エレクトロニクスを利用した表示装置や光変調装置の利用が近年多くの分野で進んでいる。表示装置については最近特に薄型化が図られ、冷陰極管(CRT)を用いた表示装置からプラズマ表示パネル(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ等の薄型表示装置(FPD)への移行が進みつつある。これら薄型の表示装置は、携帯機器や車載機器の様な小型の物から家庭用テレビの様な大型の物にまで幅広く用いられている。また、入射光を所望の状態へと変調する光変調装置に関しては、表示装置以外にも、例えばプリンターヘッドや光記録ディスク用収差補正素子、光スイッチなど様々な電子機器や通信機器の構成要素としての利用が広がっている。中でも液晶性物質を用いた光変調装置の普及には目覚しいものがあり、様々な分野での応用が見られる。
一方で、例えばプラスチックフィルムの様な可撓性のあるフィルム基板を用いた表示装置についても、その普及に対する期待が近年特に高まりつつある。フィルム基板を用いた表示装置は軽量で且つ非常に薄く、更には割れない、曲げられる等のメリットを有する。このため、これまで以上に幅広い分野での表示装置の利用を期待することができ、今後様々な新規な表示装置の利用方法が誕生してくることが期待される。中でも、いわゆる電子ペーパーとしての利用に対して非常に大きな期待が寄せられている。また、この様なフィルム基板を用いた表示装置に特徴的なこととして、メモリ性液晶や有機ELの他、電気泳動(EP)方式、電界析出(ED)方式、エレクトロクロミック(EC)方式等々の現在主流となっている技術とは異なる様々な新しい方式の表示技術の適用が試みられている。
これら光変調装置では、例えばガラスやプラスチック等の板に透明電極や絶縁膜等々の各種の機能を有する層を設けた基板が用いられている。そして、この様な基板2枚を対向させ所定の距離だけ離して配置した構造のパネルが今日広く採用されている。
この様なパネルでは、基板と基板との間の距離を所定の大きさとするために、スペーサーが用いられている。スペーサーはいわば基板と基板とが接触することを妨げる障害物であり、基板と基板との間に挟むことによって、基板同士が一定の距離よりも近づかない様にする役割を果たす。
また、パネル外周周辺に囲むようにしてシール剤を設けた上で両基板を接着し、シール剤にパネルの内部と外部とを隔てる外壁としての機能も持たせる方法が多く採用されている。この場合、シール剤の外壁によってパネル内を密閉することが出来る。
次に、電極を所望の形状に形成した(パターニングした)従来技術のパネルについて説明する。光変調装置では電極層を設けた基板を用いて基板と基板との間に電圧をかける方法が多く用いられている。この場合、電極の平面形状を特定の形状に加工しておくことにより、パネル内の特定の領域に選択的に電圧をかけることが可能となる。電極層の加工はフォトリソグラフィーの工法によって行われることが多い。また、その工程はパターニング工程やフォトリソ工程等と呼ばれている。
電極がパターニングされたパネルは、その電極の形状の違いによってセグメント型とマトリックス型とに大別される。セグメント型のパネルとマトリックス型のパネルについて
、図25〜図29を参照しながら説明する。
図25〜図27はセグメント型のパネルを模式的に描いた概略平面図、図28と図29はマトリックス型のパネルを模式的に描いた概略平面図である。図25〜図29に示すパネルは、第1の基板1と第2の基板2との間にシール剤3と図示しないスペーサーとが設けられパネルが形成されている。シール剤3はパネルの外周付近に注入口4の部分を除いて設けられパネルの外壁としての役割を果たしており、注入口4を通して例えば液晶材料や電解液等の光変調する物質をパネル内に注入することが可能になっている。
セグメント型のパネルでは、図25に示す通り、第1の基板1にセグメント電極11とセグメント電極用配線12とが設けられ、図26に示す通り、第2の基板2にコモン電極13とコモン電極用配線14とが設けられている。図27に示す通り、パネル内は、一点破線の内側に設定され表示等のために使用する使用領域21と、一点破線の外側に設定され表示等には使用されない非使用領域22とに分かれる。この非使用領域22は、第1の基板1または第2の基板2の外側に配置する見切り板(図示せず)によって覆われ、視認されない領域となっている。つまり、一点破線の位置に見切り板の内周を配置する構成とするのが一般的である。
図25に図示したセグメント電極11と、図26に図示したコモン電極13とが重なる領域が、図27に図示した画素領域23であり、使用領域21内の画素領域23を除いた領域が非画素領域24である。すなわち、使用領域21は画素領域23と非画素領域24とに設定されている。
図25に図示したセグメント電極用配線12はセグメント電極11とパネル外部との間を電気的に接続するために設けられていて、図26に図示したコモン電極用配線14はコモン電極13とパネル外部との間を電気的に接続するために設けられている。セグメント電極11は画素領域毎に個別に設けられていて、コモン電極13は全ての画素領域に共通となる様に設けられている。セグメント電極用配線12とコモン電極用配線14とを通じて、コモン電極13と選択したセグメント電極11との間に電位差を設けることによって、選択したセグメント電極11の画素領域23に選択的に電圧をかけることが出来る。
セグメント電極11とコモン電極用配線14とが重なったりコモン電極13とセグメント電極用配線12とが重なったりすると、これらの電極と電極用配線との間でも画素領域23と同様に電圧がかかることになり好ましくない。このため、これらの電極並びに電極用配線については、電極と電極用配線とが重ならない様な形状となる様にパターニングが行われる。
なお、図示しないが、電極と電極用配線とを目立たなくさせるために、これら電極並びに電極用配線が設けられていない場所にも電極を設ける場合がある。この様な電極はダミー電極と呼ばれている。
マトリックス型のパネルでは、図28に示す通り、第1の基板1に走査電極15が設けられ、第2の基板2に信号電極16が設けられている。図29に示す通り、パネル内は一点破線の内側に設定され表示等のために使用する使用領域21と、一点破線の外側に設定され表示等のために使用しない非使用領域22とに分かれる。走査電極15と信号電極16とが重なる領域が画素領域23であり、使用領域21内の画素領域23を除いた領域が非画素領域24である。すなわち、使用領域21は画素領域23と非画素領域24とに分かれている。
選択した走査電極15と選択した信号電極16との間に電位差を設けることによって、選択した走査電極15と選択した信号電極16とが重なる画素領域23に選択的に電圧をかけることが出来る。マトリックス型のパネルでは、1本の走査電極15と任意の信号電極16とを選択することによって、選択した走査電極15の位置にある画素領域23を任意に選択して電圧をかけることが出来る。
また、図示しないが、画素毎に薄膜トランジスタ等の能動素子(アクティブ素子)を設ける技術も広く用いられている。マトリックス型のパネルに能動素子を用いる場合はアクティブマトリックス型と呼ばれ、一方、能動素子を用いない場合にはパッシブマトリックス型や単純マトリックス型と呼ばれている。アクティブマトリクス型であっても、図29に図示したように、使用領域21と非使用領域22とに設定され、使用領域21は画素領域23と非画素領域24とに分かれている。
マトリックス型のパネルでは、例えば図28に示す走査電極15と信号電極16との様に、各基板に線状の電極がストライプ状に設けられ、これら線状の電極同士の重なる部分が画素領域として用いられる。このため、マトリックス型のパネルでは、例えば図29に示す様に、同じ形状の画素領域23が規則的に設けられることが特徴になっている。
ここで、光変調装置に用いられるパネルでは基板と基板との間を所定の距離に精度良く制御できることが重要である。また、その基板間の距離がパネルの全域で同じであることも同じ様に重要とされる。特に使用領域では基板の距離が一定であることが望ましい。
例えば、前述の基板に電極層を設けたパネルでは、電極に電圧をかけた際に生じる電極間の電界強度は基板間の距離が変わることによって変化する。駆動の際の閾値電圧(Vth)や応答速度は電界強度に依存するため、基板間の距離が精度よく制御出来ないと、閾値電圧や応答速度がパネル毎に異なることとなってしまう。また、使用領域内で基板間距離が一定でない場合には、使用領域内の場所によって閾値電圧や応答速度が異なるむらが生じる。
また、例えば複屈折モードを用いる液晶装置では、基板間距離の少しの違いによって光の色が変化することが知られており、このため、やはり基板間の距離の精度が非常に重要とされている。また、パネル内の場所によって基板間の距離が異なる場合には、場所によって色が異なる色むらが発生してしまうため、やはりパネル内での基板間距離の均一性が重要である。
