JP2006329067A - ヘリウム用密閉形スクロール圧縮機 - Google Patents

ヘリウム用密閉形スクロール圧縮機 Download PDF

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Abstract

【課題】ヘリウム用密閉形スクロール圧縮機において、圧縮機全体の小型・軽量化、騒音・振動の低減、信頼性の向上及び性能の向上を併せて達成すること。
【解決手段】ヘリウム用密閉形スクロール圧縮機は、インジェクション油を含んで吐出された作動ガスを、圧縮機部2と密閉容器1との間に形成された連通路18を通して圧縮機部2下方の電動機室1b1に導き、さらにステータコア3aと密閉容器1との間に形成された弓形状通路25bを通して電動機部3下方の空間1b2に導き、さらにステータコア3aと密閉容器1との間に形成された他の弓形状通路25cを通して電動機部3上方に導き、さらに吐出管19を通して外部に吐出するように構成されている。そして、吐出管19を通路18の反対側に位置して設けると共に、この通路18の直下に4つの弓形状通路の1つ25bを鉛直方向に対向して設け、このコアカット面25bをコイルエンド3a2の外周と同等位置またはそれより中央側に位置させている。
【選択図】図1

Description

本発明は、ヘリウム用密閉形スクロール圧縮機に係り、特にヘリウムガスを用いる超高真空分野のクライオポンプ装置用ヘリウム圧縮機等に使用される密閉形スクロール圧縮機に好適なものである。
従来のヘリウム用密閉形スクロール圧縮機としては、特開2003−278672号公報(特許文献1)に示されたものがある。この特許文献1のヘリウム用密閉形スクロール圧縮機は、作動ガスとしてヘリウムガスを用い、密閉容器内に圧縮機部及び電動機部を回転軸で連接して上下に収納すると共に、密閉容器の底部に貯留された潤滑油を圧縮機部の圧縮室に注入する油インジェクション機構部を備えている。電動機部は、外周に等間隔に複数の弓形状通路を有するステータコア及びこのステータコアから上下に突出するコイルエンドを有するステータ巻線からなるステータと、このステータの内側に設けられたロータとを備えている。圧縮機部は、鏡板に渦巻状のラップを直立する固定スクロールと鏡板に渦巻状のラップを直立する旋回スクロールとをこれらのラップを互いに内側にして噛み合わせ、旋回スクロールを回転軸に連設する偏心機構に係合し、旋回スクロールを自転することなく固定スクロールに対し旋回運動させ、固定スクロールには中心部に開口する吐出口と外周部に開口する吸入口とを設け、吸入口より作動ガスを吸入し、固定スクロール及び旋回スクロールにて形成される圧縮室を中心に移動させ容積を減少して作動ガスを圧縮し、この圧縮された作動ガスをインジェクション油と共に吐出口より圧縮機部上方の吐出室内に吐出するように構成している。この吐出された作動ガス及びインジェクション油の混合ガスは、圧縮機部と密閉容器との間に形成された通路を通して圧縮機部下方の電動機室に導かれ、さらに通路に近い側の弓形状通路によるガス流路部を通して電動機部下方に導かれ、さらに通路から遠い側の弓形状通路を通して電動機部上方に導かれ、さらに吐出管を介して外部に吐出される。
特開2003−278672号公報
前記特許文献1のものは、油インジェクションラインにヘリウムガスが混入することによる油ラインの配管振動増加及び騒音発生を防止するために、インジェクション孔の最適な寸法について開示している。しかしながら、圧縮機全体の小型・軽量化、騒音・振動の低減、信頼性の向上及び性能の向上を併せて達成するように、前記孔の大きさ及び位置を選択することには限界があることが分かった。
