JP2006316721A - 筒内噴射内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】点火プラグの近傍に集中させた噴霧により火種を形成し、燃料の後燃えを生じさせて排気温度を上昇させる際に、壁流の形成を抑制し、エミッションを低減させる。
【解決手段】ピストン12の冠面にキャビティ121bを形成し、昇温要求時において、インジェクタにより圧縮行程以降の複数の時期に燃料を噴射する。比較的に早い第1の時期に噴射された噴霧S1をキャビティ121bにより案内させて、燃焼室の比較的に広い範囲に偏在する混合気塊M1を形成する一方、この第1の時期よりも遅い第2の時期に噴射された噴霧S2を点火プラグ22の近傍に偏在させて、混合気塊M2を形成する。点火は、点火プラグ22により混合気塊M2に対して行う。
【選択図】 図12

Description

本発明は、筒内噴射内燃機関に関し、詳細には、1サイクル毎に燃料を圧縮行程以降の時期を含む複数の時期に噴射するとともに、この圧縮行程以降の時期に噴射された噴霧による火炎を火種として比較的に緩慢な燃焼を生じさせて、排気温度を上昇させる技術に関する。
筒内噴射内燃機関は、シリンダヘッドに燃料供給用のインジェクタが設置され、このインジェクタにより筒内に燃料を直接噴射することで、層状の混合気を形成するものである。この筒内噴射内燃機関によれば、燃焼の大幅な希薄化が可能であるとともに、吸気に伴うポンプロスの低減の効果も相俟って、特に低負荷域における燃料消費量を低減し得ることが知られている。
筒内噴射内燃機関として、燃料供給用のインジェクタが気筒中心軸に対して傾斜させて、シリンダヘッドの側方から気筒中心に向けて配設された、いわゆる側方噴射タイプのもののほか、このインジェクタが気筒中心軸に対して平行に、シリンダヘッドの上方からピストンの冠面に対向させて配置された中央噴射タイプのものが知られている。
前者の側方噴射タイプの筒内噴射内燃機関に関するものであるが、冷間始動時における排気浄化触媒の活性促進を目的として、排気温度を上昇させる次のような技術が知られている(特許文献1)。すなわち、吸気行程中に燃料を先行して噴射するとともに、圧縮行程中に更に燃料を噴射し、この後行して噴射された噴霧を点火プラグの近傍に集中させる。点火時期を遅角させて設定することで、点火プラグの近傍の噴霧により得られる火炎を火種として燃焼室の全体に亘る比較的に緩慢な燃焼を生じさせ、燃料の後燃えの効果を得て排気温度を上昇させ、触媒の活性を促進させるものである。
特許第3337931号公報(段落番号0011)
しかしながら、前掲特許文献1に記載された公知の排気昇温技術には、次のような問題がある。すなわち、このものでは、触媒活性前の低温時に燃料が吸気行程中に噴射されるため、壁面に付着した燃料が蒸発し難い状態にあり、この付着燃料が壁流を形成し、燃焼後の未燃HCを増大させることである。吸気行程中に噴射する場合は、点火が行われるまでの時間が長いため、噴射された燃料のうち拡散により壁面に付着して、壁流を形成するものの割合が比較的に高い。
本発明は、点火プラグの近傍に集中させた噴霧により火種を形成し、燃料の後燃えを生じさせて排気温度を上昇させる際に、壁流の形成を抑制し、エミッションを低減させることを目的とする。
本発明は、筒内噴射内燃機関を提供する。本発明に係る装置は、ピストンの冠面に対向させて配置され、筒内に燃料を直接噴射する燃料供給用のインジェクタと、このインジェクタに隣接させて設置され、このインジェクタにより噴射された噴霧に点火する点火プラグとを含んで構成される。ピストンの冠面には、噴霧を案内するためのキャビティが形成され、排気温度を上昇させる昇温要求時において、インジェクタにより圧縮行程以降の複数の時期に燃料が噴射される。