光変調装置に用いられるパネルでは、パネルに対して外力が加わった際に基板間の距離が変化しないことも重要である。外力等が加わることによる基板間の距離の変化は装置を利用する上での障害の原因になる。例えば表示装置においては、基板間の距離が変化することによって画面の表示が乱れる。その他の表示以外に用いられる装置においては、基板間の距離の変化によって出射光の状態が通常の場合とは異なるものに変化するため装置としての機能が阻害されてしまう。また、例えば強誘電性液晶やコレステリック液晶(カイラルネマティック液晶)を用いた液晶装置においては、基板間の距離が大きく変化すると液晶の配向が壊れてしまい、基板間の距離が元に戻っても配向が回復しないと言う現象が見られる。コレステリック液晶の場合には電圧の印加によって配向が回復することが知られているが、強誘電性液晶の場合には例えば加熱して一度等方性液体にした後で再度液晶相に戻すと言う作業が必要とされる。
例えば表示装置の場合には、一方の基板が露出していて指やペンなどで押されることも多い。タッチパネルの様に表示装置と入力装置とが一体となっている場合には、入力操作のため特に頻繁に押されることとなる。また可撓性のある基板を用いて作られたフレキシブルディスプレイでは、湾曲による外力が多く加わることが予想される。
この様に、外力による基板間の距離の変化が問題の原因となること、そしてパネルに対して外力が加わる状況が多く想定されることから、外力が加わった際にも極力基板間距離の変化が起こらない様な機械的強度や耐衝撃性がパネルにとっての一つの重要な要素になっている。このことは、基板間の距離の変化が起こりやすい可撓性のある材料を基板に用いる場合に特に重要であるが、基板にガラス等の比較的剛性のある材料を用いる場合にも依然として重要な問題となっている。特に近年は基板の大板化や薄板化が進んできているため、この問題への対応が必要とされている。
前述の通り、従来のパネルでは、基板間の距離を維持するためにスペーサーとシール剤との組み合わせが用いられている。ここで、スペーサーは基板同士を一定の距離よりも近づけない働きをし、シール剤は基板同士が一定の距離よりも離れない様にする働きをするものである。基板間の距離を所定の大きさに保持するためには、この様な働きをする2つの手段が必要である。また、その作用は、その近辺で強く働き、距離が離れるに従って弱くなると考えられる。
従来のパネルでは、例えばパネルの外周周辺等の非使用領域にシール剤が設けられる様になっている。一方で、使用領域には通常シール剤は設けられない。よって、従来のパネルでは、使用領域にシール剤が無いことから使用領域における基板間距離の規制力が弱く、このため基板間距離の制御や外力に対する基板間距離の維持が難しくなっている。また、このことはシール剤間の距離が長くなる程、また基板の剛性が低い程大きく影響を受けると考えられる。このため、パネルの面積が大きな場合や可撓性のある基板を用いる場合には特に重要な問題となる。
この様な問題に対処するため、接着材料を粒子状にした接着粒子を用いて両基板を接着する方法が、これまでに提案されている。この方法によれば、多数の細かな接着粒子を粒子状のスペーサーと共に基板間に設け、その接着粒子によって両基板を接着する。
また、印刷によって接着性の柱状樹脂構造物を使用領域内に複数箇所かつ部分的に設ける方法もこれまでに提案されている。この方法では、印刷によって設けた樹脂構造物によって両基板を接着することが出来る。
上記の接着粒子を用いる方法や、印刷によって樹脂構造物を設ける方法によれば、非使用領域内だけでなく使用領域内においても両基板を接着することが可能となる。このため、基板間の距離の精度や外力に対する機械的強度の向上が期待できる。しかし、接着粒子を用いる方法では、接着粒子をパネル内の特定の領域だけに選択的に配置することが出来ないため、接着粒子が画素領域内にも存在することとなり、接着粒子が視認者に認識されてしまい、光変調装置としての性能が低下すると言う問題がある。
また、印刷によって樹脂構造物を設ける方法では、樹脂構造物を非画素領域に選択的に設けることが出来るが、現在の印刷法による樹脂構造物の微細化の限界ため、非画素領域を細かく出来ないと言う問題や、表示装置の場合には樹脂構造物が観察され表示品位を損ねると言う問題がある。
この様な表示品位の問題を解決するため、セグメント型のパネルにおいて、印刷によって接着樹脂を使用領域内の非画素領域に設けると共に、非画素領域に遮光膜を設ける方法がこれまでに提案されている。この方法によれば、接着樹脂によって使用領域内においても両基板を接着させることが出来ると共に、接着樹脂は遮光膜によって隠されるため表示品位を損ねないで済む。(例えば、特許文献1参照)
この様な、使用領域内に接着樹脂であるシール剤、いわゆる内部シール剤を設けた従来
技術のパネルについて図30を参照しながら説明する。図30は使用領域内の画素領域の近くに内部シール剤を設ける従来技術のパネルを模式的に描いた概略平面図である。図30に示す通り、この様な従来技術のパネルでは、第1の基板1と第2の基板2との間に内部シール剤31と外部シール剤32と図示しないスペーサーとが設けられパネルが形成されている。外部シール剤32はパネルの外周付近に注入口4と通気口33との部分を除いて設けられている。内部シール剤31は画素領域23の周りを囲む様に設けられていて、一部で外部シール剤32とつながることにより画素領域23を囲んだ内側と外側とを分ける様に形成されている。このため、注入口4を通して例えば液晶材料や電解液等の光変調する物質を内部シール剤31の内側のみに設けることが出来る様になっている。内部シール剤31の外側は通気口33を通して外気とつながっている。
この方法によれば、内部シール剤31によって画素領域23の近くで両基板を接着させることが可能となるため、基板間の距離の精度や外力に対する機械的強度についての性能の向上が期待できる。その一方で、内部シール剤31がパネルを通る光を乱す問題や、パネルを表示装置に用いる場合に内部シール剤31が観察者に観察されてしまう問題等の新たな問題も発生する。このため、図示しないが、この従来技術では画素領域23以外の全体に遮光膜を設けてこの様な問題を回避する様にしている。しかし、パネルに遮光膜を設けると、その分だけコストが増大することとなる。また、非画素領域を遮光膜で覆うため、非画素領域を光が透過する透光領域として用いることが出来なくなる。なお、この従来技術では、内部シール剤31の内側だけに光変調する物質を設けることにより、その使用量を削減することも出来る様になっている。
以下、本発明の実施の形態について図1〜図24を参照しながら説明する。なお、これらの図で図示した構成において、共通のものについては同じ符号を付けて、繰り返しの説明を省略する。図1〜図4は本発明の光変調装置用パネルを模式的に描いた概略図である。図1は光変調用パネルの概略平面図、図2は図1の光変調用パネルの概略断面図、図3と図4は共に図1の光変調用パネルにおける各種の領域を描いた概略平面図である。
図1および図2に示す通り、第1の基板1と第2の基板2との外周部内側には、シール剤3を設け、さらに基板間にはスペーサー5を設け、パネルを形成している。第1の基板1と第2の基板2との間の距離を規定するためにスペーサー5を用いていて、両基板間の距離はスペーサー5の高さと同じになっている。また、シール剤3は第1の基板1と第2の基板2とに接着していて、第1の基板1と第2の基板2との間の距離が広がらない様にしている。
パネルには観察者が表示を観察できる領域として、使用領域を設け、使用領域の外側には、パネルの表示を観察できない非使用領域を設定している。使用領域には、電極が形成されている画素領域と、非画素領域が設定され、非画素領域には、光変調する物質を注入するための注入路領域とスペーサー領域によって構成されている。図1に示す通り、スペーサー5については、画素領域23と注入路6とを一部を除き取り囲む様にして設けている。スペーサー5と第1の基板1と第2の基板2とによって画素領域23と注入路6との空間が形成されていることになる。
図1では、スペーサー5が設けられている外周辺を使用領域と非使用領域との境界としている。第1の基板1または第2の基板2の外側外周部には、非使用領域を覆うように図示しない見切り板を配置し、非使用領域が観察されないようにする。また、シール剤3はパネルの外周周辺に注入口4を形成する様にして連続的に設けている。
画素領域23は注入路6と注入口4とを通じてパネルの外部とつながっているため、注入口4と注入路6とを通じて光変調する物質を画素領域23に設けることが出来る。光変調する物質をパネル内部に設けるにあたっては、例えば公知の真空注入法等を用いることが出来る。注入路6は画素領域23とパネル外部とをつなぐために設けているものであるため、その機能を果たす範囲で任意の形状に設計することが出来る。
次に、図3と図4を参照しながらスペーサー5を形成している領域について説明する。本実施の形態のパネルでは、使用領域21、非使用領域22、画素領域23、非画素領域24の各領域を図3に示す様に設定している。一点鎖線の内側の領域が使用領域21であり、その外側にある一点鎖線と二点鎖線の間に囲まれた領域が非使用領域22である。使用領域21の中の点線で描かれた領域の内側が画素領域23を示している。画素領域23はセグメント型に形成されていて、本実施の形態では、6角形の画素領域23を「8」の字を表す様に7つ配置していて、この様な画素領域23の集まりを2つ並べている。使用領域21の内、画素領域23を除く領域が非画素領域24である。すなわち、使用領域21は画素領域23と非画素領域24とに分かれている。