即ち、特許文献1のものは、図13に示すように、ステータコア3a1の弓形状通路29a、29bにおける外径がステータ巻線のコイルエンド3a2の外径より大幅に大きいために、圧縮機部から吐出されたインジェクション油を含む作動ガスの弓形状通路29aへの流れがエンドコイル3a2の表面から離れて密閉容器1の内壁面1mに沿って流れ、エンドコイル3a2を効果的に冷却できないことが分かった。また、特許文献1のものは、弓形状通路29aがヘリウム用圧縮機として充分な通路面積を確保されていないために、弓形状通路29aから鉛直方向の大きなガス流となって潤滑油23の油面23bを直接叩くことにより、油面23bが大きく波立つと共に、モータ室1b2の空間に油粒23f、23gが散在する現象が発生し、その結果、ロータ3bの下側に設けられたロータバランスウエイト9bの攪拌による動力損失が顕著となると共に、潤滑油23の中にヘリウムガスが多量に混入して油インジェクションラインにヘリウムガスが多量に混入される、ということが分かった。
この油インジェクションラインへのヘリウムガスの混入について、さらに具体的に述べる。従来の弓形状通路29a、29bの通路面積の和Sm(単位:mm)は、圧縮機の行程容積Vth(単位:cm/rev)に対して、Sm/Vth=4.5前後であり、この数値はインジェクション機構部を備えていない空調用途と同じであった。しかしながら、ヘリウム用スクロール圧縮機の場合には、その弓形状通路29aは作動ガスと冷却用インジェクション油の両方の流路となり、特に、インジェクション油の流量が増加すると、流動に伴う通路損失の影響などにより当該弓形状通路29aの有効な通路面積が確保できなくなり、より一層、鉛直方向のガス速度が増加することとなっていた。このため、撹乱された潤滑油23の中にヘリウムガスが大きな泡状37a、37b、37cとなって介在し、油出口部30の流出口30aに吸い込まれることになる。その結果、油インジェクションラインにヘリウムガスが多量に混入されるようになる。特許文献1では、混入したヘリウムガスをスムースに圧縮室側に逃がすことにより、結果的にヘリウムガスの介在を減らそうとものであるが、本発明では、ヘリウムガスの混入となる原因・要因そのものを排除しようとするものである。
本発明の目的は、圧縮機全体の小型・軽量化、騒音・振動の低減、信頼性の向上及び性能の向上を併せて達成することができるヘリウム用密閉形スクロール圧縮機を実現することにある。
前述の目的を達成するために、本発明は、作動ガスとしてヘリウムガスを用い、密閉容器内に圧縮機部と電動機部とを回転軸で連接して上下に収納すると共に、前記密閉容器の底部に貯留された潤滑油を前記圧縮機部の圧縮室に注入する油インジェクション機構部を備え、前記電動機部は、前記密閉容器との間に4つの弓形状通路を周方向に等間隔に形成する4つコアカット面を有するステータコア及びこのステータコアから上下に突出するコイルエンドからなるステータと、このステータの内側に回転可能に設けられたロータとを備え、前記圧縮機部は、鏡板に渦巻状のラップを直立する固定スクロールと鏡板に渦巻状のラップを直立する旋回スクロールとをこれらのラップを互いに内側にして噛み合わせ、前記旋回スクロールを回転軸に連設する偏心軸に係合し、前記旋回スクロールを自転することなく前記固定スクロールに対し旋回運動させ、前記固定スクロールには中心部に開口する吐出口と外周部に開口する吸入口とを設け、前記吸入口より作動ガスを吸入し、前記固定スクロール及び前記旋回スクロールにて形成される圧縮室を中心に移動させ容積を減少して作動ガスを圧縮し、この圧縮された作動ガスを前記吐出口より圧縮機部上方の吐出室内に吐出するように構成され、インジェクション油を含んで吐出された作動ガスを、前記圧縮機部と前記密閉容器との間に形成された連通路を通して圧縮機部下方の電動機室に導き、さらに前記ステータコアと前記密閉容器との間に形成された前記弓形状通路を通して電動機部下方の空間に導き、さらに前記ステータコアと前記密閉容器との間に形成された他の弓形状通路を通して電動機部上方に導き、さらに吐出管を通して外部に吐出するように構成された密閉形スクロール圧縮機において、前記吐出管を前記通路の反対側に位置して設けると共に、この通路の直下に前記4つの弓形状通路の1つを鉛直方向に対向して設け、このコアカット面を前記コイルエンドの外周と同等位置またはそれより中央側に位置させたものである。
係る本発明のより好ましい具体的な構成例は次の通りである。
