JP4294947B2 - マグネシウム合金素形材の鋳造方法 - Google Patents

マグネシウム合金素形材の鋳造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4294947B2
JP4294947B2 JP2002363846A JP2002363846A JP4294947B2 JP 4294947 B2 JP4294947 B2 JP 4294947B2 JP 2002363846 A JP2002363846 A JP 2002363846A JP 2002363846 A JP2002363846 A JP 2002363846A JP 4294947 B2 JP4294947 B2 JP 4294947B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
magnesium alloy
casting
cooling
sec
magnesium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2002363846A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003239033A (ja
Inventor
幸一 山崎
幸男 西川
晃 宝
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Corp
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Panasonic Corp
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Panasonic Corp, Matsushita Electric Industrial Co Ltd filed Critical Panasonic Corp
Priority to JP2002363846A priority Critical patent/JP4294947B2/ja
Publication of JP2003239033A publication Critical patent/JP2003239033A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4294947B2 publication Critical patent/JP4294947B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Continuous Casting (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム合金材料からマグネシウム合金部品を製造するために、塑性加工用に鋳造されるマグネシウム合金素形材の鋳造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、大量生産される家電製品に対しては、リサイクル処理や環境問題等の対策の1つとして、家電製品の外装部品等を従来の樹脂材料に代えて金属材料から製造することが注目されている。樹脂材料のリサイクル率が20%であるのに対し、金属材料は90%がリサイクル可能である。
【0003】
金属材料中で特にマグネシウム合金は他の金属合金と比較して、軽量、高強度であり、振動減衰性にも優れているため、携帯型の電子機器や自動車部品等で実用化されている。またマグネシウム合金は、比較的低融点であることからリサイクルエネルギーも少なくて済むという特徴もある。
【0004】
図8は、マグネシウム合金材料からマグネシウム合金部品を製造する工程を示す概略図である。まず、マグネシウム合金材料からマグネシウム合金成形品を得るには、一般的にダイカストやチクソモールドといった鋳造と、プレス、曲げ加工、鍛造といった塑性加工とに大きく分類される。鋳造は、成形の自由度が高い反面、鋳造品の表面欠陥や内部への気泡の巻き込みといった問題のために歩留まりが悪く、コストが高いという問題を抱えている。そこで、比較的形状が簡単な家電製品の筐体等においては、部品の最終形状に近似した素形材を予め鋳造した後に、この素形材を直接塑性加工する、あるいは、押出し・圧延等の1次加工を施して薄板にし、その薄板に2次加工を施してマグネシウム合金成形品にし、その後、塗装・乾燥工程を経てマグネシウム合金部品を製造するという方法も実用化されている。このように鋳造と塑性加工を組み合わせた方法は、鋳造単独の方法に比べて加工時のタクトの短縮化や表面欠陥の低減、設備投資の抑制の面から優位であると考えられている。
【0005】
この製造方法に用いられる一般的な塑性加工用の素形材の金属組織の状態を図10に模式的に示す。この素形材4は、マグネシウムの他にアルミニウム、亜鉛、マンガンを主たる合金元素とするAZ31のマグネシウム合金である。AZ系のマグネシウム合金は他のマグネシウム合金に比べて強度が強く耐食性に優れているので、汗や水にさらされやすい家電製品の筐体に適した合金である。また、マグネシウムの他にアルミニウムとマンガンを主たる合金元素とするAM系のマグネシウム合金は、高延性で衝撃抵抗力が大きいため、内部機構部品などに適した合金である。
【0006】
マグネシウム合金はその結晶構造が六方晶でありすべり面が少なく、他の金属と比べて塑性加工性に劣る。そこで従来では塑性加工性を向上させるために、マグネシウム合金の冷却速度制御や結晶微細化剤の添加によって、結晶粒径の微細化を行う方法が提案されている。しかし、結晶粒径の微細化は、押出し・圧延等の1次加工時の加工歪量と加工温度の操作で、ある程度制御できることが分かってきている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、素形材の段階で鋳造欠陥や介在物の偏析が多い場合は、1次加工時にそれらの欠陥を改善することは容易ではない。つまり、図10に示すマグネシウム合金素形材がそれであり、この素形材4は、マグネシウム合金結晶相5の結晶粒界に析出物領域6が偏析して存在し鋳造時に発生する内部空隙7が結晶粒界に析出している。
【0008】
一般的に、溶融したAZ系マグネシウム合金が凝固する場合、マグネシウムの種結晶が成長するにつれて、マグネシウムに固溶しにくい成分(金属や酸化物)は結晶粒界に偏析してゆき、粒界近傍において金属間化合物等の状態で析出することが多い。また、マグネシウムに固溶しにくい気体成分は、凝固時にマグネシウム結晶粒界に集積し、それが空隙7となって素形材4内部に残る。
【0009】
鋳造欠陥や介在物が偏析している個所は、素形材4から薄板、そして薄板から成形品へと塑性加工するときにクラックの起点になりやすいため、このような素形材4は加工性に乏しい。特にすべり系が少なく延性に乏しいマグネシウム合金は、材料の品質が加工性を大きく左右する。このようなマグネシウム合金の加工性を向上させるためには、薄板の元材となる素形材の鋳造欠陥及び介在物を低減し、かつその偏析を防ぐことが望ましい。
