JP2006331883A - 固体高分子型燃料電池の電極触媒層 - Google Patents

固体高分子型燃料電池の電極触媒層 Download PDF

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Abstract

【課題】 選択的に金属担持電極触媒材料を選択することで、接合温度を制御しながら、高温度で接合処理したのと同等な触媒層を形成することを目的とする。
【解決手段】 高分子電解質と、該高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で相転移点を有する金属担持電極触媒とを有することを特徴とする高分子電解質型燃料電池用触媒層。
【選択図】 図7

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池の触媒層に関する。
高分子電解質型燃料電池は、電極シート間に膜を挟み込んで両者を接合したセルを組み合わせたものであり、この電池におけるセルの接合方法としては一般にホットプレスが採用されている。
一例として、非特許文献1に記載されているように、まず、プレス装置の温度を100℃程度に保ち、電極シート間に挟み込んだ膜(固体高分子電解質膜)を2枚のプレス板間に挿入し、膜中の水分を蒸発させた後、125〜130℃に温度を上昇させ、50kgf/cmで1分間ホットプレスを行うことにより、膜と電極シートとを接合している(特許文献1参照。)。また、非特許文献2では、200℃でホットプレスし、膜電極接合体を作製している。
ジャーナル・オブ・エレクトロアナリティカル・ケミストリー(J.Electroanal.Chem.)251(1988)275〜295 特開平5−343078号公報 Electrochem. Acta. 40 (1995) 355
従来技術に示したような上記特許文献1や非特許文献1、2に記載の高分子電解質型燃料電池セルの接合方法では、膜及び電極(通常、触媒層を言うが、ガス拡散層(GDL)を含む場合もある。)をホットプレス法により接合する。その条件は様々であるが、通常は、電極触媒層のバインダとして用いられるNafionに代表されるパーフルオロスルホン酸系ポリマー(単にPFSAともいう)のガラス転移温度(Tg)付近の120〜130℃でプレス処理する(上記特許文献1や非特許文献1参照)。しかしながら、金属担持電極触媒を含むPFSAは、必ずしも120〜130℃にTgを発現せず、さらにはPFSAに替わる炭化水素系高分子をバインダに使用すると相転移を利用したプレス処理が非常に困難であるという問題点があった。
また、非特許文献2のように、炭化水素系高分子のTgに合わせ、高い温度でホットプレスすると、接合体全体の熱酸化劣化が促進するといった懸念点もある。
そこで本発明では、選択的に金属担持電極触媒材料を選択することで、接合温度を制御しながら、高温度で接合処理したのと同等な触媒層ないし、膜電極接合体を形成することを目的とする。
すなわち、本発明は、高分子電解質と、該高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で相転移点を有する金属担持電極触媒と、を有することを特徴とする高分子電解質型燃料電池用触媒層により上記目的が達成される。
本発明によれば、金属担持電極触媒が相転移することで、高分子電解質と効果的な形状変化を起こすので、効果的な三相界面が形成でき、接合時に膜と電極(触媒層)との接合性が向上する。その結果、接合処理における熱酸化劣化が抑制できる。
本発明の高分子電解質型燃料電池用触媒層は、高分子電解質と、該高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で相転移点を有する金属担持電極触媒と、を有することを特徴とするものである。
なお、上記相転移点とは、後述する実施例の図3に示すように、物質の転移熱が現れる温度を指す。図3の場合は173度付近を指す。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
図7は、本発明の触媒層の好適な一実施形態として、該金属担持電極触媒(粒子)の相転移を利用した熱処理(接合処理ないしホットプレス)の際の金属担持電極触媒粒子表面近傍の様子を模式的に表したイメージ概略図である。
図7Aに示すように、本発明の触媒層に含まれる金属担持電極触媒(以下、単に電極触媒ともいう)71でも、接合処理(例えば、ホットプレス)前の状態では、白金(Pt)などの金属触媒粒子75を担持したカーボンなどの導電性担体73からなり、該導電性担体13表面に該金属触媒粒子75が(ほぼ均一に)分散された状態で担持されている。さらに、電極触媒(粒子)71の周囲には、高分子電解質77がプロトン導電性を有するバインダとして機能するように配されている。好ましくは、電極触媒(粒子)71の少なくとも一部を被覆した状態で存在している)。本発明では、該高分子電解質77の熱分解温度以下の範囲で相転移点(物質の転移熱が現れる温度)を有する金属担持電極触媒71として、例えば、カーボンなどの担体71表面がグラファイト化されていないものを用いる。こうした特性を有する金属担持電極触媒71を選択して用いることで、高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で接合処理(ホットプレス)しても、図7Bに示すように、金属触媒粒子15がグラファイト化されていないカーボンなどの導電性担体73表面を移動する自由度は高くなる。