JP2006294294A - 固体高分子形燃料電池用セパレータ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、優れた親水性及び撥水性を兼備する流路を備えた固体高分子形燃料電池用セパレータ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の燃料電池用セパレータは、基板の凹部表面に水管理層が形成され、該水管理層が、エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有している。本発明セパレータは、例えば、(i)基板の凹部の表面に、エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有する水管理層を形成する工程、及び (ii)水管理層に光触媒含有層を接触させ、光触媒含有層を通じて水管理層にエネルギーを照射する工程を経て製造される。
【選択図】 図4

Description

本発明は、固体高分子形燃料電池用セパレータ及びその製造方法に関する。
燃料電池は、燃料である水素ガスと酸化剤ガスである酸素により以下の反応を起こさせることにより、起電力を発生させている。
燃料極: H2 → 2H++2e-
空気極: 2H++2e-+(1/2)O2 → H2
燃料電池は、発電の際に発熱を伴い、電解質膜内の温度上昇により膜内の含水量が低下し、そのためにイオン伝導性が低下する。
燃料極は、電解質膜のドライアップを防ぐための水分保持性(親水性)と、H2の吸着サイトを確保するためのある程度の撥水性を有していることが必要である。
一方、空気極側では電池反応に伴って水を生成している。この水は、逆浸透により燃料極側へ水分を補給する役目を果たすが、高電流密度域での多量の水分発生等により、空気極のO2吸着サイトを埋めてしまいフラッディングを起こす原因となる。このため、空気極は、O2の吸着サイトを確保するための撥水性を備えていることが必要となる。
このような燃料電池の中でも、固体高分子膜を2種類の電極で挟み込み、更にこれらの部材をセパレータで挟んだ構成の高分子電解質形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:以下、「PEFC」と略記する)及びダイレクトメタノール形燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell:以下、「DMFC」と略記する)が注目されている。
例えば、PEFCは、固体高分子膜の両側に空気極(酸素極)、燃料極(水素極)等の電極を配置して単位セルを構成し、この単位セルの両側を燃料電池用セパレータで挟んだ構成となっている。PEFCは、例えば、厚さ20μm〜70μmの高分子電解質の両側に厚さ10μm〜20μmの触媒層からなる燃料極及び空気極を形成して一体化し、触媒層外側に集電材として多孔質の支持層(カーボンペーパー,気孔率約80%)を付し、さらに水素、酸素等の反応ガスの供給路を兼ねるセパレータ(仕切り板)によって挟持されている。
セパレータは、燃料(水素)と酸化剤(空気)が直接反応しないように、これらを隔離し、かつ燃料極で生成する水素イオン(プロトン)を空気極側まで運ぶために重要な役割を果たす。
また、セパレータには、発電過程において生成する生成水を上記ガス用溝から速やかに排出して、上記燃料ガスや酸化剤ガスの流路を確保する機能が要求される。
しかしながら、運転条件により燃料ガス及び酸化剤ガスは加湿されて供給されるため、加湿が多くなりすぎるとセパレータのガス流路に水蒸気による結露が発生し、水滴の量が増加すると、水滴がガスの流路を閉塞してしまい、ガスの供給が低下する問題が発生する。
この生成水及び結露水を速やかに排出しないと、燃料電池の性能が大きく低下する。
このため、生成水や結露水を速やかにセパレータ流路から排出できる特性を流路に持たせるべく、種々の取り組みがなされてきた。
そのような取り組みの一つに、非特許文献1の第12頁に記載されているように、MEA(Membrane Electrode Assembly)において、水を管理する『水管理多孔層』という考え方があり、発生する水の管理及び高分子膜の乾燥チェックを行っている。
この水管理をセパレータに応用した例として、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載の技術がある。
特許文献1では、セパレータ流路の内面を親水処理することで、結露によって発生する水を流路面に濡れ広がりやすくし、水による閉塞を解消しようとしている。
特許文献2は、ガス用溝の濡れ性を向上させるために、セパレータの表面に導電性及び撥水性を有する導電・撥水層を形成させる方法を開示している。
特許文献3は、セパレータの表面に紫外線オゾンを照射してその表面を酸化させる方法を開示している。
特許文献4は、セパレータ流路の内面にシランカップリング剤を用いて撥水層を形成させる方法を開示している。
しかしながら、これら特許文献に記載の技術では、親水性及び撥水性の双方に優れるという相反する性質をセパレータ流路に付与することは、極めて困難である。また、これら特許文献に記載の技術では、セパレータの製造プロセスが複雑になり、生産コストが高くなる問題がある。これは、親水もしくは撥水被膜の密着性を高めるための前処理が必要であること、セパレータの接触抵抗を低減するために親水もしくは撥水被膜の部分的な除去の工程が必要であること、撥水層を形成させるためにプラズマ処理等の前処理が必要であること等の理由に基づく。
特開2001−93539 特開平7−302600号公報 特開2003−142116 特開平11−339827号公報 新エネルギー・産業技術総合研究機構の平成14年度成果報告書「固体高分子形燃料電池システム技術開発事業固体高分子形燃料電池要素技術開発等事業長寿命及び高性能電池の研究開発」(委託先:東芝インターナショナルフュエルセルズ株式会社)
本発明の課題は、優れた親水性及び撥水性を兼備する流路を備えた固体高分子形燃料電池用セパレータ及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねてきた。その結果、セパレータ流路に特定の水管理層を形成したセパレータを用い、該水管理層にエネルギーを照射して、水管理層のエネルギー照射部分を親水性に変化させることにより、所望の固体高分子形燃料電池用セパレータが得られることを見い出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