(1)前記吐出管を前記通路の反対側に位置して設けると共に、この通路の直下に前記複数の弓形状通路の1つを鉛直方向に対向して設け、この弓形状通路を形成するコアカット面を、平坦面とその平坦面に上下に延びるように設けた矩形状溝とから形成したこと。
(2)前記矩形状溝を設けた弓形状通路の反対側に位置する弓形状通路を形成するコアカット面も、平坦面とその平坦面に上下に延びるように設けた矩形状溝とにより形成したこと。
(3)前記弓形状通路の面積の和Smが、圧縮機の行程容積Vthに対して、Sm/Vth=6.5〜9.5の範囲にあること。ここで、Smは弓形状通路と溝部の通路面積和(mm)、Vthは圧縮機の行程容積(cm/rev)である。
本発明のヘリウム用密閉形スクロール圧縮機によれば、圧縮機全体の小型・軽量化、騒音・振動の低減、信頼性の向上及び性能の向上を併せて達成することができる。
以下、本発明の複数の実施形態について図を用いて説明する。各実施形態の図における同一符号は同一物または相当物を示す。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態のヘリウム用密閉形スクロール圧縮機を図1から図12を用いて説明する。
まず、図1を参照しながら、本実施形態のヘリウム用密閉形スクロール圧縮機100の基本的な構成に関して説明する。図1は本発明の第1実施形態の注油式縦型タイプのヘリウム用密閉形スクロール圧縮機の縦断面図である。
ヘリウム用密閉形スクロール圧縮機100は、作動ガスとしてヘリウムガスが用いられ、密閉容器1内に圧縮機部2と電動機部3とを回転軸14で連接して上下に収納すると共に、密閉容器1の底部に貯留された潤滑油23を圧縮機部2の圧縮室8に注入する油インジェクション機構部50を備えている。
電動機部3は、密閉容器1との間に複数の弓形状通路25a〜25dを形成するステータコア3a1及びこのステータコア3a1から上下に突出するコイルエンド3a2を有するステータ3aと、このステータ3aの内側に回転可能に設けられたロータ3bとを備えている。
圧縮機部2は、鏡板5aに渦巻状のラップ5bを直立する固定スクロール5と鏡板6aに渦巻状のラップ6bを直立する旋回スクロール6とをこれらのラップ5b、6bを互いに内側にして噛み合わせ、旋回スクロール6を回転軸14に連設する偏心軸14aに係合し、旋回スクロール6を自転することなく固定スクロール5に対し旋回運動させ、固定スクロール5には中心部に開口する吐出口10と外周部に開口する吸入口15とを設け、吸入口15より作動ガスを吸入し、固定スクロール5及び旋回スクロール6にて形成される圧縮室8を中心に移動させ容積を減少して作動ガスを圧縮し、この圧縮された作動ガスを吐出口10より圧縮機部2上方の吐出室1a内に吐出するように構成されている。
そして、ヘリウム用密閉形スクロール圧縮機100は、インジェクション油と共に吐出された作動ガスを、圧縮機部2と密閉容器1との間に形成された通路18a、18bを通して圧縮機部2下方の電動機室1bの上部電動機室1b1に導き、さらにステータコア3aと密閉容器1との間に形成された弓形状通路25bを通して電動機部3下方の下部電動機室1b2に導き、さらにステータコア3aと密閉容器1との間に形成された他の弓形状通路25cを通して電動機部3上方の上部電動機室1b1に導き、さらに吐出管19を通して外部に吐出するように構成されている。
また、吐出管19を通路18a、18bの反対側に位置して設けると共に、この通路18a、18bの直下に4つの弓形状通路の1つ25bを鉛直方向に対向して設け、4つのコアカット面28a〜28dをコイルエンド3a2の外周より中央側に位置してステータコア3aのコアカット面28bと28cまたは28aと28dにおける外径をエンドコイル3a2の外径と同等またはそれ以下としている。
次に、図1から図7を参照しながら、ヘリウム用密閉形スクロール圧縮機100の全体構成に関してさらに具体的に説明する。図2は図1のA−A断面図、図3は旋回スクロール6を省略して示す図1のB−B断面図、図4は図3の固定スクロール5の縦断面図、図5は図1のC−C断面図、図6は図5の電動機部3のステータ3aを横にして示す断面図、図7は図5の電動機部3のステータ3aの平面図である。
