この発明は、燃料電池に適した固体高分子電解質膜であって優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有する含フッ素系高分子イオン交換膜及びその製造方法及び製造装置に関する。特に、含フッ素系高分子イオン交換膜の基材となる改質された含フッ素系高分子膜を工業的に安価に大量生産する方法及びその装置に関する。
固体高分子イオン交換膜を使用した燃料電池においては、高分子イオン交換膜はプロトンを伝導するための電解質として作用するとともに、燃料である水素やメタノールと酸化剤である空気または酸素を直接混合させないための隔膜として作用する。従って、高分子イオン交換膜には、電解質としての役割から、(1)イオン交換容量が高いこと、(2)水酸化ラジカル等に対する耐性つまり耐酸化性に優れていて耐久性があること、(3)膜の保水性が高く一定に保てることにより電気抵抗を低く保持できること等が要求されている。また、高分子イオン交換膜には、隔膜としての役割から、(4)膜の力学的な強度や膜の寸法の安定性に優れていること、(5)水素ガス、メタノール又は酸素ガスに対して過剰な透過性を有しないこと等が要求されている。更に、高分子イオン交換膜には、工業製品として実用化するために、(6)十分に低価格であり大量生産できることが要求されている。
初期の高分子イオン交換膜型燃料電池では、スチレンとジビニルベンゼンの共重合で製造した炭化水素系高分子イオン交換膜が使用された。しかし、このイオン交換膜は耐酸化性に起因する耐久性が非常に劣っていた為に実用性に乏しかった。この問題はデュポン社により解決され、「ナフィオン(デュポン社登録商標)」として開発されたパーフルオロスルホン酸膜等が一般に使用されてきた。
しかしながら、「ナフィオン」等の従来の含フッ素系高分子イオン交換膜は次のような欠点を有している。即ち、(1)イオン交換容量が1meq/g前後と小さいことや、(2)保水性が不十分でイオン交換膜の乾燥が生じてプロトン伝導性が低下することや、(3)メタノールを燃料とする場合には膜の膨潤やメタノールのクロスオーバーが起きること、等である。また、イオン交換容量を大きくする目的でスルホン酸基を多く導入しようとすると、膜強度が著しく低下して容易に破損するようになることが知られている。したがって、従来の含フッ素系高分子のイオン交換膜では膜強度が保持される程度にスルホン酸基の量を抑える必要があり、このためイオン交換容量が1meq/g程度のものしかできなかった。また、「ナフィオン」などの従来の含フッ素系高分子イオン交換膜は、その製造工程が複雑であるために非常に高価であり、実用化の際の大きな障害となっている。そのため、前記「ナフィオン」等に替る、低価格でありながら前記の諸要求を満たした新たな電解質膜を開発することが求められている。
含フッ素系高分子膜基材にスルホン酸基を導入することが出来るモノマーをグラフト重合して固体高分子電解質膜を作製する放射線グラフト重合法の試みが成されている。しかし、通常の含フッ素系高分子膜基材を用いるとグラフト反応が膜の内部まで進行せず膜表面に限られるため、電解質膜としての特性が向上しない。また、電子線やγ線などの電離放射線を照射した場合に、通常の含フッ素系高分子膜基材は主鎖切断反応が起きて劣化する。さらに、グラフトモノマーとして炭化水素系のモノマーを用いた場合には耐酸化性が低いことが問題である。例えば、エチレンーテトラフルオロエチレン共重合体にスチレンモノマーを放射線グラフト反応により導入し、次いでスルホン化することにより合成したイオン交換膜は燃料電池用イオン交換膜として機能することが特開平9−102322号公報に開示されているが、スチレングラフト鎖が炭化水素で構成されているため、膜に長時間電流を流すとグラフト鎖部の酸化劣化が起こり、膜のイオン交換能が大幅に低下するという欠点を有している。
含フッ素系高分子膜基材を予め架橋しておくと、膜の耐熱性が向上しモノマーのグラフト率が向上し、さらに、グラフトのための照射による膜強度の低下を抑制することが出来るので、高温作動で高性能の燃料電池用イオン交換膜には好適であることが特開2004−51685号公報や特開2004−300360号公報に開示されている。特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の放射線グラフト反応では架橋構造を膜基材の分子構造に導入することによって無定形部分が多くなり、未架橋のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ではグラフト率が低いという欠点を解決できることが特開2004−300360号公報や特開2001−348439号公報に開示されている。このように、架橋構造を有する含フッ素系高分子膜を基材として用いることにより優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有して燃料電池に適した固体高分子電解質膜として使用できる含フッ素系高分子イオン交換膜が出来ることが知られている。
一般に、含フッ素系高分子膜基材は耐熱性と耐薬品性に優れた特性を有し、産業用および民生用の樹脂として広く利用されている。しかし、含フッ素系高分子膜基材は放射線に対して感受性が高く、放射線を照射することによって分子鎖の切断が進行し、吸収線量が50kGyを超えると機械特性が低下する。そのため原子力施設や宇宙空間などの放射線環境下では利用することが出来なかった。含フッ素系高分子膜基材の代表であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は放射線に対して極めて感受性が高く、1kGyを超える照射を受けると機械特性が低下することが知られている。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)では、放射線照射により分子切断が優先的に生じ、結晶化が容易に進行してしまうことを意味している。然るに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)にその結晶融点以上の特定の温度で酸素不存在下において電離放射線を照射すると架橋が起こり、特性が大きく改善されることが特開平6−116423号公報や特開平7−118423号公報に開示されている。
特開平6−116423号公報にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を架橋する方法が開示されている。これは、酸素不在環境下、すなわち真空中または不活性ガス雰囲気中において、結晶融点(327℃)以上の温度に保った状態で電離放射線(γ線、電子線、X線、中性子線、高エネルギーイオン等)を照射する方法である。照射時のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜基材の温度は340℃前後が望ましく、照射される線量は1kGyから10MGyの範囲が適当であることや、特にゴム特性を得たい場合には200kGyから5MGyの範囲が望ましいこと、が開示されている。このような条件で放射線処理されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜は耐放射性が付与され、真空中で室温環境下において電離放射線を照射した場合と比較すると、破断伸びの減少や降伏点強度の低下等の材料劣化が著しく抑制されたことが記述されている。
特開平11−49867号公報には、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)およびテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)に同様の条件下で電離放射線を照射することによって、放射線環境下における耐熱性と機械特性が向上することが開示されている。テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)もしくはテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)に、酸素不在下すなわち真空中もしくは不活性ガス雰囲気中において、各々の結晶融点よりも約20℃低い温度から各々の結晶融点よりも約20℃高い温度の範囲内に保ちながら電離放射線(γ線、電子線、X線、中性子線、高エネルギーイオン等)を照射することによってこれらの含フッ素系高分子膜基材は架橋されることが開示されている。さらに、照射時の樹脂の温度は、各々の含フッ素系高分子膜基材の結晶融点を中心としてそれよりもおよそ±10℃の範囲の温度が好ましいことが開示されている。また照射線量は1kGy〜15MGyの範囲が好ましく、ゴム特性を付与する場合には500kGy〜10MGyの範囲がより好ましいことが開示されている。このように処理されたこれらの含フッ素系高分子膜は耐熱性と耐薬品性が改善されており、これらの特性が求められる機器類のシール材料やパッキング材料に適している。特に、耐放射線特性が付与されているので、放射線環境下での工業材料としてテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)やテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が利用できるようになる。
