以下、本発明の実施の形態について図面に基づき説明する。
本実施形態に係るエンジンシステム構成の代表例について図1を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係るエンジンシステム構成図を示しており、ここでは特にディーゼルエンジンの排気還流システムについて述べる。まず、係るディーゼルエンジンシステムにおいては、ドライバーの操作を検出するアクセルセンサ1,燃料を高圧に加圧するコモンレール5やターボチャージャ6,後処理系7としては排気中に含まれる微粒子状物質を酸化除去するDPFやNOx触媒等が装着されており、CPU,ROM,RAMを含むコンピュータを主体として構成されているECU8によりシステムを制御する。また、吸気通路の上流には新気ガス流量を検出するAFS2が備えられている。またNOx低減のためにエンジンから排出された排気の一部を吸気へ再循環するEGRシステムにおいては、還流路9の上流にはEGRガス温度を低下させるためのEGRクーラ10が配設されており、冷却されたEGRガスは下流に設けられたEGRバルブ11によって流量の制御がなされている。EGR流量計12は、例えばEGRクーラ10の下流に位置する還流路9に取付けられEGRガスの質量流量を直接計量するものである。さらにエンジンの出口にはA/Fを検出するためのA/Fセンサ3が備えられている。
EGR流量の制御方法について図2,図3,図4,図5により説明する。
図2のブロック101にはアクセル開度及びエンジン回転数の情報が入力されており、その情報をもとに目標EGR流量を算出する。
ブロック101の算出は図3に示すように設定されたマップにより行われる。次に図4に示すように図2により算出された目標EGR流量により目標EGRバルブ開度を算出し、その目標値に応じてEGRバルブを制御する。ブロック102では図5に示すように設定されたテーブルにより目標EGRバルブ開度を算出する。
次に本発明のEGRシステムの診断方法について図6,図7により説明する。図6のブロック103には図2のブロック101で算出された目標EGR流量及びEGR流量計
12により計測されたEGR流量が入力され、ブロック103で故障判定を行う。図7はブロック103の故障判定方法について示す。まず、ステップ201で目標EGR流量の読み込みを行いステップ202でEGR流量の読み込みを行う。ステップ203では目標EGR流量とEGR流量の偏差を計算し、ステップ204であらかじめ設定されたエミッションの許容値に相当するしきい値と比較し、偏差がしきい値よりも大きい時はステップ205で故障判定を行う。
次に本発明のEGRシステムの診断方法のもう一つの例について図8,図9図10により説明する。図8のブロック104にはブロック105により算出された正常時のEGR流量脈動幅および及びEGR流量計12により計測されたEGR流量が入力され、ブロック103で故障判定を行う。
ブロック105の正常時のEGR流量脈動幅の算出方法は図9に示すようにアクセル開度およびエンジン回転数に対応させてあらかじめマップに設定しておき算出する。次にブロック104の算出方法を図10により説明する。
まず、ステップ301で正常時のEGR流量脈動幅の読み込みを行いステップ302でEGR流量の読み込みを行う。ステップ303ではEGR流量の変動幅を算出し、ステップ304では正常時のEGR流量脈動幅とEGR流量の変動幅の偏差を計算し、ステップ305であらかじめ設定されたエミッションの許容値に相当するしきい値と比較し、偏差がしきい値よりも大きい時はステップ306で故障判定を行う。
以下に本発明が適用される別のEGRガス制御システムについて説明する。
図11は、本発明が適用される一実施形態による内燃機関の排気ガス還流システムの構成を示す。
エンジンに吸入される空気は、エアクリーナ41において吸気中の塵を除去される。そして、吸気流量検出器42によって、吸気流量G1が検出される。検出された吸気流量
G1の信号は、エンジンコントロールユニット(ECU)421及び排気ガス環流コントローラ(EGRCONT)420に入力する。吸気は、ターボチャージャーのコンプレッサ43にて加圧され、吸気管44を通過し、吸気流量制御弁5で流量若しくは圧力が制御される。吸気は、さらに、吸気マニホールド6に流入し、エンジン47の各気筒に分配される。
吸気流量制御弁45の開度は、排気ガス環流コントローラ420から出力される吸気流量制御信号CTHによって制御される。吸気流量制御弁45はモータで駆動される例えば、バタフライ式の弁であり、バタフライ弁の開度信号が検出され、開度信号θTHとして、排気ガス環流コントローラ420に取り込まれる。
エンジン47に設けられた燃料噴射弁419からは、エンジン47のシリンダに燃焼用燃料が供給される。燃料噴射弁419への燃料供給は、燃料配管418を介して燃料ポンプ17が行われる。また、燃料噴射弁419の噴射量は、ECU421によって制御され、ECU421は、燃料噴射量信号FINJを燃料噴射弁419に供給する。
エンジン47で燃焼が終了した排気は、排気マニホールド48により集合され、ターボチャージャーのタービン49を通過した後、触媒410,排気管411を通って大気中に排気される。排気マニホールド48には分岐部412が設けられており、エンジン47からの排気ガスの一部が分岐される。分岐された排気ガスは、還流ガスとして、還流管413aで導かれる。環流管413aには、還流ガス冷却器414が設けられている。還流ガス冷却器414によって冷却された還流ガスは、還流管413b,還流ガス制御弁416を通過し、吸気マニホールド46に還流する。
還流ガス制御弁416の開度は、排気ガス環流コントローラ420から出力される環流ガス制御弁416の開度制御信号CEGによって制御される。環流ガス制御弁416は、例えば、シートバルブ式の弁であり、シートバルブのストローク量が検出され、ストローク信号STEGとして、排気ガス環流コントローラ420に取り込まれる。環流ガス制御弁416として、例えば、バタフライ式の弁を用いる場合には、バタフライ弁の開度信号が、排気ガス環流コントローラ420に取り込まれる。
還流管413bには、還流ガス流量検出器415が設けられており還流管内部を流れる還流ガス流量G2を測定する。測定された環流ガス流量G2は、排気ガス環流コントローラ420に入力する。なお、還流ガス冷却器414は、還流ガスの温度を下げるため設けられているが、省略することも可能である。
ECU421には、エンジン7の回転数信号NEや、吸気流量検出器2からの吸気流量信号G1等のほか図示されないエンジンや車両の状態を示す信号が入力する。ECU21は、これらの信号に基づいて演算等を行い、各種デバイスへ制御指令値として各種デバイスに送る。ECU421は、エンジン7の回転数信号NEや吸気流量信号G1等の信号に基づいてエンジン47の運転状態を判定する。ECU421は、この運転状態に応じて、還流ガス還流率指令値RSETを排気ガス環流コントローラ420に出力する。
排気ガス環流コントローラ420は、吸気流量G1と環流ガス流量G2とから排気ガスの環流率Rを求める。そして、排気ガス環流コントローラ420は、求められた環流率Rが還流ガス還流率指令値RSETと一致するように、吸気流量制御弁45および/または還流ガス制御弁16の開度をフィードバック制御する。すなわち、本実施形態では、排気ガスの環流量が目標値となるように、還流ガス制御弁416だけなく、吸気流量制御弁
45をも制御する。
次に、図12乃至図14を用いて、本実施形態による内燃機関の排気ガス還流装置における排気ガス環流コントローラの制御内容について説明する。
図12は、本発明が適用される内燃機関の排気ガス還流装置の制御系のブロック図である。図13は、同制御システムをモデル化した図である。なお、図11と同一符号は、同一部分を示している。図14は、本発明が適用される内燃機関の排気ガス還流装置における排気ガス環流コントローラの制御内容を示すフローチャートである。
図12に示すように、排気ガス環流コントローラ420には、ECU421が出力する還流ガス還流率指令値RSET,吸気流量検出器42によって検出された吸気流量信号
G1及び還流ガス流量検出器415によって検出された還流ガス流量G2が入力する。排気ガス環流コントローラ420は、排気ガスの環流率Rが目標値RSETとなるように、還流ガス制御弁416に開度制御信号CEGを出力し、吸気流量制御弁5に吸気流量制御信号CTHを出力し、これらの弁416,45を制御する。なお、排気ガス環流コントローラ420は、排気ガスの環流率Rを、吸気流量信号G1及び還流ガス流量G2から、
(G2/(G1+G2))として算出する。
なお、以下の説明において、吸気流量制御弁45の応答性が、還流ガス制御弁416の応答性よりも早いものとする。具体的には、吸気流量制御弁45は、例えば、ボア径が
50φのバタフライ弁とし、還流ガス制御弁416が、例えば、シート径が30φのシート弁とすると、このとき、吸気流量制御弁45の応答性が、還流ガス制御弁416の応答性よりも早いものとなる。
次に、図13,図14を用いて、排気ガス環流コントローラの制御内容について説明する。なお、以下の制御内容は、全て排気ガス環流コントローラ420によって実行される。
図14のステップs500において、排気ガス環流コントローラ420は、吸気流量信号G1及び還流ガス流量G2から、排気ガスの環流率Rを、(G2/(G1+G2))として算出する。
次に、ステップs510において、ECU421から入力した排気ガスの環流率Rの目標値RSETの変化分ΔRSETが、予め設定されている基準値ΔR0よりも大きいか否かを判定する。変化分ΔRSETが、基準値ΔR0よりも大きい場合には、ステップ
s520に進み、そうでない場合にはステップs550に進む。すなわち、ステップ
s510では、排気ガスの環流率Rの目標値RSETが大きく変化したか否かを判定する。内燃機関の過渡的な運転条件変化があり、排気ガス中の有害物質低減のため、排気ガス還流率を急変する必要が生じたか否かを判定する。