【0010】
そこで本発明は上記実情に鑑みて、金属組織の鋳造欠陥、介在物の低減及び偏析防止によって、薄板に押出し・圧延等の1次加工する際あるいは加工された薄板をさらに鍛造等の2次加工する際の塑性加工性を向上させることのできるマグネシウム合金素形材の鋳造方法を提供することを目的とするものである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明のマグネシウム合金素形材の鋳造方法は上記目的を達成するために、ASTM規格で定めるAZ31マグネシウム合金材料であるマグネシウム合金材料を溶解装置である坩堝内に投入し、酸素遮断した状態で坩堝内のマグネシウム合金材料を溶解してから冷却鋳型に供給した後、溶融状態のマグネシウム合金を冷却速度1〜20K/secで冷却して凝固させ、この凝固したマグネシウム合金を鋳塊が連続するようにして冷却鋳型から引き抜くことによって、マグネシウム合金素形材を鋳造することを特徴とするものである。
【0024】
溶融状態の前記マグネシウム合金が冷却鋳型内で凝固する際、凝固したマグネシウム合金部分の引抜時間と停止時間とを交互に行うことで時間的に断続的に引き抜くことにより、慣性力及び振動によって凝固が進行する固液界面に存在する気体成分や介在物を、液体部分に押し出すこととなり、素形材内部に包含される気体成分や介在物を低減することができる。
【0025】
この鋳造方法では、冷却鋳型での冷却速度を3〜8K/secとする方法を採用できる。この、3〜8K/secの冷却速度は、冷却によってマグネシウムのデンドライト相が成長しつつ凝固するも、素形材内部の熱伝導によって部分的に焼鈍が行われてデンドライト相がゴースト化するのに望ましい冷却速度である。先述のように、ゴースト化したデンドライト相の枠組みに析出物領域が取り残され、結晶粒内に析出物領域が分散した状態で存在すると、介在物が分散して存在するため、塑性加工性に優位な素形材を得ることが出来る。
【0026】
この鋳造方法では、マグネシウム合金材料が酸素遮断した状態で溶解されて酸素と接触して燃焼するのを防ぐが、酸素遮断するためには、坩堝を不活性ガス雰囲気下におくことや溶融状態のマグネシウム合金にフラックスを入れて液面に酸素が接触しないようにする方法を採用できる。不活性ガスとしてはアルゴンガスやヘリウムガス及びSF6を混ぜた空気等が用いられる。フラックスとしては塩化カリウムや塩化マグネシウムを主体とする防燃フラックスを用いることができる。フラックスを材料に入れる場合は、溶融状態のマグネシウム合金表面からの金属の蒸発を防止する効果もある。
【0027】
上記方法において、溶解装置に投入するマグネシウム合金材料を粒子状の固体とし、溶解装置周辺雰囲気を不活性雰囲気に保った状態で材料投入を行うことによれば、マグネシウム合金を溶解する坩堝に保持炉が具備されていなくとも、粒子状の固体材料を連続的または断続的に投入することで、材料投入が途切れることなく連続鋳造を行うことができる。特に、酸素遮断のために坩堝内のマグネシウム合金表面に保護雰囲気を作り出しているときは、材料投入のために不活性雰囲気を開放してしまうと、再度不活性雰囲気を作るのにタクトを消費するが、この方法によれば開放せずとも材料の投入ができるので、タクトの短縮を達成することができる。
【0028】
上記方法において、冷却鋳型の内壁断面形状を矩形状とし、その短辺の長さが坩堝側と引抜手段側とで異なるように、前記内壁の少なくとも一部にテーパが形成されるようにすれば、引き抜き時のマグネシウム合金にかかる応力を増減させることができ、材料特性の改質を行うことや、鋳塊と鋳型との摩擦を少なくすることによる鋳塊切れの防止を図ることができる。
【0029】
上記方法において、溶解装置である坩堝の合金収容部分及び/または冷却鋳型の材質を黒鉛にすれば、熱伝導性に優れ、材料の加熱・冷却をスムーズに実施することができ、好適であるが、その他、マグネシウム合金と反応しにくい材質であれば良く、素形材に混入すると耐食性を著しく阻害する銅、ニッケル、鉄を含まない材質が望ましい。なお、黒鉛がマグネシウム合金に混入すると結晶粒が微細化する事実も報告されている。
【0030】
上記方法において、溶解装置内で溶融されたマグネシウム合金の表面または溶解装置の周辺部を酸素遮断できる構造、例えば真空引きや不活性ガス置換ができるように、例えば溶解装置の外側にチャンバを設け、溶解装置の置かれている雰囲気を制御できる構造にすることが望ましい。また、溶融状態のマグネシウム合金からは気化が頻繁に起こるため、金属蒸気が大気中に放出されないようにするためにもチャンバを設けることが好ましい。
【0031】
上記方法において、溶解装置に開閉可能な蓋を備えることによれば、溶解装置外部への金属蒸気の拡散を抑え、拡散した金属蒸気が前記チャンバ内壁等に付着し凝固した粉末金属の発生を低減し、粉末金属の蓄積により材料歩留まりの低下と、自然発火の危険性を防止することができる。なお、上記方法で述べたように、坩堝内のマグネシウム合金材料を酸素遮断する手段としてフラックスを材料に混ぜて溶融状態のマグネシウム合金表面からの蒸発を制御することも可能ではあるが、その場合は素形材にフラックス成分が混入するおそれがあるため、溶解装置に蓋をつけるという装置の改善で対応することが望ましい。
【0032】
上記方法において、溶解装置の側面に横型の冷却鋳型が接続され、水平方向にマグネシウム合金を引き抜く鋳造方法であれば、溶融状態のマグネシウム合金液面に浮く不純物、及び坩堝の底面に蓄積する不純物の巻き込みを防ぎ、延性に富んだ良好な組織のマグネシウム合金素形材を製造することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施の形態について、図1〜図8を用いて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明を具現化した1例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0034】
図1は本実施形態に係るマグネシウム合金素形材1の金属組織の状態を模式的に示した断面図である。このマグネシウム合金素形材1は、アルミニウム含有量が3%程度、亜鉛含有量が1%程度のマグネシウム合金AZ31を、後述する鋳造方法により、板状に成形したものであり、マグネシウム結晶粒内にマグネシウム合金結晶相2と、複数の析出物領域(マグネシウム以外のアルミニウムや亜鉛、マンガンのいずれか1つ以上を含む)3が離れて存在する。この状態は、マグネシウムのデンドライト相の枠組によって分断された析出物領域3の成分が、デンドライト相がゴースト化して結晶粒界が現れた状態であっても、結晶粒内に分散した状態のまま保たれている状態と考えられる。
【0035】
以下の表1に、AZ31マグネシウム合金のASTM(American Society for Testing and Materials・米国材料試験協会)規格及び、本実施形態に係るマグネシウム合金素形材1の成分比率を示す。単位は重量%である。なお、本実施形態では、ICP発光分光分析によって成分測定を行った。