また、特開平7−118423号公報には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の未処理状態に於ける結晶融点である327℃以上の温度で放射線照射を長時間続けると、架橋反応に加えて熱分解反応や解重合反応が起こり、モノマーがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の表面から飛散し、重量が減少してしまうことが開示されている。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に、その結晶融点以上の温度で真空中又は不活性ガス中で放射線を照射すると架橋するが、その結晶融点は放射線の吸収線量が増大すると低下してくる。そこで、照射時のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の温度を、吸収線量にあわせて変化させ、熱分解や解重合を抑制しつつ架橋を進めると良いことが開示されている。例えば、照射初期には、327℃以上、望ましくは340℃〜350℃に昇温するが、その後、50kGy照射後では320〜330℃に、100kGy照射後では290〜300℃に、200kGy照射後では280〜290℃に、500kGy照射後では260〜270℃に、そして1MGy照射後では230〜240℃に温度を下げる例が開示されている。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の温度を低下させる方法としては、液体窒素等の冷媒によって冷却したり、系内に流通せしめる不活性ガスの温度を徐々に下げたりする方法が開示されている。しかし、これらの温度低下方法は具体的では無く、正確な温度管理が困難である。
以下において、含フッ素系高分子膜基材をその結晶融点近くの予め定められた設定温度範囲内の温度に保ちながら当該含フッ素系高分子膜基材に1kGy以上の電離放射線を低い酸素分圧環境下において照射することにより改質含フッ素系高分子膜を製造する方法を記した例について述べる。特開平6−116423号公報には、厚さ1mmの市販のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを真空中(0.01Torr以下)において340℃に加熱してコバルト−60から放射されたγ線を1.7kGyから20kGyまで照射した例や、厚さ0.3mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを真空中(0.01Torr以下)において340℃に加熱し、エネルギーが2MeVの電子線を100kGyから2MGyまで照射した例が開示されている。また、厚さ0.3mm、0.5mm、1mmのそれぞれのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを真空中で、370℃において電子線を照射したところ、照射時間が長くなるにしたがってポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の熱分解が進行してシートの厚さが薄くなる旨の記述がある。
特開平11−49867号公報には、厚さが0.5mmであるテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)シートをアルゴン気流中でその結晶融点(270℃)より高い280℃に加熱して、エネルギーが2MeVの電子線を100kGy照射すると架橋して耐放射線性が付与された例が開示されている。同様に、厚さが0.5mmであるテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)シートをアルゴン気流中でその結晶融点(310℃)より高い320℃に加熱して、エネルギーが2MeVの電子線を300kGy照射することにより架橋して耐放射線性が付与された例が開示されている。
特開2001−348439号公報には厚さが0.5mmで数平均分子量が1x107のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートの10cm x 10cmの片を加熱型の照射容器に入れ、容器内を10−3Torr程度に脱気してアルゴンガスに置換した後、電気ヒータで加熱してポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートの温度を335〜345℃として、エネルギーが2MeVの電子線を50kGy、100kGy、300kGy、500kGy、または1MGyの線量まで照射し、照射後に容器を冷却して高温照射を終了したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを取り出したことが開示されている。
また、特開2002−348389号公報には、長鎖分岐型ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを得る為に以下の照射を行ったことが記されている。すなわち、厚さが50μm又は100μmで数平均分子量が1x107のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートの10cm x 6cm片をステンレススチールでできた枠で固定し、50μm厚のチタン箔からできた電子線入射窓が付いたステンレススチール製の加熱型照射容器に入れ、容器内を10−3Torr程度に脱気してアルゴンガスに置換し、その後、電気ヒータで加熱してポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートの温度を335〜340℃として、ごくわずかにアルゴンガスを流しながらエネルギーが2MeVの電子線を照射したことが開示されている。このときの線量率は0.5kGy/秒で、線量は100kGy又は200kGyであり、照射時間はそれぞれ200秒または400秒であることが開示されている。照射後、容器を冷却して放射線照射を終了したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートを取り出して長鎖分岐型ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を得ている。
特開2004−51685号公報や特開2004−14436号公報や特開2003−261697号公報や特開2003−82129号公報に開示されているように、架橋したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)つまり長鎖分岐型ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を得る為に以下の照射が行われている。厚さ50μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムの10cm角をヒータ付きのステンレススチール製オートクレーブ照射容器(内径7cmΦ、高さ30cm)に入れ、容器内を10−3Torrに脱気してアルゴンガスに置換し、その後、電気ヒータで加熱してポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムの温度を340℃(又は300℃〜365℃の温度範囲)として、コバルト−60のγ線を3kGy/時の線量率で90kGyの線量まで照射した後、容器を冷却して放射線照射を終了したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを取り出したことが記されている。この際の照射に必要な時間は30時間であった。
以上に公開された処理方法では、処理される含フッ素系高分子膜基材は10cm角程度の小片であり、小容積の容器内に入れて容器ごと加熱した後に、電離放射線の照射処理を行い、その後容器を冷却して処理された含フッ素系高分子膜を取り出した例のみが示されている。電離放射線の照射処理を行うに際して、コバルト−60のγ線を使用した例が示されているが、この場合には線量率が低い為に90kGyの線量を照射するのに30時間もの長時間を要している。また、エネルギーが2MeVの電子線を照射した例も開示されているが、やはり線量率があまり高くないので小片の処理のために400秒程度を要している。さらに、一般的に容器の冷却のためには長時間を要する。このような照射において照射処理速度を高められなかったのは、電離放射線の線量率を高めると、電離放射線の加熱効果によって照射中に被照射膜基材の温度が上昇するとともに温度が偏在分布して部分的に熱分解が進行する不都合が生じるからである。以上に記した通り、含フッ素系高分子膜基材を高温放射線処理するに際して、大面積の含フッ素系高分子膜基材を処理できることや、大線量率の電離放射線を照射する時に含フッ素系高分子膜基材を正確な温度に且つ均一な温度に保てることが重要である。
更に、架橋した含フッ素系高分子膜を工業製品として実用化するためには、処理速度を高めて低価格化するとともに処理条件の高度な管理を行って品質の均一化を達成することが必要である。電離放射線の照射処理を行うに際して処理速度を高める為に線量率を高めた場合には、電離放射線による含フッ素系高分子膜基材の加熱が重畳されて含フッ素系高分子膜基材の温度が上昇するだけでなく、温度の分布が変わり、処理後の含フッ素系高分子膜の品質を均一化することが困難であった。特に、30cmを超える幅広で長尺の含フッ素系高分子膜基材を放射線照射処理する場合には照射開始直後や照射中に於ける膜基材の温度及び温度の空間分布及び温度の時間変化の管理が困難であった。このような理由により、架橋した含フッ素系高分子膜やこれを使用した含フッ素系高分子イオン交換膜やこれを使用した燃料電池は工業製品として実用化するのが困難であった。
特開平6−116423号公報
特開平7−118423号公報
特開平9−102322号公報
特開平11−19190号公報
特開平11−49867号公報
特開2001−348439号公報
特開2003−82129号公報
特開2003−261697号公報
特開2004−14436号公報
特開2004−51685号公報
特開2004−300360号公報
解決しようとする課題は、含フッ素系高分子膜基材を予め定められた設定温度範囲内の温度に保ちながら当該含フッ素系高分子膜基材に1kGy以上の電離放射線を低い酸素分圧環境下において照射する照射工程を含んだ含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法において、処理速度を高めて低価格化するとともに、処理条件の管理を高度化して品質の均一化を達成することにより、安価で高寿命の大面積の含フッ素系高分子イオン交換膜を大量生産できるようにすることである。更に、これを使用して自動車などに搭載できる安価で長寿命の燃料電池を提供することである。特に、大面積の含フッ素系高分子膜基材を照射野内の全ての位置にわたってかつ照射処理の全時間中にわたって常に最適に定められた温度範囲に保ちながら電離放射線を大きな線量率で照射することによって、安定した品質の架橋構造を有する含フッ素系高分子膜を短時間に大量に且つ安価に生産する方法を提供することである。
