JP2006299995A - 内燃機関のノッキング判定装置 - Google Patents

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理人 金子
Kenji Kasashima
健司 笠島
Masatomo Yoshihara
正朝 吉原
Koji Aso
紘司 麻生
Kenji Senda
健次 千田
Shigeru Kamio
神尾  茂
Yuichi Takemura
優一 竹村
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Abstract

【課題】 ノッキングが発生したか否かを精度よく判定する。
【解決手段】 エンジンECUは、振動波形を検出するために、振動の強度を表す値をクランク角で5度ごとに積算した値(積算値)を周波数帯ごとに算出するステップ(S102)と、各周波数帯の振動に、ノイズ成分の振動が含まれているか否かを判別するステップ(S104)と、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の周波数帯の振動波形およびノック波形モデルを合成するステップ(S106)と、合成された振動波形と合成されたノック波形モデルとを比較した結果に基づいて、ノック強度Nを算出するステップ(S114)と、ノック強度Nが予め定められた判定値よりも大きい場合(S116にてYES)、ノッキングが発生したと判定するステップ(S118)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、ノッキング判定装置に関し、特に、内燃機関の振動の波形に基づいて、ノッキングが発生したか否かを判定する内燃機関のノッキング判定装置に関する。
従来より、内燃機関のノッキングを検出する技術が知られている。特開2001−227400号公報(特許文献1)は、ノッキングの発生の有無を正確に判定することができる内燃機関用ノック制御装置を開示する。特許文献1に記載の内燃機関用ノック制御装置は、内燃機関で発生する振動波形信号を検出する信号検出部と、信号検出部で検出された振動波形信号が予め定められた値以上となる期間を発生期間として検出する発生期間検出部と、発生期間検出部で検出された発生期間におけるピーク位置を検出するピーク位置検出部と、発生期間とピーク位置との関係に基づき内燃機関におけるノック発生の有無を判定するノック判定部と、ノック判定部による判定結果に応じて内燃機関の運転状態を制御するノック制御部とを含む。ノック判定部は、発生期間に対するピーク位置が予め定められた範囲内にあるときにはノック(ノッキング)発生有りと判定する。
この公報に記載の内燃機関用ノック制御装置によれば、内燃機関で発生する振動波形信号が信号検出部で検出され、その振動波形信号が予め定められた値以上となる発生期間とそのピーク位置とが発生期間検出部およびピーク位置検出部でそれぞれ検出される。このように、振動波形信号の発生期間のどの位置でピークが発生しているかが分かることで内燃機関におけるノック発生の有無がノック判定部にて判定され、このノック判定結果に応じて内燃機関の運転状態が制御される。ノック判定部では、発生期間に対するピーク位置が予め定められた範囲内にあるとき、即ち、振動波形信号の予め定められた長さの発生期間に対してピーク位置が早めに現われるような波形形状であるときには、ノック発生時に特有のものであると認識される。これにより、内燃機関の運転状態が急変する過渡時や電気負荷のON/OFF時においても、内燃機関におけるノック発生の有無が正確に判定され、内燃機関の運転状態を適切に制御することができる。
特開2001−227400号公報
ところで、近年においては、燃料噴射時期や吸排気バルブの開閉時期が負荷などに応じて変更される。そのため、ノッキングが発生する時期に、インジェクタや吸排気バルブの作動に起因する振動が発生し得る。この場合、検出される振動波形信号にはノッキングの振動波形信号と、インジェクタや吸排気バルブなどの内燃機関の部品の作動に起因する振動波形信号(ノイズ信号)とが重畳し得る。このような状態においては、ノッキングが発生しているにも関わらず、発生期間に対してピーク位置が遅めに現れ得る。この場合、特開2001−227400号公報に記載のノック制御装置においては、ノッキングが発生しているにも関わらず、ノッキングが発生していないと誤判定されるおそれがあるという問題点があった。
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる内燃機関のノッキング発生装置を提供することである。
第1の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、複数の周波数帯における内燃機関の振動の強度に関する値を検出するための手段と、内燃機関のクランク角を検出するためのクランク角検出手段と、強度に関する値に基づいて、クランク角についての予め定められた間隔における内燃機関の振動の波形を、各周波数帯について検出するための波形検出手段と、検出された複数の波形を合成するための第1の合成手段と、各周波数帯における内燃機関の振動の波形を予め記憶するための記憶手段と、記憶された複数の波形を合成するための第2の合成手段と、検出された複数の波形を合成した波形と記憶された複数の波形を合成した波形とを比較した結果に基づいて、内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための判定手段とを含む。
第1の発明によると、複数の周波数帯における内燃機関の振動の強度に関する値が検出され、強度に関する値に基づいて、クランク角についての予め定められた間隔における内燃機関の振動の波形が、各周波数帯について検出される。また、各周波数帯における内燃機関の振動の波形が予め記憶される。たとえば、検出された複数の波形のうち、内燃機関の部品に起因する振動(ピストンスラップ、インジェクタからの噴射、吸排気バルブの着座などの振動)を含む周波数帯以外の振動の波形が、第1の合成手段により合成される。これにより、ノイズ成分が抑制された波形を得ることができる。また、記憶された複数の波形のうち、第1の合成手段により合成された波形と同じ周波数帯の波形が第2の合成手段により合成される。検出された複数の波形を合成した波形と記憶された複数の波形を合成した波形とが比較され、内燃機関にノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、ノイズ成分が抑制された波形に基づいて、ノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、誤判定を抑制することができる。その結果、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる内燃機関のノッキング発生装置を提供することができる。