【0036】
【表1】
Figure 0004294947
また、図2に本実施形態に係るマグネシウム合金素形材1の金属組織の走査型電子顕微鏡(SEM)による断面写真を示す。図中に示す、31〜34は走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型特定X線検出装置(SEM−EDS)測定の測定点を示しており、以下の表2にその各測定点における元素構成比率(重量%)を示す。
【0037】
【表2】
Figure 0004294947
本実施形態の素形材全体としての成分比率は、表1に示す通り、ASTM規格内に収まっている。しかし、本実施形態の「析出物領域」すなわち「マグネシウム以外のアルミニウムや亜鉛、マンガンのいずれか1つ以上を含む領域」は、図2の測定点32〜34に示されるような点であるが、表2に示すようにAl、ZnといったMg以外の元素のうち少なくとも一つ以上の元素の比率がASTM規格の規格上限値より大きくなっている。なお、測定点32では、ASTM規格には規定されていないCやOの比率が高くなっているが、これは、この析出物領域に炭化物や酸化物が包含されている可能性を示している。
【0038】
次に、上記析出物領域が、結晶粒に対しどのように分布しているかを、図3(a)、(b)、(c)により示す。図3(a)は上記実施形態に係る、板厚10mmに成形した板状のマグネシウム合金素形材1aの一部分における光学顕微鏡断面写真を示している。結晶粒界8が見られ、平均結晶粒径は約200μm前後であるが、結晶粒の内部に面積相当円直径に換算して数μm〜30μm程度の複数の析出物領域3が離れて存在している。この断面組織においてこの析出物領域3の面積は、多くは25×10-12πm2以上2500×10-12πm2以下となっていて、図3(a)の断面写真では、析出物領域3が1個の結晶粒内部に約30〜40個見られる。個々の析出物領域3は、最短で概ね2〜30μm程度離れた状態で点在しており、1個のマグネシウム合金の結晶粒内においては最大約200μm離れた2個の析出物領域3が存在する。
【0039】
また、図3(b)は、板厚5mmに成形した板状のマグネシウム合金素形材1bの一部分における光学顕微鏡断面写真を示す。結晶粒界8が見られ、平均結晶粒径は約80μmである。この断面組織においては、面積が25×10-12πm2以上2500×10-12πm2以下となる析出物領域3は、1個の結晶粒内の約3〜20個見られる。個々の析出物領域3は、最短で概ね1〜40μm程度離れた状態で点在しており、1個のマグネシウム合金の結晶粒内においては最大約180μm離れた2個の析出物領域3が存在する。
【0040】
さらに、図3(c)は、板厚3mmに成形した板状のマグネシウム合金素形材1cの一部分における光学顕微鏡断面写真を示す。結晶粒界8が見られ、平均結晶粒径は約250μmである。この断面組織においては、面積が25×10-12πm2以上2500×10-12πm2以下となる析出物領域3は、1個の結晶粒内に約60〜160個見られる。個々の析出物領域3は、最短で概ね1〜30μm程度離れた状態で点在しており、1個のマグネシウム合金の結晶粒内においては最大約400μm離れた2個の析出物領域3が存在する。
【0041】
このように、本実施形態のマグネシウム合金素形材1は、図10で示した従来の一般的な素形材4のように、マグネシウム合金結晶相5の結晶粒界に析出物領域6が偏析して存在しておらず、鋳造時に発生する空隙7も結晶粒界に析出しておらず、析出物領域3が比較的小さなサイズで結晶粒内に約3〜160個分散している状態であるため、介在物も分散して存在することとなり、マグネシウム合金素形材1を薄板にするための押出し・圧延時に破断を生じにくく、延性に富む。そして薄板に加工した場合も、その薄板は延性に富み、プレス、鍛造等の2次加工を施した場合に加工性に優れたものとなる。なお、析出物領域3が、1個の結晶粒内に3個未満である場合は、析出物領域が分散することによる介在物の分散効果が得られず、この素形材及びこの素形材を1次加工して得られる薄板の塑性加工性が悪くなる。また、160個より多い場合は、個々の析出物領域の距離が短くなり、析出物領域が連結し、比較的大きな介在物が偏って存在しうる状態となり、塑性加工性が悪くなる。
【0042】
表3に本実施形態のマグネシウム合金素形材1から無作為に切り出した試験片の理論的密度に対する比率を測定した結果を示す。なお、本試験片の体積は、外形を機械加工した後寸法測定して計算したものである。
【0043】
【表3】
Figure 0004294947
上記の試験片以外においても、本実施形態におけるマグネシウム合金素形材1の、その合金組成から計算される理論的密度1.78g/cm3に対する比率は98〜100%の範囲内となっている。一方、マグネシウム合金素形材1と同一組成の図10に示す素形材4では、内部に空隙7が多数存在するために、前記理論的密度1.78g/cm3 に対し98%未満の比率(密度が1.744g/cm3以下)となってしまう部分が多い。本実施形態のマグネシウム合金素形材1は、組織が密で内部空隙が少なく、その結果、後工程の押し出しや圧延、及びその後の2次加工において破断しにくく、かつ塗装・乾燥工程(図8)においても、内部気泡の破裂による表面欠陥の問題を回避することができる。
【0044】
本実施形態では、板厚3mm、5mm、10mmとなるように、後述する鋳造方法によってマグネシウム合金素形材1を成形した。この3種の板厚の違いによって、上述の断面組織の特徴及び比率に際立った差異は見られなかった。
【0046】
本実施形態の素形材1の表面をX線回折分析したところ、図4に示すように(0002)面の結晶方位が優先的に現れたパターンとなっている。これは、材料が凝固する際に材料表面から鉛直方向に圧力が加えられたと考えられる。
【0047】
図5に、本実施形態のマグネシウム合金素形材1を作製するための鋳造装置21の構成を示す。
【0048】
この鋳造装置21は、マグネシウム合金材料13を収容してヒータ(加熱手段)12によりマグネシウム合金材料13を溶解する溶解装置としての坩堝11と、この坩堝11に接続され、水冷パイプ(冷却手段)20により溶融状態のマグネシウム合金13aを冷却して所望の形状に凝固させる冷却鋳型15と、凝固したマグネシウム合金13bを冷却鋳型15内から鋳塊が連続するようにして引き抜く引抜手段であるダミーバー16とピンチロール17とから構成される。
【0049】
この鋳造装置21において、坩堝11に投入されたマグネシウム合金材料13はヒータ12によって加熱され、溶融状態のマグネシウム合金13aとなる。マグネシウム合金は溶融状態で酸素に接触すると激しく燃焼してしまうため、溶融時は酸素遮断することが望ましい。本実施形態では、酸素遮断する方法として坩堝11をチャンバ14内に設置し、図示はしないが真空引き及び不活性ガスの投入ができる構成になっている。
【0050】