圧縮行程以降の比較的に早い第1の時期に噴射された噴霧がキャビティにより案内されて、燃焼室の比較的に広い範囲に偏在する第1の混合気塊を形成する一方、この第1の時期よりも遅い第2の時期に噴射された噴霧が点火プラグの近傍に偏在する第2の混合気塊を形成する。点火は、点火プラグによりこの第2の混合気塊に対して行われる。本発明の1つの側面によれば、キャビティとして、冠面の中央に形成された第1のキャビティと、この第1のキャビティの周囲に形成された第2のキャビティとが設けられ、昇温要求時において、インジェクタによる燃料の噴射時期として、噴霧が第2のキャビティにより案内される圧縮行程中の第1の時期と、噴霧が第1のキャビティにより案内される、第1の時期よりも遅い第2の時期とが設定される。
本発明によれば、昇温要求時において、第2の時期に噴射された噴霧を点火プラグの近傍に集中(又は偏在)させることで、この噴霧により火種を形成するとともに、後燃えのための余剰燃料を得ることができる。また、第1の時期に噴射された噴霧をキャビティにより案内して、燃焼室の中程に保持させることで、壁流の形成を抑制し、エミッションを低減することができる。
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る筒内噴射内燃機関(以下「エンジン」という。)1の構成を、気筒中心軸mを含む平面による断面で示している。エンジン1は、いわゆる中央噴射タイプの筒内噴射内燃機関である。
シリンダブロック11には、ピストン12が挿入され、ピストン12の冠面121とシリンダヘッド13の下面131との間に形成される空間14が燃焼室となる。気筒中心軸mを基準としたシリンダヘッド13の一側には、吸気ポート15が形成され、吸気ポート15は、図示しない吸気マニホールドと接続されて、吸気通路を形成している。吸気ポート15は、吸気弁16により開放及び遮断される。シリンダヘッド13の他側には、排気ポート17が形成され、排気ポート17は、排気マニホールド18と接続されて、排気通路を形成している。排気ポート17は、排気弁19により開放及び遮断される。吸気弁16及び排気弁19は、各弁16,19の上方に配置された、図示しない吸気カム又は排気カムにより開方向に駆動される。
また、シリンダヘッド13には、気筒中心軸m上に、ピストン12の冠面に対向させて位置させた燃料供給用のインジェクタ(以下、単に「インジェクタ」という。)21が設置されるとともに、インジェクタ21に対して排気ポート17側に隣接させて、点火プラグ22が設置されている。本実施形態において、インジェクタ21は、圧縮行程噴射時における噴霧形状の乱れを抑制し得るホールノズルタイプのインジェクタであり、ピストン12の冠面に向かって気筒中心軸m上を進む中空円錐状の噴霧S(図1には、点線によりその外縁のみを示す。)を形成する。
本実施形態では、噴射された噴霧Sの案内のため、ピストン12のキャビティとして、冠面121の中央に円形の内側キャビティ(「第1のキャビティ」に相当する。)121aが形成されるとともに、この内側キャビティ121aの周囲に連続させて、かつこれと同心に環状の外側キャビティ(「第2のキャビティ」に相当する。)121bが形成されている。インジェクタ21による燃料の噴射時期をクランク角に関して進遅させることで、内側及び外側のいずれのキャビティ121a,121bによっても噴霧Sを案内することができる。各キャビティ121a,121b内において、噴霧Sは、底面との衝突後これに沿って外向きに案内されるとともに、周壁により上方へ向けられ、燃焼室14内をその上部中央に向けて上昇する。図1には、上死点前の圧縮行程中の比較的に遅い時期におけるピストン12の位置が二点鎖線により示されており、この時期に燃料を噴射することで、内側キャビティ121aの底面に噴霧Sを衝突させ、内側キャビティ121aにより案内することができる。
