JP2006297413A - マグネシウム合金鋳塊の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 その合金組成によらず、組織が微細で、緻密な鋳塊を製造することが可能なマグネシウム合金鋳塊の製造方法を提供すること。
【解決手段】 金型にマグネシウム合金溶湯を鋳込む鋳造工程と、前記マグネシウム合金溶湯の最外面に凝固殻が生成した後、前記金型と前記凝固殻との間の隙間に冷却ガスを流す冷却工程とを備えたマグネシウム合金鋳塊の製造方法。この場合、前記冷却ガスは、不活性ガスと防燃ガスとの混合ガスが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】 金型にマグネシウム合金溶湯を鋳込む鋳造工程と、前記マグネシウム合金溶湯の最外面に凝固殻が生成した後、前記金型と前記凝固殻との間の隙間に冷却ガスを流す冷却工程とを備えたマグネシウム合金鋳塊の製造方法。この場合、前記冷却ガスは、不活性ガスと防燃ガスとの混合ガスが好ましい。
【選択図】 図1
Description
本発明は、マグネシウム合金鋳塊の製造方法に関し、さらに詳しくは、圧延、鍛造、押出し等の塑性加工に供されるマグネシウム合金鋳塊の製造方法に関する。
マグネシウム合金は、工業用金属材料の中でも最も軽量であるため、航空機や自動車用の構造材料、ノートパソコン、MDプレーヤー、携帯電話等の情報機器の筐体用材料として注目されている。マグネシウム合金は、一般に、ダイカスト、砂型/金型鋳造、押出し、圧延等の方法を用いて種々の形状に加工されている。また、マグネシウム合金には、目的の材料特性を得るために、各種の合金成分(例えば、Al、Zn、Mn、希土類元素など)が添加される。
図3に、マグネシウム合金の溶解・鋳造方法の一例を示す。マグネシウム合金の溶解に用いられる溶解炉10は、図3に示すように、炉本体12と、ルツボ14と、蓋16とを備えている。炉本体12には、ルツボ14を加熱するための熱源(図示せず。例えば、バーナー、電気ヒータなど。)が内蔵されている。
マグネシウム合金の溶解において、ルツボ14には、一般に、鉄製ルツボが用いられる。これは、マグネシウムは、鉄の溶解度が非常に小さく、溶損が少ないためである。蓋16は、溶解中に溶湯と大気との接触を防ぐためものもである。蓋16には、保護ガスの導入孔16a及び排出口16bが設けられている。保護ガスは、マグネシウムの燃焼を防止するためのものであり、一般には、不活性ガスとSF6(六フッ化イオウ)の混合ガスが用いられる。
マグネシウム合金の溶解において、ルツボ14には、一般に、鉄製ルツボが用いられる。これは、マグネシウムは、鉄の溶解度が非常に小さく、溶損が少ないためである。蓋16は、溶解中に溶湯と大気との接触を防ぐためものもである。蓋16には、保護ガスの導入孔16a及び排出口16bが設けられている。保護ガスは、マグネシウムの燃焼を防止するためのものであり、一般には、不活性ガスとSF6(六フッ化イオウ)の混合ガスが用いられる。
マグネシウム合金の溶解は、主原料であるMg地金(インゴット)やMgスクラップ、及び、成分調整用の材料(例えば、Alインゴット、粒状Zn、Al−Mn合金インゴットなど。)をルツボ14に入れ、蓋16の導入孔16a及び排出口16bを介して保護ガスを流しながら、熱源(図示せず)を用いて650〜800℃に加熱することにより行う。
所定の溶解時間が経過した後、図3に示すように、溶解炉10全体を傾斜させるか、あるいは、柄杓で必要量だけ溶湯をくみ出し、鋳型(砂型又は鉄製の金型)20に溶湯を流し込む。溶湯が完全に凝固したところで、鋳型から鋳塊を取り出し、押出し、圧延等の各種加工に供される。あるいは、溶湯からダイカストにより、直接、所望の形状を有する部品を作製する場合もある。
所定の溶解時間が経過した後、図3に示すように、溶解炉10全体を傾斜させるか、あるいは、柄杓で必要量だけ溶湯をくみ出し、鋳型(砂型又は鉄製の金型)20に溶湯を流し込む。溶湯が完全に凝固したところで、鋳型から鋳塊を取り出し、押出し、圧延等の各種加工に供される。あるいは、溶湯からダイカストにより、直接、所望の形状を有する部品を作製する場合もある。