本発明においては、長尺の含フッ素系高分子膜基材を、その温度を最適値に制御しながら当該基材に電離放射線を照射できる恒温放射線処理装置内を通過させることによって上記の課題を解決している。この恒温放射線処理装置の入口位置および出口位置においては、前記含フッ素系高分子膜基材の長手方向の一部分を常温に保って機械的に保持するとともに走行機能を付与させる部分が設けられている。前記恒温放射線処理装置の内部においては発熱体が設けられている。この発熱体は含フッ素系高分子膜基材の長手方向および幅方向に沿って多数の発熱体要素に分割して配列されている。これら各々の発熱体要素の表面温度は空間的および/又は時間的に適正に制御されて、照射中および照射直前直後を問わず、照射野内の大部分を占める所望範囲内に於ける含フッ素系高分子膜基材の全ての位置での温度をその結晶融点近くの設定温度範囲内の値で一様に分布させるようになっている。前記電離放射線の照射中においては、電離放射線の照射野に位置する部分に不活性ガスを吹き付けて電離放射線の加熱効果を打ち消す冷却効果を生じさせて前記含フッ素系高分子膜基材の前記所望範囲内に於ける全ての位置での温度を前記設定温度範囲内の値で一様に分布させる。所定の線量の照射処理が進行すれば前記恒温放射線処理装置の出口部分に位置する前記長尺の含フッ素系高分子膜の処理済部分を部分的に冷却して恒温放射線処理装置外に送り出す。このようにして短時間に多量の長尺の含フッ素系高分子膜基材を放射線処理ができるようになっている。
前記恒温放射線処理装置内において、電離放射線を照射しない位置、または電離放射線を照射しないタイミングでは、前記発熱体要素の表面温度を同一要素内では均一にし、照射野中心から離れた要素ほど高く設定することにより、照射野内およびその周辺位置に存する前記含フッ素系高分子膜基材の部位の温度を一様な分布に保ちながら短時間に結晶融点前後の予め定められた設定温度範囲まで高める。電離放射線を照射する位置、および電離放射線を照射するタイミングでは、照射野内の近傍に位置する冷媒通路から不活性ガスを前記含フッ素系高分子膜基材の照射野内に位置する部分に吹き付けて、前記含フッ素系高分子膜基材の温度を照射野を中心として蒲鉾状に分布した状態で低下させるように放熱させ、この放熱を打ち消すように分布した熱量を有する電離放射線を照射することによって結果として照射中のどの時間でも含フッ素系高分子膜基材の温度が前記予め定められた設定温度範囲内に収まるようにしている。また、前記の放出される熱量の空間分布も時間変化も電離放射線によって与えられる熱量の空間分布と時間変化とにそれぞれ一致しており、結果として空間的および時間的に前記設定温度範囲内の一様な温度分布となった状態で短時間に必要な線量を与えることができるようになっている。本発明においては、冷媒を局部的に吹き付けて大きな冷却率を有するように照射野に位置する部分を冷却しているので、大きな線量率で電離放射線を照射した場合でも照射野内の温度を安定して一様に分布させることができる。多くの場合、前記所望範囲は前記照射野と一致するが、処理後に切除する等で不使用となる部分は前記所望範囲から除外しても良い。これは、本発明のいずれの場合にも共通している。前記設定温度範囲は、前記含フッ素系高分子膜基材の結晶融点を中心として±20℃の温度範囲に設定することが許容される場合もあるが、前記含フッ素系高分子膜基材の結晶融点を超える特定の温度を中心として±5℃程度の温度範囲に設定することが好ましい。
本発明の一つは、含フッ素系高分子膜基材を予め定められた設定温度範囲内の温度に保ちながら当該含フッ素系高分子膜基材に1kGy以上の電離放射線を低い酸素分圧環境下において照射する照射工程を含んだ含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法において、前記含フッ素系高分子膜基材は前記電離放射線の照射野の大部分を占める所望範囲を含んでおり、前記照射工程は、前記含フッ素系高分子膜基材の前記所望範囲を前記設定温度範囲内の温度まで加熱する第1の工程と、強度分布を有する前記電離放射線を前記所望範囲を占める部分に照射することによって当該部分を加熱率を有して加熱するとともに、当該電離放射線の照射時間中において前記所望範囲を占める部分に不活性ガスを吹き付けることによって当該部分を冷却率を有して冷却する第2の工程とを含み、前記第1の工程における加熱は前記含フッ素系高分子膜基材に対向して非接触に設けられた分布した発熱量を有する発熱体によってなされ、前記第2の工程における前記不活性ガスの吹き付け強度分布と前記電離放射線の強度分布との少なくとも一方は、前記冷却率と前記加熱率とを前記所望範囲内の全ての部位において照射時間中にわたって実質的に一致させるように設定され又は制御されることを特徴とする製造方法である。ここで、冷却率とは、特定部位に於ける、単位時間内に低下する温度を表しており、熱伝導や熱輻射や対流による特定部位の温度低下速度をまとめて表した値である。同様に、加熱率とは、特定部位に於ける、単位時間内で上昇する温度を表している。本発明を採用すると、前記電離放射線の照射の開始直前から照射の終了直後まで前記照射野内の大部分を占める所望範囲内の全ての位置における含フッ素系高分子膜基材の温度を前記設定温度範囲内に収めることができ、大きな面積の含フッ素系高分子膜基材を正確な温度管理下で高速度の改質処理ができる。
本発明の一つは、含フッ素系高分子膜基材を予め定められた設定温度範囲内の温度に保ちながら当該含フッ素系高分子膜基材に1kGy以上の電離放射線を低い酸素分圧環境下において照射する照射工程を含んだ含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法において、前記含フッ素系高分子膜基材は前記電離放射線の照射野の大部分を占める所望範囲を含んでおり、前記照射工程は、前記含フッ素系高分子膜基材の前記所望範囲を前記設定温度範囲内の温度まで加熱する第1の工程と、強度分布を有する前記電離放射線を前記所望範囲を占める部分に照射することによって当該部分を加熱するとともに、当該電離放射線の照射時間中において前記所望範囲を占める部分に不活性ガスを吹き付けることによって当該部分を冷却する第2の工程とを含み、前記第1の工程における加熱は前記含フッ素系高分子膜基材に対向して非接触に設けられた分布した発熱量を有する発熱体によってなされ、前記第2の工程における前記不活性ガスの吹き付け強度分布と前記電離放射線の強度分布との少なくとも一方は、前記含フッ素系高分子膜基材の前記所望範囲内の実質的に全ての部分の温度が前記設定温度範囲内に収まるように照射時間中にわたって他方に関連して設定され又は制御されることを特徴とする製造方法である。前記発熱体の発熱量の分布を設定するには、前記発熱体を多数の発熱体要素に分割し、これらの発熱体要素要素の発熱量を独立して適切に設定するとよい。前記電離放射線の強度分布の設定は、前記電離放射線の線源と前記含フッ素系高分子膜基材との間に適当な透過率を有するフィルタを挿入すること等で実現できる。前記不活性ガスの吹き付け強度分布の設定は、前記所望範囲を除く部分には前記不活性ガスが当たらないように成形した仕切板を設けて前記不活性ガスの分布範囲を制限するとともに、前記所望範囲を除く部分に設けられた多数のノズルから前記不活性ガスを前記所望範囲を占める部分に向って吹き付けて、当該多数のノズルを有する不活性ガス通路内のガス圧力を前記電離放射線の強度分布に関連して適切に調節することによって行える。当該不活性ガスの吹き付けは前記電離放射線の照射タイミングに合わせて行う。本発明を採用すると、前記電離放射線の照射の開始直前から照射の終了直後まで前記所望範囲内の全ての位置における含フッ素系高分子膜基材の温度を前記設定温度範囲内に収めることができ、大きな面積の含フッ素系高分子膜基材を正確な温度管理下で短時間に改質処理できる。
本発明の一つは、含フッ素系高分子膜基材を予め定められた設定温度範囲内の温度に保ちながら当該含フッ素系高分子膜基材に1kGy以上の電離放射線を低い酸素分圧環境下において照射する照射工程を含んだ含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法において、前記含フッ素系高分子膜基材は前記電離放射線の照射野の大部分を占める所望範囲を含んでおり、前記照射工程は、前記含フッ素系高分子膜基材の前記所望範囲を前記設定温度範囲内の温度まで加熱する第1の工程と、前記含フッ素系高分子膜基材に対向して非接触に設けられた分布した発熱量を有する発熱体によって前記所望範囲を占める部分を加熱するとともに、強度分布を有する前記電離放射線を前記所望範囲を占める部分に照射することによって当該部分を加熱するとともに、当該電離放射線の照射時間中において前記所望範囲を占める部分に不活性ガスを吹き付けることによって当該部分を冷却する第2の工程とを含み、前記第1の工程における加熱は前記発熱体によってなされ、前記第2の工程における前記不活性ガスの吹き付け強度分布と前記電離放射線の強度分布と前記発熱体の発熱量分布との少なくとも一方は、前記含フッ素系高分子膜基材の前記所望範囲内の実質的に全ての部分の温度が前記設定温度範囲内に収まるように照射時間中にわたって他方に関連して設定され又は制御されることを特徴とする製造方法である。前記電離放射線の照射を開始する前に前記含フッ素系高分子膜基材の温度を前記設定温度範囲内に収める前記第1の工程を設けているので、前記電離放射線の照射開始直後において低温状態下で照射して前記含フッ素系高分子膜基材を劣化させる危険を回避できる。この第1の工程では、前記発熱体を多数の発熱体要素に分割して、これら発熱体要素のそれぞれの発熱量を適正に空間分布させることによって前記含フッ素系高分子膜基材の温度を適正値で均一に保っている。本発明を採用すると、前記電離放射線の照射の開始直前から照射の終了直後まで前記所望範囲内の全ての位置における前記含フッ素系高分子膜基材の温度を前記設定温度範囲内に収めることができ、大きな面積の含フッ素系高分子膜基材を正確な温度管理下で高速度に照射処理できる。