変化分ΔRSETが基準値ΔR0よりも大きい場合、すなわち、排気ガス還流率を急変する必要が生じた場合には、ステップs520において、ステップs510で算出された排気ガスの環流率Rが、排気ガスの環流率Rの目標値RSETと等しいか否かを判定する。
環流率Rが目標値RSETより大きい場合には、ステップs530において、吸気流量制御弁45に出力する開度制御信号CTHを減少させ、吸気流量制御弁5の開度が小さくなるように制御する。そして、ステップs520に戻り、環流率Rが目標値RSETに等しくなるまで繰り返される。
一方、環流率Rが目標値RSETより小さい場合には、ステップs540において、吸気流量制御弁45に出力する開度制御信号CTHを増加させ、吸気流量制御弁45の開度が大きくなるように制御する。そして、ステップs520に戻り、環流率Rが目標値RSET
に等しくなるまで繰り返される。
以上のように、ステップs520,s530,540の処理を繰り返すことにより、環流率Rが目標値RSETに等しくなるまでフィードバック制御される。このとき、吸気流量制御弁5の応答性が、還流ガス制御弁416の応答性よりも早いものとしているので、排気ガス還流率を急変する必要が生じた場合でも、速やかに排気ガス環流率を所定の目標値に変更することが可能となる。
一方、ステップs510の判定で、変化分ΔRSETが基準値ΔR0以下と判定された場合、すなわち、排気ガス還流率の変化がそれほど大きくない場合には、ステップs550
において、ステップs510で算出された排気ガスの環流率Rが、排気ガスの環流率Rの目標値RSETと等しいか否かを判定する。
環流率Rが目標値RSETより大きい場合には、ステップs560において、還流ガス制御弁416に出力する開度制御信号CEGを減少させ、還流ガス制御弁416の開度が小さくなるように制御する。そして、ステップs550に戻り、環流率Rが目標値RSETに
等しくなるまで繰り返される。
一方、環流率Rが目標値RSETより小さい場合には、ステップs570において、還流ガス制御弁416に出力する開度制御信号CEGを増加させ、還流ガス制御弁416の開度が大きくなるように制御する。そして、ステップs550に戻り、環流率Rが目標値RSETに等しくなるまで繰り返される。
以上のように、ステップs550,s560,570の処理を繰り返すことにより、環流率Rが目標値RSETに等しくなるまでフィードバック制御される。このとき、還流ガス制御弁416の応答性は、吸気流量制御弁45の応答性よりも遅いものであるということは、より微妙な開度制御が可能であり、正確に、排気ガス環流率を所定の目標値に変更することが可能となる。
なお、以上の説明では、吸気流量制御弁5の応答性が、還流ガス制御弁416の応答性よりも早いものとしたが、逆に、還流ガス制御弁416の応答性が、吸気流量制御弁45の応答性よりも早い場合もある。具体的には、吸気流量制御弁45は、例えば、ボア径が30φのバタフライ弁とし、還流ガス制御弁416が、例えば、シート径が50φのシート弁とすると、このとき、還流ガス制御弁416の応答性が、吸気流量制御弁45の応答性よりも早いものとなる。このような場合には、排気ガス還流率を急変する必要が生じた場合には、応答性の早い還流ガス制御弁416を制御し、急変が不要の場合には、応答性の遅い吸気流量制御弁45を制御して制御精度が向上するようにする。
以上のようにして、排気ガス還流率を急変する必要が生じた場合には、応答性の早い方の制御弁を制御することにより、急激な変化にも対応でき、一方、急変が不要な場合には、応答性の遅い方の制御弁を制御することにより、制御精度を向上することができる。
以上説明した排気ガス還流率を急変する必要が生じた場合の吸気流量制御弁45の応答性と還流ガス制御弁416の応答性との関係は還流ガス制御弁416が特開2001−
214816号公報に示されるようなバタフライ弁であっても、特開平10−213017号公報に記載されているような往復動弁であっても、また、その取付け位置が特表2002−521610号公報に記載されるように、吸気通路の中に配置されている場合においても同様である。
そして、本実施例では、s500の前段階で、G1とG2を読み込み、G2を読み込んだ後に図7及び図10の故障判定フローを実行する。図7及び図10の診断フローは本実施例の場合は、新しい目標指令値が発生する度に、割込み処理で実行しているが、メインフローの中でステップs500を実行する前に常時、実行するようにすることもできる。また、図14の目標還流率Rに対して、例えば3秒経っても実還流率Rが、所定の範囲まで近づかない場合に、割込み処理によって実行しても良い。
次に、図13を用いて、本実施形態による内燃機関の排気ガス還流装置における排気ガス環流コントローラのフィードバック制御方法について説明する。
図13は、本発明の一実施形態による内燃機関の排気ガス還流装置において、エンジン7の吸気側の吸気流量制御弁45から排気側のターボチャージャーのタービン49までをモデル化した図である。なお、図12と同一符号は、同一部分を示している。
図13において、吸気流量制御弁5を通過する流量と圧力をそれぞれG1,p1とし、ターボチャージャーのタービン9を通過する流量と圧力をそれぞれG3,p3とし、還流ガス制御弁416においてエンジン7を基準にしてエンジン47の排気側である還流管
413aを通過する流量と圧力をそれぞれG2,p2とすると、この系の関係は、以下の式(1),式(2),式(3)の連立方程式で表わすことができる。
G1+G2=G3=f3(ne,ηv,p2) …(1) G1=f1(p1,p2,ζ) …(2) G2=f2(p2,p3,ζ′) …(3) ここで、ne:エンジン回転数、η:エンジンの体積効率、v:エンジン排気量、p1:吸気圧力、p2:エンジンの背圧、p3:ターボチャージャーのタービン背圧、ζ:吸気流量制御弁損失係数、ζ′:還流ガス制御弁損失係数、f1:吸気流量制御弁流量特性、f2:還流ガス制御弁流量特性である。
一方、還流ガス還流率Rは、上述したように、R=G2/(G1+G2)で与えられる。つまり、吸気流量制御弁5を通過する流量G1と還流ガス制御弁を通過する流量G2の値が求まれば一義的に確定する。
ここで、式(2)で示される通り、吸気流量制御弁5を通過する流量G1は、損失係数ζ、つまり吸気流量制御弁5弁の開度により制御可能である。同様に、式(3)で示される通り、還流ガス制御弁416を通過する流量G2は、損失係数ζ′、つまり還流ガス制御弁416の弁開度により制御可能である。つまり、流量G1,G2の値を基に、吸気流量制御弁45の弁開度と還流ガス制御弁416の弁開度との指令系にフィードバック系を組むことにより、還流ガス還流率Rを制御できることになる。
さらに、この場合予め吸気流量制御弁45および還流ガス制御弁416の流量特性を把握して置くことにより、制御速度の向上が可能となる。すなわち、例えば、吸気流量制御弁45を駆動して吸気流量を変化させた場合の単位時間当たりの流量変化分と、還流ガス制御弁416を駆動して吸気流量を変化させた場合の単位時間当たりの流量変化分とを予め把握する。そして、吸気流量制御弁45を駆動して吸気流量を変化させた場合の単位時間当たりの流量変化分が、還流ガス制御弁416を駆動して吸気流量を変化させた場合の単位時間当たりの流量変化分よりも早い場合、すなわち、吸気流量制御弁45の応答性が還流ガス制御弁416の応答性よりも早い場合には、排気ガス還流率を急変する必要が生じた場合には、吸気流量制御弁45を制御することにより、速やかに排気ガス環流率を所定の目標値に変更することが可能となり、制御速度が向上する。
次に、図15及び図16を用いて、本実施形態による内燃機関の排気ガス還流装置に用いる還流ガス流量検出器415の構成について説明する。
図15は、本発明が用いられる内燃機関の排気ガス還流システムに用いる還流ガス流量検出器の第1の構成を示す部分断面図である。図16は、本発明が用いられる内燃機関の排気ガス還流システムに用いる還流ガス流量検出器の第2の構成を示す部分断面図である。
図15に示す還流ガス流量検出器415は、環流管内部の圧力により、環流ガス流量を測定するものである。還流管13bの内壁面の一部には、絞り部153が形成されている。低圧側圧力検知器152は、絞り部153に検知部が開口するように設けられている。
高圧側圧力検知器151は、絞り部153が設けられていない場所の環流管413bに検知部が開口するように設けられている。低圧側圧力検知器152と、高圧側圧力検知器
151とにより、還流管413bの内部の圧力を測定する。低圧側圧力検知器152は、絞り部153に設けられることにより、ベルヌーイの定理によるベンチュリ効果を利用することができる。排気ガス環流コントローラ420は、2個の圧力検知器151,152の圧力差から、還流管413bの内部の還流ガス流量G2を検知することができる。さらに、環流管413bの内部を流れる環流ガスの温度を検出する温度センサ4154を備えている。排気ガス環流コントローラ420は、圧力検知器151,152の圧力差から求められた還流ガス流量G2を、温度センサ154によって検出された環流ガス温度によって補正する。なお、還流ガス流量検出器415の内部に、圧力検知器151,152の圧力差から還流ガス流量G2を求め、さらに、温度センサ154によって検出された環流ガス温度によって補正するための回路素子を備え、還流ガス流量検出器15が、環流ガス流量G2の検出信号を排気ガス環流コントローラ420に出力するようにしてもよいものである。