インジェクタ21及び点火プラグ22の動作は、エンジンコントロールユニット31により制御される。インジェクタ21は、燃料ポンプ23により所定の圧力に調整された燃料が燃料配管24を介して供給され、この燃料をエンジンコントロールユニット31により定められる所定の時期に噴射する。燃料ポンプ23は、エンジン1の出力により駆動される。他方、点火プラグ22は、エンジンコントロールユニット31により定められる所定の時期に点火を行う。
燃焼後の排気は、排気弁19の開期間に排気ポート17から排気通路に排出される。排気通路には、排気マニホールド18の下流に排気浄化触媒(以下、単に「触媒」という。)20が設置されており、排気は、触媒20を通過した後、大気中に放出される。
エンジンコントロールユニット(以下「ECU」という。)31へは、エンジン1の吸入空気量を検出するエアフローメータ41の検出信号、エンジン1に対する要求負荷に相関するアクセル開度を検出するアクセルセンサ42の検出信号、クランクシャフト(図示せず。)の基準位置及び単位位置を検出するクランク角センサ43の検出信号(これをもとに、エンジン1の回転速度を算出することができる。)、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ44の検出信号、燃料配管24内の燃料の圧力(以下「燃圧」という。)を検出する燃圧センサ45の検出信号、触媒20への流入前の排気の空燃比を検出する排気センサ46の検出信号、及び触媒20の温度(以下「触媒温度」という。)を検出する温度センサ47等が入力される。ECU31は、入力した各種の検出信号をもとに、インジェクタ21、点火プラグ22、燃料ポンプ23及びスロットル弁51等のエンジン制御デバイスに対する制御信号を形成する。なお、スロットル弁51は、吸入空気の流量又は圧力を制御するためのものであり、吸気通路の導入部に設置されている。
本実施形態では、エンジン1の運転状態に応じ、均質燃焼と成層燃焼との間で燃焼形態を切り換えて運転を行わせる。均質燃焼では、目標とする空燃比が理論値に設定されるとともに、燃料の噴射時期が吸気行程中に設定され、燃焼室14の全体に噴霧を拡散させた状態で燃焼を行わせる。他方、成層燃焼では、目標とする空燃比が理論値よりも大きな値に設定されるとともに、燃料の噴射時期が圧縮行程中に設定され、燃焼室14のうち点火プラグ22の近傍に噴霧を集中させた状態で燃焼を行わせる。燃焼形態の切り換えの判断は、ECU31により行われる。また、本実施形態では、エンジン1の冷間始動時における触媒20の活性促進のため、及び一旦活性したものの低排温運転の継続により不活性化の惧れがある場合の活性維持のため、成層燃焼の形態で燃料の後燃えを生じさせる排気昇温制御を行わせる。
図2は、本実施形態に係る排気昇温制御を行わせる際の、燃料の噴射時期ITwp1,ITwp2及び噴射期間DLT1,DLT2を、エンジン1の負荷Tqとの関係で示している。
排気昇温制御では、1サイクル当たりの燃料供給量を圧縮行程中の2つの時期に噴射させ、燃焼室の全体での空燃比を14.4〜18程度に調整した状態で燃焼を行わせる。1回目の噴射(以下「先噴射」という。)は、圧縮行程のうち比較的に早い時期(「第1の時期」に相当する。)ITwp1に開始する期間DLT1に行わせ、2回目の噴射(以下「後噴射」という。)は、圧縮行程のうち時期ITwp1よりも遅い時期(「第2の時期」に相当する。)ITwp2に開始する期間DLT2に行わせる。先噴射による噴霧を外側キャビティ121bにより案内させることで、燃焼室の中程に保持された混合気塊を形成するとともに、後噴射による噴霧を内側キャビティ121aにより案内させることで、点火プラグ22の近傍に理論値よりも低い可燃空燃比(ここでは、9〜12程度)の混合気塊を形成する。排気昇温制御において、1サイクル当たりの燃料供給量は、エンジン1の仕事として消費される基本分と、後燃えのためのエネルギー源となる増量分との和として与えられる。