本発明は、下記1〜7に示す固体高分子形燃料電池用セパレータ又は該セパレータの製造方法を提供する。
1.基板の凹部表面に水管理層が形成された固体高分子形燃料電池のセパレータであって、
前記水管理層が、エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有している、
固体高分子形燃料電池用セパレータ。
2.エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質が、オルガノポリシロキサンである上記1に記載のセパレータ。
3.前記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンである上記2に記載のセパレータ。
4.前記水管理層には光触媒が含有されている上記1〜3のいずれかに記載のセパレータ。
5.前記水管理層は、親水性領域と撥水性領域とを有している、上記1〜4のいずれかに記載のセパレータ。
6.エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有する水管理層を有する凹部が基板上に形成されている固体高分子形燃料電池用セパレータの製造方法であって、
(i)基板の凹部の表面に、エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有する水管理層を形成する工程、及び
(ii)水管理層に光触媒含有層を接触させ、光触媒含有層を通じて水管理層にエネルギーを照射する工程
を備えた、上記5に記載のセパレータの製造方法。
7.エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有する水管理層を有する凹部が基板上に形成されている固体高分子形燃料電池用セパレータの製造方法であって、
(i) 基板の凹部の表面に、(a)エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質及び(b)光触媒を含有する水管理層を形成する工程、
及び
(ii)光触媒を含有する水管理層にエネルギーを照射する工程
を備えた、上記5に記載のセパレータの製造方法。
セパレータ
本発明のセパレータは、基板の少なくとも一方面上に形成された凹部の表面に、水管理層が形成されている。該水管理層は、エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有している。基板に形成された凹部は、発電過程において生成する生成水を速やかに排出して、燃料ガス及び酸化剤ガスの通り道となる流路の役割を果たす。
セパレータとしては、例えば、グラファイト板を削りだして溝加工を施したセパレータ、樹脂にカーボンを練りこんだカーボンコンパウンドのモールド性セパレータ等が挙げられる。
セパレータを金属材料で形成する場合、その形成法の具体例を示せば、例えば、0.05〜3mm厚のステンレス、銅、鉄、チタン、鉄−ニッケル合金等の金属材料を用い、フォトエッチング、切削加工、金型加工等により流路を形成する。流路(凹部)の深さは、通常0.1〜1mm程度である。場合によっては、流路形成の後に、セパレータの耐食性及び電気導電性を向上するために、金めっき又は耐食性の樹脂で覆い、薄型で十分な強度を有し、且つ十分な電気導電性を有するセパレータを形成する。
水管理層
水管理層は、エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有する。水管理層は、触媒反応層で生成する水によるフラッディング及び高分子膜の乾燥というジレンマを回避する役割を果たす。
エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質(以下、「濡れ性変化物質」という)としては、エネルギー照射(露光)により接触する光触媒により濡れ性が変化する材料であって、且つ光触媒の作用によって劣化、分解し難い主鎖を有するものである限り、公知のものを広く使用できる。このような材料としては、例えば、オルガノポリシロキサンを挙げることができる。
オルガノポリシロキサンとしては、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりハロゲノシラン、アルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲及び撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
上記(1)のオルガノポリシロキサンとしては、一般式:
nSiX(4-n) (A)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基又はエポキシ基を示し、Xはアルコキシ基、アセチル基又はハロゲンを示す。nは0〜3の整数を示す。)
で表される珪素化合物の1種もしくは2種以上の加水分解縮合物又は共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
上記Yで示される各基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。
本発明においては、オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
フルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンとしては、公知のフッ素系シランカップリング剤を広く使用でき、その具体例としては、例えば、下記に示すフルオロアルキルシランの1種もしくは2種以上の加水分解縮合物又は共加水分解縮合物が挙げられる。
CF3(CF23CH2CH2Si(OCH33
CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33
CF3(CF27CH2CH2Si(OCH33
CF3(CF29CH2CH2Si(OCH33
(CF32CF(CF24CH2CH2Si(OCH33
(CF32CF(CF26CH2CH2Si(OCH33
(CF32CF(CF28CH2CH2Si(OCH33
CF3(C64)C24Si(OCH33
CF3(CF23(C64)C24Si(OCH33
CF3(CF25(C64)C24Si(OCH33