図7B中の矢印は、熱により金属触媒粒子75が担体71表面を移動する様子を模式的に示したものである。その結果、図7Cに示すように、隣接する金属触媒粒子75が再結合、会合、凝集等することで発生する転移熱により(相転移することで)、金属触媒粒子75を取り巻く樹脂(高分子電解質77)が局所的に加温される。図7C中の符号79は発生する転移熱をイメージ化したものである。このように、電極触媒11が相転移することで、金属触媒粒子75を取り巻く高分子電解質77と効果的な形状変化を起こすので、効果的な三相界面が形成でき、接合時に膜と電極(触媒層)との接合性が向上する。その結果、(1)従来では、高分子電解質のTg付近で接合処理(ホットプレス)した際に、金属担持電極触媒(粒子)71を含むためTgを発現できなかった場合でも、より高い温度でホットプレスしなくとも、接合に必要な金属触媒粒子75を取り巻く樹脂部分を局所的に加温できるため、高分子電解質のTg付近でホットプレスすることができる。(2)また、炭化水素系高分子電解質のTgに合わせて高い温度でホットプレスすることなくとも、接合に必要な金属触媒粒子75を取り巻く樹脂部分を局所的に加温できるため、比較的低い温度でホットプレスすることができる。そのため、接合処理における接合体全体の熱酸化劣化が促進するのを抑制することができる点で優れている。このように、本発明では、高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で相転移点を有する材料として、例えば、グラファイト化されていないカーボン担体を用いるなど、選択的に金属担持電極触媒を構成する材料を選択することで、接合温度を制御しながら、高温度で接合処理したのと同等な触媒層ないし、膜電極接合体を形成することができる。
本発明の触媒層は、高分子電解質型燃料電池において、高分子電解質膜の両面(空気極側および燃料極側)にそれぞれ接合されるものであり、いずれもプロトン導電性を有する高分子電解質(バインダないし電解質樹脂ともいう)と、導電性担体に触媒粒子が担持されてなる金属担持電極触媒(電極触媒ともいう)と、で構成されている。さらに、本発明では、必要があれば触媒層中にも酸化抑制剤などの添加剤を有していてもよい。
以下、本発明の高分子電解質型燃料電池用触媒層につき、構成要件ごとに詳しく説明する。
(1)高分子電解質
本発明に係る高分子電解質型燃料電池用触媒層に含まれるプロトン導電性を有するバインダとして用いられる高分子電解質としては、図7で説明したように、フッ素系高分子電解質および炭化水素系高分子電解質のいずれも使用することができるなど、特に制限されるものではない。好ましくは、高分子電解質として、金属担持電極触媒(例えば、白金担持カーボン触媒等)の発熱反応温度の下、その発熱エネルギーを利用して高分子電解質自身が軟化することができるものを用いているのが望ましい。本実施形態によれば、金属担持電極触媒(例えば、白金担持カーボン触媒等)の反応熱で周囲の高分子電解質が熱エネルギーを受け取り、熱硬化するので、化学耐性の良い高分子電解質を形成することができる。なお、触媒層に含まれる高分子電解質として、高分子電解質自身が軟化するもののみを用いても良いし、他の高分子電解質と併用しても良い。高分子電解質自身が軟化するもののみを用いる形態が望ましいといえる。
上記高分子電解質(バインダ)としては、例えば、後述する電解質膜の項で説明する高分子電解質を好ましく用いることができる。即ち、Nafion溶液などのパーフルオロスルホン酸ポリマー系のプロトン導電体、リン酸などの無機酸を炭化水素系高分子化合物にドープさせたもの、一部がプロトン導電体の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン導電体などからなるイオン交換樹脂が挙げられる。パーフルオロスルホン酸ポリマー系のプロトン導電体として、具体的には、炭素原子とフッ素原子のみからなる重合体だけではなく、水素原子が全てフッ素原子と置換されていれば酸素原子等を含有するものなどが挙げられ、CF=CFに基づく重合単位とCF=CF−(OCFCFX)−O−(CF−SOHに基づく重合単位(式中、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0又は1である。)とを含む共重合体などがある。
また、上記高分子電解質は、金属担持電極触媒の少なくとも一部を被覆しているのが好ましい(図7参照)。これにより、プロトン伝導性などを向上させるだけでなく、電極構造を安定して維持することができ、電極性能を高めることができる。
また、該高分子電解質の熱分解温度は、例えば、熱重量測定装置(TG)などにより測定することができる。同様に、該高分子電解質自身の軟化温度も、例えば、示差走査熱量装置(DSC)などにより測定することができる。また、論文や学術文献・書籍などで高分子電解質の熱分解温度、軟化温度が既に公知のものは、こうした値を用いてもよい。
(2)金属担持電極触媒
本発明に係る高分子電解質型燃料電池用触媒層に含まれる金属担持電極触媒は、上記高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で相転移点を有することを特徴とするものである。
金属担持電極触媒は、上記高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で相転移点を有することに関しては、図7を用いて説明した通りである。
なお、金属担持電極触媒の相転移点は、上記に規定したように、物質の転移熱が現れる温度を指すことから、図3に示すように、示差走査熱量計(DSC)測定によって求めることができる(実施例1参照)。