図16に示す還流ガス流量検出器415Aは、熱線式検知器により、環流ガス流量を測定するものである。還流ガス流量検出器156は、還流管413bの壁面に設置されている。また、還流ガス流量検出器156には、検知エレメント157が設けられており、還流管413bの内部の還流ガス流量を測定している。検知エレメント157には電流が流され、一定温度となるように加熱されている。環流ガスの流量に応じて、検知エレメント157から奪われる熱量が変化する。このとき、検知エレメント157の温度が一定となるように制御することにより、検知エレメント157を流れる電流が環流ガス流量を示す信号となる。この方式では、熱線式検知器を用いるので、質量流量つまりG2を直接測定することができる。
以上は、還流ガス流量検出器415の構成の説明であるが、吸気流量検出器2としても、図14に示した圧力を検知する方式のものや、図15に示した熱線式のものを用いることができる。
次に、図17及び図18を用いて、本実施形態による内燃機関の排気ガス還流装置に用いる吸気流量制御弁45の特性について説明する。
図17,図18は、本発明の一実施形態による内燃機関の排気ガス還流装置に用いる吸気流量制御弁の駆動方式の違いによる特性を示す図である。図17,図18において、横軸は時間を示し、縦軸は吸気流量制御弁の弁開度を示している。縦軸の弁開度は、最大開度のときを100%として、百分率で示している。
図17において、実線X1は、吸気流量制御弁45として、電子制御方式のスロットルアクチュエータを用いた場合の弁開度の特性を示している。実線X2は、吸気流量制御弁45として、負圧式のスロットルアクチュエータを用いた場合の弁開度の特性を示している。
実線X2で示す負圧式アクチュエータでは、弁開度Aと全開点であるBのみの2開度しか制御できず還流ガス還流率を前述のフィードバック制御するのが困難である。
一方、実線X1で示すように、電子制御方式のスロットルアクチュエータを用いた場合、弁開度0から全開点Bまで無段階に制御可能であり、フィードバック制御を容易に実現できる。よって、本実施形態に用いる吸気流量制御弁45としては、電子制御方式のスロットルアクチュエータを用いるのが好適である。
次に、図18は、電子制御方式のスロットルアクチュエータの駆動方式の違いによる特性の違いを説明している。実線Y1は、直流電動機によりスロットルバルブを駆動する方式のスロットルアクチュエータにおける応答性を示している。実線Y1は、ステップモータによりスロットルバルブを駆動する方式のスロットルアクチュエータにおける応答性を示している。
ステップモータは、駆動パルスに応じた回転をするためオープンループ制御が可能であるが、図中の実線Y2で示す特性のように、直流電動機方式に比べて応答速度が遅いものである。一般にステップモータは脱調を回避する等の制約から高速化が困難であり、高速化を求める場合ステップモータの大型化ひいてはコスト高を招くものである。
これに対して、直流電動機は、小型で高回転タイプの物が容易に入手でき、さらに、位置のフィードバック制御を行うことで、小型,高速で低コストの駆動原として好適である。
また、制御分解能の観点で見た場合、ステップモータでは駆動ステップが制御分解能となり、高速化と相反する。一方、直流電動機方式の場合、フィードバック制御に用いる位置検出センサの分解能により決まり、ポテンショメータ等の連続出力方式のものを使用すれば容易に高分解能なフィードバック系が成立する。
したがって、電子制御方式のスロットルアクチュエータの駆動源としては、直流電動機が好適である。なお、ブラシレスモータを採用した場合でも、直流電動機と同様な結果が得られる。
以上説明したように、本実施形態によれば、排気ガス還流率を急変する必要が生じた場合でも、応答性の早い方の制御弁を制御することにより、急激な変化にも対応でき、一方、急変が不要な場合には、応答性の遅い方の制御弁を制御することにより、制御精度を向上することができる。
次に、図19〜図21を用いて、本発明が用いられる他の実施形態による内燃機関の排気ガス還流
装置の構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による内燃機関の排気ガス還流装置を用いたエンジンシステムの構成は、図12に示したものと同様である。
図19は、本発明が用いられる他の実施形態による内燃機関の排気ガス還流装置の制御系のブロック図である。なお、図12と同一符号は、同一部分を示している。図20は、本発明の他の実施形態による内燃機関の排気ガス還流装置に用いるマップの構成図である。図21は、本発明の他の実施形態による内燃機関の排気ガス還流装置における排気ガス環流コントローラの制御内容を示すフローチャートである。なお、図12と同一符号は、同一部分を示している。
図19に示すように、本実施形態では、排気ガス環流コントローラ420Aは、その内部に3次元マップ420Bを備えている。排気ガス環流コントローラ420Aには、
ECU421が出力する還流ガス還流率指令値RSET,吸気流量検出器2によって検出された吸気流量信号G1,還流ガス流量検出器415によって検出された還流ガス流量
G2,吸気流量制御弁5からの開度信号θTH及び還流ガス制御弁416からのストローク信号STEGが入力する。
排気ガス環流コントローラ420Aは、排気ガスの環流率Rを、吸気流量信号G1及び還流ガス流量G2から、(G2/(G1+G2))として算出する。排気ガス環流コントローラ420Aは、排気ガスの環流率Rが目標値RSETとなるように、最初にマップ
420Bを用いて、還流ガス制御弁16に開度制御信号CEGや、吸気流量制御弁5に吸気流量制御信号CTHを出力し、さらに、フィードバック制御により、還流ガス制御弁
416に開度制御信号CEGを出力し、吸気流量制御弁45に吸気流量制御信号CTHを出力し、これらの弁416,45を制御する。
次に、図20を用いて、3次元マップ420Bの内容について説明する。マップ420B
は、新気通路開度θTH(%)と、環流通路開度STEG(%)と、環流率R(%)との3次元マップである。新気通路開度θTH(%)は、吸気流量制御弁45がバタフライ式の弁の場合、最大開度を100%として、開度信号θTHを百分率で示したものである。環流通路開度STEG(%)は、環流ガス制御弁416がシートバルブ式の弁の場合、シートバルブの最大ストローク量を100%として、ストローク信号STEGを百分率で示したものである。
ここで先出の実施例のように環流ガス制御弁416がバタフライ式の弁の場合は、吸気流量制御弁45の場合と同様、最大開度を100%として、開度信号θTHを百分率で示すことになる。
図20は、あるエンジンの運転状態時において、上述した式(1),式(2),式(3)
を解いた結果を示している。ここでは、図示の関係で、吸気流量制御弁45の指示範囲は開度5%から25%まで、同様に還流ガス制御弁414の指示範囲は開度0%から60%までとなっている。3次元のマップ上の格子点は、還流ガス還流率を満足する吸気流量制御弁5弁および還流ガス制御弁の弁開度の関係を示している。3次元マップ420Bは、エンジンの各運転状態に対応する複数の3次元マップを設けている。そして、エンジンの運転状態に応じたマップを使用して、そのマップ上の格子点を選ぶことにより、オープンループ制御によっても還流ガス還流率を制御することもできる。
ここで、図20に示した吸気流量制御弁5と還流ガス制御弁416の弁開度変化に対するガス還流率の変化を見た場合、吸気流量制御弁45の開度変化に対するガス還流率の変化割合の方が、吸気流量制御弁5の開度変化に対するガス還流率の変化割合よりも大きくなっている。さらに、電子制御方式のスロットルアクチュエータでは弁開度が0%から
100%まで動作するのに100msec以下のものが実用化されており、図20中の5%から25%の領域は20msec程度で動作可能である。従って、図20に示した例では、吸気流量制御弁45の応答性が、還流ガス制御弁416の応答性よりも早く、還流ガス還流率指令値RSETが、例えばパルス的に急変した場合でも、電子制御方式のスロットルアクチュエータである吸気流量制御弁5を主にして動作させれば、パルス的な指令値の変動にも対応できる。すなわち、過渡的なエンジン運転状態の変化にも対応できる。
次に、図21を用いて、排気ガス環流コントローラ420Bの制御内容について説明する。なお、以下の制御内容は、全て排気ガス環流コントローラ420Bによって実行される。また、図11と同一ステップ番号は、同一の処理内容を示している。本実施形態では、図11の処理に対して、ステップs610〜s640の処理が追加されている。
図21のステップs500において、排気ガス環流コントローラ420Bは、吸気流量信号G1及び還流ガス流量G2から、排気ガスの環流率Rを、(G2/(G1+G2))として算出する。
次に、ステップs510において、ECU421から入力した排気ガスの環流率Rの目標値RSETの変化分ΔRSETが、予め設定されている基準値ΔR0よりも大きいか否かを判定する。変化分ΔRSETが、基準値ΔR0よりも大きい場合には、ステップ
s610に進み、そうでない場合にはステップs630に進む。すなわち、ステップ
s510では、排気ガスの環流率Rの目標値RSETが大きく変化したか否かを判定する。内燃機関の過渡的な運転条件変化があり、排気ガス中の有害物質低減のため、排気ガス還流率を急変する必要が生じたか否かを判定する。
変化分ΔRSETが基準値ΔR0よりも大きい場合、すなわち、排気ガス還流率を急変する必要が生じた場合には、ステップs610において、そのときのエンジンの運転状態に応じた3次元マップ420Bを用いて、還流ガス還流率指令値RSETに対応する環流率Rと、環流通路開度STEG(%)とから、目標とする新気通路開度θTH(%)を求める。
そして、ステップs620において、目標とする新気通路開度θTH(%)となるための開度制御信号CTHを吸気流量制御弁5に出力して、吸気流量制御弁45の開度が目標とする新気通路開度θTH(%)となるように、オープンループで制御する。このように、オープンループで新気通路開度θTH(%)となるように、吸気流量制御弁45の開度を制御することで速やかに目標とする新気通路開度θTH(%)付近に制御することができる。