本実施形態では、上述したように作動ガスとしてヘリウムガスを用いており、この作動ヘリウムガスを冷却するための油インジェクション管31を密閉容器1の上蓋1cに貫通して固定スクロール5の鏡板部5aに設けた油注入用ポート22(図2参照)に接続している。油注入用ポート22の開口部は、旋回スクロール6のラップ6bの歯先面に対向して開口している。密閉容器1内の吸入配管17側となる上部には圧縮機部2が、下側には電動機部3が収納されている。そして、密閉容器1内は、吐出室1aと、フレーム7をはさんでモータ室1bとに区画されている。
また、密閉容器1の底部には底部の潤滑油23を器外へ取出す油取り出し管30が設けられ、密閉容器1の上蓋1cには圧縮機部2の圧縮途中の圧縮室8へ油を注入する油インジェクション管31が設けられている。
圧縮機部2は、固定スクロール5と旋回スクロール6とを互いに噛み合わせて圧縮室(密閉空間)8を形成している。固定スクロール5は、図3に示すように、円板状の鏡板5aと、これに直立したインボリュート曲線あるいはこれに近似の曲線に形成されたラップ5bとからなり、その中心部に吐出10、外周部に吸入口15(15a、15b)を備えている。吸入口15は軸心が異なる2つの吸入口15a、15bで構成されている。旋回スクロール6は、円板状の鏡板6aと、これに直立し、固定スクロールのラップ5bと同一形状に形成されたラップ6bと、鏡板の反ラップ面に形成されたボス部6cとからなっている。フレーム7は、図1に示すように、中央部に軸受部40を形成しており、この軸受部40に回転軸14が支承されている。回転軸14の上端部を構成する偏心軸14aは、ボス部6cに旋回運動が可能なように挿入されている。また、フレーム7には固定スクロール5が複数本のボルト81によって固定されている。旋回スクロール6はオルダムリングおよびオルダムキーよりなるオルダム機構38によってフレーム7に支承され、旋回スクロール6は固定スクロール5に対して、自転しないで旋回運動をするように形成されている。回転軸14には電動機軸14bを一体に連設し、電動機部3を直結している。
固定スクロール5の吸入口15には密閉容器2の上蓋1cを貫通して吸入管17が接続されている。吐出口10が開口している吐出室1aは、圧縮機部2の外縁部(固定スクロール5及びフレーム7の外縁部)の通路18(18a、18b)を介してモータ室1b(1b1、1b2)と連通している。このモータ室1bは、密閉容器1の中央部を構成するケーシング部1dを貫通する吐出管19に連通されている。吐出管19は通路18a、18bに対してほぼ反対側の位置に設置されている。この両者18、19の位置関係は、通路18を通過した作動ガスとインジェクション油の混合体が、その通路18の鉛直方向となる弓形状通路25bへ向かう下方向の流れ経路と、ステータ上面3fやその周囲のコイルエンド3a2との衝突によって水平方向に向かう流れ経路との二手に分かれる。水平方向の流れ経路は、容器内壁に沿って弓形状通路25a、25dへ向かう流れ経路と、中央部を通って吐出管19に向かう流れ経路とに分流される。
モータ室1b1は、ステータ3aとケーシング部1dの内壁面1mとの間に作動ガスとインジェクション油との混合体の流路部となる弓形状通路25bを形成し、その他の流路部としての弓形状通路25a、25c、25dを形成している。弓形状通路25bでは主に作動ガスとインジェクション油との混合体が下方向に向う流れとなり、弓形状通路25cでは作動ガスのみが上方向に向う流れとなる。また、ステータ3aとロータ3bとのエアーギャップ26もガス通路となり、エアーギャップ26を介して空間1b1と空間1b2とが連通している。
このような容器内部のモータ室1b1、1b2の作動ガスとインジェクション油の混合体の流れによって、60℃〜70℃の比較的低温なインジェクション油を含む作動ガスによる電動機部3への直接冷却が可能となる。また、作動ガス中の潤滑油は、そのモータ室1b1、1b2にて作動ガスから分離されて下方に流れ、密閉容器1の底部に貯留される。