図4に示す通り、非画素領域24はスペーサー領域25と注入路領域26とに分かれている。注入路領域26に関しては、複数の画素領域23をつなぐ様に画素領域23に隣接して設けており、画素領域23と注入路領域26とは連続して形成される様にしている。本実施の形態では、この様な画素領域23と注入路領域26とを2箇所に設けている。この画素領域23と注入路領域26とのまとまりは一部で非使用領域22とつながっており、それ以外ではスペーサー領域25に接している。すなわち、この画素領域23と注入路領域26とのまとまりを囲む様にスペーサー領域25を設けている。よって、本実施形態では、スペーサー領域の外周境界部が、使用領域と非使用領域の境界に設定されている。なお、本実施の形態では「8」の字を表す様に画素領域23を設けているが、画素領域の数や形状、配置位置等については任意に設定することが可能である。
図4のスペーサー領域25にスペーサーを設けることにより、図1に示す形状のスペーサー5が形成される。スペーサーの形成は以下のような製造方法を採用することができる。スペーサーの製造方法としては、フォトリソグラフィーの工法を用いて基板上に形成されることを特徴としたスペーサーが使用されている。この様なフォトリソグラフィーの工法を用いて設けられるスペーサーのことをフォトスペーサーと称する。フォトスペーサーを形成する方法としては、例えば次の様な製造方法が用いられている。一方の基板上にフォトスペーサーとなる材料の膜を希望する基板間距離と同じ厚さとなる様に設け、この上にフォトレジストを塗布する。設計したフォトマスクを用いてフォトレジストの露光を行った後、現像処理を行ってフォトレジストにパターンを形成する。この様な露光並びに現像処理の結果、スペーサーとしたい部分の上部にだけフォトレジストが残るため、フォトスペーサーとなる材料の膜に対しエッチングを行うと、スペーサーとならない部分は除去され、スペーサーとなる部分だけが残る。最後にフォトレジストを剥離することにより、フォトスペーサーが形成される。
この様な製造方法を用いて所定の高さのフォトスペーサーを形成した後に、シール剤を用いて2枚の基板を貼り合わせる方法によってパネルを完成させることが出来る。フォトスペーサーの材料としては、各種の有機高分子材料(例えばポリイミドやフォトレジスト)、無機(例えばガラス)の材料を用いることが可能である。
一方で、感光性の材料をフォトスペーサーの材料として用いることにより、露光及び現像によってパターンを形成し、それをそのままスペーサーとする製造方法も採用できる。この場合には、露光と現像によってスペーサーが形成されるため、エッチングや剥離の作業が不要である。この様なフォトレジストを材料とするフォトスペーサーのことを特にレジストスペーサーと呼ぶこととする。また、レジストスペーサーを含め、合成樹脂を材料とするスペーサーのことを樹脂スペーサーと称する。
樹脂スペーサーと基板との接着力に着目し、一方の基板に樹脂スペーサーを仮硬化の状態で形成した後、この仮硬化の状態の樹脂スペーサーをもう一方の対向する基板に接触させながら本硬化させることによって、樹脂スペーサーと両基板とを接着させることもでき
る。また、樹脂スペーサーの上に樹脂スペーサーを構成する有機高分子材料を含む樹脂膜を配置し、樹脂膜と基板との接着性を高めることで、樹脂スペーサーを固定化することもできる。
また、エッチング(ガラスの場合にはフッ酸などの酸を用いることが出来る)によって基板を直接加工しても良い。また、サンドブラスト等の工法を用いて基板を加工してスペーサーを形成しても良いし、例えばホットエンボス加工等の様に型を使った成型工法によって表面にスペーサーがある基板を成型しても良い。
従来技術のスペーサーが通常数μmや数十μmのオーダーの大きさを有し、パネル内に離散的に設けられるものであるのに対し、本実施の形態のスペーサー5は、パネルの大きさにもよるが、例えば数mmや数cmのオーダーの大きさで連続的に設けられるものであるため、従来技術のスペーサーと比べると非常に面積が大きい。しかし、非画素領域24のほぼ全域に連続的に設けているために、逆にスペーサーであることを識別されにくい。
本実施の形態のパネルのスペーサー5は、その境界が画素領域23との境界や注入路領域6との境界に一致しており、スペーサー領域25内には境界がない。このため、スペーサー領域25においては光が一様に透過する(また一様に吸収される)。そして、本実施の形態のパネルではスペーサー領域25内においてスペーサー5が連続的に設けられていて境界が無いため、この様な散乱を抑え均一に光を透過することが出来る。
なお、スペーサー5と第1の基板1との境界やスペーサー5と第2の基板2との境界での散乱や屈折等を防ぐためには、スペーサー5の屈折率とこれら基板の屈折率とが、略同一であることが望ましい。また、スペーサー5と画素領域23との境界やスペーサー5と注入路6との境界での屈折等を防ぐためには、同様にスペーサー5の屈折率と画素領域23と注入路6とに設ける光変調する物質の屈折率とが略同一であることが望ましい。
例えば本実施の形態のパネルを表示装置に用いる場合には、注入路6を除けばスペーサー5と非画素領域24とが一致しているため、スペーサー5は画像の背景部分として認識されスペーサーがあることが認識されないで済む。従来技術のスペーサーが目視で観察されない程の細かさであるためにスペーサーとして識別もされないものであるのに対して、本発明のスペーサーは目視で観察はされるのだが、画像の背景と同化しているためにスペーサーとしては識別されないことを狙ったものである。この様にして、本実施の形態によればスペーサーの存在に違和感を持たれることなく大きなスペーサーを設けることが出来、また散乱や屈折を抑えた高品位な画像の背景を実現することが可能となる。また、表示装置以外の光学装置に用いる場合に関しても、非画素領域24のほとんどを占めるスペーサー領域25を通過する光について従来技術のパネルと比べて散乱や屈折等の不要な乱れの少ないものとすることが出来る。
スペーサー5に無色透明なものを用いれば、スペーサー領域25を通る光をそのまま透過させることが出来る。この場合、スペーサー領域25ではパネルの背後にある景色がスペーサー5を通してそのまま見えることとなる。また、スペーサー5に着色されたものを用いれば、スペーサー領域25からの出射光を特定の色とすることが可能である。このため、例えば表示装置の場合には、例えば顔料等によってスペーサーを着色すること等により画像の背景を特定の色にすることが可能である。
スペーサー5に例えば顔料等を用いて黒色にしたものを用いれば、スペーサー5を使って光を遮断することも可能である。この場合、スペーサー5によって光が吸収されるため、例えばクロム等を材料とした遮光膜を用いなくてもスペーサー領域25を遮光領域とすることが出来る。この様にして作製したパネルを表示装置に用いれば、遮光膜を用いずに
画像の背景が黒いいわゆるネガ型の表示装置を実現することが可能となる。勿論、遮光を完璧にするために遮光膜を設ける様にしても良い。
本実施の形態のパネルでは、スペーサー領域25の全域にスペーサー5を設けているため、画素領域23内にスペーサーを設けることなく、スペーサーの面積を大きく取ることが出来ている。本実施の形態の様にスペーサー領域25内のみにスペーサー5を設ける場合には、パネルの面積に対するスペーサーが設けられている面積の割合は、使用領域内21における画素領域23と注入路領域26との合計とスペーサー領域25との比によって決まる。セグメント型のパネルの場合には一般的に画素領域に対する非画素領域の割合が高い場合が多い。このため、特にセグメント型のパネルではスペーサーを大きくすることが出来る。このように、パネルの面積に対するスペーサーが設けられている面積の割合が大きいほど、基板間距離の制御を精度良く行うことが出来る。また、同じくスペーサーの変形量(ひずみ)がスペーサーの面積に反比例すると考えられており、パネルの面積に対するスペーサーが設けられている面積の割合が大きいほど、外力に対する機械的強度についても高い強度が得られる。このため、本実施の形態によれば、基板間距離の精度や外力に対する機械的強度に優れたパネルを実現することが出来る。
従来のパネル内スペーサーは、パネルを通る光が散乱してしまう問題や、スペーサーの部分だけ周囲と同じ様に光変調することが出来ない問題、また例えば液晶材料を用いる場合にはスペーサーの周辺で配向不良が発生する問題等様々な問題が発生したが、本実施の形態のパネルでは、画素領域23にスペーサーを設けていないため、これらスペーサーに起因する問題の影響を受けない。このため、高性能な光変調装置を実現することが出来る。
また、図1より明らかな通り、本実施の形態のパネルではスペーサー領域25の全域にスペーサー5を設け、使用領域21内では画素領域23と注入路6とだけを光変調する物質を設けることが可能な空間としている。このため、パネル内に光変調するための材料を設ける上で、例えば液晶材料や着色された粒子や溶液、電解液などの光変調するための材料を節約することができる。
スペーサー5は使用領域21内において連続的に設けられていることが望ましいが、例えばスペーサー5に細かな隙間を空ける様にしても構わない。すなわち、従来技術のパネルでは細かなスペーサーがパネルの空間内に設けられているのに対し、細かなスペーサーの無い空間がスペーサー内に設けられている状態である。この場合でも、本発明が目的としている基板間距離の精度やパネルの機械的強度の向上について十分な効果を得ることが出来る。表示装置として用いる場合には、観察者とパネルとの間の距離にもよるが、例えば、スペーサーからスペーサーまでの距離が数μmや数十μm程度であれば、細かなスペーサーの無い空間を目視で識別することは難しい。また、この様な方法を用いて逆に背景を際立たせる効果を狙うことも可能である。
上記において説明した実施の形態の様に、スペーサー5を使用領域21内だけに設けても構わないが、更に非使用領域22にもスペーサーを設ける様にしても良い。スペーサーを非使用領域にも設ける場合の一実施の形態について図5を参照しながら説明する。図5はスペーサーを非使用領域にも設ける場合の一実施の形態を模式的に描いた概略平面図である。
図5に示す通り、本実施の形態のパネルではスペーサー5を連続して非使用領域22内にも設けている。また、この場合においても画素領域23とパネルの外部とをつなぐため注入路6をスペーサー5の拡大に合わせて延長している。その他の構成については図1のパネルの同構成である。
図5では、スペーサー5を当初設定された使用領域21の範囲よりも大きな面積で設けている。先の図1では、使用領域と非使用領域の境界部を、スペーサー領域の外周境界部と一致させていたが、そのような場合には、例えばパネルを製造する過程でスペーサーの位置がずれたり、何らかの理由によって装置の使用領域の範囲が変更されたりした場合に不具合が生じる可能性がある。例えば非使用領域を覆うように配置する見切り板の配置時に、パネルとの位置関係がずれた場合には、スペーサーが設けられた使用領域とスペーサーが設けられていない非使用領域との境界が観察されてしまうことが生じる。よって、図5に示す様に、スペーサー5を当初設定された使用領域21の範囲よりも大きな面積で設けることにより、パネルの使用領域の範囲について余裕を持たせることが出来る。
また、この様にスペーサー5を非使用領域22にも設けることにより、パネル内をスペーサー5が占める割合を大きくすることが出来るため、例えば基板間距離の精度や外力に対する機械的強度の向上等の面でも良い効果を得ることが出来る。勿論、スペーサーをこの様に連続的に設ける以外にも、図示しないが、例えば基板間距離の制御のために、使用領域に設けたスペーサーから離れた位置に別途スペーサーを設けても良い。この場合、状況に応じて例えばドット状やストライプ状の様にして断続的に設けても良い。また、スペーサー5とシール剤3とが接する様にスペーサー5を設けても良い。特に非使用領域が大きい場合には、以上の様に非使用領域にもスペーサーを設けることが好ましい。
次に、画素領域内にも部分的にスペーサーを設ける場合の一実施の形態について図6を参照しながら説明する。図6は図1のパネルの一部を拡大して模式的に描いた概略拡大平面図である。図6に示す通り、スペーサー5の間に画素領域23と注入路6とがあり、画素領域23の中に更に部分的にスペーサー5を設けている。
画素領域23が大きくなるに従って、画素領域外側に配置されているスペーサー5間の距離が広がり、画素領域23内の基板間距離の制御が難しくなる場合がある。例えばプラスチック等の材料を使った可撓性のある基板を用いる場合に特に顕著で、画素領域23の端付近の基板間距離に対して中央部分の基板間距離が大きかったり小さかったりする問題を生じる。また、セグメント型のパネルの特徴として、マトリックス型のパネルと比べて一つ一つの画素領域の面積が大きい場合が多いと言うことがある。
そこで、画素領域23の周囲にスペーサー5を設けるだけでは画素領域23内の基板間距離を十分に制御出来ない場合には、図6に示す通り、画素領域23内にも細かな部分的なスペーサー5を設けると良い。この場合、部分的なスペーサー5が画素領域23を通る光を乱す原因となるため、部分的なスペーサー5の形状や大きさ、分布等についてはその他の仕様に合わせ最適化することが望ましい。特に表示装置に用いる場合には、部分的なスペーサー5を観察されない様な大きさとすることが望ましい。この場合、部分的なスペーサー5をドット状に分散させて設けると良い。なお、図示しないが、状況に合わせて注入路6内にも同様の細かなスペーサーを設けても良い。
スペーサーを両基板に固着させる場合の一実施の形態について図1、図3、図4、図7を参照しながら説明する。図7はスペーサーを両基板に固着させる場合の一実施の形態を模式的に描いた概略断面図である。
図7に示す通り、第1の基板1と第2の基板2との間にシール剤3とスペーサー5とを設けパネルを形成している。スペーサー5は第1の基板1に設けていて、第1の基板1に固着している。更に、スペーサー5と第2の基板2との間には樹脂膜7を設けており、この樹脂膜7を介してスペーサー5が第2の基板2に固着している。また、シール剤3は第1の基板1と第2の基板2とに接着していて、第1の基板1と第2の基板2との間の距離
が広がらない様にしている。
なお、第1の基板1にスペーサー5を設ける代わりに、前述の例えばガラスやプラスチック等の板材を直接加工してスペーサーを形成し、第1の基板1とスペーサー5とが一体となったものを用いても良い。
本実施の形態のパネルでは、スペーサー5が第1の基板1と第2の基板2との両方に固着していることから、第1の基板1と第2の基板2との間の距離を強固に固定できる。本実施の形態によれば、スペーサー5が基板同士を近づけない様にすると同時に離さないようにもするため、両基板間の距離を精度良く一定の大きさに保つことが出来る。また、両基板の位置関係がスペーサー5と樹脂膜7とによって固定されているため、外力が加わった場合にも基板間の距離が変化することを抑えることが出来る。
特に剛性の低い可撓性のある基板を用いる場合には、基板が変形しやすいため、基板間の距離を一定の大きさにして保つことが非常に難しい。このため、本実施の形態の様にスペーサー5を両基板に固着することが特に有効である。この様なスペーサーを両基板に固着させるパネルは、例えばメモリ性を示す液晶材料を用いた表面安定化強誘電性液晶モードのパネルには有効である。表面安定化強誘電性液晶モードのパネルの場合には、ペンや指で押してパネルに外力を加えることにより基板間の距離が大きくなると、液晶の配向が壊れ、表示が良好に行われなくなる。このようにスペーサーが両基板に固着しているパネルの場合には、液晶の配向が壊れるのを防ぐことができる。
スペーサー5を両基板に固着させることは次の様な点からも重要である。スペーサー5が第2の基板2に固着していない場合には、スペーサー5と第2の基板2との間に隙間が出来て、そこに光変調する物質が入り込んでしまう可能性がある。すると、本来想定されていない様な光の変調がそこで起きてしまい、パネルから出る光が希望とは異なるものとなってしまう。例えば表示装置の場合には、画像の背景に相当する非画素領域24内の色調が本来のものとは異なる様になったり、一部にだけ光変調する物質が入り込み背景がまだら模様になってしまったりする。可撓性のある基板を用いる場合には基板が変形して基板間の距離が広がりやすいため、この様なことが起こる可能性が特に高い。本実施の形態によれば、スペーサー5を第2の基板2に固着させることによってこの様な問題を防ぐことが出来る。
また、可撓性のある基板を用いる場合には、基板が変形してはがれやすいため、スペーサー5と両基板とが固着されている領域の面積がパネル内で出来るだけ大きな割合を占めていることが望ましい。本実施の形態では、図1に示す様に、非画素領域のほぼ全域にスペーサー5を連続的に設けているため、非常に大きな面積でスペーサーと第2の基板2とを固着させることが出来ている。
なお、前述の非使用領域22内に部分的なスペーサーを設ける場合や画素領域23内に部分的なスペーサーを設ける場合についても、同様に樹脂膜を介してスペーサーと基板とを固着させることで効果が向上する。
前述の様にスペーサー5と第1の基板1との境界やスペーサー5と第2の基板2の境界で余計な屈折を生じさせない様にするためには、スペーサー5と第1の基板1と第2の基板2との屈折率がなるべく近いことが好ましい。本実施の形態の様にスペーサー5と第2の基板2との間に樹脂膜7を設ける場合には、樹脂膜7についてもその屈折率がこれらの構成要素の屈折率に出来るだけ近いこと、略同一であることが望ましい。
スペーサーを固着する方法としては、細かな接着性の粒子を散布する方法でも構わない
が、スペーサーを構成する有機高分子材料を含む樹脂膜を固着部に配置するのがのぞましい。樹脂膜7についてはスペーサー5と第2の基板2とを固着させるのに十分な固着力を有していることが必要である。また、光変調する物質に対する悪影響がないことや経時変化が少なく安定性を備えていること等が、スペーサー5と同様に樹脂膜7の特性として重要である。他にもその屈折率や色がスペーサー5と同じであることが好ましい。この様な諸要素を勘案した場合、スペーサー5に用いる有機高分子材料を樹脂膜7にも用いることは特に適切と考えられる。この場合、スペーサー5に用いる有機高分子材料に例えば溶媒や固着力を高めるための添加物を加えて用いることが出来る。特に溶媒については、後述のパネルの製造方法において、樹脂膜7の配置時に粘性の調整にあたって重要な役割を果たす。
次に基板が偏光機能を有する場合の一実施の形態について図8と図1、図3、図4を参照しながら説明する。図8は偏光機能を有する基板を用いた場合の一実施の形態を模式的に描いた概略平面図である。
本実施の形態では、図1で示したパネルにおいて、第1の基板1と第2の基板2自体とに、通過する光を直線偏光に変換する機能を有するものを用い、両基板の偏光方向が直交する様に第1の基板1と第2の基板2とを配置している。このように、第1の基板と第2の基板自体が偏光機能を有していてもよいし、第1の基板上または第2の基板上に偏光機能を有する偏光機能素子を配置しても構わない。
偏光機能を有する基板については、特に限定しないが、例えばポリビニルアルコールにヨウ素や色素を吸着させた偏光機能素子である偏光フィルムをそのまま用いてもよいし、それらの偏光機能素子を基板として使用するガラスやプラスチック等の板に貼ったものを用いることが出来る。また、透過型の物でも良いし、反射型のものでも良い。
また、スペーサー5には特に屈折率に異方性がなく複屈折性を有しないものを用いている。その他の構成は前述の実施の形態と同じである。本実施の形態のパネルでは、スペーサー5の屈折率に異方性がなく、等方的であるため、スペーサー5を通る直線偏光は偏光方向を変えずにそのまま通過する。このため、第1の基板1を通してパネル内に入る光は、第1の基板1によって直線偏光に変換された後、偏光方向を変えずにスペーサー5を通過し、第1の基板1の偏光方向と偏光方向が直交している第2の基板2によって遮断される。この様に、本実施の形態によれば、スペーサー5を設けているスペーサー領域25を通る光が第1の基板1と第2の基板2とによって遮断されるため、遮光膜を別途設けることなくスペーサー領域25を遮光領域としたパネルを実現することが可能となる。
なお、本実施の形態の場合、偏光機能を有する2枚の基板によって光が遮断されるため、スペーサー5に関しては屈折率が等方的なものであれば良く、無色透明なものでなくても構わない。このため、スペーサー5に色の付いた材料を用いることも可能である。
画素領域23を光が通り抜ける透光領域とするためには、例えば光変調する物質として液晶材料を画素領域23内に設け、第1の基板1からの直線偏光を第2の基板2の偏光方向の偏光成分を持つ偏光に変換する方法を用いることが出来る。この様な偏光方向を変換する作用を持つ液晶の駆動モードとしては、例えば液晶材料の旋光性を利用するねじれネマティックモードや複屈折性を超ねじれネマティックモード、表面安定化強誘電性液晶等の各種の駆動モードがある。なお、これらの駆動モードの場合には液晶材料の配向を制御することが必要である。この様な液晶材料を用いた各種の駆動モードを用いることによって画素領域23を通る光を任意に変調することが出来る。
液晶材料の向きには通常ある程度の分布が生じるため、液晶の偏光の方向を完全に変え
ない様にすることは難しい。また、例えばねじれネマティックモードの場合の様に、液晶材料の向きを偏光の方向を変えないような向きに揃えるためには電圧の印加が必要とされる場合もある。このため、従来技術のパネルの場合には、遮光膜を用いずに非画素領域24を遮光領域としたパネルを実現することが難しかった。
本実施の形態のスペーサー5の場合には単純に光がそのまま通るだけであるため、何ら操作を必要とせず、両基板の偏光方向を直交させることにより、図8に図示するように、スペーサー5の領域をほぼ完全に光を遮断することが出来る。よって、画素領域23と非画素領域24のほとんどを占めるスペーサー領域25との間のコントラストが高い光変調装置が実現出来る。また、遮光膜を用いることなく、背景を黒色としたいわゆるネガ型の表示装置を容易に実現することが出来る。
偏光機能を有する基板を用いる場合の別な一実施の形態について図9、図1、図3、図4を参照しながら説明する。図9は偏光機能を有する基板を用いる場合の別な一実施の形態を模式的に描いた概略平面図である。
本実施の形態では、両基板の偏光方向が平行となる様に第1の基板1と第2の基板2とを配置している。その他の構成は前述の実施の形態と同じである。本実施の形態では、第1の基板1の偏光方向と第2の基板2の偏光方向とが一致しているため、第1の基板1によって直線偏光に変換された光は、偏光方向を変えずにスペーサー5を通過した後、第2の基板2によって遮断されずにそのまま通り抜ける。このため、本実施の形態によれば、図9に示す様に、スペーサー5を設けたスペーサー領域を遮光領域ではなく透光領域とするパネルを実現することが出来る。但し、本実施の形態では直線偏光がそのままパネルを通過するため、スペーサー5の色の影響を受けることとなる。本実施の形態のパネルを表示装置に用いれば、背景が白色のいわゆるポジ型の表示装置を実現することも出来る。
なお、第1の基板1と第2の基板2との配置については、両基板の偏光方向が互いに完全に直交する様に或いは平行となる様に配置しなくても、状況に応じて若干ずらして配置しても良い。また、第1の基板1の偏光方向と第2の基板2の偏光方向とが直交と平行との間となる様に両基板を配置して、スペーサー領域25を任意の中間調にしても良い。また、以上、両基板に偏光機能を有する基板を用いる場合の実施の形態について説明したが、一方の偏光機能を有する基板として反射機能を有する基板に置き換えて用いることも出来る。
図1から図9については、両基板を張り合わせるためにシール剤を設けたが、このシール剤の構成を省略することができる。次に、固着したスペーサーをシール剤のかわりにパネルの外壁として用いる本発明の光変調装置用パネルについて図10、図11、図12を参照しながら説明する。図10はパネルの概略平面図、図11は図10の概略断面図、図12は図10のパネルにおける各種の領域を描いた概略平面図である。
図11に示す通り、第1の基板1と第2の基板2との間にスペーサー5と樹脂膜7とを設けパネルを形成している。スペーサー5は第1の基板1に設けていて、第1の基板1に固着している。更に、スペーサー5と第2の基板2との間に樹脂膜7を設けており、この樹脂膜7を介してスペーサー5が第2の基板2に固着している。このため、第1の基板1と第2の基板2との間の距離はスペーサー5の高さとほぼ一致する長さとなっている。
図10に示す通り、本実施の形態のパネルでは、注入口4、注入路6、画素領域23の部分を除いて、第1の基板1と第2の基板2とが重なる範囲のほぼ全域にスペーサー5を設けている。また、スペーサー5は第1の基板1と図示しない樹脂膜によって第2の基板2とに固着している。このため、第1の基板1と第2の基板2とスペーサー5と図示しな
い樹脂膜とによって、画素領域23と注入路6と注入口4とがつながった空間がパネル内に形成されている。なお、注入口4付近ではスペーサー5が第2の基板2の縁部外側に突き出る様な形状で、第1の基板1と第2の基板2とが重なる範囲の外側まで連続的に設けている。
図12に示す通り、本実施の形態のパネルでは画素領域23と注入路領域26とスペーサー領域25との各領域を設定している。スペーサー領域25と注入路領域26とによって非画素領域が構成されている。本実施の形態では、非画素領域が両基板の重なる範囲のほぼ端にまで達しているため使用領域と非使用領域との区別を設けていない。
本実施の形態では、六角形の画素領域23を「8」の字を表す様に7つ配置していて、この様な画素領域23の集まりを2つ並べている。注入路領域26に関しては、複数の画素領域23をつなぐ様に画素領域23に隣接して設けており、この様な画素領域23と注入路領域26とのまとまりに対して、注入口4となる注入路領域26の一部を除いてスペーサー領域が接する様にしている。すなわち、この画素領域23と注入路領域26とのまとまりの一部を除いて囲む様にスペーサー領域25を設けている。なお、本実施の形態では「8」の字を表す様に画素領域23を設けているが、画素領域の数や形状、配置位置等については任意に設定することが可能である。
本実施の形態のパネルでは、スペーサー5がパネルの外壁の役割を果たしているため、従来技術のパネルにおいてパネルの外周付近に設けるシール剤が不要である。つまり、第1の基板と第2の基板との距離の規定も、第1の基板と第2の基板との固着も、このスペーサーのみによって行われている。このため、光変調装置としての機能に寄与しない非使用領域をほとんど無くし、パネルの全体或いはほぼ全体を使用領域として用いる事が出来る。パネルの非使用領域が減るため、その分だけ使用領域の大きさを変えずにパネルの大きさを小さくする事が出来る。また、画素領域23と注入路6とにだけ光変調する物質が設けられるため、非使用領域に設けられる無駄な光変調する物質が無くなり非常に効率的である。
シール剤を用いたパネルでは、シール剤の端が直線的にならず波打ったり繊毛が出ている様な状態になり美観が損なわれるため、例えば光変調装置をディスプレイの様に観察される用途で用いる場合には外装や遮光膜を設けてシール剤を隠す事が行われる。これに対し、本実施の形態の場合には、画素領域23や注入路6の端から両基板が重なる範囲の端付近までスペーサー5が連続して形成されていて、一様に光が透過するため非常に美しく、外装を設けて隠す必要が無い。このため、パネル全体を使用領域として用いる事が出来る。また、外装を設けて端子部分やスペーサー5の端を隠す場合でも、両基板が重なる範囲のほぼ端までスペーサー5を形成する事が出来るため、パネルのほぼ全体を使用領域として用いる事が出来る。