第2の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第1の発明の構成に加え、第1の合成手段は、検出された複数の波形のうち、一部の波形を合成するための一部合成手段を含む。第2の合成手段は、記憶された複数の波形のうち、一部合成手段により合成された波形と同じ周波数帯の波形を合成するための手段を含む。
第2の発明によると、たとえば、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の振動の波形が合成される。また、記憶された複数の波形のうち、一部合成手段により合成された波形と同じ周波数帯の波形が合成される。これらの波形が比較され、ノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、ノイズ成分が抑制された波形に基づいて、ノッキングが発生したか否かを判定することができる。
第3の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第1の発明の構成に加え、第1の合成手段は、予め定められた第1のタイミングにおいて、検出された複数の波形のうち、一部の波形を合成するための一部合成手段と、予め定められた第2のタイミングにおいて、検出された全ての波形を合成するための手段とを含む。第2の合成手段は、第1のタイミングにおいて、記憶された複数の波形のうち、一部合成手段により合成された波形と同じ周波数帯の波形を合成するための手段と、第2のタイミングにおいて、記憶された全ての波形を合成するための手段とを含む。
第3の発明によると、たとえば、ノイズ成分の振動が発生した第1のタイミングにおいて、検出された波形のうち、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の振動の波形が合成される。ノイズ成分の振動が発生していない第2のタイミングにおいて、検出された全ての波形が合成される。また、第1のタイミングにおいて、記憶された複数の波形のうち、一部合成手段により合成された波形と同じ周波数帯の波形が合成される。第2のタイミングにおいて、記憶された全ての波形が合成される。これらの波形が比較され、ノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、ノイズ成分の振動が発生したタイミングにおいては、ノイズ成分による誤判定を抑制し、ノイズ成分の振動が発生していないタイミングにおいては、検出された全ての波形を分析してノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる。
第4の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第3の発明の構成に加え、第1のタイミングは、内燃機関の予め定められた部品に起因する振動が発生したタイミングである。
第4の発明によると、ノイズ成分の振動が発生した第1のタイミングにおいて、検出された波形のうち、たとえばノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の振動の波形が合成される。ノイズ成分の振動が発生していない第2のタイミングにおいて、検出された全ての波形が合成される。また、第1のタイミングにおいて、記憶された複数の波形のうち、一部合成手段により合成された波形と同じ周波数帯の波形が合成される。第2のタイミングにおいて、記憶された全ての波形が合成される。これらの波形が比較され、ノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、ノイズ成分の振動が発生したタイミングにおいては、ノイズ成分による誤判定を抑制し、ノイズ成分の振動が発生していないタイミングにおいては、検出された全ての波形を分析してノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる。
第5の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、第2〜4のいずれかの発明の構成に加え、ノッキング判定装置は、複数の周波数帯のうち、予め定められた条件を満たす周波数帯を特定するための特定手段をさらに含む。一部合成手段は、検出された複数の波形のうち、予め定められた条件を満たす周波数帯以外の周波数帯の波形を合成するための手段を含む。
第5の発明によると、たとえば、ノイズ成分の振動を含むという条件を満たす周波数帯が特定される。このような周波数帯以外の周波数帯の波形が合成される。これにより、ノイズ成分が抑制された波形を得ることができる。
第6の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第5の発明の構成に加え、予め定められた条件は、内燃機関の予め定められた部品に起因する振動を含むという条件である。
第6の発明によると、ノイズ成分の振動を含むという条件を満たす周波数帯が特定される。このような周波数帯以外の周波数帯の波形が合成される。これにより、ノイズ成分が抑制された波形を得ることができる。
第7の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置は、複数の周波数帯における内燃機関の振動の強度に関する値を検出するための手段と、内燃機関のクランク角を検出するためのクランク角検出手段と、強度に関する値に基づいて、クランク角についての予め定められた間隔における内燃機関の振動の波形を、各周波数帯について検出するための波形検出手段と、検出された複数の波形を合成するための合成手段と、複数の周波数帯のいずれかの周波数帯の波形を合成した合成波形を予め記憶するための記憶手段と、検出された複数の波形を合成した波形と合成波形とを比較した結果に基づいて、内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための判定手段とを含む。