マグネシウム合金は、軽量であることに加えて、(1)比強度、比剛性が鋼やアルミニウムより優れている、(2)振動吸収性が良い、(3)電磁波シールド性が良い、(4)耐くぼみ性(物体が衝突した際に発生するクボミの発生の程度)は、アルミニウムや軟鉄より良好である、(5)再加工時のエネルギーが少なく、リサイクル性が良い、(6)放熱性が良い、(7)寸法安定性が良い、(8)機械的切削性が良い、等の優れた特徴がある。
しかしながら、マグネシウム合金は、
(1) 微量の不純物(特に、Fe、Cu、Ni)により耐食性が劣化する、
(2) 最密六方構造であるため、冷間加工性に劣る、
(3) 活性が高く、大気中で溶解、鋳造すると燃焼し、取り扱いが困難である、
(4) 凝固収縮が大きく、健全な鋳物が得られにくい、
等の問題がある。
しかしながら、マグネシウム合金は、
(1) 微量の不純物(特に、Fe、Cu、Ni)により耐食性が劣化する、
(2) 最密六方構造であるため、冷間加工性に劣る、
(3) 活性が高く、大気中で溶解、鋳造すると燃焼し、取り扱いが困難である、
(4) 凝固収縮が大きく、健全な鋳物が得られにくい、
等の問題がある。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、マグネシウム合金の原材料を耐熱金属製の器体内で溶解させ、溶湯を器体内で凝固させ、凝固したマグネシウムインゴットを器体から離脱させるマグネシウムインゴットの製造方法が開示されている。同文献には、このような方法を用いることによってルツボから鋳型への溶湯の移動が不要になるので、溶湯の移動に伴う酸化を抑制することができる点が記載されている。
また、特許文献2には、Al、Mn、Znを主たる合金元素として含有するMg合金であって、Alが6.2〜7.6wt%の範囲にあり、微細化剤を添加し、3〜15℃/secの冷却速度で鋳造し、金属組織の粒径が200μm以下である塑性加工用マグネシウム合金鋳造素材を得るマグネシウム合金の鋳造方法が開示されている。同文献には、Alを特定の範囲にすると、冷却速度7℃/sec程度の通常の連続鋳造でも金属組織の平均粒径が200μm以下となる点、及び、Sr又はCaNCNを微細化剤として加えると、冷却速度3℃/sec程度から平均結晶粒径が200μm以下となる点が記載されている。
マグネシウム合金は軽量であるので、その押出材、板材等を車体パネル、窓枠、あるいは、携帯機器の筐体等に応用すれば、大幅な軽量化が可能となる。マグネシウム合金は、一般に、冷間加工性に劣るので、鋳塊の塑性加工を容易化するためには、鋳塊の結晶粒は、微細である方が好ましい。また、一般に、結晶粒が微細であるほど機械的特性が向上するので、各種構造材料への応用も容易になる。そのためには、成分調整されたマグネシウム合金溶湯を鋳造する方法として、冷却速度の大きな金型鋳造法を用いるのが有利である。
しかしながら、マグネシウム合金は、凝固収縮が大きいので、金型鋳造を行うと、凝固の初期段階から凝固収縮により鋳型と鋳塊の間にギャップができる。その結果、接触熱伝導が妨げられることにより冷却能力が低下し、鋳造組織(デンドライト樹枝)の粗大化、成分の不均一化が顕著になる。
鋳造組織が粗大化すると、圧延、鍛造等の塑性加工時に割れが発生しやすくなる。また、成分不均一が生じた時には、鋳造後に均質化処理を行い、拡散によって成分を均一化する必要があるが、鋳造組織が粗大化であるほど、均質化処理に長時間を要し、熱負荷が増大する。
この問題を解決するために、特許文献2に記載されているように、溶湯に微細化剤を添加することも考えられる。しかしながら、微細化剤を添加する方法では、微細化剤に含まれる元素が溶湯中に混入し、目的とする組成を実現できない場合がある。
鋳造組織が粗大化すると、圧延、鍛造等の塑性加工時に割れが発生しやすくなる。また、成分不均一が生じた時には、鋳造後に均質化処理を行い、拡散によって成分を均一化する必要があるが、鋳造組織が粗大化であるほど、均質化処理に長時間を要し、熱負荷が増大する。
この問題を解決するために、特許文献2に記載されているように、溶湯に微細化剤を添加することも考えられる。しかしながら、微細化剤を添加する方法では、微細化剤に含まれる元素が溶湯中に混入し、目的とする組成を実現できない場合がある。
