JP2006298717A - 土壌散布剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 肥料または農薬等の土壌散布用組成物に対し緩効性を付与した土壌散布剤を提供する。
【解決手段】 この発明に係る土壌散布剤は、パラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包された土壌散布用組成物を含むものである。土壌散布用組成物として石灰窒素のみ、またはこの石灰窒素と、この石灰窒素が水と接触して分解される分解反応過程で中間生成物として生成されるシアナミドの分解を抑制する分解抑制剤との混合物であってもよい。この土壌散布剤には、パラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包された土壌散布用組成物の他にパラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包されていない土壌散布用組成物がさらに含まれてもよい。
【選択図】 図1
【解決手段】 この発明に係る土壌散布剤は、パラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包された土壌散布用組成物を含むものである。土壌散布用組成物として石灰窒素のみ、またはこの石灰窒素と、この石灰窒素が水と接触して分解される分解反応過程で中間生成物として生成されるシアナミドの分解を抑制する分解抑制剤との混合物であってもよい。この土壌散布剤には、パラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包された土壌散布用組成物の他にパラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包されていない土壌散布用組成物がさらに含まれてもよい。
【選択図】 図1
Description
この発明は、肥料または農薬等の土壌散布用組成物に対して緩効性を付与した土壌散布剤に関するものである。
一般に、肥料または農薬等の土壌散布用組成物としては、その効果を土壌中で長期間にわたって持続させ、あるいは土壌中に散布した後に相当期間経過してから上記効果を発揮させ始めるために、上記組成物を種々の被覆剤で被覆するマイクロカプセル化処理により緩効性が付与されたものが知られている。従来の被覆剤としては、例えばセルロース系等の生分解性を有する材料が用いられている。
しかしながら、従来の被覆剤は、その被覆工程で水または有機溶剤等の溶媒を併用して製造されていることから、このような溶媒により変性あるいは劣化するためにその溶媒の使用を嫌う成分が上記組成物に含有されている場合には、上記被覆剤の使用は適当ではない。
例えば、石灰窒素は、土壌中の水分と反応して分解されることから、上記被覆剤の一成分として水溶媒を使用することができない。すなわち、石灰窒素は、カルシウムシアナミド(CaCN2)を20%程度含有する未反応のカーバイドと炭素との混合物である。この石灰窒素は、肥料として土壌中に散布されると、その後、1週間〜2週間で、上記カルシウムシアナミドが加水分解され、その中間生成物として生成され、微量(10ppm〜100ppm)で優れた抑草効果(非特許文献1)を示すシアナミドを経て、無害な肥料成分である尿素および/またはアンモニアに分解されて優れた肥料効果を示すものである。したがって、石灰窒素に対して水分を含む被覆剤による被覆工程を施す場合には、その被覆工程において、石灰窒素が加水分解されてしまうおそれがある。
このため、何等かの被覆をせずに、石灰窒素を土壌中に散布すると、上述したように、加水分解反応の進行により、散布した後、早期に肥料成分である尿素および/またはアンモニアに分解されるため、上記石灰窒素に対して緩効性を付与することができない。
そこで、例えば石灰窒素等の土壌散布用組成物に対して緩効性を付与するのに適切な被覆剤としては、上記組成物に対して不活性であり、かつ土壌散布後に徐々に分解され、最終的に上記組成物を土壌に露出させることが可能な材料を選択する必要がある。
