JP2006327003A - ハイバリア生分解性樹脂フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 フィルムに設けられた蒸着膜の厚みの割には、フィルム全体の酸素透過度が低くできる、ハイバリア性で生分解性の樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】 生分解性樹脂からなって酸素透過率が10〜10000cc・μm/(m2・day・atm)の層を少なくとも一層含む基材フィルムと、無機蒸着膜とが積層されている生分解性フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ハイバリア性で生分解性の樹脂フィルムに関し、特に蒸着膜の形成によりハイバリア化された生分解性の樹脂フィルムに関する。
環境問題への関心が近年高まる中で、環境への負荷を低減して、自然環境を保護するために、廃棄後に自然環境下で分解する生分解性プラスチックが求められるようになっている。一方で被包装物の変質や腐敗を抑制しその保存期間を向上させるためにガスバリア性に優れるフィルムが食品分野を中心にして化学薬品、更には、エレクトロニクス部品等の包装用として要求されている。あいにく、今まで開発されている生分解性プラスチックの多くはガスバリア性が十分なものとは言えない。
そこで、生分解性プラスチックの中でガスバリア性向上のために、ポリ乳酸等フィルムの表面に蒸着処理により無機物膜を設ける提案がいくつかなされている(例えば、特許文献1〜5)。ただし、無機物蒸着処理を行ってもその性質上基材フィルムのガスバリア性が反映されるため、得られた生分解性フィルムであるポリ乳酸等フィルムの蒸着フィルムのガスバリア性、例えば、フィルム全体としての酸素透過度(以下、OTR2ということがある)は必ずしも十分なものではない。
具体的には、蒸着物がアルミニウムあるいは酸化珪素物で蒸着膜厚みが400〜450Åで3cc/(m2・24h・atm)(特許文献1、2)であり、蒸着物が酸化アルミニウムあるいは酸化珪素物で蒸着膜厚みが500Åの場合で1.6cc/(m2・24h・atm)(特許文献3)である。これらから、通常なされる蒸着膜厚みが600〜650Å以下の範囲では酸素透過度(OTR2)を1cc/(m2・24h・atm)程度あるいはそれ以下にすることは困難と考えられる。さらに蒸着膜を厚くした場合、例えば、蒸着物を酸化アルミニウムあるいは酸化珪素物とし蒸着膜厚みを1000Åとしても、酸素透過度は1.0〜1.4cc/(m2・24h・atm)(特許文献3〜4)に留まり、蒸着物を酸化アルミニウムおよび酸化珪素物の混合物とし蒸着膜厚みが700Åとした場合に、ようやく酸素透過度が0.9cc/(m2・24h・atm)(特許文献5)となる。つまり、特定の蒸着物を用いて、かつ蒸着膜厚みを700Å以上と厚くすることで、ようやく酸素透過度が1cc/(m2・24h・atm)程度あるいはそれ以下のフィルムが得られている。
内容物や保存環境により要求される酸素バリアの要求性能は様々であり、包装フィルムの酸素透過性もそれに従い設計されればよいから、必ずしも酸素透過度(OTR2)が1cc/(m2・24h・atm)以下のフィルムでなければならないわけではない。しかし、上記のような厚い蒸着膜では、膜の剛性が高くなることにより、フィルムの折り曲げや加えられる衝撃により蒸着膜にピンホール等の破壊が生じやすくなるために問題が生じる。また、例えば、3cc/(m2・24h・atm)のものを設計する場合にも、蒸着膜厚みの薄い方が、フィルムの耐酷使性が上がるだけでなく、蒸着コストも低減できるので好ましい。
特開平2003−145667号公報 特開平2005−53223号公報 特開平2000−103005号公報 特開平2000−103006号公報 特開平2000−94573号公報
本発明は、樹脂フィルムに設けられた蒸着膜の厚みの割には、樹脂フィルム全体の酸素透過度が低くできる、ハイバリア性で生分解性の樹脂フィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記のとおりである。
(1)生分解性樹脂からなって酸素透過率が10〜10000cc・μm/(m2・day・atm)の層を少なくとも一層含む基材フィルムと、無機蒸着膜とが積層された生分解性フィルム。
(2)前記生分解性樹脂フィルムの酸素透過度をXcc/(m2・day・atm)、前記無機蒸着膜の厚みをYÅとしたとき、前記Xと前記Yとが、以下の式(I)を満たす上記(1)に記載の生分解性フィルム。
X<800/Y (I)
(3)前記Xが、3cc/(m2・day・atm)以下である上記(2)に記載の生分解性フィルム。
(4)前記無機蒸着膜の厚みが、700Å以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の生分解性フィルム。
(5)前記生分解性樹脂からなる層が、ポリ乳酸系樹脂を10重量%以上含む層である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の生分解性フィルム。