溶融状態のマグネシウム合金13aは坩堝11に溜められているが、坩堝11に直結した冷却鋳型15内にも流入するため、ダミーバー16を冷却鋳型15内部にチャンバ14の下部側方からピンチロール17により、出し入れできる構成になっている。なお、鋳造工程途中はダミーバー16に代わり、先に引き抜かれて凝固したマグネシウム合金13bが溶融状態のマグネシウム合金13aの流出を抑制する構成となる。
【0051】
冷却鋳型15は溶融状態のマグネシウム合金13aからの熱を吸収し周辺部に放出するが、本実施形態においては冷却鋳型15の周辺に水冷パイプ20等の冷却手段を配置して前記放出する熱を奪う構成としている。その際、水の流量及び温度を調節できる構成とする。このような冷却手段としては水冷以外に空冷を用いて構成することも可能である。
【0052】
冷却鋳型15の内壁の断面形状は、その内壁内で凝固したマグネシウム合金13bつまりマグネシウム合金素形材1の断面形状となるが、本実施形態においては、このマグネシウム合金素形材1の断面形状が幅50mm×厚さ3または5または10mmの矩形状となるように、冷却鋳型15の内壁断面形状を定めている。また、冷却鋳型15の冷却部分の長さは170mmであるが、冷却鋳型15内で鋳造するマグネシウム合金素形材の形状及び冷却水量等を勘案して、別の長さに設定することも可能である。
【0053】
なお、上記のように構成される鋳造装置を用いてマグネシウム合金素形材1を鋳造する際、凝固したマグネシウム合金13b(鋳塊)が途切れ易い場合は、図6に示すように、坩堝11に対してピンチロール17側が徐々に広くなるように冷却鋳型15の内壁にテーパ15aをつけてやり、冷却鋳型15との摩擦を低減することで、鋳塊を途切れにくくしてやることが可能である。また、逆に、図7に示すように冷却鋳型15の坩堝11との接続部分に、坩堝11側に対してピンチロール17側が狭くなるようにテーパ15bをつけてやると、溶融状態のマグネシウム合金13aの凝固が進行する部分に適度な応力が、引き抜き方向に対し垂直な方向に加わり、素形材に巻き込まれる介在物や気体の量を低減することができる。
【0054】
マグネシウム合金材料13を収容し溶解する坩堝11は内部深さが220mmであり、その底面から約10mm鉛直方向上方に、冷却鋳型15が接続されており、溶融状態のマグネシウム合金13aを冷却鋳型15内に引き抜く際に、坩堝11の底面に蓄積する不純物19が、マグネシウム合金13bに巻き込みにくい構成となっている。
【0055】
図5に示す材料投入シュータ(材料供給手段)18は、チャンバ14を開閉することなく坩堝11内にマグネシウム合金材料13を連続投入できるように、チャンバ14の上部に設置されている。なお、初期に投入するマグネシウム合金材料13の形状は、坩堝11に収まる大きさであれば特に問題はないが、この材料投入シュータ18を通じて投入する場合は、坩堝11の破損や溶融状態のマグネシウム合金13aの坩堝11外への飛散を防ぐために、直径1mm〜10mm程度の粒子状やチップ状のものが望ましい。
【0056】
なお本実施形態の鋳造装置21は、坩堝11の側面に冷却鋳型15が接続される横型タイプであるが、坩堝11の底面に冷却鋳型15が接続された縦型タイプのものを用いることも可能である。
【0057】
また加熱手段としてのヒータ12には、10kW程度の出力が実現できる高周波加熱ヒータを用いているが、材料を780℃以上に加熱できる容量を持っている加熱手段であればよく、高周波加熱ヒータに限定されない。
【0058】
また本実施形態における坩堝11および冷却鋳型15は黒鉛でできており、熱伝導性に優れるとともに溶融状態のマグネシウム合金13aと反応しにくい材質である。また、マグネシウム合金に混入した際に材料の耐食性を著しく阻害する銅、ニッケル、鉄を含む材料は、坩堝11や冷却鋳型15の材質としては望ましくない。
【0059】
なお、溶融状態のマグネシウム合金13aからは常時蒸発が起こり、金属蒸気がチャンバ14内壁等に触れると凝固して粉末となる。このことは材料歩留まりを低下させるだけでなく、自然発火のおそれがあって危険であるため、坩堝11には開閉可能な蓋(図示せず)を具備するのが望ましい。さらに材料投入時のみ蓋を開け、坩堝11外への金属蒸気の流出を防ぐように構成するのが望ましい。
【0060】
ダミーバー16は、マグネシウム合金材料13を溶解する際の高温(約650〜800℃)に耐え、かつ強度を持った材料でできているのが望ましいが、本実施形態ではステンレス製のものを用いている。
【0061】
次に、上記のように構成された鋳造装置21を用いたマグネシウム合金素形材の連続鋳造方法について具体的に説明する。
【0062】
まず、マグネシウム合金材料13を坩堝11内に投入し、チャンバ14を閉めて密閉状態とする。
【0063】
次にチャンバ14内部を真空引きした後、不活性ガス、好ましくはアルゴンガスを導入して内部を不活性ガスで満たす。この際のチャンバ14内の圧力は例えば、真空引きの際は0.1〜0.2Torr(13.3〜26.6Pa)、不活性ガス導入時は14〜18Torr(1870〜2400Pa)としうるが、これに限定されない。また、不活性ガス導入時にチャンバ14に気体の放出口を設け、そこから初期に内部に入っていた空気層を排出するようにすれば、真空引きを省略した工程とすることもできる。
【0064】
次に冷却鋳型15周辺に配置した冷却手段である水冷パイプ20に水を流し、冷却鋳型15及びダミーバー16を冷却する。このときの水量は0.5〜2.0l/min、水温は20〜35℃に制御したが、この条件に限定されない。
【0065】
次いでヒータ12で坩堝11を加熱してマグネシウム合金材料13を溶解させる。AZ31マグネシウム合金は融点630℃以上に加熱されれば溶解するが、本実施形態では溶融金属の流動性及び金属内部の温度勾配を勘案し、750〜780℃で保つようにしている。溶融金属の温度が低いと鋳塊(凝固したマグネシウム合金13b)が途切れやすいという実験結果からである。これは、溶融金属の温度が低温であると金属の冷やされ方にムラが生じ、鋳造時に固液界面が複数個所に発生し、連続的な凝固が阻害されるためと考えられる。
【0066】
また、上記温度に溶融金属を制御すると流動性が増し、表面張力が減少して内部に含まれる気体が抜けやすい状態になり、結果的に成形品内部に残るボイド(空隙、空洞)等の鋳造欠陥が低減されると考えられる。一方、溶融金属の温度を必要以上に高くすることは、エネルギーを無駄にすることに加え、溶融金属の蒸気圧増加のために坩堝11やチャンバ14への粉末状金属の付着量を増加させるので好ましくない。
【0067】
次にピンチロール17を回転させてダミーバー16を引き抜いていく。本実施形態ではこのときの引き抜き速度を、45〜125mm/minに制御した。なお、本実施形態では断続的に引き抜く様式で行ったため、例えば100mm/minの引き抜き速度の場合、10mm/secの速度で5mm引き抜き、その状態で2.5sec停止するといった時間的な断続的引き抜きの条件で、総合して100mm/minの引き抜き速度となるようにして鋳造を行った。また、ピンチロール17の回転を正回転、逆回転を組み合わせて制御することで、引き抜きと押し込みを繰り返しながら、マグネシウム合金13bを引き抜いていくことも可能である。