第7の発明によると、複数の周波数帯における内燃機関の振動の強度に関する値が検出され、強度に関する値に基づいて、クランク角についての予め定められた間隔における内燃機関の振動の波形が、各周波数帯について検出される。たとえば、検出された複数の波形のうち、内燃機関の部品に起因する振動(ピストンスラップ、インジェクタからの噴射、吸排気バルブの着座などの振動)を含む周波数帯以外の振動の波形が、第1の合成手段により合成される。これにより、ノイズ成分が抑制された波形を得ることができる。また、第1の合成手段により合成された波形と同じ周波数帯の波形を合成した合成波形が予め記憶される。検出された複数の波形を合成した波形と記憶された合成波形とが比較され、内燃機関にノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、ノイズ成分が抑制された波形に基づいて、ノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、誤判定を抑制することができる。その結果、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる内燃機関のノッキング発生装置を提供することができる。
第8の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第7の発明の構成に加え、合成手段は、検出された複数の波形のうち、一部の波形を合成するための一部合成手段を含む。合成波形は、一部合成手段により合成された波形の周波数帯と同じ周波数帯の波形を合成した波形である。
第8の発明によると、たとえば、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の振動の波形が合成される。合成波形は、一部合成手段により合成された波形と同じ周波数帯の波形が合成された波形である。これらの波形が比較され、ノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、ノイズ成分が抑制された波形に基づいて、ノッキングが発生したか否かを判定することができる。
第9の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第7の発明の構成に加え、合成手段は、予め定められた第1のタイミングにおいて、検出された複数の波形のうち、一部の波形を合成するための一部合成手段と、予め定められた第2のタイミングにおいて、検出された全ての波形を合成するための全部合成手段とを含む。記憶手段は、一部合成手段により合成された波形の周波数帯と同じ周波数帯の波形を合成した第1の合成波形および複数の周波数帯の全ての周波数帯の波形を合成した第2の合成波形を予め記憶するための手段を含む。判定手段は、第1のタイミングにおいて、一部合成手段により合成された波形と第1の合成波形とを比較し、第2のタイミングにおいて、全部合成手段により合成された波形と第2の合成波形とを比較した結果に基づいて、ノッキングが発生したか否かを判定するための手段を含む。
第9の発明によると、たとえば、ノイズ成分の振動が発生した第1のタイミングにおいて、検出された波形のうち、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の振動の波形が合成される。ノイズ成分の振動が発生していない第2のタイミングにおいて、検出された全ての波形が合成される。また、一部合成手段により合成された波形と同じ周波数帯の波形が合成された第1の波形および複数の周波数帯の全ての周波数帯の振動の波形を合成した第2の波形が予め記憶される。第1のタイミングにおいては一部合成手段により合成された波形と第1の合成波形とが比較され、第2のタイミングにおいては全部合成手段により合成された波形と第2の合成波形とが比較され、ノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、ノイズ成分の振動が発生したタイミングにおいては、ノイズ成分による誤判定を抑制し、ノイズ成分の振動が発生していないタイミングにおいては、検出された全ての波形を分析してノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる。
第10の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第9の発明の構成に加え、第1のタイミングは、内燃機関の予め定められた部品に起因する振動が発生したタイミングである。
第10の発明によると、ノイズ成分の振動が発生した第1のタイミングにおいて、検出された波形のうち、たとえばノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の振動の波形が合成される。ノイズ成分の振動が発生していない第2のタイミングにおいて、検出された全ての波形が合成される。また、一部合成手段により合成された波形と同じ周波数帯の波形が合成された第1の波形および複数の周波数帯の全ての周波数帯の振動の波形を合成した第2の波形が予め記憶される。第1のタイミングにおいては一部合成手段により合成された波形と第1の合成波形とが比較され、第2のタイミングにおいては全部合成手段により合成された波形と第2の合成波形とが比較され、ノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、ノイズ成分の振動が発生したタイミングにおいては、ノイズ成分による誤判定を抑制し、ノイズ成分の振動が発生していないタイミングにおいては、検出された全ての波形を分析してノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる。
第11の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第8〜10のいずれかの発明の構成に加え、ノッキング判定装置は、複数の周波数帯のうち、予め定められた条件を満たす周波数帯を特定するための特定手段をさらに含む。一部合成手段は、検出された複数の波形のうち、予め定められた条件を満たす周波数帯以外の周波数帯の波形を合成するための手段を含む。
第11の発明によると、たとえば、ノイズ成分の振動を含むという条件を満たす周波数帯が特定される。このような周波数帯以外の周波数帯の波形が合成される。これにより、ノイズ成分が抑制された波形を得ることができる。
第12の発明に係る内燃機関のノッキング判定装置においては、第11の発明の構成に加え、予め定められた条件は、内燃機関の予め定められた部品に起因する振動を含むという条件である。