この和として与えられる燃料供給量のうち、負荷Tqに拘わらず一定の量(すなわち、前記可燃空燃比の混合気塊を形成するための量)を後噴射により内側キャビティ121bに向けて噴射させ、残りの量を先噴射により外側キャビティ121aに向けて噴射させる。先噴射と後噴射とは、弁体の動作時間を確保するため、一定の時間INTを空けて行わせる。また、本実施形態では、前記14.4〜18程度の空燃比を実現するため、スロットル弁51を制御し、負荷Tq(すなわち、燃料供給量)の増大に応じて吸気負圧BSTを発達させる。なお、図2には、噴射された噴霧が外側キャビティ121bを外側に外れることとなる噴射時期の設定期間が、符号Aで、噴射された噴霧が外側キャビティ121bにより案内されることとなる噴射時期の設定期間が、符号Bで、噴射された噴霧が内側キャビティ121aにより案内されることとなる噴射時期の設定期間が、符号Cで示されている。
次に、ECU31が行う制御の内容について、フローチャートにより説明する。
図3は、暖機制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンにより、エンジン1の冷間始動時に触媒20の活性促進が図られる。
S101では、エンジン1の状態指標として、エンジン回転数NE及び触媒温度Tcat等を読み込む。
S102では、読み込んだNEがエンジン1の始動完了(又は自律回転への移行)を示す所定の回転数NEmin以上であるか否かを判定する。NEmin以上であるときは、S103へ進み、NEmin未満であるときは、このルーチンをリターンし、始動が完了するまで待機する。
S103では、読み込んだTcatが触媒20の活性温度である所定の温度TcatH以上であるか否かを判定する。TcatH以上であるときは、S104へ進み、TcatH未満であるときは、S105へ進む。
S104では、暖機が完了したとしてこのルーチンを終了し、後述する燃焼制御ルーチン(図5)へ移行する。
S105では、暖機が未完了であるとして、触媒20の活性促進のため、次の排気昇温制御を実行する。
図4は、排気昇温制御ルーチンのフローチャートである。なお、以下の説明において、「燃空比」とは、空気過剰率の逆数をいうものとする。
S201では、修正燃空比TFBYA2を算出する。このTFBYA2は、暖機後の燃焼制御ルーチンで設定される目標燃空比TFBYA1(図5のS304)とは異なる基準により定められるものであり、後燃えを生じさせるCO,H2等の不完全燃焼物の量と、後燃えのために残存させる酸素の量とを均衡させるため、0.8〜1.0(既述の空燃比で14.4〜18程度)の範囲で設定される。
S202では、この制御のための燃料噴射量Qfwpを算出する。既述の通り、このQfwpは、仕事として消費される基本分Qfaと、後燃えのための増量分DQ1との和として与えられる(Qfwp=Qfa+DQ1)。基本分Qfaは、運転状態毎のものとして、目標トルクTTC(又はアクセル開度APO)及びエンジン回転数NEに基づいてマップデータの検索等により算出することができ、増量分DQ1は、排気温度の上昇に必要なエネルギーを賄うだけのものとして、運転状態毎に予め実験等により決定することができる。
S203では、点火時期ADVwpを算出する。排気昇温制御において、このADVwpは、暖機後の成層燃焼時(図5のS306)に設定される点火時期ADVよりも遅角させて設定される。本実施形態では、ADVwpは、エンジン1の燃焼安定限界の範囲内で最大限遅角させて設定される。
S204では、最終的な燃料噴射量(以下「設定噴射量」という。)Qfretを算出する。このQfretは、燃料噴射量Qfwpに、基本分Qfaのうち、点火時期の遅角に伴い仕事ではなく熱に変換される分の燃料量を加算したものとして算出される。