(6)前記生分解性樹脂からなる層が、ポリエチレンサクシネート系樹脂を10重量%以上含む層である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の生分解性フィルム。
(7)前記生分解性樹脂からなる層が、ポリエチレンサクシネート系樹脂を5重量%以上で、かつポリ乳酸系樹脂を10重量%以上含む層である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の生分解性フィルム。
(8)前記生分解性樹脂からなる層が、無機フィラーを0.1〜40重量%含有する層である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の生分解性フィルム。
(9)前記無機フィラーが、層状ケイ酸塩である上記(8)記載の生分解性フィルム。
(10)前記基材フィルムが、インフレーション法によって製膜されたものである上記(1)〜(9)のいずれかに記載の生分解性フィルム。
蒸着膜厚みを従来ほど厚くしなくても、望ましい酸素バリア性を発揮する生分解性の樹脂フィルムが得られる。一方、蒸着膜厚みを従来並に厚くした場合は、特に優れた酸素バリア性を発揮する生分解性の樹脂フィルムが得られる。
本発明の生分解性フィルムは、基材フィルムと、無機蒸着膜とが積層されて一体化されている。このようにすることでフィルムに求められる引っ張り強度等の機械的強度と、酸素バリア性等のバリア性とを両立させることが可能になる。無機蒸着膜は、基材フィルムの一方の表面上に形成されるのが好ましいが、両面に設けてもよい。また、基材フィルムの表面上に直接形成されるのが好ましいが、基材フィルムとの間に介在層を設け、介在層の上に蒸着膜を形成しても良い。いずれにせよ、基材フィルムと無機蒸着膜とは積層されると共に一体化されて、生分解性フィルムとなる。
基材フィルムは、生分解性樹脂からなる特定の層を少なくとも一層有し、その特定の層は、酸素透過率(以下、OTR1と略すことがある)が10〜10000cc・μm/(m2・day・atm)であることが必要である。この特定の層を設けることにより、無機蒸着膜の厚みを薄くしても、フィルム全体の酸素バリア性を高く維持することが可能になる。基材フィルムには、生分解性の他の層を積層してもよい。
特定の層の酸素透過率(OTR1)は、10000cc・μm/(m2・day・atm)よりも大きい場合には、フィルム全体としての所望の酸素バリアを得るための蒸着膜厚みもしくは基材フィルムの厚みが過大となり、耐酷使性に劣るうえ、蒸着処理が煩雑で不経済となる。好ましい酸素透過率(OTR1)は、7000cc・μm/(m2・day・atm)以下であり、より好ましくは5000cc・μm/(m2・day・atm)以下であり、更に好ましくは3500cc・μm/(m2・day・atm)以下であり、最も好ましくは2500cc・μm/(m2・day・atm)以下である。
また、酸素透過率(OTR1)が、10cc・μm/(m2・day・atm)未満であれば、それ自体で十分にハイバリア性であるため、コストのかかる無機蒸着膜をわざわざ形成する必要がなくなる。つまり、10cc・μm/(m2・day・atm)が、無機蒸着膜を設けることが必要となる場合の、酸素透過率(OTR1)の下限となる。このような観点から、酸素透過率(OTR1)の下限は、好ましくは30cc・μm/(m2・day・atm)であり、より好ましくは50cc・μm/(m2・day・atm)であり、さらに好ましくは100cc・μm/(m2・day・atm)であり、最も好ましくは300cc・μm/(m2・day・atm)である。
本発明の生分解性フィルムは、フィルム全体としての酸素透過度(以下、OTR2と略すことがある)をXcc/(m2・day・atm)、形成された無機蒸着膜の厚みをYÅとすると、以下の関係式(I)を満たしていることが望ましい。この式(I)は、フィルム全体としての酸素透過度(OTR2)と無機蒸着膜の厚みとを同時に、従来より小さくできることを意味する。また、どちらか一方を小さくした場合には他方が大きくなるのであるが、その場合でも、従来のフィルムの場合より他方を小さくできることを意味している。
X<800/Y (I)
関係式(I)は、より好ましくはX<650/Yであり、さらに好ましくはX<550/Yであり、さらに好ましくはX<450/Yであり、最も好ましくはX<350/Yである。
また、多くの場合、生分解性フィルムの酸素透過度(OTR2)は3cc/(m2・day・atm)以下であることが好ましく、より好ましくは2cc/(m2・day・atm)、更に好ましくは1cc/(m2・day・atm)、最も好ましくは0.6cc/(m2・day・atm)以下である。
基材フィルムの特定の層の酸素透過率を上記の範囲にするために用いることができる生分解性樹脂としては、ポリサクシネート系樹脂やフィラーを混合したポリ乳酸系樹脂、生分解性を有する特定の脂肪族ポリエステル樹脂、内部可塑化ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。中でも、基材フィルムに求められる機械的強度の観点から、上記のポリ乳酸系樹脂を用いるのが好ましい。