CF3(CF27(C64)C24Si(OCH33
CF3(CF23CH2CH2SiCH3(OCH32
CF3(CF25CH2CH2SiCH3(OCH32
CF3(CF27CH2CH2SiCH3(OCH32
CF3(CF29CH2CH2SiCH3(OCH32
(CF32CF(CF24CH2CH2SiCH3(OCH32
(CF32CF(CF26CH2CH2SiCH3(OCH32
(CF32CF(CF28CH2CH2SiCH3(OCH32
CF3(C64)C24SiCH3(OCH32
CF3(CF23(C64)C24SiCH3(OCH32
CF3(CF25(C64)C24SiCH3(OCH32
CF3(CF27(C64)C24SiCH3(OCH32
CF3(CF23CH2CH2Si(OCH2CH33
CF3(CF25CH2CH2Si(OCH2CH33
CF3(CF27CH2CH2Si(OCH2CH33;及び
CF3(CF29CH2CH2Si(OCH2CH33
上記のようなフルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサンを(c)の濡れ性変化物質として使用すると、該物質にエネルギー(光)が照射された際、該物質に接触する光触媒の作用により、フルオロアルキル基のフルオロカーボン鎖が分解除去され、Si−OH結合が形成される。その結果、白金含有触媒層のエネルギー照射部分は親水性になる。
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
Figure 2006294294
(ここで、mは2以上の整数(好ましくは2〜20の整数)を示す。R1及びR2は、それぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はシアノアルキル基を示す。)
1及びR2で示されるアルケニル基の具体例としては、例えばビニル基等が、アリール基の具体例としては、例えばフェニル基、ハロゲン置換フェニル基等が挙げられる。
1及びR2がメチル基である反応性シリコーンは、表面エネルギーが最も小さくなる(撥水性が最も大きくなる)ので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、モル比で全体の40%以下がビニル基、フェニル基又はハロゲン置換フェニル基である反応性シリコーンが好ましい。
上記一般式(B)で表される反応性シリコーンの鎖末端及び/又は側鎖には、1個又は2個以上の反応性基を有する。反応性基の具体例を、以下に示す。
Figure 2006294294
[Rは炭素数10以下の炭化水素鎖を示す。]
上記(2)の撥水牲及び撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサンは、例えば、上記反応性シリコーンを公知の方法に従って架橋させることにより製造される。
本発明においては、上記(2)のオルガノポリシロキサンに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を混合して使用してもよい。
本発明においては、このようにオルガノポリシロキサン等の種々の材料を用いることができるが、上述したように、水管理層にフッ素を含有させることが、水管理層の撥水性向上に効果的である。従って、光触媒の作用により劣化又は分解し難い材料にフッ素を含有させる、具体的にはオルガノポリシロキサンにフッ素を含有させることが好ましい。
このように、オルガノポリシロキサンにフッ素を含有させる方法としては、(i)通常高い結合エネルギーを有する主剤に対し、フッ素化合物を比較的弱い結合エネルギーで結合させる方法、(ii)比較的弱い結合エネルギーで結合されたフッ素化合物を撥水性材料層に混入させる方法等を挙げることができる。このような方法でフッ素を導入することにより、エネルギーが照射された場合に、まず結合エネルギーが比較的小さいフッ素−炭素結合部位が切断され、これによりフッ素を触媒層中から除去することができる。
上記(i)の方法としては、上記オルガノポリシロキサンにフルオロアルキル基を置換基として導入する方法等を挙げることができる。
具体的には、Yがフルオロアルキル基を示す一般式(A)の珪素化合物を原料化合物として用い、ゾルゲル反応等によりハロゲノシラン、アルコキシシラン等を加水分解、重縮合することにより、フルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンを製造することができる。
Yがフルオロアルキル基を示す一般式(A)の珪素化合物としては、フルオロアルキル基を有するものである限り公知のものを広く使用できる。一般式(A)の珪素化合物には、フルオロアルキル基が少なくとも1個含まれていればよい。フルオロアルキル基の炭素数は、通常4〜30、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜16、更に好ましくは6〜8である。
本発明においては、上記フルオロアルキル基を有する珪素化合物をフルオロアルキル基を有していない珪素化合物と混合して用い、これらの共加水分解縮合物を本発明のオルガノポリシロキサンとして用いてもよい。また、フルオロアルキル基を有する珪素化合物の1種又は2種以上を用い、これらの加水分解縮合物又は共加水分解縮合物を本発明のオルガノポリシロキサンとして用いてもよい。
このようにして得られるフルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンにおいては、このオルガノポリシロキサンを構成する珪素化合物の内、上記フルオロアルキル基を有する珪素化合物が0.01モル%以上、好ましくは0.1モル%以上含まれていることが好ましい。
上記フルオロアルキル基を有する珪素化合物が0.01モル%以上含まれていると、触媒層上の撥水性を高くすることができ、エネルギーを照射して親水性領域とした部分との濡れ性の差異を大きくすることができるので、有利である。
また、上記一般式(B)で表される反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサンにフッ素を含有させる場合には、一般式(B)におけるR1及びR2のいずれか又は両方にフルオロアルキル基等のフッ素含有基を導入すればよい。
上記(ii)の方法で使用されるフッ素化合物は、低分子量及び高分子量のいずれでもよい。低分子量のフッ素化合物としては、例えば、フッ素系の界面活性剤等が挙げられる。高分子量のフッ素化合物としては、例えば、濡れ性変化物質との相溶性の高いフッ素樹脂等が挙げられる。