【0068】
なお、停止時間を与えることなく、一定速度で時間的に連続的にマグネシウム合金13bを引き抜く場合に比べ、本実施例のように引抜時間と停止時間とを交えて時間的に断続的に引き抜いた場合は、溶融マグネシウム合金13aの凝固が進行する固液界面に慣性力及び振動が加わり、介在物や気泡が液体部分に押出され、従って介在物やボイド(空隙)の少ない、より塑性加工性に優れた素形材を成形することが期待できる。
【0069】
ダミーバー16が十分引き抜かれ、凝固したマグネシウム合金13bがピンチロール17の位置に達したならば、この状態のマグネシウム合金13bがダミーバー16の役割を果たす。
【0070】
冷却鋳型15から引き抜き出された直後のマグネシウム合金13bは、約100℃またはそれ以下の温度となっている。この鋳造装置21においては、冷却部分が170mmの冷却鋳型15を用いた。従って100mm/minの速度でマグネシウム合金13bを引き抜いた場合、坩堝内では780℃であったマグネシウム合金が170mmを通過する間に、すなわち1.7分間(102秒)で100℃まで冷却されることになるため、約6.7K/secの冷却速度を実現したことになる。同様に45mm/minの速度でマグネシウム合金13bを引き抜いた場合は、3.0K/secの冷却速度となり、125mm/minの速度でマグネシウム合金13bを引き抜いた場合は、8.3K/secの冷却速度となる。
【0071】
鋳造によって坩堝11内のマグネシウム合金材料13aが減少してくると、材料が凝固する固液界面に加わる圧力が減少し、鋳塊(マグネシウム合金13b)が途切れやすくなる。そこで本実施形態では、坩堝11内の材料が初期投入量の半分程度に減少すると材料投入シュータ18から材料を追加供給する。その際、チャンバ14内の雰囲気をリークする必要はなく、場合によっては鋳造を行いながら材料供給することも可能である。この材料供給の方法は、一定量材料が減少した後にまとめて供給する断続的供給方法でも、鋳造による材料減少と同時に逐次供給する連続的供給方法のどちらでも可能である。
【0072】
次に、溶融金属の冷却速度と素形材の特徴を確認するための簡易的な鋳造実験を行った。この実験例1で用いた装置の基本構造は上記の実施形態のものと同じであるが、装置簡略化のために、チャンバ14とシュータ18を省略して坩堝11に蓋を取り付け、材料の追加投入は出来ないが、小規模な構造とした。
【0073】
この実験でも上記実施形態のものと同じAZ31合金材料を使用し、冷却速度を0.5K/sec、1.0K/sec、3.0K/sec、8.0K/sec、16K/sec、20K/sec、24K/secとなるように制御して鋳造実験を行った。その結果を以下に記述する。
【0074】
冷却速度が0.5K/secの場合は、結晶粒界が太くはっきりした線をなすものとなり、結晶粒内には面積が25×10-12πm2以上2500×10-12πm2以下の析出物領域が見当たらない素形材となった。この素形材では、析出物領域が結晶粒界に偏析しているために塑性加工性が悪いと考えられる。
【0075】
冷却速度が1.0K/secでは、結晶粒界が明瞭ながらも、結晶粒内に面積が25×10-12πm2以上2500×10-12πm2以下の析出物領域が結晶粒1個につき2〜10個ほど確認できた。冷却速度が3.0K/sec、8.0K/sec、16K/secと速くなるにしたがって、結晶粒内に面積が25×10-12πm2以上2500×10-12πm2以下の析出物領域の数は多くなり、結晶粒1個につき5〜160個程度となった。
【0076】
一方、冷却速度が20K/secでは結晶のデンドライト相の痕跡が消失せず、結晶粒界は確認できるものの、確認しにくい断面組織となった。
【0077】
冷却速度が24K/secでは、結晶のデンドライト相が残り、結晶粒は確認できなかった。この状態の素形材は、加工性に乏しいデンドライト相が素形材全体に形成され、塑性加工性を悪化させている状態であると考えられる。
【0078】
このAZ31合金の冷却速度別素形材断面組織の特徴を以下の表4にまとめる。
【0079】
【表4】
Figure 0004294947
以上の結果より、結晶粒内に析出物領域が分散して存在している断面組織である事を特徴とするマグネシウム合金素形材を作成するには、冷却速度が1〜20K/secの範囲内である事が望ましいといえる。ただし、加工性に乏しいデンドライト相が消失しつつも、介在物を含んだ上記析出物領域が十分に分散した状態を実現するには3〜8K/sec程度の冷却速度がもっとも望ましいと考えられる。
【0080】
次に、実験例2として、純マグネシウム、AZ21、AZ61、AZ91、AM60の各材料及び、アルミニウムが約11%含有された材料を使用して、上記実験例1と同様の鋳造実験を行った。ここでは、冷却速度を3K/sec及び8K/secとして鋳造を行い、各々の材料において上述の、「結晶粒内に析出物領域が分散して存在している断面組織」になるかどうかの確認を行った。
【0081】
以下の表5に、本実験例にかかる純マグネシウム、AZ21、AZ61、AZ91、AM60及び、アルミニウムが約11%含有された各種合金の鋳造後の成分比率測定結果を示す。なお、この表における成分比率の単位は重量%である。
【0082】
【表5】
Figure 0004294947
本実験例において、冷却速度3K/sec及び8K/secで鋳造を行って作製した上記材料の断面組織を観察した。その結果、冷却速度が3K/secでも8K/secでも同一金属では、ほぼ同様の断面組織が観察された。
【0083】
純マグネシウムの鋳造材は比較的明瞭な結晶粒界が確認できたが、結晶粒内部には析出物領域が確認できなかった。
【0084】
一方、AZ21、AZ61、AZ91、AM60の各合金では、実施形態に示すAZ31の断面組織と同様に結晶粒内部に面積が25×10-12πm2以上2500×10-12πm2以下となる析出物領域が離れて存在している事が確認できた。
【0085】
なお、アルミニウムを11%含有している高アルミニウム含有合金鋳造材では、析出物領域が網の目状に繋がって広範囲に広がったような組織となり、明瞭な結晶粒界が確認できなかった。
【0086】
これら各合金を3K/sec及び8K/secの冷却速度で鋳造した際の、材料別断面組織の様態を以下の表6にまとめた。
【0087】
【表6】
Figure 0004294947
上記の結果より、本発明の方法によって、AZ系またはAM系のマグネシウム合金素形材を作製するに当たり、結晶粒内部に析出物領域が分散して存在する特徴を有したマグネシウム合金素形材を得るためには、アルミニウムを1.8〜9.1wt.%程度含有しているのが望ましいと考えられる。また、マグネシウム、アルミニウム以外の元素成分を含有している場合でも、その元素含有比率がアルミニウムの含有比率を下回り、アルミニウムが1.8〜9.1wt.%含有されている場合は、上記のように結晶粒内部に析出物領域が分散して存在する特徴を有したマグネシウム合金素形材となると考えられる。
