JP2006324651A - シールド方法、シールド装置、電気電子機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気センサを用いることなく電磁波としてシールド空間内部に侵入する磁束又はシールド空間外部に放射される不要輻射を確実にシールドできるようにする。
【解決手段】キャンセルコイル12の状態量をブリッジ回路23等で検出し、検出状態量から算出できる誘導起電力等に基づいてキャンセルコイル12にキャンセル電流Icを流すことで、キャンセルコイル12を通過する磁束をコントロールする。キャンセルコイル12両端に発生する誘導起電力電圧Vcが0または最小になるように駆動回路13の回路定数を設定すると、キャンセルコイル12を通過する磁束を0または最小に保つことができる。
【選択図】図2
【解決手段】キャンセルコイル12の状態量をブリッジ回路23等で検出し、検出状態量から算出できる誘導起電力等に基づいてキャンセルコイル12にキャンセル電流Icを流すことで、キャンセルコイル12を通過する磁束をコントロールする。キャンセルコイル12両端に発生する誘導起電力電圧Vcが0または最小になるように駆動回路13の回路定数を設定すると、キャンセルコイル12を通過する磁束を0または最小に保つことができる。
【選択図】図2
Description
本発明は、電磁波としてシールド空間内部に侵入する磁束又はシールド空間外部に放射される不要輻射をシールドする、シールド方法及びシールド装置に関する。
電磁波としてシールド空間内部に侵入する磁束又はシールド空間外部に放射される不要輻射をシールドする方法としては、通常、シールド空間の周囲に、高透磁率材料又は導電体材料を用いたシールド材料を配置して遮蔽する方法が用いられるが、良好な遮蔽効果を、特に比較的低い周波数の電磁波に対して得るには、高価で比重の大きな高透磁率材料又は導電体材料を多量に必要とするため、装置全体が、高価で重いものになる。また、高透磁率材料によるシールドは、磁束の相対的な迂回路を設けることによるシールドであり、シールド材料の透磁率が高いほどシールド効果が大きく、導電体材料によるシールドは、導電体内に生じる誘導電流によるシールドで、電気伝導度が大きいほどシールド効果が大きい。しかしながら、シールド材料の透磁率や電気伝導度を無限大にすることは事実上困難であり、シールド材料を配置するシールドには限界があった。そこで、シールド空間の周囲にキャンセルコイルを配置し、このキャンセルコイルに能動的に電流を流し磁束を制御することで、電磁波の侵入をシールドするアクティブ磁気シールド装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1記載のシールド装置は、例えば、中心軸を概略一致させた2個のコイルからなるヘルムホルツコイルが、直交するX 、Y 、Z の3方向にそれぞれの中心軸方向を一致させて配置されている3組のキャンセルコイルと、磁気センサと、それぞれのキャンセルコルを駆動する電源と磁気センサの出力信号を加工する信号処理部からなる3つの駆動回路から構成される。このシールド装置は、次のように動作する。磁気センサは、直交するX 、Y 、Z の3方向各成分を検出する三軸形磁気センサであり、3組のヘルムホルツコイル型キャンセルコイルの内部空間に配置されて、配置位置の磁束密度を検出する。磁気センサは通常、キャンセルコイルによって作られる磁場がほぼ均一となる中央部に設置される。駆動回路は、磁気センサで検出される磁束を打ち消すためのキャンセルコイル駆動電流の強さを信号処理部で算出し、電源から供給する。このキャンセルコイル駆動電流がキャンセルコイルに流れることにより発生するキャンセル磁束が、外部から侵入した磁束を打ち消すことにより、キャンセルコイルの内部空間の磁束密度を非常に低いレベルに保つことが出来る。
特開2002−232182号公報
ところで、前記アクティブ磁気シールド装置においては、シールド空間であるキャンセルコイル内部の磁場を、好適にはキャンセルコイルの内部空間に配置される磁気センサで検出する。しかし、シールド空間内部に磁気センサが配置されると、磁気センサの位置並びに磁気センサを保持手段が占有する空間が利用できない問題点があった。この問題は、単に利用できる低磁場空間が狭くなるだけでなく、磁気センサは、実際に利用している空間の磁場を検出できないので、利用空間とセンサ位置との間に磁場の差が生じて、外部から侵入した磁束を確実にシールドできないことも考えられる。加えて、磁気センサあるいは保持手段自身がシールド空間内部の磁場を乱してしまい、正確な磁場検出が出来ないので、外部磁束を確実にシールドすることが出来ないという問題点もあった。そこで、磁気センサによる磁場の乱れを小さくしようとすると、高価な小型で高感度の磁気センサを利用する必要があった。加えて、磁気センサを小型にすると、検出できる磁束の総量も減少するので、検出される信号のS/N比が悪くなり、制御が難しくなる課題もあった。また、利用できる低磁場空間を広げるため、シールドされる空間の中央から外れた位置または外部の空間に磁気センサを配置した場合には、利用空間とセンサ位置との間の磁場の差はさらに大きくなるので、信号処理部にはこれを補正する手段が必要となり、装置が複雑高価なものとなってしまうばかりでなく、外部磁束を確実にシールドすることが出来なくなるという問題点もあった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電磁波としてシールド空間内部に侵入する磁束又はシールド空間外部に放射される不要輻射を確実にシールドすることができるとともに、構造が簡単で安価に実現できるシールド方法及びシールド装置を提供することを目的とする。
請求項1記載のシールド装置は、変動磁場中に置かれ、前記変動磁場を打ち消す磁束を発生するキャンセルコイルと、前記キャンセルコイルに発生する相互誘導起電力に対応するキャンセル電流を前記キャンセルコイルに供給する駆動回路を具備する構成を採る。
この構成によれば、前記キャンセルコイルに供給される前記キャンセル電流は、電磁波発生源と前記キャンセルコイルの両方を通過する磁束の時間変化量である前記キャンセルコイルの相互誘導起電力に対応して供給される。この相互誘導起電力は、前記キャンセルコイルにどのようなキャンセル電流が流れた場合でも、電磁波発生源が変動磁場を発生していれば、打ち消されるべき磁束の総量に比例する電圧としてキャンセルコイルに必ず発生しており、前記キャンセルコイル内の磁束の局所的な偏在や分布に左右されることなく、打ち消されるべき磁束の検出し得る最大の磁束量として検出される。したがって、キャンセル電流を制御する基礎量として前記相互誘導起電力を用いると、シールド空間内の打ち消されるべき磁束を、正確にS/N比が良い状態で、キャンセル電流自身の自己誘導起電力の影響を受けることなく確実に把握できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項2記載のシールド装置は、請求項1に記載の発明において、前記駆動回路は、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が所定の値になるように、前記キャンセル電流を制御して前記キャンセルコイルに供給する構成を採る。
この構成によれば、前記キャンセルコイルに供給される前記キャンセル電流が制御されることにより、前記キャンセルコイルを通過する総磁束量が所定の値に制御される。したがって、このシールド装置においては、シールド空間内の総磁束量並びにシールド空間から外部に放射される磁束の総量を所定の値に制御できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項3記載のシールド装置は、請求項2記載の発明において、前記駆動回路は、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が0又は最小となるように、前記キャンセル電流を制御して前記キャンセルコイルに供給する構成を採る。
この構成によれば、前記キャンセルコイルに供給される前記キャンセル電流が制御されることにより、前記キャンセルコイルを通過する総磁束量が0又は最小となるように制御される。したがって、このシールド装置においては、シールド空間内の総磁束量並びにシールド空間から外部に放射される磁束の総量が0又は最小となるように制御できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項4記載のシールド装置は、請求項2から請求項3の何れかに記載の発明において、前記駆動回路は、前記キャンセルコイルの状態量を電気的に検出する検出回路を具備し、前記検出回路で検出された前記状態量に対応して前記キャンセル電流を制御する構成を採る。
この構成によれば、前記キャンセル電流を制御するために必要な情報は、駆動回路内で電気的に検出される。したがって、シールドされるシールド空間内の磁束を検出する高価な磁気センサを必要としないので装置のコストを抑えることが出来る。また、シールド空間内部には何も配置されないので、シールド空間内部を有効に利用することが出来ることに加えて、磁場検出手段によってシールド空間内部の磁場が乱されることがないので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項5記載のシールド装置は、請求項4に記載の発明において、前記検出回路で検出された前記状態量を入力とするオープンループ制御により前記キャンセル電流を制御する構成を採る。
この構成によれば、前記キャンセルコイルの状態量から、直接または間接的にキャンセルコイルに発生する相互誘導起電力が算出され、その相互誘導起電力に対応してキャンセル電流が流れる。相互誘導起電力には、キャンセル電流によって発生する自己誘導起電力は含まれないので、キャンセルコイルの誘導起電力を所定の値に制御するために、キャンセル電流が変化しても、相互誘導起電力は変化しない。よって、キャンセル電流は、オープンループでの制御が可能になる。キャンセル電流のオープンループでの制御は、外乱である相互誘導起電力に対して、制御量であるキャンセル電流による自己誘導起電力を加減算して制御することが出来る。したがって、正確な制御量を算出することで、誘導起電圧を0とすることも可能で、精度の良い制御が実施できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項6記載のシールド装置は、変動磁場中に置かれ、前記変動磁場を打ち消す磁束を発生するキャンセルコイルと、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力に対応するキャンセル電流を前記キャンセルコイルに供給する駆動回路を具備する構成を採る。
この構成によれば、前記キャンセルコイルに供給される前記キャンセル電流は、前記キャンセルコイルを通過する総磁束量の時間変化量である前記キャンセルコイルの誘導起電力に対応して供給される。前記誘導起電力は、前記キャンセルコイル内の磁束の局所的な偏在や分布に左右されることがなく、検出し得る最大の磁束量として検出される。したがって、キャンセル電流を制御する基礎量として前記誘導起電力を用いると、シールド空間の実際の磁束を正確にS/N比が良い状態で把握できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項7記載のシールド装置は、請求項6に記載の発明において、前記駆動回路は、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が所定の値になるように、前記キャンセル電流を制御して前記キャンセルコイルに供給する構成を採る。
