の内側部に蓋パッキン49をシールさせるように舌片80を形成すると共に、鍋11の上内側部に、この鍋11の放射方向外方へと向かう凹部91を設け、前記舌片80が当接する凹部91に、凹み量が異なる部分として凹み量変化部92を形成している。
この場合、加熱コイル16やコードヒータ26により鍋11を加熱して、鍋11の内部を加圧すると、蓋パッキン49の舌片80が鍋11の凹部91や凹み量変化部92に押し当てられ、鍋11と蓋体31との間を蓋パッキン49によりシール保持することが可能になる。このとき、鍋11の凹み量が他よりも小さい部分(凹み量変化部92)では、鍋11内の異常加圧時に、蓋パッキン49と鍋11との当接力よりも、蓋パッキン49が鍋11を乗り越えて変形しようとする力がより大きく作用し、結果的にこの部分でのみ蓋パッキン49と鍋11との密着が容易に崩壊する。そのため、鍋11の内部が異常に加圧された状態に陥っても、鍋11内の蒸気などを含む被炊飯物の外部への飛び出し方向を指定でき、安全性の高い炊飯器を提供できる。
また本実施例では、本体1に対する鍋11の収納位置を規定する位置決め手段として、鍋11に把手84を設けている。この場合、鍋11を本体1に対してある一定の位置でしか収納できないように、目印となる把手84を設けることで、鍋11内の異常加圧状態において、鍋11から蒸気などの被炊飯物が飛び出す方向を予め特定でき、炊飯器としての安全性をより高めることができる。
さらに、本実施例の把手84は、鍋11の凹み量の小さい部分(凹み量変化部92)を本体1の後方に位置させるように設けられている。こうすれば、鍋11内の異常加圧状態において、鍋11から蒸気などの被炊飯物が飛び出す方向である鍋11の凹み量の小さい部分を、把手84により使用者が比較的その近傍にいることが少ない本体1の後方に向けることができる。そのため、蒸気などの被炊飯物が飛び散って使用者に触れたり、他の電気製品などに当たることを抑制できる。
また、本体1と蓋体31とを軸支して開閉自在にするヒンジ部32を設け、凹み量の小さい部分(凹み量変化部92)をヒンジ部32に位置させるように、位置決め手段としての把手84を設けることで、鍋11の凹み量の小さい部分から飛び出した蒸気などの被炊飯物を、ヒンジ部32で受け止めることが可能になる。そのため、蒸気などの被炊飯物が飛び散って使用者に触れたり、他の電気製品などに当たることを確実に防止できる。