また、本発明の燃料電池用触媒層は、前記相転移点を有する金属担持電極触媒が、前記高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で発熱反応を示すことを特徴とするものである。
即ち、本発明では、金属担持電極触媒が、該金属担持電極触媒の相転移点において、前記高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で発熱反応を示すものが望ましい。これにより、高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で接合処理(ホットプレス)した際に、担持された金属触媒(例えば、白金等)が会合、凝集等することで(転移熱を生み出すと共に)結晶生長することで(図7C参照)、金属触媒(白金等)粒径が大きくなり、単位グラム当たりの表面積が小さくなるので、環境因子との反応活性が低下し、化学耐性の良い触媒粒子が形成する。ここで、発熱反応は、例えば、示差走査熱量装置(DSC)等を測定することで確認することができる。
上記金属担持電極触媒の発熱反応温度としては、150〜200℃の温度範囲であるのが望ましい。これは、金属担持電極触媒(例えば、白金担持カーボン触媒)11の相転移による熱エネルギーにより、金属担持電極触媒15周囲の高分子電解質17は、実際の熱処理温度(接合処理温度ないしホットプレス温度)より高い温度で処理ができているので、実際のプレス熱処理温度を抑制できる。特に金属担持電極触媒(白金担持カーボン触媒)の発熱反応温度が上記範囲にあれば、200℃という高い温度でホットプレスし、膜電極接合体を作製する必要のあった炭化水素系高分子電解質をバインダに使用する触媒層でも、上記発熱反応温度程度に実際のプレス熱処理温度を抑制できる。即ち、炭化水素系高分子電解質は、高い温度でホットプレスしないと接着性(バインダ性能)が低いことから、十分な接合強度を付与できなかったが、上記発熱反応温度を持つ金属担持電極触媒を用いることで、プレス熱処理温度を抑制して十分な接着性を保持させることができる点でも優れている。
さらに本発明では、上記金属担持電極触媒の相転移温度の±30℃の温度範囲、好ましくは相転移温度の−30℃から相転移温度までの温度範囲で熱処理(接合処理ないしホットプレス)を行うことができるものを用いるのが望ましい。これは、金属担持電極触媒(例えば、白金担持カーボン触媒)11の相転移による熱エネルギーにより、金属担持電極触媒15(例えば、導電性担体のカーボン)周囲の高分子電解質17は、実際の熱処理温度より高い温度で処理ができているので(図7C参照)、実際のプレス熱処理温度を抑制できるためである。即ち、金属担持電極触媒の相転移温度よりも低い温度(相転移温度の−30℃)で実際のプレス熱処理を行った場合でも、図7Bに示すように、金属触媒粒子15がグラファイト化されていないカーボンなどの担体13表面を移動する自由度を高めることができる。そのため、図7Cに示すように、隣接する金属触媒粒子15同士が再結合、会合、凝集等させることができ、所望の発熱反応が生じさせることができ、局所的により高温にでき相転移を生じさせることができる(相転移温度に達するようになる)。その結果、相転移による所望の熱エネルギーにより高い接合効果を発現させることができるものである。なお、上記金属担持電極触媒の相転移温度をA℃とすれば、上記条件は、A−30℃〜A+30℃の温度範囲、好ましくはA−30℃〜A℃の温度範囲と表すことができる。
上記金属担持電極触媒の基本構成は、白金(Pt)などの金属触媒(粒子)15を担持したカーボンなどの導電性担体13からなるものであるが、さらに助触媒などを担持してもよいし、こうした金属触媒を粒子形態以外にも被膜として担持されている部分があってもよいなど、特に制限されるものではなく、任意の構成、形態を取りえるものである。以下、金属担持電極触媒の基本構成の各部材につき説明する。
(i)金属触媒
導電性担体に担持される金属触媒粒子としては、アルミニウム、ケイ素、リン、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、すず、アンチモン、テルル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、鉛およびビスマスよりなる群から選択される1種、もしくは、この群から選択される少なくとも2種の合金を用いることができる。発電特性、耐久性、一酸化炭素などに対する耐被毒性および耐熱性などの点から、白金、白金−鉄合金、白金−コバルト合金、白金−ニッケル合金、白金−モリブデン合金、または白金−ルテニウム合金が好ましい。
金属触媒粒子の平均粒子径は、1〜30nmが好ましい。平均粒子径が1nm以上であると比表面積に見合った触媒活性が得られる点から好ましく、30nm以下であると触媒活性の点から好ましい。本発明における金属触媒の平均粒子径は、X線回折における触媒粒子の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径、または透過型電子顕微鏡像より得られる金属触媒粒子の粒子径の平均値を求めることにより得ることができる。
(ii)導電性担体