ポリ乳酸系樹脂は、ポリ乳酸単独重合体または乳酸単位を50重量%以上含有する共重合体であって、ポリ乳酸単独重合体または、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸およびラクトン類等からなる群より選ばれる化合物との共重合体であることが好ましい。また、製造段階における加工温度が、乳酸によるエステル結合の熱劣化の点から230℃未満であるものが好ましい。ポリ乳酸系樹脂におけるポリ乳酸単独重合体または乳酸単位の含有量は、フィルムの耐熱性および透明性の観点から50重量%以上であり、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは、90重量%以上であり、乳酸の単独重合体又は乳酸と他の単位との共重合体等の組成物である。
乳酸には、光学異性体としてL−乳酸とD−乳酸が存在し、それらが重合してできるポリ乳酸には、D−乳酸単位が約10重量%以下でL−乳酸単位が約90重量%以上、又はL−乳酸単位が約10重量%以下でD−乳酸単位が約90重量%以上であるポリ乳酸で、光学純度が約80重量%以上の結晶性ポリ乳酸と、D−乳酸単位が10重量%〜90重量%でL−乳酸単位が90重量%〜10重量%であるポリ乳酸で、光学純度が約80重量%以下の非晶性ポリ乳酸とがあることが知られている。光学純度が85重量%以上の結晶性ポリ乳酸単独、又は光学純度が85重量%以上の結晶性ポリ乳酸と光学純度が80重量%以下の非晶性ポリ乳酸とからなる混合物が好ましい。
乳酸との共重合成分として用いられる単量体として、例えば、以下のものが使用できる。ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。また、脂肪族環状エステルとしては、グリコリド、ラクチド、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンおよびこれらにメチル基などの種々の基が置換したラクトン類等が挙げられる。また、ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等、多価アルコールとしては、ビスフェノール/エチレンオキサイド付加反応物などの芳香族多価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂の重合方法としては、縮合重合法、開環重合法などの公知の方法を採用できる。また、ポリイソシアネート、ポリエポキシ化合物、酸無水物、多官能酸塩化物などの結合剤を使用して分子量を増大する方法を用いることもできる。
ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は10000〜1000000の範囲が好ましい。分子量が10000以上では機械的物性の優れたフィルムが得られ、1000000以下だと溶融粘度が低く、通常の加工機械で物性の安定したフィルムが得られる。ポリ乳酸系樹脂は他の生分解性樹脂に比べて、曇り度(ASTM−D1003−95に準拠)が約4%未満、及び、光沢度(ASTM−D2457−70に準拠:45度)が130%以上、引張弾性率(ASTM−D882−95aに準拠)が約3〜5GPaと透明性や光沢性と剛性に優れており、特に、それを延伸又は熱処理加工した製品は、引張破断強度(ASTM−D882−95aに準拠)が約70〜300MPaと機械的強度が強く、フィルムを蒸着処理をするのに適しており、基材フィルムの生分解性樹脂からなる特定の層に10%以上含まれることが好ましい。
特定の層の生分解性樹脂としてポリ乳酸系樹脂を用いる場合、通常のポリ乳酸樹脂単体を用いるだけでは、層の酸素透過率(OTR1)は10000〜25000cc・μm/(m2・day・atm)程度であり、酸素バリア性に劣るか若しくは蒸着膜の厚みが厚い生分解性フィルムしか得られない。そのため、ポリ乳酸樹脂に対してポリエチレンサクシネート系樹脂または無機フィラーを添加することにより、酸素透過率(OTR1)を下げるようにする。このようにして得られた生分解性樹脂からなる特定の層を有する生分解性フィルムは、その機械的な強度や生分解性などの諸物性のバランスが優れるため好ましい。詳しくは後述する。
また、特定の層の生分解性樹脂として用いることができる脂肪族ポリエステル樹脂としては、JIS−K6950(2000)又はJIS−K6951(2000)又はJIS−K6953(2000)又はOECD−301C又はISO−17556の少なくともどれか1つに準拠して測定した生分解度が各試験法記載期間内で60%(理論値)以上であるものが挙げられる。具体的には、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸等から選ばれる炭素数2〜6の脂肪族ジカルボン酸単位と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール等から選ばれる炭素数2〜3の脂肪族グリコール単位の和を50重量%以上有し、好ましくは80重量%以上有する、融点Tm(JIS−K7121に準拠)が200℃以下の結晶性の生分解性ポリマーであることが好ましい。ここで、脂肪族ポリエステル中の脂肪族ジカルボン酸単位と脂肪族グリコール単位は、モル比で1:1であることが好ましい。