第12の発明によると、ノイズ成分の振動を含むという条件を満たす周波数帯が特定される。このような周波数帯以外の周波数帯の波形が合成される。これにより、ノイズ成分が抑制された波形を得ることができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るノッキング判定装置を搭載した車両のエンジン100について説明する。本実施の形態に係るノッキング判定装置は、たとえばエンジンECU(Electronic Control Unit)200が実行するプログラムにより実現される。
エンジン100は、エアクリーナ102から吸入された空気とインジェクタ104から噴射される燃料との混合気を、燃焼室内で点火プラグ106により点火して燃焼させる内燃機関である。
混合気が燃焼すると、燃焼圧によりピストン108が押し下げられ、クランクシャフト110が回転する。燃焼後の混合気(排気ガス)は、三元触媒112により浄化された後、車外に排出される。エンジン100に吸入される空気の量は、スロットルバルブ114により調整される。
エンジン100は、エンジンECU200により制御される。エンジンECU200には、ノックセンサ300と、水温センサ302と、タイミングロータ304に対向して設けられたクランクポジションセンサ306と、スロットル開度センサ308と、車速センサ310と、イグニッションスイッチ312とが接続されている。
ノックセンサ300は、圧電素子により構成されている。ノックセンサ300は、エンジン100の振動により電圧を発生する。電圧の大きさは、振動の大きさと対応した大きさとなる。ノックセンサ300は、電圧を表す信号をエンジンECU200に送信する。水温センサ302は、エンジン100のウォータージャケット内の冷却水の温度を検出し、検出結果を表す信号を、エンジンECU200に送信する。
タイミングロータ304は、クランクシャフト110に設けられており、クランクシャフト110と共に回転する。タイミングロータ304の外周には、予め定められた間隔で複数の突起が設けられている。クランクポジションセンサ306は、タイミングロータ304の突起に対向して設けられている。タイミングロータ304が回転すると、タイミングロータ304の突起と、クランクポジションセンサ306とのエアギャップが変化するため、クランプポジションセンサ306のコイル部を通過する磁束が増減し、コイル部に起電力が発生する。クランクポジションセンサ306は、起電力を表す信号を、エンジンECU200に送信する。エンジンECU200は、クランクポジションセンサ306から送信された信号に基づいて、クランク角を検出する。
スロットル開度センサ308は、スロットル開度を検出し、検出結果を表す信号をエンジンECU200に送信する。車速センサ310は、車輪(図示せず)の回転数を検出し、検出結果を表す信号をエンジンECU200に送信する。エンジンECU200は、車輪の回転数から、車速を算出する。イグニッションスイッチ312は、エンジン100を始動させる際に、運転者によりオン操作される。
エンジンECU200は、各センサおよびイグニッションスイッチ312から送信された信号、メモリ202に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて演算処理を行ない、エンジン100が所望の運転状態となるように、機器類を制御する。
本実施の形態において、エンジンECU200は、ノックセンサ300から送信された信号およびクランク角に基づいて、予め定められたノック検出ゲート(予め定められた第1クランク角から予め定められた第2クランク角までの区間)におけるエンジン100の振動の波形(以下、振動波形と記載する)を検出し、検出された振動波形に基づいて、エンジン100にノッキングが発生したか否かを判定する。本実施の形態におけるノック検出ゲートは、燃焼行程において上死点(0度)から90度までである。なお、ノック検出ゲートはこれに限らない。
ノッキングが発生した場合、エンジン100には、図2において実線で示す周波数付近の周波数の振動が発生する。すなわち、ノッキングが発生した場合、エンジン100には、第1の周波数帯A、第2の周波数帯B、第3の周波数帯Cおよび第4の周波数帯Dに含まれる周波数の振動が発生する。なお、ノッキングに起因する振動の周波数を含む周波数帯は4つに限らない。
第5の周波数帯Eには、ノッキングに起因した振動が現れない。第5の周波数帯Eに含まれる周波数の振動には、ピストンスラップ、インジェクタ104からの燃料噴射、吸気バルブ116の着座、排気バルブ118の着座、インジェクタ104に燃料を供給するポンプ(筒内直接噴射エンジンにおける高圧ポンプなど)120の作動などに起因する振動(ノイズ成分の振動)が考えられる。
なお、図2においては、第5の周波数帯Eは、第1の周波数帯Aから第4の周波数帯Dよりも高い周波数帯であるが、第1の周波数帯Aから第4の周波数帯Dよりも低い周波数帯であってもよい。
これらの周波数帯のうち、第4の周波数帯Dには、図2において一点鎖線で示すエンジン100自体の共振周波数が含まれる。共振周波数の振動は、ノッキングの有無に関わらず発生する。
そのため、本実施の形態においては、共振周波数を含まない第1の周波数帯Aから第3の周波数帯Cの振動の強度(大きさ)に基づいて、振動波形を検出する。なお、振動波形の検出に用いられる周波数帯の数は3つに限らない。
後述するように、各周波数帯の振動波形が合成された波形が、エンジンECU200のメモリ202に記憶されたノック波形モデルと比較され、ノッキングが発生したか否かが判定される。図3に示すように、ノック波形モデルは、周波数帯ごとに記憶される。これらのノック波形モデルが合成されて、振動波形の合成波形と比較される。
ノック波形モデルにおいて、振動の強度は0〜1の無次元数として表され、振動の強度はクランク角と一義的には対応していない。すなわち、本実施の形態のノック波形モデルにおいては、振動の強度のピーク値以降、クランク角が大きくなるにつれ振動の強度が低減することが定められているが、振動の強度がピーク値となるクランク角は定められていない。
本実施の形態におけるノック波形モデルは、ノッキングにより発生した振動の強度のピーク値以降の振動に対応している。なお、ノッキングに起因した振動の立ち上がり以降の振動に対応したノック波形モデルを記憶してもよい。
ノック波形モデルは、実験などにより、強制的にノッキングを発生させた場合におけるエンジン100の振動波形を検出し、この振動波形に基づいて予め作成されて記憶される。
ノック波形モデルは、エンジン100の寸法やノックセンサ300の出力値が、寸法公差やノックセンサ300の出力値の公差の中央値であるエンジン100(以下、特性中央エンジンと記載する)を用いて作成される。すなわち、ノック波形モデルは、特性中央エンジンに強制的にノッキングを発生させた場合における振動波形である。なお、ノック波形モデルを作成する方法は、これに限られない。