日本雑草学会第41回大会講演集、藤井義晴らによる「ヘアリーベッチ葉に含まれる植物生長阻害物質としてのシアナミドの同定」(2002年)
日本雑草学会第41回大会講演集、藤井義晴らによる「ヘアリーベッチ葉に含まれる植物生長阻害物質としてのシアナミドの同定」(2002年)
この発明の目的は、肥料または農薬等の土壌散布用組成物に対して緩効性を付与した土壌散布剤を提供することにある。
この発明の請求項1記載の発明は、土壌散布剤であって、パラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包された土壌散布用組成物を含むことを特徴とするものである。
この発明の請求項2記載の発明は、上記土壌散布用組成物として石灰窒素を含むことを特徴とするものである。
この発明の請求項3記載の発明は、上記土壌散布用組成物として、上記石灰窒素と、この石灰窒素が水と接触して分解される分解反応過程で中間生成物として生成されるシアナミドの分解を抑制する分解抑制剤との混合物を含むことを特徴とするものである。
この発明の請求項1記載の発明によれば、土壌散布剤であって、パラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包された土壌散布用組成物を含むように構成したので、土壌散布後においては上記パラフィン被覆により、上記土壌散布用組成物の効果を温存することができると共に、上記パラフィン被覆が土壌中に存在する炭化水素資化性菌により分解され、その内容物である上記土壌散布用組成物が土壌に露出するまでの相当期間経過後において初めて上記土壌散布用組成物の効果を発揮させ始めることができるという効果がある。したがって、この発明によれば、上記パラフィン被覆がない場合に比べて相当、長期間にわたって上記土壌散布用組成物の効果を持続させることができ、これにより上記土壌散布剤に対して所望の緩効性を付与することができるという効果がある。
この発明の請求項2記載の発明によれば、上記土壌散布用組成物として石灰窒素を含むように構成したので、土壌散布後においては上記パラフィン被覆により、上記石灰窒素の加水分解反応過程で生成される中間生成物としてのシアナミドによる抑草効果および最終的生成物としての尿素およびアンモニアによる肥料効果を温存することができると共に、上記パラフィン被覆が土壌中に存在する炭化水素資化性菌により分解され、その内容物である上記石灰窒素が土壌に露出するまでの相当期間経過後において上記石灰窒素の分解生成物による抑草効果および肥料効果を発揮させ始めることができるという効果がある。したがって、この発明によれば、上記パラフィン被覆がない場合に比べて相当、長期間にわたって上記石灰窒素の分解生成物による抑草効果および肥料効果を持続させることができ、これにより上記土壌散布剤に対して所望の緩効性を付与することができるという効果がある。
この発明の請求項3記載の発明によれば、上記土壌散布用組成物として、上記石灰窒素と、この石灰窒素が水と接触して分解される分解反応過程で中間生成物として生成されるシアナミドの分解を抑制する分解抑制剤との混合物を含むように構成したので、土壌散布後においては、まず上記パラフィン被覆により、上記石灰窒素の加水分解反応過程で生成される中間生成物としてのシアナミドによる抑草効果および最終的生成物としての尿素およびアンモニアによる肥料効果を温存することができると共に、上記パラフィン被覆が土壌中に存在する炭化水素資化性菌により分解され、その内容物である上記石灰窒素が土壌に露出するまでの相当期間経過後においては、上記分解抑制剤により、シアナミドによる抑草効果を長期間にわたって維持することができ、シアナミドの分解後に尿素およびアンモニアによる肥料効果を発揮させ始めることができるという効果がある。したがって、この発明によれば、上記パラフィン被覆がない場合に比べて相当、長期間にわたって上記石灰窒素の分解生成物による抑草効果および肥料効果を持続させることができ、これにより上記土壌散布剤に対して所望の緩効性を付与することができるという効果がある。
実施の形態1.