中でも好ましく用いられるのは、コハク酸単位及びエチレングリコール単位を主成分(合計80重量%以上)として得られるポリエチレンサクシネート系樹脂である。特に好ましい例としては、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートに第3成分として5重量%未満のアジピン酸を共重合したポリ(エチレンサクシネート/アジペート)等が挙げられる。このものは引張破断強度(ASTM−D882−95aに準拠)が約10〜100MPaと機械的強度はポリ乳酸系樹脂よりも弱いが、酸素透過率(OTR1)は約500〜10000cc・μm/(m2・day・atm)と好ましいものである。ポリエチレンサクシネート系樹脂は、基材フィルムの特定の層の生分解性樹脂に10重量%以上含まれることが好ましい。
脂肪族ポリエステルの融点Tm(JIS−K7121に準拠)は、熱シール性の良好な生分解性樹脂との溶融混練や共押出加工等が容易で、これらに関わる熱劣化や流れ斑等の問題がないことから200℃以下とするのがよい。また、脂肪族ポリエステルには、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸、グリコリド、ラクチド、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンおよびこれらにメチル基などの種々の基が置換したラクトン類等の脂肪族環状エステル単量体等を、共重合成分として更に用いてもよい。
基材フィルムの特定の層の生分解性樹脂として用いることができる内部可塑化ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂の酸素バリア性の高さを備え、さらに変性により押出適性を改良したものであり、酸素透過率(OTR1)は約2000〜7000cc・μm/(m2・day・atm)と好ましいものである。具体的には、日本合成化学(株)社製のエコマティAX(商品名)が挙げられる。
基材フィルムの特定の層の生分解性樹脂として最も好ましいのは、上記のポリ乳酸系樹脂と上記のポリエチレンサクシネート系樹脂との組成物である。特定の層の生分解性樹脂におけるポリ乳酸系樹脂の重量分率(重量%)をXA、ポリエチレンサクシネート系樹脂の重量分率(重量%)をXBとした場合に、この酸素透過率(OTR1)であるOcは、下記式(II)で表されるポリ乳酸系樹脂の酸素透過率OAと、ポリエチレンサクシネート系樹脂の酸素透過率OBとの調和平均値OHより、驚くべきことに小さくなることがわかった。つまり、理由は不明であるが樹脂のガスバリア性が向上していると考えられる。
H=[(100×OA×OB)/(OA×XB+OB×XA)] (II)
このような酸素透過率(OTR1)低下の相乗作用を効果的に出すためには、特定の層の生分解樹脂におけるポリ乳酸系樹脂を10%重量以上でポリエチレンサクシネート系樹脂を5重量%以上含有することが好ましい。より好ましくはポリ乳酸系樹脂を20重量%以上でポリエチレンサクシネート系樹脂を10重量%以上含有し、さらに好ましくはポリ乳酸系樹脂を40重量%以上でポリエチレンサクシネート系樹脂を20%以上含有し、最も好ましくはポリ乳酸系樹脂を50重量%以上でポリエチレンサクシネート系樹脂を25重量%以上含有する。
基材フィルムの特定の層の酸素透過率(OTR1)を低下させる手段としては、無機フィラーを充填することが挙げられる。無機フィラーとしてはタルク、炭酸カルシウム、二酸化珪素、二酸化チタン、雲母、クレーなどが使用され、これによりフィルムの弾性率やバリア性、耐熱性の向上を達成する。バリア性向上の観点からはトーチャスパス効果により扁平状のものが効果的であり、層状ケイ酸塩が好ましく使用される。特定の層の生分解性樹脂における無機フィラーの添加量としては、0.1〜40重量%が好ましい。この範囲で、酸素透過率が望ましい値をとる。より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは1.5〜10重量%、最も好ましくは2〜6重量%である。
ポリ乳酸や脂肪族ポリエステル樹脂と層状珪酸塩等の無機フィラーの分散性を更に向上させるために、ポリ乳酸や脂肪族ポリエステル樹脂と層状珪酸塩の双方と親和性があり、沸点が250℃以上、かつ数平均分子量が200〜50000であるポリエアルキレンオキシド、脂肪族ポリエステル、多価アルコールエステル、多価カルボン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を相溶化剤として添加することができる。
基材フィルムは、上述の生分解性樹脂組成物からなる特定の層を少なくとも1層含む共押出成形等の熱溶融成形によって得ることができる。基材フィルムを複層とすることもできるが、その場合でも全体を生分解性樹脂を用いて作成し、少なくとも一層を上記の生分解性樹脂からなる特定の層とするのがよい。