本発明の一つは、含フッ素系高分子膜基材を予め定められた設定温度範囲内の温度に保ちながら当該含フッ素系高分子膜基材に1kGy以上の電離放射線を低い酸素分圧環境下において照射する照射工程を含んだ含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法において、前記含フッ素系高分子膜基材は前記電離放射線の照射野の大部分を占める所望範囲を含んでおり、前記照射工程は、前記含フッ素系高分子膜基材の前記所望範囲を前記設定温度範囲内の温度まで加熱する第1の工程と、前記含フッ素系高分子膜基材に対向して非接触に設けられた分布した発熱量を有する発熱体によって前記所望範囲を占める部分を加熱するとともに、強度分布を有する前記電離放射線を前記所望範囲を占める部分に照射することによって当該部分を加熱する第2の工程とを含み、前記第1の工程における加熱は前記発熱体によってなされ、前記第2の工程における前記電離放射線の強度分布と前記発熱体の発熱量分布との少なくとも一方は、前記含フッ素系高分子膜基材の前記所望範囲内の実質的に全ての部分の温度が前記設定温度範囲内に収まるように照射時間中にわたって設定され又は制御されることを特徴とする製造方法である。本発明を採用すると、前記電離放射線の照射の開始直前から照射の終了直後まで前記所望範囲内の全ての位置における前記含フッ素系高分子膜基材の温度を前記設定温度範囲内に収めることができ、大きな面積の含フッ素系高分子膜基材を正確な温度管理下で高速度に照射処理できる。
本発明の一つは、上記いずれかの発明において、前記含フッ素系高分子膜基材は、前記設定温度範囲より低い温度に保たれて機械的に保持された第1の基材領域と、前記発熱体によって加熱された第2の基材領域と、前記電離放射線の照射を受けて前記設定温度範囲内の温度に保たれた第3の基材領域とを含んでおり、当該第3の基材領域は前記所望範囲を含んでいることを特徴とする方法である。前記第1の基材領域では好ましくは常温に保たれており、前記含フッ素系高分子膜基材の保持が容易に行えるとともに前記含フッ素系高分子膜基材を走行させられるので、照射処理が連続的に行える。前記第1の基材領域を前記第3の基材領域を挟んでその両側に設けることによって照射処理が終了した含フッ素系高分子膜を処理終了直後に移動させて取り出すことができ、処理速度が大きくなる。前記第2の基材領域では、前記電離放射線の照射を受けない状態で前記設定温度範囲内又はその近くの温度まで加熱されているので、低温状態下で前記電離放射線を照射して前記含フッ素系高分子膜基材を劣化させる危険が回避できる。前記第2の基材領域及び前記第3の基材領域では、これらの近傍に設けられた前記発熱体を多数の発熱体要素に分割して、これら発熱体要素のそれぞれの発熱量を適正に空間分布させることによって、その温度を適正値に保つようになっている。本発明を採用すると、能率よく正確に大量の照射処理を行うことができる。
本発明の一つは、上記いずれかの発明において、前記所望範囲は前記電離放射線の照射を受ける恒温放射線処理装置内を通過し、当該恒温放射線処理装置は、前記発熱体を含んでおり、前記含フッ素系高分子膜基材の一部を前記設定温度範囲より低い温度に保つとともに機械的に保持する第1の装置領域と、前記発熱体によって前記所望範囲を占める部分を前記設定温度範囲内又はその近くの温度まで加熱する第2の装置領域と、前記所望範囲を占める部分に電離放射線を照射して所定の線量を与える第3の装置領域とを順に有していることを特徴とする方法である。好ましくは、前記含フッ素系高分子膜基材は、常温に保つ前記第1の装置領域と、前記電離放射線の照射を受けない状態で前記設定温度範囲内又はその近くの温度まで均一に加熱する前記第2の装置領域と、前記電離放射線の照射を行う前記第3の装置領域とを順次通過するようになっている。従って、前記電離放射線の照射の開始直前から照射の直後まで前記所望範囲内の全ての位置における含フッ素系高分子膜基材の温度を前記設定温度範囲内に収めることができ、正確な温度管理下で短時間に多量の照射処理ができる。
本発明の一つは、上記いずれかの発明において、前記含フッ素系高分子膜基材は第4の基材領域を含んでおり、当該第4の基材領域は、前記第1の基材領域と前記第2の基材領域と間に位置する基材領域であり、又は前記第1の装置領域と前記第2の装置領域との間において対向する前記含フッ素系高分子膜基材の基材領域であり、当該第4の基材領域における前記含フッ素系高分子膜基材の温度は前記それぞれの他の基材領域に向う方向の距離に対する第1の変化率を有して分布しており、前記第2の基材領域又は前記第3の基材領域において、又は前記第2の装置領域又は前記第3の装置領域においてそれぞれに対向する前記含フッ素系高分子膜基材の基材領域における前記含フッ素系高分子膜基材の温度は前記それぞれの他の基材領域に向う方向の距離に対する第2の変化率を有して分布しており、前記第1の変化率の大きさは前記各基材領域内のいたる所で当該第2の変化率の大きさよりも実質的に大きくなっていることを特徴とする方法である。本発明を採用すると、前記第4の基材領域において短い距離で大きな温度勾配を保って加熱されるので前記含フッ素系高分子膜基材の保持が容易であるとともに、処理の為の装置が小型になり、低価格化できる。前記含フッ素系高分子膜基材の高温部分を、前記照射野を含む比較的に狭い範囲に限定できるので、処理中における被処理部位の位置決めが容易であり、処理の正確化と高速化ができるようになる。
本発明の一つは、含フッ素系高分子膜基材を予め定められた設定温度範囲内の温度に保ちながら当該含フッ素系高分子膜基材に所定の線量の電離放射線を照射する恒温放射線処理装置であって、前記含フッ素系高分子膜基材は当該恒温放射線処理装置内で位置決め保持される被保持部分と前記設定温度範囲内又はその近くの温度に加熱される被加熱範囲と前記電離放射線の照射野内の大部分を占める所望範囲とを含んでおり、前記恒温放射線処理装置は、前記被保持部分を保持可能な低い温度に保つとともに当該被保持部分を機械的に保持する第1の装置領域と、前記照射野の近傍において前記含フッ素系高分子膜基材に対向して非接触に設けられた複数の発熱体要素を含んで成る発熱体によって前記被加熱範囲を前記設定温度範囲内又はその近くの温度まで加熱する第2の装置領域と、前記所望範囲に前記電離放射線を照射して加熱率を有して加熱して前記所望範囲を占める部分を前記設定温度範囲内の温度に保つ第3の装置領域とを含んでおり、当該第3の装置領域においては、前記電離放射線の照射時間中において前記所望範囲を占める部分に不活性ガスを吹き付けることによって当該部分は冷却率を有して冷却され、当該不活性ガスの吹き付け強度分布と前記電離放射線の強度分布との少なくとも一方は、前記電離放射線の照射を受ける時間中において、前記所望範囲内のあらゆる部分を前記設定温度範囲内の温度に保つように他方に関連して設定され又は制御されるようにしたことを特徴とする装置である。前記第1の装置領域では前記含フッ素系高分子膜基材の温度を常温に保つようになっていることが好ましい。本発明の装置を採用すると、前記電離放射線の照射中における含フッ素系高分子膜基材の温度を前記設定温度範囲内の温度に管理しながら容易に大線量率で照射することができ、照射処理が終了した部分は前記処理装置を別途冷却したり開放したりすることなく素早く前記処理装置外に移動させて取り出すことができる。
本発明の一つは、上記いずれかの発明において、前記発熱体は空間的に分割させた複数の発熱体要素を含んでおり、当該発熱体要素は前記照射野内の中央部において前記含フッ素系高分子膜基材に対向して設けられた第1の発熱体要素と前記照射野をはみ出した位置において前記含フッ素系高分子膜基材に対向して設けられた第2の発熱体要素とを含んでおり、当該第2の発熱体要素の表面温度は前記第1の発熱体要素の表面温度よりも高く設定されたことを特徴とする方法又は装置である。前記含フッ素系高分子膜基材の表面に対向して設けられた一様な表面温度を有する一体化した発熱体によって前記含フッ素系高分子膜基材を加熱する場合には、その周辺部位の温度が中央部位の温度よりも低くなる。この状況は、前記電離放射線を照射しない時も、強度が均一に分布する前記電離放射線を照射している時も変わらない。前記電離放射線の強度分布のみを複雑に制御することによって照射中における前記含フッ素系高分子膜基材又はその他の長尺被照射体の温度分布を均一化できるが、照射直後の温度を前記設定温度範囲内に収めるのが困難であるばかりでなく吸収線量が不均一に分布することになり好ましくない。しかるに、本発明を採用すると、前記発熱体による加熱に際して前記含フッ素系高分子膜基材の温度分布を前記照射野内で均一にし易く、且つ前記電離放射線の吸収線量の分布を均一に保つことが容易である。また、簡単な装置を用いて照射中における前記含フッ素系高分子膜基材の温度管理が行える。
本発明の一つは、上記いずれかの発明において、前記含フッ素系高分子膜基材は長手方向と幅方向とを有し、前記発熱体は当該幅方向に整列した発熱体要素を含む第1及び第2の発熱体要素群を有し、当該第1及び第2の発熱体要素群が前記長手方向に整列していることを特徴とする方法または装置である。簡単な構造の発熱体を用いて照射中における前記含フッ素系高分子膜基材の温度管理が容易に行える。特に、前記含フッ素系高分子膜基材の幅方向温度分布を一様に保った状態で長手方向の温度分布を制御し易いので、前記幅方向に整列した前記発熱体要素群を同じ時間関数で制御できることになり、前記電離放射線の照射中における前記含フッ素系高分子膜基材の温度を前記設定温度範囲内の温度に管理しながら容易に照射することができる。
本発明の一つは、上記いずれかの発明において、前記幅方向に整列した同一の発熱体要素群に含まれる各発熱体要素は同一の時間関数に従ってそれらの発熱量が制御されることを特徴とする方法または装置である。本発明を採用すると、簡単な構造の発熱体及び制御器を用いて照射中における前記含フッ素系高分子膜基材の温度管理が容易に行える。特に、前記含フッ素系高分子膜基材の幅方向温度分布を一様に保った状態で長手方向の温度分布を制御し易く、前記幅方向に整列した前記発熱体要素群を同じ時間関数で制御しているので、前記電離放射線の照射中における前記含フッ素系高分子膜基材の温度を単純な制御方式で前記設定温度範囲内の温度に管理できる。