この発明の1つの実施の形態による土壌散布剤は、パラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包された石灰窒素(土壌散布用組成物)を含むものである。
この発明の1つの実施の形態による土壌散布剤は、パラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包された石灰窒素(土壌散布用組成物)を含むものである。
まず、マイクロカプセルの構成を説明する。
この実施の形態1におけるマイクロカプセルを構成する被覆剤としては、石油パラフィン(以下、パラフィンともいう)が使用される。このパラフィンは、次のような理由で採用される。すなわち、(1)パラフィンは、身近な物質として古くはロウソクや敷居の滑り剤として利用され、また無害であることから食品の保湿剤あるいは化粧品の添加物として利用されており、その安全性が保証されている。(2)また、パラフィンは、安価である。(3)さらに、パラフィンは、生体に対して不活性であり、水分と反応して強アルカリ性を示す石灰窒素に対しても化学的安定性を有する一方、土壌中に存在する炭化水素資化性菌によりパラフィンが資化分解されることが知られている。なお、炭素数10〜16程度の液体状のn−パラフィンは、かつて石油タンパク製造用の酵母や細菌の炭素源であったが、それより炭素数の多い固体状のパラフィンも同様に炭化水素資化性菌の炭素源となる。このため、重ねて土壌に添加しても土壌等の環境に対する蓄積性を有することなく、使用制限がない。(4)さらに、パラフィンは、被覆剤として使用する際に従来のマイクロカプセルと異なり、水性溶媒を使用する必要がない。したがって、パラフィンは、この実施の形態1における土壌散布用組成物としての石灰窒素の加水分解反応の開始剤となることもない。このようなパラフィンは、外部からの水分の浸入を許さない堅牢性を有すると共に、強アルカリ性で水との高い反応性を有する石灰窒素に対しても化学的安定性を有するものであり、石灰窒素の被覆剤として適している。
この実施の形態1におけるマイクロカプセルを構成する被覆剤としては、石油パラフィン(以下、パラフィンともいう)が使用される。このパラフィンは、次のような理由で採用される。すなわち、(1)パラフィンは、身近な物質として古くはロウソクや敷居の滑り剤として利用され、また無害であることから食品の保湿剤あるいは化粧品の添加物として利用されており、その安全性が保証されている。(2)また、パラフィンは、安価である。(3)さらに、パラフィンは、生体に対して不活性であり、水分と反応して強アルカリ性を示す石灰窒素に対しても化学的安定性を有する一方、土壌中に存在する炭化水素資化性菌によりパラフィンが資化分解されることが知られている。なお、炭素数10〜16程度の液体状のn−パラフィンは、かつて石油タンパク製造用の酵母や細菌の炭素源であったが、それより炭素数の多い固体状のパラフィンも同様に炭化水素資化性菌の炭素源となる。このため、重ねて土壌に添加しても土壌等の環境に対する蓄積性を有することなく、使用制限がない。(4)さらに、パラフィンは、被覆剤として使用する際に従来のマイクロカプセルと異なり、水性溶媒を使用する必要がない。したがって、パラフィンは、この実施の形態1における土壌散布用組成物としての石灰窒素の加水分解反応の開始剤となることもない。このようなパラフィンは、外部からの水分の浸入を許さない堅牢性を有すると共に、強アルカリ性で水との高い反応性を有する石灰窒素に対しても化学的安定性を有するものであり、石灰窒素の被覆剤として適している。
他方、石灰窒素は、上述したように、カルシウムシアナミド(CaCN2)を含有する未反応のカーバイドと炭素との混合物である。このような石灰窒素は、例えば土壌中に散布されると、カルシウムシアナミド(CaCN2)が土壌中の水分と反応し、分解されて、その中間生成物としてのシアナミド(H2CN2)が生成される。生成されたシアナミド(H2CN2)は、さらに水分と反応することで、尿素((NH2)2CO)が生成される。尿素((NH2)2CO)は、さらに水分と反応し、分解されて、アンモニア(NH3)が生成される。このため、従来の使用状態で、すなわち石灰窒素のみを肥料として土壌中に散布すると、その後、1週間〜2週間で、上記一連の反応過程で、中間生成物としてのシアナミドが加水分解され、最終的に、肥料効果を示す尿素および/またはアンモニアとなる。