本発明の水管理層には、更に界面活性剤を含有させることができる。使用できる界面活性剤としては、具体的には、日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系界面活性剤、デュポン社製のZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製のフタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製のユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系ないしはシリコーン系の非イオン界面活性剤等を挙げることができる。また、非イオン界面活性剤の代わりに、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤又は両性界面活性剤を用いることもできる。
本発明の水管理層には、上記界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンゾイミダゾール、ポリアクリルニトリル、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマーないしポリマー等を含有させることができる。
基板上に形成された凹部(流)の表面に水管理層を形成させるに当たっては、上記濡れ性変化物質、更に必要に応じて界面活性剤等の他の添加剤を適当な溶剤に混合、分散してペースト状にしておき、形成される水管理層が所望の層厚になるように、このペーストを公知の方法に従い流路の表面全体に亘って塗布するのがよい。
溶剤としては、例えば、各種アルコール類、各種エーテル類、各種ジアルキルスルホキシド類、水又はこれらの混合物等が挙げられる。
これら溶剤の中でも、アルコール類が好ましい。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素数1〜4の一価アルコール、各種の多価アルコール等が挙げられる。
ペースト中に配合する濡れ性変化物質の割合は、特に制限されず広い範囲内から適宜選択することができる。溶剤中における濡れ性変化物質の濃度は、通常0.05〜50重量%程度、好ましくは0.5〜30重量%程度、より好ましくは1〜10重量%程度である。
ペーストの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、スクリーン印刷、インクジェット法等の一般的な方法を適用できる。
斯かるペーストを塗布した後、乾燥することにより、水管理層が形成される。乾燥温度は、通常40〜100℃程度、好ましくは60〜80℃程度である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常5分〜2時間程度、好ましくは30分〜1時間程度である。
上記ペーストに紫外線硬化型の成分(例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルスルフィド等)が含有されている場合、該ペーストに紫外線を照射して硬化処理を行うことにより、水管理層を形成させることができる。
水管理層の厚さは、通常0.05〜50μm程度、好ましくは0.1〜20μm程度、より好ましくは1〜10μm程度がよい。
本発明において、上記濡れ性変化物質を用いることにより、該物質と接触する光触媒含有層中の光触媒の作用により、該物質に含まれる有機基の酸化、分解等により、水管理層の露光部分が親水性に変化し、未露光部との濡れ性に大きな差異を生じさせることができる。
本発明の水管理層には、光触媒が含有されていてもよいし、含有されていなくてもよいが、光触媒の有無により、本発明セパレータの製造方法又は使用方法が異なるので、これらについて以下に説明する。
水管理層に光触媒が含有されていない場合
本発明のセパレータは、基板の流路部表面に水管理層を積層したものであるが、水管理層が撥水性領域のみから構成されているセパレータ(セパレータX)及び水管理層が親水性領域と撥水性領域とを有しているセパレータ(セパレータY)の2つの態様のものを包含する。
図1は、セパレータXの一実施態様を示す平面図である。図2は、該セパレータXのA−A線断面図である。図1及び図2において、1は基板、2は水管理層(撥水性の水管理層)である。
図3は、セパレータYの一実施態様を示す平面図であり、図4は、該セパレータYのA−A線断面図である。図3及び図4において、1は基板、2は水管理層、3は親水性領域、4は撥水性領域である。
図3に示されるセパレータYにおいて、親水性領域3は、基板1に形成された凹部(流路)の中央部分から、ガス入口からガス出口の方向に向かって、水との濡れ性が漸次大きくなるようにグラデーションがかかるように形成されている。
親水性領域と撥水性領域とを有する水管理層の形成方法について、図面を引用しつつ説明する。
図5は、本発明の親水性領域と撥水性領域とを有する水管理層の形成方法について概略を示す図面である。
図5(a)中のAは、基板1に形成された流路の一方面全体に撥水性の水管理層2が形成された本発明セパレータであり、Cは、基材5の一方面全体に光触媒層6が形成された積層体である。
セパレータAの撥水性の水管理層側と積層体Cの光触媒層とが対面するように、セパレータAと積層体Cとを配置し、積層体Cの反対側から、フォトマスク7を介してセパレータAに向かって光照射する(図5(b))。
撥水性の水管理層に、光触媒含有層を介してエネルギー照射(光照射)すると、光触媒の作用により、光照射された水管理層の濡れ性が変化し、該水管理層の光照射部分に親水性領域が形成される(図5(c))。
フォトマスク7は、図5において、光を透過する部分8と光を透過しない部分9とからなっているが、図6に示すように、光を透過する層8’の一方面の一部に光遮断層9’が形成されていてもよい。
フォトマスク7の光を透過する部分は、ガス入口からガス出口方向に向かって、光を透過する割合が漸次大きくなるように、調節されているのがよい。このようなフォトマスクは、グラデーションマスクと呼ばれている。このグラデーションマスクは、一般的には、網点面積が0〜100%のものまで、網点面積%の数値が次第に小さくなるように順番に並べられているマスクである。