シール剤を用いるパネルの場合には、製造工程において両基板を重ね合わせた後両基板に圧力をかける際にシール剤を押し潰すために大きな圧力が必要とされる。また、シール剤近辺の基板間の距離がパネル内の他の箇所と異なる問題が生じる場合がある。本実施の形態のパネルでは、シール剤を用いず、またスペーサー5の高さが元々基板間の距離とほぼ同じであるため、その様な大きな圧力が必要なく、またパネル全体に渡って均一な基板間の距離を実現する事が出来る。
また、本実施の形態では注入口4もスペーサー5を用いて形成している。通常、注入口の部分はパネルの外壁であるシール剤がパネルの外側に突き出る形状とし、その先端が2枚の基板が重なっている範囲の端に近づくようにする。シール剤を用いる従来技術のパネルでは、シール剤を一方の基板に塗布した後、両基板を重ね合わせて圧力をかけシール剤
を押し潰すため、シール剤が広がる。(その広がる程度は、塗布時のシール剤の高さと加圧後の基板間の距離によるが、一般的に3倍から10倍程度である。)このため、注入口の形状や幅及びその先端の位置を高精度で制御する事が難しい。しかし、本発明のようにスペーサー5を用いて注入口4を形成する場合には、注入口4の形状や幅、先端の位置を自由に設計する事が出来ると共に、スペーサー5の形状変化が非常に少ないため高精度で制御する事が出来、注入工程での不良を削減する事が出来る。
フィルム基板を用いる場合には、基板が撓む事によって注入口4が塞がれ、パネル内に光変調する物質を注入する事が困難となる場合がある。このため、注入口の幅やその先端の位置を適切に制御できる事が特に重要である。なお、両基板が接触する事により注入口4を塞ぐ事を防ぐには、注入口4部分のスペーサー5を第2の基板2の縁部外側にまで設ける様にすると良い。また、注入口4や注入路6を広くする場合には、その一部にスペーサーを設けて基板間の距離を保てる様にすると良い。
本実施の形態では、第1の基板1と第2の基板2とが重なる範囲が長方形になっているが、その形状はこの様な4角形に限らず例えば星型など様々な形状とする事が出来る。従来技術のパネルで用いるシール剤の場合には、両基板を重ね合わせた後圧力を加える際に押し潰されて塗布時の形状から広がるため、鋭角を含む形状や頂点の数の多い細かい形状を実現する事が難しい。また、その端面が真っ直ぐな直線や滑らかな曲線とならないため、狙い通りにシール剤の端を画素領域の端に合わせて設ける事が出来ない。このため、両基板が重なる範囲の形状が複雑なパネルを実現する事が困難である。本実施の形態の場合には、両基板が重なる範囲や画素領域が鋭角を含む複雑な形状の場合でも、スペーサー5を用いる事により、その形状に合わせてパネル内の空間を形成するための壁を設ける事が出来る。このため、例えばプラスチックの様な加工が容易な材質の基板を用いて様々な形状のパネルを作る場合に特に有効である。
スペーサー5の端を出来るだけ利用者に観察されにくくする場合には、スペーサー5の端と両基板が重なる範囲の端とを極力一致する様にすると良い。一方で、後述する実施の形態の様に両基板が重なる範囲の外周付近に更に接着剤を設ける場合には、スペーサー5の端と両基板が重なる範囲の端とに距離をもたせ、接着剤を設けるための場所を作ると良い。また、本実施の形態では両基板が重なる範囲の内側だけにスペーサー5を設けているが、スペーサー5は両基板が重なる範囲の外側にも設ける様にしても良い。逆にスペーサー5の端が両基板の重なる範囲の端から大幅に内側にあっても良い。スペーサーの場合には、端面を任意の真っ直ぐな直線や滑らかな曲線で構成する事が出来るため、利用者に観察される場合でもシール剤に比べ違和感を少なくする事ができる。
なお、以上樹脂膜を介してスペーサーを基板に固着させる場合について説明したが、スペーサーを直接基板に固着させる場合についても同様に本実施の形態を適用する事が出来る。また、以下の実施の形態についても同様である。
次に、注入口付近の構造について図13を参照しながら説明する。図13は本実施の形態のパネルを模式的に描いた概略平面図である。本実施例では、注入口についてもスペーサー5で形成しているため、図13に図示するように、第1の基板1と第2の基板2とが重なる範囲の縁部、第2の基板2の外側まで、スペーサー5が配置されている。また、注入口4は複数設けられており、図13では注入口4を2つ設けている。また、画素領域23と注入路6と注入口4とがつながった空間が2つパネル内に形成されている。その他の構成は図10のパネルと同じである。
本実施の形態のパネルでは、複数の注入口4を分散して設ける事により、画素領域23とパネルの外へ通じる注入口4とをより短い距離で結ぶ事が可能となっている。これによ
り、画素領域23と注入口4との間の注入路6の長さを短くする事が出来、注入路6の面積を一層小さくする事が出来る。注入口4から画素領域23までの注入経路が短くなり、また同時に複数の注入口4を通して注入を行えるため、光変調する物質を注入する際に必要な時間を短縮する事が可能となる。また、注入路6の面積が小さくなるため、パネルの大きさを更に小さく出来ると共に、光変調する物質の使用量を減らす事が出来る。この様な複数の注入口を設ける事の効果は、パネルが大きくなり画素領域23のある範囲が広くなる程大きくなる。
なお、図13に示す本実施の形態では注入口4を2つ設けているが、更に多くの注入口を設け、パネル内に形成される空間を更に多くしても良い。また、注入口4を2つ共画素領域23に対して同じ方向に設けているが、注入口は画素領域に対して様々な方向に設けて良い。
次に基板間に更に接着剤を設けて2枚の基板の耐剥離性を高める場合の一実施の形態について図14を参照しながら説明する。図14は本実施の形態のパネルを模式的に描いた概略平面図である。
図14に示す通り、本実施の形態のパネルでは、第1の基板1と第2の基板2とが重なる範囲の外周付近に接着剤9を設けている。その他の構成は図13のパネルと同じである。
本実施の形態の様に、接着強度の高い接着剤9を第1の基板と第2の基板とが重なる範囲の縁部に更に設ける事により、スペーサー5と2枚の基板との間の剥離を発生しにくくし、パネルの耐剥離性を高める事が出来る。通常、基板とスペーサーとの剥離はパネルの外側に近い場所から始まるため、特に両基板が重なる範囲の端の近辺に接着剤9を設けると良い。
一般に従来のシール剤は光変調する物質と接触して設けられているため、シール剤の材料選定には、未硬化物の残存量やイオン濃度など考慮しなければならない。しかし、接着剤9はスペーサー5により画素領域23と隔てられているため、画素領域23に設けられる光変調する物質と接触しない。このため、接着剤9による光変調する物質への悪影響を考慮する事なく、使用する接着剤を選ぶ事が出来る。このため、基板の材質に合わせ特に接着強度、剥離強度の高い強力な接着剤を用いる事が出来る。接着剤9には、特に限定しないが瞬間接着剤、紫外線硬化型接着剤、嫌気性接着剤、熱硬化型接着剤等、種々のものを用いる事が出来る。接着剤9を設ける部分とスペーサー5を設ける部分との見た目を揃えたい場合には、両者の色や透明度、屈折率や複屈折が生じる度合いなどを近づけると良い。
特にフィルム基板の様に可撓性のある基板の場合には、基板が撓む事によって基板を剥離しようとする力が小さな面積に集中して加わるため剥離が発生し易い。比喩的に述べると、撓みにくい基板の場合には力のかかる部分が面的であるのに対し、撓みやすい基板の場合には力のかかる部分がより線的になるため、力が集中してかかり剥離が発生しやすくなる。このため、フィルム基板を用いる場合には、図14に図示する様にパネル内に更に接着剤を設ける事が特に効果的である。
また、従来のシール剤に比べ、粘性の低い材料を使用できるため、その配置方法は種々選択することが出来る。例えば接着剤9は、第1の基板1と第2の基板2とスペーサー5と図示しない樹脂膜とによってパネルを形成した後に、基板間に浸透させる事によってパネル内に設ける事が出来る。接着剤を両基板が重なる範囲の端に接触させると、光変調する物質をパネル内に注入する場合と同様に、毛細管現象によって接着剤が基板間に入っていく。勿論、2枚の基板を重ね合わせる前に予め接着剤を設けても良い。また、基板間に
限らず、接着剤を第1の基板1と第2の基板2との側面に設けて両基板を接着しても良い。
接着剤9を設ける工程は、光変調する物質をパネル内に注入する工程の前に行っても良いし、後に行っても良い。注入工程の前に接着剤9を基板間に設けておくと、光変調する物質が基板間に入り込む事を防ぐ事が出来るためパネル製作上好都合である。また、特に紫外線硬化型や熱硬化型の接着剤を用いる場合には、光変調する物質が紫外線や熱による悪影響を受ける事を防ぐ事が出来るため、光変調する物質を注入する前に接着剤9を設けて硬化させると良い。
接着剤9はパネル外周付近の一部にだけ設ける様にしても良い。また、接着剤9とスペーサー5とは必ずしも接触しなくても良い。接着剤9をパネルの外周の一部にだけ設ける事により、接着剤9をパネル内に設ける手間を減らす事が出来、接着剤の使用量も削減する事が出来る。また、特に注入口4の付近に接着剤を設ける際には、誤って注入口4を通じて注入路6や画素領域23に接着剤が入ってしまう可能性があるため特に注意が必要であるが、注入口4の付近を避けて接着剤を設ける事によりその様な失敗の起こる可能性を減らす事が出来る。