本発明が解決しようとする課題は、その合金組成によらず、組織が微細で、緻密な鋳塊を製造することが可能なマグネシウム合金鋳塊の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るマグネシウム合金鋳塊の製造方法は、金型にマグネシウム合金溶湯を鋳込む鋳造工程と、前記マグネシウム合金溶湯の最外面に凝固殻が生成した後、前記金型と前記凝固殻との間の隙間に冷却ガスを流す冷却工程とを備えていることを要旨とする。
この場合、前記冷却ガスは、不活性ガスと防燃ガスとの混合ガスが好ましい。
この場合、前記冷却ガスは、不活性ガスと防燃ガスとの混合ガスが好ましい。
マグネシウム合金は、凝固収縮が大きいので、その溶湯を金型に鋳造すると、凝固の初期段階から、鋳型と鋳塊との間に隙間が生成する。この隙間に冷却ガスを流すと、鋳塊が強制的に冷却されるので、鋳造組織の粗大化を抑制することができる。また、冷却速度が増すことによって成分不均一が抑制されるので、均質加熱処理の際の負荷を軽減できる。さらに、冷却ガスとして、不活性ガスと防燃ガスとの混合ガスを用いると、マグネシウムの酸化に起因する発熱が抑制されるので、鋳造組織をさらに微細化することができる。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。図1に、本発明の一実施の形態に係るマグネシウム合金鋳塊の製造方法の工程図を示す。図1において、本実施の形態に係る製造方法は、鋳造工程と、冷却工程とを備えている。
鋳造工程は、金型30にマグネシウム合金溶湯を鋳込む工程である。
本発明において、鋳型には、金型30を用いる。これは、熱伝導率と熱放散性に優れる金型30を用いることによって、冷却速度を大きくし、組織が微細で、緻密な鋳塊を得るためである。金型30の材質は、特に限定されるものではなく、Fe、Cu、Al等、又は、これらの合金を使用することができる。但し、Cu、Al又はこれらの合金を金型30として用いる場合、耐熱性が低いので、金型30を水冷するのが好ましい。
本発明において、鋳型には、金型30を用いる。これは、熱伝導率と熱放散性に優れる金型30を用いることによって、冷却速度を大きくし、組織が微細で、緻密な鋳塊を得るためである。金型30の材質は、特に限定されるものではなく、Fe、Cu、Al等、又は、これらの合金を使用することができる。但し、Cu、Al又はこれらの合金を金型30として用いる場合、耐熱性が低いので、金型30を水冷するのが好ましい。
金型30の底部には、冷却ガスを金型30内に導入し、あるいは、導入された冷却ガスを金型30内から排出するための導入・排出口30a、30a…が設けられている。また、導入・排出口30a、30a…には、それぞれ、冷却ガスを供給・排出するための供給・排出管30b、30b…が接続されている。さらに、導入・排出口30a、30a…は、それぞれ、溶湯が供給・排出管30b、30b…に逆流するのを防ぐために、逆止弁30c、30c…により開閉できるようになっている。
冷却ガスの導入・排出孔30a、30a…を金型30の底部に設けるのは、金型30の底部から溶湯の凝固が進行し、底部近傍に隙間が発生しやすいためである。冷却ガスの導入・排出口30a、30a…の取り付け位置は、必ずしも金型30の底部である必要はないが、取り付け位置が高すぎると、注湯中の液体金属の流動を乱すおそれがある。従って、取り付け位置は、最終凝固部からできるだけ離れた位置が好ましい。冷却ガスの導入・排出口30a、30a…の取り付け位置は、具体的には、金型30の高さの1/2以下が好ましい。
図1においては、1組の導入・排出口30a、30aが設けられた金型30が示されているが、これは単なる例示であり、冷却ガスの導入・排出孔30a、30a…の個数は、鋳塊の大きさ、形状等に応じて、任意に選択することができる。例えば、金型30の底部の周方向に2組以上の導入・排出口30a、30a…を設けても良く、あるいは、金型30の底部の周方向に1組又は2組以上の導入・排出口30a、30a…を設けることに加えて、金型30の鉛直方向に1組又は2組以上の導入・排出口30a、30aを設けても良い。さらに、冷却ガスの導入口と、冷却ガスの排出口とは、必ずしも同数である必要はなく、いずれか一方の数を他方より多くしても良い。