基材フィルムを構成する1または2以上の各層には、本発明の目的を逸脱しない範囲で、熱可塑性の澱粉系ポリマー、微生物によって生産された脂肪族ポリエステル系樹脂、化学合成による脂肪族ポリエステル系樹脂、及びそれらの化学構造を一部変性したタイプの樹脂、生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂、およびこれらの樹脂に可塑剤を加えた樹脂、これらの樹脂同士をブレンドした樹脂混合物、具体的にはポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリエチレンサクシネート、ポリ(エチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンテレフタレート/アジペート)などの生分解性樹脂を使用することができる。また、改質剤として少量の非生分解性樹脂を使用することができ、例えばポリ乳酸系樹脂の改質剤として、ポリメチルメタクリレートを使用することができる。このポリ乳酸系樹脂とポリメチルメタクリレートのブレンド品はトヨタ自動車(株)製のTOYOTA Hybrit−PLAを挙げることができる。
基材フィルムは、ASTD D882に準拠して測定した引張強度がフィルムの長手方向(以下、MD方向という)、幅方向(以下、TD方向という)共に15MPa以上であることが好ましい。より好ましくは30MPa以上のフィルムであり、さらに好ましくは35MPa以上のフィルムである。フィルムの引張強度を高くするには、引張強度の高いポリマーを選択したり、製膜時により大きな倍率で延伸配向を行なったりすればよい。
生分解性フィルムにおいて後述する珪素酸化物や酸化アルミニウム等の透明蒸着を行い、その目的が内容物の視認性の場合、それに用いる基材フィルムは、ASTM D1003−95に準拠して測定した曇り度(Haze)が40%以下であることが好ましい。より好ましくはHazeが30%以下のフィルムであり、更に好ましくはHazeが20%以下のフィルムである。Hazeが40%以下だとフィルムの透明性が高い。Hazeが40%以下であるフィルムを得るためには、1)製膜時にフィルムを急冷したり、核剤を添加するなどの方法でフィルム中にできる球晶をできるだけ小さくする方法、2)ポリマーブレンド層において海島のミクロ相分離状態を形成する方法において、島となるドメインの大きさを可視光線の波長以下である300〜350nmより小さくするために混練性の良い二軸押出機を用いて混練する方法や、ブレンドするポリマーの粘度をコントロールして選択したり、相容化剤を使用するなどの方法を併用しても良い。
ただし、透明蒸着を目的としないアルミ蒸着の場合はこの限りではない。また、上記珪素酸化物や酸化アルミニウム等の透明蒸着を行う場合であっても、例えば、金属探知機や電子レンジ加熱に対応するためにすぎず、内容物の視認性が特に要求されない場合などもこの限りではない。
基材フィルムの各層には、上記の樹脂を用いる他に、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防曇剤、帯電防止剤、防錆剤などの公知の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で配合することが可能である。特にフィルムに柔軟性が必要となる用途の場合には、必要に応じて可塑剤などを添加してフィルムに柔軟性を付与することが好ましい。可塑剤としては、当業界で一般に用いられているものから選択使用でき、樹脂組成物に10重量%程度添加してもブリードアウトしないものが好ましい。例えば、脂肪族多価カルボン酸エステル、脂肪酸多価アルコールエステル、オキシ酸エステル、エポキシ系可塑剤等が含まれる。具体例としては、トリアセチン(TA)、トリブチリン(TB)、ブチルフタリルブチルグリコレート(BPBG)、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、ジオクチルセバケート(DBS)、トリエチレングリコールジアセテート、グリセリンエステル類、オレイン酸ブチル(BO)、アジピン酸エーテル・エステル、エポキシ化大豆油(ESO)、等が挙げられる。
なお、基材フィルムに使用する原料樹脂としては、上記したバージン原料以外に該樹脂製膜時に発生するトリム屑等を再度加工してペレット化、又は微粉化したリサイクル原料を単独で、又は該バージン原料に混入して使用することができる。
次に、基材フィルムの製造方法について述べる。基材フィルムは、Tダイより冷却ロールにキャストされる方法、インフレーション法、テンター法などの従来公知の製膜方法にて製膜すれば良く、さらに必要により一軸延伸、或いは、同時又は逐次二軸延伸してもよい。詳しくは、(1)押出されたチューブ状またはシート状の樹脂を溶融状態からインフレーション法又はキャスト法により溶融延伸して製膜する方法、(2)押出されたチューブ状又はシート状の樹脂を溶融状態から急冷して非晶状態に近い状態で固化させた後、続いてそのチューブ状又はシート状の樹脂をガラス転移温度以上融点以下に再加熱してインフレーション法又はロール・テンター法で延伸する冷間延伸法で製膜する方法、或いは溶融延伸又は冷間延伸の後にフィルム熱収縮性の抑制の為にフィルムを把持した状態で通常70〜160℃の温度範囲で熱処理を行ってフィルムを得る方法等によって得られる。
フィルムの延伸倍率としては、延伸方法に関わらず、押出し口金(ダイリップ)間隔に対して、最終のフィルムの厚みが1/200〜1/40の範囲になる様に、少なくとも1軸方向に溶融延伸または冷間延伸することが好ましい。