導電性担体は、金属触媒を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として機能する導電性を有していればよいが、さらに触媒層に含まれる高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で相転移点を有することができる表面構造を持つものが望ましい。導電性担体の材質としては、例えば、ケッチェンブラックTMまたはアセチレンブラックなどのカーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛または人造黒鉛などのグラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ガラス状炭素粉体、およびカーボンナノチューブなどの主成分がカーボンであるものが好ましい。なお、「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
本発明では、金属担持電極触媒の導電性担体として、グラファイト化されていない各種カーボン材料を用いるのが望ましい。グラファイト化されていない各種カーボン材料としては、アモルファスカーボンが挙げられる。これは、図7Bに示すように、金属触媒(白金)粒子15がアモルファスカーボンのようなグラファイト化されていないカーボン担体13上にあると、金属触媒(白金)粒子15同士が柔軟に動くことができるので、化学耐性の良い触媒粒子を形成することができるためである。ただし、本発明ではこれらに制限されるものではない。
導電性担体の平均一次粒子径は、2nm〜1μmが好ましく、より好ましくは5〜200nm、特に好ましくは10〜100nmである。平均一次粒子径が2nm以上であると有効な導電性ネットワークを形成するという点から好ましく、1μm以下であると触媒層の厚みを適切な範囲で制御できる点から好ましい。
導電性担体への金属触媒粒子の担持は公知の方法で行うことができる。
例えば、金属触媒を第一の溶媒に溶解して金属触媒水溶液を調製する。次に、カーボン粒子などの導電性担体、触媒金属水溶液、および還元剤を第二の溶媒に加えた混合液を調製し、金属触媒を還元・析出させカーボン粒子などの導電性担体に担持させることができる。次に、濾過により固形分を分離した後、固形分を乾燥することにより触媒物質を得ることができる。
金属触媒水溶液として、金属触媒として白金を用いる場合、塩化白金酸溶液またはジニトロジアミン白金錯体溶液などを用いることができる。還元剤として例えば、炭素数1〜6の有機酸類、アルコール類、炭素数1〜3のアルデヒド類、水酸化ホウ素ナトリウムおよびヒドラジンなどを用いることができる。炭素数1〜6の有機酸類としては特に限定されないが、ギ酸、酢酸、シュウ酸またはクエン酸などが挙げられる。アルコール類としては特に限定されないが、メタノール、エタノール、エチレングリコール、2−プロパノールまたは1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。炭素数1〜3のアルデヒド類としては特に限定されないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはアクロレインなどを用いることができる。第二の溶媒として、水を用いることができる。
導電性担体に対する金属触媒粒子の含有率は特に限定されないが、5〜80質量%が好ましく、より好ましくは10〜75質量%、特に好ましくは15〜70質量%である。金属触媒粒子の含有量が5質量%以上であると高い触媒活性を維持できる点で好ましく、80質量%以下であると高い耐久性を維持できる点で好ましい。金属触媒粒子の担持量は誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)により求めることができる。
次に、本発明の触媒層では、高分子電解質(バインダ)と導電性担体との質量比は、順に、0.3:1〜1.3:1が好ましく、より好ましくは0.5:1〜1.1:1である。導電性担体質量に対してバインダ成分である高分子電解質の質量比が0.3倍以上であると触媒層内の良好なイオン伝導性の点で好ましく、1.3倍以下であると触媒層内のガス拡散及び水の排出の点で好ましい。
本発明の触媒層には、さらに、撥水性高分子や、その他の各種添加剤が含まれていてもよい。撥水性高分子が含まれていることにより、得られる触媒層の撥水性を高めることができ、発電時に生成した水などを速やかに排出することができる。撥水性高分子の混合量は、本発明の作用効果に影響を与えない範囲で適宜決定することができる。上述の撥水性高分子として例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、または、PTFE、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレンもしくはこれらのモノマーの共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体など)などのフッ素系の高分子材料などを用いることができる。
本発明における触媒層の厚さ(片面)は、特に限定されないが、0.1〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜20μmである。触媒層の厚さが0.1μm以上であると所望する発電量が得られる点で好ましく、100μm以下であると高出力を維持できる点で好ましい。
本発明における触媒層の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。