次に、ステップs520において、ステップs510で算出された排気ガスの環流率Rが、排気ガスの環流率Rの目標値RSETと等しいか否かを判定する。
環流率Rが目標値RSETより大きい場合には、ステップs530において、吸気流量制御弁45に出力する開度制御信号CTHを減少させ、吸気流量制御弁5の開度が小さくなるように制御する。そして、ステップs520に戻り、環流率Rが目標値RSETに等しくなるまで繰り返される。
一方、環流率Rが目標値RSETより小さい場合には、ステップs540において、吸気流量制御弁45に出力する開度制御信号CTHを増加させ、吸気流量制御弁45の開度が大きくなるように制御する。そして、ステップs520に戻り、環流率Rが目標値RSET
に等しくなるまで繰り返される。
以上のように、ステップs520,s530,540の処理を繰り返すことにより、環流率Rが目標値RSETに等しくなるまでフィードバック制御される。以上のように、吸気流量制御弁45の応答性が、還流ガス制御弁416の応答性よりも早いので、排気ガス還流率を急変する必要が生じた場合でも、速やかに排気ガス環流率を所定の目標値に変更することが可能となる。
一方、ステップs510の判定で、変化分ΔRSETが基準値ΔR0以下と判定された場合、すなわち、排気ガス還流率の変化がそれほど大きくない場合には、ステップs630
において、そのときのエンジンの運転状態に応じた3次元マップ420Bを用いて、還流ガス還流率指令値RSETに対応する環流率Rと、新気通路開度θTH(%)とから、目標とする環流通路開度STEG(%)を求める。
そして、ステップs240において、目標とする環流通路開度STEG(%)となるための開度制御信号CEGを還流ガス制御弁416に出力して、還流ガス制御弁416の開度が目標とする環流通路開度STEG(%)となるように、オープンループで制御する。
次に、ステップs550において、ステップs510で算出された排気ガスの環流率Rが、排気ガスの環流率Rの目標値RSETと等しいか否かを判定する。
環流率Rが目標値RSETより大きい場合には、ステップs560において、還流ガス制御弁416に出力する開度制御信号CEGを減少させ、還流ガス制御弁416の開度が小さくなるように制御する。そして、ステップs550に戻り、環流率Rが目標値RSETに
等しくなるまで繰り返される。
一方、環流率Rが目標値RSETより小さい場合には、ステップs570において、還流ガス制御弁416に出力する開度制御信号CEGを増加させ、還流ガス制御弁416の開度が大きくなるように制御する。そして、ステップs550に戻り、環流率Rが目標値RSETに等しくなるまで繰り返される。
以上のように、ステップs550,s560,570の処理を繰り返すことにより、環流率Rが目標値RSETに等しくなるまでフィードバック制御される。このとき、還流ガス制御弁416の応答性は、吸気流量制御弁45の応答性よりも遅いものであるということは、より微妙な開度制御が可能であり、正確に、排気ガス環流率を所定の目標値に変更することが可能となる。
なお、以上の説明では、吸気流量制御弁45の応答性が、還流ガス制御弁416の応答性よりも早いものとしたが、逆に、還流ガス制御弁416の応答性が、吸気流量制御弁
45の応答性よりも早い場合もある。このような場合には、排気ガス還流率を急変する必要が生じた場合には、応答性の早い還流ガス制御弁416を最初にオープンループで制御し、次にフィードバック制御し、急変が不要の場合には、応答性の遅い吸気流量制御弁5を制御して制御精度が向上するようにする。
以上説明したように、本実施形態によれば、排気ガス還流率を急変する必要が生じた場合でも、応答性の早い方の制御弁を最初オープンループで制御することにより、速やかに目標開度付近に弁を移動し、次にフィードバック制御することにより、目標開度に収束させることにより、急激な変化にも対応でき、一方、急変が不要な場合には、応答性の遅い方の制御弁を制御することにより、制御精度を向上することができる。
そして、本実施例においては、還流率Rが目標値に対して所定の値まで所定時間内に到達しない場合、図7,図10の診断フロー以外に目標吸入空気量に対する実空気量(吸気流量検出器42の検出値)とを比較し、吸気系の異常がないかを判定する。これによって、システムの故障箇所がより正確に判断できる。
以上に説明した本発明が適用されるEGR制御システムの第2の実施例の特徴を纏めると以下の通りである。
ディーゼルエンジンのような内燃機関においては、排気ガス浄化、特に、窒素酸化物の排出削減のためには、該排気ガス還流制御が重要となる。従来の排気ガス環流装置としては、例えば、特開2003−83034号公報,特許第3329711号公報,特表2003
−516496号公報に記載されているように、所定の排気ガス還流率となるように、排気ガス環流弁の開度を制御していた。
しかしながら、排気ガス環流弁の開度を制御する従来の方式では、内燃機関の運転領域全て、特に、過渡的な運転条件変化に対して、排気ガス中の有害物質低減のため、排気ガス還流率を急変する必要が生じた場合、適正な制御を行うことが困難であるという問題があった。
(1)本実施例は、内燃機関の排気ガス還流通路の還流流量を制御する還流ガス制御弁と、内燃機関の吸気通路の流量制御する吸気制御弁とを備えた内燃機関の排気ガス還流装置であって、前記吸気通路の流量を検出する吸気量検知器と、前記排気ガス還流通路の排気ガス還流流量を検出する還流量検知器と、前記吸気流量検知器と前記還流流量検知器の出力に基づいて求められた排気ガス環流率が目標の環流率となるように、前記吸気制御弁及び/または前記還流ガス制御弁をフィードバック制御する制御手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、内燃機関の排気ガス還流流量制御の応答速度及び精度を向上し得るものとなる。
(2)上記(1)において、好ましくは、前記制御手段は、前記環流率の目標値が急激に変化した場合には、前記吸気制御弁及び前記還流ガス制御弁の内、応答性の早い方の弁をフィードバック制御するようにしたものである。
(3)上記(1)において、好ましくは、前記還流ガス制御弁開度と、前記吸気制御弁開度と、前記環流率との組合せ状態によって定義される3次元マップを複数個備え、前記制御手段は、内燃機関の運転状態に応じた前記3次元マップを選択し、前記吸気流量検知器と前記還流流量検知器の出力に基づいて求められた排気ガス環流率が目標の環流率となるように、前記吸気制御弁及び/または前記還流ガス制御弁を制御するようにしたものである。
(4)上記(2)において、好ましくは、前記制御手段は、前記環流率の目標値が急激に変化した場合には、前記吸気制御弁及び前記還流ガス制御弁の内、応答性の早い方の弁を制御するようにしたものである。
(5)上記(1)において、好ましくは、前記排気ガス還流量検知器は、前記排気ガス還流通路の少なくとも2地点以上の圧力差を基に環流量を検出する検知器若しくは前記排気ガス還流通路の質量流量を検出する検知器であり、前記吸気量検知器は、前記吸気通路の少なくとも2地点以上の圧力差を基に吸気量を検出する検知器若しくは前記吸気通路の質量流量を検出する検知器としたものである。
(6)上記(1)において、好ましくは、前記吸気制御弁が、電子制御方式のスロットルアクチュエータとしたものである。
次に、図25を用いて、本発明が用いられるEGR(排気ガス還流)制御システムの電子制御スロットル装置のスロットルアクチュエータコントロールユニット(TACU)
200のシステム構成について説明する。
図25は、第1の実施形態による電子制御スロットル装置のスロットルアクチュエータコントロールユニット(TACU)のシステム構成図である。なお、図22と同一符号のものは同一部分を示している。
スロットルアクチュエータコントロールユニット(TACU)200は、CPU210と、モータドライブ回路(MDC)230とから構成される。CPU210は、差演算部212と、PID演算部214と、制御量演算部216と、制御部218とから構成されている。
差演算部212は、ECU300が出力する目標開度θobj と、スロットルポジション
センサ10が出力するスロットルバルブの実開度θthの開度差Δθthを演算する。PID
演算部214は、差演算部212が出力する開度差Δθthに基づいて、PID制御量
u(t)を演算する。PID演算により求められるPID制御量u(t)は、(Kp・
Δθth+Kd・(dΔθth/dt)+Ki・ΣΔθth・dt)として求められる。なお、
Kpは比例定数であり、Kdは微分定数であり、Kiは積分定数である。制御量演算部
216は、PID制御量u(t)に基づいて、後述するHブリッジ回路234のオン・オフするスイッチを選択し、電流の流す方向を決定し、またHブリッジ回路234のスイッチをオン・オフするデューティを決定して、制御量信号として出力する。制御部218は、図34を用いて詳述するように、目標開度θthに基づいて、EGR制御またはDPF制御が行われているか否かを判定し、EGR制御またはDPF制御が行われていない場合には、スロットルバルブを全開するための制御を実行し、必要に応じて、PID演算部
214や、制御量演算部216や、MDC230に電圧VBを供給するスイッチSW1の開閉を制御する。
モータドライブ回路(MDC)230は、ロジックIC232と、Hブリッジ回路234
とを備えている。ロジックIC232は、制御量演算部216が出力する制御量信号に基づいて、Hブリッジ回路234の4個のスイッチにオンオフ信号を出力する。Hブリッジ回路234は、オンオフ信号に応じてスイッチが開閉し、必要な電流をモータ5に供給して、モータ5を正転若しくは逆転する。
次に、図26を用いて、電子制御スロットル装置に用いるHブリッジ回路234の構成について説明する。