殊に、冷間延伸法において、溶融状態から急冷し非晶状態に近い状態で固化させたもの(以下、パリソンと呼ぶ)を再加熱後に冷間延伸する場合は、ポリ乳酸系樹脂を溶融状態にて押出し、口金(ダイリップ)間隔に対してパリソンの厚みが1/2倍〜1/20倍の範囲になる様に、面積倍率で2倍〜20倍になる様に少なくとも1軸方向に溶融延伸後に、パリソンに対してMD方向及びTD方向それぞれに1.5〜6倍冷間延伸して、最終的にダイリップ間隔に対して延伸フィルムの厚みが1/200倍〜1/40倍の範囲になる様に、ダイ出口からの面積倍率で40倍〜200倍の範囲になる様に少なくとも1軸方向に延伸することが好ましい。(以下、押出し口金(ダイリップ)出口直後のフィルム又はシートの面積/最終の延伸フィルム又はシートの面積の比を、「ダイ出口からの面積倍率」という。)ダイ出口からの面積倍率で40倍以上ではポリ乳酸系樹脂と脂肪族ポリエステルの分散状態が良好になり、ガスバリア性や透明性が向上する。一方、ダイ出口からの面積倍率が200倍以下であれば、延伸安定性が維持され、 安定した製膜が行なえる。
好ましい製造方法はインフレーション法である。このインフレーション法のメリットは設備費が比較的安価で操作が容易であること、適用樹脂の範囲が広いこと、大量生産には向かないが、中規模の生産、多品種な生産に適すること、成形条件をコントロールすることでフィルムのMD方向およびTD方向のバランスの取れたフィルムが得られること、Tダイ法に比べて耳ロスが少ないこと、チューブ状で得られるので包装用の袋としてシームレスの袋が得られ、底シールのみでよく便利であること、一端を切り開いて広幅のフィルムにもでき、また両端を切って2枚のフィルムにすることもできること、空気の吹き込み量の調整でフィルム幅を広範囲に変えられることなどである。
また、テンター法による製膜技術は、インフレーション法に比べてフィルムの厚み斑が少なく、また単位時間あたりの生産量を大きくできる点、およびフィルムの厚みが厚い場合にはテンター法でないと製膜できない点でインフレーション法に比べて有利であるが、設備建設費はインフレーション法の設備に比べて数倍以上となり、また、少品種大量生産には向くが、フィルムの市場規模が比較的小さく、多品種少量生産の必要な場合、および厚みが薄くなりインフレーション法が適用できるようになるとインフレーション法が経済的に有利になってくる。
基材フィルムをインフレーション法で得るためには、原料となる生分解性ポリマーを所定の樹脂組成、樹脂温度、樹脂押出量に設定し、注入する空気量、ダイ出口のフィルム冷却速度およびできたフィルムを巻き取る速度をピンチロールの回転速度でコントロールするなどして目的とする厚さのフィルムを得る。多層フィルムを得るためには、多層ダイを用いて、各層の樹脂組成、押出機の押出速度をコントロールして、上記と同様にして目的とする厚さ、組成、層構成の多層フィルムを得る。
基材フィルムは、蒸着処理等の後工程で熱収縮を起こさないように、製膜後に熱処理を行なう方が好ましい。その方法としては、インフレーション法で製膜されたフィルムであれば、製膜後に内部に気体を密封して圧力を保持し、フィルムを緊張状態にしたまま外部より熱風等で加熱、熱処理する方法、または一旦フラットフィルムに切り出した後にクリップで両端を把持した状態で熱処理ゾーンを通過させる方法、または熱ロールに接触させて熱処理する方法等が挙げられる。Tダイキャスト法であれば、そのまま、クリップで両端を把持した状態で熱処理ゾーンを通過させる方法、または熱ロールに接触させて熱処理する方法などがある。好ましい熱処理条件としては、フィルムのガラス転移温度Tg以上、融点Tm以下の温度範囲で、1秒以上熱処理する方法が挙げられ、特に好ましくはTg+5℃以上、融点以下の温度範囲で2秒以上熱処理する方法である。熱収縮率を下げる目的で、TD方向、及び/又はMD方向に張力を緩和させて熱処理することも熱収縮率を低下させるのに有効である。
基材フィルムを複層とする場合は、例えば、特定の層に対し、さらに剛性を向上させるためにポリ乳酸系樹脂を主体とする層等を共押出しもしくはラミネート処理により積層することができる。また、基材フィルムは必要に応じ、印刷処理等がなされてもよいし、またドライラミネート、押出ラミネート等により印刷フィルム、シーラントフィルム等がラミネートされてもよい。
基材フィルムの製膜後の厚みは、好ましくは10〜200μmである。フィルム厚みが10μm以上だと、ガス保持性、シール強度、耐圧縮クリープ性、耐圧強度が高い。また、フィルム厚みが200μm以下だと、材料コストの点で経済的に有利になり、さらに、最終製品において柔軟性が向上して取り扱いやすくなる傾向にある。より好ましくは15〜150μmであり、特に好ましくは20〜130μmである。
基材フィルムの表面には、蒸着物の密着性を高めるために公知のアンカーコート剤をコートしても良い。この場合、フィルムの表面に均一に塗布するためには、塗布面となる基材フィルム表面をコロナ放電処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、により親水化処理することが好ましい。この親水化処理によって、アンカーコート剤膜の、アンカーコートしない場合は蒸着膜の密着性が向上する。その際の表面張力としては、400μN/cm〜600μN/cmの範囲が好ましい。さらに他の表面処理として薬品処理、溶剤処理、火炎処理、粗面化処理等がなされうる。