耐剥離性を高めるための接着剤をパネル外周の一部に設ける場合の一実施の形態について図15を参照しながら説明する。図15は本実施の形態のパネルを模式的に描いた概略平面図である。図15に示す通り、本実施の形態では接着剤9をパネルの2枚の基板が重なる範囲の四隅に設けている。その他の構成は図13のパネルと同じである。2枚の基板の剥離は隅の方から生じるため、2枚の基板が重なる範囲の四隅に設ける事は特に効率的である。勿論四隅だけでなくその他の場所にも設けても良い。
次に、1つのパネルを製作後、切断して複数のパネルを得る本発明の光変調装置用パネルの製造方法の一実施の形態について図16を参照しながら説明する。図16は本実施の形態の製造方法を模式的に描いた概略平面図である。
図16に示す通り、最初に第1の基板1と第2の基板2とスペーサー5と図示しない樹脂膜とによって形成されるパネルを後述する製造方法により製作する。このパネルでは、注入口4、注入路6、画素領域23の部分を除いて、第1の基板1と第2の基板2とが重なる範囲のほぼ全域にスペーサー5を設けている。また、スペーサー5は第1の基板1と図示しない樹脂膜によって第2の基板2とに固着しており、画素領域23と注入路6と注入口4とがつながった空間がパネル内に複数形成されている。この様なパネルを製作した後、任意の場所を切断して複数のパネルに分割する。
本実施の形態の製造方法によれば、予め大きなパネルを製作しておいて、後程それを切断する事により、複数の任意の大きさのパネルを得る事が出来る。例えば数を表すパネルの場合には、数字を表す画素領域を多数設けた大きなパネルを製作しておいて、後程それを切断する事によって任意の桁数の数を表すパネルを得る事が出来る。また、パネルの一部に不良が発生した場合には、分割する際に不良部分を切り落として良い部分だけを用いる事により歩留まりを高める事が出来る。例えば数を表すパネルの場合には、1桁分や2桁分など、限られた部分だけを取り除く事が出来るため効率的である。
シール剤をパネルの外壁としてパネルの外周付近に設ける従来技術のパネルでは、パネルを切断するとパネルの外壁がなくなるため、パネルを切断して分割する事が出来ない。これは、パネルの外壁としてのシール剤がパネルの外周周辺だけに設けられていて、パネル内が1つの空間になっている事による。また、シール剤を使用領域にも塗布する事によりパネル内に複数の空間に設ける場合には、シール剤が観察される事を避けるために遮光
膜を用いる等の対策を講じる事が必要である。
本実施の形態のパネルでは、画素領域23と注入路6と注入口4との部分を除いてパネルのほぼ全域に設けたスペーサー5がパネルの外壁としての機能を果たしていると共に、パネル内の画素領域23と注入路6と注入口4とがつながった空間がスペーサー5によって複数に分けられている。この様な構造である事から、パネルを切断した後もスペーサー5によってパネルの外壁の機能が維持されるため、パネルを切断して分割する事が可能となっている。
スペーサーを離間して設ける場合の実施の形態について図17、図18を参照しながら説明する。図17はスペーサーを離間して設ける場合の一実施の形態を模式的に描いた概略平面図、図18は別の一実施の形態を模式的に描いた概略平面図である。
図17に示す通り、第1の基板1と第2の基板2とスペーサー5と図示しない樹脂膜とによってパネルが形成されている。画素領域23、注入路6、注入口4の周りにスペーサー5を設け、それぞれの画素領域23と注入路6と注入口4との集合毎にスペーサー5とスペーサー5との間を離す様にしている。スペーサー5は第1の基板1と図示しない樹脂膜によって第2の基板2とに固着していて、画素領域23と注入路6と注入口4とがつながった空間がパネル内に複数形成されている。
図18に示す通り、本実施の形態では、スペーサー5の形状をより画素領域23と注入路6との形状に近い形状にしている。また、一部でスペーサー5が連続している様にしている。その他の構成は図17のパネルと同じである。
図17の実施の形態では、それぞれの画素領域23と注入路6と注入口4との集合毎にスペーサー5を離す様にしているが、複数の集合毎にスペーサー5の間を空ける様にしても良い。また、1つの集合につき1つの注入口を設けているが、複数の集合に対して1つの注入口を設ける様にしても良い。また図示しないが、ドット状のスペーサー5を他に設けても良い。
図18の本実施の形態ではスペーサー5が連続しているが、スペーサー5は完全に離間していても良い。光変調する物質が注入口4以外の場所から基板間に入るのを防ぐため、特に注入口4の付近ではスペーサー5を連続させておくと効果的である。
図17および図18の形態のパネルでは、スペーサー5が設けられていない箇所を切り出しする事によりパネルを容易に切断分割する事が出来る。偏光機能を有する基板を用いて、両基板の偏向方向が直交する様に両基板を配置する場合には、光が遮断されスペーサー5間の隙間も観察されないため特に有効である。また、画素領域以外に遮光膜を設ける場合に用いても良い。
次に基板に電極を設ける場合の一実施の形態について図19〜図21を参照しながら説明する。図19〜図21は基板に電極を設ける場合の一実施の形態を模式的に描いた概略平面図である。図19は本実施の形態のパネルのセグメント電極と注入路電極とについて模式的に描いた概略平面図、図20は本実施の形態のパネルのコモン電極について模式的に描いた概略平面図、図21は本実施の形態のパネルの一部を拡大して模式的に描いた概略拡大平面図である。
図19に示す通り、本実施の形態のパネルでは、第1の基板1にセグメント電極11とセグメント電極用配線12、注入路用電極17と注入路用電極用配線18とを設け、図20に示す通り、第2の基板2にコモン電極13とコモン電極用配線14とを設けている。
また、図21に示す通り、セグメント電極11は画素領域23から若干はみ出るように、大きめに設けられていて、一部スペーサー5と重なっている。
セグメント電極用配線12はセグメント電極11とパネル外部との間を電気的に接続するために、コモン電極用配線14はコモン電極13とパネル外部との間を電気的に接続するために、注入路用電極用配線18は注入路用電極17とパネル外部との間を電気的に接続するために、それぞれ設けている。
セグメント電極11は画素領域毎に個別に設けていて、コモン電極13は全ての画素領域に共通となる様に設けている。注入路用電極17は、セグメント電極11と接触しない様にしながら、図4で図示した注入路領域26の大よそ全体とスペーサー領域25の一部とに設けている。本実施の形態では注入路用電極17を、2つの「8」のセグメント部2箇所と、「8」のセグメント部とシール剤3との間の1箇所、計3箇所に別体で設けているが、これらがつながる様な形状でパターニングして注入路用電極17を1つとすることも可能である。
セグメント電極用配線12とコモン電極用配線14とを通じて、コモン電極13と選択したセグメント電極11との間に電位差を設けることによって、選択したセグメント電極11の位置にある画素領域23に選択的に電圧をかけることが出来る。同様に、注入路用電極用配線18とコモン電極用配線14とを通じて、コモン電極13と選択した注入路用電極17との間に電位差を設けることによって、選択した注入路用電極17の位置にある注入路6に選択的に電圧をかけることが出来る。
従来技術のパネルでは、光変調する物質をパネル内の全域に設け、セグメント電極とコモン電極とが重なる部分において基板間に電圧をかけて電気光学効果を生じさせる様にしていた。このため、セグメント電極とコモン電極とが重なる部分が画素領域になっている。一方で、光変調する物質がパネル内の全域に設けられているため、コモン電極とセグメント電極用配線、或いはセグメント電極とコモン電極用配線とが重なると、これら配線の設けられている場所でも基板間に電圧がかかって電気光学効果が発生していた。
しかし、本実施の形態のパネルでは、図4に図示するように、使用領域21の内、画素領域23と注入路領域26とを除いたスペーサー領域25の全域にスペーサーを設けている。このため、画素領域23と注入路領域26とにだけ光変調する物質が設けられ、スペーサー領域25には光変調する物質が存在しない。この様な構成のため、本実施の形態のパネルでは、画素領域23と注入路領域26とにおいてのみ電気光学効果が発生し、スペーサー領域25では電気光学効果が発生しない。
本実施の形態では、スペーサー領域25内で電気光学効果が発生しないことから、セグメント電極11やコモン電極13、セグメント電極用配線12、コモン電極用配線14等をスペーサー領域25内に自由に設けることが出来る。即ち、例えばコモン電極13とセグメント電極用配線12、或いはセグメント電極11とコモン電極用配線14とがスペーサー領域25において重なる様に設けることが可能である。また、セグメント電極11とコモン電極13とが重なる部分を画素領域23にみに一致させる必要が無いため、画素領域23から非画素領域24にはみ出す様にして、セグメント電極11やコモン電極13を画素領域23よりも大きく設けることも出来る。
以上のことから分かる通り、従来技術のパネルでは電極の形状によって画素領域の形状が決められるのに対して、本実施の形態の場合には、セグメント電極11やコモン電極13の形状ではなく、スペーサー5の形状によって画素領域23の形状が決められている。よって、画素領域の形状や対向する基板の配線の配置に大きく左右されることなく電極を