フォトマスク7の基材としては、公知のものを広く使用できる。フォトマスクの基材としては、例えば、ステンレス板等の金属基板をエッチングして物理的に孔を形成したもの、アルミニウム等の金属箔を積層したフィルムを部分的に打ち抜いたもの、フィルムに部分的に金属蒸着や着色を施したもの等を挙げることができる。
本発明の水管理層2は、このようにして親水性領域3と撥水性領域4とが形成されている。
以上のように、水管理層に光触媒が含有されていない場合、水管理層の親水性領域は、水管理層に光触媒含有層を接触させ、光触媒含有層を通じて水管理層に光照射することにより形成される。
光触媒含有層
本発明に用いられる光触媒含有層は、光触媒含有層中の光触媒が、接触する水管理層の濡れ性を変化させるような構成であれば、特に限定されるものではない。光触媒含有層は、光触媒とバインダーとから構成されているものであってもよいし、光触媒のみで構成されていてもよい。また、光触媒含有層表面の濡れ性は、親水性及び撥水性のいずれであってもよい。
光触媒含有層に含まれる光触媒としては、光半導体として知られる光触媒を広く使用でき、例えば、二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi23)、酸化鉄(Fe23)等を挙げることができる。これら光触媒は、1種単独で又は2種以上を混合して使用される。
本発明においては、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手が容易な二酸化チタンを好適に使用できる。
二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型とがあり、本発明ではいずれのタイプでも使用することができる。アナターゼ型の二酸化チタンがより好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、より具体的には、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製のSTS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製のST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製のTA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
光触媒の粒径が小さいほど光触媒反応が効率よく行われるので、粒径の比較的小さな光触媒を用いるのが好ましい。光触媒の平均粒径は、50nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。ここで、平均粒径とは、全体の粒子径に対して累積50%に相当する粒子径をいう。
光触媒含有層に含まれるバインダーとしては、バインダーの主骨格が上記光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えば、上記撥水性材料として用いられるオルガノポリシロキサンと同一のものを使用できる。
また、バインダーとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。無定形シリカ前駆体としては、一般式 SiX4(Xは前記に同じ)で表される珪素化合物、又はそれらの加水分解物であるシラノール、或いは、平均分子量3000以下のポリシロキサン等を好ましく例示できる。
一般式 SiX4 で表される珪素化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等が挙げられる。
バインダーを用いた場合の光触媒含有層中の光触媒の含有量は、通常5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲である。
光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、光触媒が二酸化チタンの場合は、基材(例えば、石英ガラス、フォトマスク基板等)上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。無定形チタニアは、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩を加水分解及び脱水縮合するか、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解及び脱水縮合することにより、製造される。この無定形チタニアは、次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに、また、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変化する。
また、光触媒のみからなる光触媒含有層は、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いことにより形成することができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜で且つ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより水管理層上の濡れ性を均一に変化させることが可能であり、更に光触媒含有層が光触媒のみからなることから、バインダーを用いる場合と比較して水管理層上の濡れ性を効率的に変化させることが可能となる。
光触媒及びバインダーとしてオルガノポリシロキサンを含む光触媒含有層は、光触媒及びバインダーを必要に応じて他の添加剤と共に適当な溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用される溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布は、スピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。
また、バインダ−として紫外線硬化型の成分を含有している場合、光触媒及びバインダーを必要に応じて他の添加剤と共に適当な溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布後、これに紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