アンカーコート処理する場合のアンカーコートの厚みは好ましくは0.01〜5μm、更に好ましくは0.1〜2μmである。アンカーコート剤は公知のものが使用されるが基材の生分解後の環境問題に配慮して、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂から選ばれた1種以上で有ることが好ましい。
上記コート用樹脂の溶剤は公知のものが使用されるが、基材フィルムとの密着性からメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルより選ばれた1種以上を使用するのが好ましい。
本発明の生分解性フィルムは、上記の基材フィルムに蒸着処理がなされて、表面上に無機蒸着膜が形成されたものである。これにより、基材フィルムに用いられた特定の層の酸素透過率によるバリア性と相乗的に作用して、特に高いバリア性が実現される。
蒸着に用いられる無機物としては、アルミニウム、銀、インジウム、銅、クロム、ニッケル、チタン、酸化アルミニウム、硫化亜鉛、酸化ケイ素、およびそれらの合金等が挙げられる。好ましくは金属蒸着としてのアルミニウムや透明蒸着として知られる無機酸化物、すなわち、Al、AlO、Al23等から構成される酸化アルミニウム、Si、SiO、SiO2等から構成される珪素酸化物、およびそれらの混合物が好ましく使用される。
無機蒸着膜の厚みは、膜厚が薄すぎる場合には十分なバリア性が得られにくく、必要以上に厚い場合は耐屈曲性・耐酷使性が低下しやすく、また製造コストが上がり、かつ遮断性の向上効果が飽和するため実用的でない。好ましい無機蒸着膜の厚みは30〜700Åであり、より好ましくは50〜650Åであり、さらに好ましくは100〜600Åであり、最も好ましくは200〜550Åである。
無機蒸着膜の形成には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレート法の物理蒸着法あるいはプラズマ気相成長法(CVD)等の化学蒸着法等が適宜用いられる。このとき採用される加熱法としては、抵抗加熱、誘導加熱、電子線加熱等が挙げられる。反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いる反応性蒸着法を採用しても良い。また基材フィルムにバイアスを印加したり、蒸着法に応じて蒸着時の基材フィルムを加熱及び冷却などの蒸着条件を変更することも可能である。
このようにして得られた生分解性フィルムに、必要に応じ、印刷処理等をなしてもよいし、また、ドライラミネート、押出ラミネート等により、印刷フィルムやシーラントフィルム、無機蒸着膜の保護フィルム等がラミネートされてもよい。
以下、本発明について実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は、下記実施例の具体的態様に限定されるものではない。なお、実施例における測定方法および評価方法は次の通りである。
(1)特定の層の酸素透過率、生分解性フィルムの酸素透過度
いずれもASTM D3985の方法により測定した。測定条件は23℃、65RH%とした。なお、特定の層の酸素透過率(OTR1)は、樹脂をフィルム化して(厚み30μm)、得られた酸素透過量を単位面積、単位時間、単位圧力あたりに規格化された測定値に、そのフィルムの厚みを掛けた値とし、単位はcc・μm/(m2・day・atm)とした。また、生分解性フィルム全体に対する酸素透過度(OTR2)は、生分解性フィルムを用いて得られた酸素透過量から規格化された測定値をそのまま用い、単位はcc/(m2・day・atm)とした。
(2)蒸着膜厚み
フィルム断面を透過型電子顕微鏡により観察して測定した。
(3)曇り度(Haze)
ASTM D1003−95の方法により測定した。
次に、以下の実施例で使用した樹脂あるいは原材料をまとめて示す。
・PLA1:ポリ乳酸、商品名:ラクティ#5000(D−乳酸単位含量1重量%)、島津製作所(株)社製
・PLA2:ポリ乳酸、商品名:ラクティ#9030(D−乳酸単位含量4重量%)、島津製作所(株)社製
・PLA3:ポリ乳酸、商品名:ラクティ#9800(D−乳酸単位含量20重量%、非晶性)、島津製作所(株)社製
・PES1:ポリエチレンサクシネート、商品名:ルナーレSE−P3000D、(株)日本触媒製
・PES2:ポリ(エチレンサクシネート/アジペート)、商品名:ルナーレSE−P5000、(株)日本触媒製
・MMT:層状ケイ酸塩(層間がオクタデシルアンモニウム塩で置換されたモンモリロナイト、商品名:ODA−CWC、Nanocor社製)
・PCL:ポリカプロラクトンジオール、商品名:プラクセルL220AL、ダイセル化学工業(株)社製
[実施例1]
(基材フィルムの作成)