本発明の一つは、上記いずれかの発明において、前記含フッ素系高分子膜基材の任意の部分における前記設定温度範囲は前記含フッ素系高分子膜基材の同一の前記任意部分において過去に吸収された前記電離放射線の吸収線量の積算値に対応して予め定められた関係を保って低下するように定められることを特徴とする方法または装置である。前記設定温度範囲を低下させることは、過去の吸収線量の積算値の増加に応じて、(1)前記電離放射線の線量率を低下するか、(2)前記不活性ガスによる冷却率を増加するか、(3)前記発熱体の発熱量を減少することによって達成できる。本発明を採用すると、前記含フッ素系高分子膜基材に吸収された前記電離放射線の吸収線量の積算値が増加するにしたがってその結晶融点が低下した場合にも、吸収線量の積算値と前記設定温度範囲との関係を予め決められた最良の関係に常に保つことができて最適温度条件にて高温放射線処理を行うことができる。
本発明の一つは、上記いずれかの発明において、前記含フッ素系高分子膜基材はポリテトラフルオロエチレン膜、又はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体膜、又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体膜のいずれかであることを特徴とする法または装置である。本発明を採用すると、放射線環境下で使用できなかった大面積のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜やテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体膜やテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体膜を放射線環境下でも使用できるように改質して工業製品として安価に提供できる。更に、改質したこれらの含フッ素系高分子膜を基材として使用することにより、優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有する含フッ素系高分子型イオン交換膜を安価に大量生産できるようになる。更に、これを用いると安価で耐久性がある燃料電池を提供できる。
本発明の一つは、上記いずれかの発明の方法によって又は装置を用いて製造された架橋構造を有する含フッ素系高分子膜基材に、放射線照射によって種々のモノマーをグラフト重合させ、得られた膜のグラフト鎖中のハロゲン基をスルホン酸塩とし、引き続きグラフト鎖中のスルホン酸塩基をスルホン酸基とすることを特徴とする含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法ある。本発明を採用すると、優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有する含フッ素系高分子イオン交換膜を安価に大量生産できるようになる。更に、これを用いると安価で耐久性がある燃料電池を提供できる。
本発明の一つは、上記いずれかの発明の方法によって又は装置を用いて製造された架橋構造を有する含フッ素系高分子膜基材に、放射線照射によって種々のモノマーをグラフト重合させ、得られた膜のグラフト鎖中のエステル基を酸性又はアルカリ性液中で加水分解してスルホン酸基とすることを特徴とする含フッ素系高分子イオン交換膜の製造方法である。本発明を採用すると、燃料電池の寿命と性能を高める為に最も重要な構成要素であるイオン交換膜が優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有するとともに、これを安価に大量生産できるようになり、結果として高性能で安定動作をする長寿命の燃料電池を安価に大量生産できるようになる。
本発明の一つは、上記いずれかの発明の方法によって又は装置を用いて製造されたことを特徴とする架橋構造を有する含フッ素系高分子膜である。本発明を採用すると、放射線環境下で使用できなかった大面積の含フッ素系高分子膜を放射線環境下でも使用できるように改質して工業製品として安価に提供できる。更に、改質した含フッ素系高分子膜を基材として使用することにより、優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有する含フッ素系高分子イオン交換膜を安価に大量生産できるようになる。更に、これを用いると安価で耐久性がある燃料電池を提供できる。
本発明の一つは、上記いずれかの発明の方法によって又は装置を用いて製造された架橋構造を有する含フッ素系高分子膜を用いて製造されたことを特徴とする含フッ素系高分子イオン交換膜である。本発明を採用すると、燃料電池の寿命と性能を高める為に最も重要な構成要素であるイオン交換膜が優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有するようにできるとともに、これを安価に大量生産できるようになり、結果として高性能で安定動作をする長寿命の燃料電池を安価に大量生産できるようになる。
本発明の一つは、上記いずれかの発明の方法によって又は装置を用いて製造されたことを特徴とする含フッ素系高分子イオン交換膜である。本発明を採用すると、燃料電池の寿命と性能を高める為に最も重要な構成要素であるイオン交換膜が優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有するとともに、これを安価に大量生産できるようになり、結果として高性能で安定動作をする長寿命の燃料電池を安価に大量生産できるようになる。
本発明を採用すると、大面積の含フッ素系高分子膜基材の温度を照射野内の実質的に全ての部位にわたって且つ処理の全時間中にわたって最適に定められた温度範囲に常に保った状態で酸素不在環境下において大線量率の電離放射線を照射することができ、安定した品質の架橋構造を有する含フッ素系高分子膜を短時間に大量に且つ安価に生産することができる。本発明を採用して生産された安価で高品質の架橋構造を有する含フッ素系高分子膜を基材として用いると、優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有する含フッ素系高分子イオン交換膜を安価に大量生産できるようになり、結果として高性能で安定な動作をする長寿命の燃料電池を安価に生産できるようになる。また、本発明によって得られた改質含フッ素系高分子膜は耐放射線性を付与されるために放射線環境下で使用できるその他の工業材料としてまたは放射線滅菌が可能な医療用具素材として有用となる。
本発明に係わる含フッ素系高分子膜基材の好適な放射線処理方法では、長尺の含フッ素系高分子膜基材を、温度制御と電子線照射とが同時に行える恒温電子線処理装置内を通過させる。この恒温電子線処理装置では、その入口位置および出口位置において、前記含フッ素系高分子膜基材の長手方向の一部分を常温に保って機械的に保持するとともに走行させる機能を付与させた部分が設けられている。前記恒温電子線処理装置内においては発熱体を設け、この発熱体を前記含フッ素系高分子膜基材の長手方向および幅方向に沿って多数の発熱体要素に分割して構成しておき、これらの発熱体要素の表面温度を空間的および/又は時間的に適正に制御する。電子線を照射する部位及びそのタイミングでは電子線照射による前記含フッ素系高分子膜基材の発熱効果を打ち消す冷却効果を与えるように不活性ガスを吹き付ける。このようにして、照射中および照射前後を問わず、前記含フッ素系高分子膜基材の照射野内に位置する全ての部位の温度を実質的に一様に保ち、所定の処理が進行すれば前記恒温電子線処理装置の出口位置において処理済の長尺含フッ素系高分子膜を部分的に冷却して前記恒温電子線処理装置外に送り出すことによって短時間に多量の処理ができるようになっている。
前記恒温電子線処理装置内において、電子線を照射しない位置、または電子線を照射しないタイミングでは、前記発熱体要素のそれぞれの表面温度を前記照射野の中心から離れて設けられた発熱体要素ほど高く設定することにより、前記含フッ素系高分子膜基材の照射野内およびその周辺に位置する部位の温度を一様に保ちながら短時間に結晶融点前後の予め定められた設定温度範囲内の温度まで高める。電子線を照射する位置、および電子線を照射するタイミングでは、照射野外でその近傍に位置して設けられた冷媒通路から前記含フッ素系高分子膜基材の照射野内の部位に不活性ガスを吹き付けて前記含フッ素系高分子膜基材の温度を、照射野を中心として、蒲鉾状に分布した状態で低下させるように放熱させ、かつ、この放熱を打ち消すように分布した熱量を有する電子線を照射することによって加熱し、結果として照射中のどのタイミングでも前記含フッ素系高分子膜基材の温度が限度以上に変化しないようにしている。また、前記の放出される熱量の空間分布および時間変化は、照射野内においては、電子線によって与えられる熱量の空間分布および時間変化とそれぞれ実質的に一致しており、結果として照射野内においては空間的および時間的に一様で前記設定温度範囲内に収まった温度分布となる。
また、前記含フッ素系高分子膜基材は吸収線量の増加とともに結晶融点が低下し、したがって最適設定温度範囲が吸収線量の積算値の増加とともに低下するので、前記設定温度範囲を吸収線量の積算値に応じて変化させて常に最適な温度で最適な架橋処理を行えるようになっている。このように吸収線量の積算値によって照射時の温度を変化させる場合には前記含フッ素系高分子膜基材を静止させた状態で前記発熱体要素の表面温度又は前記電離放射線の線量率又は前記不活性ガスの吹き付けによる放熱の少なくとも一つを吸収線量の積算値に応じて変更し、既定の吸収線量値に達した後に電子線の照射を休止して照射野の幅に相当する距離だけ前記含フッ素系高分子膜基材を長手方向に移動させるとともに、前記の変更を取り消すように初期化して前記含フッ素系高分子膜基材の温度を照射開始時の設定値に戻した後、前記の照射を繰り返す。この際、前記含フッ素系高分子膜基材はステップ状に自動的に移動される。