例えば、電極触媒、バインダ、さらに必要に応じて撥水性高分子やその他の各種添加剤を液体分散媒に混合して、電極触媒インクとして、基材上、ガス拡散層上または高分子電解質膜上にスクリーンプリンター、バーコーター、ダイコーター、リバースコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ドクターナイフなどを用いて塗布し、乾燥させることにより形成できる。
電極触媒インクに用いられる液体分散媒としては、水;エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール;またはこれらの混合溶媒などを好ましく用いることができる。上記基材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製シート、ポリエチレンテレフタレート(PET)製シートなどを好ましく用いることができる。ガス拡散層に関しては、後述のガス拡散層基材、ガス拡散層におけるカーボン粒子層、およびガス拡散層におけるカーボン繊維層の項に記載する。乾燥は、室温〜使用溶媒の沸点+10℃程度、10〜300分、風乾もしくは乾燥用オーブン等の機器を用いて行うことが好ましい。乾燥用オーブン等の機器を用いるときは、減圧下で行ってもよい。
基材上またはガス拡散層上に触媒層インクを塗布して触媒層を形成した場合、接合処理(熱処理)として、例えば、ホットプレスにより触媒層と高分子電解質膜とを接合させることが望ましい。基材上に触媒層を形成した場合、触媒層を形成した基材を2枚用いて、触媒層が対向するように高分子電解質膜を挟持してホットプレスした後、基材のみを剥がせばよい。ガス拡散層上に触媒層を形成した場合、触媒層を形成したガス拡散層を2枚用いて、触媒層が対向するように固体高分子電解質膜を挟持してホットプレスすればよい。
上記接合処理(熱処理)としてホットプレスを行う場合には、本発明の作用効果を発現できるような条件であれば良く、例えば、金属担持電極触媒の相転移温度の±30℃の温度範囲となるように行えばよいが、具体的には、100〜200℃、好ましくは110〜190℃、より好ましくは120〜180℃、触媒層側の面に対して0.1〜10MPa、好ましくは1〜5MPaのプレス圧力で行うことが好ましい。上述の範囲でホットプレスを行うことにより、電解質膜と触媒層との接合性を高めることができるほか、ガス拡散層と触媒層との接合性を高めることもできる。
次に本発明の燃料電池用電極は、本発明に係る上記燃料電池用触媒層を含むことを特徴とするものである。
具体的には、電解質膜の両側に接合する触媒層の更に外側に位置する面側にガス拡散相等を設けることができる。当該ガス拡散層については、特に制限されるものではない。以下、ガス拡散層につき説明する。
(ガス拡散層)
触媒層に隣接するようにガス拡散層を配置することにより、高分子電解質膜が均一に加湿されて、高い水素イオン伝導性を発現することができる。
また、カソード側にガス拡散層を配置した場合には、酸化剤ガスを連続的に供給することができ、カソード側の化学反応をスムーズに行うことができ、さらに、化学反応により発生した水を分散させて触媒活性の低下を防止させることができる。アノード側にガス拡散層を配置した場合には、水素含有ガスを連続的に供給することができ、アノード側の化学反応をスムーズに行うことができる。
ガス拡散層は、アノード側またはカソード側のどちらか片面にのみ配置してもよし、アノード側およびカソード側の両面に配置してもよい。好ましくは、両面に配置することである。
本発明で用いられるガス拡散層は、ガス拡散層基材から構成され、さらに撥水性高分子等を含んでいてもよい。
ガス拡散層基材としては、特に限定されず、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料などが挙げられる。
また、ガス拡散層の撥水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐために、ガス拡散層基材に撥水性高分子を含むことが好ましい。撥水性高分子としては、特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、または、PTFE、PVDF、ポリヘキサフルオロプロピレン、もしくはこれらのモノマーの共重合体などのフッ素系の高分子材料よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
フラッディングとは、触媒層中の細孔などのガス拡散流路に水が溜まりガスの拡散を阻害する現象である。
本発明におけるガス拡散層の撥水処理方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、撥水性高分子の分散液にガス拡散層基材を含浸した後、ガス拡散層基材を加熱乾燥することにより撥水処理できる。加熱乾燥は、50〜150℃、10分〜5時間、オーブンを用いて行うことが好ましい。
ガス拡散層の厚みは特に限定されないが、50〜500μmが好ましく、より好ましくは100〜400μmである。ガス拡散層の厚みが50μm以上であるとガスの拡散性の点で好ましく、500μm以下であると電気的抵抗低減の点で好ましい。