特定の層の生分解性樹脂として、表1に記載の成分を表1に記載の量比でドライブレンドして用い、これを単軸押出機より外側ダイリップ直径110ミリ、内側ダイリップ直径を105ミリ、リップクリアランス2.5ミリの単層の円筒ダイより押出し、チューブ状に押出された溶融樹脂に冷却リングより約25℃のエアーを吹き付けながらチューブ内へエアーを注入してチューブ状のバブルを形成した。得られたバブルをピンチロールへ導き、チューブ状のフィルムをフラット状2枚のフィルムに成形した。次いで、フィルム温度が75℃となるように加熱炉内温度を調整し、バブルが安定してから、樹脂押出速度、バブル中へのエアー注入量、ピンチロールにおけるフィルム巻き取り速度を微調整した。延伸工程に引き続き、両方向を拘束した状態でフィルム温度85℃で2秒間熱処理を行った後、巻き取りロールで巻き取り、片面プラズマ処理(グロー放電ガス:酸素、DC放電電力60W・分/m2、グロー放電圧力:2.0×10-2mbar)を行い、最終厚み30μmの単層フィルムを得て、基材フィルムとした(ダイ出口からの面積倍率は約83倍)。得られた基材フィルムの酸素透過率を測定し、OTR1(単位:cc・μm/(m2・day・atm))とした。さらに曇り度を測定し、これらの評価結果を同表に示した。
(アンカーコート処理)
蒸着処理に先立って、共重合ポリエステル系樹脂(東洋紡績(株)製のバイロン200(商品名))を1重量部をメチルエチルケトン25重量部に溶かしたアンカーコート剤を、コロナ処理面にドライ換算で0.1ミクロン厚みとなるように塗布し、65℃で乾燥した。なお、表1にはアンカーコート処理をACと記載した。
(蒸着処理)
続いて、電子ビーム加熱方式真空蒸着機により、アンカーコート処理面に厚み500Åのアルミニウム蒸着を行った。得られた蒸着フィルムの酸素透過度(OTR2:cc/(m2・day・atm))を表1に示した。このものは優れたバリア性を持っていることが分かる。
[実施例2〜5、比較例1]
表1に記載の成分を表1に記載の量比で用いた他は実施例1と同様にして、表1の蒸着膜厚みを持つ生分解性フィルムを得た。酸素透過率(OTR1)及び生分解性フィルムの酸素透過度(OTR2)を表1に示した。なお、MMTおよびPCLを使用するもの(実施例5)については、これらをあらかじめ樹脂とドライブレンドし、2軸押出機によりメルトブレンドして押出したストランドを冷却して一度ペレットを作成した後、実施例1に記載の押出機に投入した。また、製膜後の熱処理温度は表1記載の通りとした。
[実施例6]
特定の層の生分解性樹脂として、表1に記載の組成物を表1に記載の量比で用いた他は、実施例1と同様にして得られた基材フィルムに、電子ビーム加熱方式真空蒸着機において加熱したアルミニウムに酸素ガスを導入して酸化アルミニウム蒸着を行い、透明蒸着膜を有する生分解性フィルムを得た。なお、蒸着膜厚みは400Åであった。これに実施例1と同様な評価を行い、得られた結果を表1に示した。
[実施例7]
表1に記載の成分を表1に記載の量比で用いた他は実施例1と同様にして得られた基材フィルムに対し、電子ビーム加熱方式真空蒸着機により珪素および二酸化珪素を原料としてそれぞれを加熱して珪素酸化物蒸着を行い、透明蒸着膜を有する生分解性フィルムを得た。なお、蒸着膜厚みは300Åであった。これに対して実施例1と同様な評価を行い、得られた結果を表1に示した。
Figure 2006327003

Claims (10)

  1. 生分解性樹脂からなって酸素透過率が10〜10000cc・μm/(m2・day・atm)の層を少なくとも一層含む基材フィルムと、無機蒸着膜とが積層された生分解性フィルム。
  2. 前記生分解性樹脂フィルムの酸素透過度をXcc/(m2・day・atm)、前記無機蒸着膜の厚みをYÅとしたとき、前記Xと前記Yとが、以下の式(I)を満たす請求項1記載の生分解性フィルム。
    X<800/Y (I)
  3. 前記Xが、3cc/(m2・day・atm)以下である請求項2に記載の生分解性フィルム。
  4. 前記無機蒸着膜の厚みが、700Å以下である請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性フィルム。
  5. 前記生分解性樹脂からなる層が、ポリ乳酸系樹脂を10重量%以上含む層である請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性フィルム。
  6. 前記生分解性樹脂からなる層が、ポリエチレンサクシネート系樹脂を10重量%以上含む層である請求項1〜5のいずれかに記載の生分解性フィルム。
  7. 前記生分解性樹脂からなる層が、ポリエチレンサクシネート系樹脂を5重量%以上で、かつポリ乳酸系樹脂を10重量%以上含む層である請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性フィルム。
  8. 前記生分解性樹脂からなる層が、無機フィラーを0.1〜40重量%含有する層である請求項1〜7のいずれかに記載の生分解性フィルム。
  9. 前記無機フィラーが、層状ケイ酸塩である請求項8記載の生分解性フィルム。
  10. 前記基材フィルムが、インフレーション法によって製膜されたものである請求項1〜9のいずれかに記載の生分解性フィルム。
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JP2013022803A (ja) * 2011-07-20 2013-02-04 Toray Ind Inc ポリ乳酸系フィルム

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