S205では、算出したQfretが所定の値Qmin以上であるか否かを判定する。Qmin以上であるときは、S206へ進み、Qmin未満であるときは、S209へ進む。このQminは、その全量を内側キャビティ121aにより案内させて混合気塊を形成した場合に、点火時期における点火プラグ22の近傍の空燃比が12程度となる燃料噴射量に設定される。このため、QfretがQmin未満であるのに拘わらず無理に分割噴射をしたとすれば、先噴射により火炎伝播可能な混合気塊が形成されるだけの量の燃料が噴射された結果、後噴射のための燃料が不足し、点火時期を遅角させた場合の着火性が確保されない惧れがある。
S206では、燃料分割比Kspを算出する。このKspは、設定噴射量Qfretに占める先噴射による噴射量の割合である。本実施形態において、Kspは、基本値Ksp0に対して目標トルクTTC、エンジン回転数NE及び冷却水温度Twによる補正を施して算出される(Ksp=Ksp0×HOS1×HOS2×HOS3)。図6〜8は、各補正値HOS1〜HOS3の変化の傾向を示している。目標トルクTTCによる補正値HOS1は、TTCの増大に応じて大きな値に設定される。負荷に拘わらず後噴射による噴射量を一定に保つためである。また、エンジン回転数NEによる補正値HOS2は、NEの上昇に応じて小さな値に設定される。後噴射から点火までの時間の短縮に対し、点火プラグ22の近傍に集中させる燃料の割合を増大させて、着火性を確保するためである。更に、冷却水温度Twによる補正値HOS3は、Twが所定の値LTw以下である範囲で、Twの低下に応じて大きな値に設定される。低温時に後噴射による噴射量を減少させることで、燃料の蒸発不良によるスモークの発生を抑制するためである。なお、LTwは、基本値Ksp0による場合に、点火プラグ22の近傍で発生するスモークの量が規定の量以下に抑えられる範囲の下限である。
S207では、先噴射及び後噴射の各噴射時期ITwp1,ITwp2を設定する。ITwp1,ITwp2は、既述の通り負荷(すなわち、目標トルクTTC)によるほか、エンジン回転数NE及び冷却水温度Twにより変更される。図9,10は、各噴射時期ITwp1,ITwp2の変化の傾向を示している。図9において、エンジン回転数NEの上昇に応じてITwp1,ITwp2の双方が進角されるが、NEの単位変化量当たりの進角の幅ΔIT1,ΔIT2は、後噴射に関するΔIT2の方が大きい(図9)。回転速度の上昇に対し、後噴射から点火までの時間を確保し、燃料の蒸発を進ませるためである。他方、図10において、冷却水温度Twの低下に対し、ITwp1が一定の時期に保持される一方、ITwp2は、Twが所定の値LTw以下である範囲で、Twの低下に応じて進角される。低温時にITwp2を進角させることで、点火までの燃料の蒸発を促し、スモークの発生を抑制するためである。
S208では、設定したITwp1,ITwp2により先噴射及び後噴射を行う。先噴射では、設定噴射量Qfretに燃料分割比Kspを乗算した量(=Qfret×Ksp)の燃料をITwp1に噴射する一方、後噴射では、残りの量(=Qfret×(1−Ksp))の燃料をITwp2に噴射する。
S209では、内側キャビティ121aを利用した一括噴射による場合の燃料の噴射時期ITwpを設定する。本実施形態において、このITwpは、分割噴射時に設定される後噴射の噴射時期ITwp2と一致させる。
S210では、設定したITwpに設定噴射量Qfretを一時に噴射する。
図5は、暖機後における燃焼制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンにより、通常運転時の燃焼形態が切り換えられるとともに、触媒20の温度低下を検出し、その活性維持が図られる。
S301では、エンジン1の運転状態として、吸入空気量QM、エンジン回転数NE、アクセル開度APO、触媒温度Tcat及び冷却水温度Tw等を読み込む。
S302では、読み込んだAPOに基づいてエンジン1の目標トルクTTCを算出する。目標トルクのTTCの算出は、TTCの値をAPOに対応させて割り付けたエンジン回転数NE毎のマップデータの検索により行われる。
