JP2006315971A - イトラコナゾール経口投与製剤 - Google Patents

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淳治 山崎
Tomohiro Hayashida
知大 林田
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Abstract

【課題】 特に酸性および弱酸性領域において溶出率が高いイトラコナゾール経口製剤を提供する。
【解決手段】 賦形剤粉末に、少なくとも水溶性ポリマー及び胃溶性ポリマーを含んでいるイトラコナゾールの溶液を噴霧、造粒、乾燥して得られる細粒よりなるイトラコナゾール経口投与製剤。
【選択図】 なし

Description

本発明は,溶出性の改善されたイトラコナゾール経口投与製剤に関する。
イトラコナゾールは水に極めて難溶であり、従って粉末をそのまま顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、錠剤としても薬物の放出が充分ではなく、体内での吸収が悪く生物学的利用率が低いという事実により、医薬組成物の開発に大きな障害となっている。
特許第2865869号は、直径約600〜700μmの球形の核を芯とし、その上にイトラコナゾールと親水性ポリマーよりなる層をコーティングし、さらにポリエチレングリコールのシーリング層を順次コーティングしてビーズとすることを提案し、特表2001−520663号は直径250〜355μmの球状の核を用いることを除き同じ方法で薬物含有フィルム層及びシーリング層を被覆してビーズもしくはペレットとすることを提案している。
特表平11−509238号はイトラコナゾールとヒドロキシプロピルメチルセルロースのような水溶性ポリマーのブレンドを120〜300℃の温度で溶融状態で押出し、押出物を粉砕することによって得られた粒子製剤を開示している。
これらの特許においてイトラコナゾールの溶出性が向上する原理は、イトラコナゾールが非晶状態を保って水溶性ポリマー中の固体溶液または固体分散体として存在し、これが球状の核を覆う薬物層または粒子そのものを構成しているためであると説明されている。従ってイトラコナゾールが安定な固体溶液もしくは固体分散体をつくるためにはその中のイトラコナゾール濃度はあまり高くてはならず、さらに核及びシーリング層には薬物が含まれないので、イトラコナゾールの含有率が低くなり製剤が大型化する。
また、特表2001−527044号はイトラコナゾールをpH依存性の水溶性ポリマー、具体的にはポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートまたはアミノアルキルメタクリレートコポリマーと共に有機溶媒に溶解させ、溶液を噴霧乾燥することにより固体分散体化する方法が提案されている。本法の場合、酸性領域でのみ溶解するポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートまたはアミノアルキルメタクリレートコポリマーを使用するため、酸性領域の溶出性は改善するものの弱酸性領域では溶出しないことが懸念される。このようにイトラコナゾールが酸性領域から弱酸性領域の両方で溶出され、しかもコンプライアンスを向上させるため小型化が可能なイトラコナゾールの経口投与製剤を提供する課題は依然残っている。さらに吸収領域が小腸上部腸管とされる本薬剤についてはpH4〜5.5程度の弱酸性領域における溶出性の向上が必須である。しかし、先行技術による固体分散体は、これらを加圧成形することによりイトラコナゾールが再結晶化し、期待どおりの生物学的有用性を得られない恐れがあり、これが大きな問題であった。
上記課題は本発明によって解決される。本発明によれば、賦形剤の粉末に少なくともイトラコナゾール、水溶性ポリマー及び胃溶性ポリマーを溶解した溶液を噴霧、造粒、乾燥して得られる細粒よりなるイトラコナゾール経口投与製剤が提供される。この細粒は水溶性ポリマー、胃溶性ポリマー中の非晶質イトラコナゾール固体分散体をマトリックスとし、その中に賦形剤の粉末が分散している構造を有しているため、酸性から弱酸性の領域での溶出率が高く、かつ加圧成形してもイトラコナゾールの再結晶が起こらない製剤が得られる。
本発明のイトラコナゾール経口投与製剤は、流動層造粒コーティング装置を用いて、賦形剤粉末に水溶性ポリマー及び胃溶性ポリマーを含んでいるイトラコナゾールの溶液を噴霧して造粒し、乾燥することによって製造される。
使用される賦形剤は乳糖、デンプン、白糖、マンニット、無水リン酸カルシウムまたは結晶セルロース、それらの混合物あるいは造粒物などである。崩壊剤を後混合する代りに、賦形剤粉末と乾式混合し、これにイトラコナゾール溶液を噴霧、造粒、乾燥しても良い。崩壊剤の例は、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチナトリウム、クロスポビドン、それらの混合物である。賦形剤と崩壊剤の混合物中の割合は0〜50%の範囲が適当である。
本製剤のイトラコナゾール経口投与製剤に含まれる水溶性ポリマーは医薬品に一般的に使用される水溶性ポリマーを使用することができ、その例はメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどである。
胃溶性ポリマーは医薬品産業の分野で良く知られており、その例はポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートまたはアミノアルキルメタクリレートコポリマーなどである。
固体分散体の前駆体溶液の溶媒は、親油性のイトラコナゾールが良く溶け、かつ水溶性ポリマー及び胃溶性ポリマーも溶ける溶媒であればよい。好ましいそのような溶媒の例は塩化メチレンとアルコール類特にエタノールとの混合溶媒である。混合溶媒はイトラコナゾールの溶媒となる塩化メチレンを少なくとも50%含有すべきである。この混合溶液へイトラコナゾール及び水溶性ポリマーを溶解した後、分離が生じない範囲内で水を添加することができる。好適な水の量は溶媒全体の0〜30%である。