Hブリッジ回路234は、4個のトランジスタTR1,TR2,TR3,TR4と、4個のダイオードD1,D2,D3,D4とが図示するように結線され、モータ5に電流を流す。例えば、ゲート信号G1とゲート信号G4がハイレベルとなり、トランジスタTR1,TR4が導通すると、波線C1のように電流が流れる。例えば、このとき、モータ5は正転する。また、ゲート信号G2とゲート信号G3がハイレベルとなり、トランジスタ
TR2,TR3が導通すると、一点鎖線C2のように電流が流れる。例えば、このとき、モータ5は逆転する。さらに、ゲート信号G3とゲート信号G4がハイレベルとなり、トランジスタTR3,TR4が導通すると、二点鎖線C3のように電流が流れることが可能となる。このとき、モータ5の駆動軸に外部から駆動力が伝達され、モータ5の回転子が回転すると、モータ5は発電機として動作し、回生制動の動作を行わせることができる。
なお、トランジスタTR1,TR2が同時に導通するようにしても、モータ5を回生制動させることは可能である。
なお、本実施例は、Hブリッジ回路をインテグレート化したワンチップマイコンを使用した場合であり、デジタル信号をロジックICに与え自由にトランジスタのON,OFFをコントロールできるものである。しかし、本実施形態においては、モータの駆動回路の状態をコントロールできれば目的を達成できるので、Hブリッジ自体が4個のトランジスタを用いて構成されていても、インテグレート化されたワンチップICを使って構成されていてもよいものである。
次に、図27及び図28を用いて、本実施形態による電子制御スロットル装置の制御部218による制御動作について説明する。
図27は、電子制御スロットル装置の制御部による制御内容を示すフローチャートである。図28は、電子制御スロットル装置の制御部による制御内容の説明図である。
ステップs100において、制御部218は、EGR制御またはDPF制御が終了したか否かを判定する。終了していないときは、ステップs110において、通常のフィードバック制御を継続する。終了したときは、ステップs120において、全開までの目標角度制御を実行する。
ここで、ステップs100の判定において、制御部218は、ECU300から入力した目標開度を用いて、EGR制御またはDPF制御が終了したか否かを判定する。例えば、図24で説明したように、スロットル開度制御領域が0〜100%の範囲の場合、
(V1〜V2)の範囲(例えば、10〜80%)が)EGR制御またはDPF制御領域である。したがって、ECU300から入力する目標開度が、10〜80%の範囲にあれば、制御部218はEGR制御またはDPF制御中であると判断し、目標開度が0〜10%が終了したと判断する。また、EC若しくは80〜100%であれば、制御部218は
EGR制御またはDPF制御U300からEGR制御またはDPF制御終了のFlagを受信したかどうかで判断するようにすることもできる。
次に、図28を用いて、ステップs120における全開までの目標角度制御について説明する。図28において、横軸は時間tを示している。縦軸は、スロットル開度(制御)開度)θth及びモータデューティDuを示している。スロットル開度θthは、原点に近い
方が全閉側であり、原点から遠ざかるほど全開側に近づく。また、モータデューティDuは、原点に近い方がデューティ100%に近い側であり、原点から遠ざかるほど0%に近づく。
図中、実線θthがスロットル開度の変化を示し、破線Duがモータに印加するデューテ
ィを示している。そして、時刻t3までがEGR制御またはDPF制御が行われている状態を示し、時刻t3以降がEGR制御またはDPF制御が終了した場合の状態を示している。また、時刻t3以降において、実線θthは、本実施形態による制御が行われた場合のスロットル開度の変化を示し、一点鎖線は、本実施形態による制御が行われない場合のスロットル開度の変化を示している。
時刻t3までの間は、ステップs110の処理により、EGR制御またはDPF制御が行われている。ECU300から入力する目標開度θobj に応じて、モータに印加するデ
ューティDuが変化し、それに応じて、スロットル開度θthも変化している。
時刻t3において、EGR制御またはDPF制御が終了したと判定されると、本実施形態による制御が行われない場合には、モータへの通電が遮断される,すなわち、デューティが0%の状態になる。その結果、スロットルバルブは、リターンスプリングの付勢力によって、一点鎖線で示すように、全開側に移動する。そして、時刻t4において、全開ストッパに当接し、ストッパからの跳ね返りと、リターンスプリングによる引き戻しを繰り返して、最終的に制御全開にて停止する。時刻t3〜時刻t4までの時間T4は、例えば、150msである。このように高速で、スロットルバルブがリターンスプリングで引き戻されると、全開ストッパと衝突することにより、衝突音の発生及び衝撃荷重によるメカ部品の寿命低下となる。
一方、本実施形態による全開までの目標角度オープンループ制御では、制御部218は、モータ印加デューティDuに示すように、EGR制御またはDPF制御が終了したと判定される時点(時刻t3)におけるデューティから徐々にデューティが減少し、時刻t5においてデューティ0%となるような制御信号を、制御量演算部216に出力する。制御量演算部216は、時刻t3から徐々にデューティが減少し、時刻t5においてデューティ0%となるような制御信号をロジックIC232に出力する。その結果、モータは図中破線Duで与えられるデューティ信号に応じて回転され、結果として、図中実線で示すように、スロットル開度θthは、EGR制御またはDPF制御が終了したと判定される時点
(時刻t3)における開度から徐々に全開側に移動し、時刻t5において全開点となる。
ここで、時刻t3〜時刻t5までの時間T5は、例えば、500msとなるように、デューティ信号を徐々に減少させることにより、スロットルバルブが全開点に引き戻されるときの、スロットルシャフトに固定されたギアと全開ストッパとの衝突時の速度を減少して、衝突音の発生及び衝撃荷重によるメカ部品の寿命低下を防止することができる。
このように、オープンループ制御時のモータ駆動デューティの与え方を全開方向に付勢されたスプリング力のみで戻るよりも応答が遅くなる(T4<T5)ように設定すれば、全開ストッパとモータ駆動系のギアの衝突音,衝撃エネルギを低減できる。さらに、特開2003−214196号公報に記載されているように、予め設定してある所定値を任意の時間モータに印加する制御の場合には、製品個々の応答時間等のバラツキを吸収できず、スロットルバルブが全開位置に戻ってきてもモータを動かす制御を行いつづける可能性があり、過電流でモータにダメージを与える恐れがあるが、本実施形態では、全開ストッパ位置に戻っても制御を続けるという問題が生じないものである。
なお、制御部218は、目標となるデューティを与えるオープンループ方式でスロットル開度を制御する。ここで、このオープンループ制御時に印加するデューティーの与え方は、例えば、図25に示したような単調減少する1次式で与えてもよく、また、放物線状等の与え方でも良く、最終的にリターンスプリングの付勢力のみで戻る時間より遅くなる与え方であれば、ギアと全開ストッパの衝突時の音,衝撃荷重を低減できる。
以上説明したように、本実施形態では、EGR制御またはDPF制御が終了したと判定され、全開位置にスロットルバルブを移動する際、モータに印加するデューティを徐々に減らすようにしているので、ギアと全開ストッパとの衝突時の速度を減少して、衝突音の発生及び衝撃荷重によるメカ部品の寿命低下を防止することができる。
次に、図29及び図30を用いて、第2の実施形態による電子制御スロットル装置の制御部218による制御動作について説明する。
本実施形態による電子制御スロットル装置のシステム構成は、図22に示したものと同様である。スロットルアクチュエータコントロールユニット(TACU)200のシステム構成は、図25に示したものと同様である。また、本実施形態による電子制御スロットル装置に用いるHブリッジ回路234の構成は、図26に示したものと同様である。
図29は、第2の実施形態による電子制御スロットル装置の制御部による制御内容を示すフローチャートである。図30は、第2の実施形態による電子制御スロットル装置の制御部による制御内容の説明図である。なお、図27と同一のステップ番号は、同一の制御内容を示している。
図30において、横軸は時間tを示している。縦軸は、スロットル開度(制御開度)
θthを示している。スロットル開度θthは、原点に近い方が全閉側であり、原点から遠ざ
かるほど全開側に近づく。
ステップs100において、制御部218は、EGR制御またはDPF制御が終了したか否かを判定する。終了していないときは、ステップs110において、通常のフィードバック制御を継続する。終了したときは、ステップs210において、モータ駆動回路状態制御を実行し、次に、ステップs220において、モータ駆動停止制御を実行する。なお、ステップs100〜s220までの処理は、例えば、3ms周期で繰り返し実行される。
ステップs210の処理において、制御部218は、モータ5が回生制動の動作をするような制御信号を、制御量演算部216に出力する。図26で説明したように、トランジスタTR3,TR4のゲートG3,G4にオン信号を供給すると、モータ5が回転した場合、矢印C3の向きに電流が流れ、モータ5は回生制動動作をすることになる。そこで、制御部218は、トランジスタTR3,TR4を導通させるような制御信号を、制御量演算部216に出力する。制御量演算部216は、トランジスタTR3,TR4を導通させるような制御信号を、ロジックIC232に出力する。このとき、スロットルバルブ2は、リターンスプリング11によって全開方向に移動しようとする。スロットルシャフトの動きはギア8,7,6を介してモータ5に伝えられるため、モータ5は、回生制動の動作を行う。このモータ5の回生制動により、スロットルバルブが全開方向に開こうとする動きにブレーキがかけられる。