光触媒及びバインダーとして無定形シリカ前駆体を含む光触媒含有層は、光触媒の粒子と無定形シリカ前駆体とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより光触媒含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度を大きくでき、光触媒含有層の膜表面の強度を向上できる。
光触媒含有層に含まれるバインダーとしては、上記で述べたバインダーを1種又は2種以上混合して使用できる。
光触媒含有層には、上記光触媒、バインダーの他に、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、具体的には、日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系の非イオン界面活性剤、デュポン社製のZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF−141、144、ネオス(株)製のフタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製のユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製のフロラードFC−170、176等のフッ素系又はシリコーン系の非イオン界面活性剤等を挙げることかできる。また、非イオン界面活性剤の代わりに、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
光触媒含有層には、上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンゾイミダゾール、ポリアクリルニトリル、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマーないしポリマー等を含有させることができる。
光触媒含有層が光触媒のみからなる場合は、水管理層上の濡れ性の変化効率が向上し、処理時間の短縮化等のコスト面で有利である。一方、光触媒含有層が光触媒及びバインダーを含有している場合は、光触媒含有層の形成が容易であるという利点を有する。
光触媒含有層6は、基材5上の全面に形成されていてもよいし(図5(a))、基材5上の一部にパターン状に形成されていてもよい(図7)。
この光触媒含有層のパターニング方法は、特に限定されるものではないが、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
本発明では、光触媒含有層が形成される基材としてフォトマスク基材を用いてもよい。光触媒含有層が形成されたフォトマスク基材を用いると、本発明セパレータの製造工程を簡略化でき、有利である。この際に使用されるフォトマスク基材は、通常、フィルムに部分的に金属蒸着を施したものである。
斯かるフォトマスク基材の一方面に光触媒層を形成させた積層体を、後述するように該積層体の光触媒層側を水管理層と接触させ、フォトマスク基材側からエネルギー(光)を照射すると、撥水性の水管理層を簡易に親水性領域及び撥水性領域を有する水管理層に変換することができる。
光触媒含有層6が基材5上の一部にパターン状に形成されている場合には、積層体Cの基材側から基材全面に亘って光照射しても、光触媒含有層6と接する撥水性の水管理層2の部分だけ親水性領域に変換されるので、フォトマスクを使用しなくてもよい(図8)。
光触媒含有層と水管理層との接触
水管理層2に光触媒含有層6を接触させ、光触媒含有層側からエネルギー(光)を照射すると、水管理層の光触媒含有層と接触している部分の化学的性質が撥水性から親水性に変化する。
光触媒含有層における光触媒の作用機構については、未だ解明されていないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、又は、酸素及び水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられる。本発明においては、このキャリアが光触媒含有層と接触している水管理層中の化合物になんらかの作用をするものと推察される。
本発明においては、エネルギー照射時に光触媒含有層と撥水性の水管理層とが接触するように配置することが重要である。
本発明において、接触とは、実質的に光触媒の作用が撥水性の水管理層表面に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、実際に物理的に接触している状態の他、所定の間隔を隔てて光触媒含有層と撥水性の水管理層とが配置された状態をも含む概念とする。
ここで、上記所定の間隔としては、具体的には、通常0.2μm〜10μm、好ましくは1μm〜5μmの範囲内である。
光触媒含有層と水管理層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素、水及び光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着し易くなるので、好ましい。上記範囲より光触媒含有層と水管理層との間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が濡れ性変化物質に届き難くなり、濡れ性の変化速度が遅くなる場合がある。
本発明においては、このような接触状態は、少なくとも露光の間だけ維持されていればよい。
極めて狭い間隙を均一に形成して光触媒含有層と撥水性の水管理層とを配置する方法としては、例えばスペーサを用いる方法を挙げることができる。スペーサを用いることにより、均一な間隙を形成することができると共に、スペーサが接触する部分は、光触媒の作用が水管理層表面に及ばないことから、スペーサを所望する親水性領域のパターンと同一のパターン形状とすることにより、水管理層上に所定の親水性領域パターンを形成することができる。
本発明においては、このようなスペーサを一つの部材として形成してもよいが、水管理層上に親水性領域を簡易に形成させる観点から、基材上に形成された光触媒含有層の表面にスペーサを形成することが好ましい。
スペーサは、光触媒の作用が及ばないように水管理層表面を保護する作用を有していれば足りるので、照射されるエネルギーを遮蔽する機能を有していない材料から構成されていてもよい。
接触部分へのエネルギー照射
撥水性の水管理層と光触媒含有層とが接触している状態で、光触媒含有層側からエネルギー照射が行われる。