したがって、上記一連の反応過程で使用する場合に、上記シアナミドは土壌中において早期に分解されて土壌中に残存しなくなる。なお、上記石灰窒素は微粉末でかつ強アルカリであり、皮膚などに付着すると傷害の原因となる可能性がある。また、上記シアナミドはアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼの阻害剤であるので、シアナミドを吸い込んで飲酒すると悪酔いあるいは二日酔いの原因となる可能性がある。さらに、このシアナミドは顕著な水溶性のために、土壌中に散布された後に、降雨などにより容易に土壌中に拡散、流亡する可能性がある。
次に、この実施の形態1による土壌散布剤の製造方法を説明する。
まず、加熱して溶解したパラフィンを石灰窒素に添加してスラリーとする。ここで、石灰窒素とパラフィンとの混合割合は、1重量部の石灰窒素に対してパラフィンを0.5重量部から略1重量部までの範囲とされる。次に、上記スラリーを固化して得た固化物を適宜粉砕することで、石灰窒素を内包したマイクロカプセルとしての土壌散布剤を得る。あるいは、上記スラリーを高圧で噴霧することで霧状にし、これにより微細粒状の土壌散布剤を得る方法を採用してもよい。なお、この実施の形態1による土壌散布剤の製造方法は、上記方法に限定されるものではなく、公知の方法を適宜選択して使用することも可能である。
まず、加熱して溶解したパラフィンを石灰窒素に添加してスラリーとする。ここで、石灰窒素とパラフィンとの混合割合は、1重量部の石灰窒素に対してパラフィンを0.5重量部から略1重量部までの範囲とされる。次に、上記スラリーを固化して得た固化物を適宜粉砕することで、石灰窒素を内包したマイクロカプセルとしての土壌散布剤を得る。あるいは、上記スラリーを高圧で噴霧することで霧状にし、これにより微細粒状の土壌散布剤を得る方法を採用してもよい。なお、この実施の形態1による土壌散布剤の製造方法は、上記方法に限定されるものではなく、公知の方法を適宜選択して使用することも可能である。
また、上記パラフィンには、必要に応じて種々の界面活性剤を所定量だけ添加することが可能である。界面活性剤としては、上記パラフィンとの相溶性を有するものであり、安全性が確保され、かつ生体に対して不活性であり、炭化水素資化性最近によるパラフィンの資化分解反応を阻害するものでなければ、公知のもの、例えばスパン(Span:商標)20などを好適に使用することができる。パラフィンと界面活性剤との混合割合は、界面活性剤の種類等に応じて適宜決められる。
以上のように、この実施の形態1によれば、パラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包された石灰窒素を含むように構成したので、土壌散布後においては上記パラフィン被覆により、上記石灰窒素の加水分解反応過程で生成される中間生成物としてのシアナミドによる抑草効果および最終的生成物としての尿素およびアンモニアによる肥料効果を温存することができると共に、上記パラフィン被覆が土壌中に存在する炭化水素資化性菌により分解され、その内容物である上記石灰窒素が土壌に露出するまでの相当期間経過後において上記石灰窒素の分解生成物による抑草効果および肥料効果を発揮させ始めることができるという効果がある。したがって、この実施の形態1によれば、上記パラフィン被覆がない場合に比べて相当、長期間にわたって上記石灰窒素の分解生成物による抑草効果および肥料効果を持続させることができ、これにより上記土壌散布剤に対して所望の緩効性を付与することができるという効果がある。
この実施の形態1によれば、パラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包された石灰窒素を含むように構成したので、散布に従事する者の人体に対して影響を与える可能性のある石灰窒素あるいはその分解生成物としてのシアナミドと人体との接触を散布時等に上記パラフィン被覆により防止することができ、取扱い時における安全性を向上させることができるという副次的な効果もある。
なお、この実施の形態1では、土壌散布用組成物として石灰窒素を用いたが、この発明はこれらに限定されるものはない。
実施の形態2.