さらに、導入・排出口30a、30a…の直径は、特に限定されるものではなく、要求される冷却速度に応じて、任意に選択することができる。なお、導入・排出口30a、30a…の直径が相対的に小さい場合(具体的には、内径φ3mm程度以下)には、溶湯の凝固速度の方が速く、溶湯の供給・排出管30b、30b…への逆流は起きない。そのような場合には、逆止弁30c、30c…を省略しても良い。
さらに、導入・排出口30a、30a…の直径は、特に限定されるものではなく、要求される冷却速度に応じて、任意に選択することができる。なお、導入・排出口30a、30a…の直径が相対的に小さい場合(具体的には、内径φ3mm程度以下)には、溶湯の凝固速度の方が速く、溶湯の供給・排出管30b、30b…への逆流は起きない。そのような場合には、逆止弁30c、30c…を省略しても良い。
本発明において、「マグネシウム合金」とは、マグネシウムを80wt%以上含む合金をいう。工業上用いられるマグネシウム合金には、
(1) Al:1.6wt%〜9.2wt%、Zn:0.05wt%〜1.5wt%、Mn:0.50wt%以下を含む易加工性の展伸用合金(例えば、AZ21X、AZ31B、AZ31C、AZ61A、AZ80Aなど)、
(2) Zr:0.30wt%〜1.0wt%、Zn:1.0wt%〜6.2wt%を含む高強度の展伸用合金(例えば、ZK10A、ZK21A、ZK30A、ZK40A、ZK60Aなど)、
(3) Al:4.5wt%〜6.4wt%、Zn:0.20wt%以下、Mn:0.26wt%〜0.50wt%を含むダイカスト用合金(例えば、AM50、AM60など)、
(4) 上記(1)(2)(3)の組成に加え、Ca:0.01〜2.0wt%を含むもの、
等がある。本発明は、いずれの合金に対しても適用することができる。
(1) Al:1.6wt%〜9.2wt%、Zn:0.05wt%〜1.5wt%、Mn:0.50wt%以下を含む易加工性の展伸用合金(例えば、AZ21X、AZ31B、AZ31C、AZ61A、AZ80Aなど)、
(2) Zr:0.30wt%〜1.0wt%、Zn:1.0wt%〜6.2wt%を含む高強度の展伸用合金(例えば、ZK10A、ZK21A、ZK30A、ZK40A、ZK60Aなど)、
(3) Al:4.5wt%〜6.4wt%、Zn:0.20wt%以下、Mn:0.26wt%〜0.50wt%を含むダイカスト用合金(例えば、AM50、AM60など)、
(4) 上記(1)(2)(3)の組成に加え、Ca:0.01〜2.0wt%を含むもの、
等がある。本発明は、いずれの合金に対しても適用することができる。
溶解炉(例えば、図3に示す溶解炉10)を用いて、主原料(例えば、Mg地金、Mgスクラップなど)及び成分調整用原料(例えば、Alインゴット、粒状Zn、Al−Mn合金インゴットなど)を溶解した後、図1(a)に示すように、マグネシウム合金溶湯40を金型30に鋳込む。この時、金型30に逆止弁30c、30c…がある場合には、これを閉じておく。所定量の溶湯40が鋳込まれると、図1(b)に示すように、鋳造工程が完了する。
冷却工程は、マグネシウム合金溶湯の最外面に凝固殻が生成した後、金型と凝固殻との間の隙間に冷却ガスを流す工程である。
冷却ガスは、Ar、He、窒素、炭酸ガス、ドライエアーなどの不活性ガスを用いる。高い冷却効率を得るためには、冷却ガスの熱伝導率は高いほどよい。これらのガスは、それぞれ単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、Ar及びHe(特に、He)は、不活性であり、かつ、熱伝導度が高いので、冷却ガスとして好適である。
冷却ガスは、Ar、He、窒素、炭酸ガス、ドライエアーなどの不活性ガスを用いる。高い冷却効率を得るためには、冷却ガスの熱伝導率は高いほどよい。これらのガスは、それぞれ単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、Ar及びHe(特に、He)は、不活性であり、かつ、熱伝導度が高いので、冷却ガスとして好適である。