電子線の照射線量率が大きい場合には、前記含フッ素系高分子膜基材の内で照射野に位置する部分の温度上昇を防ぐ為に多量の不活性ガスを吹き付けてこの冷却率を増加させる必要がある。この場合に前記含フッ素系高分子膜基材に前記不活性ガスの流束によって圧力を受けて前記含フッ素系高分子膜基材の撓みが大きくなるのを防ぐ為に前記含フッ素系高分子膜基材を前記長手方向に適正な大きさの張力を与えるようになっている。
照射する線量の積算値が多くない場合には、最適設定温度範囲を一定値にプリセットできるので、この場合には前記発熱体要素の温度設定値を一定として前記含フッ素系高分子膜基材を一定速度で移動させながら架橋処理を行うことができる。この場合でも、不活性ガスの流量を増す等によって前記含フッ素系高分子膜基材の冷却率を大きくしておくと、放熱に釣り合う電子線の発熱量を増加できるのでより大きな線量率で短時間に照射できる。
以上に述べたように、前記恒温電子線処理装置内において前記含フッ素系高分子膜基材の保持部分を常温に保ったままで照射野およびその近傍に位置する部分を急速に加熱した後に、大きな照射線量率で照射しながら照射中の温度を最適値に保った状態で前記含フッ素系高分子膜基材に多量の線量を短時間に照射し、照射が終了すると処理済の前記含フッ素系高分子膜の前記恒温電子線処理装置出口に位置する部位を部分的に急速に冷却して前記恒温電子線処理装置の外部に移動させて取り出す。このようにして、大面積の前記含フッ素系高分子膜基材を高速度で多量に自動的に放射線処理できるようになっている。以下に、実施例を用いて本発明の実施形態及び作用についてより具体的且つ詳細に説明する。
図1、図2、図3、図4を参照して本発明の含フッ素系高分子膜基材の放射線処理方法について説明する。これらの図において、同じ部分は同じ番号を付して表している。図1及び図2は、本発明に係わる含フッ素系高分子膜基材の恒温電子線処理装置の例を示している。図1は縦断面図であり、図2は横断面図である。図1において、1は長尺で幅広に形成された含フッ素系高分子膜基材であり、本実施例では、厚さが100μmで幅が30cmで長さが10mのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を用いている。これは、初期的にリール2に巻き取られており、処理の進行とともにリール3に巻き取られた状態に移動する。含フッ素系高分子膜基材1はプーリー4によって位置決めされて恒温電子線処理装置10内に導かれて、340℃程度に加熱された後に温度を340±5℃の範囲内に保った状態を維持しつつ電子線Eを照射される。恒温電子線処理装置10の入口部分及び出口部分には冷却用プーリー5及び6が設けられており、これらは含フッ素系高分子膜基材1を機械的に保持しつつこの部分を常時常温に保つとともに含フッ素系高分子膜基材1の位置決め及び走行を促すように作動する。恒温電子線処理装置10の出口部分の外側にはプーリー7及び8が設けられている。プーリー7は位置が固定されており、含フッ素系高分子膜基材1の位置決めを行う。プーリー8は移動可能になっており、予め定められた張力F1を常時含フッ素系高分子膜基材1に付与するようになっており、恒温電子線処理装置10内に位置する含フッ素系高分子膜基材1の部分に常時適切な張力を与えるようになっている。プーリー8を通過した含フッ素系高分子膜基材1はリール3によって巻き取られる。
恒温電子線処理装置10には放射線防護機能と気体封じ込め機能を有する処理容器11が設けられており、内部はアルゴンや窒素等の不活性ガスで満たされている。恒温電子線処理装置10には強度が平坦に分布した電子線Eを照射する所謂面照射型の電子線照射装置12が設けられている。電子線照射装置12は例えば特開平11−19190号公報に開示された構造の装置で、第1の電子線透過窓13を透過して300keV程度のエネルギーと10mA程度の電流とを有する平坦に分布した電子線を照射できるようになっている。恒温電子線処理装置10内には含フッ素系高分子膜基材1が通過するようになっており、含フッ素系高分子膜基材1に対して電子線照射装置12と反対側に発熱体である加熱用ヒータ群30が設けられている。加熱用ヒータ群30と処理容器11の壁との間には熱遮蔽板14が設けられており、処理容器11の過熱を防止している。加熱用ヒータ群30は図示しない熱絶縁体を介して熱遮蔽板14に機械的に保持されている。熱遮蔽板14は必要により水冷等によって冷却されている。処理容器11内で含フッ素系高分子膜基材1と電子線透過窓13との間には第2の電子線透過窓15及びこれを冷却するとともに機械的に支持する隔壁16が設けられている。第1の電子線透過窓13と第2の電子線透過窓15とは、ノズル17から導かれてノズル18から流出する不活性ガスがこれらの間を高速で流れることにより冷却される。
恒温電子線処理装置10の入口部位及び出口部位では熱遮蔽板14と隔壁16とが含フッ素系高分子膜基材1を挟んで非接触に近接している。これらの位置で、含フッ素系高分子膜基材1の図示上下両面に向って不活性ガスを吹きかけるノズル群19及び20が設けられており、この不活性ガスの流動により含フッ素系高分子膜基材1の機械的接触を防止して保持するとともに含フッ素系高分子膜基材1を冷却している。隔壁16には非接触温度計群21,22が設けられており、矢印23,24で示す方向における含フッ素系高分子膜基材1の表面位置の温度を検出できるようになっている。図1及び図2に示すように、電子線Eの中心軸をZ軸とし、含フッ素系高分子膜基材1とZ軸との交点を原点Oとし、原点Oを通り、恒温電子線処理装置10の入口部分から出口部分に向う方向をX軸とし、原点Oを通り、X軸及びZ軸に直角な方向をY軸とする。恒温電子線処理装置10内では含フッ素系高分子膜基材1の長手方向はX軸に平行であり、含フッ素系高分子膜基材1の幅方向はY軸に平行である。電子線Eの照射野FiはX軸方向の幅がFWであり、Y軸方向の長さがFLである。
含フッ素系高分子膜基材1に近接して対向しており、且つ含フッ素系高分子膜基材1に対して第2の電子線透過窓15及び隔壁16と同じ側に位置して且つ含フッ素系高分子膜基材1に平行に近接して仕切板25が設けられている。仕切板25の構造は図4に示している。Z軸を中心としてX軸方向の幅がFW1でY軸方向の幅がFLの切抜穴Winが開いている。幅FW1は照射野Fiの幅FWに近い値である。仕切板25に対して含フッ素系高分子膜基材1と反対側に冷媒通路26,27が仕切板25に平行に設けられている。冷媒通路26,27にはそれぞれ多数の冷媒噴出口26−1、27−1が取付けられている。冷媒通路26,27及び多数の冷媒噴出口26−1、27−1は電子線Eが照射野Fiの範囲で含フッ素系高分子膜基材1に照射されるのを妨げないように偏在して設けられている。冷媒通路26,27には窒素等の不活性ガスが導入されており、当該不活性ガスは電子線Eが照射されるタイミングに多数の冷媒噴出口26−1、27−1から含フッ素系高分子膜基材1に向って吹き付けられて照射野Fi内に位置する含フッ素系高分子膜基材1の部分を一様に冷却する。不活性ガスが含フッ素系高分子膜基材1に吹き付けられる空間的な範囲は切抜穴Winの大きさによって制限されている。不活性ガスの空間的分布は多数の冷媒噴出口26−1、27−1の取付位置や穴の大きさの空間的分布等を調整することによって適正化されている。吹き付けられる不活性ガスの量及びその分布は照射野Fi内に位置する含フッ素系高分子膜基材1の部分の温度が電子線Eの照射によって変化しないような冷却効果を有するように電子線の強度に応じて制御されている。吹き付けられる不活性ガスの温度は一定となっているが、適切に制御されても良い。
図3(a)は、恒温電子線処理装置10の正のZ座標値を有する一部分を取り除いてZ軸の正の方向から冷媒通路26,27、仕切板25、含フッ素系高分子膜基材1及び加熱用ヒータ群30を見た平面図を表している。図3(b)は図3(a)に対応したYZ平面での断面図の一部を表している。図3(c)は図3(a)に対応したXZ平面での断面図の一部を表している。図3(a)の斜線部分は電子線Eの照射野Fiを表しており、照射野幅はFWであり、照射野長はFLである。本実施例においては、前記所望範囲は照射野Fiに完全に一致している。図5(a)及び図5(b)は加熱用ヒータ群30の平面図及び側断面図をそれぞれ表している。図5(a)に示しているように、加熱用ヒータ群30はXY平面に平行に配列された複数のヒータ要素とXZ平面に平行に配列された複数のヒータ要素を含んでおり、これらはいずれも含フッ素系高分子膜基材1から一定の距離、例えば2.5cm、を保って並べられている。これらのヒータ要素は前記発熱体要素の1つの具体例である。加熱用ヒータ群30には、X座標がそれぞれ−X2,−X1,0、X1,X2で,Y座標がそれぞれ−Y3,−Y2,−Y1,0、Y1,Y2,Y3の位置に表面の中心を有する35個のヒータ要素に分割されており、これらは小さな距離、例えば2mm、離れて互いに隣接して並べられている。ここで、X1は5.8cm、X2は13.8cm、Y1は10.8cm、Y2は15.1cm、Y3は17.5cmである。これらのヒータ要素はY軸方向に整列した7個のヒータ要素を含むヒータ要素群、つまり前記発熱体要素群、がX軸方向に5個整列して構成されている。これらのヒータ要素をそれぞれH(i,j)で表す。ここで、iはヒータ要素表面の中心座標を表す、X軸方向の上記サフィックスを表し、−2、−1、0、1、2が含まれており、jはヒータ要素の表面の中心座標を表す、Y軸方向の上記サフィックスを表し、−3、−2、−1、0、1、2、3が含まれる。
ヒータ要素H(i,j)、i = ±2、±1、0、j = ±2、±1、0、はZ座標が−2.5cmで、含フッ素系高分子膜基材1から2.5cm離れた位置で含フッ素系高分子膜基材1に平行に対面している。ヒータ要素H(i,j)、i = ±2、±1、0、j = ±3、は照射野中心からY方向にそれぞれ−Y3、Y3だけ離れた位置でZ軸方向に座標が0から−Z1まで広がってXZ平面に平行に配列されている。後者は、含フッ素系高分子膜基材1のY軸方向の温度分布を均一化するのに役立っている。これらの全てのヒータ要素はそれぞれ熱的、電気的に分割されており、独立して制御できるようになっている。