すなわち、ここで重要なのは、モータの電源を切るとリターンスプリング11の付勢力で全開方向にモータ駆動機構が回転することになるが、このときのDCモータ5の部品が回転する力を、モータ回路を接続した状態にすることでリターンスプリング11の付勢力と逆方向に働く様にHブリッジ回路のトランジスタのオン・オフ状態をコントロールすることである。このようにコントロールすると、図30に示す様にスロットルバルブ2はモータ駆動回路接続時のようにゆっくりと動き、急激にギア8と全開ストッパが衝突するのを防げることになる。
そして、ステップs220において、制御部218は、モータ駆動を停止する制御を実行するような制御信号を、制御量演算部216に出力する。すなわち、制御部218は、モータ印加デューティDuが0%となるような制御信号を、制御量演算部216に出力する。制御量演算部216は、デューティ0%となるような制御信号をロジックIC232に出力する。その結果、モータへの通電が遮断されるので、スロットルバルブ2は、リターンスプリング11によって全開方向に移動しようとする。
また、モータ駆動停止制御は、モータ5への通電をオフするようにしてもよいものである。すなわち、制御部218は、図32に示したスイッチSW1をオフにして、電源VBからの電力がモータ駆動回路230を介して、モータ5に供給されるのを停止する。以上のように、モータ駆動停止制御においては、モータ印加デューティDuを0%としてHブリッジ回路のトランジスタをオフしたり、電源からモータへ電力を供給する経路の途中に設けられたスイッチをオフしたりして、モータへの通電を遮断して、モータの駆動を停止する。
すなわち、ステップs210の処理により瞬間的に全開方向への動きにブレーキをかけ、次のステップs220の処理によりブレーキをはずしてリターンスプリングにより全開方向に動こうとする。ステップs100〜s220の処理は、例えば、3ms周期で繰り返されるので、EGR制御またはDPF制御が終了したと判定される場合には、この間、ステップs210のブレーキングと、ステップs220のブレーキなし制御が繰り返され、スロットルバルブは、徐々に、全開側に移動し、例えば、時刻t6に全開点に到達する。
図中、時間T4は図28に示したものと同様であり、ブレーキが全くかけられていないときのスロットル開度であるのに対して、本実施形態では、途中で周期的にブレーキをかけることにより、時刻t3〜時刻t6までの時間T6は、時間T4よりも長くなり、スロットルバルブが全開点に引き戻されるときの、ギアと全開ストッパとの衝突時の速度を減少して、衝突音の発生及び衝撃荷重によるメカ部品の寿命低下を防止することができる。
以上説明したように、本実施形態では、EGR制御またはDPF制御が終了したと判定され、全開位置にスロットルバルブを移動する際、最初に、モータが回生制動するように、すなわち、コントロールユニット内のモータ駆動回路がモータと接続された状態を保ち続ける信号をCPUの制御部から与えることで、全開位置方向に回動する様に付勢されたスプリング力と反対方向にモータの回転力を利用した力がブレーキの様に作用させることで、全開ストッパとギアなどのモータ駆動機構の構成部品間が衝突する時の衝撃エネルギーを低減することができ、、衝突音の発生及び衝撃荷重によるメカ部品の寿命低下を防止することができる。
次に、図31を用いて、第3の実施形態による電子制御スロットル装置の制御部218による制御動作について説明する。
本実施形態による電子制御スロットル装置のシステム構成は、図22に示したものと同様である。本実施形態による電子制御スロットル装置のスロットルアクチュエータコントロールユニット(TACU)200のシステム構成は、図25に示したものと同様である。また、本実施形態による電子制御スロットル装置に用いるHブリッジ回路234の構成は、図26に示したものと同様である。
図31は、第3の実施形態による電子制御スロットル装置の制御部による制御内容を示すフローチャートである。なお、図27,図29と同一のステップ番号は、同一の制御内容を示している。
本実施形態においては、ステップs310とステップs320の処理が、図29の制御に対して追加されている。
ステップs100において、EGR制御またはDPF制御が終了したと判定されると、ステップs310において、自己診断のフラグをチェックする。ここで自己診断結果の状態を確認し、異常が検出されていなければ、ステップs210,s220において、回生制動とモータ駆動停止により、モータ回路接続時の挙動となるのでゆっくり全開ストッパに当接することになる。
自己診断結果、異常が検出されている場合は、ステップs320において、制御部218
は、Hブリッジ回路の全てのトランジスタをオフすることで、図28に一点鎖線で示したように、スロットルバルブは速やかに全開位置に移動する。
このように、自己診断の結果、異常が検出されると、可能な限り早く制御を止めることにより、実車挙動の異常を防ぐことができる。図7,図10による診断の結果、故障と判定された場合にも上記と同様の制御を実行する。
次に、図32及び図33を用いて、第4の実施形態による電子制御スロットル装置の制御部218による制御動作について説明する。
本実施形態による電子制御スロットル装置のシステム構成は、図22に示したものと同様である。本実施形態による電子制御スロットル装置のスロットルアクチュエータコントロールユニット(TACU)200のシステム構成は、図25に示したものと同様である。また、本実施形態による電子制御スロットル装置に用いるHブリッジ回路234の構成は、図26に示したものと同様である。
図32は、第4の実施形態による電子制御スロットル装置の制御部による制御内容を示すフローチャートである。図33は、第4の実施形態による電子制御スロットル装置の制御部による制御内容の説明図である。なお、図27,図29と同一のステップ番号は、同一の制御内容を示している。
図33において、横軸は時間tを示している。縦軸は、スロットル位置θ及びモータデューティDuを示している。スロットル位置θは、原点に近い方が全閉側であり、原点から遠ざかるほど全開側に近づく。そして、実線が目標開度θobj を示し、破線が実開度
θth(real)を示している。また、点線で示すモータデューティDuは、原点に近い方がデューティ100%に近い側であり、原点から遠ざかるほど0%に近づく。
ステップs410において、制御部218は、ECU300から入力する目標開度
θobj を受信して、位置制御を行うための基準とする。
次に、ステップs420において、ステップs410で受信した目標開度θobj が所定値Aよりも大きく、かつ、目標開度θobj の変化率Δθobj が所定値Bよりも小さいか否かを判定する。例えば、所定値Aは80%であり、図27のステップs100における
EGR制御またはDPF制御が終了したか否かを判定している。また、目標開度θobj の変化率Δθobj を判定の基準とするのは、瞬間的に目標開度θobj が所定値Aよりも大きくなった場合を除き、定常的に目標開度θobj が所定値Aよりも大きくなっているか否かを判定している。変化率Δθobj は、例えば、0.25% である。すなわち、目標開度
θobj が所定値A(例えば、80%)よりも大きく、かつ、目標開度θobj の変化率
Δθobj が所定値B(例えば、0.25%) よりも小さい場合に、EGR制御またはDPF制御が終了したと判定して、ステップs430に進み、そうでない場合には、ステップs460に進む。
ステップs460では、カウント値Cを0クリアして初期化する。すなわち、通常の
EGR制御またはDPF制御が行われている状態では、カウント値Cは0である。次に、ステップs470において、変数Eが0か否かを判定する。変数Eは、「0」と「1」の2値を取り得るものであり、変数Eが「0」のときは、制御が行われている状態を示し、変数Eが「1」のときは、制御が行われていない状態を示している。ここでは、制御が行われており、変数Eが「0」とすると、ステップs110に進み、スロットル開度が目標開度となるように、フィードバック制御する。図40において、時刻t3までの間は、通常のフィードバック制御によるスロットルバルブの開度制御が行われている。この時点は、EGR制御またはDPF制御が終了している時点であるので、このときの目標角度制御は、目標開度として、全開点近傍の任意の位置にスロットルバルブ位置として、この開度となるように制御するとともに、その開度を任意の時間(ステップs440で、C>Dの条件が満たされるまでの時間)の間、保持するようにする。
一方、EGR制御またはDPF制御が終了すると、ステップs430において、カウント値Cに「1」を加算する。そして、ステップs440において、カウント値Cが所定値Dを越えたか否かを判定する。ステップs440の判定は、ステップs430でEGR制御またはDPF制御が終了したと判定された後、所定時間が経過したかどうかを判定するためのものである。所定値Dは、図40の時刻t3〜t7までの時間に相当する値とし、例えば、200msをカウントする時間である。この所定時間は、リターンスプリングの付勢力によって、図28の一点鎖線で示したように、全開側に移動するのに要する時間
(例えば、図28の例では、時間T4(例えば、150ms)よりも長く設定する。
ステップs440の条件を満たさない場合、すなわち、例えば、EGR制御またはDPF
制御が終了して200msが経過するまでは、ステップs470において、変数Eが0か否かを判定する。ここでは、制御が行われており、変数Eが「0」であり、ステップ
s110に進み、スロットル開度が目標開度となるように、フィードバック制御する。すなわち、図40において、時刻t3〜t6までの間も、通常のフィードバック制御によるスロットルバルブの開度制御を行う。