水溶性ポリマー及び胃溶性ポリマーの配合量は、イトラコナゾール1重量部に対して合計して0.2〜2重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部である。水溶性ポリマー1重量部に対する胃溶性ポリマーの配合比は通常0.1〜1重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部である。
以上の固体分散体前駆体溶液を賦形剤又は賦形剤と崩壊剤の混合物に噴霧して造粒し、乾燥後整粒することにより、固体分散体をマトリックスとして含む細粒が得られる。この細粒をそのまま、または一旦加圧成形して得られたスラッグ錠を粉砕、整粒して顆粒とした後、必要に応じて賦形剤、崩壊剤、滑沢剤などの慣用の製剤補助剤と混合し、硬カプセルに充填してカプセル剤とすることができる。また、細粒またはスラッグ錠から得られた顆粒を必要に応じて賦形剤、崩壊剤、滑沢剤などの慣用の製剤補助剤と混合し、錠剤に打錠することができる。
以下に本発明の実施例は例証目的であり、限定を意図しない。
実施例1
イトラコナゾール100g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:TC−5RW、信越化学製)98g、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(商品名:AEA、三共製)48g及びアミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(商品名:オイドラギットRLPO、レーム製)10gを塩化メチレン1840gとエタノール1104gの混合溶媒中に溶解し、更に水168gを加えて固体分散体溶液を調製する。乳糖160g(商品名:Pharmtose、DMV社製)及び崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム(商品名:アクジソル、FMC社製)40gを流動層造粒コーティング装置(装置:SPIRA−FLOW−LABO、フロイント産業)中で流動させて固体分散体溶液を噴霧・造粒・乾燥した後、18メッシュの篩で整粒して細粒剤とした。
比較例1
イトラコナゾール100g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:TC−5RW、信越化学製)156gを塩化メチレン1840gとエタノール1104gの混合溶媒中に溶解し、更に水168gを加えて固体分散体溶液を調製する。乳糖160g(商品名:Pharmtose、DMV社製)及び崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム(商品名:アクジソル、FMC社製)40gを流動層造粒コーティング装置(装置:SPIRA−FLOW−LABO、フロイント産業)中で流動させて固体分散体溶液を噴霧・造粒・乾燥した後、18メッシュの篩で整粒して細粒剤とした。
比較例2
イトラコナゾール100g、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(商品名:AEA、三共製)156gを塩化メチレン1840gとエタノール1104gの混合溶媒中に溶解し、更に水を加えて固体分散体溶液を調製する。乳糖160g(商品名:Pharmtose、DMV社製)及び崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム(商品名:アクジソル、FMC社製)40gを流動層造粒コーティング装置(装置:SPIRA−FLOW−LABO、フロイント産業)中で流動させて固体分散体溶液を噴霧・造粒・乾燥した後、18メッシュの篩で整粒して細粒剤とした。
実施例2
実施例1の細粒剤を加圧成型し、次いでスラッグ錠を粉砕・整粒して顆粒剤とした。
比較例3
比較例1の細粒剤を加圧成型し、次いでスラッグ錠を粉砕・整粒して顆粒剤とした。
比較例4
比較例2の細粒剤を加圧成型し、次いでスラッグ錠を粉砕・整粒して顆粒剤とした。
試験例1
実施例1〜2及び比較例1〜4で得られた細粒及び顆粒剤228mg(イトラコナゾールとして50mg含有)を日本薬局方の溶出試験法に従って試験をおこなった。溶出条件は回転数50rpm、試験液には崩壊試験第一液、1%Tween80含有薄めたMcllvaineの緩衝液を用いた。
その結果を図1に示した。実施例1で得た細粒剤及び実施例2で得た顆粒は、酸性から弱酸性領域でイトラコナゾールの溶出性を有意に高めることが判った。また、比較例と比べた場合、加圧成形してもイトラコナゾールの再結晶が起こらず高い溶出が得られた。
実施例3
実施例1で得られた細粒剤228gに流動化剤として軽質無水ケイ酸(商品名:アドシリダー101、フロイント産業製)13g、崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム(商品名:アクジソル、FMC社製)40g、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム2gを加えて混合して、1錠283mgの錠剤を製造した。
試験例2
実施例3で得られた錠剤を日本薬局方の溶出試験法に従ってパドル法で試験をおこなった。溶出条件は回転数50rpm、試験液には崩壊試験第一液、1%Tween80含有薄めたMcllvaineの緩衝液を用いた。
その結果を図2に示した。本発明で製造された錠剤は、酸性から弱酸性領域でイトラコナゾールの溶出性を有意に高めていることが判った。
実施例1−2及び比較例1−4の細粒及び顆粒剤の各種pHにおける溶出率を示すグラフである。 実施例3の錠剤の各種pHにおける溶出率を示すグラフである。