これらの各ヒータ要素H(i,j)は、2種のタイミングで異なった様態に制御される。このタイミングは、含フッ素系高分子膜基材1を初期温度、例えば室温、から規定温度、例えば340℃、まで急速に加熱する為の急加熱タイミングT1と、含フッ素系高分子膜基材1を規定温度、例えば340℃、に保温する為の保温タイミングT2とである。急加熱タイミングT1に於ける各ヒータ要素H(i,j)の発熱量Q(i,j)の分布例を図6に示している。図6においては発熱量は面積密度で表している。図6(a)はヒータ要素H(0、j)、j = −3、−2、−1、0、1、2、3、の発熱量Q(0、j)、j = −3、−2、−1、0、1、2、3、であり、図6(b)はヒータ要素H(±1、j)、j = −3、−2、−1、0、1、2、3、の発熱量Q(±1、j)、j = −3、−2、−1、0、1、2、3、であり、図6(c)はヒータ要素H(±2、j)、j = −3、−2、−1、0、1、2、3、の発熱量Q(±2、j)、j = −3、−2、−1、0、1、2、3、であり、図6(d)はヒータ要素H(i、0)、i = −2、−1、0、1、2、の発熱量Q(i、0)、i = −2、−1、0、1、2、であり、図6(e)はヒータ要素H(i、±1)、i = −2、−1、0、1、2、の発熱量Q(i、±1)、i = −2、−1、0、1、2、であり、図6(f)はヒータ要素H(i、±2)、i = −2、−1、0、1、2、の発熱量Q(i、±2)、i = −2、−1、0、1、2、であり、図6(g)はヒータ要素H(i、±3)、i = −2、−1、0、1、2、の発熱量Q(i、±3)、i = −2、−1、0、1、2、である。
同様に、保温タイミングT2に於ける各ヒータ要素H(i,j)の発熱量Q(i,j)を図7に示している。図7においては発熱量は面積密度で表している。図7(a)はヒータ要素H(0、j)、j = −3、−2、−1、0、1、2、3、の発熱量Q(0、j)、j = −3、−2、−1、0、1、2、3、であり、図7(b)はヒータ要素H(±1、j)、j = −3、−2、−1、0、1、2、3、の発熱量Q(±1、j)、j = −3、−2、−1、0、1、2、3、であり、図7(c)はヒータ要素H(±2、j)、j = −3、−2、−1、0、1、2、3、の発熱量Q(±2、j)、j = −3、−2、−1、0、1、2、3であり、図7(d)はヒータ要素H(i、0)、i = −2、−1、0、1、2の発熱量Q(i、0)、i = −2、−1、0、1、2、であり、図7(e)はヒータ要素H(i、±1)、i = −2、−1、0、1、2、の発熱量Q(i、±1)、i = −2、−1、0、1、2、であり、図7(f)はヒータ要素H(i、±2)、i = −2、−1、0、1、2、の発熱量Q(i、±2)、i = −2、−1、0、1、2、であり、図7(g)はヒータ要素H(i、±3)、i = −2、−1、0、1、2、の発熱量Q(i、±3)、i = −2、−1、0、1、2、である。
上記の各ヒータ要素H(i,j)の発熱量Q(i,j)を制御する時間関数及び電子線強度を制御する時間関数を図8に示している。図8(a)は電子線強度を制御する加熱時間tの正規化して表した関数Fb(t)であり、図8(b)はヒータ要素H(i,j)、i=−2〜+2、j=−3〜+3を制御する加熱時間tの正規化して表した関数Fh(t)である。これらの図において、急加熱タイミングT1は加熱時間tが0から12.0秒の間に相当し、保温タイミングT2は加熱時間tが12.0秒以降に相当し、ビーム照射タイミングT3は加熱時間tが24.0秒から44.5秒の間、及び65.3秒から85.8秒の間、及び106.6秒から127.1秒の間に相当する。
上記のように各ヒータ要素H(i,j)の発熱量Q(i,j)を制御した場合に於ける各ヒータ要素H(i,j)の表面温度Th(i,j、t)を図9に表している。ここで、tは加熱時間であり、縦軸の値はセ氏温度で表している。図9(a)はヒータ要素H(0,j)、j = ±3、±2、±1、0、の表面温度Th(0、j、t)、j = ±3、±2、±1、0、t = 0〜145秒、を表している。図9(b)はヒータ要素H(±1,j)、j = ±3、±2、±1、0、の表面温度Th(±1、j、t)、j = ±3、±2、±1、0、t = 0〜145秒、を表している。図9(c)はヒータ要素H(−2,j)、j = ±3、±2、±1、0、の表面温度Th(−2、j、t)、j = ±3、±2、±1、0、t = 0〜145秒、を表している。図9(d)はヒータ要素H(2,j)、j = ±3、±2、±1、0、の表面温度Th(2、j、t)、j = ±3、±2、±1、0、t = 0〜145秒、を表している。含フッ素系高分子膜基材1が静止している場合にはTh(−2、j、t)はTh(2、j、t)に一致する。
図9に示した、代表的な加熱時間t = 11.5秒、21.9秒、24.3秒、29.9秒に於ける各ヒータ要素H(i,j)の表面温度の空間分布を図10に表している。図10の縦軸の値はセ氏温度を表している。図10(a)はヒータ要素H(0、j)、j = ±3、±2、±1、0、の表面温度Th(0、j、t)を示している。図10(b)はヒータ要素H(±1、j)、j = ±3、±2、±1、0、の表面温度Th(±1、j、t)を示している。図10(c)はヒータ要素H(±2、j)、j = ±3、±2、±1、0、の表面温度Th(±2、j、t)を示している。図10(d)はヒータ要素H(i、0)、i = ±2、±1、0、の表面温度Th(i,0、t)を示している。図10(e)はヒータ要素H(i、±1)、i = ±2、±1、0、の表面温度Th(i,±1、t)を示している。図10(f)はヒータ要素H(i、±2)、i = ±2、±1、0、の表面温度Th(i,±2、t)を示している。図10(g)はヒータ要素H(i、±3)、i = ±2、±1、0、の表面温度Th(i,±3、t)を示している。これらの図から分かるように、各ヒータ要素の同一表面内における温度はほぼ均一に分布する。
図9及び図10に示すようにヒータ要素H(i,j)の表面温度Th(i,j,t)は含フッ素系高分子膜基材1の幅方向において、より端部に位置する表面の温度がより高くなっている。これらのヒータ要素H(i,j)で含フッ素系高分子膜基材1を熱輻射によって加熱した場合の含フッ素系高分子膜基材1の表面温度をTp1(x、y、t)とする。ここで、xはX軸方向位置を、yはY軸方向位置を、tは加熱開始後の時間つまり加熱時間を表している。ヒータ要素H(i,j)の表面温度Th(i,j,t)は、含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp1(x、y、t)が照射野幅FW内においてX方向位置x及び加熱時間tに関係せず、幅方向つまりY方向に一様な温度分布となるように定められている。図1(a)及び図2(a)に示すように、冷却用プーリー5及び6の近傍では含フッ素系高分子膜基材1の温度は常温に保たれている。含フッ素系高分子膜基材1の照射野Fi内に位置する部分は340±5℃まで加熱されて空間的にも時間的にもこの温度範囲に保たれる。
このように含フッ素系高分子膜基材1の表面温度Tp1(x、y、t)を照射野Fi内で空間的にも時間的にも340±5℃の範囲で一様に保った状態で、X軸方向の強度分布を図11(a)に示すような、照射野Fi内でX軸方向及びY軸方向に一様に分布する強度(300keV、0.24mA)の電子線Eを照射した場合には、含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp2(x、y、t)のX軸方向分布は図11(b)に示すようになり、Y軸方向には一様に分布する。図11(b)に示すように、電子線Eの照射直前の加熱時間t = 21.9秒において含フッ素系高分子膜基材1の照射野中心に於ける温度Tp2(0、0、21.9)は343.9℃であり、照射開始直後の加熱時間t = 24.3秒において含フッ素系高分子膜基材1の照射野中心に於ける温度Tp2(0、0、24.3)は350.1℃であり、照射開始後5.9秒を経過した加熱時間t = 29.9秒において含フッ素系高分子膜基材1の照射野中心に於ける温度Tp2(0、0、29.9)は395.0℃であり、照射開始後18.7秒を経過した加熱時間t = 42.7秒において含フッ素系高分子膜基材1の照射野中心に於ける温度Tp2(0、0、42.7)は440.7℃である。つまり、照射中に含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp2(x、y、t)が高温度になり過ぎて含フッ素系高分子膜基材1の熱分解が進行する。この場合の吸収線量は210kGyに相当する。
一方、図1〜図3に示す冷媒通路26,27に取付けられた多数の冷媒噴出口26−1、27−1から窒素ガス等の不活性ガスが放出されて仕切板25の切抜穴Winを通過して含フッ素系高分子膜基材1の一部を冷却した状態で電子線Eを照射しない場合における含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp3(x、y、t)を図12に示している。この場合、不活性ガスと含フッ素系高分子膜基材1との間の熱伝達係数は0.0009W/(cm2*deg)と成っている。図12(a)は含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp3(x、y、t)のY軸方向分布であり、図12(b)は含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp3(x、y、t)のX軸方向分布である。これらの図はビーム照射タイミングT3において電子線Eの照射野Fiの照射野幅FW内において部分的に経時的に低下していることを表している。この場合の照射野中心に於ける含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp3(0、0、t)の時間変化は図14(c)に示している。