さらに、本発明の電極では、触媒層あるいはガス拡散層に積層する形でカーボン含有層を形成してもよい。該カーボン含有層は、電解質膜と触媒層の間、触媒層とガス拡散層の間、ガス拡散層とセパレータの間などに使用目的に応じて適宜配置されるものである。カーボン含有層を配置することにより、例えば、触媒層とガス拡散層の間に配置した場合、ガス拡散層により高い撥水性を付与することができる。また、ガス拡散層等の表面がカーボン含有層により平坦化されることにより高い集電機能が付与できる。また、ガス拡散層基材が直接触媒層に接触するのを避けることができる。その結果、触媒層表面を傷つけたり粗面化するのを防止することもできる。さらに、電解質膜と触媒層の間に配置した場合、電解質中のスルホン酸基などによる集電体金属材料の腐食を防止することもできる。なお、カーボン含有層の他の構成成分としては、燃料電池特性に影響を及ぼさないものであって、なおかつ本発明の作用効果を有効に発揮できるものであれば特に制限されるものではない。具体的には、電解質膜ないしバインダ成分と同様のものを用いることができるが、これらに特に制限されるものではない。
上記カーボン層内のカーボン材料と電解質膜ないしバインダ成分との質量比も、燃料電池特性に影響を及ぼさない範囲であって、なおかつ本発明の作用効果を有効に発揮できる範囲であれば特に制限されるものではない。
上記カーボン含有層の厚みについても、高い耐久性を維持に加え、電気的抵抗を低減できるものであればよく、特に制限されるものではない。
次に、本発明の燃料電池用膜電極接合体は、本発明に係る上記燃料電池用触媒層を含む燃料電池用電極と、高分子電解質膜と、を用いてなることを特徴とするものである。詳しくは、電極シート間に高分子電解質膜を挟み込んで両者を接合したものである。かかる接合時に、本発明に係る上記燃料電池用触媒層の持つ固有の効果により、高分子電解質と効果的な形状変化を起こすので、効果的な三相界面が形成でき、接合時に高分子電解質膜と電極(触媒層面)との接合性が向上する。その結果、接合処理における熱酸化劣化が抑制できるものである。以下、各構成部材につき説明する。
(燃料電池用電極)
このうち本発明に係る上記燃料電池用触媒層を含む燃料電池用電極については、上記したとおりである。
(高分子電解質膜)
本発明に用いることのできる高分子電解質膜は、高いプロトン伝導性を有していればよい。高いプロトン伝導性を有する膜としては、−SOH基などのイオン交換基を有するモノマーの重合体または共重合体;またはイオン交換基を有するモノマーと他のモノマーとの重合体などの公知の材料からなる膜を用いることができる。例えば、化学式1に示すパーフルオロカーボンスルホン酸膜、エチレン−四フッ化エチレン共重合体膜、またはトリフルオロスチレンをベースポリマーとするフッ素含有樹脂膜などを好ましく用いることができる。
化学式1において、kおよびmは整数、pは0〜3の整数、qは0または1、nは1〜12の整数、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であることが好ましい。
上述のパーフルオロカーボンスルホン酸のポリマーからなる膜の具体例として、デュポン株式会社製NAFIONTM、旭硝子株式会社製FLEMIONTM、旭化成ケミカルズ株式会社製ACIPLEXTM、およびザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製DOWEXTMなどが挙げられる。
高分子電解質膜の膜厚は、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定することができるが、5〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmである。高分子電解質の膜厚が5μm以上であると製膜時の強度や燃料電池作動時の耐久性の点から好ましく、300μm以下であると燃料電池作動時の出力特性の点から好ましい。
本発明の燃料電池用膜電極接合体は、高分子電解質膜の両面に電極(触媒層を含む)を形成することで膜電極接合体を得ることができるものである。
本発明の膜電極接合方法では、高分子電解質膜に、触媒インク(触媒層を形成するための組成物を適当な溶剤(分散剤)に溶解ないし分散してなるもの)を塗布して各触媒層を形成する場合にも、接合処理(熱処理)として、例えば、ホットプレスにより触媒層と電解質膜とをより強固に接合するのが望ましい。これにより、本発明の触媒層が持つ、優れた特性を効果的に引き出すことができるためである。ただし、触媒インクを塗布後に乾燥する過程で十分な温度条件にて熱乾燥処理を施すことができれば、ホットプレスしなくてもよい。
上記接合処理(熱処理)としてホットプレスを行う場合には、本発明の作用効果を発現できるような条件であれば良く、例えば、金属担持電極触媒の相転移温度の±30℃の温度範囲となるように行えばよいが、具体的には、100〜200℃、好ましくは110〜190℃、より好ましくは120〜180℃、触媒層側の面に対して0.1〜10MPa、好ましくは1〜5MPaのプレス圧力で行うことが好ましい。上述の範囲でホットプレスを行うことにより、電解質膜と触媒層との接合性を高めることができる。
次に、本発明の燃料電池スタックは、上記した膜電極接合体を用いてなることを特徴とするものである。
図8に、本発明に係る固体高分子型燃料電池スタック内部の一般的な基本構造を示す。図8に示すように、高分子電解質膜11は、触媒層12およびガス拡散層(GDL(Gas Deffusion Layerの略)とも称する。)13からなる電極14で挟持されている。高分子電解質膜11と電極14との電解質膜−電極接合体15は、MEA(Membrane Electrode Assemblyの略)と呼ばれる。MEA15は、燃料ガスまたは反応ガスの流路16を有するセパレータ17で挟持されている。燃料電池10においては、電極14の触媒層12側が高分子電解質膜11と接触し、ガス拡散層13側がセパレータ17と接触する。