この構成によれば、前記キャンセルコイルに供給される前記キャンセル電流が制御されることにより、前記キャンセルコイルを通過する総磁束量が所定の値に制御される。したがって、このシールド装置においては、シールド空間内の総磁束量並びにシールド空間から外部に放射される磁束の総量を所定の値に制御できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項8記載のシールド装置は、請求項7記載の発明において、前記駆動回路は、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が0又は最小となるように、前記キャンセル電流を制御して前記キャンセルコイルに供給する構成を採る。
この構成によれば、前記キャンセルコイルに供給される前記キャンセル電流が制御されることにより、前記キャンセルコイルを通過する総磁束量が0又は最小となるように制御される。したがって、このシールド装置においては、シールド空間内の総磁束量並びにシールド空間から外部に放射される磁束の総量が0又は最小となるように制御できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項9記載のシールド装置は、請求項7または請求項8に記載の発明において、前記駆動回路は、前記キャンセルコイルの状態量を電気的に検出する検出回路を具備し、前記検出回路で検出された前記状態量に対応して前記キャンセル電流を制御する構成を採る。
この構成によれば、前記キャンセル電流を制御するために必要な情報は、駆動回路内で電気的に検出される。したがって、シールドされるシールド空間内の磁束を検出する高価な磁気センサを必要としないので装置のコストを抑えることが出来る。また、シールド空間内部には何も配置されないので、シールド空間内部を有効に利用することが出来ることに加えて、磁場検出手段によってシールド空間内部の磁場が乱されることがないので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項10記載のシールド装置は、請求項9に記載の発明において、前記検出回路で検出された前記状態量を入力とするフィードバック制御により前記キャンセル電流を制御する構成を採る。
この構成によれば、前記キャンセルコイルの状態量から、直接または間接的にキャンセルコイルに発生する誘導起電力が算出され、その誘導起電力に対応してキャンセル電流が流れる。誘導起電力には、キャンセル電流によって発生する自己誘導起電力が含まれるので、キャンセルコイルの誘導起電力を所定の値に制御するために、キャンセル電流を変化させると、誘導起電力に直接的に変化が表れる。よって、キャンセル電流の制御には、フィードバック制御が有効となる。フィードバック制御を用いると、算出された誘導起電力に対して、キャンセル電流を供給するアンプにおいて100%のネガティブ・フィードバックをかけることで、誘導起電力を所定の水準に抑えることが出来ると同時に、相互誘導起電力以外の外乱や、装置の特性変化に対してもそれを抑制することが可能である。したがって、フィードバックでの制御は、複雑な伝達関数を算出する必要がなく、簡単で安価な構成で、確実に動作するので、装置のコストを抑えて、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項11記載のシールド装置は、請求項4、請求項5、請求項9、請求項10の何れかに記載の発明において、前記検出回路は、前記キャンセルコイルを含んで構成されるブリッジ回路を具備する構成を採る。
この構成によれば、適当なブリッジ回路の構成素子を用いると、前記キャンセルコイルに発生する相互誘導起電力または誘導起電力を、対角の端子間電圧として、直接、正確に検出できる。したがって、このシールド装置においては、複雑な演算を行うことなく、簡単で安価な構成で、相互誘導起電力または誘導起電力を検出出来るので、装置のコストを抑えて、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項12記載のシールド装置は、請求項4、請求項5、請求項9、請求項10の何れかに記載の発明において、前記検出回路は、前記キャンセルコイルと直列に接続される電流検出手段を具備する構成を採る。
この構成によれば、ブリッジ回路のようにキャンセル電流をバイパスする回路が不用となる。バイパス回路は、駆動回路の発振や制御性の劣化の原因となる不要な磁束の発生源となり得るが、特に、バイパス回路にインダクタがあると、制御すべき磁束と同等の磁束がバイパス回路のインダクタに発生する。したがって、状態量を前記キャンセルコイルと直列に接続される電流検出手段で検出すれば、不要な磁束の発生により、シールド空間内部の磁場が乱されることや駆動回路が発振することがないので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項13記載のシールド装置は、請求項1から請求項12の何れかに記載の発明において、中心軸が概略直交する複数の前記キャンセルコイルと、前記複数の前記キャンセルコイルのそれぞれにキャンセル電流を供給する複数の前記駆動回路を具備する構成を採る。
この構成によれば、前記複数のキャンセルコイルの組み合わせにより、前記複数の前記キャンセルコイルの中心軸を基底とするベクトルで表現されるすべての方向の磁束を検出し、これをキャンセルするキャンセル磁束を発生させることが出来る。したがって、このシールド装置においては、複数の方向の磁場を検出する高価な磁気センサを用いることなく、磁束の方向が変化する場合にも磁束をキャンセルすることが出来るので、装置のコストを抑えてシールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。また、このシールド装置は、キャンセルコイルの設置方向が限定されないので、設計の自由度が大きくなる。
請求項14記載のシールド装置は、請求項13記載の発明において、中心軸が概略直交する3つの前記キャンセルコイルと、前記3つのキャンセルコイルのそれぞれにキャンセル電流を供給する少なくとも3つの前記駆動回路を具備する構成を採る。
この構成によれば、中心軸が直交する3つの前記キャンセルコイルによって、任意の方向の磁束を検出し、これをキャンセルするキャンセル磁束を発生させることが出来る。したがって、このシールド装置においては、高価な三軸形磁気センサを用いることなく、任意の方向の磁束に対して磁束をキャンセルすることが出来るので、装置のコストを抑えてシールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。また、このシールド装置は、キャンセルコイルを任意の方向に設置出来るので、設計の自由度が大きくなる。
請求項15記載のシールド装置は、請求項1から請求項14記載のいずれかの発明において、中心軸が概略同一の直線上に位置する複数のコイルから構成される前記キャンセルコイルを具備する構成を採る。
この構成によれば、中心軸が概略同一の直線上に位置する前記複数のコイルによって囲まれる三次元空間が、前記三次元空間内部に磁気センサ及び保持手段を配置することなしに、シールド空間として確保できる。したがって、このシールド装置においては、シールドされる三次元シールド空間内の磁束を検出する高価な磁気センサを必要としないので装置のコストを抑えることが出来る。また、三次元シールド空間内部には何も配置されないので、三次元シールド空間内部を有効に利用することが出来ることに加えて、磁場検出手段によって三次元シールド空間内部の磁場が乱されることはない。さらに、前記キャンセルコイルを通過する磁束に基づいてキャンセル電流が供給されるため、磁束の局所的な偏在や分布に左右されることがなく、三次元シールド空間の実際の磁束を正確に検出できるので、三次元シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項16記載のシールド装置は、請求項1から請求項15の何れかに記載の発明において、電気回路の外側に、前記キャンセルコイルが配置される構成を採る。
この構成によれば、前記電気回路への前記キャンセルコイルの外部からの電磁波による信号混入と、前記電気回路からの前記キャンセルコイルの外部への不要輻射を同時に阻止することが出来る。したがって、前記電気回路と外部電気回路とのクロストークを抑えることが出来る。
請求項17記載のシールド装置は、請求項16記載のシールド装置において前記キャンセルコイルの一部または全部と、前記電気回路が、同一の基板上に配置される構成を採る。
この構成によれば、前記電気回路から放射される電磁波の放射原点と、前記キャンセルコイルが発生させるキャンセル電磁波の放射原点を、基板上で概略一致させることが出来る。したがって、シールド空間である前記キャンセルコイル内部から遠方場へ伝播する電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項18記載のシールド装置は、請求項17記載のシールド装置において前記キャンセルコイルの一部または全部が、前記電気回路の一部または全部の配線層と異なる配線層に配置される構成を採る。
この構成によれば、前記電気回路の配線パターンに影響を受けずに、キャンセルコイルの配線パターンを基板上に配置できる。したがって、キャンセルコイル並びに前記電気回路の設計自由度が大きくなり、最適なキャンセルコイルの配置が容易になるので、前記電気回路への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項19記載のシールド装置は、請求項1から請求項18の何れかに記載の発明において、着用可能な媒体上に構成される前記キャンセルコイルを具備する構成を採る。
この構成によれば、人体やその他の生物あるいはそれらの擬似物などの移動可能なシールド空間の周囲に前記キャンセルコイルを装着させて共に移動させることが出来るので、前記移動可能なシールド空間内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項20記載のシールド方法は、変動磁場中に置かれたキャンセルコイルに、能動的に制御されたキャンセル電流を供給し、前記変動磁場を打ち消す磁束を発生させるシールド方法であって、
前記キャンセル電流を、前記キャンセルコイルに発生する相互誘導起電力に応じて制御する電流制御ステップを含む。
前記キャンセル電流を、前記キャンセルコイルに発生する相互誘導起電力に応じて制御する電流制御ステップを含む。
この方法によれば、前記キャンセル電流は、電磁波発生源と前記キャンセルコイルの両方を通過する磁束の時間変化量である前記キャンセルコイルの相互誘導起電力に対応して供給される。この相互誘導起電力は、前記ャンセルコイルにどのようなキャンセル電流が流れた場合でも、電磁波発生源が変動磁場を発生していれば、打ち消されるべき磁束の総量に比例する電圧としてキャンセルコイルに必ず発生しており、前記キャンセルコイル内の磁束の局所的な偏在や分布に左右されることなく、打ち消されるべき磁束の検出し得る最大の磁束量として検出される。したがって、キャンセル電流を制御する基礎量として前記相互誘導起電力を用いると、シールド空間内の打ち消されるべき磁束を、正確にS/N比が良い状態で、キャンセル電流自身の自己誘導起電力の影響を受けることなく確実に把握できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項21記載のシールド方法は、請求項20に記載の発明において、前記電流制御ステップは、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が所定の値になるように、前記キャンセル電流を制御する。