設けることが出来る。このため、例えば図20に示す様に、コモン電極13をパネル内のほぼ全域に設ける様な単純な形状とすることが出来る。また、図示しないが、例えばパターニングを行わずに第2の基板2の全面に電極を設ける様にして(いわゆる電極を「べた」の状態で設けて)用いることも可能となる。この様に、コモン電極13を画素領域23と非画素領域24とに連続して設ける場合には、セグメント電極11とコモン電極13との位置関係をほとんど気にしなくて良いため、パネルの製造工程において第1の基板1と第2の基板2とを重ね合わせる時の両者のずれやアライメントの精度が問題とならなくなる。
また、セグメント電極に関しても、スタティック駆動の場合には画素領域毎に独立していることが、ダイナミック駆動の場合には幾つかの画素領域毎に独立していることが必要であるが、画素領域の形状と完全に一致する様に設けることは必要とされない。このため、例えば図21に示す様に、セグメント電極11についても画素領域23よりも大きく設けることが出来る。この場合にも、画素領域23とセグメント電極11とのずれについて余裕が生じるため、やはりパネルの製造工程において第1の基板1と第2の基板2とを重ね合わせる時の両者のずれやアライメントの精度の問題を緩和することが出来る。
これらのずれに対する余裕に関しては、通常、コモン電極13の方がセグメント電極11よりも大きく設けることが出来るため、コモン電極13の方が大きくセグメント電極11の方が小さい。このため、コモン電極13と画素領域23との間のずれよりも、セグメント電極11と画素領域23との間のずれを出来るだけ小さくする方法を考えることが重要である。この場合、両基板を重ね合わせる際に生じるずれの方が大きい場合には、本実施の形態の様に、セグメント電極11を設ける基板(第1の基板1)の方にスペーサー5を設ける様にすると良い。一方で、スペーサーを基板上に設ける際に生じるずれの方が大きい場合には、コモン電極13を設ける基板(第2の基板2)の方にスペーサー5を設ける様にすると良い。フォトリソグラフィーの工法を用いてスペーサー5を設ける場合には、一般的には、スペーサー5を形成する際のずれよりも両基板を重ね合わせる際のずれの方が大きい。このため、この様な場合にはセグメント電極11を設ける基板にスペーサー5を設けることが望ましい。
セグメント型のパネルの場合には画素領域と画素領域との間が離れている場合も多い。この場合は、注入路領域26の面積が大きくなるため、注入路領域26内にある光変調する物質についてもコントロール出来ることが望ましい場合がある。勿論、例えば画素領域間が短い場合や他の理由がある場合等で、特に電圧をかける必要がない場合には、注入路用電極17を設けない様にしても良い。
なお、本実施の形態では、第2の基板2については画素領域23と共通のコモン電極13を用いる様にしているが、画素領域23用のコモン電極とは別に注入路用の電極を設ける様にしても良い。
パネルの端部で露出しているセグメント電極用配線12やコモン電極用配線14、注入路用電極用配線18に周辺回路や駆動用IC等を接続して基板間に適切な電圧をかけられる様にすることにより、本発明のパネルを光変調装置に用いることが可能となる。
なお、電気光学効果ではなく光書き込み方式や熱書き込み方式等の方式を用いる場合には電極並びに配線は必ずしも必要とされない。この場合には、パネルの画素領域に光や熱を加えることにより光変調装置として用いることが出来る。
以下、図22〜図24を参照しながら、本発明のパネルを製造するための方法の一例について説明する。図22〜図24は本発明のパネルを製造するための方法の一部を模式的
に描いた概略断面図である。電極や配線の形成やスペーサーの形成に関しては、公知の技術を用いて実施することが出来る。以下では、スペーサーと基板とを樹脂膜を介して固着させる工程を中心に説明する。
図22に示す通り、最初に公知のフォトスペーサーを形成する方法を用いて第1の基板1にスペーサー5を設ける。このスペーサー5を設ける領域は、前述した非画素領域のスペーサー領域のほぼ全域である。続いて、図23に示す通り、スペーサー5の上(第1の基板1と接する面の反対側に位置する面)に樹脂膜7を設ける。その後、図示しないが第1の基板1或いは第2の基板2にシール剤をパネルの外壁となる様に注入口となる場所を除いてパネルの外周周辺に設ける。その後、図24に示す通り、樹脂膜7に接する様に第2の基板2を設ける他方基板配置工程を経た上で、樹脂膜7を硬化させる。
図22に示すスペーサー5を設ける工程では、従来のフォトスペーサーを設ける方法をそのまま用いることが出来る。本発明の場合には、樹脂材料を用いてスペーサー5を形成する場合でも、スペーサー5となる樹脂材料を仮硬化の状態に留めておく操作が必要とされない。このため、十分な熱や光を用いてスペーサー5の形成を行うことが出来る。また、図示しないが、このスペーサー5を設ける工程で画素領域内や非使用領域にも部分的なスペーサーを設けても良い。
なお、例えばフォトレジストを材料として用いる場合には、例えば次の様な方法によりスペーサー5の形成を行うことが出来る。スピンナーを使い第1の基板にスペーサーとなる感光性樹脂のフォトレジストを塗布する。プリベークの後、露光機とフォトマスクを使いフォトレジストの露光をする。その後、現像によりスペーサーのパターンを形成した後、ポストベークを行ってスペーサーを硬化させる。
図23に示すスペーサー5に樹脂膜7を設ける工程では、例えば転写用基台の板やフィルム、ローラー等に樹脂を塗布し、それをスペーサー5の表面に押し当てた後離すことにより、スペーサー5に樹脂膜7を設けることが出来る。転写用の板やフィルム、ローラー等に樹脂を塗布する際には、例えばスピンコート法、ロールコート法、スプレイコート法、スリットコート法などの各種の塗布方法を用いることが出来る。
樹脂膜7については、その量を所定の範囲内となる様にすることが重要である。特に、樹脂膜7の量が多い場合には、スペーサー5の面積や両基板を貼り合わせる時に加える圧力等の諸条件にもよるが、両基板を貼り合わせる際に樹脂膜7が押し潰されてスペーサー5の上部から横に広がってしまう可能性が高い。そして、例えば画素領域にまで樹脂膜7が及んでしまい表示品質低下等の問題につながる。一方で、樹脂膜7の量が少ない場合には、スペーサー5と第2の基板2との固着強度が弱くなると言う問題が生じる。このため、樹脂膜7については、スペーサー5と第2の基板2とを固着する機能は十分に果たしつつ、両基板の貼り合わせの工程で樹脂膜7が横に広がることによる問題が生じない様に、適切な量を設けることが重要である。
そのために、転写用基台の板やフィルム、ローラー等に樹脂を塗布する際に、樹脂に溶媒を加えて粘性を調整することにより、塗布量の制御を行うと良い。この様に、樹脂に溶媒を加えて粘性を調整し、樹脂の塗布量の制御を行うことにより、適切な量の樹脂膜7を設けることが可能となる。
シール剤3については、例えばスクリーン印刷版を用いる方法やディスペンサーを用いる方法等の公知の方法を用いることにより、第1の基板1或いは第2の基板2に設けることが出来る。また、シール剤3を硬化させる際には、第1の基板1と第2の基板2とを貼り合わせた後、両基板に外側から圧力をかけてその間の距離がスペーサー5の高さにほぼ
一致している状態にして、シール剤3に熱や紫外線を加え硬化させる。
樹脂膜7を硬化させる工程では、樹脂膜7と第2の基板2との接着を確実にするために、パネルの外側から圧力を加えながら光や熱を加えて樹脂膜7の硬化を進めると良い。加圧にはエアバッグ、大気圧プレス、ばねによるプレス等の公知の方法を用いることが出来る。
本発明においてスペーサー5の材料に樹脂材料を用いる場合には、硬化樹脂のスペーサー5の上に未硬化樹脂の樹脂膜7が設けられる。この場合、スペーサー5は既に本硬化の状態にあるため、第1の基板1と第2の基板2とを重ね合わせる際に、通常の樹脂スペーサーの場合と同様の圧力を加えることが出来る。一方で樹脂膜7は完全に未硬化のままの状態で設けられているので、第1の基板1に設けた際の樹脂スペーサー5と同じ位の基板に対する固着力を持っている。このため、通常の場合と同程度の圧力を使って第2の基板2を樹脂膜7に押し当てながら、未硬化の樹脂膜7を硬化させることが可能となるため、スペーサー5と第2の基板2とを強固に固着させることが出来る。
2枚の基板を貼り合わせた後は、必要に応じて基板をカットし、例えばパネルとなる部分を切り出したり、電極との導通を取るために配線を露出させたりすることによって、パネルを完成させることが出来る。その後、特に限定しないが例えば発光物質や液晶、着色された粒子や液体、電解液などの光変調する物質をパネルの基板間に設けることにより、完成したパネルを表示装置や光変調装置に用いることが可能となる。光変調する物質をパネル内に設けるにあたっては、例えば公知技術の真空注入法等を用いることが出来る。
第1の基板1と第2の基板2とに関しては、特に限定しないが、例えばガラスやプラスチック、シリコン等を素材とした主要部分となる層に加えて、必要に応じて透明電極やアクティブ素子、絶縁膜、遮光膜、カラーフィルター、保護膜、ガスバリア膜、配向膜、偏光板等の各種の機能を有する層を設けたものを用いることが出来る。