【0088】
また、冷却の速度においては、AZ31合金で確認した1〜20K/secの範囲での冷却速度であれば、上記アルミニウムを1.8〜9.1wt.%程度含有しているAZ系またはAM系マグネシウム合金において、おおむね、上記の「結晶粒内部に複数の析出物領域が離れて存在する特徴を有したマグネシウム合金素形材」を作製する事が出来ると予測できる。
【0089】
また、冷却速度が20K/secよりも速い場合はデンドライト相が残留してマグネシウムの結晶粒界が現れない組織となり、1K/secよりも遅い場合はデンドライト相が完全に消失し、析出物領域3がマグネシウム合金の結晶相2に固溶もしくは移動・偏析した組織になってしまう。
【0090】
上記のように本発明では、溶体化処理することなく、結晶粒界の現れた、複数の析出物領域が結晶粒内に離れて存在する特徴ある素形材を作製することが出来る。
【0091】
次に本発明に係るマグネシウム合金素形材1の塑性加工性の優位性についての実験例を述べる。
【0092】
本実施形態に係るAZ31マグネシウム合金素形材1において、板厚3.0mmに成形したもの及び板厚5.0mmに成形したもの、及び板厚10.0mmに成形したものを各々圧延し、それぞれ板厚0.5mmの薄板(順に試験板1、2、3とする)を得た。圧延は、素形材が割れないよう圧下率を約10〜30%とした冷間圧延で複数回実施し、各圧延工程の間では450℃で10分間の焼鈍を行った。最終の冷間圧延にて板厚0.5mmとした後、約200℃で1時間の歪取り焼きなましを行った。なお、実際の圧延回数は、試験板1が6回、試験板2が7回、試験板3が12回であった。
【0093】
また、本実施形態ではない、市販の押出し加工及び圧延を経て作られた板厚0.5mmのマグネシウム合金薄板(試験板4)を用意した。なお、これら4個の試験板の平均結晶粒径は約7〜12μmであった。
【0094】
これらの試験板を図9に示すような8角形のブランク形状(約40mm×40mmでコーナー部は6mm切断)に切り、ポンチ肩R2.0mm、ポンチ外形25mm×25mm、四隅R2.0mmの角筒絞り試験を行った。クリアランスは片側で0.1mmとして、金型下降速度を制御し、絞り速度を変えながら実験を行った。厳密には100mm/sec、70mm/sec、50mm/sec、20mm/sec、10mm/sec、5mm/sec、2mm/sec、1mm/sec、0.75mm/sec、0.5mm/sec、0.1mm/secと絞り速度を変化させて実験を行った。
【0095】
絞り速度が速い場合は成形品の四隅にクラックが入るが、速度を遅くして成形すると、クラックが入らずに成形品が得られる。クラックが入らない絞り速度における最大の速度を「限界絞り速度」とし、各々の試験板の限界絞り速度を求めた。なお金型温度は250℃、200℃、150℃に設定し、潤滑剤として二硫化モリブデン系スプレー剤を使用した。また、試験には複数個のブランクを用意し、各条件3回以上実施してクラックの入り方を目視確認し、その平均的状態から限界絞り速度を定めた。
【0096】
以下の表7に上記4個の試験板の限界絞り速度を示す。なお、限界絞り速度の単位は、mm/secである。
【0097】
【表7】
Figure 0004294947
本実験から、本実施形態に係るマグネシウム合金素形材1を圧延して作られた試験板1、2、3はいずれも市販の板材(試験板4)に比べて、絞り速度が10倍程度速い速度でもクラックが入りにくい、すなわち塑性加工性に優れていることが言える。上記実験結果は、本実施形態に係るマグネシウム合金素形材1の塑性加工における優位性を確認した一つの実験例であるが、絞り加工だけでなく、鍛造や曲げ変形といった別の塑性加工に対しても同様の効果が期待できる。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、金属組織内の空隙や空洞等の鋳造欠陥、介在物の偏析を防止できるので、延性に富んだ素形材が得られる。そのため、本発明の素形材のように、複数の析出物領域が結晶粒内に離れて存在していると、押出しや圧延等の1次加工を施した際に、結晶粒が素形材全体に渡って微細で均一な大きさに整粒化され、加工性を悪化させる大きな結晶粒が少なくなり、塑性加工性が良好となる。その素形材は、押出しや圧延等の1次加工を施して薄板にする際、また、この薄板に鍛造等の2次加工を施す際に、その欠陥部分が加工時にクラックの起点になり破断するのを防止でき、素形材をそのまま圧延して塑性加工用薄板に用いた場合には工程を簡略化してコスト低減を図ることもできる。さらに加工後の成形品を塗装・乾燥するときにも、内部気泡の破裂による表面欠陥の問題を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のAZ系マグネシウム合金素形材の金属組織を模式的に示した断面図。
【図2】同実施形態のAZ系マグネシウム合金素形材の走査型電子顕微鏡(SEM)による断面写真。
【図3】同実施形態の板厚が異なる3枚の板状のAZ系マグネシウム合金素形材の光学顕微鏡による断面写真であり、(a)は板厚10mmの場合、(b)は板厚5mmの場合、(c)は板厚3mmの場合のそれぞれの断面写真。
【図4】同実施形態における同マグネシウム合金素形材の表面状態におけるX線回折パターンを示すグラフ図。
【図5】同実施形態における鋳造装置を概略的に示す縦断面図。
【図6】同実施形態において、ピンチロール側が広くなるようにテーパがつけられた鋳造装置の要部を示す縦断面図。
【図7】同実施形態において、ピンチロール側が狭くなるようにテーパがつけられた鋳造装置の要部を示す縦断面図。
【図8】マグネシウム合金材料からマグネシウム合金部品を製造する工程を示す一般的な概略図。
【図9】角筒絞り成形評価用マグネシウム合金薄板ブランクを示す概略図。
【図10】従来の鋳造方法及び鋳造装置によって作製されたAZ系マグネシウム合金素形材の金属組織を模式的に示した断面図。
【符号の説明】
1 本実施形態によるマグネシウム合金素形材
2 マグネシウム合金結晶相
3 析出物領域(アルミニウムや亜鉛、マンガンの平均濃度が合金組成の比率に対し高い領域)
4 従来の鋳込み式鋳造によるマグネシウム合金素形材
5 マグネシウム合金結晶相
6 析出物領域(アルミニウムや亜鉛、マンガンの平均濃度が合金組成の比率に対し高い領域)
7 ボイド(空隙・空洞)
8 結晶粒界
9 マグネシウム合金薄板から作製したブランク
11 坩堝(溶解装置)
12 ヒータ(加熱手段)
13 マグネシウム合金材料
13a 溶融状態のマグネシウム合金
13b 凝固したマグネシウム合金
14 チャンバ
15 冷却鋳型
15a、15b テーパ
16 ダミーバー(引抜手段)
17 ピンチロール(引抜手段)
18 材料投入シュータ(材料供給手段)
19 不純物
20 水冷パイプ(冷却手段)
21 鋳造装置
31〜34 走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型特定X線検出装置(SEM−EDS)測定における測定点