図1および図7において、130はモータリード線、130aはファストン端子、70はハーメ端子部である。
なお、吸入管17bと固定スクロール5との間には高圧部と低圧部とをシールするOリング53を設けている。また、吸入管17内には、逆止弁手段13が設けられている。逆止弁13は、圧縮機停止時の回転軸14の逆転を防止すると共に、密閉容器1内の潤滑油23が低圧側に流出するのを防止するためのものである。
また、旋回スクロール6の鏡板6aの背面には、圧縮機部2とフレーム7で囲まれた空間36(以下背圧室と呼ぶ)が形成される。この背圧室36には旋回スクロールの鏡板に穿設した細孔6dを介して吸入圧力Psと吐出圧力Pdの中間の圧力Pbが導入され、旋回スクロール6を固定スクロール5に押付ける軸方向の付与力を与えている。
潤滑油23は密閉容器1の底部に溜められる。この潤滑油23は、密閉容器1内の高圧圧力と背圧室36の中間圧力Pbとの差圧により油吸上管27へ吸上げられ、回転軸14内を流れ、旋回軸受32、横穴51を介して補助軸受39、主軸受40へ給油される。軸受部40、32へ給油された油は、背圧室36を経て、穴6dを介してスクロールラップの圧縮室8へ注入されて圧縮ガスと混合され、ヘリウムガスと共に吐出室1aへ吐出される。
次に、図1から図8を参照しながら、固定スクロール5の吐出口10から吐出されたインジェクション油を含む作動ガスの流れに関連してさらに具体的に説明する。図8はヘリウム用密閉形スクロール圧縮機における弓形状通路の大きさに対する油上り量の関係を示す図である。
固定スクロール5の外縁部とフレーム7の外縁部には、上述したように、吐出室1aとモータ室1bとを連通する通路18a、18bが設けられている。フレーム7は主軸受部40及び補助軸受部39を内部に有している。通路18a、18bと対向した鉛直方向となるステータ3aの外縁部に弓形状通路25bが設けられている。図5に示すように、弓形状通路25bと密閉容器2のケーシング部1dの内壁面1mとで作動ガスとインジェクション油の両流体が通る通路である弓形状通路25a〜25dが形成され、ステータコア3a1の外周面が密閉容器1の内壁面1mと密着して固定されている。
ここで、弓形状通路25の大きさが小さいと、従来技術の欄で説明した理由により、図8に示すように圧縮機の油上り量が増大して底チャンバに潤滑油が確保できなくなって、軸受への給油不足、焼付きに至るという信頼性上の問題が出てくることになると共に、エンドコイル3a2の冷却効果が十分に得られなかった。このため、本実施形態では、上述したように、4つのコアカット面28b〜28dをコイルエンド3a2の外周より中央側に位置してステータコア3aのコアカット面28bと28cまたは28aと28dにおける外径をエンドコイル3a2の外径と同等またはそれ以下とし、弓形状通路25の面積の和Smが、圧縮機の行程容積Vthに対して、次の式(1)範囲(図8の適正な範囲)となるようにしてある。
Sm/Vth=6.5〜9.5 (1)
ここで、Smは弓形状通路と溝部の通路面積和(mm)、Vthは圧縮機の行程容積(cm/rev)である。
次に、図9及び図10を参照しながら、ヘリウム用密閉形スクロール圧縮機100の注油系統に関して説明する。図9は本実施形態のヘリウム用密閉形スクロール圧縮機における油インジェクション配管経路を示す注油系統図、図10はヘリウム用密閉形スクロール圧縮機における油インジェクション量に対する油インジェクションラインのヘリウムガスの混入度合いの関係を示す図である。