かかる制御によって、スロットルセンサの摺動抵抗の摩耗を低減することができる。接触式スロットルセンサを用いた電子制御スロットル装置の場合、一定開度保持時間(例えば、全開位置に保持されている時間)が長いと、振動等の影響により抵抗体が局部的に摩耗することになる。このような局部摩耗によって、接触スロットルポジションセンサの出力異常が発生する。そこで、本実施形態のように、所定値D相当の時間が経過するまでは、EGR制御またはDPF制御が終了していながら、制御状態とすることにより、時刻
t3〜t7の間は、任意の開度に保持された時間となり、機械的全開位置に保持される時間は時刻t7〜t8の時間とすることができ、機械的全開位置に保持される時間を短くすることができる。このように、保持時間を短くできるため、スロットルポジションセンサを長寿命化することができる。
次に、ステップs440の判定において、カウント値Cが所定値Dを越えると、すなわち、図33において、時刻t7になると、ステップs210,ステップs220において、図29で説明した回生制動によるブレーキ動作と、非ブレーキ動作を繰り返し、ギア9はゆっくり全開ストッパ13に当接する。なお、ステップs210,s220の処理において、ステップs210の処理を除いてもよいものである。すなわち、ステップs110では、全開点近傍の所定位置に所定時間制御しているので、ステップs220の処理によりモータへの通電を遮断して直ちに、その所定位置から全開位置まで移動したとしても、移動距離が短いため、ギア8が全開ストッパ13Aに当接するときの衝撃力は小さい場合が多いためである。
その後、ステップs450において、で制御状態Flag(E)を「1」とし、ループを抜ける。
以上のように、本実施形態では、EGR領域(時刻t3以降)となり、かつ、条件成立状態の継続時間(C>D)が満たされた時刻t7以降において、ブレーキ動作とモータへの通電停止を繰り返し、制御状態から非制御状態に移行して、ギア8と全開ストッパ13がゆっくりと当接するようにしている。
また、EGR制御またはDPF制御終了状態から、EGR制御またはDPF制御状態に復帰する際には、目標開度>A,目標開度変化率<B、またはC>Dの何れかひとつが非成立となれることにより復帰できる。このとき、一度非制御状態になっているので制御状態FlagはE=1となっている。そこで、ステップs470の判定で、ステップs480
に進み、制御量をクリアする。
図25で説明したように、PID演算部214は、EGR制御またはDPF制御状態の時も、EGR非制御状態の時も、デューティを求めるPID演算を繰り返し実行している。PID制御量u(t)=(Kp・Δθth+Kd・(dΔθth/dt)+Ki・ΣΔθth・dt)が演算されている。モータ通電オフ状態時は目標開度と実開度の偏差が閉じ側に大きくなっており、積分項の働きを行う部分は閉じ方向の制御デューティーが過大の状態となっている。スロットル位置制御は通常新目標開度付近でブレーキをかけて収束性を良くするが、上述のように閉じ方向に積分項相当の値が過大に蓄積されていると、正常なブレーキが加わらず、オーバーシュートが大きくなったり、収束性を悪化させる可能性がある。
そこで、本実施形態では、ステップs480において、制御量をゼロクリアーする。ここで、ゼロクリアする制御量としては、積分項相当の部分のみでもよく、また、印加デューディに関わる値の全てでもよいものである。これにより、応答時間等の制御性能が改善できる。その後、ステップs490において、で制御状態FlagをE=0とし、通常制御に移行し、ループを抜ける。
以上説明したように、本実施形態でも、全開ストッパとギアなどのモータ駆動機構の構成部品間が衝突する時の衝撃エネルギーを低減することができ、衝突音の発生及び衝撃荷重によるメカ部品の寿命低下を防止することができる。また、全開位置における保持時間を短くして、接触式スロットルセンサを超寿命化することができる。さらに、非制御状態から制御状態に移行する際には、制御量をゼロクリアすることにより、応答性等の制御性能を改善することができる。
次に、図34を用いて、本発明の他の実施形態による電子制御スロットル装置のシステム構成について説明する。
図34は、本発明の他の実施形態による電子制御スロットル装置のシステム構成図である。
なお、以上の各実施形態の説明では、TACU200と、ECU300とが別体の構成であるとしたが、図34に示すように、TACU200とECU300とが一体構成であってもよいものである。
以上説明した実施例におけるモータ制御による吸気絞り弁としてのスロットルバルブ装置、およびその制御方法の特徴を纏めると以下の通りである。
スロットルバルブの電子的位置制御は、例えば、特開平7−332136号公報に記載されるように、スロットルバルブの実開度と目標開度の偏差に応じた制御量をPID制御等の手法を用いて演算し、求められた制御量をパルス駆動のオンタイムとオフタイムの比であるデューティー比に変換し、Hブリッジ回路を介してPWM信号を直流モータに供給し、モータがトルクを発生し、その発生トルクでギア,スロットルシャフトを介してスロットルバルブが駆動することで位置制御するものが知られている。
上述の電子制御スロットル装置は、いずれも、ガソリンエンジン用電子制御スロットル装置であるが、昨今EGR効率向上,ディーゼリング改善等を目的に、ディーゼルエンジンに電子制御スロットル装置が適用されつつある。ディーゼルエンジン用電子制御スロットル装置は、ガソリンエンジン用と異なり、主にEGR効率向上、吸気を絞ることで排気温を上げDPF(Diesel Particuler Filter)内のすすを燃焼させることを目的に制御を行うため、EGR制御またはDPF制御を行っていないときはモータ制御を止め、スロットルバルブ位置は全開位置にある。したがって、1)全開位置に長い時間保持されていること、2)モータ制御を行っている状態から止めた状態、もしくはその逆の状態が存在すること、また、3)暴走モードが無いためにモータ通電Off時には任意の開度で一定空気量を供給するデフォルト機構がいらない点が大きく異なる。
ディーゼルエンジン用電子制御スロットル装置は、EGR制御またはDPF制御が終了すると空気流量を制御する必要が無くなり、モータ通電OFFし、リターンスプリングで最も圧力損失の少ない全開位置にスロットルバルブを戻すことになる。つまり常に制御しつづけているガソリンエンジン用の電子制御スロットル装置とは異なり、必ず制御状態から制御を止める状態、もしくは制御を止めた状態から制御を開始する状態が存在する。
先ず制御状態から制御を止める状態について考えると、第1の問題として、制御を止めた時に単純にモータの通電OFFまたは印加デューティーを0%にし、スロットルバルブ位置を開き方向に付勢されたリターンスプリング力のみで全開位置まで戻す仕様とすると、全開ストッパと駆動機構部品が激しく衝突し、衝突音の発生及び衝撃荷重によるメカ部品の寿命低下という問題が発生する。
それに対して、例えば、特開2002−256892号公報に記載のように、全開ストッパとギア間に干渉機構を設け、メカ的に衝突による問題を回避しようとする電子制御スロットル装置が知られている。
また、例えば、特開2003−214196号公報に記載されるように、予め設定してある所定値を任意の時間モータに印加することにより、通常制御時よりもモータを低速で動かして、制御的に衝突による問題を回避しようとする電子制御スロットル装置が知られている。
しかしながら、特開2002−256892号公報に記載の方式では、緩衝機構分のコストアップ、緩衝機構が劣化した際の効果低減及び部品数増加による信頼性の低下という問題がある。
また、特開2003−214196号公報に記載の方式では、予め設定してある所定値を任意の時間モータに印加する制御であるため、製品個々の応答時間等のバラツキを吸収できず、スロットルバルブが全開位置に戻ってきてもモータを動かす制御を行いつづける可能性があり、過電流でモータにダメージを与えたり、それによる過荷重がメカ部品に加わりメカ部品にダメージを与える恐れがあるという問題がある。
上記実施態様ではこの点が解消され、信頼性が向上し、モータやメカ部品に対するダメージもなく、メカの衝突音・衝撃エネルギを低減できる電子制御スロットル制御装置が提供される。
本実施例によれば、
(1)スロットルボディに回動可能に支持されたスロットルバルブを駆動するアクチュエータと、前記スロットルバルブが全開方向に戻るように付勢力を与える単一のリターンスプリングと、前記スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサとを有する電子スロットルボディと、前記スロットルポジションセンサにより検出された前記スロットルバルブの開度と目標開度とに応じて、前記アクチュエータを駆動するスロットルアクチュエータコントロールユニットとを有する電子制御スロットル装置であって、前記スロットルアクチュエータコントロールユニットは、EGR制御またはDPF制御が終了した際に、前記リターンスプリングのみによって前記スロットルバルブが全開方向に移動する時間よりも長い時間で前記スロットルバルブが全開方向に移動するように前記アクチュエータを制御する制御手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、信頼性が向上し、モータやメカ部品に対するダメージもなく、メカの衝突音・衝撃エネルギを低減し得るものとなる。
(2)上記(1)において、好ましくは、前記制御手段は、前記スロットルバルブが全開方向に徐々に移動するような目標角度となる制御信号を前記アクチュエータに与えて、オープンループ制御するようにしたものである。
(3)上記(2)において、好ましくは、前記制御手段は、前記アクチュエータに与えるデューティ信号のデューティを徐々に減らすようにしたものである。
(4)上記(1)において、好ましくは、前記制御手段は、EGR制御またはDPF制御が終了すると、前記アクチュエータの制御状態と非制御状態とを繰り返えすようにしたものである。