この実施の形態2の特徴は、上記土壌散布用組成物として石灰窒素を用いた実施の形態1と異なり、石灰窒素と、この石灰窒素が水と接触して分解される分解反応過程で中間生成物として生成されるシアナミドの分解を抑制する分解抑制剤を含む点にある。なお、この実施の形態2の構成要素のうち、実施の形態1の構成要素と共通する部分については、その部分の説明を省略する。
この実施の形態2の特徴は、上記土壌散布用組成物として石灰窒素を用いた実施の形態1と異なり、石灰窒素と、この石灰窒素が水と接触して分解される分解反応過程で中間生成物として生成されるシアナミドの分解を抑制する分解抑制剤を含む点にある。なお、この実施の形態2の構成要素のうち、実施の形態1の構成要素と共通する部分については、その部分の説明を省略する。
ここで、分解抑制剤を説明する。
本発明者は、シアナミドの加水分解反応を抑制してシアナミドを安定化するために次のように考察した。一般に、加水分解反応は、強酸性あるいは強アルカリ性等の極端なpH域下において反応が促進されるものである。石灰窒素の加水分解反応では、石灰窒素が水と接触することで、含有されているカルシウム分により強アルカリ性を示す。このような強アルカリ性の下では、触媒物質や微生物の有無にかかわらず、加水分解反応が促進される。逆に、このアルカリ性を中和して中性域にすると、加水分解反応が促進されずに、シアナミドが安定化される可能性があると考えた。そこで、石灰窒素に酸性物質を分解抑制剤として同伴させた組成物を土壌中に散布すると、石灰窒素中のカルシウム分が水分に接触した際に呈するアルカリ性を上記酸性物質で中和することが可能であろうと考えた。
本発明者は、シアナミドの加水分解反応を抑制してシアナミドを安定化するために次のように考察した。一般に、加水分解反応は、強酸性あるいは強アルカリ性等の極端なpH域下において反応が促進されるものである。石灰窒素の加水分解反応では、石灰窒素が水と接触することで、含有されているカルシウム分により強アルカリ性を示す。このような強アルカリ性の下では、触媒物質や微生物の有無にかかわらず、加水分解反応が促進される。逆に、このアルカリ性を中和して中性域にすると、加水分解反応が促進されずに、シアナミドが安定化される可能性があると考えた。そこで、石灰窒素に酸性物質を分解抑制剤として同伴させた組成物を土壌中に散布すると、石灰窒素中のカルシウム分が水分に接触した際に呈するアルカリ性を上記酸性物質で中和することが可能であろうと考えた。
この実施の形態2における分解抑制剤は、上記石灰窒素の分解反応過程で呈するアルカリ性を中和する酸性物質である。この酸性物質としては、クエン酸、コハク酸等の有機酸、マイクロカプセル化した塩酸および硝酸等の無機酸からなる群より選択された1つまたはそれ以上の物質を挙げることができる。ここで、塩酸または硝酸等の無機酸を分解抑制剤として使用する場合に、マイクロカプセルに上記無機酸を内包する使用形態を採用する理由は、上記無機酸が強酸性であることから取り扱いを容易にすると共に、上記無機酸を直接、石灰窒素に作用させると、中和反応による発熱により土壌が受ける影響を回避するためであり、またマイクロカプセルの作用により石灰窒素に対する緩効性を上記無機酸に付与するためでもある。無機酸のマイクロカプセル化方法としては、例えば上記無機酸に、加熱して溶解した石油パラフィンを添加してスラリーとし、これを固化して得た固化物を適宜粉砕することで、無機酸を内包したマイクロカプセルを製造する方法を挙げることができるが、この発明はこれに限定されるものではなく、公知の方法を適宜選択して使用することも可能である。
また、石灰窒素と分解抑制剤としての酸性物質との混合割合は、石灰窒素として市販されている製品ごとに組成が異なることから、その組成に応じて適宜決められる。より正確には、抑草剤の製造時において上記製品ごとにそのアルカリ度を測定し、その値から酸性物質の配合割合が決められ、酸性物質としてのクエン酸の配合割合は、例えば石灰窒素1gに対し1.8gから1.9gまでの範囲とされる。なお、この実施の形態2における酸性の分解抑制剤による中和とは、石灰窒素の加水分解反応過程で呈するアルカリ性を、pH7を基準として弱酸性側または弱アルカリ性側に広がる範囲を有する中性域に調製する反応を意味することをいう。
このような石灰窒素および分解抑制剤に対するパラフィン被覆を構成するパラフィンは、外部からの水分の浸入を許さない堅牢性を有すると共に、強アルカリ性で水との高い反応性を有する石灰窒素に対しても化学的安定性を有するものであり、石灰窒素と分解抑制剤との混合物の被覆剤としても適している。