密閉容器1の底部に溜められた潤滑油23は、密閉容器1内の圧力(吐出圧力Pd)と圧縮室8の圧力(吐出圧力Pd以下の圧力)との差圧によって油取り出し管30の流入部30aから油取り出し管30内に流入していく。ここで、本実施形態では、上述した構成により、弓形状通路25bを流出したガスの鉛直方向のガス速度は低減しており、そのガス流による底チャンバの油23の油面23aを撹乱することがなくなり、油面の波立ちがないので、従来構造で見られたような撹乱された油の中にヘリウムガスが大きな泡状37a、37b、37cとなって油中に介在するような現象が防止される。従って、底チャンバ1e内の潤滑油23は、図10に示すように、ヘリウムガス混入度合いが大きく減少することができる。油取り出し管30の油入り口部30a内へ流入した油は外部油配管51を通って油冷却器33へ至り、ここで適宜冷却された後、油配管52a、52bを介して油インジェクション管31およびポート22を経て差圧を利用し流入せしめ圧縮室8へ注入される。油ラインへのヘリウムガスの混入が殆どないので、曲がり配管などでの油とガスの流動に伴う間欠的な配管力発生による該インジェクション配管部での振動増加現象を解消し抑えることができる。また、間欠流に伴う耳障りな騒音を防止できるものである。なお、図9において、271は油流量調節弁である。
この様にして圧縮室8へ注入された油は、圧縮室8内において作動ガスの冷却作用およびスクロールラップ先端部等の摺動部を潤滑する役目を果す。そして、この油は作動ガスと共に圧縮された後、吐出口10より吐出室1aへ吐出され、前述したようにモータ室1bで作動ガスから分離されて弓形状通路25などを介して流下し密閉容器2の底部に溜まる。
上述した本実施形態の構成にすることにより、次に示す効果が得られる。
(1)冷却用インジェクション流量に左右されずに、ヘリウム圧縮機の騒音低減とインジェクション配管の振動低減が図れ、圧縮機全体の信頼性向上、品質改善が図れる。
(2)従来機にみられたロータバランスウエイトによる油攪拌損失がなくなるので、圧縮機の性能向上が図れると共に低コストな圧縮機を提供できる。
(3)弓形状通路の拡大により、ヘリウム用圧縮機にとって、高いモータ性能と油上り量を小さくせしめた小形・軽量で高性能なヘリウム用スクロール圧縮機を提供できる。
(4)圧縮機の油上り量を低減し、底チャンバに油を常時確保できるようになり、圧縮機の信頼性が更に向上できる。
次に、本発明の第2実施形態について図11を用いて説明する。図11は本発明の第2実施形態のヘリウム用密閉形スクロール圧縮機の電動機部の横断面図である。この第2実施形態は、次に述べる点で第1実施形態と相違するものであり、その他の点については第1実施形態と基本的には同一であるので、重複する説明を省略する。
この第2実施形態では、圧縮機部2と密閉容器1との間に形成した通路18の直下に設けられた弓形状通路25bを形成するコアカット面28bを、平坦面28b1とその平坦面18b1に上下に延びるように設けた矩形状溝28b2とにより形成すると共に、この弓形状通路25bの反対側に位置する弓形状通路25cを形成するコアカット面28cも、平坦面28c1とその平坦面28c1に上下に延びるように設けた矩形状溝28c2とにより形成している。
この第2実施形態によれば、従来の課題を解決するために最も効果的な2つの弓形状通路25b、25cのみに矩形状溝28b2、28c2を設けたので、他の弓形状通路25a、25dを従来と同様に形成することができる。これによって、その分だけモータ効率及び力率の性能を向上することができる。
本発明の第1実施形態の注油式縦型タイプのヘリウム用密閉形スクロール圧縮機の縦断面図である。 図1のA−A断面図である。 旋回スクロールを省略して示す図1のB−B断面図である。 図1に用いる固定スクロールの平面図、縦断面図である。 図3の固定スクロールの縦断面図である。 図1のC−C断面図である。 図5の電動機部のステータを横にして示す断面図である。 ヘリウム用密閉形スクロール圧縮機における弓形状通路の大きさに対する油上り量の関係を示す図である。 同第1実施形態のヘリウム用密閉形スクロール圧縮機における油インジェクション配管経路を示す注油系統図である。 ヘリウム用密閉形スクロール圧縮機における油インジェクション量に対する油インジェクションラインのヘリウムガスの混入度合いの関係を示す図である。 本発明の第2実施形態のヘリウム用密閉形スクロール圧縮機の電動機部の横断面図である。 従来のヘリウム用密閉形スクロール圧縮機の下部を示す縦断面図である。