上記燃料電池10の基本構造では、燃料ガスは、アノード側と接するセパレータ17面が有する燃料ガス流路16aからガス拡散層13aに供給され、ガス拡散層13aを拡散しながら通過して、触媒層12aへ至る。また、酸化剤ガスは、カソード側と接するセパレータ17面が有する反応ガス流路16bからガス拡散層13bへ供給され、ガス拡散層13bを拡散しながら通過して、触媒層12bへ至る。
電極反応は、触媒層12に含まれる触媒の表面で起こる。アノード側の触媒層12aでは、H→2H+2eの反応が起こる。カソード側の触媒層12bでは、1/2O+2H+2e→HOの反応が起こる。反応全体としては、H+1/2O→HO+Qとなる。この反応で起電力が得られ、発電が可能となるが、同時にカソード側の触媒層12bでは、水が生成する。また、反応の際にアノード側の触媒層12aで生じたHは、高分子電解質膜11内を移動して、カソード側の触媒層12bへ至る。この際、1個のHイオンが5〜20個のHO分子を同伴して移動する。
高分子電解質膜11は、充分な量の水で膨潤した状態において、初めて高い水素イオン導電性を発揮する。しかし、高分子電解質膜11中を移動するHイオンに同伴して多量の水がカソード14bへ移動するため、水を常に高分子電解質膜11に供給する必要がある。この水は、ガス流路16からガス拡散層13に水蒸気(加湿ガス)として供給され、カソード14bおよびアノード14aを通って高分子電解質膜11に供給される。また、カソード14b側の触媒層12b内で生成した水のうち、高分子電解質膜11が必要としない余剰水分は、触媒層12bからガス拡散層13bを通って、ガス流路16bから外部へ排出される。
本発明では、高分子電解質と該高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で相転移点を有する金属担持電極触媒とを有する触媒層を用いることで、高分子電解質と効果的な形状変化を起こすので、効果的な三相界面が形成でき、接合時に膜と電極(触媒層)との接合性が向上する。その結果、接合処理における熱酸化劣化が抑制できるものである。
本発明の燃料電池スタックの基本構造のうち、セパレータを除く構造部分については、既に説明したので、ここで説明は省略する。
[セパレータ]
燃料電池用膜−電極接合体(MEA)15を挟持するセパレータ17としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。具体的には、カーボンペーパー、カーボンクロス、ステンレスなどの金属製セパレータなど、一般的に用いられているものが挙げられる。セパレータは、酸化ガスと燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するためのガス供給溝が形成されてもよい。セパレータの厚さ、大きさ、およびガス供給溝の形状などについては、特に限定されず、燃料電池の出力特性などを考慮して、適宜決定すればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介して、MEAを、複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
本発明の燃料電池スタックは、接合処理における熱酸化劣化が抑制できため、長期に亘り優れた特性を示すことが可能となる。よって、燃料電池システムの高効率化などを図ることができ、定置用電源、車両などの移動体用電源などとして有用である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されることはない。また、当該実施例において、「%」は特記しない限り質量百分率を表わすものとする。
(実施例1及び比較例1)
各触媒層は、触媒層中のカーボン(C)と電解質(Ionomer)との比率(C/Ionomer重量比)が以下に示す比率となるように触媒スラリーを作製、塗布して、触媒層を形成した。
白金(金属触媒)を担持したアモルファスカーボン(導電性担体)からなるアモルファス白金担持カーボン触媒(金属担持電極触媒)であるTEC10E50Eとフッ素系高分子電解質であるDE520を含む触媒層(C/Ionomer重量比=1/0.866;実施例1)、白金(金属触媒)を担持したグラファイトカーボン(導電性担体)からなるグラファイト白金担持カーボン触媒であるTEC10EA50EとDE520を含む触媒層(C/Ionomer重量比=1/0.866;比較例1)のDSC測定を行った結果、比較例1のグラファイト白金担持カーボンを含む触媒層では、200℃程度までの温度領域において、相転移点は存在しなかった(図1)が、実施例1のアモルファス白金担持カーボンを含む触媒層には、約150℃付近に大きな発熱ピークが発現し(図2)、相構造が安定化していることが推測できる。
参考までに、アモルファス白金担持カーボン触媒(TEC10E50E)のみのDSC測定を行った結果、約180℃付近に大きな発熱ピークが発現し(図3)、アモルファス白金担持カーボン触媒の相転移を確認した。
同様に、DE520のみのDSC測定を行った結果(図4)、90〜110℃に軟化温度を有することを確認した。また、DE520の熱分解温度は、300℃であった。
本実施例1及び比較例1におけるDSC測定条件は、いずれも昇温速度2度/分、窒素雰囲気下とした。
(実施例2)
実施例1で用いたアモルファス白金担持カーボン触媒(TEC10E50E)のみの常温、100℃加熱後、200℃加熱後のXRD測定を行った結果、常温及び100℃加熱処理後は、X線ピーク位置がほぼ一致したことに対し、200℃加熱後では白金の結晶格子に起因されるピークが増加していることが確認できた(図5)。