また、冷却ガスは、不活性ガスのみからなるものであっても良く、あるいは、不活性ガスと、防燃ガスとの混合ガスでも良い。冷却ガスに防燃ガスを加えると、凝固の際に溶湯40又は凝固殻が大気に接触することによって生ずる燃焼を、より効果的に抑制することができる。マグネシウムの燃焼は、発熱反応であるので、これを抑制することによって、溶湯の温度上昇が抑制され、鋳造組織をさらに微細化することができる。
マグネシウムの燃焼を抑制する作用を有する防燃ガスとしては、具体的には、SF6(六フッ化イオウ)、代替フロン、酸化硫黄などがある。これらは、それぞれ単独で用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
一般に、冷却ガスに含まれる防燃ガスの含有量が少なすぎる場合には、防燃ガスによる鋳造組織の微細化効果が小さい。一方、必要以上の防燃ガスの添加は、実益がないだけでなく、製造コストを上昇させたり、環境に対する負荷を増大させる原因となる。冷却ガスに防燃ガスを加える場合において、微細化された鋳造組織を効率よく得るためには、防燃ガスの含有量は、具体的には、0.01vol%以上1.0vol%以下が好ましい。
一般に、冷却ガスに含まれる防燃ガスの含有量が少なすぎる場合には、防燃ガスによる鋳造組織の微細化効果が小さい。一方、必要以上の防燃ガスの添加は、実益がないだけでなく、製造コストを上昇させたり、環境に対する負荷を増大させる原因となる。冷却ガスに防燃ガスを加える場合において、微細化された鋳造組織を効率よく得るためには、防燃ガスの含有量は、具体的には、0.01vol%以上1.0vol%以下が好ましい。
冷却ガスを導入するタイミングは、図1(c)に示すように、金型30に鋳込まれたマグネシウム合金溶湯40の最外面(鋳型側表面)に凝固殻40aが形成された直後が好ましい。凝固殻が形成される前に冷却ガスを導入すると、凝固殻の形成が妨げられたり、あるいは、気泡が鋳塊の内部に残留するので好ましくない。一方、凝固殻が厚く形成された後に冷却ガスを流す場合は、既に粗大な鋳造組織が形成されているので、冷却ガスを流すことにより得られる鋳造組織の微細化効果が小くなる。
冷却ガスを流すタイミングは、具体的には、溶湯40が金型30に注がれ、溶湯40が冷却ガスの導入・排出口30a、30a…の高さ以上に満たされた直後から30秒以内が好ましい。
冷却ガスを流すタイミングは、具体的には、溶湯40が金型30に注がれ、溶湯40が冷却ガスの導入・排出口30a、30a…の高さ以上に満たされた直後から30秒以内が好ましい。
冷却ガスの導入量は、鋳塊の大きさ、鋳塊に要求される特性等に応じて、最適な導入量を選択する。一般に、冷却ガスの導入量が多くなるほど、高い冷却効果が得られる。但し、冷却ガスの導入量が多くなりすぎると、凝固殻が破壊されるおそれがあるので好ましくない。
金型30に鋳込まれたマグネシウム合金溶湯40の最外面に凝固殻40aが形成された後、図1(d)に示すように、必要に応じて逆止弁30c、30c…を開き、導入・排出管30bから冷却ガスを金型30内に導入する。これにより、溶湯40が強制冷却される。
マグネシウム合金は、凝固収縮が大きいので、溶湯が金型に鋳込まれると、凝固初期に鋳塊と鋳型壁面との間に隙間ができる。そのため、接触熱伝導が妨げられ、冷却速度が低下し、鋳造組織が粗大化する。
これに対し、溶湯が鋳型に鋳込まれ、溶湯の最外面に凝固殻が形成された直後に、鋳型内に冷却ガスを流すと、凝固殻内部に残っている溶湯を急冷することができる。そのため、鋳造組織の粗大化が抑制され、微細で、かつ、緻密な鋳塊を製造することができる。
これに対し、溶湯が鋳型に鋳込まれ、溶湯の最外面に凝固殻が形成された直後に、鋳型内に冷却ガスを流すと、凝固殻内部に残っている溶湯を急冷することができる。そのため、鋳造組織の粗大化が抑制され、微細で、かつ、緻密な鋳塊を製造することができる。
また、マグネシウム合金溶湯を鋳型内に鋳込む際に、溶湯は大気と接触する。また、凝固収縮により鋳型と鋳塊との間に隙間が形成されると、隙間内には大気が流れ込む場合がある。マグネシウムは燃焼しやすいので、凝固中に溶湯の表面が大気と接触すると、燃焼により発熱し、凝固殻内部の溶湯の冷却速度が低下する。
これに対し、凝固殻が形成された直後に、隙間に不活性ガスを主成分とする冷却ガスを流すと、マグネシウムの燃焼が抑制される。この効果は、冷却ガスに防燃ガスを添加すると、さらに顕著となる。そのため、燃焼に起因する冷却速度の低下が抑制され、微細で、かつ、緻密な鋳塊を製造することができる。