Claims (7)

  1. ASTM規格で定めるAZ31マグネシウム合金材料であるマグネシウム合金材料を溶解装置内に投入し、酸素遮断した状態で溶解装置内のマグネシウム合金材料を溶解してから冷却鋳型に供給した後、溶融状態のマグネシウム合金を1〜20K/sの冷却速度で冷却し凝固させる工程と、凝固した金属の鋳塊が連続するように引抜手段で引き抜く工程とを含むことを特徴とするマグネシウム合金素形材の鋳造方法。
  2. 凝固した金属の鋳塊を、引き抜きと停止とを繰り返し行うことで、時間的に断続的に引き抜くことを特徴とする請求項に記載のマグネシウム合金素形材の鋳造方法。
  3. 溶融状態のマグネシウム合金を冷却速度3〜8K/secで冷却し凝固させることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のマグネシウム合金素形材の鋳造方法。
  4. 溶解装置に投入するマグネシウム合金材料の形状を粒子状の固体とし、溶融状態のマグネシウム合金を、溶解装置の周辺雰囲気を不活性に保った状態で冷却鋳型に供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマグネシウム合金素形材の鋳造方法。
  5. 冷却鋳型は、その内壁断面形状が矩形状であり、その短辺の長さが溶解装置側と引抜手段側とで異なるように、前記内壁の少なくとも一部にテーパが形成されている状態で鋳造することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のマグネシウム合金素形材の鋳造方法。
  6. 溶解装置の合金収容部分及び/または冷却鋳型の材質が黒鉛であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のマグネシウム合金素形材の鋳造方法。
  7. 溶解装置の側面に冷却鋳型が接続され、水平方向にマグネシウム合金を引き抜く事を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のマグネシウム合金素形材の鋳造方法。
JP2002363846A 2001-12-14 2002-12-16 マグネシウム合金素形材の鋳造方法 Expired - Fee Related JP4294947B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002363846A JP4294947B2 (ja) 2001-12-14 2002-12-16 マグネシウム合金素形材の鋳造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001382073 2001-12-14
JP2001-382073 2001-12-14
JP2002363846A JP4294947B2 (ja) 2001-12-14 2002-12-16 マグネシウム合金素形材の鋳造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003239033A JP2003239033A (ja) 2003-08-27
JP4294947B2 true JP4294947B2 (ja) 2009-07-15