この方法によれば、前記キャンセルコイルに供給される前記キャンセル電流が制御されることにより、前記キャンセルコイルを通過する総磁束量が所定の値に制御される。したがって、このシールド方法においては、シールド空間内の総磁束量並びにシールド空間から外部に放射される磁束の総量を所定の値に制御できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項22記載のシールド方法は、請求項21記載の発明において、前記電流制御ステップは、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が0又は最小となるように、前記キャンセル電流を制御する。
この方法によれば、前記キャンセルコイルに供給される前記キャンセル電流が制御されることにより、前記キャンセルコイルを通過する総磁束量が0又は最小となるように制御される。したがって、このシールド方法においては、シールド空間内の総磁束量並びにシールド空間から外部に放射される磁束の総量が0又は最小となるように制御できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項23記載のシールド方法は、請求項21または請求項22に記載の発明において、前記キャンセルコイルの状態量を検出する状態量検出ステップを含み、前記電流制御ステップは、前記状態量を入力としたオープンループ制御により、前記キャンセル電流を制御するステップを含む。
この方法によれば、状態量検出ステップで検出される状態量から、直接または間接的にキャンセルコイルに発生する相互誘導起電力が算出され、その相互誘導起電力に対応してキャンセル電流が流れる。相互誘導起電力には、キャンセル電流によって発生する自己誘導起電力は含まれないので、キャンセルコイルの誘導起電力を所定の値に制御するために、キャンセル電流が変化しても、相互誘導起電力は変化しない。よって、キャンセル電流は、オープンループでの制御が可能になる。キャンセル電流をオープンループで制御する方法は、外乱である相互誘導起電力に対して、制御量であるキャンセル電流による自己誘導起電力を加減算して制御することが出来る。したがって、正確な制御量を算出することで、誘導起電圧を0とすることも可能で、精度の良い制御が実施できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項24記載のシールド方法は、変動磁場中に置かれたキャンセルコイルに、能動的に制御されたキャンセル電流を供給し、前記変動磁場を打ち消す磁束を発生させるシールド方法であって、
前記キャンセル電流を、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力に応じて制御する電流制御ステップを含む。
前記キャンセル電流を、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力に応じて制御する電流制御ステップを含む。
この方法によれば、前記キャンセルコイルに供給される前記キャンセル電流は、前記キャンセルコイルを通過する総磁束量の時間変化量である前記キャンセルコイルの誘導起電力に対応して供給される。前記誘導起電力は、前記キャンセルコイル内の磁束の局所的な偏在や分布に左右されることがなく、検出し得る最大の磁束量として検出される。したがって、キャンセル電流を制御する基礎量として前記誘導起電力を用いると、シールド空間の実際の磁束を正確にS/N比が良い状態で把握できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項25記載のシールド方法は、請求項24に記載の発明において、前記電流制御ステップは、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が所定の値になるように、前記キャンセル電流を制御する。
この方法によれば、前記キャンセルコイルに供給される前記キャンセル電流が制御されることにより、前記キャンセルコイルを通過する総磁束量が所定の値に制御される。したがって、このシールド方法においては、シールド空間内の総磁束量並びにシールド空間から外部に放射される磁束の総量を所定の値に制御できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項26記載のシールド方法は、請求項25記載の発明において、前記電流制御ステップは、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が0又は最小となるように、前記キャンセル電流を制御する。
この方法によれば、前記キャンセルコイルに供給される前記キャンセル電流が制御されることにより、前記キャンセルコイルを通過する総磁束量が0又は最小となるように制御される。したがって、このシールド方法においては、シールド空間内の総磁束量並びにシールド空間から外部に放射される磁束の総量が0又は最小となるように制御できるので、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項27記載のシールド方法は、請求項25または請求項26に記載の発明において、前記キャンセルコイルの状態量を検出する状態量検出ステップを含み、前記電流制御ステップは、前記状態量を入力としたフィードバック制御により、前記キャンセル電流を制御するステップを含む。
この方法によれば、状態量検出ステップで検出される状態量から、直接または間接的にキャンセルコイルに発生する誘導起電力が算出され、その相互誘導起電力に対応してキャンセル電流が流れる。誘導起電力には、キャンセル電流によって発生する自己誘導起電力が含まれるので、キャンセルコイルの誘導起電力を所定の値に制御するために、キャンセル電流を変化させると、誘導起電力に直接的に変化が表れる。よって、キャンセル電流の制御には、フィードバック制御が有効となる。フィードバック制御を用いる場合、算出された誘導起電力に対して、キャンセル電流を算出し供給するステップにおいて100%のネガティブ・フィードバックをかけることで、誘導起電力を所定の水準に抑えることが出来ると同時に、相互誘導起電力以外の外乱や、装置の特性変化に対してもそれを抑制することが可能である。したがって、キャンセル電流をフィードバックで制御する方法は、複雑な伝達関数を算出する必要がなく、簡単な手順で、確実に動作するので、外乱や装置の特性変化を抑えて、シールド空間である前記キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
請求項28記載の電気電子機器は、請求項1から請求項19の何れかに記載のシールド装置を具備する構成を採る。
この構成によれば、前記シールド装置の前記キャンセルコイル内部の前記電気回路と前記外部電気回路との電磁波によるクロストークを抑えることが出来るので、機器の誤動作やノイズ増加を防ぐことが出来る。
以上説明したように、本発明によれば、キャンセルコイル内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
本発明の骨子は、キャンセルコイルに通電するシールド空間の磁場を制御するためのキャンセル電流を、キャンセルコイル自身に発生する誘導起電力または相互誘導起電力を基に生成することである。
(実施の形態1)
以下、本発明のシールド装置の第1の実施形態について図1〜4を参照して説明する。
以下、本発明のシールド装置の第1の実施形態について図1〜4を参照して説明する。
図1 は、本発明のシールド装置の第1の実施形態に係る全体構成図を示す。この実施の形態1に係るシールド装置9は、概略直方体のシールド空間10の周囲に、2個のループコイルから構成されるヘルムホルツコイルが、直交するX 、Y 、Z の3方向にそれぞれの中心軸方向を一致させて配置されていて、それぞれのコイルを駆動する3個の駆動回路を含んで構成される駆動部11と接続されている。たとえば、X軸方向には、ループコイルCx1,Cx2が中心軸をX軸方向と一致させて配置され、キャンセルコイル12aを構成している。同様に、それぞれ中心軸がY軸方向、Z軸方向になるように配置されたループコイルCy1,Cy2及びCz1,Cz2によってキャンセルコイル
12b及び12cが構成される。これらのキャンセルコイル12a,12b,12cは駆動部11にあるそれぞれの駆動回路13a,13b,13cに接続されている。
12b及び12cが構成される。これらのキャンセルコイル12a,12b,12cは駆動部11にあるそれぞれの駆動回路13a,13b,13cに接続されている。
図2は、実施の形態1に係るシールド装置9の、1軸成分用キャンセルコイルと駆動回路系に関する回路構成図である。キャンセルコイル12は、概略並行に対面する2つのループコイルC1,C2が直列に結線されることで構成され、駆動回路13に接続されている。ここでは、通電時に発生する磁束の方向が、2つのループコイルC1,C2で同じになるように結線されている。ループコイルC1,C2は、導線の単線又は縒線を単周または複数回周回させたコイルである。キャンセルコイル12は、ループコイルC1,C2の間をつなぐ配線並びにキャンセルコイル12と駆動回路13を接続する配線は、2本の平行導線又はその縒線を用いている。駆動回路13には、2つのブリッジ抵抗器20,21とインダクタ22とキャンセルコイル12とから状態量検出手段であるブリッジ回路23が構成されている。ブリッジ回路23は、対角位置にある素子間のインピーダンスの積が等しくなるように回路定数が調整されている。
すなわち、2つの抵抗20,21とインダクタ22並びにキャンセルコイル12のインピーダンスをそれぞれZ20,Z21,Z22,Z12とすると、Z21×Z22=Z20×Z12となっている。ブリッジ回路23のキャンセルコイル側の中点24とインダクタ22側の中点25との間には、ブリッジ回路23の構成素子のインピーダンスに比べて十分に大きい抵抗値を有する相互誘導起電力検出抵抗26が配置され、キャンセルコイル側の中点24は接地点に、インダクタ22側の中点25は、位相振幅制御手段27にそれぞれ接続されている。ブリッジ回路23からは、キャンセルコイル12の状態量として、電圧信号Vboがブリッジ回路23の中点間の電位差として検出され、位相振幅制御手段27に伝達されている。
位相振幅制御手段27は、相互誘導起電力検出抵抗26で検出された電圧信号Vboの位相並びに振幅を周波数に応じて加工、制御して電流増幅回路28に伝える。電流増幅回路28は、キャンセルコイル12を駆動するのに必要なキャンセル電流Icを、位相振幅制御手段27の出力信号に応じて、ブリッジ回路23のブリッジ抵抗器20,21の接続点と、インダクタ22とキャンセルコイル12の接続点の間に対して、絶縁トランス29と保護抵抗30を介して供給する。絶縁トランス29は、電流増幅回路28と負荷であるブリッジ回路23とのインピーダンスマッチングをとるとともに、ブリッジ回路23と電流増幅回路28とを絶縁している。これにより、ブリッジ回路23の各点の電圧を、キャンセルコイル側の中点24を接地点として確定できる。尚、図2においては、接地点は主要なもののみを図示し、位相振幅制御手段27と、電流増幅回路28と、の内部にある接地点等については省略している。
ここで、キャンセルコイル12と駆動回路13の動作を説明するために、図3(a)、(b)、(c)並びに図4に、本実施例のシールド装置のキャンセルコイル12と駆動回路13の等価回路図を示す。まず、図3(a)は、ブリッジ回路のみの等価回路を表した図で、キャンセル電流Icの供給源を交流駆動源Eoutで表し、交流駆動電源Eoutの内部抵抗をZout、位相振幅制御手段27の入力インピーダンスをZinで表している。キャンセルコイル12には、シールド空間10の内部又は外部にある電磁波発生源との相互誘導作用により相互誘導起電力が発生しており、これを相互誘導起電力電圧源Einで表し、キャンセルコイル12に直列に挿入している。このように、ブリッジ回路23は、相互誘導起電力電圧源Einと、交流駆動電源Eoutの、2つの電源を有する回路と考えることができる。そこで、重ね合わせの理を用いて、それぞれの電源に関する2つの回路に分けて等価回路を考える。すなわち、図3(b)に示す入力側ブリッジ回路23inでは、交流駆動電源Eoutを省略した回路を用い、図3(c)に示す出力側ブリッジ回路23outでは、相互誘導起電力電圧源Einを省略した回路を用いて動作を考える。すると、