(5)上記(4)において、好ましくは、前記制御手段は、前記制御状態において、前記アクチュエータをブレーキとして動作させるようにしたものである。
(6)上記(4)において、好ましくは、前記制御手段は、前記制御状態において、前記アクチュエータを回生制動状態で制御するようにしたものである。
(7)上記(4)において、好ましくは、前記制御手段は、前記非制御状態において、前記アクチュエータへの通電を遮断するようにしたものである。
(8)上記(7)において、好ましくは、前記制御手段は、前記アクチュエータに与えるデューティ信号のデューティを0%にするようにしたものである。
(9)上記(4)において、好ましくは、前記制御手段は、スロットルポジションセンサ等の自己診断結果が異常の場合には、前記アクチュエータへの通電を遮断するようにしたものである。
(10)上記(4)において、好ましくは、前記制御手段は、EGR制御またはDPF制御が終了と判定された後、所定時間の間、前記スロットルバルブの開度を、全開点近傍の位置に所定時間保持するように制御した後、前記アクチュエータの前記制御状態と前記非制御状態とを繰り返えすようにしたものである。
(11)上記(1)において、好ましくは、前記制御手段は、EGR制御またはDPF制御が終了と判定された後、所定時間の間、前記スロットルバルブの開度を、全開点近傍の位置に所定時間保持するように制御した後、前記アクチュエータを非制御状態とするようにしたものである。
(12)上記(11)において、好ましくは、前記制御手段は、EGR制御またはDPF
制御が終了と判定された後、所定時間の間、前記スロットルバルブの開度を、全開点近傍の位置に所定時間保持するように制御した後、前記アクチュエータの制御状態と前記非制御状態とを繰り返えすようにしたものである。
(13)上記(11)において、好ましくは、前記制御手段は、前記スロットルバルブの目標開度が所定目標開度を超えること、且つ、前記目標開度の変化量が所定開度変化量以下であること、且つ目標開度が所定開度以上でその変化量が所定開度変化量以下でという状態が所定時間以上継続した場合に、前記EGR制御またはDPF制御が終了と判定するようにしたものである。
(14)上記(12)において、好ましくは、前記制御手段は、EGR制御またはDPF
制御の終了と判定した後、前記3つの条件の内少なくとも一つが満たされない場合に、再びアクチュエータ制御を開始するようにしたものである。
(15)上記(13)において、好ましくは、前記制御手段は、再びアクチュエータ制御を開始する際には、アクチュエータに印加するアクチュエータ駆動デューティ計算部の値を初期化してから、制御を開始するようにしたものである。
(16)上記(15)において、好ましくは、前記制御手段は、アクチュエータ駆動デューティ計算部の値の初期化は、少なくとも積分項もしくはそれ相当の働きをする部分を初期化するようにしたものである。
(17)上記(1)において、好ましくは、前記電子スロットルボディは、前記アクチュエータの出力軸に固定された第1のギアと、前記スロットルバルブを支持するスロットルシャフトに固定された第2のギアと、前記第1のギアから前記第2のギアの駆動力を伝達する中間ギアを備え、さらに、前記中間ギアと、この中間ギアを支持する前記スロットルボディとの間に、耐摩耗性部材のワッシャを備えるようにしたものである。
(18)また、スロットルボディに回動可能に支持されたスロットルバルブを駆動するアクチュエータと、前記スロットルバルブが全開方向に戻るように付勢力を与える単一のリターンスプリングと、前記スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサとを有する電子スロットルボディと、前記スロットルポジションセンサにより検出された前記スロットルバルブの開度と目標開度とに応じて、前記アクチュエータを駆動するスロットルアクチュエータコントロールユニットとを有する電子制御スロットル装置であって、前記スロットルアクチュエータコントロールユニットは、EGR制御またはDPF制御が終了した際に、前記リターンスプリングのみによって前記スロットルバルブが全開方向に移動する時間よりも長い時間で前記スロットルバルブが全開方向に移動するように、前記スロットルバルブが全開方向に徐々に移動するような目標角度となる制御信号を前記アクチュエータに与えて、オープンループ制御する制御手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、信頼性が向上し、モータやメカ部品に対するダメージもなく、メカの衝突音・衝撃エネルギを低減し得るものとなる。
(19)また、スロットルボディに回動可能に支持されたスロットルバルブを駆動するアクチュエータと、前記スロットルバルブが全開方向に戻るように付勢力を与える単一のリターンスプリングと、前記スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサとを有する電子スロットルボディと、前記スロットルポジションセンサにより検出された前記スロットルバルブの開度と目標開度とに応じて、前記アクチュエータを駆動するスロットルアクチュエータコントロールユニットとを有する電子制御スロットル装置であって、前記スロットルアクチュエータコントロールユニットは、EGR制御またはDPF制御が終了した際に、前記リターンスプリングのみによって前記スロットルバルブが全開方向に移動する時間よりも長い時間で前記スロットルバルブが全開方向に移動するように、EGR制御またはDPF制御が終了すると、前記アクチュエータの制御状態と非制御状態とを繰り返えす制御手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、信頼性が向上し、モータやメカ部品に対するダメージもなく、メカの衝突音・衝撃エネルギを低減し得るものとなる。
(20)また、スロットルボディに回動可能に支持されたスロットルバルブを駆動するアクチュエータと、前記スロットルバルブが全開方向に戻るように付勢力を与える単一のリターンスプリングと、前記スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサとを有する電子スロットルボディと、前記スロットルポジションセンサにより検出された前記スロットルバルブの開度と目標開度とに応じて、前記アクチュエータを駆動するスロットルアクチュエータコントロールユニットとを有する電子制御スロットル装置であって、前記スロットルアクチュエータコントロールユニットは、EGR制御またはDPF制御が終了した際に、前記リターンスプリングのみによって前記スロットルバルブが全開方向に移動する時間よりも長い時間で前記スロットルバルブが全開方向に移動するように、EGR制御またはDPF制御が終了と判定された後、所定時間の間、前記スロットルバルブの開度を、全開点近傍の位置に所定時間保持するように制御した後、前記アクチュエータの前記制御状態と前記非制御状態とを繰り返えす制御手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、信頼性が向上し、モータやメカ部品に対するダメージもなく、メカの衝突音・衝撃エネルギを低減し得るものとなる。
(21)また、スロットルボディに回動可能に支持されたスロットルバルブを駆動するアクチュエータと、前記スロットルバルブが全開方向に戻るように付勢力を与える単一のリターンスプリングと、前記スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサとを有する電子スロットルボディと、前記スロットルポジションセンサにより検出された前記スロットルバルブの開度と目標開度とに応じて、前記アクチュエータを駆動するスロットルアクチュエータコントロールユニットとを有する電子制御スロットル装置であって、前記スロットルアクチュエータコントロールユニットは、EGR制御またはDPF制御が終了した際に、前記リターンスプリングのみによって前記スロットルバルブが全開方向に移動する時間よりも長い時間で前記スロットルバルブが全開方向に移動するように、EGR制御またはDPF制御が終了と判定された後、所定時間の間、前記スロットルバルブの開度を、全開点近傍の位置に所定時間保持するように制御した後、前記アクチュエータを非制御状態とする制御手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、信頼性が向上し、モータやメカ部品に対するダメージもなく、メカの衝突音・衝撃エネルギを低減し得るものとなる。
(22)また、スロットルボディに回動可能に支持されたスロットルバルブを駆動するアクチュエータと、前記スロットルバルブが全開方向に戻るように付勢力を与える単一のリターンスプリングと、前記スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサとを有する電子スロットルボディと、前記スロットルポジションセンサにより検出された前記スロットルバルブの開度と目標開度とに応じて、前記アクチュエータを駆動するスロットルアクチュエータコントロールユニットとを有する電子制御スロットル装置であって、前記電子スロットルボディは、前記アクチュエータの出力軸に固定された第1のギアと、前記スロットルバルブを支持するスロットルシャフトに固定された第2のギアと、前記第1のギアから前記第2のギアの駆動力を伝達する中間ギアを備え、さらに、前記中間ギアと、この中間ギアを支持する前記スロットルボディとの間に、耐摩耗性部材のワッシャを備えるようにしたものである。
1…アクセルセンサ、2…新気ガス流量計、3…A/Fセンサ、5…コモンレール、6…ターボチャージャ、7…DPF,触媒、8…ECU、9…EGR還流路、10…EGRクーラ、11…EGRバルブ、12…ガス流量計。