本発明でいうエネルギー照射(露光)とは、光触媒含有層による撥水性の水管理層表面の濡れ性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
通常このような露光に用いる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは380nm以下の範囲から適宜設定されるが、これに限定されるものではない。
このようなエネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、赤外線の他、これらの光線よりも更に短波長又は長波長の電磁波、放射線等が挙げられる。例えば、光触媒として、アナターゼ型チタニアを用いる場合は、励起波長が380nm以下にあるので、光触媒の励起は紫外線により行うことができる。
露光に使用される光源としては、公知のものを広く使用でき、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。
露光に際してのエネルギーの照射量は、撥水性の水管理層表面が光触媒の作用により撥水性の水管理層表面の濡れ性の変化が行われるのに十分な照射量とする。
この際、光触媒を加熱しながら露光することにより、光触媒の感度を上昇させことが可能となり、効率的な濡れ性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
使用される光触媒層が、図7に示すように基材上の一部にパターン状に形成されている場合には、これを図8に示すように水管理層2の面上に配置し、エネルギーを光触媒層を含む基材全面に亘って照射すればよい。
使用される光触媒層が、図5に示すように基材上の全面に形成されている場合には、所望の形状を有するフォトマスクを介して、エネルギーを光触媒層に照射すればよい。或いは、フォトマスクを使用することなく、エキシマ、YAG等のレーザーを用いてパターン状に描画照射することも可能である。また、その際に、必要に応じて上述した所望の形状を有するスペーサを用いてもよい。
エネルギーの照射方向は、上記光触媒含有層と撥水性の水管理層とが接触する部分にエネルギーが照射されるものであれば、いかなる方向から照射されてもよく、また、照射されるエネルギーも特に平行光等の平行なものに限定されない。
撥水性の水管理層に、光触媒含有層を介して光照射すると、光触媒の作用により、光照射された撥水性の水管理層表面の濡れ性が変化し、該水管理層の光照射部分に親水性領域が形成される。このようにして、親水性領域と撥水性領域とを有する水管理層が製造される。
水管理層に光触媒が含有されていない場合、本発明のセパレータYは、例えば、
(i)基板の凹部表面に、エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有する水管理層を形成する工程、及び
(ii)水管理層に光触媒含有層を接触させ、光触媒含有層を通じて水管理層にエネルギーを照射する工程
を経て、製造される。
水管理層に光触媒が含有されている場合
水管理層に含有される光触媒としては、上記で述べた光触媒をいずれも使用することができる。光触媒の含有量は、特に限定されるものではなく、広い範囲内から適宜選択できる。例えば、水管理層中の濡れ性変化物質1モルに対して、通常0.01〜4モル程度、好ましくは0.05〜2モル程度、より好ましくは0.1〜1モル程度の光触媒が含有される。
水管理層に光触媒が含有されている場合、フォトマスクを介して水管理層にエネルギー(光)を照射すると、撥水性の水管理層を簡易に親水性領域及び撥水性領域を有する水管理層に変換することができる。
所望の形状を有するフォトマスク又はグラデーションマスクを使用すると、それに対応した形状の親水性領域を水管理層に形成させることができる。或いは、フォトマスクを使用することなく、エキシマ、YAG等のレーザーを用いてパターン状に描画照射することも可能である。また、その際に、必要に応じて上述した所望の形状を有するスペーサを用いてもよい。
エネルギー照射の条件は、上記と同様でよい。
水管理層に光触媒が含有されている場合、本発明のセパレータYは、例えば、
(i)基板の凹部表面に、エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質及び(d)光触媒を含有する水管理層を形成する工程、及び
(ii)水管理層にエネルギーを照射する工程
を経て、製造される。
本発明によれば、優れた親水性及び撥水性を兼備する固体高分子形燃料電池(PEFC)用のセパレータを提供できる。
本発明によれば、優れた親水性及び撥水性を兼備する固体高分子形燃料電池(PEFC)用のセパレータを、煩雑な工程を経ることなく、簡易に製造することができる。
以下に実施例を掲げて、本発明を一層明らかにする。
実施例1
1.セパレータの流路形成
フォトエッチング法により、チタン製のエッチングチャンバーを内で、温度70℃、スプレー圧上下4kgf/cm2の条件下で,塩化鉄(III)溶液45ボーメ(純正化学(株)社製)を使用して、SUS304(ステンレス板,厚さ:0.3mmt)表面に、溝幅0.5mm、溝深さ0.2mm、表面粗さ100nmを有する流路を形成した。
2.濡れ性変化物質含有ペースト組成物の調製
フルオロメチルシラン(GE東芝シリコーン(株)製のTSL8233)0.4g、テトラメトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製のTSL8114)5g及び0.05規定塩酸2.5gを混合し、8時間攪拌した。得られた溶液をイソプロピルアルコールを用いて10倍に希釈し、濡れ性変化物質含有ペースト組成物とした。
3.セパレータXの製造
流路を形成したセパレータの流路に、スクリーン印刷にて、水管理層の厚さが2μmとなるように濡れ性変化物質含有ペースト組成物を塗布し、100℃で10分間乾燥して、本発明のセパレータXを製造した。
4.光触媒含有層の作成
テトラメトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)製のTSL8114)5g及び0.05規定塩酸2.5gを混合し、24時間攪拌した。得られた溶液0.1gに、光触媒無機コーティング剤(石原産業(株)製のST−K01)50gを混合し、1時間常温で撹拌した。次いでこの溶液をイソプロピルアルコールを用いて2倍に希釈し、光触媒含有層形成用組成物とした。
次にフォトマスク基板(50×50mm)を用意した。このマスクは、セパレータの流路形状と同一とし、溝幅と同じ0.5mmのパターンとした。