図4を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、エンジンECU200は、ノックセンサ300から送信された信号に基づいて、エンジン100の振動の強度Vを検出する。振動の強度は、ノックセンサ300の出力電圧値で表される。なお、ノックセンサ300の出力電圧値と対応した値で振動の強度を表してもよい。強度の検出は、燃焼行程において上死点から90度(クランク角で90度)までの間で行なわれる。
S102にて、エンジンECU200は、ノックセンサ300の出力電圧値(振動の強度を表す値)を、クランク角で5度ごとに(5度分だけ)積算した値(以下、積算値と記載する)を算出する。積算値の算出は、第1の周波数帯Aから第3の周波数帯Cごとに行なわれる。これにより、エンジン100の振動波形が、周波数帯毎に検出される。
S104にて、エンジンECU200は、第1の周波数帯〜第3の周波数帯の振動に、ピストンスラップ、インジェクタ104からの燃料噴射、吸気バルブ116の着座、排気バルブ118の着座などに起因する振動(ノイズ成分の振動)が含まれているか否かを判別する。
ノイズ成分の振動が含まれているか否かは、図5に示すように、エンジン100の振動の強度Vを対数変換した強度値LOG(V)の頻度分布を用いて判別する。ノイズ成分の振動が含まれていない場合、振動の強度Vは適度な広がりを持ち、強度値LOG(V)の頻度分布は、図5において実線で示す形状になる。この場合、強度値LOG(V)の中央値VMED(1)のX倍(Xは定数で、たとえば「2」)の値よりも大きい強度値LOG(V)が存在する。
一方、ノイズ成分の振動は、エンジン100が運転されている限り、ノッキング有無に関わらず、常に発生する。そのため、ノイズ成分の振動が含まれている場合、検出される強度Vが全体的に高くなり、強度値LOG(V)の頻度分布は、図5において破線で示すように偏った形状になる。この場合、強度値LOG(V)の中央値VMED(2)のX倍の値よりも大きい強度値LOG(V)が存在しない。
本実施の形態において、エンジンECU200は、周波数帯ごとに強度値LOG(V)の頻度分布を作成し、この頻度分布において、強度値LOG(V)の中央値のX倍の値よりも大きい強度値LOG(V)が存在しない周波数帯の振動には、ノイズ成分の振動が含まれていると判定する。なお、ノイズ成分の振動が含まれているか否かを判別する方法は、これに限らない。
図4に戻って、ノイズ成分の振動が含まれている場合(S104にてYES)、処理はS106に移される。そうでない場合(S104にてNO)、処理はS108に移される。
S106にて、エンジンECU200は、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の周波数帯の振動波形およびノック波形モデルを合成する。ここで、波形の合成とは、各クランク角に対応する積算値を加算することをいう。S108にて、エンジンECU200は、全ての周波数帯(第1の周波数帯A〜第3の周波数帯C)の振動波形およびノック波形モデルを合成する。
S110にて、エンジンECU200は、合成により作成された振動波形の積算値のうち、最大の積算値を用いて振動波形を正規化する。ここで、正規化とは、各積算値を最大の積算値で除算することにより、振動の強度を0〜1の無次元数で表すことである。
S112にて、エンジンECU200は、正規化された振動波形とノック波形モデルとの偏差に関する値である相関係数Kを算出する。正規化後の振動波形において振動の強度が最大になるタイミングとノック波形モデルにおいて振動の強度が最大になるタイミングとを一致させた状態で、正規化後の振動波形とノック波形モデルとの偏差の絶対値(ズレ量)をクランク角ごと(5度ごと)に算出することにより、相関係数Kが算出される。
正規化後の振動波形とノック波形モデルとのクランク角ごとの偏差の絶対値をΔS(I)(Iは自然数)とし、ノック波形モデルにおける振動の強度をクランク角で積分した値(ノック波形モデルの面積)をSとおくと、相関係数Kは、K=(S−ΣΔS(I))/Sという方程式により算出される。ここで、ΣΔS(I)は、上死点から90度までのΔS(I)の総和である。このとき、第5の周波数帯Eの振動の強度が予め定められた強度よりも大きいクランク角におけるデータは無視される。なお、相関係数Kの算出方法はこれに限らない。
S114にて、エンジンECU200は、ノック強度Nを算出する。算出された積算値の最大値をPとし、エンジン100にノッキングが発生していない状態におけるエンジン100の振動の強度を表す値をBGL(Back Ground Level)とおくと、ノック強度Nは、N=P×K/BGLという方程式で算出される。なお、積算値の最大値の代わりに積算値の総合計に基づいてノック強度Nを算出するようにしても構わない。また、ノック強度Nの算出方法はこれに限らない。
S116にて、エンジンECU200は、ノック強度Nが予め定められた判定値よりも大きいか否かを判別する。ノック強度Nが予め定められた判定値よりも大きい場合(S116にてYES)、処理はS118に移される。そうでない場合(S116にてNO)、処理はS122に移される。
S118にて、エンジンECU200は、エンジン100にノッキングが発生したと判定する。S120にて、エンジンECU200は、点火時期を遅角する。S122にて、エンジンECU200は、エンジン100にノッキングが発生していないと判定する。S124にて、エンジンECU200は、点火時期を進角する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るノッキング判定装置におけるエンジンECU200の動作について説明する。
運転者がイグニッションスイッチ312をオン操作し、エンジン100が始動すると、ノックセンサ300から送信された信号に基づいて、エンジン100の振動の強度Vが検出される(S100)。
燃焼行程における上死点から90度までの間において、5度ごとの積算値が第1の周波数帯Aから第3の周波数帯Cごとに算出される(S102)。これにより、図6に示すように、周波数帯ごとの振動波形が検出される。なお、図6には、周波数帯Aの振動波形を示す。
5度ごとの積算値により振動波形を検出することにより、振動の強度が細かく変化する複雑な形状の振動波形が検出されることを抑制することができる。そのため、検出された振動波形とノック波形モデルとの比較を容易にすることができる。