入力側図3(b)は、相互誘導起電力電圧源Einを、中点25inの電圧信号Vboとして検出する回路となり、図3(c)は、交流駆動電源Eoutによって、内部抵抗Zoutを介して出力側ブリッジ回路23outを駆動する回路になる。実際のブリッジ回路23の動作は、入力側ブリッジ回路23inと出力側ブリッジ回路23outの重ねあわせで現されることになる。
入力側図3(b)は、相互誘導起電力電圧源Einを、中点25inの電圧信号Vboとして検出する回路となり、図3(c)は、交流駆動電源Eoutによって、内部抵抗Zoutを介して出力側ブリッジ回路23outを駆動する回路になる。実際のブリッジ回路23の動作は、入力側ブリッジ回路23inと出力側ブリッジ回路23outの重ねあわせで現されることになる。
尚、ブリッジ回路23はインピーダンスバランスが保たれていることと、相互誘導起電力検出抵抗26のインピーダンス並びに位相振幅制御手段27の入力インピーダンスが、ブリッジ回路23の構成素子のインピーダンスに比べて十分に大きいことを考慮して、相互誘導起電力検出抵抗26と位相振幅制御手段27の入力インピーダンスZinを、図3(b)、(c)の等価回路では省略している。また、本実施例においては、交流駆動電源Eoutとして電圧源を考え、内部抵抗Zoutと交流駆動電源Eoutを直列に配置した等価回路を例示したが、交流駆動電源Eoutは電流源でもよい。その場合には、十分に大きな内部抵抗Zoutと交流駆動電源Eoutは並列に配置されるが、
図3(a)の回路での置き換えができるので、基本の動作は同じである。
図3(a)の回路での置き換えができるので、基本の動作は同じである。
ここで、入力側ブリッジ回路23inの動作を詳細に解析する。抵抗20,ブリッジインダクタ22のインピーダンスを、jを虚数単位として、それぞれ Z20=R,Z22=jωL と簡略化して考える。比例定数をk1とおいて、抵抗21,キャンセルコイル12のインピーダンスを
Z21=k1・R,Z12=k1・jωL とすると、
Z21×Z22=Z20×Z12は成り立つので、ブリッジ回路23のバランスは保たれる。ここで、内部抵抗Zoutが非常に大きく、Zoutが無視できる場合には、入力側ブリッジ回路23inは、2つのブリッジ抵抗器20in,21inと2つのインダクタ12in,22inで構成されるローパスフィルタとして動作する。相互誘導起電力電圧源Einの相互誘導起電力電圧
Vinに対する電圧信号Vboをブリッジ回路23inのインピーダンスより求めると、下記(数1)となる。
Z21=k1・R,Z12=k1・jωL とすると、
Z21×Z22=Z20×Z12は成り立つので、ブリッジ回路23のバランスは保たれる。ここで、内部抵抗Zoutが非常に大きく、Zoutが無視できる場合には、入力側ブリッジ回路23inは、2つのブリッジ抵抗器20in,21inと2つのインダクタ12in,22inで構成されるローパスフィルタとして動作する。相互誘導起電力電圧源Einの相互誘導起電力電圧
Vinに対する電圧信号Vboをブリッジ回路23inのインピーダンスより求めると、下記(数1)となる。
すなわち、ローパスフィルタの時定数T1はk1の如何に関わらず、一定の値となる。
次に、内部抵抗Zoutに無視できない電流 Izo が流れる場合を考える。この時、中点25inに流入する電流IinとIzoの比は、 入力側ブリッジ抵抗器20inと入力側ブリッジインダクタ22inの直列のインピーダンスと、内部抵抗Zoutを用いて、
Izo/Iin=(R+jωL)/Zout となる。簡単のため、内部抵抗Zoutと抵抗器20のインピーダンスRの比を、Zout=k2・R とおいて、キャンセルコイル12並びに抵抗21に流れる電流Iinoを求めると、内部抵抗Zoutが非常に大きい場合の電流Iinに比べて、下記(数2)に変化する。
Izo/Iin=(R+jωL)/Zout となる。簡単のため、内部抵抗Zoutと抵抗器20のインピーダンスRの比を、Zout=k2・R とおいて、キャンセルコイル12並びに抵抗21に流れる電流Iinoを求めると、内部抵抗Zoutが非常に大きい場合の電流Iinに比べて、下記(数2)に変化する。
従って、相互誘導起電力電圧源Einによって生じる電流Iinoが流れることでキャンセルコイル12に発生する自己誘導起電力を考慮して、入力側キャンセルコイル12inの両端に発生する誘導起電力電圧Vcinを求めると、次式(数3)のようになる。
しかし、相互誘導起電力電圧源Einの相互誘導起電力電圧Vinに対する電圧信号Vboを求めると、最終的にk1、k2は消去され、式1と全く同じ式が得られる。すなわち、ブリッジ回路23inを用いることにより、相互誘導起電力電圧源Einの電圧Vinは、ブリッジ回路の比例定数部k1及び駆動回路の内部抵抗Zoutの如何に関わらず、時定数T1=L/R のローパスフィルタを通過した電圧信号Vboとして検出される。従って、入力側キャンセルコイル12inの理両端に発生する誘導起電力電圧Vcinと、中点25inの電圧信号Vboとの間は、次式(数4)の伝達関数f(jω)で表すことができる。
次に、入力側ブリッジ回路23inと出力側ブリッジ回路23outを用いて、全体の等価回路を考える。ブリッジ回路23はインピーダンスバランスが保たれているので、出力側ブリッジ回路23outでは、中点24outと中点25outの間には電位差が生じない。したがって、電流増幅回路28の出力側から位相振幅制御手段27の入力側へのフィードバックは考えなくても良いので、全体の等価回路においては、オープンループの回路を考えることが出来る。
図4は、入力側ブリッジ回路23inと出力側ブリッジ回路23outに加えて、位相振幅制御手段27並びに電流増幅回路28の内容をさらに詳細に表した、図2に示した実施例の等価回路図である。
位相振幅制御手段27の等価回路は、位相調整回路40と、積分回路41と、オペアンプ42と入力抵抗Rs及び周辺抵抗Rf、R1,R2,R3から構成される電圧-電流コンバータ43から構成される。入力側ブリッジ回路23inの中点25inは位相調整回路40の入力に接続される。位相調整回路40は、伝達関数が前記(数4)で求めたf(jω)で表されるラプラス演算回路である。位相調整回路40の出力は、積分回路41の入力に接続され、積分回路41の出力は、電圧-電流コンバータ43の入力抵抗Rsに接続されている。積分回路41の時定数T2は、すなわち、積分回路41のゲインであり、電圧-電流コンバータ43のオペアンプ42の出力が、動作時に飽和しない所定の値に設定されている。
電流増幅回路28の等価回路は、負荷インピーダンス44と、電圧増幅アンプ45と内部抵抗46によって表現される交流電源47から構成される。電圧-電流コンバータ43の出力は、負荷インピーダンス44と、交流電源47の入力端子に接続されている。交流電源47からは、絶縁トランス29と保護抵抗30を介して出力側ブリッジ回路23outにキャンセル電流Ic供給する。負荷インピーダンス44は、インダクタLLと抵抗RLから構成され、時定数T3=LL/RLは、内部抵抗46と絶縁トランス29と保護抵抗30と出力側ブリッジ回路23outを合成した電圧増幅アンプ45の負荷インピーダンスZ4の時定数T4と等しくなるように設定してある。電圧増幅アンプ45のゲインは、出力側ブリッジ回路23outのキャンセルコイル12outにキャンセル電流Icによって発生する自己誘導起電力電圧Voutが、位相調整回路40の出力電圧Vloと等しくなるかあるいは所定の割合になるように調整されている。絶縁トランス29は、漏れ磁束を小さくするため、トロイダルトランスを用い、キャンセル電流Icによって発生する自己誘導起電力電圧
Voutが、位相調整回路の出力電圧Vloと逆位相になるように結線されている。
Voutが、位相調整回路の出力電圧Vloと逆位相になるように結線されている。
本実施例のシールド装置は次のように動作する。図1のシールド空間10の内部又は外部にある交番磁束発生源から電磁波が発生している時、シールド空間10に侵入又はシールド空間10から放出される磁束のx、y、z方向成分の一部又は全部は、それぞれキャンセルコイル12a,12b、12cを通過する。すると相互誘導作用により、それぞれの方向の磁束の大きさに応じた誘導起電力が発生する。駆動回路駆動回路13a,13b,13cは、それぞれのキャンセルコイル12a,12b、12cに発生する相互誘導起電力を検出し、これに対応したキャンセル電流をそれぞれのキャンセルコイル12a,
12b、12cに供給する。この時、それぞれのキャンセルコイルには、相互誘導起電力に起因する電流とキャンセル電流とをあわせた電流が流れ、その電流に対してキャンセルコイルを通過する磁束が発生し、その磁束に応じた自己誘導起電力電圧が発生する。それぞれのキャンセルコイル12a,12b、
12cを通過するトータルの磁束の大きさは、それぞれのキャンセルコイル
12a,12b、12cに発生するトータルの誘導起電力に比例する。したがって、たとえば、相互誘導起電力電圧と自己誘導起電力電圧が逆位相で等しい大きさの場合には、キャンセルコイルを通過する磁束はトータルで0となり、シールド空間への磁束の侵入又はシールド空間からの磁束の放出が阻止された状態になる。この状態は、キャンセルコイルに発生する相互誘導起電力電圧と、相互誘導起電力に起因する電流によって発生する自己誘導起電力電圧をあわせた電圧に対して、キャンセル電流によって発生する自己誘導起電力電圧が逆位相で等しい大きさになり、キャンセルコイル両端の電位差が0となった状態である。従って、本実施例のシールド装置では、それぞれのキャンセルコイル
12a,12b、12cに発生する任意の周波数及び大きさの相互誘導起電力に対して、常にキャンセルコイル12a,12b、12cの両端の電位差が0となるように、駆動回路駆動回路13a,13b,13cから供給されるキャンセル電流を制御している。
12b、12cに供給する。この時、それぞれのキャンセルコイルには、相互誘導起電力に起因する電流とキャンセル電流とをあわせた電流が流れ、その電流に対してキャンセルコイルを通過する磁束が発生し、その磁束に応じた自己誘導起電力電圧が発生する。それぞれのキャンセルコイル12a,12b、
12cを通過するトータルの磁束の大きさは、それぞれのキャンセルコイル
12a,12b、12cに発生するトータルの誘導起電力に比例する。したがって、たとえば、相互誘導起電力電圧と自己誘導起電力電圧が逆位相で等しい大きさの場合には、キャンセルコイルを通過する磁束はトータルで0となり、シールド空間への磁束の侵入又はシールド空間からの磁束の放出が阻止された状態になる。この状態は、キャンセルコイルに発生する相互誘導起電力電圧と、相互誘導起電力に起因する電流によって発生する自己誘導起電力電圧をあわせた電圧に対して、キャンセル電流によって発生する自己誘導起電力電圧が逆位相で等しい大きさになり、キャンセルコイル両端の電位差が0となった状態である。従って、本実施例のシールド装置では、それぞれのキャンセルコイル
12a,12b、12cに発生する任意の周波数及び大きさの相互誘導起電力に対して、常にキャンセルコイル12a,12b、12cの両端の電位差が0となるように、駆動回路駆動回路13a,13b,13cから供給されるキャンセル電流を制御している。