さらに、本発明に係る方法は、鋳造組織を微細化するために微細化剤を用いる必要がないので、あらゆる組成のマグネシウム合金に対しても適用できる。
これに対し、凝固殻が形成された直後に、隙間に不活性ガスを主成分とする冷却ガスを流すと、マグネシウムの燃焼が抑制される。この効果は、冷却ガスに防燃ガスを添加すると、さらに顕著となる。そのため、燃焼に起因する冷却速度の低下が抑制され、微細で、かつ、緻密な鋳塊を製造することができる。
さらに、本発明に係る方法は、鋳造組織を微細化するために微細化剤を用いる必要がないので、あらゆる組成のマグネシウム合金に対しても適用できる。
(実施例1、2、比較例1)
所定の組成に成分調整された原料を図3に示す溶解炉10で溶解させた。次に、図1に示す手順に従い、溶湯を金型に鋳造し、鋳造直後に金型内に種々の条件下で冷却ガスを流した。実験条件は、以下の通りである。
合金組成: Mg−3wt%Al−1wt%Zn(JIS AZ31相当)
鋳造量 : 13kg
金型形状: 200W×60T×500H
鋳造温度: 730℃
冷却ガス:
(1) 冷却ガスなし(比較例1)
(2)冷却ガス有り(Ar5L/min)(実施例1)
(3)冷却ガス有り(Ar10L/min)(実施例2)
(4)冷却ガス有り(Ar10L/min+SF620mL/min)(実施例3)
所定の組成に成分調整された原料を図3に示す溶解炉10で溶解させた。次に、図1に示す手順に従い、溶湯を金型に鋳造し、鋳造直後に金型内に種々の条件下で冷却ガスを流した。実験条件は、以下の通りである。
合金組成: Mg−3wt%Al−1wt%Zn(JIS AZ31相当)
鋳造量 : 13kg
金型形状: 200W×60T×500H
鋳造温度: 730℃
冷却ガス:
(1) 冷却ガスなし(比較例1)
(2)冷却ガス有り(Ar5L/min)(実施例1)
(3)冷却ガス有り(Ar10L/min)(実施例2)
(4)冷却ガス有り(Ar10L/min+SF620mL/min)(実施例3)
図2に、鋳塊の平均結晶粒径に及ぼす冷却ガスの影響を示す。図2より、
(1)鋳塊と鋳型の隙間に冷却ガスを流すことによって、鋳塊の平均結晶粒径が小さくなること、
(2)冷却ガスの流量が大きくなるほど、鋳塊の平均結晶粒径が小さくなること、及び、
(3)冷却ガスに不活性ガスと防燃剤の混合ガスを用いると、鋳塊の平均粒径がさらに小さくなること、
がわかる。
(1)鋳塊と鋳型の隙間に冷却ガスを流すことによって、鋳塊の平均結晶粒径が小さくなること、
(2)冷却ガスの流量が大きくなるほど、鋳塊の平均結晶粒径が小さくなること、及び、
(3)冷却ガスに不活性ガスと防燃剤の混合ガスを用いると、鋳塊の平均粒径がさらに小さくなること、
がわかる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係るマグネシウム合金鋳塊の製造方法は、航空機や自動車用の構造材料、ノートパソコン、MDプレーヤー、携帯電話等の情報機器の筐体用材料などに用いられる展伸用マグネシウム合金の製造方法として用いることができる。
30 金型
30a 冷却ガス導入・排出口
40 マグネシウム合金溶湯
30a 冷却ガス導入・排出口
40 マグネシウム合金溶湯
Claims (5)
- 金型にマグネシウム合金溶湯を鋳込む鋳造工程と、
前記マグネシウム合金溶湯の最外面に凝固殻が生成した後、前記金型と前記凝固殻との間の隙間に冷却ガスを流す冷却工程と
を備えたマグネシウム合金鋳塊の製造方法。 - 前記冷却ガスは、不活性ガスと防燃ガスとの混合ガスである請求項1に記載のマグネシウム合金鋳塊の製造方法。
- 前記冷却ガスは、Ar又はHeである請求項2に記載のマグネシウム合金鋳塊の製造方法。
- 前記防燃ガスは、SF6である請求項2又は3に記載のマグネシウム合金鋳塊の製造方法。
- 前記冷却ガスに含まれる前記防燃ガスの含有量は、0.01vol%以上1.0vol%以下である請求項2から4までのいずれかに記載のマグネシウム合金鋳塊の製造方法。
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