符号の説明
1…密閉容器、1a…吐出室、1b1、1b2…モータ室、2…圧縮機部、3…電動機部、3a…ステータ、3a1…ステータコア、3a2…コイルエンド、3b…ロータ、5…固定スクロール、5a…固定スクロール鏡板、6…旋回スクロール、6a…旋回スクロール鏡板、7…フレーム、8…圧縮室、9b…ロータバランスウエイト、10…吐出口、14…回転軸、14a…偏心軸、15…吸入口、17…吸入管、18a、18b…通路、19…吐出管、22…ポート、23…潤滑油、25a〜25d…弓形状通路、27…油吸上管、28a〜28d…コアカット面、30…油取り出し管、31…油インジェクション管、32…旋回軸受、38…オルダム機構、39…補助軸受、40…主軸受、50…油インジェクション機構部、53…Oリング、100…ヘリウム用密閉形スクロール圧縮機、130…主電源用リード線。

Claims (4)

  1. 作動ガスとしてヘリウムガスを用い、
    密閉容器内に圧縮機部と電動機部とを回転軸で連接して上下に収納すると共に、
    前記密閉容器の底部に貯留された潤滑油を前記圧縮機部の圧縮室に注入する油インジェクション機構部を備え、
    前記電動機部は、前記密閉容器との間に4つの弓形状通路を周方向に等間隔に形成する4つコアカット面を有するステータコア及びこのステータコアから上下に突出するコイルエンドからなるステータと、このステータの内側に回転可能に設けられたロータとを備え、
    前記圧縮機部は、鏡板に渦巻状のラップを直立する固定スクロールと鏡板に渦巻状のラップを直立する旋回スクロールとをこれらのラップを互いに内側にして噛み合わせ、前記旋回スクロールを回転軸に連設する偏心軸に係合し、前記旋回スクロールを自転することなく前記固定スクロールに対し旋回運動させ、前記固定スクロールには中心部に開口する吐出口と外周部に開口する吸入口とを設け、前記吸入口より作動ガスを吸入し、前記固定スクロール及び前記旋回スクロールにて形成される圧縮室を中心に移動させ容積を減少して作動ガスを圧縮し、この圧縮された作動ガスを前記吐出口より圧縮機部上方の吐出室内に吐出するように構成され、
    インジェクション油を含んで吐出された作動ガスを、前記圧縮機部と前記密閉容器との間に形成された連通路を通して圧縮機部下方の電動機室に導き、さらに前記ステータコアと前記密閉容器との間に形成された前記弓形状通路を通して電動機部下方の空間に導き、さらに前記ステータコアと前記密閉容器との間に形成された他の弓形状通路を通して電動機部上方に導き、さらに吐出管を通して外部に吐出するように構成された密閉形スクロール圧縮機において、
    前記吐出管を前記通路の反対側に位置して設けると共に、この通路の直下に前記4つの弓形状通路の1つを鉛直方向に対向して設け、このコアカット面を前記コイルエンドの外周と同等位置またはそれより中央側に位置させた
    ことを特徴とするヘリウム用密閉形スクロール圧縮機。
  2. 請求項1において、前記吐出管を前記通路の反対側に位置して設けると共に、この通路の直下に前記複数の弓形状通路の1つを鉛直方向に対向して設け、この弓形状通路を形成するコアカット面を、平坦面とその平坦面に上下に延びるように設けた矩形状溝とにより形成したことを特徴とするヘリウム用密閉形スクロール圧縮機。
  3. 請求項2において、前記矩形状溝を設けた弓形状通路の反対側に位置する弓形状通路を形成するコアカット面も、平坦面とその平坦面に上下に延びるように設けた矩形状溝とにより形成したことを特徴とするヘリウム用密閉形スクロール圧縮機。
  4. 請求項1から3の何れかにおいて、前記弓形状通路の面積の和Smが、圧縮機の行程容積Vthに対して、次の式(1)の範囲にあることを特徴とするヘリウム用密閉形スクロール圧縮機。
    Sm/Vth=6.5〜9.5 (1)
    ここで、Smは弓形状通路と溝部の通路面積和(mm)、Vthは圧縮機の行程容積(cm/rev)である。
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