シールド空間への磁束の侵入を阻止する場合に、キャンセル電流がシールド空間内部に発生させる磁束分布が正確には一様でない。また、シールド空間からの磁束の放出を阻止する場合に、キャンセル電流がシールド空間外部に発生させる磁束分布が、磁気双極モーメントが発生する磁束分布とは、キャンセルコイル近傍では異なる。従って、シールド空間の内部又は無限遠方を含む外部の特定の位置での磁束密度を0にしたい場合には、相互誘導起電力電圧と自己誘導起電力電圧の比率が所定の割合になるようにすれば良い。本実施例のシールド装置では、前述のキャンセルコイル両端の電位差を0とする場合を含め、駆動回路13a,13b,13cにおいて、それぞれのキャンセルコイル12a,12b、12cに発生する自己誘導起電力電圧と相互誘導起電力電圧が逆位相で等しいかあるいは所定の割合になるようにキャンセル電流を制御している。以下、その制御方法を、図4の等価回路図を用いて1軸方向について説明する。実際には、同様の制御を3軸方向に同時に行うことで、シールド空間10内外の磁束を制御している。
図4において、電磁波発生源との相互誘導作用により入力側キャンセルコイル12inに発生する相互誘導起電力電圧源Einの電圧をVinとすると、前述した入力側ブリッジ回路23inの動作により、中点25inの電圧信号Vboは、Vinが時定数T1=L/R のローパスフィルタを通過した電圧信号として検出される。すなわち、本実施例においては、まず、相互誘導起電力電圧源Einを、ブリッジ回路23を用いて検出する。このときの伝達関数は、前記(数1)に示した通りとなる。
一方、Vinに対する入力側キャンセルコイル12inの両端に発生する誘導起電力電圧Vcinは、前記(数2)に示した通りになり、前述のとおり、電圧信号Vboと誘導起電力電圧Vcinの間の伝達関数が、前記(数1)、前記(数2)から、前記(数3)のようにもとまる。そこで、位相振幅制御手段27では、まず、電圧信号Vboに、前記(数3)の伝達関数を持つ位相調整回路40を通過させ、誘導起電力電圧Vcinと等しい信号Vloを算出する。
出力側ブリッジ回路23outのキャンセルコイル12outに発生する自己誘導起電力電圧Voutは、キャンセル電流Icに対してすべての周波数において90度の位相遅れがあることを考慮して、位相調整回路40の出力電圧Vloを積分回路41に通して、すべての周波数に対して90度の位相遅れのある信号を作る。しかし、積分回路で得られるのは、電圧信号であって電流信号ではない。そこで、電圧-電流コンバータ43を通して電圧信号を電流信号に変換する。電流コンバータ43の出力電流Icoは、電流増幅回路28によって、キャンセル磁束を発生させるのに必要なキャンセル電流Icに増幅される。
電流増幅回路28は、広い周波数範囲でダイナミックレンジの広い安定した動作をさせるため、電流増幅の手段として、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスすなわち内部抵抗46の小さい電圧増幅アンプ45を用いる。電圧増幅アンプ45の入力は、電圧信号が必要なので、電圧-電流コンバータ43の出力電流Icoは、内部抵抗46を含む電圧増幅アンプ45の負荷インピーダンスZ4の時定数T4と等しい時定数T3=LL/RL=T4を持った負荷インピーダンス44でうける。このようにして、電圧-電流コンバータ43の出力電流Icoとキャンセル電流Icの間に位相差が生じないようにしている。
このような信号処理によって、出力側ブリッジ回路23outのキャンセルコイル12outに発生する自己誘導起電力電圧Voutは、入力側キャンセルコイル12inの両端に発生する誘導起電力電圧Vcinと、逆位相で比例関係に保たれる。従って、積分回路41の時定数T2あるいは電圧増幅アンプ45のゲインを調整することにより、位相調整回路40の出力電圧Vlo、すなわち誘導起電力電圧Vcinと、キャンセル電流Icによる自己誘導起電力電圧Voutの振幅は等しいかあるいは所定の割合になるように設定される。例えば、積分回路41の時定数T2とキャンセル電流Icに対する電流ゲインの積が、キャンセルコイルのインダクタンスLcの負の逆数−1/Lcと等しくなるように調整すると、キャンセル電流Icには、
Ic=j・Vin/ωLcの電流が流れ、VcinとVoutは逆位相で等しい振幅の電圧となる。このキャンセル電流は、キャンセルコイル12の端子間を短絡し、ショートリングとして動作させた場合のキャンセル電流
Ic0=−Vin/(jωLc+Rc)の絶対値よりも大きく、キャンセルコイルの実部抵抗値Rcを0とみなした場合のIc0に等しい。すなわち、パッシブに動作するショートリングではショートリングの内部抵抗によって流すことが出来なかった最適なキャンセル電流が、アクティブに制御される駆動回路13によって供給できるようになり、Vout=−Vcinが実現されることになる。実際のキャンセルコイル12では、VcinとVoutの和が、シールド空間10の内部の磁束に比例する誘導起電圧になるので、積分回路41の時定数T2あるいは電圧増幅アンプ45のゲインを調整することにより、キャンセルコイル12の誘導起電圧を0叉は所定の水準にコントロールすることが出来る。
Ic=j・Vin/ωLcの電流が流れ、VcinとVoutは逆位相で等しい振幅の電圧となる。このキャンセル電流は、キャンセルコイル12の端子間を短絡し、ショートリングとして動作させた場合のキャンセル電流
Ic0=−Vin/(jωLc+Rc)の絶対値よりも大きく、キャンセルコイルの実部抵抗値Rcを0とみなした場合のIc0に等しい。すなわち、パッシブに動作するショートリングではショートリングの内部抵抗によって流すことが出来なかった最適なキャンセル電流が、アクティブに制御される駆動回路13によって供給できるようになり、Vout=−Vcinが実現されることになる。実際のキャンセルコイル12では、VcinとVoutの和が、シールド空間10の内部の磁束に比例する誘導起電圧になるので、積分回路41の時定数T2あるいは電圧増幅アンプ45のゲインを調整することにより、キャンセルコイル12の誘導起電圧を0叉は所定の水準にコントロールすることが出来る。
このように、この実施の形態1に係るシールド装置9によれば、キャンセルコイル12に電磁波発生源との相互誘導作用により発生する相互誘導起電力電圧Vinをブリッジ回路23によって検出し、これに基づいて、キャンセル電流Icをキャンセルコイル12に流すことで、シールド空間10の内部又は外部の磁束分布を所定の状態にコントロールすることが出来る。
尚、キャンセルコイル12の実部抵抗値Rcが、キャンセルコイル側ブリッジ抵抗21の抵抗値Z21に比べて無視できない場合、ブリッジ回路23inの出力電圧Vboは、Z21/(Rc+Z21)倍に減少する。従って、位相調整回路40の前後にこれを補償する(Rc+Z21)/Z21倍のゲインの増幅器を挿入するか、積分回路41の時定数T2あるいは電圧増幅アンプ45のゲイン調整において(Rc+Z21)/Z21倍のゲイン調整を追加する。また、キャンセルコイルのインダクタンスをLcとすると、
T1=Lc/(Rc+Z21)となるので、これを基本にその他 T3、T4、TA、TB 等の時定数を求める。
T1=Lc/(Rc+Z21)となるので、これを基本にその他 T3、T4、TA、TB 等の時定数を求める。
尚、キャンセルコイル12に生じる誘導起電圧が0になるようにキャンセル電流Icが制御されると、キャンセルコイル12の端子間の電流と電圧は、同位相の比例関係になり、あたかもインダクタンス成分の無い値がRcである直流抵抗のようにふるまう。従って、積分回路41の時定数T2あるいは電圧増幅アンプ45のゲインを調整する再には、キャンセルコイル12の端子間の電流と電圧が、所定の位相関係、比例関係になるように調節することでシールド空間10の内部又は外部の磁束分布を所定の状態にコントロールすることが出来る。
尚、キャンセルコイル12が制御する磁束が微小で、キャンセルコイル
12outを駆動するのに必要なキャンセル電流Icが小さく、電圧-電流コンバータ43を構成するオペアンプ42で駆動可能な範囲にあれば、電流増幅回路28を省略し、電圧-電流コンバータを用いて直接絶縁トランス29あるいは出力側ブリッジ回路23outを駆動しても良い。
12outを駆動するのに必要なキャンセル電流Icが小さく、電圧-電流コンバータ43を構成するオペアンプ42で駆動可能な範囲にあれば、電流増幅回路28を省略し、電圧-電流コンバータを用いて直接絶縁トランス29あるいは出力側ブリッジ回路23outを駆動しても良い。
尚、シールド空間10は、物理的な障壁で囲まれない開空間でよいが、シールド効果を高めるために、高透磁率材料又は導電体材料を用いたシールド材料をシールド空間10の周囲に配置しても良い。この場合、外部からの電磁波の侵入をシールドするためには、キャンセルコイル12a,12b,12cの外側にシールド材料を配置し、内部からの電磁波の放射をシールドするためには、キャンセルコイル12a,12b,12cの内側にシールド材料を配置すると、シールド効果が上がる。キャンセルコイル12a,12b,12cを家屋の外壁又は部屋の内壁に沿って設置すると、家屋屋外に設置された高圧電力線や柱上トランスなどから発生する電磁波に対するシールド効果が期待できる。この場合のように、交番磁束発生源が相対的に移動しない場合には、キャンセルコイルと駆動回路は1組又は2組に減らすことが出来る。
尚、駆動回路13のたとえばブリッジインダクタ22あるいは負荷インピーダンス44のようなインダクタに、オペアンプを用いた合成インダクタンスを使用すると、駆動回路での不要な磁束の発生あるいは磁気ノイズの混入を抑えることが出来るので、シールド装置のシールド性能を向上させることが出来る。また、本実施例では、位相調整回路40、積分回路41、電圧-電流コンバータ43、電圧増幅アンプ45の順に電気信号が伝達、加工されるが、この順番に制限されるものではない。また、これらの素子の複数の機能を統合した機能を持つ素子を用いても良い。さらに、電磁波発生源の周波数が固定されている場合などでは、これらの素子の一部を除いた回路でシールド効果が得られる場合がある。
尚、本実施の形態1に係るシールド装置9では、キャンセルコイル12の状態量を、ブリッジ回路23で検出したが、状態量の検出は、これに制限されるものではない。たとえば、キャンセルコイル12と直列に抵抗器を接続し、抵抗器の両端電圧を位相も含めて検出して、キャンセルコイル12の端子間の電流Icと電圧Vcを検出すると、既知量であるキャンセルコイル12のインピーダンスZcを基に、アナログ回路あるいはデジタル信号処理手段によって実現される複素平面内でのベクトル演算にいよって、キャンセルコイルに発生している誘導起電力、相互誘導起電力が算出できる。すなわち、
Vc−Ic・Rc が誘導起電力であり、Vc−Ic・Zc が相互誘導起電力になるので、これらの情報を基に、本実施例と同様のキャンセル電流Icの制御が可能である。このように、ブリッジ回路を使わない場合、キャンセル電流Icと平行して駆動回路13の出力電流が流れる回路が無いので、不要な磁束の発生が抑制される。特に、制御すべき磁束と同等の磁束が発生するブリッジインダクタ22が不要になるので、不要な磁束の発生により、シールド空間内部の磁場が乱されることや駆動回路が発振することがなくなる。
Vc−Ic・Rc が誘導起電力であり、Vc−Ic・Zc が相互誘導起電力になるので、これらの情報を基に、本実施例と同様のキャンセル電流Icの制御が可能である。このように、ブリッジ回路を使わない場合、キャンセル電流Icと平行して駆動回路13の出力電流が流れる回路が無いので、不要な磁束の発生が抑制される。特に、制御すべき磁束と同等の磁束が発生するブリッジインダクタ22が不要になるので、不要な磁束の発生により、シールド空間内部の磁場が乱されることや駆動回路が発振することがなくなる。
(実施の形態2)
ところで、駆動回路にトランスを用いると、トランスの周波数の特性によって、シールド可能な磁場の周波数が制限されてしまうことや、トランスからの漏れ磁束で、シールド性能の劣化や発振の原因となる可能性がある。駆動回路は、トランスレスで構成されることが望ましい。
ところで、駆動回路にトランスを用いると、トランスの周波数の特性によって、シールド可能な磁場の周波数が制限されてしまうことや、トランスからの漏れ磁束で、シールド性能の劣化や発振の原因となる可能性がある。駆動回路は、トランスレスで構成されることが望ましい。
図5は、本発明の実施の形態2に係るシールド装置70の構成を示す1軸成分用キャンセルコイルと駆動回路系に関する回路構成図である。本実施の形態2に係るシールド装置は、実施の形態1に係るシールド装置9と、駆動回路の構成において相違する。図5に示すように、このシールド装置70は、駆動回路73に、ブリッジ回路74を直接駆動する電流増幅回路76と、ブリッジ回路74の中点24と中点25の間の電位差を出力する差動増幅器78と、を具備している。
ブリッジ回路74は、インダクタ22とキャンセルコイル12の接続点が接地され、電流増幅回路76から保護抵抗30を介して、ブリッジ抵抗器20,21の接続点にキャンセル電流Icが供給される。ブリッジ回路74のキャンセルコイル側の中点24とインダクタ22側の中点25は、それぞれ差動増幅器78の反転入力端子と非反転入力端子に接続され、差動増幅器78の出力は位相振幅制御手段27の入力に接続される。なお、その他の構成は、実施の形態1に係るシールド装置9の構成と同様であるので、同様な構成の詳細な説明は省略し、シールド装置9の構成と相違する点のみ説明する。
ブリッジ回路74は、実施の形態1に係るシールド装置9のブリッジ回路
23と動作時の基準電位となる接地点が異なるだけで、実施の形態1に係るブリッジ回路23と同様に動作し、ブリッジ回路74の中点24と中点25の端子間に電圧信号Vboが発生する。これを差動増幅器78でグランドとの電位差として検出し、位相振幅制御手段27に送って、実施の形態1に係るシールド装置9と同様の信号処理を行ない、図示しない電流コンバータ43の出力電流Icoを電流増幅回路76に出力する。電流増幅回路76は、ブリッジ回路74並びに保護抵抗30に対して最適な出力インピーダンスを有していて、入力電流Icoに対して比例する出力電流をブリッジ回路に供給する。
電流増幅回路76とブリッジ回路74が直結されると、広い周波数範囲のシールド性能が確保できる。また、不要な漏れ磁束の発生も少ない。このように、この実施の形態2に係るシールド装置70によれば、漏れ磁束の発生により、シールド性能の劣化や発振の原因となり得るトランスを用いることなく駆動回路を構成することが出来る。また、トランスの周波数特性によるシールド可能周波数帯域の制限がなくなるので、シールド可能な周波数帯域が広がり、シールド性能が向上する。
23と動作時の基準電位となる接地点が異なるだけで、実施の形態1に係るブリッジ回路23と同様に動作し、ブリッジ回路74の中点24と中点25の端子間に電圧信号Vboが発生する。これを差動増幅器78でグランドとの電位差として検出し、位相振幅制御手段27に送って、実施の形態1に係るシールド装置9と同様の信号処理を行ない、図示しない電流コンバータ43の出力電流Icoを電流増幅回路76に出力する。電流増幅回路76は、ブリッジ回路74並びに保護抵抗30に対して最適な出力インピーダンスを有していて、入力電流Icoに対して比例する出力電流をブリッジ回路に供給する。
電流増幅回路76とブリッジ回路74が直結されると、広い周波数範囲のシールド性能が確保できる。また、不要な漏れ磁束の発生も少ない。このように、この実施の形態2に係るシールド装置70によれば、漏れ磁束の発生により、シールド性能の劣化や発振の原因となり得るトランスを用いることなく駆動回路を構成することが出来る。また、トランスの周波数特性によるシールド可能周波数帯域の制限がなくなるので、シールド可能な周波数帯域が広がり、シールド性能が向上する。
(実施の形態3)
ところで、駆動回路でキャンセル電流をオープンループで制御すると、正確な伝達関数を求めるために、複雑な手順、回路が必要となる。また、回路にノイズが混入した場合には、ノイズもそのまま増幅されて出力に影響を与える。一方、一般に、フィードバック制御での制御系は、比較的簡単な手順、回路で、ノイズ混入に対しても影響が小さい制御系を作ることが可能である。
ところで、駆動回路でキャンセル電流をオープンループで制御すると、正確な伝達関数を求めるために、複雑な手順、回路が必要となる。また、回路にノイズが混入した場合には、ノイズもそのまま増幅されて出力に影響を与える。一方、一般に、フィードバック制御での制御系は、比較的簡単な手順、回路で、ノイズ混入に対しても影響が小さい制御系を作ることが可能である。
図6は、本発明の実施の形態3に係るシールド装置80の構成を示す1軸成分用キャンセルコイルと駆動回路系に関する回路構成図である。本実施の形態3に係るシールド装置は、実施の形態1に係るシールド装置9と、駆動回路の構成において相違する。図6に示すように、このシールド装置80は、駆動回路83に、電流検出抵抗84と、差動増幅器85と、高ゲインアンプ86と、を具備している。
電流検出抵抗84は、キャンセルコイル12に直列に接続され、高ゲイン電流アンプ86の出力からキャンセル電流Icが供給される。電流検出抵抗84の両端の電位は、差動増幅器85の反転入力端子並びに、非反転入力端子にそれぞれ接続されている。キャンセルコイル12の端子の一端は接地され、他端は電流検出抵抗84と、高ゲインアンプ86の反転入力端子に接続されていて、高ゲインアンプ86の負帰還回路を形成している。高ゲインアンプ86の非反転入力端子には、差動増幅器85の出力が接続されている。なお、その他の構成は、実施の形態1に係るシールド装置9の構成と同様であるので、同様な構成の詳細な説明は省略し、シールド装置9の構成と相違する点のみ説明する。
高ゲインアンプ86の出力からキャンセル電流Icが供給されると、電流検出抵抗84には、Icに比例する電圧が発生する。これを差動増幅器85で接地点に対する電流検出電圧Vcrとして取り出す。差動増幅器のゲインA3は、キャンセルコイル実部抵抗値をRc、電流検出抵抗抵抗値をRkとして
A3=Rc/Rfとなるように設定されているので、電流検出電圧Vcrは、Vcr=Rc・Icとなり、キャンセルコイル12に生じている電圧Vcの実部電圧と等しい電圧になっている。
A3=Rc/Rfとなるように設定されているので、電流検出電圧Vcrは、Vcr=Rc・Icとなり、キャンセルコイル12に生じている電圧Vcの実部電圧と等しい電圧になっている。
高ゲインアンプ86は、電圧ゲインがA4である増幅器で、非反転入力の電流検出電圧Vcrと、反転入力のキャンセルコイル12の端子間電圧Vcとの差をA4倍に増幅している。キャンセルコイル12に生じている電圧Vcと、電流検出電圧Vcrとの差は、キャンセルコイル12に生じている電圧Vcの虚部電圧、すなわち誘導起電力に他ならないので、高ゲインアンプ86は、キャンセルコイル12の誘導起電力を算出し、これをA4倍に反転増幅させて、キャンセル電流Icを供給する構成になっている。
ここで、キャンセルコイル12に生じている電圧Vcを、相互誘導起電力電圧Vinの関数として表すと次式(数5)となる。
この式を、キャンセル電流Icに注目して表現しなおすと、Ic,Vcは、次式(数6)、(数7)のようになる。
ここで、(数7)を見ると、虚数部が無い。従って、この実施の形態3に係るシールド装置80では、キャンセル電流Icは、キャンセルコイル12に生じている電圧Vcと常に同位相で供給されることがわかる。また、(数7)の第1項Rc・Icは、キャンセルコイル実部抵抗値による電圧降下で、第2項がキャンセルコイルの誘導起電圧を表している。この式からわかるように、誘導起電力は、高ゲインアンプ86のゲインA4によって変化し、A4を無限大へ増加させると0に近づき、誘導起電力は最小の値に制御される。この時、キャンセル電流Icは、実施の形態1に係るシールド装置13の最適なキャンセル電流であるIc=j・Vin/ωLcと同じ値に近づく。したがって、制御周波数帯域において、A4は少なくとも10以上、好適には、100以上の値を有することが望ましい。また、シールド装置80の動作を安定させるため、
A4は出来るだけ大きな値とし、誘導起電力の調整は、A3の値を変化させて行う。
A4は出来るだけ大きな値とし、誘導起電力の調整は、A3の値を変化させて行う。
このように、この実施の形態3に係るシールド装置80によれば、キャンセルコイル12に発生する誘導起電力を、電流検出抵抗84で検出されるキャンセル電流Icから算出し、これに基づいて、キャンセルコイル12の端子電圧に対してフィードバック制御がかけられた増幅回路からキャンセル電流Icをキャンセルコイル12に流すことで、シールド空間10の内部又は外部の磁束分布を所定の状態にコントロールすることが出来る。
尚、電流検出抵抗84の接続位置は、キャンセルコイル12の高ゲイン電流アンプ86側ではなく、接地側であっても良い。この場合、差動増幅器85は、接地点とキャンセルコイル12の接地側端子の間の電圧を検出し、差動増幅器85のゲインA3を、電流検出抵抗84の電圧を加えて、
A3=(Rc+Rf)/Rfとすると、高ゲインアンプ86の入力端子間にキャンセルコイル12に生じる誘導起電力と等しい電圧が生じる。高ゲインアンプ86の反転入力端子へは、キャンセルコイル12の高ゲイン電流アンプ86側の電圧をフィードバックすると、誘導起電力は、高ゲインアンプ86のゲインA4によってコントロールされる。
A3=(Rc+Rf)/Rfとすると、高ゲインアンプ86の入力端子間にキャンセルコイル12に生じる誘導起電力と等しい電圧が生じる。高ゲインアンプ86の反転入力端子へは、キャンセルコイル12の高ゲイン電流アンプ86側の電圧をフィードバックすると、誘導起電力は、高ゲインアンプ86のゲインA4によってコントロールされる。
尚、本発明の実施の形態3に係るシールド装置80では、キャンセルコイル12の状態量を、電流検出抵抗84を用いて検出したが、状態量の検出は、これに制限されるものではない。例えば、ホール効果やコイルを用いてキャンセル電流の極近傍の磁場を計測する方法や、キャンセルコイル以外はすべて抵抗器で構成されるブリッジ回路の電位からIcを類推する方法も可能である。
(実施の形態4)
ところで、シールド空間が、物体の内部空間であって、物体が移動する場合や、シールド装置を使用しないときには取り外したい場合には、キャンセルコイルが物体に対して着脱可能であることが望ましい。
ところで、シールド空間が、物体の内部空間であって、物体が移動する場合や、シールド装置を使用しないときには取り外したい場合には、キャンセルコイルが物体に対して着脱可能であることが望ましい。
図7は、本発明の実施の形態4に係るシールド装置100の構成を示す斜視図である。本実施の形態4に係るシールド装置は、実施の形態1に係るシールド装置9とシールド空間とキャンセルコイルの構成において相違する。図7に示すように、このシールド装置100は、袋状媒体110と、袋状媒体110の表面に配置され、袋状媒体110の内部空間111をシールド空間とするキャンセルコイル112a、112b、112cと、を具備している。
袋状媒体110は、布、紙などの密度が小さく柔軟な材料で形成され、キャンセルコイルを形成するループコイルのひとつであるループコイルCz11を貫通する穴を持つ袋状の形状をしている。ループコイルCz11と対向するループコイルCz12は袋状形状の底部に配置され、その他のループコイル
Cx11、Cx12,Cy11、Cy12は、袋状形状の側面に、ループコイルCx11とループコイルCx12,ループコイルCy11とループコイル
Cy12が、それぞれ対向するように配置されている。すべてのループコイルは、柔軟な線材で構成され、ループコイルCx11とループコイルCx12,ループコイルCy11とループコイルCy12、ループコイルCz11とループコイルCz12は、それぞれ、キャンセルコイル112a、112b、
112cを形成し、図示しない駆動回路に接続され、キャンセル電流Icが供給されている。なお、その他の構成は、実施の形態1に係るシールド装置9の構成と同様であるので、同様な構成の詳細な説明は省略し、シールド装置9の構成と相違する点のみ説明する。
Cx11、Cx12,Cy11、Cy12は、袋状形状の側面に、ループコイルCx11とループコイルCx12,ループコイルCy11とループコイル
Cy12が、それぞれ対向するように配置されている。すべてのループコイルは、柔軟な線材で構成され、ループコイルCx11とループコイルCx12,ループコイルCy11とループコイルCy12、ループコイルCz11とループコイルCz12は、それぞれ、キャンセルコイル112a、112b、
112cを形成し、図示しない駆動回路に接続され、キャンセル電流Icが供給されている。なお、その他の構成は、実施の形態1に係るシールド装置9の構成と同様であるので、同様な構成の詳細な説明は省略し、シールド装置9の構成と相違する点のみ説明する。
本実施の形態4に係るシールド装置は、袋状媒体110の穴115を、例えば人体頭部のような突起状の物体に装着して、物体の内部空間をシールド空間とすることができる。従って、物体が移動しても、シールド空間と物体との相対位置が変化しないので、シールド装置の最適な制御状態を維持でき、シールド空間内部または外部の磁束分布を確実にコントロールできる。加えて、使用しないときには、穴115から物体を取り出すことで物体の負担を軽減できる。
袋状媒体110を柔軟な材料で構成すると、キャンセルコイルの着脱時等にシールド空間111内部の物体を傷つける可能性が小さくなる。一方、袋状媒体110の材質として、木材や樹脂材料など、ある程度剛性の大きな材料を用いた場合、キャンセルコイルの変形を小さくできるので、駆動回路の動作を安定させることができる。
このように、この実施の形態4に係るシールド装置100によれば、移動可能なシールド空間内部への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
尚、図示しない駆動回路の構成及びキャンセル電流Icの供給方法は、本発明の実施の形態1に係るシールド装置9の構成及び方法に限定されるものではなく、本発明の実施の形態2に係るシールド装置70に開示したトランスレスの構成及び方法、または、本発明の実施の形態3に係るシールド装置80に開示したフィードバック制御回路を用いた構成及び方法、の何れの構成及び方法を用いてもよい。
(実施の形態5)
ところで、本発明は、外部からの電磁波によって誤動作する恐れのある電気回路や、電磁波を発生し外部の電子機器に悪影響を与える可能性のある電気回路を、磁気的にシールドする場合に有効である。
ところで、本発明は、外部からの電磁波によって誤動作する恐れのある電気回路や、電磁波を発生し外部の電子機器に悪影響を与える可能性のある電気回路を、磁気的にシールドする場合に有効である。
図8は、本発明の実施の形態5に係るシールド装置190を具備した電気電子機器191の構成を示す斜視図である。本実施の形態4に係るシールド装置は、実施の形態1に係るシールド装置9とキャンセルコイルの構成において相違する。図8に示すように、このシールド装置190は、電気回路210が配置された回路基板211と同一の基板上に、単周のループコイルあるいは巻き数が複数回数である渦巻状のループコイルで構成されるキャンセルコイル
212が配置されている。回路基板211は、筐体213の内部に、図示しないその他の電気回路と共に格納されている。ループコイル212は、端子
214、215から、図示しない駆動回路に接続されている。回路基板211は、図9(a)に示すように、片面のプリント配線基板211aで、キャンセルコイル212と電気回路210の配線導体222aは、同一の層面上に配置される。尚、その他の構成は、実施の形態1に係るシールド装置9の1軸成分用の構成と同様であるので、同様な構成の詳細な説明は省略し、シールド装置9の構成と相違する点のみ説明する。
212が配置されている。回路基板211は、筐体213の内部に、図示しないその他の電気回路と共に格納されている。ループコイル212は、端子
214、215から、図示しない駆動回路に接続されている。回路基板211は、図9(a)に示すように、片面のプリント配線基板211aで、キャンセルコイル212と電気回路210の配線導体222aは、同一の層面上に配置される。尚、その他の構成は、実施の形態1に係るシールド装置9の1軸成分用の構成と同様であるので、同様な構成の詳細な説明は省略し、シールド装置9の構成と相違する点のみ説明する。
回路基板211上の電気回路210は、回路基板211に対して垂直方向に中心軸を有するインダクタ223を含んでいる。また、回路基板211上には、ループ状の配線バターンを有している。従って、外部からの電磁波、特に回路基板211に垂直な方向に磁束が通過する電磁波によって、誤動作等悪影響を受ける可能性がある。同時に、インダクタ220や、ループ状の配線パターンから発生する電磁波によって、電気回路210以外の電気回路に悪影響を与える可能性がある。特に、筐体213の内部にある図示しないその他の電気回路と相互に影響しあうと、回路が発振する可能性もある。そこで、本発明の実施の形態4に係る電気電子機器191は、回路基板211上の電気回路210を囲うように回路基板211上にキャンセルコイル212を形成する。キャンセルコイル212には、実施の形態1に係るシールド装置9と同様の方法で、図示しない駆動回路からキャンセル電流Icが供給される。キャンセルコイル
212が発生させる磁束は、回路基板211上では概回路基板211に対して垂直に発生する。従って、インダクタ220や、ループ状の配線パターンが最も悪影響を受ける電磁波及び発生する電磁波と同軸方向にキャンセル磁束を発生させる。このキャンセル磁束により、キャンセルコイル212を通過する磁束をコントロールすることで、キャンセルコイル内部及び外部の磁束を一定状態に保てるので、キャンセルコイル212内部の電気回路210を、磁気的シールドし、孤立化させることができる。
212が発生させる磁束は、回路基板211上では概回路基板211に対して垂直に発生する。従って、インダクタ220や、ループ状の配線パターンが最も悪影響を受ける電磁波及び発生する電磁波と同軸方向にキャンセル磁束を発生させる。このキャンセル磁束により、キャンセルコイル212を通過する磁束をコントロールすることで、キャンセルコイル内部及び外部の磁束を一定状態に保てるので、キャンセルコイル212内部の電気回路210を、磁気的シールドし、孤立化させることができる。
尚、回路基板211として、図9(b)に示すような両面のプリント配線基板211b、あるいは、図9(c)に示すような多層のプリント配線基板
211c、を用いてもよい。この場合、キャンセルコイル212bあるいはキャンセルコイル212cは、電気回路210の配線導体222bあるいは
222cの一部または全部の配線層とは異なる配線層に配置されるので、電気回路210の配線パターンに影響を受けずに、キャンセルコイル212bあるいはキャンセルコイル212cの配線パターンを基板上に配置できる。したがって、キャンセルコイル212bあるいはキャンセルコイル212c並びに電気回路210の設計自由度が大きくなり、最適なキャンセルコイルの配置が容易になるので、電気回路210への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
211c、を用いてもよい。この場合、キャンセルコイル212bあるいはキャンセルコイル212cは、電気回路210の配線導体222bあるいは
222cの一部または全部の配線層とは異なる配線層に配置されるので、電気回路210の配線パターンに影響を受けずに、キャンセルコイル212bあるいはキャンセルコイル212cの配線パターンを基板上に配置できる。したがって、キャンセルコイル212bあるいはキャンセルコイル212c並びに電気回路210の設計自由度が大きくなり、最適なキャンセルコイルの配置が容易になるので、電気回路210への電磁波の侵入又は外部への電磁波の輻射を確実にシールドすることができる。
このように、この実施の形態5に係るシールド装置190を具備した電気電子機器191によれば、回路基板211上の電気回路210を、容易に磁気シールドできるので、機器の誤動作やノイズ増加を防ぐことが出来る。
尚、図示しない駆動回路の構成及びキャンセル電流Icの供給方法は、本発明の実施の形態1に係るシールド装置9の構成及び方法に限定されるものではなく、本発明の実施の形態2に係るシールド装置70に開示したトランスレスの構成及び方法、または、本発明の実施の形態3に係るシールド装置80に開示したフィードバック制御回路を用いた構成及び方法、の何れの構成及び方法を用いてもよい。
本発明に係るシールド方法及び装置は、シールド空間外部から内部へ侵入する磁束またはシールド空間内部から外部に放射される不要輻射を確実にシールドすることができるので、あらゆる電子電気機器の電磁波シールド手段として有用である。
9、60,70,80、100、190 シールド装置
10、111 シールド空間
11 駆動部
12、12a、12b、12c、112a、112b、112c、212、212a、212b、212c キャンセルコイル
13、13a、13b、13c、73、83 駆動回路
20、21、20in、21in、20out、21out ブリッジ抵抗器
22、22in、22out ブリッジインダクタ
23、23in、23out、74 ブリッジ回路
24、25、24in、25in、24out、25out (ブリッジ)中点
26 相互誘導起電力検出抵抗
27 位相振幅制御手段
28、76 電流増幅回路
29 絶縁トランス
30 保護抵抗
40 位相調整回路
41 積分回路
42、45、59 オペアンプ
43 電圧-電流コンバータ
44 負荷インピーダンス
45 電圧増幅アンプ
46 内部抵抗
47 交流電源
78,85 差動増幅器
79 ブリッジ回路インダクタ側端点
84 電流検出抵抗
86 高ゲインアンプ
110 袋状媒体
115 穴
191 電気電子機器
210 電気回路
211、211a、211b、211c 回路基板
213 筐体
214、215 端子
222a、222b、222c 配線導体
223 インダクタ
A1、A2、A3、A4 ゲイン
C1、C2、Cx1、Cx2、Cy1、Cy2、Cz1、Cz2、Cx11、Cx12、Cy11、Cy12、Cz11、Cz12 ループコイル
Ein 相互誘導起電力電圧源
Eout 交流駆動電源
f(jω) 伝達関数
Ic キャンセル電流
Ico 電圧-電流コンバータ出力電流
Ic0 キャンセルコイル短絡時のキャンセル電流
Iin、Izo、Iino 入力側ブリッジ回路電流
j 虚数単位
k1 ブリッジ回路インピーダンス比
k2 交流駆動電源内部抵抗インピーダンス比
L (ブリッジインダクタ)インダクタンス
Lc キャンセルコイル インダクタンス
LL (負荷インピーダンス)インダクタンス
R ブリッジインダクタ側ブリッジ抵抗抵抗値
Rc キャンセルコイル 実部抵抗値
Rk 電流検出抵抗抵抗値
RL 負荷インピーダンス抵抗値
Rs 電圧-電流コンバータ入力抵抗
Rf、R1、R2、R3 電圧-電流コンバータ周辺抵抗
T1、T2、T3、T4、TA、TB 時定数
Vbo 電圧信号
Vcin 誘導起電力電圧
Vcr 電流検出電圧
Vin 相互誘導起電力電圧
Vlo 位相調整回路の出力電圧
Vout (キャンセル電流による)自己誘導起電力電圧
10、111 シールド空間
11 駆動部
12、12a、12b、12c、112a、112b、112c、212、212a、212b、212c キャンセルコイル
13、13a、13b、13c、73、83 駆動回路
20、21、20in、21in、20out、21out ブリッジ抵抗器
22、22in、22out ブリッジインダクタ
23、23in、23out、74 ブリッジ回路
24、25、24in、25in、24out、25out (ブリッジ)中点
26 相互誘導起電力検出抵抗
27 位相振幅制御手段
28、76 電流増幅回路
29 絶縁トランス
30 保護抵抗
40 位相調整回路
41 積分回路
42、45、59 オペアンプ
43 電圧-電流コンバータ
44 負荷インピーダンス
45 電圧増幅アンプ
46 内部抵抗
47 交流電源
78,85 差動増幅器
79 ブリッジ回路インダクタ側端点
84 電流検出抵抗
86 高ゲインアンプ
110 袋状媒体
115 穴
191 電気電子機器
210 電気回路
211、211a、211b、211c 回路基板
213 筐体
214、215 端子
222a、222b、222c 配線導体
223 インダクタ
A1、A2、A3、A4 ゲイン
C1、C2、Cx1、Cx2、Cy1、Cy2、Cz1、Cz2、Cx11、Cx12、Cy11、Cy12、Cz11、Cz12 ループコイル
Ein 相互誘導起電力電圧源
Eout 交流駆動電源
f(jω) 伝達関数
Ic キャンセル電流
Ico 電圧-電流コンバータ出力電流
Ic0 キャンセルコイル短絡時のキャンセル電流
Iin、Izo、Iino 入力側ブリッジ回路電流
j 虚数単位
k1 ブリッジ回路インピーダンス比
k2 交流駆動電源内部抵抗インピーダンス比
L (ブリッジインダクタ)インダクタンス
Lc キャンセルコイル インダクタンス
LL (負荷インピーダンス)インダクタンス
R ブリッジインダクタ側ブリッジ抵抗抵抗値
Rc キャンセルコイル 実部抵抗値
Rk 電流検出抵抗抵抗値
RL 負荷インピーダンス抵抗値
Rs 電圧-電流コンバータ入力抵抗
Rf、R1、R2、R3 電圧-電流コンバータ周辺抵抗
T1、T2、T3、T4、TA、TB 時定数
Vbo 電圧信号
Vcin 誘導起電力電圧
Vcr 電流検出電圧
Vin 相互誘導起電力電圧
Vlo 位相調整回路の出力電圧
Vout (キャンセル電流による)自己誘導起電力電圧
Claims (28)
- 変動磁場中に置かれ、前記変動磁場を打ち消す磁束を発生するキャンセルコイルと、
前記キャンセルコイルに発生する相互誘導起電力に対応するキャンセル電流を前記キャンセルコイルに供給する駆動回路を具備することを特徴とするシールド装置。 - 前記駆動回路は、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が所定の値になるように、前記キャンセル電流を制御して前記キャンセルコイルに供給することを特徴とする請求項1に記載のシールド装置。
- 前記駆動回路は、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が0又は最小となるように、前記キャンセル電流を制御して前記キャンセルコイルに供給することを特徴とする請求項2記載のシールド装置。
- 前記駆動回路は、前記キャンセルコイルの状態量を電気的に検出する検出回路を具備し、前記検出回路で検出された前記状態量に対応して前記キャンセル電流を制御することを特徴とする請求項2または請求項3記載のシールド装置。
- 前記駆動回路は、前記検出回路で検出された前記状態量を入力とするオープンループ制御により前記キャンセル電流を制御することを特徴とする請求項4記載のシールド装置。
- 変動磁場中に置かれ、前記変動磁場を打ち消す磁束を発生するキャンセルコイルと、
前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力に対応するキャンセル電流を前記キャンセルコイルに供給する駆動回路を具備することを特徴とするシールド装置。 - 前記駆動回路は、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が所定の値になるように、前記キャンセル電流を制御して前記キャンセルコイルに供給することを特徴とする請求項6に記載のシールド装置。
- 前記駆動回路は、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が0又は最小となるように、前記キャンセル電流を制御して前記キャンセルコイルに供給することを特徴とする請求項7記載のシールド装置。
- 前記駆動回路は、前記キャンセルコイルの状態量を電気的に検出する検出回路を具備し、前記検出回路で検出された前記状態量に対応して前記キャンセル電流を制御することを特徴とする請求項7または請求項8記載のシールド装置。
- 前記駆動回路は、前記検出回路で検出された前記状態量を入力とするフィードバック制御により前記キャンセル電流を制御することを特徴とする請求項9記載のシールド装置。
- 前記検出回路は、前記キャンセルコイルを含んで構成されるブリッジ回路を具備することを特徴とする請求項4、請求項5、請求項9、請求項10の何れかに記載のシールド装置。
- 前記検出回路は、前記キャンセルコイルと直列に接続される電流検出手段を具備することを特徴とする請求項4、請求項5、請求項9、請求項10の何れかに記載のシールド装置。
- 中心軸が概略直交する複数の前記キャンセルコイルと、
前記複数の前記キャンセルコイルのそれぞれにキャンセル電流を供給する複数の前記駆動回路から構成されることを特徴とする請求項1から請求項12の何れかに記載のシールド装置。 - 中心軸が概略直交する3つの前記キャンセルコイルと、
前記3つの前記キャンセルコイルのそれぞれにキャンセル電流を供給する少なくとも3つの前記駆動回路から構成されることを特徴とする請求項13記載のシールド装置。 - 前記キャンセルコイルは、中心軸が概略同一の直線上に位置する複数のコイルから構成されることを特徴とする請求項1から請求項14の何れかに記載のシールド装置。
- 電気回路の外側に、前記キャンセルコイルが配置されることを特徴とする請求項1から請求項15の何れかに記載のシールド装置。
- 前記キャンセルコイルの一部または全部と、前記電気回路が、同一の基板上に配置されることを特徴とする請求項16記載のシールド装置
- 前記キャンセルコイルの一部または全部が、前記電気回路の一部または全部の配線層と異なる配線層に配置されることを特徴とする請求項17記載のシールド装置
- 前記キャンセルコイルは、着用可能な媒体上に構成されることを特徴とする請求項1から請求項18の何れかに記載のシールド装置。
- 変動磁場中に置かれたキャンセルコイルに、能動的に制御されたキャンセル電流を供給し、前記変動磁場を打ち消す磁束を発生させるシールド方法であって、
前記キャンセル電流を、前記キャンセルコイルに発生する相互誘導起電力に応じて制御する電流制御ステップを含むことを特徴とするシールド方法。 - 前記電流制御ステップは、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が所定の値になるように、前記キャンセル電流を制御することを特徴とする請求項20に記載のシールド方法。
- 前記電流制御ステップは、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が0又は最小となるように、前記キャンセル電流を制御することを特徴とする請求項21記載のシールド方法。
- 前記キャンセルコイルの状態量を検出する状態量検出ステップを含み、
前記電流制御ステップは、前記状態量を入力としたオープンループ制御により、前記キャンセル電流を制御するステップを含むことを特徴とする請求項21または請求項22に記載のシールド方法。 - 変動磁場中に置かれたキャンセルコイルに、能動的に制御されたキャンセル電流を供給し、前記変動磁場を打ち消す磁束を発生させるシールド方法であって、
前記キャンセル電流を、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力に応じて制御する電流制御ステップを含むことを特徴とするシールド方法。 - 前記電流制御ステップは、前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が所定の値になるように、前記キャンセル電流を制御することを特徴とする請求項24に記載のシールド方法。
- 前記キャンセルコイルに発生する誘導起電力が0又は最小となるように、前記キャンセル電流を制御するステップを含むことを特徴とする請求項25記載のシールド方法。
- 前記キャンセルコイルの状態量を検出する状態量検出ステップを含み、
前記電流制御ステップは、前記状態量を入力としたフィードバック制御により、前記キャンセル電流を制御するステップを含むことを特徴とする請求項25または請求項26に記載のシールド方法。 - 請求項1から請求項19の何れかに記載のシールド装置を具備することを特徴とする電気電子機器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006114192A JP2006324651A (ja) | 2005-04-20 | 2006-04-18 | シールド方法、シールド装置、電気電子機器 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005122085 | 2005-04-20 | ||
JP2006114192A JP2006324651A (ja) | 2005-04-20 | 2006-04-18 | シールド方法、シールド装置、電気電子機器 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2006324651A true JP2006324651A (ja) | 2006-11-30 |
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ID=37544057
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2006114192A Withdrawn JP2006324651A (ja) | 2005-04-20 | 2006-04-18 | シールド方法、シールド装置、電気電子機器 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2006324651A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009213732A (ja) * | 2008-03-12 | 2009-09-24 | Aruze Corp | 遊技用ベット装置 |
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WO2010029725A1 (ja) * | 2008-09-10 | 2010-03-18 | 株式会社竹中工務店 | 磁気シールドシステム及び磁気シールド方法 |
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KR102106341B1 (ko) * | 2018-12-21 | 2020-05-13 | 주식회사 엑시콘 | 전원전압 무결성을 확보하기 위한 반도체 소자 테스트 보드 |
CN112739189A (zh) * | 2020-12-30 | 2021-04-30 | 中车大连机车车辆有限公司 | 一种电磁波干扰屏蔽装置及方法 |
GB2606589A (en) * | 2021-05-14 | 2022-11-16 | Magnetic Shields Ltd | A magnetic shield |
-
2006
- 2006-04-18 JP JP2006114192A patent/JP2006324651A/ja not_active Withdrawn
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