実施例1と比較すると、180℃付近でアモルファス白金担持カーボン触媒は白金の結晶化生長がされていることが確認できた。
(実施例3)
市販のDE520溶液を溶液キャスト法により製膜し、120、140、160、180℃の温度で、1時間及び5時間、加熱処理した。この異なる熱履歴を有するDE520膜をFe(II)イオン50ppm、10%過酸化水素水中に、80度で3時間投入した(フェントン試験)。その後、反応溶液をICP測定により溶出S量を定量化した(図6)。
その結果、より高温で長時間処理した膜ほど溶出S量が抑制されていることが分かり、樹脂(DE520)が熱硬化し、化学耐性が向上していることが示唆できた。これより、本発明による局所的な加温により、化学耐性の良い触媒層が形成されていることが示唆できる。
比較例1のグラファイト白金担持カーボンを含む触媒層につきDSC測定を行った結果を表すグラフである。 、実施例1のアモルファス白金担持カーボンを含む触媒層につきDSC測定を行った結果を表すグラフである。 実施例1で用いたアモルファス白金担持カーボン触媒(TEC10E50E)のみのDSC測定を行った結果を表すグラフである。 実施例1及び比較例1に用いたフッ素系高分子電解質であるDE520のみのDSC測定を行った結果を表すグラフである。 実施例1で用いたアモルファス白金担持カーボン触媒(TEC10E50E)のみの常温、100℃加熱後、200℃加熱後のXRD測定を行った結果を示すグラフである。 フェントン試験として、実施例1及び比較例1に用いたDE520膜をFe(II)イオン50ppm、10%過酸化水素水中に、80度で3時間投入した後、反応溶液をICP測定により溶出S量を定量化したグラフである。 本発明の触媒層の好適な一実施形態として、該金属担持電極触媒(粒子)の相転移を利用した熱処理(接合処理ないしホットプレス)の際の金属担持電極触媒粒子表面近傍の様子を模式的に表したイメージ概略図である。図7Aは、接合処理(例えば、ホットプレス)前の状態を表すイメージ概略図である。図7Bは接合処理(例えば、ホットプレス)時の状態を表す。図7Cは、接合処理(例えば、ホットプレス)時に、最初に金属(Pt)触媒粒子がグラファイト化されていないカーボン担体の表面を移動する状態を表すイメージ概略図である。図7Cは、接合処理(例えば、ホットプレス)時に、図7Bの状態を経て、隣接する金属触媒粒子同士が再結合、会合、凝集等することで発生する転移熱により(相転移することで)、金属触媒粒子を取り巻く樹脂(高分子電解質)が局所的に加温される様子を表すイメージ概略図である。 本発明の燃料電池スタック内部の基本構造ごとに分解して示した概略斜視図である。
符号の説明
10 MEAを含む燃料電池、
11 高分子電解質膜、
12a アノード側の触媒層、
12b カソード側の触媒層、
13a アノード側のガス拡散層、
13b カソード側のガス拡散層、
14a アノード、
14b カソード、
15 MEA、
16a アノード側の燃料ガスの流路、
16b カソード側の反応ガスの流路、
17 セパレータ、
71 金属担持電極触媒、
73 導電性担体、
75 金属触媒粒子、
77 高分子電解質、
79 転移熱。

Claims (10)

  1. 高分子電解質と、
    該高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で相転移点を有する金属担持電極触媒と、
    を有することを特徴とする高分子電解質型燃料電池用触媒層。
  2. 前記金属担持電極触媒が、該金属担持電極触媒の相転移点において、高分子電解質の熱分解温度以下の範囲で発熱反応を示すことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用触媒層。
  3. 前記高分子電解質として、金属担持電極触媒の発熱反応温度の下、その発熱エネルギーを利用して高分子電解質自身が軟化することができるものを用いていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池用触媒層。
  4. 前記金属担持電極触媒の発熱反応温度が、150〜200℃の温度範囲であることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用触媒層。
  5. 金属担持電極触媒の導電性担体として、アモルファスカーボンを用いていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒層。
  6. 前記金属担持電極触媒の相転移温度の±30℃の温度範囲で熱処理を行うこと特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池用触媒層。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の燃料電池用触媒層を含むことを特徴とする燃料電池用電極。
  8. 請求項7に記載の燃料電池用電極と、高分子電解質膜と、を用いてなることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体。
  9. 前記燃料電池用触媒層に含まれる金属担持電極触媒の相転移温度の±30℃の温度範囲で熱処理を行うこと特徴とする請求項8に記載の燃料電池用膜電極接合体の製造方法。
  10. 請求項8または9に記載の膜電極接合体を用いてなることを特徴とする高分子電解質型燃料電池スタック。
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