このようにして検出された振動波形に、ノイズ成分の振動の波形が含まれている場合、ノイズ成分の振動はノッキングの有無に関わらず発生するため、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができなくなる。そのため、強度値LOG(V)の頻度分布に基づいて、第1の周波数帯A〜第3の周波数帯Cの振動に、ノイズ成分の振動が含まれているか否かが判別される(S104)。
いずれかの周波数帯の振動に、ノイズ成分の振動が含まれている場合(S104にてYES)、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の周波数帯の振動波形およびノック波形モデルが合成される(S106)。一方、いずれの周波数帯の振動にも、ノイズ成分の振動が含まれていない場合(S104にてNO)、全ての周波数帯の振動波形およびノック波形モデルが合成される(S108)。
ここでは、第1の周波数帯Aの振動にノイズ成分の振動が含まれていると想定する。この場合、第2の周波数帯Bおよび第3の周波数帯Cの振動波形が合成されて、図7に示すような振動波形が作成される。また、第2の周波数帯Bおよび第3の周波数帯Cのノック波形モデルが合成されて、図8に示すようなノック波形モデルが作成される。
振動波形を合成した波形における積算値のうち、最大の積算値で、各クランク角における積算値が除算されて波形の正規化が行なわれ(S110)、図9において実線で示すように、振動波形における振動の強度が0〜1の無次元数で表される。この正規化により、振動の強度に関係なく検出された振動波形とノック波形モデルとの比較を行なうことができる。そのため、振動の強度に対応した多数のノック波形モデルを記憶しておく必要がなく、ノック波形モデルの作成を容易にすることができる。
さらに、図9に示すように、正規化後の振動波形において振動の強度が最大になるタイミングとノック波形モデルにおいて振動の強度が最大になるタイミングとを一致させ、この状態で、正規化後の振動波形とノック波形モデルとのクランク角ごとの偏差の絶対値ΔS(I)が算出される。このΔS(I)の総和ΣΔS(I)およびノック波形モデルにおいて振動の強度をクランク角で積分した値Sに基づいて、K=(S−ΣΔS(I))/Sにより相関係数Kが算出される(S112)。これにより、検出された振動波形とノック波形モデルとの一致度合を数値化して客観的に判定することができる。
さらに、算出された相関係数Kと積算値の最大値Pとの積をBGLで除算することにより、ノック強度Nが算出される(S114)。これにより、検出された振動波形とノック波形モデルとの一致度合に加えて、振動の強度に基づいて、エンジン100の振動がノッキングに起因した振動であるか否かをより詳細に分析することができる。
ノック強度Nが予め定められた判定値よりも大きい場合(S116にてYES)、ノッキングが発生したと判定され(S118)、点火時期が遅角される(S120)。これにより、ノッキングの発生が抑制される。
一方、ノック強度Nが予め定められた判定値よりも大きくない場合(S116にてNO)、ノッキングが発生していないと判定され(S122)、点火時期が進角される(S124)。
以上のように、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUは、ノイズ成分の振動を含む周波数帯の振動波形以外の振動波形およびノック波形モデルを合成し、合成した振動波形とノック波形モデルとを比較して、ノッキングが発生したか否かを判定する。これにより、ノイズ成分の影響を抑制してノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる。
なお、本実施の形態においては、周波数帯ごとにノック波形モデルを記憶しておき、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外のノック波形モデルを合成していたが、ノック波形モデルを適宜合成する代わりに、所望の周波数帯の組合わせでノック波形モデルを合成した波形を複数記憶するようにしてもよい。
この場合、記憶された波形の中から、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の周波数帯のノック波形モデルを合成した波形を選択し、合成された振動波形と比較することにより、ノッキングが発生したか否かを判定するようにしてもよい。
<第2の実施の形態>
図10〜図14を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。前述の第1の実施の形態においては、第5の周波数帯Eの積算値を算出していなかったが、本実施の形態においては、第5の周波数帯Eの積算値が算出される。第5の周波数帯Eの積算値に基づいて、ノイズ成分の振動が発生したタイミング(クランク角)が特定される。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
図10を参照して、本実施の形態に係るノッキング判定装置において、エンジンECU200が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、前述の第1の実施の形態における処理と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、ここではそれらの詳細な説明は繰返さない。
S200にて、エンジンECU200は、第1の周波数帯Aから第3の周波数帯Cおよび第5の周波数帯Eの振動ごとに積算値を算出する。S202にて、エンジンECU200は、第5の周波数帯Eの積算値に基づいて、ノイズ成分の振動が発生した位置(タイミング)を検出する。ここで、エンジンECU200は、第5の周波数帯Eの積算値がしきい値よりも大きいクランク角を、ノイズ成分の振動が発生した位置として検出する。ノイズ成分の振動が発生した位置は、たとえば積算値がピークとなるクランク角を基準として検出される。なお、積算値の代わりに、強度Vがしきい値よりも大きいクランク角をノイズ成分の振動が発生した位置として検出するようにしてもよい。
S204にて、エンジンECU200は、ノイズ成分の振動が発生した位置において、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の周波数帯の振動波形およびノック波形モデルを合成し、ノイズ成分の振動が発生した位置以外のクランク角において、全ての周波数帯(第1の周波数帯A〜第3の周波数帯C)の振動波形およびノック波形モデルを合成する。