パターンが形成されたフォトマスク基板上に、前記光触媒含有層形成用組成物をスピンコーターにより塗布し、その後、150℃で10分間の乾燥処理を行うことにより、厚さ0.15μmの光触媒含有層を形成した。
5.セパレータYの製造
前記3の光触媒含有層面と前記3で得られたセパレータXの水管理層とを5μmのギャップを設けて配置し、フォトマスク側から超高圧水銀ランプ(波長365nm、30mW/cm2)にて露光した。斯くして、水管理層に、上記フォトマスクのパターンと同一パターンの親水性領域が形成されたセパレータYを製造した。
6.燃料電池セルスタックの作製
5で作製したセパレータYを用い,2セルスタック電池を作製し、セル温度80℃での電流電圧測定及びACインピーダンス測定を実施した。電流電圧測定における最大出力密度は0.25W/cm2であり,ACインピーダンス測定における全抵抗値は350mΩであった。
実施例2
1.セパレータの流路形成
実施例1と同様にして、SUS304(ステンレス板,厚さ:0.3mmt)表面に、溝幅0.5mm、溝深さ0.2mm、表面粗さ100nmを有する流路を形成した。
2.濡れ性変化物質含有ペースト組成物の調製
実施例1で調製した濡れ性変化物質含有ペースト組成物0.14gに、酸化チタン2gを添加し、混合して濡れ性変化物質含有ペースト組成物を調製した。
3.セパレータXの製造
上記2で調製した濡れ性変化物質含有ペースト組成物を使用し、実施例1と同様にして、本発明のセパレータXを製造した。
4.セパレータYの製造
フォトマスク基板(50×50mm)を用意した。このマスクは、セパレータの流路形状と同一とし、溝幅と同じ0.5mmのパターンとした。
パターンが形成されたフォトマスク基板と前記2で得られたセパレータXの水管理層とを5μmのギャップを設けて配置し、フォトマスク側から超高圧水銀ランプ(波長365nm、30mW/cm2)にて露光した。斯くして、水管理層に、上記フォトマスクのパターンと同一パターンの親水性領域が形成されたセパレータYを製造した。
5.燃料電池セルスタックの作製
4で作製したセパレータYを用い,2セルスタック電池を作製し、セル温度80℃での電流電圧測定及びACインピーダンス測定を実施した。電流電圧測定における最大出力密度は0.22W/cm2であり,ACインピーダンス測定における全抵抗値は360mΩであった。
比較例1
実施例1で調製された濡れ性変化物質含有ペースト組成物を配合しない以外は、実施例1と同様にして、燃料電池セルスタックを製造した。
製造した燃料電池セルスタックについて、セル温度80℃での電流電圧測定およびACインピーダンス測定を実施した。電流電圧測定における最大出力密度は0.14W/cm2であり、ACインピーダンス測定における全抵抗値は410mΩであった。
実施例1及び実施例2で製造した燃料電池セルは、比較例1で製造した燃料電池セルに比べ良好な結果を示すことが明らかになった。
図1は、本発明のセパレータXの一実施態様を示す平面図である。 図2は、本発明のセパレータXの一実施態様を示す断面図である。 図3は、本発明のセパレータYの一実施態様を示す平面図である。 図4は、本発明のセパレータYの一実施態様を示す断面図である。 図5は、本発明のセパレータYの製造工程を示す概略図である。 図6は、光触媒層が形成された基材の一実施態様を示す断面図である。 図7は、本発明で使用するフォトマスクの一例を示す断面図である。 図8は、本発明のセパレータYの製造工程の一例を示す図面である。
符号の説明
1 … 基板
2 … 水管理層
3 … 親水性領域
4 … 撥水性領域
5 … 基材
6 … 光触媒含有層
7 … フォトマスク
8 … 光を透過する部分
9 … 光を透過しない部分
8’… 光を透過する層
9’… 光遮断層
10… 光

Claims (7)

  1. 基板の凹部表面に水管理層が形成された固体高分子形燃料電池のセパレータであって、
    前記水管理層が、エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有している、
    固体高分子形燃料電池用セパレータ。
  2. エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質が、オルガノポリシロキサンである請求項1に記載のセパレータ。
  3. 前記オルガノポリシロキサンが、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンである請求項2に記載のセパレータ。
  4. 前記水管理層には光触媒が含有されている請求項1〜請求項3のいずれかに記載のセパレータ。
  5. 前記水管理層は、親水性領域と撥水性領域とを有している、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のセパレータ。
  6. エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有する水管理層を有する凹部が基板上に形成されている固体高分子形燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    (i)基板の凹部の表面に、エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有する水管理層を形成する工程、及び
    (ii)水管理層に光触媒含有層を接触させ、光触媒含有層を通じて水管理層にエネルギーを照射する工程
    を備えた、請求項5に記載のセパレータの製造方法。
  7. エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質を含有する水管理層を有する凹部が基板上に形成されている固体高分子形燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    (i) 基板の凹部の表面に、(a)エネルギー照射により水に対する濡れ性が撥水性から親水性に変化する物質及び(b)光触媒を含有する水管理層を形成する工程、
    及び
    (ii)光触媒を含有する水管理層にエネルギーを照射する工程
    を備えた、請求項5に記載のセパレータの製造方法。
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