以上のように、この実施の形態2によれば、土壌散布用組成物として、石灰窒素と、この石灰窒素が水と接触して分解される分解反応過程で中間生成物として生成されるシアナミドの分解を抑制する分解抑制剤を含むように構成したので、土壌散布後においては上記パラフィン被覆により、上記石灰窒素の加水分解反応過程で生成される中間生成物としてのシアナミドによる抑草効果および最終的生成物としての尿素およびアンモニアによる肥料効果を温存することができると共に、上記パラフィン被覆が土壌中に存在する炭化水素資化性菌により分解され、その内容物である上記石灰窒素が土壌に露出するまでの相当期間経過後において上記石灰窒素の分解生成物による抑草効果および肥料効果を発揮させ始めることができるという効果がある。したがって、この実施の形態2によれば、上記パラフィン被覆がない場合に比べて相当、長期間にわたって上記石灰窒素の分解生成物による抑草効果および肥料効果を持続させることができ、これにより上記土壌散布剤に対して所望の緩効性を付与することができるという効果がある。
なお、この実施の形態2では、土壌散布用組成物として石灰窒素と分解抑制剤との混合物を用いたが、この発明はこれらに限定されるものはなく、土壌散布用組成物として種々の肥料および農薬等を単独あるいは適宜、組み合わせて用いることができる。さらに、この発明に係る土壌散布剤における土壌散布用組成物には、上述したパラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包されていない土壌散布用組成物を含めてもよい。この場合には、上述した緩効性の効果の他に、所望の即効性の効果を加えることができる。
以下、実施例および比較例を説明する。
実施例1.
土壌散布用組成物として石灰窒素のみを用い、この石灰窒素に、加熱して溶解したパラフィンを混合してスラリーとし、このスラリーを固化して得た固化物を適宜粉砕することで、石灰窒素をパラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包した土壌散布剤を得た(実施例1)。なお、この実施例1では、石灰窒素とパラフィン被覆剤とを同量とした。
実施例1.
土壌散布用組成物として石灰窒素のみを用い、この石灰窒素に、加熱して溶解したパラフィンを混合してスラリーとし、このスラリーを固化して得た固化物を適宜粉砕することで、石灰窒素をパラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包した土壌散布剤を得た(実施例1)。なお、この実施例1では、石灰窒素とパラフィン被覆剤とを同量とした。
実施例2.
パラフィン被覆としてパラフィンと界面活性剤(Span20)との混合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で土壌散布剤を得た(実施例2)。
パラフィン被覆としてパラフィンと界面活性剤(Span20)との混合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で土壌散布剤を得た(実施例2)。
比較例
被覆を有しない石灰窒素からなる土壌散布剤を比較例とした。
被覆を有しない石灰窒素からなる土壌散布剤を比較例とした。
実施例1、実施例2および比較例による土壌散布剤を水中に懸濁して、それぞれ石灰窒素の溶出率を経時的に測定し、その結果を図1に示した。この図1から明らかなように、比較例による土壌散布剤は、実験開始当初から90%以上の溶出率を示しているのに対し、実施例1による土壌散布剤は、実験開始から160時間(約1週間)後でも、上記比較例による土壌散布剤に比べて溶出率が低い(約60%程度の溶出率)ことがわかる。さらに、実施例2による土壌散布剤は、実施例1による土壌散布剤よりもさらに、溶出率が低い(約50%程度の溶出率)ことがわかる。
Claims (3)
- パラフィン被覆によるマイクロカプセルに内包された土壌散布用組成物を含むことを特徴とする土壌散布剤。
- 上記土壌散布用組成物は、石灰窒素であることを特徴とする請求項1記載の土壌散布剤。
- 上記土壌散布用組成物は、上記石灰窒素と、この石灰窒素が水と接触して分解される分解反応過程で中間生成物として生成されるシアナミドの分解を抑制する分解抑制剤との混合物であることを特徴とする請求項1記載の土壌散布剤。
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JP2019210177A (ja) * | 2018-06-04 | 2019-12-12 | 長浜憲孜 | 粒状肥料 |
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JP7048422B2 (ja) | 2018-06-04 | 2022-04-05 | 長浜憲孜 | 粒状肥料 |
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