S303では、エンジン1の運転状態が成層燃焼域にあるか否かを判定する。成層燃焼域にあるときは、S304へ進み、成層燃焼域にない(すなわち、均質燃焼域にある)ときは、S308へ進む。エンジン1の運転領域全体のうち、成層燃焼域は、比較的に低負荷側の領域として設定され、均質燃焼域は、成層燃焼域以外の高負荷側の領域として設定される。
S304では、成層燃焼のための目標燃空比TFBYA1を算出する。目標燃空比TFBYA1の算出は、TFBYA1の値をエンジン回転数NE及び目標トルクTTCに対応させて割り付けたマップデータの検索により行われる。
S305では、触媒温度Tcatが所定の温度TcatH以上であるか否かを判定する。TcatH以上であるときは、S306へ進み、TcatH未満であるときは、S307へ進む。
S306では、通常の成層燃焼によりエンジン1を運転させる。吸入空気量QM及びエンジン回転数NEに基づいて算出される理論値相当の基本噴射量(=K×QM/NE:Kを係数とする。)に算出したTFBYA1を乗算し、更に冷却水温度Tw等による各種の補正を施して、最終的な燃料噴射量Qfaを算出する。噴霧が内側キャビティ121aにより案内されることとなる噴射時期(図9に示す期間C中の時期)を設定し、この時期にQfaの全量を噴射する。本実施形態において、点火時期は、MBT(Minimum Advance For Best Torque)に設定する。
S307では、触媒20の温度が低下したとして、その早期維持のため、図4のフローチャートに従い排気昇温制御を実行する。
S308では、均質燃焼によりエンジン1を運転させる。吸入空気量QM及びエンジン回転数NEに基づいて算出される理論値相当の基本噴射量(=K×QM/NE)に、冷却水温度Tw等による各種の補正を施して、燃料噴射量Qfaを算出する。吸気行程中の噴射時期を設定するとともに、点火時期をMBTに設定する。
本実施形態に関し、図4に示すフローチャートのS207の処理が「噴射時期設定手段」に、同フローチャートのS203の処理が「点火時期設定手段」に、同フローチャートのS202,206及び208が「噴射量設定手段」に相当する。
本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
すなわち、エンジン1の冷間始動時又は触媒20の温度低下時を「昇温要求時」として排気昇温制御を実行し、燃料を第1の時期ITwp1と第2の時期ITwp2とに分けて噴射し、ITwp1に噴射された噴霧を「第2のキャビティ」としての外側キャビティ121bにより案内して、燃焼室14の中程に保持させるとともに、ITwp2に噴射された噴霧を「第1のキャビティ」としての内側キャビティ121aにより案内して、点火プラグ22の近傍に集中させることとした。
図11〜13は、本実施形態に係る排気昇温制御による混合気塊M1,M2の形成概念を負荷毎に示しており、図11は、設定噴射量QfretがQmin未満である極低負荷時のものを、図12,13は、QfretがQmin以上である低負荷時又は高負荷時のものを示している。
排気昇温制御では、燃料の分割噴射に併せ、点火時期が通常運転時のものよりも遅角させて設定され、これにより燃焼が緩慢なものとなり、混合気塊M1の領域に残存する酸素により、混合気塊M2の領域で発生したCO等の不完全燃焼物の後燃えの効果が得られ、排気温度が上昇する。本実施形態によれば、図12に示すように、内側キャビティ121aにより案内される噴霧S2により点火プラグ22の近傍に燃料の濃い混合気塊(「第2の混合気塊」に相当する。)M2が形成されるため、これにより着火に際しての火種が形成されるとともに、後燃えのための余剰燃料を得ることができる。また、外側キャビティ121bにより案内される噴霧S1により形成される混合気塊(「第1の混合気塊」に相当する。)M1が燃焼室14の中程に保持されるため、壁流の形成を抑制し、エミッションを低減することができる。