Claims (11)

  1. 賦形剤粉末に、少なくとも水溶性ポリマー及び胃溶性ポリマーを含んでいるイトラコナゾールの溶液を噴霧、造粒、乾燥して得られる細粒よりなるイトラコナゾール経口投与製剤。
  2. 賦形剤は乳糖、デンプン、白糖、マンニット、無水リン酸カルシウムまたは結晶セルロースから選ばれる請求項1の経口投与製剤。
  3. 水溶性ポリマーは、水溶性アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースまたはポリビニルピロリドンから選ばれる請求項1の経口投与製剤。
  4. 胃溶性ポリマーは、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートまたはアミノアルキルメタクリレートコポリマーから選ばれる請求項1の経口投与製剤。
  5. 賦形剤粉末は、少割合のカルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチナトリウム、クロスポビドンから選ばれる崩壊剤を含んでいる請求項1の経口投与製剤。
  6. 細粒全重量の10〜50%がイトラコナゾールである請求項1ないし5のいずれかの経口投与製剤。
  7. イトラコナゾール溶液中に含まれている水溶性ポリマー及び胃溶性ポリマーは合計してイトラコナゾール1重量部あたり0.2〜2重量部であり、水溶性ポリマーに対する胃溶性ポリマーの重量比は1:0.1〜1である請求項6の経口投与製剤。
  8. イトラコナゾール溶液は、0〜10%の水を含む塩化メチレン−エタノール混液であり、塩化メチレン−エタノール混液中の少なくても50%は塩化メチレンである請求項1ないし7のいずれかの経口投与製剤。
  9. 慣用の製剤補助成分と共に請求項1ないし請求項8のいずれかの製剤を場合により乾式法で顆粒に造粒した後カプセルへ充填してなるカプセル剤。
  10. 慣用の製剤補助成分と共に請求項1ないし請求項8のいずれかの製剤を場合により乾式法で顆粒に造粒した後打錠してなる製剤。
  11. 水溶性ポリマー及び胃溶性ポリマー中のイトラコナゾールの固体分散体をマトリックスとし、賦形剤粒子が前記マトリックス中に保持されているイトラコナゾール経口投与製剤。




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* Cited by examiner, † Cited by third party
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