S206にて、エンジンECU200は、合成された振動波形を正規化する。ここで、エンジンECU200は、ノイズ成分の振動が発生した位置においては、その位置における積算値の最大値を用いて正規化が行なう。ノイズ成分の振動が発生していない位置においては、その位置における積算値の最大値を用いて正規化を行なう。すなわち、ノイズ成分の振動が発生した位置とそうでない位置とを区別して正規化を行なう。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係るノッキング判定装置におけるエンジンECU200の動作について説明する。
運転者がイグニッションスイッチ312をオン操作し、エンジン100が始動すると、ノックセンサ300から送信された信号に基づいて、エンジン100の振動の強度Vが検出される(S100)。
燃焼行程における上死点から90度までの間において、5度ごとの積算値が第1の周波数帯Aから第3の周波数帯Cおよび第5の周波数際Eごとに算出される(S200)。また、強度値LOG(V)の頻度分布に基づいて、第1の周波数帯A〜第3の周波数帯Cの振動に、ノイズ成分の振動が含まれているか否かが判別される(S104)。
ここでは、第1の周波数帯Aの振動にノイズ成分の振動が含まれていると想定する(S104にてYES)。この場合、ノイズ成分の振動が発生しているため、図11に示すように、第5の周波数帯Eの強度が大きくなり得る。この第5の周波数帯Eの積算値がしきち値よりも大きいクランク角がノイズ成分の振動が発生した位置として検出される(S202)。
図12に示すように、ノイズ成分の振動が発生した位置において、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の周波数帯(ここでは第2の周波数帯Bおよび第3の周波数帯C)の振動波形が合成される。また、ノイズ成分の振動が発生した位置以外のクランク角において、全ての周波数帯(第1の周波数帯A〜第3の周波数帯C)の振動波形が合成される(S204)。
同様に、図13に示すように、ノイズ成分の振動が発生した位置において、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の周波数帯(ここでは第2の周波数帯Bおよび第3の周波数帯C)のノック波形モデルが合成される。また、ノイズ成分の振動が発生した位置以外のクランク角において、全ての周波数帯(第1の周波数帯A〜第3の周波数帯C)のノック波形モデルが合成される(S204)。
ノイズ成分の振動が発生した位置とそうでない位置とを区別するように、ノイズ成分の振動が発生した位置においては、その位置における積算値の最大値を用いて正規化が行なわれ、ノイズ成分の振動が発生していない位置においては、その位置における積算値の最大値を用いて正規化が行なわれる(S206)。
このようにして合成された振動波形とノック波形モデルとが、図14に示すように比較されて、相関係数Kが算出され(S112)、ノック強度Nが算出される(S114)。
ノック強度Nが予め定められた判定値よりも大きい場合(S116にてYES)、ノッキングが発生したと判定され(S118)、点火時期が遅角される(S120)。これにより、ノッキングの発生が抑制される。
一方、ノック強度Nが予め定められた判定値よりも大きくない場合(S116にてNO)、ノッキングが発生していないと判定され(S122)、点火時期が進角される(S124)。
以上のように、本実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUは、ノイズ成分の振動が発生した位置において、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の周波数帯の振動波形およびノック波形モデルを合成し、ノイズ成分の振動が発生した位置以外のクランク角において、全ての周波数帯の振動波形およびノック波形モデルを合成する。合成した振動波形とノック波形モデルとが比較され、ノッキングが発生したか否かが判定される。これにより、ノイズ成分の振動が発生した位置においては、ノイズ成分の影響を抑制してノッキングが発生したか否かを判定することができる。ノイズ成分の振動が発生していない位置においては、ノッキングに起因する振動が発生し得る全ての周波数帯の振動を分析して、ノッキングが発生したか否かを判定することができる。そのため、ノッキングが発生したか否かを精度よく判定することができる。
なお、本実施の形態においては、周波数帯ごとにノック波形モデルを記憶しておき、合成される振動波形の周波数帯に応じた周波数帯のノック波形モデルを合成していたが、ノック波形モデルを適宜合成する代わりに、所望の周波数帯の組合わせでノック波形モデルを合成した複数の波形と、全ての周波数帯のノック波形モデルを合成した波形とを記憶するようにしてもよい。
この場合、ノイズ成分の振動が発生した位置において、ノイズ成分の振動を含む周波数帯以外の周波数帯のノック波形モデルを合成した波形を選択して、合成された振動波形と比較し、ノイズ成分の振動が発生した位置以外のクランク角において、全ての周波数帯の振動波形を合成した波形と全ての周波数帯のノック波形モデルを合成した波形とを比較することにより、ノッキングが発生したか否かを判定するようにしてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の第1の実施の形態に係るノッキング判定装置により制御されるエンジンを示す概略構成図である。 エンジンで発生する振動の周波数を示す図である。 エンジンECUのメモリに記憶されたノック波形モデルを示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 強度値LOG(V)の頻度分布を示す図である。 合成前の振動波形を示す図である。 合成後の振動波形を示す図(その1)である。 合成後のノック波形モデルを示す図(その1)である。 正規化後の振動波形とノック波形モデルとを比較した状態を示す図(その1)である。 本発明の第2の実施の形態に係るノッキング判定装置であるエンジンECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 第5の周波数帯Eの積算値を示す図である。 合成後の振動波形を示す図(その2)である。 合成後のノック波形モデルを示す図(その2)である。 正規化後の振動波形とノック波形モデルとを比較した状態を示す図(その2)である。
符号の説明