また、負荷の増大に対し、後噴射による噴射量を一定に保持する一方、先噴射による噴射量を増大させることとしたので(図3)、混合気塊M2を火種とする着火を安定させながら、要求負荷を実現することができる。
更に、Qmin未満の極低負荷時において、先及び後噴射による分割噴射を禁止し、内側キャビティ121aを利用した一括噴射によることとしたので(図11)、後噴射のための燃料の不足による着火の不安定化を回避することができる。
なお、以上では、後噴射による噴霧を内側キャビティ121aにより案内して、燃料の濃い混合気塊M2を点火プラグ22の近傍に集中させることとしたが、第2の時期ITwp2は、更に遅らせて上死点後に設定することもできる。この場合は、後噴射による噴霧に対し、ピストン12との衝突前に点火を行い、着火させることができる。
また、触媒温度Tcatは、以上のように温度センサ47により直接検出することによるほか、エンジン冷却水の温度、始動後の経過サイクル数又は低排温運転(たとえば、成層燃焼域のうち特に低負荷側の領域での運転)の継続時間等から推定することもできる。
本発明の一実施形態に係る筒内噴射内燃機関の構成 同上実施形態に係る負荷Tqに対する噴射時期ITwp1,ITwp2の設定 同上実施形態に係る暖機制御ルーチンのフローチャート 同上実施形態に係る排気昇温制御ルーチンのフローチャート 同上実施形態に係る燃焼制御ルーチンのフローチャート 目標トルクTTCによる燃料分割比補正値HOS1のテーブルデータ エンジン回転数NEによる燃料分割比補正値HOS2のテーブルデータ 冷却水温度Twによる燃料分割比補正値HOS3のテーブルデータ エンジン回転数NEに対する噴射時期ITwp1,ITwp2の設定 冷却水温度Twに対する噴射時期ITwp1,ITwp2の設定 排気昇温制御による極低負荷時における混合気塊の形成概念 同上低負荷時期における混合気塊の形成概念 同上高負荷時期における混合気塊の形成概念
符号の説明
1…エンジン、11…シリンダブロック、12…ピストン、121…冠面、121a…「第1のキャビティ」としての内側キャビティ、121b…「第2のキャビティ」としての外側キャビティ、13…シリンダヘッド、14…燃焼室、15…吸気ポート、16…吸気弁、17…排気ポート、18…排気マニホールド、19…排気弁、20…排気浄化触媒、21…インジェクタ、22…点火プラグ、23…燃料ポンプ、24…燃料配管、31…エンジンコントロールユニット、41…エアフローメータ、42…アクセルセンサ、43…クランク角センサ、44…冷却水温度センサ、45…燃圧センサ、46…排気センサ、47…触媒温度センサ、S…噴霧、M…混合気塊。

Claims (16)

  1. ピストンの冠面に対向させて配置され、筒内に燃料を直接噴射する燃料供給用のインジェクタと、
    前記インジェクタに隣接させて設置され、前記インジェクタにより噴射された噴霧に点火する点火プラグと、
    前記インジェクタによる燃料の噴射時期を設定する噴射時期設定手段と、を含んで構成され、
    前記ピストンには、前記噴霧を案内するためのキャビティとして、冠面の中央に形成された第1のキャビティと、この第1のキャビティの周囲に形成された第2のキャビティとが設けられ、
    前記噴射時期設定手段は、排気温度を上昇させる昇温要求時において、前記インジェクタによる燃料の噴射時期として、噴霧が前記第2のキャビティにより案内される圧縮行程中の第1の時期と、噴霧が前記第1のキャビティにより案内される、前記第1の時期よりも遅い第2の時期とを設定する筒内噴射内燃機関。
  2. 前記排気昇温時において、前記点火時期を前記排気昇温時以外の通常運転時におけるよりも遅角させて設定する点火時期設定手段を更に含んで構成される請求項1に記載の筒内噴射内燃機関。
  3. 前記点火時期設定手段による点火時期の遅角量が大きいときほど、前記インジェクタによる1サイクル当たりの燃料噴射量を増大させる手段を更に含んで構成される請求項2に記載の筒内噴射内燃機関。