上述のように含フッ素系高分子膜基材1を部分的に冷却した状態で、図8(a)に示すようなビーム照射タイミングT3において、図11(a)に示すようなX軸方向及びY軸方向に一様な強度分布の電子線Eを照射した場合には、含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp0(x、y、t)のY軸方向分布Tp0(0、y、t)は図13(a)に示すように、X軸方向分布Tp0(x、0、t)は図13(b)に示すように、照射野中心に於ける含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp0(0、0、t)の時間変化は図14(a)のようになる。これらの図が示すように、照射野Fi内の如何なる位置においても如何なる時点においても含フッ素系高分子膜基材1の温度は340±5℃の範囲に収まっている。
電子線Eの強度が定められた場合において、多数の冷媒噴出口26−1、27−1から含フッ素系高分子膜基材1に吹き当てられる不活性ガスの温度及び/又は流量及び/又は流速は、図1(a)の矢印23,24で示している方向の温度を非接触温度計21,22で測定して温度分布が適正になるように図示しないガス供給制御装置に帰還して自動的に制御される。また、上述の場合には20.5秒間の一回の照射で含フッ素系高分子膜基材1に与えられる線量は210kGyに相当する。電子線Eの強度を増すとともに、多数の冷媒噴出口26−1、27−1から含フッ素系高分子膜基材1に吹き当てられる不活性ガスによる含フッ素系高分子膜基材1の冷却を増加させることによって温度を変化させること無く、含フッ素系高分子膜基材1に与える線量率を任意に増加することができる。この場合、照射野Fi内での含フッ素系高分子膜基材1への熱の流入と流出が等しくなるように電子線の強度と不活性ガスによる冷却の少なくとも一方が制御される。
照射野Fi内における含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp0(x、y、t)を予め定めたれた設定温度に保つ為の、電子線Eの線量率Rと、多数の冷媒噴出口26−1、27−1から含フッ素系高分子膜基材1に吹き当てられる不活性ガスと含フッ素系高分子膜基材1との間の熱伝達係数Kとの関係を図15に示している。図15において、曲線(1)は含フッ素系高分子膜基材1の照射野Fi内に位置する部分の温度Tp0(x、y、t)を340℃に保つ場合を、曲線(2)は含フッ素系高分子膜基材1の照射野Fi内に位置する部分の温度Tp0(x、y、t)を200℃に保つ場合を、曲線(3)は含フッ素系高分子膜基材1の照射野Fi内に位置する部分の温度Tp0(x、y、t)を124℃に保つ場合を示している。曲線(2)及び曲線(3)の場合には、加熱用ヒータ群30の温度制御は図6から図10に示した値とは異なったそれぞれの適正値に再設定しなければならない。これらの曲線から分かるように、熱伝達係数Kを大きくすることによって、含フッ素系高分子膜基材1の照射野Fi内に位置する部分の温度Tp0(x、y、t)を予め定められた設定温度範囲に収めた状態で、大きな線量率Rで電子線Eを短時間に照射することができる。例えば、含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp0(x、y、t)を340℃に保つ場合に、熱伝達係数Kを0.016W/(cm2*deg)に設定すると適切な電子線Eの線量率Rは200kGy/秒となる。この場合、200kGyの照射を行うのに1秒間で終了することになり、照射野幅FWを10cmとすると、1時間に360mの含フッ素系高分子膜基材1の照射処理が終了する。
以上に述べたように、電子線Eを照射する前後に照射野Fiの範囲内において含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp1(x、y、t)をY軸方向に一様に340±5℃の範囲に保つことは、ヒータ要素H(i,j)の表面温度Th(i,j,t)をY軸方向に原点から離れるに従って適正化して高めることによって達成している。電子線Eを照射する間に照射野Fiの範囲内において含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp0(x、y、t)をY軸方向およびX軸方向に一様に340±5℃の範囲に保つことは、照射野Fiの中心に近接するヒータ要素H(i,j)の表面温度を適正に保つとともに、含フッ素系高分子膜基材1の照射野Fiに位置する部分の表面を不活性ガスの強制対流によって冷却し、この冷却によって放出される熱量に相当する熱量を有する電子線Eを同じ場所に照射することによって達成している。この際、電子線Eによって加熱される温度上昇率のX軸方向分布及びY軸方向分布を、不活性ガスの吹き付けによって低下する含フッ素系高分子膜基材1の温度低下率のX軸方向分布及びY軸方向分布にそれぞれ一致させることによって、電子線Eの照射時間が長くなった場合にも、含フッ素系高分子膜基材1の温度Tp0(x、y、t)をX軸方向及びY軸方向に一様に340±5℃の範囲に保てるようになっている。含フッ素系高分子膜基材1の表面温度をフィードバックして電子線Eの強度と不活性ガスの吹き付け量との関係を経時的に自動制御する事がより好ましい。
本発明を実施形態及び実施例に関連して説明したが、本発明は、ここに例示した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、いろいろな実施形態が可能であり、いろいろな変更及び改変を加えることができることを理解されたい。例えば、上記の実施例では、各ヒータ要素H(i,j)の温度を空間的又は時間的にプリセットしている場合を示しているが、コンピュータ等を使用して自動制御することも出来る。図8(b)に示した時間関数を吸収線量の積算値に応じて変化させることにより、含フッ素系高分子膜基材1が受けた吸収線量の積算値に応じて照射時の設定温度範囲を変化させ電離放射線を照射する時の温度を経時的に最適化できる。本発明は、含フッ素系高分子膜に放射線照射によって種々のモノマーをグラフと重合させる場合にも適用されることは当然である。本発明においては、高温放射線処理されていない含フッ素系高分子膜は、処理後の膜と区別する為に原則的に含フッ素系高分子膜基材と称しており、前記照射野は前記含フッ素系高分子膜基材が前記電離放射線の照射を受ける空間範囲を意味しており、前記電離放射線が前記含フッ素系高分子膜をはみ出している部分は含んでいない。電子線強度は吸収された電子線のパワーを意味しており、エネルギーが一定である場合には電流に比例した値となる。ここに例示した実施形態及び実施例では電子線を照射する場合について記しているが、これに限定されているわけではなく、他の電離放射線の照射を行う場合も含むことは当然である。
本発明を採用すると、大面積の含フッ素系高分子膜基材を照射野内の実質的に全ての範囲にわたってかつ処理の全時間中にわたって常に最適に定められた設定温度範囲内の温度に保った状態で酸素不在環境下において電離放射線を大きな線量率で照射することができ、安定した品質の架橋構造を有する含フッ素系高分子膜を短時間に大量に且つ安価に生産することができる。本発明を採用して生産された安価で高品質の架橋構造を有する含フッ素系高分子膜を基材として用いることにより、優れた耐酸化性と広範囲なイオン交換容量を有する含フッ素系高分子イオン交換膜を安価に大量生産できるようになり、結果として高性能で安定動作をする長寿命の燃料電池を安価に生産できるようになるので産業上の利用価値は極めて高い。また、本発明によって得られた改質含フッ素系高分子膜は耐放射線性を付与されるために放射線環境下での工業材料としてまたは放射線滅菌が可能な医療用具素材として産業上の利用価値は極めて高い。
本発明に係わる恒温電子線処理装置を縦断面図で表した図である。
本発明に係わる恒温電子線処理装置を横断面図で表した図である。
本発明に係わる恒温電子線処理装置の要部を表した平面図及び縦断面図及び横断面図である。
本発明に係わる恒温電子線処理装置の要部の一部である仕切板の構造を表した図である。
本発明に係わる恒温電子線処理装置の要部の一部である加熱用ヒータ群の平面図及び側断面図を表した図である。
本発明に係わる作用を説明する図であり、急加熱タイミングT1に於ける各ヒータ要素の発熱量を示す図である。
本発明に係わる作用を説明する図であり、保温タイミングT2に於ける各ヒータ要素の発熱量を示す図である。
本発明に係わる作用を説明する図であり、電子線の強度を制御する正規化した時間関数及び各ヒータ要素の発熱量を制御する正規化した時間関数を示す図である。
本発明に係わる作用を説明する図であり、各ヒータ要素の表面の温度変化を示す図である。
本発明に係わる作用を説明する図であり、各ヒータ要素の表面温度の空間分布を表す図である。
本発明に係わる作用を説明する図であり、電子線強度分布及びこの電子線を照射した場合における含フッ素系高分子膜基材の長手方向における温度分布を示す図である。
本発明に係わる作用を説明する図であり、照射野に不活性ガスを吹き付けた状態で電子線Eを照射しない場合における含フッ素系高分子膜基材の温度分布を示す図である。
本発明に係わる作用を説明する図であり、照射野に不活性ガスを吹き付けた状態で電子線を照射した場合における含フッ素系高分子膜基材の温度の空間分布及びその時間変化を示す図である。
本発明に係わる作用を説明する図であり、含フッ素系高分子膜基材の温度の時間変化を示す図である。
本発明に係わる作用、効果を説明する図であり、含フッ素系高分子膜基材の温度を予め定めた温度に保つ場合における、電子線の線量率と、照射野内における不活性ガスと含フッ素系高分子膜基材表面との間の熱伝達係数との関係を表した図である。
符号の説明
1 含フッ素系高分子膜基材
2 リール
3 リール
4 プーリー
5 冷却用プーリー
6 冷却用プーリー
7 プーリー
8 プーリー
10 恒温電子線処理装置
11 処理容器
12 電子線照射装置
13 電子線透過窓
14 熱遮蔽板
15 電子線透過窓
16 隔壁
17 ノズル
18 ノズル
19 ノズル群
20 ノズル群
21 温度検出器
22 温度検出器
23 温度検出方向を示す矢印
24 温度検出方向を示す矢印
25 仕切板
26 冷媒通路
26−1 冷媒噴出口
27 冷媒通路
27−1 冷媒噴出口
30 加熱用ヒータ群
E 電子線
Fi 照射野
FL 照射野長
FW 照射野幅
T1 急加熱タイミング
T2 保温タイミング
T3 ビーム照射タイミング
Win 切抜穴