100 エンジン、104 インジェクタ、106 点火プラグ、110 クランクシャフト、116 吸気バルブ、118 排気バルブ、120 ポンプ、200 エンジンECU、300 ノックセンサ、302 水温センサ、304 タイミングロータ、306 クランクポジションセンサ、308 スロットル開度センサ。

Claims (12)

  1. 内燃機関のノッキング判定装置であって、
    複数の周波数帯における前記内燃機関の振動の強度に関する値を検出するための手段と、
    前記内燃機関のクランク角を検出するためのクランク角検出手段と、
    前記強度に関する値に基づいて、クランク角についての予め定められた間隔における前記内燃機関の振動の波形を、各前記周波数帯について検出するための波形検出手段と、
    検出された複数の波形を合成するための第1の合成手段と、
    各前記周波数帯における前記内燃機関の振動の波形を予め記憶するための記憶手段と、
    記憶された複数の波形を合成するための第2の合成手段と、
    検出された複数の波形を合成した波形と記憶された複数の波形を合成した波形とを比較した結果に基づいて、前記内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための判定手段とを含む、内燃機関のノッキング判定装置。
  2. 前記第1の合成手段は、検出された複数の波形のうち、一部の波形を合成するための一部合成手段を含み、
    前記第2の合成手段は、記憶された複数の波形のうち、前記一部合成手段により合成された波形と同じ周波数帯の波形を合成するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  3. 前記第1の合成手段は、
    予め定められた第1のタイミングにおいて、検出された複数の波形のうち、一部の波形を合成するための一部合成手段と、
    予め定められた第2のタイミングにおいて、検出された全ての波形を合成するための手段とを含み、
    前記第2の合成手段は、
    前記第1のタイミングにおいて、記憶された複数の波形のうち、前記一部合成手段により合成された波形と同じ周波数帯の波形を合成するための手段と、
    前記第2のタイミングにおいて、記憶された全ての波形を合成するための手段とを含む、請求項1に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  4. 前記第1のタイミングは、前記内燃機関の予め定められた部品に起因する振動が発生したタイミングである、請求項3に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  5. 前記ノッキング判定装置は、複数の前記周波数帯のうち、予め定められた条件を満たす周波数帯を特定するための特定手段をさらに含み、
    前記一部合成手段は、検出された複数の波形のうち、前記予め定められた条件を満たす周波数帯以外の周波数帯の波形を合成するための手段を含む、請求項2〜4のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  6. 前記予め定められた条件は、前記内燃機関の予め定められた部品に起因する振動を含むという条件である、請求項5に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  7. 内燃機関のノッキング判定装置であって、
    複数の周波数帯における前記内燃機関の振動の強度に関する値を検出するための手段と、
    前記内燃機関のクランク角を検出するためのクランク角検出手段と、
    前記強度に関する値に基づいて、クランク角についての予め定められた間隔における前記内燃機関の振動の波形を、各前記周波数帯について検出するための波形検出手段と、
    検出された複数の波形を合成するための合成手段と、
    複数の前記周波数帯のいずれかの周波数帯の波形を合成した合成波形を予め記憶するための記憶手段と、
    検出された複数の波形を合成した波形と前記合成波形とを比較した結果に基づいて、前記内燃機関にノッキングが発生したか否かを判定するための判定手段とを含む、内燃機関のノッキング判定装置。
  8. 前記合成手段は、検出された複数の波形のうち、一部の波形を合成するための一部合成手段を含み、
    前記合成波形は、前記一部合成手段により合成された波形の周波数帯と同じ周波数帯の波形を合成した波形である、請求項7に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  9. 前記合成手段は、
    予め定められた第1のタイミングにおいて、検出された複数の波形のうち、一部の波形を合成するための一部合成手段と、
    予め定められた第2のタイミングにおいて、検出された全ての波形を合成するための全部合成手段とを含み、
    前記記憶手段は、前記一部合成手段により合成された波形の周波数帯と同じ周波数帯の波形を合成した第1の合成波形および複数の前記周波数帯の全ての周波数帯の波形を合成した第2の合成波形を予め記憶するための手段を含み、
    前記判定手段は、前記第1のタイミングにおいて、前記一部合成手段により合成された波形と前記第1の合成波形とを比較し、前記第2のタイミングにおいて、前記全部合成手段により合成された波形と前記第2の合成波形とを比較した結果に基づいて、ノッキングが発生したか否かを判定するための手段を含む、請求項7に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  10. 前記第1のタイミングは、前記内燃機関の予め定められた部品に起因する振動が発生したタイミングである、請求項9に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  11. 前記ノッキング判定装置は、複数の前記周波数帯のうち、予め定められた条件を満たす周波数帯を特定するための特定手段をさらに含み、
    前記一部合成手段は、検出された複数の波形のうち、前記予め定められた条件を満たす周波数帯以外の周波数帯の波形を合成するための手段を含む、請求項8〜10のいずれかに記載の内燃機関のノッキング判定装置。
  12. 前記予め定められた条件は、前記内燃機関の予め定められた部品に起因する振動を含むという条件である、請求項11に記載の内燃機関のノッキング判定装置。
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