  4. 前記インジェクタによる燃料噴射量を設定する噴射量設定手段を更に含んで構成され、
    前記噴射量設定手段は、前記昇温要求時において、前記第1の時期に関する第1の噴射量と、前記第2の時期に関する第2の噴射量とを設定し、
    前記点火時期において、前記第1のキャビティ内及びその上方に、理論値又はこれよりも低い可燃空燃比の混合気塊が形成される請求項1〜3のいずれかに記載の筒内噴射内燃機関。
  5. 前記噴射量設定手段は、前記第1及び第2の噴射量を、燃焼室全体での平均空燃比が理論値又はこれよりも高い値となるものとして設定する請求項4に記載の筒内噴射内燃機関。
  6. 前記噴射量設定手段は、機関に対する要求負荷の増大に応じ、前記第1の噴射量を増大させる請求項4又は5に記載の筒内噴射内燃機関。
  7. 前記噴射量設定手段は、機関の回転速度の上昇に応じ、前記第1の噴射量に対する前記第2の噴射量の割合を増大させる請求項4〜6のいずれかに記載の筒内噴射内燃機関。
  8. 前記噴射量設定手段は、機関の温度が所定の温度よりも低いときに、これ以外のときと比較して、前記第1の噴射量に対する前記第2の噴射量の割合を減少させる請求項4〜7のいずれかに記載の筒内噴射内燃機関。
  9. 前記噴射時期設定手段は、機関の回転速度の上昇に応じ、前記第1及び第2の時期を進角させる請求項1〜8のいずれかに記載の筒内噴射内燃機関。
  10. 前記噴射時期設定手段は、機関の回転速度の上昇に対し、第2の時期を前記第1の時期よりも大きく進角させる請求項9に記載の筒内噴射内燃機関。
  11. 前記噴射時期設定手段は、機関の温度が所定の温度よりも低いときに、これ以外のときと比較して、前記第2の時期を進角させる請求項1〜10のいずれかに記載の筒内噴射内燃機関。
  12. 排気通路に設置された排気浄化用の触媒を更に含んで構成され、
    前記噴射時期設定手段は、前記触媒の不活性時を前記昇温要求時として、前記第1及び第2の時期を設定する請求項1〜11のいずれかに記載の筒内噴射内燃機関。
  13. 前記昇温要求時において、機関の運転状態が所定の負荷よりも低負荷側の領域にあるときに、前記噴射時期設定手段による前記第1及び第2の時期の設定を禁止し、噴霧が前記第1のキャビティにより案内される圧縮行程中の第3の時期を設定する手段を更に含んで構成される請求項1〜12のいずれかに記載の筒内噴射内燃機関。
  14. 前記噴射時期設定手段は、第1の時期に関する燃料の噴射期間の終期が、前記第2の時期よりも所定の時間以上早い時期となるものとして、前記第1及び第2の時期を設定する請求項1〜13のいずれかに記載の筒内噴射内燃機関。
  15. 前記噴射時期設定手段に対し、機関の自律回転前における前記第1及び第2の時期の設定を禁止する手段を更に含んで構成される請求項1〜14のいずれかに記載の筒内噴射内燃機関。
  16. ピストンの冠面に対向させて配置され、筒内に燃料を直接噴射する燃料供給用のインジェクタと、
    前記インジェクタに隣接させて設置され、前記インジェクタにより噴射された噴霧に点火する点火プラグと、を含んで構成され、
    前記ピストンの冠面には、前記噴霧を案内するためのキャビティが形成され、
    排気温度を上昇させる昇温要求時において、前記インジェクタにより圧縮行程以降の複数の時期に燃料が噴射され、比較的に早い第1の時期に噴射された噴霧が前記キャビティにより案内されて、燃焼室の比較的に広い範囲に偏在する第1の混合気塊を形成する一方、この第1の時期よりも遅い第2の時期に噴射された噴霧が前記点火プラグの近傍に偏在する第2の混合気塊を形成し、前記点火プラグによりこの第2の混合気塊に対して点火が行われる筒内噴射内燃機関。
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