Family

ID=27790880

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002363846A Expired - Fee Related JP4294947B2 (ja) 2001-12-14 2002-12-16 マグネシウム合金素形材の鋳造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4294947B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006124795A (ja) * 2004-10-29 2006-05-18 National Institute Of Advanced Industrial & Technology マグネシウム合金製筐体
KR20070107757A (ko) * 2005-03-02 2007-11-07 니혼쥬카가쿠고교가부시키가이샤 고증기압 금속 함유 합금의 용해방법
NO20063703L (no) 2006-08-18 2008-02-19 Magontec Gmbh Magnesium stopeprosess og legeringssammensetning
JP4613965B2 (ja) 2008-01-24 2011-01-19 住友電気工業株式会社 マグネシウム合金板材
JP5415739B2 (ja) * 2008-10-31 2014-02-12 宮本工業株式会社 鍛造用マグネシウム合金
JP5356777B2 (ja) * 2008-10-31 2013-12-04 宮本工業株式会社 マグネシウム合金の鍛造方法
JP5789540B2 (ja) * 2012-02-22 2015-10-07 株式会社神戸製鋼所 加熱装置、連続鋳造装置および連続鋳造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2003239033A (ja) 2003-08-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
TWI607093B (zh) 金屬合金複合材料及其製造方法
US8808423B2 (en) Magnesium-based alloy for high temperature and manufacturing method thereof
US9702028B2 (en) Magnesium-based alloy powder and magnesium-based alloy molded article
JP3025656B2 (ja) チルベント
KR101264219B1 (ko) 마그네슘계 합금 및 그 제조방법
CN100588733C (zh) 一种半固态成形用镁合金及其半固态坯料制备方法
CN108330362A (zh) 一种低孔隙率的高强耐热铸造铝铜合金及制备工艺
CN101914713A (zh) 超大规格高强耐热镁合金锭坯半连续铸造工艺
US20140238191A1 (en) Magnesium-based alloy powder and magnesium-based alloy molded article
JP4294947B2 (ja) マグネシウム合金素形材の鋳造方法
JP2011099136A (ja) 耐熱マグネシウム合金および合金鋳物の製造方法
Choudhary et al. Microstructure and mechanical properties of Al-Si alloys processed by strain induced melt activation
US20030159797A1 (en) Magnesium alloy cast and casting method thereof
JP2006297413A (ja) マグネシウム合金鋳塊の製造方法
JP4141207B2 (ja) 高強度アルミニウム合金鋳物及びその製造方法
Kim et al. Role of Ca in hot compression behavior and microstructural stability of AlMg5 alloy during homogenization
CN113652565B (zh) 一种高强度高导热镁合金的制备方法
CN113061791B (zh) 一种镁合金、镁合金铸件及其制造方法
JP4263463B2 (ja) マグネシウム合金鋳塊とその製造方法
JP4651335B2 (ja) チタンインゴットの製造方法
Fujii et al. Al-Sc master alloy prepared by mechanical alloying of aluminum with addition of Sc2O3
Chen et al. Effects of pressure and aging treatment on microstructures and mechanical properties of rheo-squeeze casting Mg–3Nd–0.2 Zn–0.4 Zr alloy
Wang et al. Solidification pattern and microstructures of AZ91D magnesium alloy through rheoforming
CN115398017B (zh) 镁合金及其制造方法
Asano et al. In situ formation and refinement of Mg2Si in fiber-reinforced AZ91D magnesium alloy

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051213

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080627

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080708

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080905

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090310

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090409

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120417

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130417

Year of fee payment: 4

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees