JP4345237B2 - アクティブ磁気シールド装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微弱な脳磁場を計測する脳磁計測システムに必ず使われる磁気シールドルームのシールド特性改善に関するもので、電気的なアクティブ補正により環境磁場を低減させるアクティブ磁気シールド装置に係る。
【0002】
本発明は、脳磁ばかりでなく、心磁などの生体磁場計測用磁気シールドルームにも適用可能である。又、電子ビーム露光装置やMRI装置(核磁気共鳴画像診断装置)用の簡易磁気シールドルームにも適用できる。
【0003】
【従来の技術】
図4は脳磁計測システムの概念図であり、1は一部を切り欠いて示した磁気シールドルーム、2は磁気シールドルーム1内に設置されたテーブル、3はデュワ、4はSQUDを使ったセンサ部である。5は磁気シールドルーム1外に設置されたエレクトロニクス部である。
【0004】
従来、SQUDを使った生体磁気計測システムでは、極めて微弱な信号を計測するため、環境磁気雑音を磁気シールドルーム1で低減させると共に、グラジオメータと呼ばれる差分ピックアップコイルを使って遠方から来る磁気変動ノイズを低減させている。
【0005】
ピックアップコイルの形状は、低減させる磁場の成分に応じて1次微分グラジオメータ、2次微分グラジオメータなどがあり、環境磁界変動を低減させる効果のないマグネトメータと呼ばれるものもある。一般的には効果と寸法の兼ね合いから1次微分グラジオメータが最もよく使われる。
【0006】
このピックアップコイルは、遠方磁界変動のゼロ次成分は差動コイルでキャンセルされるが、センシングコイルに近い磁場源(すなわち生体の神経活動など)から発生する磁場分布は1次以上の成分を持つため計測することができる。
【0007】
図5は、磁気シールドルーム1の平面図であり、スペースを設けた2層のパーマロイの壁1a、1bと、渦電流を利用して磁気シールド効果を増すことと高周波磁気シールドを目的とするアルミや銅などの高導電率層1cをパーマロイ層1a、1b間に入れた構造が一般的である。
【0008】
一方、このような磁気シールドルームによるシールドばかりでなく、磁気シールドの低コスト化を図るため、図6に示すようなアクティブ磁気シールド法が提案されている(特開平4−357481)。これは、SQUD磁束計6と一対のノイズキャンセル用ヘルムホルツコイル7、7´を最小単位として構成され、SQUD磁束計6より出力されるフィードバック電流Iをヘルムホルツコイル7、7´に供給し、これらコイルの中心空間部8にSQUD磁束計6の磁束検出コイル6aを配置することにより当該空間部8を磁気雑音除去空間とするものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
まず、図5に示したパーマロイベースの磁気シールドルームの構造における問題点について述べる。
まず、パーマロイに代表される高透磁率の軟磁性材料により、磁気シールドしたい領域を囲むことで低周波の磁気変動は低減される。
【0010】
パーマロイはニッケル・鉄を主成分とし、熱処理を経なければならないことや需要量が少ないこともあり高価である。また、重量が極めて大きいことから、薄い材料を組み合わせて、多層(図5の例では1a、1bの2層)にすることで効果対費用の比を上げている。
【0011】
しかし、パーマロイだけでは十分な効果が得られないため、高導電率層1cでの渦電流によるシールドも併用している。この高導電率層における渦電流効果によるシールド性能は、層の厚さと周波数に比例するが、これも重量やコストによる制約を受けさほど厚くすることができないため、数Hz以下の低周波においては以下に示すように効果が殆ど無い。
【0012】
図7に示すような、導電率σの金属性の壁で囲まれた、厚さt、幅w、高さhの長方形の箱内の磁界Hiは、一様な外部交流磁界Ho(ω)のとき、渦電流効果によるシールド効果は次式で表現される。
Hi=Ho(ω)/(1+jωτ)
τ=μoσwht/[2(w+h)]
ω:角周波数、μo:真空透磁率
上の式によれば、アルミの場合、σ=0.36×108Ω―1m−1、w=h=2000mm、t=3mmのとき、約2Hzがカットオフ周波数となり、この周波数以上でシールド効果があることがわかる。
【0013】
厚さを増せばカットオフ周波数は下がるが、重量が大きくなることとコストが増すため、それほど厚くできない。
又、環境磁気変動は、周波数の−2〜−3乗の振幅特性であることと、磁気シールド性能が低周波ほどよくないこと、さらには生体磁気計測の計測帯域が0.1Hz〜100Hz程度であるから、磁気シールドルーム内にはシールドしきれない磁気雑音が侵入し、その影響は免れることはできない。
【0014】
図8は、周波数に対応する磁気シールドルーム外の磁気雑音特性Aと、磁気シールドルーム内の磁気雑音特性Bとを比較した低減効果を示す特性図である。この特性で明らかなように、1Hz以下の周波数帯ではシールド効果が発揮されていない。
【0015】
一方では次のような問題もある。即ち、主たる磁気シールド材料であるパーマロイは、透磁率が有限であることから、シールドルーム外部で環境磁場変動が空間的に一様(つまり勾配が無く、ゼロ次である)であっても、磁気シールドルーム内では空間的な高調波を生じ、振幅がシールド率分だけ減衰した0次成分ばかりでなく、1次、2次の磁気雑音成分を副次的に発生する。
【0016】
これは、換言すると磁気シールドルーム内の分布は一様でない(すなわち1次、2次等の空間高調波を発生する)ということである。
これら高調波成分の振幅は、ゼロ次よりも小さく、次数が大きくなるにつれて急速に小さくなるが、1次微分グラジオメータはゼロ次成分は除去できても、1次以上の高調波成分を除去することはできない。
【0017】
また、グラジオメータについて見ると、コイルバランスは寸法精度や付近の超伝導体の有無などによってばらつき、微分コイルのキャンセル率で表現すると0.1%〜数%程度になり、必ずしもゼロ次成分を完全に除去できるわけでもない。
【0018】
次に、図6で説明したアクティブ磁気シールド法の問題点及び課題について述べる。
まず、極めて大きな環境雑音下で制御用のセンサは動作しなければならないが、一般にSQUID磁束計は、DCから高周波までの電磁界に極めて高い感度を持つため、動作の安定化を図るためにデュワ又はSQUID磁束計自身に電磁シールドを講じなければならず、制御性が悪くなるとともにダイナミックレンジが狭くなる。
【0019】
この場合のキャンセル磁場は、シールドから発生するサーマルノイズを含むため、むしろ雑音磁場のベースラインを持ち上げてしまうという欠点がある。
さらにこの手法では、単なるヘルムホルツコイルでの環境磁場のキャンセルについての教示であり、磁気シールドルームを含めた系を前提にしていない。
【0020】
この手法を磁気シールドルームと組合せて適用する場合は、磁気シールドルーム壁面での位相回転の効果を考慮しなければならない。すなわち、安定性を確保する為に、フィードバックの為の制御手段(電子回路)に合わせて制御系のダイナミックレンジを落としてフィードバック磁界を発生させなければならず、微弱な信号レベルまでのシールドを実現するのは困難である。
【0021】
一方、ヘルムホルツコイル自身の発生する空間高調波の問題も未解決である。ゼロ次成分を除去してもそれ以上の高調波を副次的に発生させてしまうため、キャンセル用センサ周辺以外は、すこし離れると環境雑音が極めて大きいばかりか、より高次の高調波磁界を発生させてしまう。
これは、より高次のセンサで補正しても同様の問題を生じる。
【0022】
さらに、3軸の制御を行う場合、各コイル間のクロストークが制御性を不安定にし、これは磁気シールドルームと併用した場合、位相回転の影響も加わるためさらに制御性能は低下する。
【0023】
これら問題点を整理すると、
(1) ヘルムホルツコイル単体では生体磁気計測に十分な環境磁界のレベルを達成することが困難である。したがって、磁気シールドルームと組合せてアクティブ磁気シールドをしなければならない。
(2) この場合、シールドルーム内センサからの磁気変動信号を受けてフィードバック系を構成する図6の手法では、シールドルーム壁面での位相回転が発生するため、広帯域でキャンセル磁界を発生できない。
(3) 3軸センサではクロストークが発生しやすく、制御が難しい。
(4)ヘルムホルツコイルが新たな歪磁界(空間高調波成分)を発生する。
【0024】
本発明は、磁気シールドルームの性能を向上させるために併用させるアクティブ磁気シールドの手法において、従来手法の前記問題点を解消した新規な構成の磁気シールド装置の実現を目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載発明の特徴は、シールドルームと、このシールドルーム近傍に配置された磁気シールド用コイル手段と、前記シールドルームの遠方に配置されたフラックスゲート磁束計手段とを有し、前記フラックスゲート磁束計手段の測定出力に基づいて前記磁気シールド用コイル手段の発生磁界を開ループで調節するアクティブ磁気シールド装置において、前記シールド用コイル手段を複数段設け、夫々に前記フラックスゲート磁束計手段と同一のフラックスゲート磁束計の測定出力を分配する点にある。
【0028】
請求項2記載発明の特徴は、前記磁気シールドルームの渦電流シールドの周波数特性に合わせた低域通過フィルタを、前記フラックスゲート磁束計手段の測定出力と前記磁気シールド用コイル手段間の信号経路に挿入し、過補償を抑制する点にある。
【0029】
請求項3記載発明の特徴は、前記フラックスゲート磁束計を、前記磁気シールドルームの渦電流シールドの周波数特性に合わせた電磁シールド筐体内に収納したこ点にある。
【0030】
請求項4記載発明の特徴は、前記フラックスゲート磁束計の電磁シールド筐体内部に、オフセット補償用のフィードバックコイル手段を設けた点にある。
【0032】
請求項5記載発明の特徴は、商用周波数の参照信号を、位相調整手段を介して前記フラックスゲート磁束計手段の測定出力と重畳させて前記磁気シールド用コイル手段に供給する点にある。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下本発明実施態様を、図面を用いて説明する。図1は本発明を適用したアクティブシールドの手法による磁気シールド装置の実施例である。この実施例では理解を容易にするために、1軸のみ記載するが、3軸を同時に設置する場合も、同様な構成を夫々の軸について増設すればよい。
【0034】
外部環境磁界の変動成分は、通常遠方にその起源をもつものであるから、磁気シールドルーム1の近辺では一様と考えてよい。従って、磁気シールドルーム1自身の影響を受けないよう、ある程度隔てた場所Pにフラックスゲート磁束計9を設置すれば、これをアクティブシールドのための信号源とすることができる。
【0035】
10、10´は、シールドルーム1を挟んで配置された磁気シールド用コイル手段を形成する一対のヘルムホルツコイルである。フラックスゲート磁束計9の感度方向Qと、ヘルムホルツコイル10、10´の磁界発生方向を一致させ、キャンセルのためのアクティブ磁界を発生させる。ヘルムホルツコイルは磁気シールドルーム1よりも十分大きくすることで、磁気シールドルームとの磁気的なカップリングを抑制することができる。
【0036】
フラックスゲート磁束計9の測定出力信号mは、地磁気のDC成分に起因するDC的なオフセットがあるので、変動分の制御を行う為にはこれを除去する必要がある。フラックスゲート磁束計9の外部に設けたオフセット調整器11はこの機能を持つもので、DCサーボを使った高域通過フィルタや、単なるDC的な加算・減算器で実現できる。
【0037】
このオフセット除去機能は、図2で後述するように、フラックスゲート磁束計9自体に磁気的なDCフィードバックを施すことでも実現でき、これら既知のどの方式でも選択可能である。DCサーボやフィルタの場合、制御周波数帯域よりも十分低域にカットオフ点があればよい。
【0038】
磁気シールドルーム1は、高導電率層1cによる渦電流シールドを併用しているため、ある周波数からシールド率が向上し高域遮断特性を示す。従って、フラックスゲート磁束計9からの測定出力信号mは、当該周波数で振幅及び位相がフラットな特性を示していると、ヘルムホルツコイル10、10´面で過補償となる。
【0039】
12の低域通過フィルタは、これを補償するもので、カットオフ周波数を磁気シールドルーム1の渦電流シールド特性に合わせた1次の特性を持たせることで、低域及び高域でフラットなシールド特性を得ることができる。
【0040】
高導電率層1cとパーマロイの層1a、1bではカットオフ点が異なるため、パーマロイ層の分を含めて2個のポールを、周波数をずらして挿入した特性としてもよい。低域通過フィルタ12の出力は、ゲイン調節器13でキャンセルに必要な振幅の信号nに調整され、加算器14、14´に導かれる。
【0041】
一方、近接磁場の代表例として商用電源による雑音磁界の混入がある。これは、磁気シールドルーム1の各面で異なった値を示すのが通常であるため、これを補償するためには、各面で独立にキャンセル磁界を発生させる必要がある。
【0042】
15は、参照用の商用交流電源で、この波形を商用周波数を中心とする帯域通過フィルタ16を通して、必要な信号のみ取り出し、ゲイン調整器17、17´でキャンセルに必要な振幅に調整する。18、18´の位相調整器は、渦電流シールドの影響を受けて回転したヘルムホルツコイル10、10´周辺磁界の位相にキャンセル磁界を調整するためのものである。
【0043】
これらの位相調整器18、18´の出力r、r´は夫々加算器14、14´に導かれ、ゲイン調節器13の出力nと混合され、ヘルムホルツコイル10、10´のコイルドライバに19、19´に供給される。
(0000)
図2は、フラックスゲート磁束計9を電磁シールド筐体20に封じ込め、磁気シールドルームの渦電流シールドと同じ特性を持たせるための構成である。21は、電磁シールド筐体20内でフラックスゲート磁束計本体外部に巻かれたフィードバックコイルであり、これによりフラックスゲート磁束計の持つオフセット分を自身で磁気的に補正することができる。
(0000)
図1の構成のように、外部に設けたオフセット調整器10により電気的にオフセット分をキャンセルする場合には、特にこのフィードバックコイル構成は必要ない。
(0000)
フラックスゲート磁束計9により、3軸に関する磁束測定を1筐体で同時に計測される場合には、各軸方向にコイルが巻かれる。更に、図2の構成のフラックスゲート磁束計を使用する場合には、図1の低域通過フィルタ12による補正を省略することも可能である。
【0044】
図3は本発明の他の実施例であり、開ループ制御の場合の相互不干渉性を利用した、多重アクティブシールド装置の構成例を1軸分だけ示す。ここでは1a、1bよりなる2層のパーマロイシードルーム1に適用した場合で、高導電率層1cは省略して示している。
【0045】
最外層のヘルムホルツコイル22、22´は、図1のヘルムホルツコイル10、10´と同様に、シールドルーム1の外部近傍に配置される。ヘルムホルツコイル22、22´は、中間層の磁気シールドコイルであり、パーマロイ層1a、1bの層間に配置されている。23、23´は最内層のヘルムホルツコイルであり、シールドルーム1内のパーマロイ層1bに近接して配置されている。
【0046】
ブロック25は、これら複数段構成のヘルムホルツコイルのコイルドライバを簡略化して示したものであり、図1の構成と同様に、フラックスゲート磁束計9の測定出力信号並びに参照用の商用交流電源15の信号を入力し、適当な信号処理を実行し、ヘルムホルツコイルに最適なドライブ信号を供給する。
【0047】
コイルドライバ25の信号処理では、中間層及び最内層のヘルムホルツコイル極性は位相及び利得がヘルムホルツコイルを構成する各コイルに対し個別に調整できるものとする。更に、内層ほど信号を減衰してアクティブシールド磁界を発生させるものとする。
また、位相は内層ほど遅れるものとする。尚、中間層又は最内層のどちらかのヘルムホルツコイルを省略した構成でもよい。
【0048】
図3の実施例では、各ヘルムホルツコイルにより多重的にシールドしている為、洩れた磁界を木目細かく調整してキャンセルすることができる。
一般にシールドルーム内部では外乱磁界により磁気勾配が発生するが、シールドルーム内部のヘルムホルツコイルへのドライブ信号を独立的に供給することで、勾配補正も容易に行うことができる。
【0049】
元もとの外乱磁界は、フラックスゲート磁束計9で計測されているゼロ次成分であり、内部磁界は磁気シールドルームで空間変調されたものなので、フラックスゲート磁束計からの信号を調整することで、内部磁界をキャンセルさせるための勾配磁界を発生させることができる。
【0050】
【発明の効果】
一般に、磁気シールドルームはパーマロイなどの高透磁率の層と高導電率の層から構成され、シールド原理は異なっている。定性的には前者は磁路をシールドしたい空間の周囲に設けて磁束線が迂回することによりシールド効果が現れるのに対し、後者は渦電流による反発磁界により透過しようとする磁束線を打ち消すことでシールドをする。
【0051】
従って、渦電流シールドは、コイルに電流を流して打ち消すアクティブシールドに近い原理である。ただし、渦電流は周波数特性を持ち、周波数が高いほどシールド効果が高いが、逆に環境磁気雑音の大きな低周波では殆ど効果が無い。低周波で、アクティブシールドするようにコイル電流を設定すると、高周波では渦電流によるシールド効果が加算的に現れて過補償となって、逆にシールドルーム内にはコイル電流による磁界が侵入する。
【0052】
本発明では、渦電流シールドの周波数特性に合致した低域通過フィルタを挿入したことにより、低域でも高域でも周波数に応じた補償電流が流れるため、過補償となる虞はない。
【0053】
一方、商用電源は極めて大きな近接雑音であり、これを抑制することは磁気シールドルーム内で使用される機器の信号ダイナミックレンジを確保する上で極めて有効である。このため、本発明では、商用電源に位相同期した信号をキャンセル磁界として重畳させられるよう、商用電源を信号源としていることと、位相調整器が挿入されている。
【0054】
帯域通過フィルタは、無用な信号を重畳させることを防止する。通常、基本周波数と3次の高調波の振幅が大きいため、回路的には、各周波数で並列回路を設け、加算器で信号合成すれば、両者に対応できる。また、図には示さないが、ノイズパターンを別途記憶装置に蓄えておき、商用電源をトリガソースとして使い位相調整後、加算器に重畳しても同様の効果を得られる。
【0055】
本発明では開ループ構成であるため、センサであるフラックスゲート磁束計を補償コイルや磁気シールドルームから十分離せばコイル電流によるセンサへの干渉を受けることは無い。従って、3軸の制御をしても相互干渉により制御不安定になることはない。また、フォードバックループを構成すると磁気シールドルームの周波数特性が制御性能を制限するが、本方式ではそのようなことはなく、センサの周波数特性による広帯域のシールドが可能になる。
【0056】
本発明では、磁気シールドルーム内の信号を基準にしていないため、脳磁計などの参照信号検出用センサからの信号を元にノイズ処理している場合などに影響を及ぼすことは無い。同様に、脳磁計などの参照信号検出用センサでアクティブシールドをフィードバックループで構成した手法を併用する場合でも、信号源が別である為、線形加算することができ、本方式との併用が可能となり、さらに高いシールド性能を実現できる。
【0057】
本発明によれば、磁気シールド特性が向上するためパーマロイによるシールドを軽減できる。環境磁気変動の比較的小さいところでは、パーマロイの層を最内層だけにすることが可能となり、省スペース化や軽量化、低コスト化の点でメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したアクティブ磁気シールド装置の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明装置に用いるフラックスゲート磁束計の構成図である。
【図3】本発明を適用したアクティブ磁気シールド装置の他の実施例を示す構成図である。
【図4】脳磁計測システムの概念図である。
【図5】磁気シールドルーム1の平面図である。
【図6】従来のアクティブ磁気シールド装置の一例を示す構成図である。
【図7】磁気シールドルーム1の各部寸法を示す斜視図である。
【図8】周波数に対応する磁気シールドルーム外の磁気雑音特性Aと、磁気シールドルーム内の磁気雑音特性Bとを比較した低減効果を示す特性図である。
【符号の説明】
1 シールドルーム
9 フラックスゲート磁束計
10、10´ ヘルムホルツコイル
11 オフセット調整器
12 低域通過フィルタ
13 ゲイン調節器
14、14´ 加算器
15 商用交流電源
16 帯域通過フィルタ
17、17´ ゲイン調節器
18、18´ 位相調整器
19、19´ コイルドライバ
Claims (5)
- シールドルームと、このシールドルーム近傍に配置された磁気シールド用コイル手段と、前記シールドルームの遠方に配置されたフラックスゲート磁束計手段とを有し、前記フラックスゲート磁束計手段の測定出力に基づいて前記磁気シールド用コイル手段の発生磁界を開ループで調節するアクティブ磁気シールド装置において、前記シールド用コイル手段を複数段設け、夫々に前記フラックスゲート磁束計手段と同一のフラックスゲート磁束計の測定出力を分配すること特徴とするアクティブ磁気シールド装置。
- 前記磁気シールドルームの渦電流シールドの周波数特性に合わせた低域通過フィルタを、前記フラックスゲート磁束計手段の測定出力と前記磁気シールド用コイル手段間の信号経路に挿入し、過補償を抑制することを特徴とする請求項1に記載のアクティブ磁気シールド装置。
- 前記フラックスゲート磁束計を、前記磁気シールドルームの渦電流シールドの周波数特性に合わせた電磁シールド筐体内に収納したことを特徴とする請求項1または2に記載のアクティブ磁気シールド装置。
- 前記フラックスゲート磁束計の電磁シールド筐体内部に、オフセット補償用のフィードバックコイル手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のアクティブ磁気シールド装置。
- 商用周波数の参照信号を、位相調整手段を介して前記フラックスゲート磁束計手段の測定出力と重畳させて前記磁気シールド用コイル手段に供給することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のアクティブ磁気シールド装置。
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